特許第6671228号(P6671228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6671228-火災報知システム 図000002
  • 特許6671228-火災報知システム 図000003
  • 特許6671228-火災報知システム 図000004
  • 特許6671228-火災報知システム 図000005
  • 特許6671228-火災報知システム 図000006
  • 特許6671228-火災報知システム 図000007
  • 特許6671228-火災報知システム 図000008
  • 特許6671228-火災報知システム 図000009
  • 特許6671228-火災報知システム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671228
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20200316BHJP
   G08B 25/01 20060101ALI20200316BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20200316BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B25/01 A
   G08B25/04 E
   G08B25/10 A
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-86105(P2016-86105)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-194905(P2017-194905A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】越智 誠
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−238190(JP,A)
【文献】 特開2015−141683(JP,A)
【文献】 特開2013−142954(JP,A)
【文献】 特開2013−089076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
23/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象施設に端末監視制御装置及び受信機が設置されると共に外部の施設にサーバが配置され、外部の無線ネットワークを介して前記端末監視制御装置と前記受信機が前記サーバに接続され、
前記端末監視制御装置は、内部の無線ネットワークを介して警戒区域に設置された無線式感知器と接続され、前記無線式感知器から送信された火災信号を受信した場合に、前記外部の無線ネットワークを介して前記火災信号を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記外部の無線ネットワークを介して前記端末監視制御装置から送信された前記火災信号を受信して所定の処理を行い、処理結果に基づき制御信号を前記外部の無線ネットワークを介して前記受信機に送信し、
前記受信機は、前記外部の無線ネットワークを介して前記サーバから送信された前記制御信号を受信して火災警報を出力する、
ことを特徴とする火災報知システム。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、前記外部の無線ネットワークは、前記端末監視制御装置及び前記受信機を、インターネットに通信接続させる無線LANネットワークとしたことを特徴とする火災報知システム。
【請求項3】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、前記外部の無線ネットワークは、前記端末監視制御装置及び前記受信機を、携帯電話端末の携帯電話網を経由してインターネットに通信接続させる無線LANネットワークとしたことを特徴とする火災報知システム。
【請求項4】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、前記端末監視制御装置及び前記受信機が前記外部の無線ネットワークを介して接続された前記サーバに加え、前記外部の無線ネットワークを介して接続可能な予備サーバを備え、
前記サーバは前記端末監視制御装置及び前記受信機の情報を前記予備サーバに転送して互いの情報を同期させており、前記サーバに障害が発生した場合、前記端末監視制御装置及び前記受信機を前記予備サーバとの接続に切り替えて処理を継続させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項5】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、
前記無線式感知器は、火災を検出した場合に固有のアドレスが設定された火災信号を送信し、
前記端末監視制御装置は、前記固有のアドレスが設定された火災信号を前記無線式感知器から受信して前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記火災信号に設定された前記固有のアドレスに基づいて火災発生場所を示す火災地区情報が設定された火災警報信号を生成して前記受信機に送信し、
前記受信機は前記サーバから受信した前記火災警報信号に設定された前記火災地区情報を表示させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項6】
請求項5記載の火災報知システムに於いて、
前記警戒区域に固有のアドレスが設定された無線式中継器が設置されると共に前記無線式中継器に接続された端末機器が設置され、
前記サーバは、前記火災発生場所に対応した無線式中継器のアドレスが設定された端末制御信号を前記端末監視制御装置に送信し、
前記端末監視制御装置は、前記サーバから送信された前記端末制御信号のアドレスが一致する前記無線式中継器に接続された前記端末機器を動作させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項7】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、
前記受信機は操作部を備え、前記操作部の操作による操作信号を、前記サーバを経由して前記端末監視制御装置に送信して動作させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項8】
請求項7記載の火災報知システムに於いて、
前記受信機は、前記操作部により地区音響の停止操作を行った場合に、前記サーバを経由して前記端末監視制御装置に地区音響停止信号を送信して地区音響装置の鳴動を停止させ、前記地区音響装置の停止中に、前記操作部により地区音響の再鳴動操作を行った場合に、前記サーバを経由して前記端末監視制御装置に地区音響鳴動信号を送信して前記地区音響装置を鳴動させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項9】
請求項7記載の火災報知システムに於いて、
前記受信機は、前記操作部により火災断定操作を行った場合に、前記サーバに火災断定信号を送信し、
前記サーバは、前記受信機から火災断定信号を受信した場合に、前記端末監視制御装置に所定の連動制御信号を送信して、所定の端末機器を動作させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項10】
