(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒が循環する冷媒循環路と、前記冷媒循環路を流れる冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒循環路を流れる冷媒から放熱させる凝縮器と、前記冷媒循環路を流れる冷媒に吸熱させる蒸発器と、前記蒸発器に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁とを備えるヒートポンプシステムの検査方法であって、
前記ヒートポンプシステムは、前記凝縮器と前記蒸発器との間の前記冷媒循環路の途中に、気液混合状態にある冷媒を一時的に貯えることができる空間を有する貯留空間部と、前記貯留空間部内から抜き出した冷媒の一部が、第2膨張弁によって膨張させられ、前記貯留空間部内の冷媒と混合せずに熱交換した後で前記圧縮機に帰還するときに流れる流体通路とを備え、
前記流体通路は、前記貯留空間部の内部を鉛直方向に沿って冷媒が通過するように配置され、
前記流体通路には、前記貯留空間部内から抜き出した気相状態の冷媒が流れ、
前記貯留空間部内に配置される前記流体通路の一部の外形は、前記流体通路を流れる冷媒と前記貯留空間部内の冷媒との間での鉛直方向に沿った単位長さ当たりの伝熱面積が、前記貯留空間部内に配置される前記流体通路の他部との間よりも、前記貯留空間部内に配置される前記流体通路の一部との間の方が大きくなるように構成され、
前記貯留空間部内に配置される前記流体通路の一部は、冷媒が流れる配管を螺旋ピッチが相対的に密になる密巻き螺旋状に形成され、
前記貯留空間部内に配置される前記流体通路の他部は、冷媒が流れる配管を螺旋ピッチが相対的に疎になる疎巻き螺旋状に形成され、
前記圧縮機から送出された冷媒が前記凝縮器と前記貯留空間部と前記第1膨張弁と前記蒸発器とを順に通流した後で前記圧縮機に帰還するように冷媒を循環させ且つ前記流体通路に冷媒を流した状態で、前記流体通路を流れる冷媒の、前記貯留空間部内の冷媒との熱交換後の温度に基づいて、前記貯留空間部に貯えられている液相状態の前記冷媒の液位を導出する液位検出工程と、
前記液位検出工程で検出した前記液位と所定の基準液位との比較結果に基づいて、前記冷媒循環路内からの冷媒の漏洩の程度を判定する冷媒漏洩判定工程とを有し、
前記液位検出工程において、前記流体通路を流れる冷媒の、前記貯留空間部内の冷媒との熱交換前後での温度差に基づいて、前記貯留空間部に貯えられている液相状態の前記冷媒の液位を導出するヒートポンプシステムの検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係るヒートポンプシステムの検査方法について説明する。
図1は、第1実施形態のヒートポンプシステムの構成を示す図である。また、
図1では、ヒートポンプシステムにおいて、熱交換対象流体としての空調対象空間の空気を冷却するための冷却運転を行っているときの冷媒の循環状態を示し、冷媒の流れる経路を太実線で描いている。図示するように、ヒートポンプシステムは、冷媒が循環する冷媒循環路3と、冷媒循環路3を流れる冷媒を圧縮する圧縮機5と、冷媒循環路3を流れる冷媒から放熱させる凝縮器(室外熱交換器8)と、冷媒循環路3を流れる冷媒に吸熱させる蒸発器(室内熱交換器14)と、蒸発器(室内熱交換器14)に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁(弁V2)とを備える。ヒートポンプシステムは、エンジン4を備え、そのエンジン4から伝達される駆動力によって、圧縮機5は冷媒循環路3を流れる冷媒を圧縮する。
【0038】
加えて、本実施形態のヒートポンプシステムは、冷媒循環路3を流れる冷媒とエンジン4から放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる排熱回収用熱交換器10と、排熱回収用熱交換器10に流入する冷媒を膨張させる弁V5とを備える。尚、冷媒循環路3を構成する配管や各熱交換器では、冷媒が流れることで圧力損失が発生するため、本実施形態で膨張弁として機能させる弁は、これらの圧力損失を考慮した開度としている。
