(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1記憶ユニットに記憶された第1開回路電圧と、前記第1バッテリに対して出入りする電流の積算値とに応じて前記第1バッテリの第1バッテリ残量を算出する第1バッテリ残量算出ユニットと、
前記第2記憶ユニットに記憶された第2開回路電圧と、前記第2バッテリに対して出入りする電流の積算値とに応じて前記第2バッテリの第2バッテリ残量を算出する第2バッテリ残量算出ユニットと、
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の船舶用電源システム。
前記第1スイッチがオフされている場合において、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第2閾値を超えると、前記第1スイッチがオンされる、請求項8に記載の船舶用電源システム。
前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第3閾値以上であり、かつ前記第2バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第2バッテリ残量が第4閾値以上であるときに、前記充電回路による充電動作を規制する充電規制ユニットをさらに含む、請求項8または9に記載の船舶用電源システム。
前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第3閾値以上であり、かつ前記第2バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第2バッテリ残量が第4閾値以上であるときに、前記充電回路による充電動作を規制する充電規制ユニットをさらに含む、請求項12に記載の船舶用電源システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の先行技術は、バッテリの充電残量が所定値を下回ると、警報を出力して使用者にエンジンの再始動を促すことで、バッテリ残量の低下を防止している。
このような警報動作を適切に行うためには、バッテリ残量を正確に検出する必要がある。
特許文献1の先行技術では、バッテリに対して出入りする電流を積算し、それに基づいてバッテリの充電残量を求めている。
【0007】
しかし、充放電電流を積算するだけでは、必ずしも正確なバッテリ残量を求めることはできない。長期間にわたる電流の累積によって、誤差が蓄積されていくからである。
このような誤差の蓄積が生じないバッテリ残量推定として、OCV(Open Circuit Voltage)を用いる手法が知られている。OCVとは、バッテリが無負荷で平衡状態となっているときの開回路電圧(開放電圧)である。OCVとSOC(充電率。State Of Charge)との間には相関があるので、OCVを求めることによって、SOCを求めることができ、このSOCをバッテリ残量の指標とすることができる。動作中のSOCは、電流の収支を絶えず積算し、それに応じてSOCの変化を積算することによって求めることができる。
【0008】
OCVの検出には、数時間以上にわたってバッテリを無負荷状態(または電流負荷が極めて小さい状態)におく必要がある。すなわち、バッテリに対する電流の出入りがほとんどない状態を確保する必要がある。
ところが、船舶には、複数のバッテリが搭載される場合が多く、かつそれらが並列接続される場合が多い。具体的には、推進機始動用(スタータモータ駆動用)の1つ以上のバッテリと、リギング部品等の電装品(補機類)への給電用の1つ以上のバッテリとが備えられ、それらが並列接続されて用いられることがある。これらの複数のバッテリは、保管中(停泊中)であっても並列接続されたままである。そのため、個々のバッテリのOCVを測定しようとしても、他のバッテリからの影響を受けるから、正確なOCVを求めることができない。それにより、正確なSOCを求めることができない。
【0009】
そこで、この発明の一実施形態は、複数のバッテリが船舶に備えられている場合でも、バッテリ残量を精度よく求めることができる船舶用電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一実施形態は、エンジンと、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機とを含む推進機を備える船舶のための船舶用電源システムを提供する。この船舶用電源システムは、前記推進機へ電力を供給する第1バッテリと、前記船舶の補機類へ電力を供給する第2バッテリと、前記第1バッテリの開回路電圧を検出する第1開回路電圧センサと、前記第2バッテリの開回路電圧を検出する第2開回路電圧センサと、前記第1バッテリと前記第2バッテリとの間の電流経路を開閉するためにオン/オフされる第1スイッチを含むスイッチユニットと、を含む。
【0011】
この構成によれば、第1スイッチをオフすることにより、第1バッテリと第2バッテリとの間の電流経路が開かれ、第1および第2バッテリの間の接続を遮断できる。この状態では、第1開回路電圧センサは、第2バッテリの影響を受けることなく、第1バッテリの開回路電圧を精度よく検出できる。また、第2開回路電圧センサは、第1バッテリの影響を受けることなく、第2バッテリの開回路電圧を精度よく検出できる。したがって、第1開回路電圧センサおよび第2開回路電圧センサの出力信号を用いることにより、第1バッテリおよび第2バッテリの個別のバッテリ残量を精度よく求めることができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記第2バッテリが、前記電流経路を介して前記推進機に接続されており、前記第1スイッチが、前記第2バッテリと前記推進機との間を接続/遮断するためにオン/オフされる。この構成では、第1スイッチをオンすることにより、第2バッテリを推進機に対して並列接続することができる。それにより、第2バッテリの電力を推進機に供給することができる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記スイッチユニットを制御するスイッチ制御部をさらに含む。この構成により、スイッチユニットの切換えを自動にできるので、第1および第2バッテリの残量を確実に精度よく求めることができる。
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記推進機に電力を供給するために使用者によってオンされ、前記推進機への電力供給を遮断するために使用者によってオフされるメインスイッチをさらに含む。そして、前記スイッチ制御部は、前記メインスイッチがオフされると、前記第1スイッチをオフする。
【0014】
この構成により、メインスイッチがオフされることによって、第1スイッチが自動的にオフされる。それにより、船舶の不使用時には、確実に、第1および第2バッテリの間の接続を遮断できる。したがって、船舶の不使用時に、第1および第2バッテリの開回路電圧を精度良く検出できるから、それらのバッテリ残量を確実に精度よく求めることができる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記推進機のエンジンの始動を判定する始動判定部をさらに含む。そして、前記スイッチ制御部は、前記メインスイッチがオンされ、かつ始動判定部が前記エンジンが始動したと判定すると、前記第1スイッチをオンさせる。この構成により、エンジンが始動すると、第1スイッチが自動的にオンして、第2バッテリを推進機に接続することができる。したがって、船舶の使用時、とくにエンジン始動後には、第2バッテリの電力を推進機において用いることができる。また、エンジンによって駆動される発電機が生成する電力によって、第2バッテリを充電することができる。そして、エンジンの始動の際には、第2バッテリが推進機から切断されているので、第2バッテリの電力がエンジン始動のために用いられることを回避できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記始動判定部は、前記エンジンの回転速度または前記推進機内の回路電圧を用いて、エンジンの始動を判定する。この構成により、エンジンの始動を確実に判定でき、それにより、第1スイッチを適切にオン/オフできるので、第1バッテリと第2バッテリとの間の接続/遮断を適切に制御できる。