請求項7記載の火災報知システムに於いて、
前記受信機は、前記操作部により復旧操作を行った場合に、前記サーバに復旧信号を送信し、
前記サーバは、前記受信機から復旧信号を受信した場合に、前記端末監視制御装置に所定の復旧信号を送信して動作中の端末機器を復旧させることを特徴とする火災報知システム。
【請求項11】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、
前記端末監視制御装置は、
前記無線式感知器から送信されたアドレスが設定された火災信号を前記サーバに送信する端末監視装置と、
前記サーバから送信された前記制御信号を受信してアドレスが一致する無線式中継器に送信し、当該無線式中継器に接続された端末機器を動作させる端末制御装置と、
に分離して配置されたことを特徴とする火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検出して警報する無線ネットワークを利用した火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災を監視する火災報知システムの受信機は建物内の防災センターや管理室などに設置されており、受信機から警戒区域に引き出された感知器回線に接続された火災感知器や発信機からの火災信号を受信することで、火災代表表示を行うと共に主音響を鳴動させ、また、受信機から引き出された制御回線に接続された地区音響装置を鳴動させ、更に、制御回線に接続された防火戸や防火シャッター等の連動制御を行う。
【0003】
このような火災報知システムの受信機にあっては、受信機に接続される火災感知器のアドレス、地区名、部署名、種別、回線番号、感度、蓄積時間、防排煙機器との連動関係等の所謂物件データを準備し、受信機に設けたEEPROM等の不揮発メモリに記憶して火災受信制御に利用している。
【0004】
また、無線式の火災報知システムとして、警戒区域に無線式感知器が配置されると共に受信機から引き出された感知器回線に受信用中継器が接続され、無線式感知器から無線送信された火災信号を受信用中継器で受信し、受信機から引き出された感知器回線に発報信号を送信し、受信機は受信用中継器から送信された発報信号を受信することで、火災警報を出力するようにしている。
【0005】
このような無線式の火災報知システムにあっては、警戒区域に感知器回線を引き出して火災感知器を接続する必要がなく、感知器回線が不要となることで、システム構成が簡単となり、設置が容易でコストも低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−189055号公報
【特許文献2】特開2009−087111号公報
【特許文献3】実用新案登録第3136363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の火災報知システムにあっては、受信機から引き出された回線に火災感知器や制御機器を接続しており、また、受信機に、警報部、操作部、表示部、プリンタ等の火災監視に必要な全ての操作表示機能を設けており、受信機の構成が複雑となり、また、監視対象となる施設の規模が大きくなると、受信機から引き出される配線ケーブルの本数が増加し、受信機の製造及び設置が煩雑になる問題がある。
【0008】
また、火災報知システムの運用中に、施設の改修やテナントの入れ替わり等に伴い物件データを変更する必要があるが、従来は受信機の設置場所に出向いて物件データを更新する必要があり、手間と時間がかかる問題もある。
【0009】
更に、火災報知システムによっては、受信機に副表示盤等を接続して別の場所で受信機による火災警報表示を見たい場合があるが、受信機から離れた場所の副表示盤に配線ケーブルを引いて接続する必要があり、設置工事に手間と時間がかかるといった問題もある。
【0010】
一方、無線式の火災報知システムにあっては、受信機と火災感知器との間の感知器回線を不要にできるが、それ以外の点は、通常の火災報知システムと同様の問題が残されている。
【0011】
本発明は、受信機構成を感知器や制御機器を監視制御する部分と、表示操作を行う部分に分け、両者をインターネット上のサーバと無線ネットワークにより接続して、システム構成を簡単にし、製造、設置、及び運用管理を容易にすることを可能とする火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(火災報知システム)
本発明は、火災報知システムに於いて、
監視対象施設に端末監視制御装置及び受信機が設置されると共に外部の施設にサーバが配置され、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続され、
端末監視制御装置は、内部の無線ネットワークを介して警戒区域に設置された無線式感知器と接続され、無線式感知器から送信された火災信号を受信した場合に、外部の無線ネットワークを介して火災信号をサーバに送信し、
サーバは、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置から送信された火災信号を受信して所定の処理を行い、処理結果に基づき制御信号を外部の無線ネットワークを介して受信機に送信し、
受信機は、外部の無線ネットワークを介してサーバから送信された制御信号を受信して火災警報を出力する、
ことを特徴とする。
【0013】
(無線LANネットワーク)
外部の無線ネットワークは、端末監視制御装置及び受信機をインターネットに通信接続させる無線LANネットワークとする。
【0014】
(携帯端末のテザリング)
外部の無線ネットワークは、端末監視制御装置及び受信機を、携帯電話端末の携帯電話網を経由してインターネットに通信接続させる無線LANネットワークとする。
【0015】
(サーバの多重化)
端末監視制御装置及び受信機が外部の無線ネットワークを介して接続されたサーバに加え、外部の無線ネットワークを介して接続可能な予備サーバを備え、
サーバは端末監視制御装置及び受信機の情報を予備サーバに転送して互いの情報を同期させており、サーバに障害が発生した場合、端末監視制御装置及び受信機を予備サーバとの接続に切り替えて処理を継続させる。
【0016】
(無線式感知器の火災信号)
無線式感知器は、火災を検出した場合に固有のアドレスが設定された火災信号を送信し、
端末監視制御装置は、固有のアドレスが設定された火災信号を無線式感知器から受信してサーバに送信し、
サーバは、火災信号に設定された固有のアドレスに基づいて火災発生場所を示す火災地区情報が設定された火災警報信号を生成して受信機に送信し、
受信機はサーバから受信した火災警報信号に設定された火災地区情報を表示させる。
【0017】
(端末機器の制御)
警戒区域に固有のアドレスが設定された無線式中継器が設置されると共に無線式中継器に接続された端末機器が設置され、
サーバは、火災発生場所に対応した所定の無線式中継器のアドレスが設定された端末制御信号を端末監視制御装置に送信し、
端末監視制御装置は、サーバから送信された端末制御信号のアドレスが一致する無線式中継器に接続された端末機器を動作させる。
【0018】
(受信機)
受信機は操作部を備え、操作部の操作による操作信号を、サーバを経由して端末監視制御装置に送信して動作させる。
【0019】
(地区音響停止操作と再鳴動操作)
