(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された防災装置は、火災信号が発信された後の復旧作業において、枠部材を取り外して保護板を取り出し、保護板を再度枠部材に装着して、枠部材を取り付ける必要がある。このように、特許文献1は、復旧時の作業が煩雑である。
なお、保護板は、発信機が押下されたことが目視で分かるように、外れたり、破れたりする等、押下される前とは、状態が変化することが求められている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたもので、復旧時の作業が簡易な発信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発信機は、前面に本体開口が形成され、本体開口と連通する中空部が形成された本体部と、本体部の本体開口に取り付けられた枠部と、中空部に収納され、押し釦が押下されることによって火災信号を発信する押下式スイッチと、中空部において押し釦の前方に配置されて本体部の本体開口を遮蔽して押し釦を保護すると共に、押し釦と共に押下される保護部と、を備え、枠部及び保護部の少なくとも一方は磁性体を有し、保護部は、磁力によって枠部に着脱自在に取り付けられており、押し釦側に押下されることによって、枠部から取り外されるものであ
り、保護部は、枠部側の面に、指を掛ける指掛け部を有し、保護部と押し釦とは、近接して配置されており、押し釦側に押下されて枠部から取り外されているときに、押し釦の前面に沿ってスライドさせることで、磁力により枠部に取り付け可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護部は、磁力によって枠部に取り付けられている。このため、保護部が押し釦側に押下されて本体部内に落下しても、枠部の外側から保護部を動かすだけで、磁力によって保護部が枠部に再び取り付けられる。よって、復旧時に、枠部を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1における防災設備2を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す側面断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における枠部23及び保護部26を示す側面断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明に係る発信機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施の形態1における防災設備2を示す模式図である。この
図1に基づいて、防災設備2について説明する。
図1に示すように、防災設備2は、例えばトンネルの内部に設置されるものであり、筐体3と、扉4と、発信機1とを有している。筐体3は、例えば直方体状をなしており、内部に消火器又は消火栓等が設置されている。扉4は、筐体3の前面に取り付けられており、人が取っ手4aを引いて扉4を開くことによって、筐体3の内部に設置された消火器又は消火栓等を使用することができる。発信機1は、筐体3の前面において扉4の隣に設けられている。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す正面図である。
図2に示すように、発信機1は、例えば火災を発見した人によって押下されると、管理室等に設置された防災盤に火災信号を発信する。発信機1は、円状をなしており、防災設備2の筐体3に取り付けられている。発信機1の外周に配置された化粧板27には、周状に形成された4個の取付穴27aが設けられている。防災設備2の筐体3において、発信機1が取り付けられる位置の裏面側には、4個のボルト(図示せず)が周状に溶接されており、発信機1が筐体3の内部から筐体3に取り付けられる際、化粧板27の取付穴27aにボルトが挿入され、ナット(図示せず)で固定される。これにより、発信機1が筐体3に取り付けられる。なお、発信機1の中央に配置された保護部26には「強く押す」といった文字が記載されている。
【0011】
図3は、本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す側面断面図である。発信機1は、後方側の発信部11と前方側の操作部21と、発信部11と操作部21とにより格納された押下式スイッチ5とを有している。
押下式スイッチ5は、防災盤等と電気的に接続するための端子部28を有するスイッチ部14と、押下することでスイッチ部14のオン又はオフを切り替える押し釦24とを備え、後述するベース12に取り付けられている。
発信部11は、火災信号を発信するものであり、ベース12と、押さえ板13と、押下式スイッチ5のスイッチ部14と、カバー15とを有している。ベース12は、操作部21に取り付けられた円状の板部材であり、例えばABS樹脂からなる。押さえ板13は、カバー15をベース12に押える環状の板部材であり、例えばステンレスからなる。カバー15は、螺子16によってベース12に取り付けられた有底筒状の部材であり、スイッチ部14を覆って保護するものである。カバー15は、例えばクロロプレンゴムからなる。
【0012】
操作部21は、本体部22と、枠部23と、押下式スイッチ5の押し釦24と、キャップ25と、保護部26と、化粧板27とを有している。本体部22は、防災設備2の開口3aに取り付けられ、前面に本体開口22dが形成され、本体開口22dと連通する中空部22aが形成された有底円筒状の部材であり、底面には押し釦24が貫通する貫通穴を有している。本体部22は、例えばステンレスからなり、例えばニトリルゴムからなるパッキン12aを介してベース12に取り付けられている。枠部23は、本体開口22dに取り付けられて、本体部22との間に中空部22aを形成し、中央に開口する枠開口23aが形成された環状の部材である。枠部23は、例えばポリカーボネート樹脂からなり、本体部22に取り付けられている。押し釦24は、中空部22aに収納され、押下されることによって火災信号を発信するものである。