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記第1スイッチがオフ状態のときに前記第1開回路電圧センサが検出する第1開回路電圧を記憶する第1記憶ユニットと、前記第1スイッチがオフ状態のときに前記第2開回路電圧センサが検出する第2開回路電圧を記憶する第2記憶ユニットと、をさらに含む。この構成によれば、第1スイッチがオフ状態のとき、すなわち、第1および第2バッテリの間の接続が遮断されているときに検出された第1および第2開回路電圧が第1および第2記憶ユニットにそれぞれ格納される。したがって、第1および第2記憶ユニットには、第1および第2バッテリが互いに影響し合わない条件で検出された開回路電圧が記憶される。したがって、第1および第2記憶ユニットにそれぞれ記憶された第1および第2開回路電圧を用いることによって、第1および第2バッテリのバッテリ残量を精度よく求めることができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記第1記憶ユニットに記憶された第1開回路電圧と、前記第1バッテリに対して出入りする電流の積算値とに応じて前記第1バッテリの第1バッテリ残量を算出する第1バッテリ残量算出ユニットと、前記第2記憶ユニットに記憶された第2開回路電圧と、前記第2バッテリに対して出入りする電流の積算値とに応じて前記第2バッテリの第2バッテリ残量を算出する第2バッテリ残量算出ユニットと、をさらに含む。この構成により、第1および第2バッテリ残量算出ユニットは、それぞれ、第1および第2バッテリのバッテリ残量を精度よく算出できる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記発電機が生成する電力で前記第1バッテリおよび前記第2バッテリを充電する充電回路をさらに含む。そして、前記第1スイッチがオンされている場合において、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が第1閾値未満となると、前記第1スイッチがオフされる。これにより、第1バッテリ残量が減少して第1閾値未満になると、第1スイッチがオフされて、第2バッテリと推進機との間の接続が遮断される。それにより、充電回路は、第2バッテリを充電せず、第1バッテリを充電する。したがって、推進機用の第1バッテリを優先的に充電できるので、推進機への電力供給を確保でき、それにより、推進機が運転可能な状態を保持できる。バッテリ残量を精度よく求めることができるので、第1および第2バッテリへの充電制御を適切に行うことができる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記第1スイッチがオフされている場合において、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第2閾値を超えると、前記第1スイッチがオンされる。この構成によれば、第1バッテリが十分に充電されて、その残量が第2閾値を超えると、第1スイッチがオンされる。それにより、第1バッテリの充電を待って、第2バッテリの充電を開始することができる。こうして、第1バッテリへの充電を優先しながら、第2バッテリも充電できる。バッテリ残量を精度よく求めることができるので、第1および第2バッテリへの充電制御を適切に行うことができる。
【0020】
前記第2閾値は、前記第1閾値と等しくてもよい。また、前記第2閾値は前記第1閾値よりも大きくてもよい。この場合には、第1バッテリの残量に対して第1スイッチのオン/オフがヒステリシスを持つ。それにより、第1スイッチが頻繁にオン/オフすることを回避しながら、第1および第2バッテリに対する充電制御を適切に行うことができる。
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第3閾値以上であり、かつ前記第2バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第2バッテリ残量が第4閾値以上であるときに、前記充電回路による充電動作を規制する充電規制ユニットをさらに含む。
【0021】
この構成によれば、第1および第2バッテリのいずれもが十分に充電されると、充電回路の充電動作が規制される。これにより、第1および第2バッテリの過充電を回避できる。第1および第2バッテリのバッテリ残量がいずれも精度よく求まるので、充電規制のための制御を適切に行うことができる。
この発明の一実施形態では、前記スイッチユニットが、前記第1バッテリと前記推進機との間を接続/遮断するためにオン/オフされる第2スイッチをさらに含む。この構成によれば、第2バッテリだけでなく、第1バッテリも推進機から切り離すことができる。それにより、第1バッテリを確実に無負荷状態とすることができるので、第1バッテリの開回路電圧を一層精度よく検出することができる。それにより、第1バッテリのバッテリ残量の算出精度を向上できる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記第1バッテリと前記推進機との間を接続/遮断するためにオン/オフされる第2スイッチをさらに含む。そして、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出される前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第2閾値を超えると、前記第1スイッチがオンされ、前記第2スイッチがオフされる。
【0023】
この構成によれば、第1バッテリが十分に充電されると、第1バッテリが推進機から切り離され、第2バッテリが推進機に接続される。それにより、発電機が生成する電力は、専ら第2バッテリに供給され、この第2バッテリを充電する。すなわち、第1バッテリのみが推進機に接続された状態で第1バッテリが優先的に充電され、その後に、第1バッテリを推進機から切り離して、第2バッテリが充電される。したがって、第1バッテリの充電を優先しながら、第1バッテリが十分に充電された後には、第2バッテリを速やかに充電することができる。第1バッテリの残量が精度よく求まるので、そのバッテリ残量に基づく第1および第2スイッチのオン/オフ制御を適切に行うことができる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記船舶用電源システムは、前記第1バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第1バッテリ残量が前記第1閾値以上の第3閾値以上であり、かつ前記第2バッテリ残量算出ユニットによって算出された前記第2バッテリ残量が第4閾値以上であるときに、前記充電回路による充電動作を規制する充電規制ユニットをさらに含む。
【0025】
この構成により、第1および第2バッテリのいずれもが十分に充電されると、充電動作が規制されるので、第1および第2バッテリの過充電を回避できる。第1および第2バッテリの残量を精度よく求めることができるので、充電規制のための制御を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aおよび
図1Bは、この発明の一実施形態に係る船舶の電源系統の構成を説明するためのブロック図である。
図1Aおよび
図1Bは、左右に並べて一点鎖線を重ね合わせるように結合することにより、一つのブロック図を構成する。船舶1は、船体2と、船体2に装備された推進機11とを含む。推進機11は、船外機であってもよい。推進機11は、エンジン(内燃機関)13と、エンジン13によって駆動されるプロペラ14と、エンジン13からプロペラ14までの動力伝達経路に配置されたシフト機構15とを含む。シフト機構15は、複数のシフト位置の一つを選択可能な駆動力伝達機構である。複数のシフト位置は、エンジン13の回転をプロペラ14に伝達して一方向(前進方向)に回転させる前進シフト位置と、エンジン13の回転をプロペラ14に伝達して他方向(後進方向)に回転させる後進シフト位置と、エンジン13の回転をプロペラ14に伝達しない中立シフト位置とを含む。前進シフト位置のとき、プロペラ14は、船体2を前進させる前進方向の推進力を発生する。後進シフト位置のとき、プロペラ14は、船体2を後進させる後進方向の推進力を発生する。中立シフト位置のとき、プロペラ14は推進力を発生しない。シフト機構15は、この実施形態では、シフトアクチュエータ16によって作動させられて、複数のシフト位置の一つに制御される。
【0028】
エンジン13は、この実施形態では、電子制御型スロットル装置17および燃料噴射弁19を備えている。電子制御型スロットル装置17は、エンジン13のスロットル開度を変動させるスロットルアクチュエータ18を含む。スロットルアクチュエータ18が駆動されることによってエンジン13の出力(より具体的にはエンジン回転速度)が変動する。また、燃料噴射弁19による燃料噴射量の制御によって、エンジン13の出力(より具体的にはエンジン回転速度)を変動させることができる。エンジン13は、クランク軸20を備えており、クランク軸20は、ドライブシャフト21を介してシフト機構15に結合されている。クランク軸20には、スタータモータ22および発電機23が結合されている。スタータモータ22は、エンジン始動時にクランク軸20を回転させる。発電機23は、エンジン13の運転中に、エンジン13によって駆動されて電力を生成する。
【0029】
推進機11は、さらにエンジンECU(電子制御ユニット)30を備えている。エンジンECU30は、シフトアクチュエータ16、スロットルアクチュエータ18、燃料噴射弁19などを制御する。エンジンECU30には、クランク軸20の回転情報を検出するクランクセンサ24からの検出信号が入力されている。それにより、エンジンECU30は、エンジン回転速度を求めることができる。
【0030】
推進機11は、さらに、充電回路31と、レギュレート回路32と、レギュレート制御回路33とを含む。充電回路31は、発電機23が生成する交流電力を直流に変換し、その変換された電力を電力ライン41に導出する整流回路を含む。充電を規制するためのレギュレート回路32が充電回路31に接続されている。より具体的には、充電回路31は、発電機23と電力ライン41との間に接続されてダイオードブリッジ(整流回路)を形成する複数のダイオード31aを含み、レギュレート回路32は、ダイオード31aに並列に接続された複数のサイリスタ32aを含む。発電機23は、たとえば三相交流発電機である。複数のサイリスタ32aを同時にオンすると、発電機23が短絡状態となって、充電回路31の充電機能が無効化される。すなわち、充電禁止状態となる。レギュレート制御回路33は、サイリスタ32aをオン/オフする。レギュレート制御回路33は、エンジンECU30によって制御される。エンジンECU30は、充電禁止条件が成立すると、レギュレート制御回路33に対してレギュレート制御指令を入力する。レギュレート制御回路33は、レギュレート制御指令が入力されると、サイリスタ32aをオンさせて、充電を禁止する。また、レギュレート制御回路33は、電力ライン41の電圧を監視しており、その電圧が所定の制限電圧に達すると、サイリスタ32aをオンさせて、過電圧の発生を回避するように動作する。
【0031】