受信機は、操作部により地区音響の停止操作を行った場合に、サーバを経由して端末監視制御装置に地区音響停止信号を送信して地区音響装置の鳴動を停止させ、地区音響装置の停止中に、操作部により地区音響の再鳴動操作を行った場合に、サーバを経由して端末監視制御装置に地区音響鳴動信号を送信して地区音響装置を鳴動させる。
【0020】
(火災断定操作)
受信機は、操作部により火災断定操作を行った場合に、サーバに火災断定信号を送信し、
サーバは、受信機から火災断定信号を受信した場合に、端末監視制御装置に所定の連動制御信号を送信して、所定の端末機器を動作させる。
【0021】
(復旧操作)
受信機は、操作部により復旧操作を行った場合に、サーバに復旧信号を送信し、
サーバは、受信機から復旧信号を受信した場合に、端末監視制御装置に所定の復旧信号を送信して、火災を検出した無線式感知器及び動作中の端末機器を復旧させる。
【0022】
(端末監視装置と端末制御装置を分離)
端末監視制御装置は、
無線式感知器から送信されたアドレスが設定された火災信号をサーバに送信する端末監視装置と、
サーバから送信された制御信号を受信してアドレスが一致する無線式中継器に送信し、当該無線式中継器に接続された端末機器を動作させる端末制御装置と、
に分離される。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明は、火災報知システムに於いて、監視対象施設に端末監視制御装置及び受信機が設置されると共に外部の施設にサーバが配置され、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続され、端末監視制御装置は、内部の無線ネットワークを介して警戒区域に設置された無線式感知器と接続され、無線式感知器から送信された火災信号を受信した場合に、外部の無線ネットワークを介して火災信号をサーバに送信し、サーバは、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置から送信された火災信号を受信して所定の処理を行い、処理結果に基づき制御信号を外部の無線ネットワークを介して受信機に送信し、受信機は、外部の無線ネットワークを介してサーバから送信された制御信号を受信して火災警報を出力するようにしたため、オフィスビル等の監視対象施設には、端末監視制御装置と受信機が別々に設置され、火災受信の制御処理機能は外部のサーバに設けられており、サーバに火災受信の制御処理機能を分散させたことで、監視対象施設に設置する設備機器を簡略化することができる。
【0024】
また、監視対象施設に設置する設備機器として、端末監視制御装置と受信機に分けて設置しており、端末監視制御装置には内部の無線ネットワークを介して無線式感知器が接続されており、端末監視制御装置と端末側との配線接続は不要であり、また、端末監視制御装置のサーバを経由した受信機と配線接続も、外部の無線ネットワークを使用することで不要であり、端末監視制御装置と受信機を一体化していた従来の火災受信機に比べ、端末監視制御装置及び受信機の構成が簡単となり、また相互間の配線接続が不要なため、トータル的に設備の設置作業が容易でコストの低減が可能となる。
【0025】
また、サーバに火災受信の制御処理機能を集約させたことで、感知器のアドレス、地区名、部署名、種別、回線番号、感度、蓄積時間、防排煙機器との連動関係等の物件データはサーバに記憶されて管理されており、施設の改修やテナントの入れ替わり等に伴い物件データを変更する場合、従来のように受信機の設置場所に出向いて物件データを更新する必要はなく、サーバにおいて物件データの更新が簡単にできる。
【0026】
(無線LANネットワークによる効果)
また、外部の無線ネットワークは、端末監視制御装置と受信機をインターネットに通信接続させる無線LANネットワーク、或いは、端末監視制御装置と受信機を、携帯電話端末の携帯電話網を経由してインターネットに通信接続させる無線LANネットワークとしたため、インターネットに接続している既設の無線LANネットワークを利用して簡単にサーバとの通信接続を確立することができ、また、地震等の災害により監視対象施設が被害を受けた場合にも、サーバとの通信接続が確保されている限り、火災報知システムとしての火災監視機能は維持することができ、災害等のトラブル発生に強い信頼性の高いシステムが構築可能となる。
【0027】
(サーバの多重化による効果)
また、端末監視制御装置と受信機が外部の無線ネットワークを介して接続されたサーバに加え、端末監視制御装置と受信機が外部の無線ネットワークを介して接続可能な予備サーバを備え、サーバは端末監視制御装置及び受信機の情報を予備サーバに転送して互いの情報を同期させており、サーバに障害が発生した場合、端末監視制御装置及び受信機を予備サーバとの接続に切り替えて処理を継続させるようにしたため、システム運用中に地震などの災害を受けてサーバがダウンした場合、異なる地域に設置されている予備サーバに切り替えることで、火災監視機能を継続して維持することができ、災害等のトラブル発生に強い、信頼性の高いシステムが構築可能となる。
【0028】
(無線式感知器の火災信号による効果)
また、無線式感知器は、火災を検出した場合に固有のアドレスが設定された火災信号を送信し、端末監視制御装置は、固有のアドレスが設定された火災信号を無線式感知器から受信してサーバに送信し、サーバは、火災信号に設定された固有のアドレスに基づいて火災発生場所を示す火災地区情報が設定された火災警報信号を生成して受信機に送信し、受信機はサーバから受信した火災警報信号に設定された火災地区情報を表示させるようにしたため、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続された火災報知システムについて、従来の火災報知システムによる火災監視と同等な動作を可能とする。
【0029】
(端末機器の制御による効果)
また、警戒区域に固有のアドレスが設定された無線式中継器が設置されると共に無線式中継器に接続された端末機器が設置され、サーバは、火災発生場所に対応した所定の無線式中継器のアドレスが設定された端末制御信号を端末監視制御装置に送信し、端末監視制御装置は、サーバから送信された端末制御信号のアドレスが一致する無線式中継器に接続された端末機器を動作させるようにしたため、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続された火災報知システムについて、従来の火災報知システムの端末制御と同等な動作を可能とする。
【0030】
(受信機による効果)
また、受信機は操作部を備え、操作部の操作による操作信号を、サーバを経由して端末監視制御装置に送信して動作させるようにしたため、サーバや端末監視制御装置の分散配置を意識させることなく、受信機の操作部により必要な操作が可能となる。
【0031】
(地区音響停止操作と再鳴動操作による効果)
また、受信機は、操作部により地区音響の停止操作を行った場合に、サーバを経由して端末監視制御装置に地区音響停止信号を送信して地区音響装置の鳴動を停止させ、地区音響装置の停止中に、操作部により地区音響の再鳴動操作を行った場合に、サーバを経由して端末監視制御装置に地区音響鳴動信号を送信して地区音響装置を鳴動させるようにしたため、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続された火災警報システムについて、受信機で火災警報が出力された場合に防災担当者が行う現場確認に先立って行う地区音響の一時停止ができ、また、現場に出向いて火災を確認した場合の地区音響の再鳴動ができる。