【0013】
押下式スイッチ5は、スイッチ部14と押し釦24とで構成されており、押し釦24が押下されると、押下された押し釦24の一部は、スイッチ部14の内部に挿入される。これにより、押し釦24がオンされた状態となる。再度、押し釦24が押下されると、押下された押し釦24が元の位置に戻りオフの状態となる。本実施の形態1では、押し釦24が押下されると、オンされた状態が保持される自己保持型スイッチについて例示している。自己保持型スイッチでは、押し釦24が一度オンされると、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入され、押し釦24の押下が解除されて(指を離して)も、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入されたまま(オンを保持)である。押し釦24が再度押下されると、押し釦24がスイッチ部14の内部から突出し、オフ状態に戻る。つまり、押下式スイッチ5において、押し釦24は押下されるたびに、スイッチ部14の内部に押し込まれた状態とスイッチ部14から突出した状態とを交互に保持する。
なお、押下式スイッチ5は、非保持型でもよい。非保持型では、押し釦24が押下されている間だけ、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入されてオンされた状態となり、押し釦24の押下が解除されると、押し釦24がスイッチ部14の内部から引き出されてオフされた状態に戻る。この場合、火災信号は受信する側で保持される。
【0014】
キャップ25は、押し釦24に沿った形状の部材であり、押し釦24を覆って保護するものである。キャップ25は、例えばニトリルゴムからなり、押し釦24が押し込まれると、それに対応して変形する。なお、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入された状態(オン)で、押し釦24の押下が解除される(指を離す)と、キャップ25のみが押下される前の形状に戻る。
【0015】
発信機1は、押下式スイッチ5をキャップ25、本体部22、パッキン12a、ベース12及びカバー15で覆うことにより、防水・防塵構造としている。
【0016】
保護部26は、中空部22aにおいて押し釦24の前方に配置されて本体部22の本体開口22dを遮蔽して押し釦24を保護すると共に押し釦24の押下に利用され、磁力によって枠部23に着脱自在に取り付けられたものである。保護部26は、例えば透光性を有するメタクリル樹脂からなり、円状をなしている。保護部26は、防災設備2の開口3a及び枠部23の枠開口23aを閉じている。化粧板27は、枠部23の外周を覆う環状の部材であり、防災設備2の筐体3に取り付けられることによって、防災設備2の内部の露出を防止するものである。化粧板27の中央は開口されており、これにより、人は、防災設備2の外側から保護部26を押下することができる。
なお、保護部26の形状は円状に限定されず、例えば正方形であってもよい。
【0017】
図4は、本発明の実施の形態1における枠部23及び保護部26を示す側面断面図である。次に、枠部23及び保護部26について詳細に説明する。枠部23の枠開口23aの外周には、第1の磁性体23bが埋め込まれている。また、保護部26の周縁部には、第2の磁性体26bが設けられている。枠部23と保護部26とは、第1の磁性体23bと第2の磁性体26bとの磁力によって互いに引き寄せられている。これにより、保護部26は、枠部23に着脱自在に取り付けられている。
【0018】
なお、磁性体は、枠部23及び保護部26のいずれか一方に設けられていてもよい。この場合、磁性体が設けられていない方には、磁力によって引き寄せられる鉄材等が設けられる。また、第1の磁性体23bは、枠部23の枠開口23aの外周の一部に設けられていてもよい。また、第2の磁性体26bは、保護部26の周縁部の一部に設けられてもいてもよい。これにより、磁性体の量を削減することができる。更に、第1の磁性体23bは、枠部23の枠開口23aの上部に設けられていてもよい。この場合、第2の磁性体26bは、保護部26の周縁部における上部に設けられる。これにより、磁性体が一部に設けられる場合でも、保護部26が重力によって枠部23に対し回転して脱落することを抑制することができる。なお、第2の磁性体26bは、保護部26の全体に設けられてもよい。これにより、保護部26が枠部23に引き寄せられ易くなる。このように、枠部23及び保護部26の少なくとも一方は磁性体を有している。
【0019】
また、保護部26は、枠部23側の面に、指を掛ける指掛け部26aを有している。指掛け部26aは、保護部26が本体部22に落下した後に復旧する際に使用されるものである。保護部26は、押し釦24側に押下されて枠部23から取り外されているときに、押し釦24の前面に沿ってスライド可能とされている。また、指掛け部26aは、保護部26の表面から凹んでいる。
【0020】
図5〜
図9は、本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。次に、発信機1の動作について説明する。
図5は、保護部26が押下され始める状態を示す図である。
図5に示すように、火災等が発生した場合、火災等を発見した人は、先ず、枠部23の枠開口23aに指を差し込み、指で保護部26を押下する。このとき、磁力によって枠部23に取り付けられていた保護部26が、枠部23から若干離れる。このように、保護部26は、押し釦24側に押下されることによって、枠部23から取り外される。