電力ライン41には、シフトアクチュエータ16、スロットルアクチュエータ18、燃料噴射弁19、スタータモータ22、エンジンECU30、充電回路31、レギュレート制御回路33などが接続されている。スタータモータ22は、スタータリレー25を介して電力ライン41に接続されている。スタータリレー25は、エンジンECU30によってオン/オフされる。スタータリレー25がオンされることにより、スタータモータ22に電力が供給され、スタータモータ22が駆動し、クランク軸20を回転させる。
【0032】
船体2には、推進機用バッテリ51、補機用バッテリ61、リモートコントロールユニット69、航海機器68などが備えられている。推進機用バッテリ51は、電力ライン41を介して推進機11に接続されている。電力ライン41の途中には、使用者によって手動操作されるバッテリスイッチ81が介装されている。補機用バッテリ61は、バッテリスイッチ81と推進機用バッテリ51の間において、電力ライン41に接続されている。補機用バッテリ61と電力ライン41との間の電流経路48の途中には、スイッチユニット91が介装されている。スイッチユニット91は、リモートコントロールユニット69に備えられたリモコンECU(電子制御ユニット)70によってオン/オフされる一つのスイッチ91a(第1スイッチの一例)を含み、それによって、補機用バッテリ61と電力ライン41との間を接続/遮断する。スイッチ91aは、半導体スイッチであってもよい。バッテリスイッチ81がオン状態であって、スイッチユニット91がオン状態(すなわち、スイッチ91aがオン状態)のとき、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61は、推進機11に対して並列に接続される。
【0033】
リモートコントロールユニット69は、リモコンECU70を含む。リモコンECU70は、バッテリスイッチ81よりも推進機用バッテリ51側において電力ライン41に接続されている。リモートコントロールユニット69は、推進機11のシフト切換および出力調整のために運転者によって操作される操作レバー71を含む。この操作レバー71の操作信号がリモコンECU70に入力される。リモコンECU70は、信号ライン75によってエンジンECU30に接続されている。信号ライン75は、ローカルエリアネットワーク(船内LAN)であってもよい。リモコンECU70は、操作レバー71の操作に応じて、シフト指令信号および出力指令信号を生成する。エンジンECU30は、シフト指令信号に応じてシフトアクチュエータ16を制御し、出力指令信号に応じてスロットルアクチュエータ18を制御する。これにより、操作レバー71の操作によって、推進機11のシフト位置(シフト機構15の状態)を選択でき、かつスロットル開度(すなわち、エンジン13の出力)を調節できる。
【0034】
エンジンECU30は、リモコンECU70に対して、信号ライン75を介して、エンジン回転速度信号を供給する。リモコンECU70は、エンジン回転速度信号に基づいて、エンジン13が運転中かどうかを判定(始動判定)する。リモコンECU70は、電力ライン41の電圧に基づいて、すなわち、推進機11の内部の回路電圧に基づいて、エンジン13が運転中かどうかの判定(始動判定)を実行してもよい。また、リモコンECU70は、充電回路31のレギュレート(充電動作禁止)を許可するかどうかを表すレギュレート可否信号を、信号ライン75を介してエンジンECU30に与える。エンジンECU30は、レギュレート可否信号がレギュレートを許可していることを条件に、レギュレート制御回路33に対して、レギュレート制御指令を発して、充電禁止状態とする。
【0035】
リモコンECU70には、エンジン回転速度表示や各種アラーム表示のための表示計73が接続されている。リモコンECU70は、表示計73に対して表示制御信号を与え、それに応じて表示計73での表示動作が実行される。
リモコンECU70には、さらに、メインスイッチ5が接続されている。メインスイッチ5は、バッテリスイッチ81よりも推進機11側において電力ライン41に接続されている。メインスイッチ5は、バッテリスイッチ81をオンした後に、推進機11への電源投入のために使用者によって操作されるスイッチである。メインスイッチ5がオンされると、リモコンECU70およびエンジンECU30が起動する。リモコンECU70には、さらに、エンジン13を始動するために使用者によって操作される始動スイッチ6が接続されている。始動スイッチ6から始動指令が与えられると、リモコンECU70は、信号ライン75を介して、エンジンECU30に対してエンジン始動指令を与える。それに応答して、エンジンECU30は、始動制御を実行する。始動制御は、スタータリレー25をオンさせる制御、および燃料噴射弁19による燃料噴射動作を開始させる制御を含む。推進機11の使用を終えるとき、使用者は、推進機11への電力の供給を遮断するためにメインスイッチ5をオフ操作し、エンジン13を停止させる。
【0036】
推進機用バッテリ51は、主として、推進機11で使用される電力を供給する。より具体的には、推進機用バッテリ51は、エンジン13を始動するときにスタータモータ22に電力を供給することを主たる機能(目的)として船舶1に備えられる電力源である。一方、補機用バッテリ61は、船舶1に備えられる推進機11以外の電装品、すなわち補機類に対して電力を供給することを主たる機能(目的)として船舶1に備えられる電力源である。補機類の一例は、魚群探知機等の航海機器68である。航海機器68と補機用バッテリ61との間の電力ライン46にはバッテリスイッチ83が介装されている。推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61は、いずれも二次電池であり、エンジン13の運転時に電力ライン41を介して推進機11から供給される電力によって充電される。
【0037】
推進機用バッテリ51には、OCVセンサ111が接続されている。同様に、補機用バッテリ61には、OCVセンサ211が接続されている。OCVセンサ111は、推進機用バッテリ51の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を検出するためのセンサである。OCVセンサ211は、補機用バッテリ61の開回路電圧を検出するためのセンサである。推進機用バッテリ51に関連して、さらに、推進機用バッテリ51に対して出入りする電流を検出する電流センサ112が備えられている。同様に、補機用バッテリ61に関連して、補機用バッテリ61に対して出入りする電流を検出する電流センサ212が備えられている。OCVセンサ111の出力信号および電流センサ112の出力信号は、推進機用バッテリ残量演算部113に入力されている。同様に、OCVセンサ211の出力信号および電流センサ212の出力信号は、補機用バッテリ残量演算部213に入力されている。
【0038】
推進機用バッテリ残量演算部113は、電流センサ112の出力信号を監視し、推進機用バッテリ51に対する電流の出入りが所定時間以上に亘って実質的に零であるとみなせるときに、推進機用バッテリ51が無負荷平衡状態であると判断する。そして、推進機用バッテリ残量演算部113は、推進機用バッテリ51が無負荷平衡状態であるときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ111の出力信号(開回路電圧)OCV11を取得し、メモリ114に格納する。メモリ114は、推進機用バッテリ残量演算部113の内部に設けられてもよいし、その外部に設けられてもよい。さらに、推進機用バッテリ残量演算部113は、メモリ114内の開回路電圧OCV11が更新されると、その更新された開回路電圧OCV11に基づいて、推進機用バッテリ51の初期残量SOC11(0)を求める。したがって、推進機用バッテリ残量演算部113は、推進機用バッテリ51が無負荷平衡状態であるときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、初期残量SOC11(0)を求める。「初期残量」とは、次にバッテリに負荷が接続されるときのバッテリ残量の初期値である。開回路電圧(OCV)とバッテリ残量(たとえば、SOC:State Of Charge)との間には所定の相関があるので、その相関に基づいて初期残量SOC11(0)を求めることができる。たとえば、メモリ114には、推進機用バッテリ51に関して、開回路電圧とバッテリ残量との相関特性を表すOCV−SOC特性データが格納されている。推進機用バッテリ残量演算部113は、そのOCV−SOC特性データを参照することにより、開回路電圧OCV11に対応する初期バッテリ残量SOC11(0)を求めることができる。求められた初期バッテリ残量SOC11(0)は、メモリ114に格納される。
【0039】
推進機用バッテリ残量演算部113は、推進機用バッテリ51に対する電流の出入りがあるときには、初期バッテリ残量SOC11(0)と、電流センサ112によって検出される電流とに基づいて、所定時間間隔(たとえば1秒間隔)で、推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11を演算して出力する。たとえば、推進機用バッテリ残量演算部113は、推進機用バッテリ51から流れ出る方向の電流(消費電流)に対して負の符号を与え、推進機用バッテリ51に流れ込む方向の電流(充電電流)に対して正の符号を与えて、電流に対応したバッテリ残量の変量ΔSOC11を求める。推進機用バッテリ残量演算部113は、その変量ΔSOC11を初期バッテリ残量SOC11(0)に対して積算していくことにより、バッテリ残量SOC11を求める。このバッテリ残量SOC11の演算は、初期バッテリ残量SOC11(0)と、推進機用バッテリ51に対して出入りする電流の積算値とに基づいて、推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11を求める演算にほかならない。