【0032】
(火災断定操作による効果)
また、受信機は、操作部により火災断定操作を行った場合に、サーバに火災断定信号を送信し、サーバは、受信機から火災断定信号を受信した場合に、端末監視制御装置に所定の連動制御信号を送信して、所定の端末機器を動作させるようにしたため、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続された火災報知システムについて、受信機からの火災警報の出力に対し防災管理者が現場に出向いて火災を確認した場合の火災断定操作に対し、自動的に連動停止を解除して防火戸や防排煙機器等の端末機器の連動制御を可能とする。
【0033】
(復旧操作による効果)
また、受信機は、操作部により復旧操作を行った場合に、サーバに復旧信号を送信し、サーバは、受信機から復旧信号を受信した場合に、端末監視制御装置に所定の復旧信号を送信して、火災を検出した無線式感知器及び動作中の制御機器を復旧させるようにしたため、外部の無線ネットワークを介して端末監視制御装置と受信機がサーバに接続された火災報知システムについて、火災が鎮火した場合に受信機で復旧操作を行うことで、端末監視制御装置及び動作中の火災感知器や制御機器を復旧させて、通常の監視状態に戻すことを可能とする。
【0034】
(端末監視装置と端末制御装置の分離による効果)
また、端末監視制御装置は、無線式感知器から送信されたアドレスが設定された火災信号をサーバに送信する端末監視装置と、サーバから送信された制御信号を受信してアドレスが一致する無線式中継器に送信し、当該無線式中継器に接続された端末機器を動作させる端末制御装置とに分離させるようにしたため、相互に影響されることなくセンサ系の機器と制御系の設備機器の配置が可能となり、設備構成を更に簡単にし、また設備構成の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】無線ネットワークを利用した火災報知システムの概要を示した説明図
図2図1の端末監視制御装置、受信機およびサーバの機能構成を示したブロック図
図3】火災報知システムの動作を示したタイムチャート
図4】ビルに対する火災報知システムの設置例を示した説明図
図5】予備サーバを設けた火災報知システムの概要を示した説明図
図6】携帯端末のテザリングによる無線LANネットワークを用いた火災報知システムの概要を示した説明図
図7】端末監視装置と端末制御装置に分離した火災報知システムを示した説明図
図8図7の端末監視装置、端末制御装置、受信機およびサーバの機能構成を示したブロック図
図9】端末制御装置から伝送路を引き出して制御機器を接続した火災報知システムを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
[火災報知システム]
(火災報知システムの概要)
図1は火災報知システムの概要を示した説明図である。図1に示すように、本実施形態の火災報知システムは、端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15がオフィスビル等の監視対象施設11に設置され、サーバ26が製造メーカや保守管理会社等の別の場所に設置される。なお、副表示盤15は必要に応じて設けられており、必ずしも設ける必要はない。
【0037】
監視対象施設11に設置された端末監視制御装置10及び受信機12は、外部の無線ネットワークとして機能するアクセスポイント22を備えた無線LANネットワーク20及びインターネット24を介してサーバ26と通信可能に接続されている。また、監視対象施設11に設置された副表示盤15も、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介してサーバ26と通信可能に接続されている。
【0038】
端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15は、無線LANネットワーク20のステーションとして機能し、アクセスポイント22を通じてインターネット24との通信接続を可能とする。
【0039】
端末監視制御装置10が監視対象とする警戒区域には、複数の無線式感知器14が設置され、また、無線式中継器16に接続された端末機器として地区音響装置18が設置されている。無線式感知器14及び無線式中継器16には固有のアドレスが設定されており、端末監視制御装置10には、自己に割り当てられた無線式感知器14及び無線式中継器16のアドレスが予め登録されている。
【0040】
無線式感知器14及び無線式中継器16は例えば電池電源で動作する。また、地区音響装置18は商用交流電源で動作する電源装置からの電源線に接続されて動作する。
【0041】
無線式感知器14は火災による煙濃度または温度が所定の閾値を超えた場合に、火災発報と判断し、自己のアドレスが設定された火災信号を間欠的に無線送信する。なお、端末監視制御装置10に対し距離が離れている無線式感知器14や無線式中継器16との無線通信における電波の減衰による信号の不到達を防ぐために電波中継器を設置する場合がある。
【0042】
無線式感知器14から無線送信された火災信号は端末監視制御装置10で受信される。この場合、端末監視制御装置10は、受信された火災信号に設定されている感知器アドレスを予め登録した感知器アドレスと比較し、両者が一致したときに有効な火災信号として処理し、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介してサーバ26に感知器アドレスが設定された火災信号を送信する。
【0043】
サーバ26は、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して端末監視制御装置10から火災信号を受信した場合、火災信号に設定されているアドレスから予め記憶している物件データを参照して火災発生場所を示す火災地区情報を取得し、この火災地区情報が設定された火災警報信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して受信機12及び副表示盤15へ送信する。
【0044】
サーバ26からの火災警報信号を受信した受信機12は、火災発生場所を示す火災地区表示を伴う火災警報を出力する。副表示盤15も受信機12と同じ火災発生場所を示す火災地区表示を伴う火災警報を出力する。
【0045】
また、サーバ26は、端末監視制御装置10からの火災信号を受信すると、火災発生場所を示す火災地区情報に対応した1又は複数の地区音響装置18が接続された無線式中継器16のアドレスが設定された地区音響制御信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して端末監視制御装置10に送信し、端末監視制御装置10から受信した中継器アドレスが設定された地区音響制御信号が送信され、アドレスが一致した無線式中継器16に接続している地区音響装置18を鳴動させる。
【0046】
ここで、端末監視制御装置10、無線式感知器14及び無線式中継器16は、監視対象施設内の警戒区域に内部無線ネットワークを構築しており、無線式感知器14及び無線式中継器16と端末監視制御装置10との間の無線通信は、日本国内の場合には例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行っており、426.2500MHz〜426.8375MHzの12.5KHzの帯域を持つ48チャンネルの何れか1つを選択して使用するチャンネル周波数を設定する。