更に、ヒートポンプシステムは、オイルセパレータ6、四方弁7、レシーバ(貯留空間部)9、アキュムレータ11などの機器も備えている。オイルセパレータ6は、冷媒中に含まれる油成分を分離して圧縮機5の吸入側に戻すために設けてある。オイルセパレータ6に接続されている副循環路3cが、冷媒から分離された油成分を圧縮機5に戻すために利用される。レシーバ9は、室外熱交換器8と、弁V7や弁V5との間の冷媒循環路3の途中において、気液混合状態にある冷媒を一時的に貯えることができる空間を有する。
本実施形態では、室内機12の筐体13内に室内熱交換器14及び弁V2が収容され、室外機1の筐体2にその他の機器が収容されている。
【0039】
エンジン4は、ガスや軽油などの燃料を消費して運転される。そして、エンジン4の駆動力が圧縮機5に伝達される。
図1には示していないが、エンジン4から圧縮機5への駆動力の伝達を仲介するクラッチなどの動力伝達機構を設けてもよい。エンジン4の動作(例えば回転速度など)は、制御装置20が有するエンジン制御手段21が制御する。
【0040】
圧縮機5から送出された冷媒は、冷媒循環路3を流れる。冷媒循環路3の途中には、後述するような各種の複数の弁が設けられており、それらの弁の開閉状態が切り替わることで、冷媒循環路3における冷媒の循環経路が切り替わる。この冷媒の循環経路の切り替え(即ち、各種の弁の開閉状態の切り替え)は、制御装置20が有する循環経路制御手段22が遠隔操作により制御する。
【0041】
冷媒循環路3は、圧縮機5から送出された冷媒が室外熱交換器8及び室内熱交換器14を経由して循環するときに流れる主循環路3aと、圧縮機5から送出された冷媒がその主循環路3aから分岐して循環するときに流れる副循環路3b,3c,3dとを有する。
【0042】
主循環路3a(3)は、冷媒が、圧縮機5とオイルセパレータ6と四方弁7と室外熱交換器8と弁V1とレシーバ9と弁V7と弁V2と室内熱交換器14と弁V8と四方弁7とアキュムレータ11とを順に流れる経路である。副循環路3b(3)は、冷媒が、レシーバ9と弁V7との間で主循環路3aから分岐して、弁V5と排熱回収用熱交換器10とを順に流れた後、四方弁7とアキュムレータ11との間で主循環路3aに合流するときに流れる経路である。副循環路3c(3)は、冷媒が、オイルセパレータ6で主循環路3aから分岐して、弁V3を流れた後、四方弁7とアキュムレータ11との間で主循環路3aに合流するときに流れる経路である。
【0043】
エンジン4を運転することで放出される熱は、冷却水流路15を流れる冷却水によって回収される。冷却水流路15は、エンジン4と排熱回収用熱交換器10とを冷却水が順に通流するように配置されている。そして、排熱回収用熱交換器10に冷媒が通流したとき、冷却水流路15を流れる冷却水と、副循環路3bを流れる冷媒との間での熱交換が行われることで、エンジン4から回収した排熱が冷媒に伝達されることになる。つまり、排熱回収用熱交換器10は、後述するように、エンジン4から回収した排熱を、副循環路3bに流れる冷媒に吸熱させる蒸発器として機能することもできる。尚、排熱回収用熱交換器(蒸発器)10にてエンジン排熱を十分放熱できない場合は、別途ラジエータ(図示しない)で所定量のエンジン排熱を放熱させて冷却水の温度を低下させた後で、その冷却水をエンジン4に流入させてもよい。
【0044】
図1に示すように、制御装置20は、エンジン制御手段21と循環経路制御手段22とによる制御によって、冷媒の循環状態を切り替えながら室内熱交換器14を通流する冷媒によって空調対象空間の空気を冷却する冷房運転(冷却運転)を行う。図中では、圧縮機5から送出される冷媒を太実線で描いている。この場合、室外熱交換器8は凝縮器として機能し、室内熱交換器14は蒸発器として機能する。
【0045】