【0040】
同様に、補機用バッテリ残量演算部213は、電流センサ212の出力信号を監視し、補機用バッテリ61に対する電流の出入りが所定時間以上に亘って実質的に零であるとみなせるときに、補機用バッテリ61が無負荷平衡状態であると判断する。そして、補機用バッテリ残量演算部213は、補機用バッテリ61が無負荷平衡状態であるときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ211の出力信号(開回路電圧)OCV21を取得し、メモリ214に格納する。メモリ214は、補機用バッテリ残量演算部213の内部に設けられてもよいし、その外部に設けられてもよい。さらに、補機用バッテリ残量演算部213は、メモリ214内の開回路電圧OCV21が更新されると、その更新された開回路電圧OCV21に基づいて、補機用バッテリ61の初期残量SOC21(0)を求める。したがって、補機用バッテリ残量演算部213は、補機用バッテリ61が無負荷平衡状態であるときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、初期残量SOC21(0)を求める。たとえば、メモリ214には、補機用バッテリ61に関して、開回路電圧とバッテリ残量との相関特性を表すOCV−SOC特性データが格納されている。補機用バッテリ残量演算部213は、そのOCV−SOC特性データを参照することにより、開回路電圧OCV21に対応する初期バッテリ残量SOC21(0)を求めることができる。求められた初期バッテリ残量SOC21(0)は、メモリ214に格納される。
【0041】
補機用バッテリ残量演算部213は、補機用バッテリ61に対する電流の出入りがあるときには、初期バッテリ残量SOC21(0)と、電流センサ212によって検出される電流とに基づいて、所定時間間隔(たとえば1秒間隔)で、補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21を演算して出力する。たとえば、補機用バッテリ残量演算部213は、補機用バッテリ61から流れ出る方向の電流(消費電流)に対して負の符号を与え、補機用バッテリ61に流れ込む方向の電流(充電電流)に対して正の符号を与えて、電流に対応したバッテリ残量の変量ΔSOC21を求める。補機用バッテリ残量演算部213は、その変量ΔSOC21を初期バッテリ残量SOC21(0)に対して積算していくことにより、バッテリ残量SOC21を求める。このバッテリ残量SOC21の演算は、初期バッテリ残量SOC21(0)と、補機用バッテリ61に対して出入りする電流の積算値とに基づいて、補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21を求める演算にほかならない。
【0042】
バッテリ残量演算部113,213によって演算されたバッテリ残量SOC11,SOC21は、リモコンECU70に入力される。そのバッテリ残量SOC11,SOC21は、表示計73に表示されてもよい。
OCVセンサ111、電流センサ112、バッテリ残量演算部113およびメモリ114は、推進機用バッテリ51とともに推進機用バッテリモジュールとして一体化されていてもよい。同様に、OCVセンサ211、電流センサ212、バッテリ残量演算部213およびメモリ214は、補機用バッテリ61とともに補機用バッテリモジュールとして一体化されていてもよい。この場合に、スイッチユニット91は、それらのモジュールの外部に設けられた外部スイッチであってもよい。
【0043】
図2は、OCVセンサ111,211による開回路電圧の正確な測定のために実行されるスイッチユニット91の制御に関するフローチャートであり、リモコンECU70によって実行される処理が主として示されている。スイッチユニット91の初期状態はオフである。
リモコンECU70は、メインスイッチ5がオン状態かどうかを判断する(ステップS1)。船舶1の利用を開始するとき、使用者は、バッテリスイッチ81をオンし、次いで、メインスイッチ5をオンする。すると、メインスイッチ5からリモコンECU70およびエンジンECU30に起動信号が与えられる。この起動信号に応答してリモコンECU70およびエンジンECU30が動作を開始する(ステップS2)。
【0044】
リモコンECU70は、エンジンECU30からエンジン回転速度情報を取得し(ステップS3)、それに基づいて、エンジン13が運転中かどうかを判断する(始動判定)。より具体的には、エンジン回転速度が所定の始動閾値(たとえば600rpm)以上かどうかを判断する(ステップS4)。使用者が始動スイッチ6を操作することにより、リモコンECU70からエンジンECU30に始動指令が与えられる。それに応答して、エンジンECU30は、スタータリレー25をオンさせてスタータモータ22に通電する。それにより、スタータモータ22が駆動してエンジン13が始動され、その運転を開始する。すると、エンジン回転速度が前記始動閾値以上となる。
【0045】
エンジン13が運転中であれば(ステップS4:YES)、リモコンECU70は、スイッチユニット91をオンするための制御信号を出力する(ステップS5)。すると、スイッチユニット91がオンして、補機用バッテリ61が電力ライン41に接続される。それによって、電力ライン41に対して、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61が並列に接続される。したがって、推進機11に対して、推進機用バッテリ51だけでなく補機用バッテリ61も接続される。この状態では、エンジン13の運転中には、発電機23によって生成された電力は、電力ライン41を介して、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の両方に供給され、これらを充電する。この後の処理は、ステップS4に戻る。
【0046】
一方、使用者は、航海機器68を使用するときには、バッテリスイッチ83をオンする。このとき、スイッチユニット91がオフしていれば、航海機器68には専ら補機用バッテリ61が発生する電力が供給されるので、推進機用バッテリ51の残量低下を回避できる。他方、スイッチユニット91がオンしていれば、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61が航海機器68のための電力ライン46に並列に接続される。したがって、航海機器68には、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の両方から電力供給が可能である。推進機11のエンジン13が運転中であれば、発電機23が生成した電力を航海機器68に供給することができる。
【0047】
メインスイッチ5がオンされても、エンジン13が始動する前には、ステップS4での判断が否定となり、処理はステップS1に戻る。すなわち、スイッチユニット91はオフ状態に保たれる。したがって、推進機11には、専ら推進機用バッテリ51の電力が供給され、航海機器68には専ら補機用バッテリ61の電力が供給される。このとき、リモコンECU70およびエンジンECU30は、既に起動済みであるので、ステップS2の処理は省略される。すなわち、メインスイッチ5がオンされると、ステップS2の処理は一回だけ行われ、2回目以降のステップS2の処理は省略される。
【0048】
エンジン13の運転中にメインスイッチ5がオフされると、エンジンECU30は、エンジン13を停止させる。それに応じてエンジン回転速度が低下するので、ステップS4での判断が否定となり、ステップS1に戻る。この場合、メインスイッチ5がオフであるので(ステップS1:NO)、リモコンECU70およびエンジンECU30が停止する(ステップS6)。すると、リモコンECU70はスイッチユニット91への制御信号を出力しなくなる。それに応じて、スイッチユニット91は、その初期状態であるオフ状態となる(ステップS7)。したがって、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の並列接続が解除される。
【0049】
船舶1の使用を終えるとき、使用者は、バッテリスイッチ81,83をいずれもオフにする。すると、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61は、いずれの負荷も接続されていない開放状態となる。この状態で数時間経過することによって、OCVセンサ111が推進機用バッテリ51の開回路電圧OCV11を測定し、OCVセンサ211が補機用バッテリ61の開回路電圧OCV21を測定する。これらの測定された開回路電圧OCV11,OCV21が、メモリ114,214にそれぞれ格納される。
【0050】
図3は、リモコンECU70による充電制御を説明するためのフローチャートであり、エンジン運転中に、リモコンECU70が所定の制御周期で繰り返し実行する処理が示されている。エンジン13が運転中であるので、スイッチユニット91はオン状態である(
図2のステップS4,S5参照)。
リモコンECU70は、推進機用バッテリ残量演算部113から推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11を取得し、補機用バッテリ残量演算部213から補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21を取得する(ステップS11)。リモコンECU70は、推進機用バッテリ51の残量SOC11が所定の充電規制閾値(たとえば90%)未満かどうかを調べ、また、補機用バッテリ61の残量SOC21が所定の充電規制閾値(たとえば90%)未満かどうかを調べる(ステップS12)。これらのいずれかが成立すれば(ステップS12:YES)、いずれかのバッテリは充電の余地があるので、リモコンECU70は、エンジンECU30に対してレギュレート禁止指令を与える(ステップS13)。したがって、エンジンECU30は、レギュレート制御回路33に対してレギュレート指令を出力しないので、発電機23が生成した電力は、充電回路31から電力ライン41に導出されて、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の一方または両方を充電する。