【0047】
この場合、チャンネル周波数は各階で同じにしても良いし、混信を避けるために例えば隣接する階では異なるチャンネル周波数を使用しても良い。この内部無線ネットワークを、以下の説明では、火報無線ネットワークという。
【0048】
[火災報知システムの機能構成]
図2図1の端末監視制御装置、受信機およびサーバの機能構成を示したブロック図である。
【0049】
(端末監視制御装置)
図2に示すように、端末監視制御装置10は、端末制御部28、アンテナ32が接続された無線火報通信部30、アンテナ36が接続された無線LAN通信部34を備える。端末制御部28は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成されており、プログラムの実行により無線火報通信部30と連携して無線式感知器14や地区音響装置18が接続された無線式中継器16との間で火報無線ネットワークのプロトコルに従った通信制御を行う。
【0050】
端末制御部28は、無線式感知器14からの火災信号を受信した場合、火災信号に設定されている火災を検出した無線式感知器14の感知器アドレスを認識し、この感知器アドレスが設定された火災信号の送信を無線LAN通信部34に指示し、無線LANネットワーク20及びインターネット24を経由してサーバ26へ送信させる制御を行う。
【0051】
また、端末制御部28は、サーバ26から中継器アドレスが設定された制御信号を受信した場合、この制御信号に設定された中継器アドレスを指定した制御信号の送信を無線火報通信部30に指示して無線送信させ、自身のアドレスと一致した無線式中継器16に接続されている地区音響装置18を動作させる制御を行う。
【0052】
なお、端末監視制御装置10には、商用交流電源から直流電源を生成して各部に供給している電源部に加え、予備電源部が設けられており、予備電源部はバッテリーを備え、通常時は、電源部からの電源供給を受けてバッテリーを充電しており、商用交流電源が停電した場合に予備電源部はバッテリーからの電源供給に切替え、規格上定められた所定時間以上の予備電源供給を維持可能としている。
【0053】
(受信機)
図2に示すように、受信機12は、受信機制御部38、アンテナ42が接続された無線LAN通信部40、警報部44、表示部46、操作部48を備える。
【0054】
受信機制御部38は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により火災監視に必要な警報、表示、操作に伴う制御を、無線LAN通信部40と連携して行う。
【0055】
警報部44にはスピーカが設けられ、火災警報としての音響警報や音声メッセージを出力させる。
【0056】
表示部46には、火災代表灯、障害代表灯等が設けられ、また、タッチパネル付きのディスプレイが設けられ、更に、プリンタが設けられている。
【0057】
操作部48には、音響停止スイッチ、火災断定スイッチ、地区音響一時停止スイッチ、復旧スイッチ等の各種の操作スイッチが設けられている。
【0058】
無線LAN通信部40は無線LANネットワーク20のステーションとして機能し、アクセスポイント22から無線LANネットワーク20及びインターネット24を経由してサーバ26に通信接続され、各種の信号の送受信を行う。
【0059】
アクセスポイント22に通信接続する端末監視制御装置10の無線LAN通信部34には、アクセスポイントの識別子であるESS−ID(Extended Service Set Identifier)が予め設定登録されており。これによりアクセスポイント22は設定登録されている識別子ESS−IDの端末としか通信しないようにすることができる。
【0060】
アクセスポイント22とそのステーションとなる端末監視制御装置10の無線LAN通信部34との間の通信接続を行うアクセスポイント制御機能は、パッシブスキャン方式とアクティブスキャン方式に大別される。
【0061】
パッシブスキャン方式は、アクセスポイント22が定期的にブロードキャストするビーコンフレームを端末監視制御装置10の無線LAN通信部34で受信し、端末監視制御装置10の無線LAN通信部34は予め設定登録しているアクセスポイント22の識別子ESS−IDが、接続しようとしているアクセスポイントの識別子ESS−IDと同じかどうかを問い合わせるプローブ要求フレームを送信する。アクセスポイント22はプローブ要求フレームにより受信した識別子ESS−IDが自己の識別子ESS−IDと同じであればプローブ応答フレームを返送し、端末監視制御装置10の無線LAN通信部34はこれを受信して、アクセスポイント22の識別子ESS−IDが設定登録しているものと同じ識別子であることを確認する。
【0062】
続いて端末監視制御装置10の無線LAN通信部34とアクセスポイント22の間で、予め設定した認証方式を使って認証を行い、認証に成功すると、端末監視制御装置10の無線LAN通信部34からアクセスポイント22へ接続要求としてアソシエーション要求フレームを送信し、アクセスポイント22が許可応答としてアソシエーション応答フレームを返送すると接続が完了し、パケット信号の通信を行う。
【0063】
アクティブスキャン方式は、端末監視制御装置10の無線LAN通信部34でアクセスポイント22からのビーコンフレームを一定時間にわたり受信できなかった場合に、端末監視制御装置10の無線LAN通信部34が接続を行いたい識別子ESS−IDの情報をプローブ要求フレームにより送信し、アクセスポイント22からプローブ応答フレームが得られれば、パッシブスキャン方式と同様に、認証、アソシエーション要求と応答に移行し、接続を完了し、パケット信号の通信を行う。
【0064】
受信機制御部38は、サーバ26から火災地区情報が設定された火災警報信号を受信した場合、警報部44のスピーカの鳴動により音響警報を出力させると共に、表示部46の代表火災灯を点滅させ、更に、ディスプレイに火災警報情報と共に火災発生場所を示す火災地区情報を表示させる制御を行う。
【0065】
また、受信機制御部38は、火災警報の出力中に、操作部48に設けられた音響停止スイッチの操作を検出した場合に、警報部44からの音響警報を停止させる制御を行う。
【0066】
また、受信機制御部38は、火災警報の出力中に、操作部48に設けられた火災断定スイッチの操作を検出した場合に、無線LAN通信部40に指示して、火災断定信号をサーバ26へ送信させる制御を行い、サーバ26からの端末監視制御装置10に対する指示で、連動制御や移報制御を行わせる。
【0067】
また、受信機制御部38は、火災警報の出力中に、操作部48に設けられた地区音響一時停止スイッチの操作を検出した場合は、無線LAN通信部40に指示して、地区音響一時停止信号をサーバ26へ送信させる制御を行い、サーバ26からの端末監視制御装置10に対する指示で、地区音響を一時停止させる。
【0068】
また、受信機制御部38は、火災警報を出力した後に、操作部48に設けられた復旧スイッチの操作を検出した場合は、無線LAN通信部40に指示して、復旧信号をサーバ26へ送信させる制御を行い、サーバ26を復旧させると共にサーバ26からの端末監視制御装置10に対する復旧信号の送信により、無線式感知器14や動作中の無線式中継器16に接続された動作中の地区音響装置18を復旧させる。
【0069】