図6は、押下された保護部26が押し釦24を押下する状態を示す図である。
図6に示すように、人は、指で保護部26を更に押下する。保護部26は、キャップ25に当たってキャップ25と共に押し釦24を押下し、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入される。これにより、押下式スイッチ5がオンされた状態となり、発信機1が防災盤等に火災信号を発信する。
【0021】
図7は、押下が解除された(指を離した)保護部26が本体部22に落下している状態を示す図である。
図7に示すように、火災信号が発信されると、人は、保護部26から指を離して、保護部26の押下を解除する。これにより、保護部26は、本体部22の底部に落下する。また、押下式スイッチ5は自己保持型であるため、押し釦24はスイッチ部14の内部に挿入されたままである。そして、キャップ25が枠部23側に移動して元の位置に戻ると共に、保護部26を枠部23側に戻す。このとき、保護部26の第2の磁性体26bは、枠部23の第1の磁性体23bから距離が離れているため、保護部26は、枠部23に引き寄せられることなく本体部22に落下したままとなる。このように、押し釦24が押下されて火災信号が発信されると、保護部26が本体部22に落下したままとなる。このため、発信機1を操作した人以外の第3者でも、発信機1が、火災信号を発信した発信機1か否かを目視で瞬時に認識することができる。
【0022】
図8は、本体部22に落下した保護部26が移動される状態を示す図である。
図8に示すように、火災信号が発信された後、発信機1を復旧する際、人は、指で保護部26を押下する。保護部26は、キャップ25に当たってキャップ25と共に押し釦24を押下し、押し釦24がスイッチ部14の内部から突出する。これにより、押下式スイッチ5がオフされた状態となる。その際、押し釦24と共にキャップ25が枠部23側に移動して元の位置(形状)に戻ると共に、キャップ25が保護部26を枠部23側に戻す。その後、落下した保護部26を元の位置に戻すため、人は、保護部26の指掛け部26aに指を引っ掛けて、保護部26をキャップ25に沿わせて上方にずらす。
【0023】
図9は、保護部26が元の位置に戻った状態を示す図である。
図9に示すように、人が指を指掛け部26aに引っ掛けて、保護部26をキャップ25(押し釦24)に沿わせて上方にずらし、保護部26の第2の磁性体26bが枠部23の第1の磁性体23bに近づくと、磁力によって、保護部26が枠部23に取り付けられる。これにより、保護部26が元の位置に戻り、復旧作業が完了する。なお、キャップ25が省略されている場合、保護部26を押し釦24に沿わせて上方にずらすことによって、磁力によって保護部26が枠部23に取り付けられる。
【0024】
本実施の形態1によれば、保護部26は、磁力によって枠部23に取り付けられている。このため、保護部26が押し釦24側に押下されて本体部22内に落下しても、枠部23の外側から保護部26を動かすだけで、磁力によって保護部26が枠部23に再び取り付けられる。よって、火災信号が発信された後の復旧時に、化粧板27及び枠部23等を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。
【0025】
従来、押下式スイッチが押下されると、保護板が枠部材から外れて、取付部材の内部に落下して留まる発信機が知られている。この発信機は、火災信号が発信された後の復旧時において、枠部材を取り外して保護板を取り出し、再度枠部材に装着して、枠部材を取り付ける必要がある。これに対し、本実施の形態1は、化粧板27及び枠部23等を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。更に、従来、発信機として、ビル用の発信機が知られている。ビル用の発信機には、リセットボタンが操作されることによって、押下式スイッチが復旧するものがあるが、防水型の発信機にビル用の発信機と同様のリセットボタンによる復旧方法を適用しようとしても、リセットボタン式の場合、保護板の下部を回転軸に上方を押し込む構成のため、防水型発信機に採用されている押下式スイッチに適用しても押し釦をオン状態まで押し込めない。このため、適用することができない。そこで、本実施の形態1のように、保護部26が磁力によって枠部23に取り付けられている構成とすれば、ビル用の発信機のようなリセットボタン式を採用しなくても、簡易に復旧することができる。また、従来、押下式スイッチが押下されると、保護板が破れる発信機が知られている。この発信機は、一度使用されると保護板が破れるため、復旧時に新しい保護板に交換する必要がある。これに対し、本実施の形態1は、保護部26が破壊されないため、保護部26を再利用することができ、コストを削減することができる。
【0026】
また、保護部26は、枠部23側の面に、指を掛ける指掛け部26aを有し、指掛け部26aに掛けられた指によって保護部26が移動されて、枠部23から取り外された状態から枠部23に取り付けられた状態に戻すことができる。本実施の形態1では、保護部26に指掛け部26aが設けられたことによって、人が指で保護部26を移動させ易い。これにより、復旧作業が更に簡易になるという効果を奏する。
【0027】
更に、指掛け部26aは、保護部26の表面から凹んでいる。これにより、保護部26の外形を大きくすることなく、保護部26に指掛け部26aを設けることができる。なお、指掛け部26aの位置は、保護部26の表面の中央に限らず、保護部26の表面のいずれの位置でもよい。また、指掛け部26aは、保護部26の表面から凹んでいてもよいし、突出していてもよい。