【0051】
推進機用バッテリ51の残量SOC11が充電規制閾値(たとえば90%)以上であり、かつ補機用バッテリ61の残量SOC21が充電規制閾値(たとえば90%)以上であれば(ステップS12:NO)、リモコンECU70はエンジンECU30に対してレギュレート作動指令を与える(ステップS14)。それにより、エンジンECU30は、レギュレート制御回路33に対してレギュレート指令を与え、それに応答して、レギュレート制御回路33はレギュレート回路32を作動させる。したがって、充電回路31の作用が無効化されるので、電力ライン41には、バッテリ51,61を充電するための直流電力が供給されなくなる。こうして、バッテリ51,61の充電が禁止される。
【0052】
充電が許容されているとき(ステップS13)、推進機用バッテリ51の残量SOC11が所定の充電開始閾値(たとえば90%)未満であれば(ステップS15:YES)、リモコンECU70はスイッチユニット91をオフして(ステップS16)、ステップS15に戻る。これにより、推進機用バッテリ51の残量SOC11が少なくなると、補機用バッテリ61が電力ライン41から切り離される。したがって、電力ライン41から供給される電流は専ら推進機用バッテリ51に流れ込み、この推進機用バッテリ51を充電する。それにより、推進機用バッテリ51を速やかに充電することができ、エンジン停止後の再始動に備えることができる。
【0053】
推進機用バッテリ51の残量SOC11が充電開始閾値(たとえば90%)以上のとき(ステップS15:NO)は、リモコンECU70はさらに、推進機用バッテリ51の残量SOC11がより大きな閾値である充電終了閾値(たとえば95%)を超えているかどうかを判断する(ステップS17)。推進機用バッテリ51の残量SOC11が充電開始閾値(たとえば90%)以上であるが、充電終了閾値(たとえば95%)を超えていなければ(ステップS17:NO)、リモコンECU70は、スイッチユニット91をオフのままに保持し、ステップS15に戻る。推進機用バッテリ51の充電が進んで、ステップS17の判断が肯定されると、リモコンECU70は、スイッチユニット91をオンする(ステップS18)。これにより、電力ライン41に対して推進機用バッテリ51だけでなく補機用バッテリ61も接続される。さらに、リモコンECU70は、補機用バッテリ61の残量SOC21が所定の充電開始閾値(たとえば90%)未満かどうかを判断する(ステップS19)。この判断が肯定なら、すなわち、推進機用バッテリ51が十分に充電され、かつ補機用バッテリ61の残量が少なくなっているならば、スイッチユニット91のオン状態を保持して、ステップS15に戻る。このとき、補機用バッテリ61の方が残量が少ないので、補機用バッテリ61が優先的に充電されることになる。一方、補機用バッテリ61の残量SOC21が充電開始閾値(たとえば90%)以上であれば(ステップS19:NO)、ステップS12に戻る。この場合、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の両方が十分に充電されているので、ステップS12の判断が肯定されて、充電禁止状態となる(ステップS14)。
【0054】
以上のように、この実施形態によれば、船舶1のための船舶用電源システムは、推進機11へ電力を供給する推進機用バッテリ51と、航海機器68等の補機類へ電力を供給する補機用バッテリ61とを含む。また、船舶用電源システムは、推進機用バッテリ51の開回路電圧を検出するOCVセンサ111と、補機用バッテリ61の開回路電圧を検出するOCVセンサ211とを含む。さらに、船舶用電源システムは、推進機用バッテリ51と補機用バッテリ61との間の電流経路48を開閉するためにオン/オフされるスイッチ91aを含むスイッチユニット91と、これを制御するスイッチ制御部としてのリモコンECU70とを含む。スイッチユニット91は、電流経路48および電力ライン41を介して推進機11に接続されており、スイッチユニット91によって、補機用バッテリ61と推進機11との間が接続/遮断される。
【0055】
メインスイッチ5がオフされると、リモコンECU70は、スイッチユニット91を自動的にオフする(ステップS7)。それにより、船舶1の不使用時には、推進機用バッテリ51と補機用バッテリ61との間を遮断できる。この状態では、OCVセンサ111は、補機用バッテリ61の影響を受けることなく、推進機用バッテリ51の開回路電圧を精度よく検出できる。また、OCVセンサ211は、推進機用バッテリ51の影響を受けることなく、補機用バッテリ61の開回路電圧を精度よく検出できる。したがって、バッテリ残量演算部113,213は、OCVセンサ111,211によって検出された開回路電圧を用いることによって、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の個別のバッテリ残量SOC11,SOC21を精度よく求めることができる。それに応じて、バッテリ残量SOC11,SOC21に基づく制御、とりわけ充電制御を適切に行うことができる。
【0056】
また、この実施形態では、リモコンECU70は、推進機11のエンジン13の始動を判定する始動判定部としての機能を有している(ステップS4)。そして、リモコンECU70は、メインスイッチ5がオンされ、エンジン13が始動したと判定すると、スイッチユニット91をオンさせる(ステップS5)。したがって、エンジン13が始動すると、スイッチユニット91が自動的にオンして、補機用バッテリ61を推進機11に接続することができる。したがって、船舶1の使用時、とくにエンジン13の始動後には、推進機用バッテリ51だけでなく補機用バッテリ61の電力も推進機11において用いることができる。また、エンジン13によって駆動される発電機23が生成する電力によって、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の両方を充電することができる。その一方で、エンジン13の始動の際には、補機用バッテリ61が推進機11から切断されているので、補機用バッテリ61の電力がエンジン13の始動のために用いられることを回避できる。
【0057】
この実施形態では、エンジン13の始動判定は、エンジン回転速度を用いて行われるので、エンジン13の始動を確実に判定できる。それにより、スイッチユニット91を適切にオン/オフできるので、補機用バッテリ61と推進機11との間の接続/遮断を適切に制御できる。リモコンECU70は、電力ライン41の電圧を監視することによって、推進機11内の回路電圧を監視することができる。この回路電圧は、エンジン13が始動されて発電機23が動作を開始することにより上昇する。そこで、リモコンECU70は、エンジン回転速度の代わりに、電力ライン41の電圧に基づいて、エンジン13の始動判定を行ってもよい。
【0058】
また、この実施形態では、メインスイッチ5がオフされてスイッチユニット91がオフ状態になり、推進機用バッテリ51が無負荷平衡状態になると、OCVセンサ111が検出する開回路電圧が第1記憶ユニットとしてのメモリ114に記憶される。同様に、補機用バッテリ61が無負荷平衡状態になると、OCVセンサ211が検出する開回路電圧が第2記憶ユニットとしてのメモリ214に記憶される。したがって、メモリ114,214には、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61が互いに影響し合わない条件で検出された開回路電圧OCV11,OCV21がそれぞれ記憶される。したがって、メモリ114,214にそれぞれ記憶された開回路電圧OCV11,OCV21を用いることによって、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC11,SOC21を精度よく求めることができる。
【0059】
推進機用バッテリ残量演算部113は、メモリ114に記憶された開回路電圧OCV11と、推進機用バッテリ51に対して出入りする電流の積算値とに応じて、推進機バッテリ51のバッテリ残量SOC11を算出する第1バッテリ残量算出ユニットである。補機用バッテリ残量演算部213は、メモリ214に記憶された開回路電圧OCV21と、補機用バッテリ61に対して出入りする電流の積算値とに応じて、補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21を算出する第2バッテリ残量算出ユニットである。開回路電圧OCV11,OCV21を精度よく検出できるので、バッテリ残量SOC11,SOC21を精度よく算出できる。
【0060】
また、この実施形態では、リモコンECU70は、スイッチユニット91がオンされている場合において、推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11(第1バッテリ残量)が減少して充電開始閾値(第1閾値)未満となると(ステップS15:YES)、スイッチユニット91がオフされる(ステップS16)。これにより、補機用バッテリ61と推進機11との間の接続が遮断される。それにより、推進機11の充電回路31は、補機用バッテリ61を充電せず、専ら推進機用バッテリ51を充電する。したがって、推進機用バッテリ51を優先的に充電できるので、推進機11への電力供給を確保でき、それにより、推進機11が運転可能な状態を保持でき、エンジン再始動に備えることができる。バッテリ残量SOC11を精度よく求めることができるので、このような充電制御を適切に行うことができる。