なお、受信機12には、商用交流電源から直流電源を生成して各部に供給している電源部に加え、予備電源部が設けられ、予備電源部はバッテリーを備え、通常時は、電源部からの電源供給を受けてバッテリーを充電しており、商用交流電源が停電した場合に予備電源部はバッテリーからの電源供給に切替え、規格上定められた所定時間以上の予備電源供給を維持可能としている。
【0070】
また、図1に示した副表示盤15は、図2に示した受信機12から操作部48を除いたと同じ機能構成であり、受信機12の火災警報表示と同じ表示を行う。
【0071】
(サーバ)
図2に示すように、サーバ26は、サーバ制御部50、通信部52、表示部54、操作部56及びデータベース58を備える。
【0072】
サーバ制御部50は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により火災監視に必要な各種の処理制御を行う。通信部52は、サーバ制御部50側のTCP信号(トランスミッション・コントロール・プロトコル信号)とインターネット24側のIP信号(インターネット・プロトコル信号)とのプロトコル変換を伴う信号の送受信を行う。表示部54はコンピュータのディスプレイであり、操作部56はコンピュータのキーボード、マウス等の入力機器である。
【0073】
データベース58には、端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15が設置された火災報知システムの物件データが予め記憶されている。データベース58に保存された物件データは、端末監視制御装置10に接続される無線式感知器14や無線式中継器16のアドレス、地区名、部署名、種別、回線番号、感度、蓄積時間、防排煙機器との連動関係等のデータが含まれている。
【0074】
サーバ制御部50は、火災報知システムにおける火災監視制御の中枢として機能し、次の制御を行う。
【0075】
サーバ制御部50は、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して端末監視制御装置10から送信されたアドレスが設定された火災信号を受信した場合、データベース58の物件データを参照してアドレスに対応した地区名等の火災発生場所を示す火災地区情報を取得し、この火災地区情報が設定された火災警報信号を、インターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して受信機12に送信する制御を行い、受信機12に火災地区情報が特定された火災警報を出力させる。なお、サーバ26からの火災警報信号は副表示盤15にも送信されるが、以下の説明では省略する。
【0076】
また、サーバ制御部50は、火災警報信号を送信した後に、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して受信機12から地区音響一時停止信号を受信した場合、地区音響停止信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して端末監視制御装置10に送信して無線式中継器16に接続された鳴動中の地区音響装置18を停止させ、所定時間後に、地区音響制御信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して端末監視制御装置10に送信して地区音響装置18を再鳴動させる制御を行う。
【0077】
また、サーバ制御部50は、火災警報信号を送信した後に、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して受信機12から火災断定信号を受信した場合、連動制御信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して端末監視制御装置10に送信し、図示していない無線式中継器に接続された端末機器の連動制御を行う。
【0078】
また、サーバ制御部50は、火災警報信号を送信した後に、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して受信機12から復旧信号を受信した場合、サーバ26自身の火災処理制御を復旧させると共に、復旧信号をインターネット24及び無線LANネットワーク20を経由して端末監視制御装置10に送信し、動作中の無線式感知器14や無線式中継器16に接続された端末機器を復旧させる制御を行う。
【0079】
また、サーバ制御部50は、通常監視状態で、無線LANネットワーク20及びインターネット24を介して端末監視制御装置10から送信された障害信号を受信した場合、データベース58に格納されている障害の原因や対処を示す障害情報を取得し、この障害情報が設定された障害信号を、インターネット24及び無線LANネットワーク20を介して受信機12に送信し、警報部44から障害警報音を出力させると共に、表示部46の障害代表灯を点滅させ、障害情報をディスプレイに表示させる制御を行う。
【0080】
(定期通報試験)
図1及び図2に示した火災報知システムにあっては、システムに設けられた無線ネットワークによる通信接続を保証するため、定期通報試験を行っている。この定期通報試験は、内部の無線ネットワークとなる端末監視制御装置10と無線式感知器14及び無線式中継器16との間の内部定期通報試験と、外部の無線ネットワークとなる端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15とサーバ26との間の外部定期通報試験に分けられる。
【0081】
内部定期通報試験は、無線式感知器14及び無線式中継器16が所定周期毎に自己のアドレスが設定された定期通報信号を送信し、これを端末監視制御装置10で受信し、所定回数に亘り連続して定期通報信号が受信できなかった場合に通信障害と判断し、サーバ26に通信障害の発生を通知して報知させ、また、サーバ26から受信機12及び副表示盤15に無線式感知器14又は無線式中継器16の通信障害を通知して警報表示させる。
【0082】
外部定期通報試験は、端末監視制御装置10が例えば試験火災信号をサーバ26に送信し、試験火災信号を受信したサーバ26は受信機12及び副表示盤15に試験火災警報信号を送信すると共に、端末監視制御装置10に試験端末制御信号を送信する。
【0083】
サーバ26は端末監視制御装置10から所定回数に亘り連続して試験火災信号ができなかった場合に無線LANネットワーク20とインターネット24を経由した外部の無線ネットワークの通信障害と判断し、サーバ26自身で通信障害の発生を報知し、また、可能な場合は、サーバ26から受信機12及び副表示盤15に外部の無線ネットワークの通信障害を通知して警報表示させる。
【0084】
また、端末監視制御装置10が試験火災信号の送信に対し所定回数に亘り連続して試験端末制御信号ができなかった場合にも、無線LANネットワーク20とインターネット24を経由した外部の無線ネットワークの通信障害と判断し、端末監視制御装置10で通信障害を警報表示させ、可能であれば、端末監視制御装置10からサーバ26に通信障害の発生を通知して報知させ、また、サーバ26から受信機12及び副表示盤15に外部の無線ネットワークの通信障害を通知して警報表示させる。
【0085】
このような定期通報試験により、内部の無線ネットワークとなる端末監視制御装置10と無線式感知器14及び無線式中継器16との間の通信接続と、外部の無線ネットワークとなる端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15とサーバ26との間の通信接続が常に監視されており、通信障害の発生に対し迅速に対応可能とし、無線ネットワークを利用した火災報知システムの信頼性を確保可能としている。