【0061】
また、この実施形態では、リモコンECU70は、スイッチユニット91がオフされている場合において、推進機用バッテリ51が十分に充電されてそのバッテリ残量SOC11が充電終了閾値(第2閾値)を超えると(ステップS17)、スイッチユニット91がオンされる。それにより、推進機用バッテリ51の充電終了を待って、補機用バッテリ61の充電を開始することができる。こうして、推進機用バッテリ51への充電を優先しながら、補機用バッテリ61も、推進機11の発電機23が生成する電力によって充電できる。バッテリ残量SOC11を精度よく求めることができるので、この充電制御も適切に行うことができる。
【0062】
この実施形態では、充電終了閾値(たとえば95%)が充電開始閾値(たとえば90%)よりも大きいので、推進機用バッテリ51の残量SOC11に対してヒステリシスを持ってスイッチユニット91がオン/オフする。それにより、スイッチユニット91が頻繁にオン/オフすることを回避しながら、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61に対する充電制御を適切に行うことができる。なお、充電終了閾値を充電開始閾値と等しい値に設定してもよい。
【0063】
また、リモコンECU70は、推進機用バッテリ残量SOC11がその充電規制閾値(第3閾値。たとえば90%)以上であり、かつ補機用バッテリ残量SOC21がその充電規制閾値(第4閾値。たとえば90%)以上であるときに、レギュレート作動指令出力する(ステップS14)。これに応答して、エンジン13による制御の下、レギュレート制御回路33がレギュレート回路32を作動させて、充電回路31の充電動作を規制する。すなわち、レギュレート制御回路33およびレギュレート回路32は、充電規制ユニットの一例である。こうして、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61のいずれもが十分に充電されると、充電回路31の充電動作が規制されるので、バッテリ51,61の過充電を回避できる。推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11および補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21がいずれも精度よく求まるので、充電規制のための制御を適切に行うことができる。
【0064】
なお、ステップS12で推進機用バッテリ残量SOC11と比較される充電規制閾値はステップS15での判断で用いられる充電開始閾値以上の値であればよい。また、ステップS12で補機用バッテリ残量SOC21と比較される充電規制閾値は、ステップS19での判断に用いられる充電開始閾値以上であればよい。推進機用バッテリ51の充電規制閾値と補機用バッテリ61の充電規制閾値とは等しい値である必要はない。また、推進機用バッテリ51の充電開始閾値(ステップS15)と、補機用バッテリ61の充電開始閾値(ステップS19)とは等しい値である必要はない。
【0065】
図4Aおよび
図4Bは、この発明の他の実施形態に係る船舶1の電源系統の構成を説明するためのブロック図である。
図4Aおよび
図4Bは、左右に並べて一点鎖線を重ね合わせるように結合することにより、一つのブロック図を構成する。
図4Aおよび
図4Bにおいて
図1Aおよび
図1Bに示された各部の対応部分には同一参照符号を付す。この実施形態では、
図1Aおよび
図1Bの実施形態におけるスイッチユニット91に代えて、第1スイッチ101および第2スイッチ102を有する三点スイッチからなるスイッチユニット100が備えられている。第1スイッチ101は、電力ライン41と補機用バッテリ61との間を接続/遮断するためにオン/オフされる。第2スイッチ102は、電力ライン41と推進機用バッテリ51との間を接続/遮断するためにオン/オフされる。第1および第2スイッチ101,102は、半導体スイッチであってもよい。メインスイッチ5は、スイッチユニット100よりも推進機用バッテリ51側で電力ライン41に接続(すなわち推進機用バッテリ51に接続)されている。この実施形態では、バッテリスイッチ81(
図1A参照)が省かれているが、同様のバッテリスイッチをスイッチユニット100よりも推進機11側において電力ライン41に介装してもよい。
【0066】
図5は、OCVセンサ111,211による開回路電圧の正確な測定のために実行されるスイッチユニット100の制御、ならびにバッテリの充電制御に関するフローチャートであり、主としてリモコンECU70によって実行される処理が示されている。スイッチユニット100の初期状態では、第1スイッチ101および第2スイッチ102がいずれもオフである。
【0067】
リモコンECU70は、メインスイッチ5がオン状態かどうかを判断する(ステップS21)。船舶1の利用を開始するとき、使用者は、メインスイッチ5をオンする。すると、メインスイッチ5からリモコンECU70およびエンジンECU30に起動信号が与えられる。この起動信号に応答してリモコンECU70およびエンジンECU30が動作を開始する(ステップS22)。
【0068】
リモコンECU70は、エンジンECU30からエンジン回転速度情報を取得し(ステップS23)、それに基づいて、エンジン13が運転中かどうかを判断する。より具体的には、エンジン回転速度が所定の始動閾値(たとえば600rpm)以上かどうかを判断する(ステップS24)。使用者が始動スイッチ6を操作することにより、リモコンECU70からエンジンECU30に始動指令が与えられる。それに応答して、エンジンECU30はスタータリレー25をオンさせてスタータモータ22に通電する。それにより、スタータモータ22が駆動してエンジン13が始動され、その運転を開始する。すると、エンジン回転速度が前記始動閾値以上となる。
【0069】
メインスイッチ5がオンされても、エンジン13が始動する前には、ステップS24での判断が否定となる。すると、リモコンECU70は、第1スイッチ101をオフし、第2スイッチ102をオンする(ステップS25)。これにより、推進機用バッテリ51が電力ライン41に接続され、補機用バッテリ61は電力ライン41から遮断される。その後、処理はステップS21に戻る。このとき、リモコンECU70およびエンジンECU30は、既に起動済みであるので、ステップS22の処理は省略される。すなわち、メインスイッチ5がオンされると、ステップS22の処理は一回だけ行われ、2回目以降のステップS22の処理は省略される。
【0070】
エンジン13が運転中であれば(ステップS24:YES)、リモコンECU70は、バッテリ残量演算部113,213から推進機用バッテリ残量SOC11および補機用バッテリ残量SOC21を取得する(ステップS26)。リモコンECU70は、推進機用バッテリ残量SOC11が所定の充電規制閾値(たとえば90%)未満かどうかを調べ、また、補機用バッテリ残量SOC21が所定の充電規制閾値(たとえば90%)未満かどうかを調べる(ステップS27)。これらのいずれかが成立すれば(ステップS27:YES)、いずれかのバッテリは充電の余地があるので、リモコンECU70は、エンジンECU30に対してレギュレート禁止指令を与える(ステップS28)。したがって、エンジンECU30は、レギュレート制御回路33に対してレギュレート指令を出力しないので、発電機23が生成した電力は、充電回路31から電力ライン41に導出されて、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61のいずれか一方を充電する。
【0071】
推進機用バッテリ残量SOC11が充電規制閾値(たとえば90%)以上であり、かつ補機用バッテリ残量SOC21が充電規制閾値(たとえば90%)以上であれば(ステップS27:NO)、リモコンECU70はエンジンECU30に対してレギュレート作動指令を与える(ステップS29)。それにより、エンジンECU30は、レギュレート制御回路33に対してレギュレート指令を与え、それに応答して、レギュレート制御回路33はレギュレート回路32を作動させる。したがって、充電回路31の作用が無効化されるので、電力ライン41には、バッテリ51,61を充電するための直流電力が供給されなくなる。こうして、バッテリ51,61の充電が禁止される。その後、処理はステップS21に戻る。
【0072】
充電が許容されているとき(ステップS28)、推進機用バッテリの残量SOC11が充電開始閾値(たとえば90%)未満であれば(ステップS30:YES)、リモコンECU70は第1スイッチ101をオフし、第2スイッチ102をオンする(ステップS31)。これにより、推進機用バッテリ51が電力ライン41に接続され、補機用バッテリ61が電力ライン41から切り離される。したがって、電力ライン41から供給される電流は専ら推進機用バッテリ51に流れ込み、この推進機用バッテリ51を充電する。それにより、推進機用バッテリ51を速やかに充電することができ、エンジン停止後の再始動に備えることができる。
【0073】
推進機用バッテリ51の残量SOC11が充電開始閾値(たとえば90%)以上のときは(ステップS30:NO)、リモコンECU70はさらに、推進機用バッテリ51の残量SOC11がさらに大きな閾値である充電終了閾値(たとえば95%)を超えているかどうかを判断する(ステップS32)。推進機用バッテリ51の残量SOC11が充電開始閾値(たとえば90%)以上であるが、充電終了閾値(たとえば95%)を超えていなければ(ステップS32:NO)、リモコンECU70は、スイッチユニット100の状態(第1スイッチ101はオフ、第2スイッチ102はオン)を保持し、ステップS30に戻る。推進機用バッテリ51の充電が進んで、ステップS32の判断が肯定されると、リモコンECU70は、補機用バッテリ61の残量SOC21が充電開始閾値(たとえば90%)未満かどうかを判断する(ステップS33)。この判断が肯定なら、すなわち、推進機用バッテリ51が十分に充電され、かつ補機用バッテリ61の残量が少なくなっているならば、リモコンECU70は、第1スイッチ101をオンし、第2スイッチ102をオフして(ステップS34)、ステップS30に戻る。これにより、電力ライン41から推進機用バッテリ51が切り離され、補機用バッテリ61が電力ライン41に接続される。これにより、電力ライン41から供給される電流は専ら補機用バッテリ61に流れ込み、この補機用バッテリ61を充電する。それにより、補機用バッテリ61を速やかに充電することができる。一方、補機用バッテリ61の残量SOC21が充電開始閾値(たとえば90%)以上であれば(ステップS33:NO)、スイッチユニット100の状態(第1スイッチ101はオフ、第2スイッチ102はオン)を保持して、ステップS21に戻る。この場合、ステップS27での判断が否定され、リモコンECU70は、エンジンECU30に対してレギュレート作動指令を出す(ステップS29)。したがって、充電回路31の機能が無効化され、充電禁止状態となる。その後、処理はステップS21に戻る。
【0074】
メインスイッチ5がオフされると(ステップS21:NO)、リモコンECU70およびエンジンECU30は、動作を停止するための終了処理を実行する(ステップS35)。図示は省略するが、リモコンECU70は、メインスイッチ5の状態を常時監視しており、
図5に示すいずれのステップを実行中であっても、メインスイッチ5がオフされると、終了処理(ステップS35)を実行する。この終了処理において、リモコンECU70はスイッチユニット100を初期状態に制御する。すなわち、第1スイッチ101および第2スイッチ102がいずれもオフとなる。したがって、推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61は、いずれも電力ライン41から切断され、それらの間の接続も遮断される。これにより、推進機用バッテリ51は、いずれの負荷も接続されておらず、かつ補機用バッテリ61にも接続されていない開放状態となる。
【0075】
船舶1の使用を終えるとき、使用者は、バッテリスイッチ83をオフにする。すると、
補機用バッテリ61は、いずれの負荷も接続されておらず、推進機用バッテリ51にも接続されていない開放状態となる。この状態で数時間経過することによって、OCVセンサ111が推進機用バッテリ51の開回路電圧OCV11を測定し、OCVセンサ211が補機用バッテリ61の開回路電圧OCV21を測定する。これらの測定された開回路電圧OCV11,OCV21が、メモリ114,214にそれぞれ格納される。
【0076】
この実施形態により、前述の第1の実施形態と同様の効果を実現できる。
また、この実施形態では、第2スイッチ102をオフすることによって、補機用バッテリ61だけでなく、推進機用バッテリ51も推進機11から切り離すことができる。それにより、推進機用バッテリ51を確実に無負荷状態とすることができるので、推進機用バッテリ51の開回路電圧OCV11を一層精度よく検出することができる。それに応じて、推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11の算出精度を向上できる。
【0077】
また、この実施形態では、推進機用バッテリ残量SOC11が充電終了閾値(第2閾値)を超えると(ステップS32:YES)、補機用バッテリ残量SOC21が充電開始閾値未満の場合に(ステップS33:YES)、第1スイッチ101がオンされ、第2スイッチ102がオフされる(ステップS31)。したがって、推進機用バッテリ51が十分に充電されると、推進機用バッテリ51が推進機11から切り離され、補機用バッテリ61が推進機11に接続される。それにより、推進機11が備える発電機23が生成する電力は、専ら補機用バッテリ61に供給され、この補機用バッテリ61を充電する。すなわち、推進機用バッテリ51のみが推進機11に接続された状態で推進機用バッテリ51が優先的に充電され、その後に、推進機用バッテリ51を推進機11から切り離して、補機用バッテリ61が充電される。したがって、推進機用バッテリ51の充電を優先しながら、推進機用バッテリ51が十分に充電された後には、補機用バッテリ61を速やかに充電することができる。推進機用バッテリ51の残量SOC11および補機用バッテリ61の残量SOC21がそれぞれ精度よく求まるので、それらのバッテリ残量SOC11,SOC21に基づく第1および第2スイッチ101,102のオン/オフ制御を適切に行うことができる。
【0078】
そして、この実施形態においても、推進機用バッテリ残量SOC11が充電規制閾値(第3閾値。たとえば90%)以上であり、かつ補機用バッテリ残量SOC21が充電規制閾値(第4閾値。たとえば90%)以上であるときに、充電回路31による充電動作が規制される。推進機用バッテリ51および補機用バッテリ61の過充電を回避できる。バッテリ残量SOC11,SOC21を精度よく求めることができるので、充電規制のための制御を適切に行うことができる。
【0079】
図6Aおよび
図6Bは、この発明のさらに他の実施形態に係る船舶1の電源系統の構成を説明するためのブロック図である。
図6Aおよび
図6Bにおいて
図1Aおよび
図1Bに示された各部の対応部分には同一参照符号を付す。
図6Aおよび
図6Bは、左右に並べて一点鎖線を重ね合わせるように結合することにより、一つのブロック図を構成する。この実施形態の船舶1は、複数(この実施形態では2機)の推進機11,12を備えている。複数の推進機11,12は、船外機であってもよい。具体的には、船舶1は、複数の船外機を船尾に並列配置した多機掛けの構成を有していてもよい。
【0080】
第1および第2推進機11,12は実質的に同様の構成を有しているので、第2推進機12の内部構成の図示は省略する。ただし、以下の説明では、第2推進機12の内部の構成部分に言及するときは、第1推進機11の内部構成部分に対して付した符号を用いる。
第1および第2推進機11,12がそれぞれ備えるエンジンECU30は、信号ライン75を介してリモコンECU70に接続されている。メインスイッチ5は、この実施形態では、第1推進機11の電力ライン41に接続されている。メインスイッチ5がオンされることによって発生される始動指令は、リモコンECU70に与えられ、かつ第1および第2推進機11,12のそれぞれのエンジンECU30に与えられる。
【0081】
第1および第2推進機11,12にそれぞれ対応して第1および第2推進機用バッテリ51,52が船体2に装備されている。第1推進機用バッテリ51は、第1電力ライン41を介して第1推進機11に接続されている。第1電力ライン41にバッテリスイッチ81が介装されている。第2推進機用バッテリ52は、第2電力ライン42を介して第2推進機12に接続されている。第2電力ライン42には、バッテリスイッチ82が介装されている。さらに、この実施形態では、複数(この実施形態では2個)の補機用バッテリ61,62が船体2に装備されている。
【0082】
第1電力ライン41と第2電力ライン42とは、船体2の内部に配置された第3電力ライン43によって互いに接続されている。したがって、第1および第2推進機用バッテリ51,52は、第1および第2電力ライン41,42および第3電力ライン43を介して互いに並列に接続されている。第3電力ライン43は、第1電力ライン41において、バッテリスイッチ81と第1推進機用バッテリ51との間に接続されている。また、第3電力ライン43は、第2電力ライン42においてバッテリスイッチ82よりも第2推進機12側に接続されている。第3電力ライン43には、第1電力ライン41に対する第3電力ライン43の接続/遮断を切り換えるためにオン/オフされる一つのスイッチ91a(たとえば半導体スイッチ)を含む第1スイッチユニット91が介装されている。さらに、第3電力ライン43には、第2電力ライン42に対する第3電力ライン43の接続/遮断を切り換えるためにオン/オフされる一つのスイッチ92a(たとえば半導体スイッチ)を含む第2スイッチユニット92が介装されている。第1および第2スイッチユニット91,92の両方がオン(スイッチ91aおよび92aがオン)のとき、第1および第2電力ライン41,42が互いに接続され、それによって、第1および第2推進機用バッテリ51,52が並列に接続される。すなわち、第1および第2推進機用バッテリ51,52は、第1推進機11に対して並列に接続され、かつ第2推進機12に対して並列に接続される。この並列接続は、第1および第2スイッチユニット91,92の一方または両方がオフ(スイッチ91aまたは92aがオフ)になると解除される。スイッチ91a,92aは、この発明の一実施形態における第1スイッチの一例である。
【0083】
第3電力ライン43において、第1スイッチユニット91と第2スイッチユニット92との間に、第4電力ライン44が接続されている。第4電力ライン44は、第1補機用バッテリ61に接続されている。第4電力ライン44から、第5電力ライン45が分岐しており、この第5電力ライン45は第2補機用バッテリ62に接続されている。したがって、第1および第2補機用バッテリ61,62は、第4電力ライン44および第5電力ライン45によって互いに並列に接続されている。第5電力ライン45において、第1および第2補機用バッテリ61,62の間には、それらの間を接続/遮断するためにオン/オフされる一つのスイッチ93a(たとえば半導体スイッチ)を含む第3スイッチユニット93が介装されている。第3スイッチユニット93がオン(スイッチ93aがオン)であれば、第1および第2補機用バッテリ61,62は、第3電力ライン43に対して並列に接続される。このとき、第1スイッチユニット91がオンであれば、第1および第2補機用バッテリ61,62は第1推進機11に対して並列に接続される。同様に、第2スイッチユニット92がオンであれば、第1および第2補機用バッテリ61,62は第2推進機12に対して並列に接続される。