【0086】
(火災報知システムの制御動作)
図3は火災報知システムの動作を示したタイムチャートである。図3に示すように、端末監視制御装置10はステップS1で警戒区域に設置された無線式感知器14の火災検出に基づく火災発報の有無を監視しており、無線式感知器14から火災信号を受信して火災発報を判別するとステップS2に進み、火災発報した無線式感知器14のアドレスが設定された火災信号をサーバ26に送信する。
【0087】
サーバ26は端末監視制御装置10からの火災信号を受信すると、ステップS3で火災信号に設定されているアドレスによりデータベース58の物件データを検索して火災発生場所を示す火災地区情報を取得し、この火災地区情報が設定された火災警報信号を受信機12に送信する。サーバ26からの火災警報信号を受信した受信機12は、ステップS4で警報音と表示により火災警報を出力させる。
【0088】
また、サーバ26はステップS5で端末監視制御装置10から受信した火災信号に基づき、データベース58の物件情報から取得した発報感知器のアドレスに対応した地区音響装置18が接続された無線式中継器16のアドレスを取得し、このアドレスが設定された地区音響制御信号を端末監視制御装置10に送信する。
【0089】
サーバ26からの地区音響制御信号を受信した端末監視制御装置10は、ステップS6で地区音響制御信号を送信し、アドレスが一致した無線式中継器16に接続されている地区音響装置18を鳴動させる。
【0090】
ステップS4で受信機12から出力された火災警報に対応し、防災管理者は受信機12の操作部48に設けられている音響停止スイッチを操作することから、受信機12はステップS7で音響停止操作を判別し、ステップS8で音響警報を停止させる。
【0091】
続いて、防災担当者は火災現場に出向いて火災の有無を確認し、火災を確認した場合は、受信機12の操作部48に設けられている火災断定スイッチを操作する。このため受信機12は、ステップS9で火災断定操作を判別するとステップS10に進み、火災断定信号をサーバ26に送信する。
【0092】
受信機12からの火災断定信号を受信したサーバ26は、ステップS11で火災断定に基づき、火災発報に対応した地区音響装置18が接続された無線式中継器16のアドレスが設定された連動制御信号を端末監視制御装置10に送信する。端末監視制御装置10はサーバ26から連動制御信号を受信するとステップS12に進み、受信したアドレスが設定された連動制御信号を送信し、アドレスが一致した無線式中継器16に接続されている地区音響鳴動装置18を鳴動させる。
【0093】
その後、消防活動により火災が鎮火した場合、防災担当者は、受信機12の操作部48に設けられている復旧スイッチを操作し、受信機12はステップ13で復旧操作を判別し、ステップS14で復旧信号をサーバ26に送信する。
【0094】
受信機12からの復旧信号を受信したサーバ26は、ステップS15でサーバ26自身の火災制御処理を復旧させると共に、復旧信号を端末監視制御装置10に送信し、これを受信した端末監視制御装置10は動作中の無線式感知器14や無線式中継器16に接続された地区音響装置18を復旧させ、火災発生前と同じ通常監視状態とする。
【0095】
[火災報知システムのメリット]
このような火災報知システムによれば、オフィスビル等の監視対象施設11には、端末監視制御装置10と受信機12が設置され、火災受信の制御処理機能は外部のサーバ26に設けられており、サーバ26に火災受信の制御処理機能を分散させたことで、監視対象施設11に設置する設備機器を簡略化することができる。
【0096】
また、監視対象施設11に設置する設備機器を、端末監視制御装置10と受信機12に分けて設置しており、端末監視制御装置10側に内部の無線火報ネットワークを介して無線式感知器14や地区音響装置18等の制御機器が接続された無線式中継器16を含む設備機器を集約させ、受信機12には警報、表示、操作といった利用者に対する入出力機能を集約させることで、端末監視制御装置10と受信機12を一体化していた従来の受信機に比べ、端末監視制御装置10及び受信機12の構成が簡単となり、監視対象施設11に対するシステム機器の設置作業は、端末監視制御装置10、無線式感知器14、無線式中継器16及び受信機12の設置作業が主なものとなり、端末監視制御装置10に対する感知器や端末機器と配線接続、及び、端末監視制御機器10と受信機12との間の配線接続は不要となり、設備の設置作業が簡単且つ容易となる。
【0097】
また、サーバ26に火災受信の制御処理機能を集約させたことで、感知器のアドレス、地区名、部署名、種別、回線番号、感度、蓄積時間、防排煙機器との連動関係等の物件データはサーバ26に保存されて管理されており、施設の改修やテナントの入れ替わり等に伴い物件データを変更する場合、従来のように受信機の設置場所に出向いて物件データを更新する必要はなく、サーバ26において物件データの更新が簡単にできる。
【0098】
[ビルに設置された火災報知システム]
図4はビルに対する火災報知システムの設置例を示した説明図である。図4に示すように、監視対象施設となるビル等の建物13はn階建てであり、各階には、端末監視制御装置10が設置され、また、同じ階の警戒区域に複数の無線式感知器14と、例えば地区音響装置18が接続された無線式中継器16が配置され、内部の無線ネットワークとなる無線火報ネットワークにより通信接続を可能としている。
【0099】
各階に設置された端末監視制御装置10は、図1に示したアクセスポイント22を備えた無線LANネットワーク20を介してインターネット24上のサーバ26に通信接続可能とされている。
【0100】
建物13の1Fの防災センターや管理人室等には受信機12が設置され、図1に示したアクセスポイント22を備えた無線LANネットワーク20を介してインターネット24上のサーバ26に通信接続可能とされている。
【0101】
ここで、各階に設置された端末監視制御装置10、無線式感知器14及び無線式中継器16が使用する無線火報ネットワークのチャンネル周波数は、階毎に異なったチャンネル周波数に設定されており、階毎に独立した無線火報ネットワークが構築されている。
【0102】
[サーバの多重化]
図5は予備サーバを設けた火災報知システムの概要を示した説明図であり、図1の実施形態に加え、インターネット24に対し更に2台の予備サーバ26a,26bを接続してサーバを多重化している。
【0103】
予備サーバ26a,26bは、図2に示したメインのサーバ26と基本的に同じ構成と機能を備え、メインのサーバ26が例えば製造元の東京本社に設置されているのに対し、予備サーバ26a,26bは地域的に離れた例えば大阪支社や仙台支社に設置されている。
【0104】
火災報知システムの運用中に、メインのサーバ26のデータベースに保存している物件情報や履歴情報が変更された場合、この変更された情報は、略リアルタイムで予備サーバ26a,26bに送信され、データベースを更新させることで、互いの情報を同期させている。
【0105】
サーバを多重化した図5の火災報知システムにあっては、例えば、メインのサーバ26が設置された地域が地震等の災害に見舞われ、サーバ26がダウンして機能しなくなった場合、端末監視制御装置10及び受信機12の接続先を正常に機能している予備サーバ26a,26bの何れかに切り替えることで、火災監視を継続することができ、災害に強いシステムを構築可能とする。
【0106】
[携帯端末を使用した火災報知システム]