【0084】
第2補機用バッテリ62は、第6電力ライン46を介して、航海機器68に接続されている。第6電力ライン46には、航海機器68の使用時に使用者においてオンされるバッテリスイッチ83が介装されている。バッテリスイッチ83がオンのとき、第3スイッチユニット93がオンであれば、航海機器68には第1および第2補機用バッテリ61,62が並列に接続される。第3スイッチユニット93をオフ(スイッチ93aをオフ)とすれば、この並列接続が解除され、航海機器68には専ら第2補機用バッテリ62のみから電力が供給される。
【0085】
第1、第2および第3スイッチユニット91,92,93は、リモコンECU70によって、オン/オフ制御される。
第1推進機用バッテリ51には、その開回路電圧を測定するためのOCVセンサ111が接続されている。また、第1推進機用バッテリ51に対する電流の出入りを検出する電流センサ112が設けられている。OCVセンサ111および電流センサ112の出力信号は、第1推進機用バッテリ残量演算部113に入力されている。第1推進機用バッテリ残量演算部113は、OCVセンサ111が検出する第1推進機用バッテリ51の開回路電圧OCV11と電流センサ112が検出する電流とに基づいて、第1推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11を演算する。第1推進機用バッテリ残量演算部113は、第1推進機用バッテリ51が無負荷平衡状態のときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ111が検出する開回路電圧OCV11をメモリ114に格納する。第1推進機用バッテリ残量演算部113は、メモリ114内の開回路電圧OCV11が更新されると、その更新された開回路電圧OCV11に基づいて初期残量SOC11(0)を求め、それをメモリ114に格納する。第1推進機用バッテリ51に対する電流の出入りがあるときには、その初期残量SOC11(0)を用いて、第1推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11が演算される。演算の詳細は、前述の第1の実施形態に関連して述べたとおりである。演算されたバッテリ残量SOC11は、リモコンECU70に入力される。
【0086】
同様に、第2推進機用バッテリ52には、その開回路電圧を測定するためのOCVセンサ121が接続されている。また、第2推進機用バッテリ52に対する電流の出入りを検出する電流センサ122が設けられている。OCVセンサ121および電流センサ122の出力信号は、第2推進機用バッテリ残量演算部123に入力されている。第2推進機用バッテリ残量演算部123は、OCVセンサ121が検出する第2推進機用バッテリ52の開回路電圧OCV12と電流センサ122が検出する電流とに基づいて、第2推進機用バッテリ52のバッテリ残量SOC12を演算する。第2推進機用バッテリ残量演算部123は、第2推進機用バッテリ52が無負荷平衡状態のときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ121が検出する開回路電圧OCV12をメモリ124に格納する。第2推進機用バッテリ残量演算部123は、メモリ124内の開回路電圧OCV12が更新されると、その更新された開回路電圧OCV12に基づいて初期残量SOC12(0)を求め、それをメモリ124に格納する。第2推進機用バッテリ52に対する電流の出入りがあるときには、その初期残量SOC12(0)を用いて、第2推進機用バッテリ52のバッテリ残量SOC12が演算される。演算されたバッテリ残量SOC12は、リモコンECU70に入力される。
【0087】
同様に、第1補機用バッテリ61には、その開回路電圧を測定するためのOCVセンサ211が接続されている。また、第1補機用バッテリ61に対する電流の出入りを検出する電流センサ212が設けられている。OCVセンサ211および電流センサ212の出力信号は、第1補機用バッテリ残量演算部213に入力されている。第1補機用バッテリ残量演算部213は、OCVセンサ211が検出する第1補機用バッテリ61の開回路電圧OCV21と電流センサ212が検出する電流とに基づいて、第1補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21を演算する。第1補機用バッテリ残量演算部213は、第1補機用バッテリ61が無負荷平衡状態のときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ211が検出する開回路電圧OCV21をメモリ214に格納する。第1補機用バッテリ残量演算部213は、メモリ214内の開回路電圧OCV21が更新されると、その更新された開回路電圧OCV21に基づいて初期残量SOC21(0)を求め、それをメモリ214に格納する。第1補機用バッテリ61に対する電流の出入りがあるときには、その初期残量SOC21(0)を用いて、第1補機用バッテリ61のバッテリ残量SOC21が演算される。演算されたバッテリ残量SOC21は、リモコンECU70に入力される。
【0088】
同様に、第2補機用バッテリ62には、その開回路電圧を測定するためのOCVセンサ221が接続されている。また、第2補機用バッテリ62に対する電流の出入りを検出する電流センサ222が設けられている。OCVセンサ221および電流センサ222の出力信号は、第2補機用バッテリ残量演算部223に入力されている。第2補機用バッテリ残量演算部223は、OCVセンサ221が検出する第2補機用バッテリ62の開回路電圧OCV22と電流センサ222が検出する電流とに基づいて、第2補機用バッテリ62のバッテリ残量SOC22を演算する。第2補機用バッテリ残量演算部223は、第2補機用バッテリ62が無負荷平衡状態のときに、所定時間間隔(たとえば4時間間隔)で、OCVセンサ221が検出する開回路電圧OCV22をメモリ224に格納する。第2補機用バッテリ残量演算部223は、メモリ224内の開回路電圧OCV22が更新されると、その更新された開回路電圧OCV22に基づいて初期残量SOC22(0)を求め、それをメモリ224に格納する。第2補機用バッテリ62に対する電流の出入りがあるときには、その初期残量SOC22(0)を用いて、第2補機用バッテリ62のバッテリ残量SOC22が演算される。演算されたバッテリ残量SOC22は、リモコンECU70に入力される。
【0089】
リモコンECU70は、第1スイッチユニット91に関して、第1推進機用バッテリ51のバッテリ残量SOC11と第1補機用バッテリ61および/または第2補機用バッテリ62のバッテリ残量SOC21,22とに基づいて、第1の実施形態と同様な制御を実行する(
図2参照)。また、リモコンECU70は、第2スイッチユニット92に関して、第2推進機用バッテリ52のバッテリ残量SOC12と第1補機用バッテリ61および/または第2補機用バッテリ62のバッテリ残量SOC21,22とに基づいて、第1の実施形態と同様な制御を実行する(
図2参照)。
【0090】
さらに、リモコンECU70は、メインスイッチ5がオンされると、第3スイッチユニット93をオンし、メインスイッチ5がオフされると第3スイッチユニット93をオフする。
したがって、メインスイッチ5がオフされると、第1、第2および第3スイッチユニット91,92,93はすべてオフされる。それにより、第1および第2推進機用バッテリ51,52の互いの並列接続が解除され、それらに対する第1および第2補機用バッテリ61,62の並列接続も解除される。そして、第1および第2補機用バッテリ61,62の互いの並列接続も解除される。これにより、第1および第2推進機用バッテリ51,52および第1および第2補機用バッテリ61,62は、無負荷状態となり、かつ他のいずれのバッテリにも接続されていない状態となる。したがって、OCVセンサ111,121は第1および第2推進機用バッテリ51,52の開回路電圧OCV11,OCV12を正確に検出できる。また、OCVセンサ211,221は第1および第2補機用バッテリ61,62の開回路電圧OCV21,OCV22を正確に検出できる。それに応じて、第1および第2推進機用バッテリ51,52、ならびに第1および第2補機用バッテリ61,62のバッテリ残量SOC11,SOC12,SOC21,SOC22が正確に求まるので、これらに対する充電制御等を適切に行うことができる。
【0091】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、以下に例示的に列挙するとおり、さらに他の形態で実施することができる。
前述の実施形態では、リモコンECU70によってスイッチユニット91〜93,100が制御されているけれども、別のスイッチ制御部によってこれらのスイッチユニット91〜93,100が制御されてもよい。たとえば、エンジンECU30がスイッチユニット91〜93,100を制御してもよく、リモコンECU70およびエンジンECU30以外のコントローラによってスイッチユニット91〜93,100を制御してもよい。
【0092】
バッテリ残量に基づく制御は、前述の例に限らない。たとえば、メインスイッチがオンしている状態でエンジンが停止しているときに、バッテリ残量の低下に応じて、エンジンを始動してバッテリを充電する制御を行ってもよい。
バッテリ残量を演算する専用のバッテリ残量演算部113,123,213,223を備える代わりに、リモコンECU70またはエンジンECU30によって同様のバッテリ残量演算を行ってもよい。
【0093】
推進機は、船外機に限らず、船内機、船内外機、ウォータージェット等の他の形態を有していてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。