図6は携帯電話端末のテザリングによる無線LANネットワークを用いた火災報知システムの概要を示した説明図である。
【0107】
図6に示すように、本実施形態は、端末監視制御装置10及び受信機12が配置される監視対象施設11には、無線LANネットワークのアクセスポイント機能に相当するテザリング機能を備えた携帯電話端末60が配置されており、端末監視制御装置10及び受信機12は携帯電話端末60から基地局64を備えた携帯電話ネットワーク62を介してインターネット24上のサーバ26に通信接続可能としている。
【0108】
携帯電話端末60は例えば第3世代移動通信システム(3G)として知られたW−CDMAにより携帯電話通信を行うスマートフォンであり、無線LAN通信部を備えており、無線LAN通信部はイーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した無線通信を行い、図2の端末監視制御装置10及び受信機12に設けられた無線LAN通信部34,40との間に無線LAN回線を確立してデータ伝送を行う。
【0109】
このように携帯電話端末60のテザリング機能を利用してインターネット24上のサーバ26と通信接続することで、例えば、無線LANネットワークのサービスエリアに入っていない監視対象施設であっても、携帯電話ネットワーク62のサービスエリアに入っていれば、確実にインターネット24上のサーバ26のと間に通信接続を確立して火災報知システムを構築することができる。
【0110】
[端末監視と端末制御を分離した火災報知システム]
(無線ネットワーク)
図7は端末監視装置と端末制御装置に分離した火災報知システムを示した説明図、図8図7の端末監視装置、端末制御装置、受信機およびサーバの機能構成を示したブロック図である。
【0111】
図7に示すように、本実施形態にあっては、監視対象施設11に配置された無線式感知器14に対し端末監視装置10aが配置され、また、地区音響装置18が接続された無線式中継器16に対し端末制御装置10bが配置されており、図1に示した端末監視制御装置10を端末監視装置10aと端末制御装置10bとに分離したシステムに相当する。
【0112】
端末監視装置10aは、図8に示すように、端末制御部28a、アンテナ32aが接続された無線火報通信部30a、アンテナ36aが接続された無線LAN通信部34aを備え、無線式感知器14からの無線火報プロトコルに従って感知器アドレスが設定された火災信号を無線火報受信部36aで受信し、端末制御部28aで無線LANプロトコルに従った火災信号に変換し、無線LAN通信部34aから無線LANネットワーク20及びインターネット24を経由してサーバ26に火災信号を送信する。
【0113】
また、端末制御装置10bは、端末制御部28b、アンテナ32bが接続された無線火報通信部30b、アンテナ36bが接続された無線LAN通信部34bを備え、サーバ26から送信された端末制御信号をインターネット24及び無線LANインターネット20を経由して無線LAN通信部34bで受信し、端末制御部28bで無線火報プロトコルの端末制御信号に変換し、無線火報通信部30から無線式中継器18に端末制御信号を送信し、アドレス一致が得られた無線式中継器18に接続されている地区音響装置18を鳴動させる。
【0114】
このように監視対象施設11に、無線式感知器14が通信接続されるセンサ系の端末監視装置10aと、地区音響装置18などの端末機器が通信接続される制御系の端末制御装置10bとが分離して配置されることで、両者を一体化して図1に示したように端末監視制御装置10とした場合に比べ、装置構成が簡単となり、また、端末制御装置10bについては、端末機器の種別に応じた専用装置としての設置が可能となり、システム構成の自由度を高めることができる。
【0115】
(制御端末の有線化)
図9は端末制御装置から伝送路を引き出して制御機器を接続した火災報知システムを示した説明図である。
【0116】
図9に示すように、本実施形態も図7の実施形態と同様に、監視対象施設11に端末監視装置10aと端末制御装置10bを分離配置しているが、更に、端末制御装置10bについては、警戒区域に伝送路70を引き出し、固有のアドレスが設定された中継器72を介して端末機器として、例えば地区音響装置18が接続されている。それ以外の構成及び機能は図7の実施形態と同様である。
【0117】
ここで、伝送路70は伝送回線と電源回線で構成されており、端末制御装置10bと中継器72を所定の有線火報プロトコルで通信接続すると共に、中継器72及び地区音響装置18に電源を供給している。
【0118】
端末制御装置10bと中継器72を通信接続する有線火報プロトコルは、端末制御装置10bから中継器72に対する下り信号は電圧モードの伝送であり、伝送路70の電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。これに対し中継器72からの上り信号は電流モードの伝送であり、伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が伝送される。
【0119】
このように端末制御装置10bに対し伝送路70により中継器72を介して例えば地区音響装置18などの端末機器を有線接続することで、端末機器に対する動作電源の供給を端末制御装置10bから行うことができ、端末機器毎に動作電源を準備する必要がなく、更に、地区音響装置18以外に防火戸や防排煙機器等の適宜の端末機器の連動制御を簡単且つ確実に行うことが可能となる。
【0120】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、監視対象施設に設置された端末監視制御装置10、受信機12及び副表示盤15とインターネット上のサーバ26との無線回線を利用した通信接続として、無線LANネットワークや携帯電話ネットワークを利用しているが、これに限定されることなく、適宜の無線ネットワークを利用できる。
【0121】
また、インターネットに接続可能な無線ネットワークとして、複数の無線ネットワークを準備し、通信障害や通信速度の低下が発生した場合に、別の無線ネットワークに切替えるようにしても良い。
【0122】
また、上記の実施形態におけるインターネット、サーバ、データベースを含む構成は、クラウドコンピューティングとしても良い。クラウドコンピューティングは、ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービスなどの構成可能なコンピューティングリソースの共用プールに対して、便利かつオンデマンドにアクセスできる。
【0123】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0124】
10:端末監視制御装置
11:監視対象施設
12:受信機
14:無線式感知器
15:副表示盤
16:無線式中継器
18:地区音響装置
20:無線LANネットワーク
22:アクセスポイント
24:インターネット
26:サーバ
26a,26b:予備サーバ
28,28a,28b:端末制御部
30,30a,30b:無線火報通信部
34,34a,34b,40:無線LAN通信部
38:受信機制御部
44:警報部
46:表示部
48:操作部
50:サーバ制御部
58:データベース
60:携帯電話端末
62:携帯電話ネットワーク
64:基地局
70:伝送路
72:中継器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9