具体的には、圧縮機5から送出された冷媒は、冷媒循環路3の主循環路3aを通ってオイルセパレータ6に流入し、その後、四方弁7に至る。四方弁7は、圧縮機5から送出された冷媒が先ず室外熱交換器8に流入するように切り替えられている。弁V1及び弁V7及び弁V2及び弁V8は開放される。尚、副循環路3bの途中にある弁V5が閉止されることで副循環路3bには冷媒は流れず、及び、副循環路3cの途中にある弁V3が閉止されることで副循環路3cには冷媒は流れない。従って、圧縮機5から送出された冷媒は、室外熱交換器8と弁V1とレシーバ9と弁V7と弁V2と室内熱交換器14と弁V8と四方弁7とアキュムレータ11とを順に流れた後、圧縮機5に帰還する。このとき、弁V1及び弁V2は膨張弁として機能し、それぞれ設定する開度に応じて冷媒の圧力が低下させられる。
【0046】
このように、
図1に示す例では、弁V5及び排熱回収用熱交換器10を経由して冷媒を流さない状態で、圧縮機5から送出された冷媒が室外熱交換器8とレシーバ9と弁V2と室内熱交換器14とを順に通流した後で圧縮機5に帰還するように冷媒を循環させることで、蒸発器として作用する室内熱交換器14において、冷媒循環路3を流れる冷媒によって空調対象空間の空気を冷却する。尚、説明は省略するが、四方弁7を切り替えることで、冷媒の循環方向を変化させて、空調対象空間の空気を加熱する暖房運転を行うこともできる。
【0047】
次に、弁V2及び室内熱交換器14に代えて、弁V5を第1膨張弁として機能させ、及び、排熱回収用熱交換器10を蒸発器として機能させる場合について説明する。
図2は、ヒートポンプシステムにおいて、少なくとも弁V7及び弁V8を閉止することにより、弁V7と弁V2と室内熱交換器14と弁V8とを経由して冷媒を循環させない遮断状態で、圧縮機5から送出された冷媒の一部を室外熱交換器8とレシーバ9と弁V5と排熱回収用熱交換器10とを順に通流させた後で圧縮機5に帰還させ、及び、圧縮機5から送出された冷媒の残部を弁V3によって膨張させた後で排熱回収用熱交換器10と圧縮機5との間を流れる圧縮機5から送出された冷媒の一部と混合させた上で圧縮機5に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えている。
【0048】
副循環路3d(3)は、レシーバ9(貯留空間部)内から抜き出した気相状態の冷媒が、その副循環路3dの途中に設けられる弁(第2膨張弁)V6によって膨張させられ、レシーバ9内の冷媒と混合せずに熱交換した後で、排熱回収用熱交換器10と圧縮機5との間を流れる冷媒に混合するときに流れる流体通路である。副循環路3dは、レシーバ9の内部を鉛直方向に沿って冷媒が通過するように配置されている。つまり、副循環路3dは、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒及びその上方に滞留している気相状態の冷媒を、最上部と最下部との間の深さ方向に縦断して、その冷媒と熱交換するように配置されている。副循環路3dの途中には、冷媒の温度を測定する温度センサT1及び温度センサT2が設けられている。温度センサT1は、弁V6によって圧力が低下された後、レシーバ9内の冷媒と熱交換する前の冷媒の温度を測定している。温度センサT2は、レシーバ9内の冷媒と熱交換した後の冷媒の温度を測定している。温度センサT1の検出結果及び温度センサT2の検出結果は、制御装置20に伝達され、記憶装置30に記憶される。
また、副循環路3dは、レシーバ9の相対的に上部側に接続されている。その結果、レシーバ9に対する副循環路3dの接続箇所が冷媒の液位よりも上方にあることを期待でき、レシーバ9内から気相状態の冷媒を抜き出し易くなる。
【0049】
図2に示すような弁V7と弁V2と室内熱交換器14と弁V8とを経由して冷媒を循環させない遮断状態は、液位検出工程に先立って行われる冷媒移動工程によって得られる。例えば、冷媒移動工程としては、途中に室内熱交換器14が設けられている弁V7と弁V8との間の区間の冷媒を全て他の区間の冷媒循環路3へ移動させる工程(後述する「A工程」)、或いは、弁V7と弁V8との間の区間の冷媒を所定量だけ残して他の区間の冷媒循環路3へ移動させる工程(後述する「B工程」)がある。
【0050】
「A工程」の冷媒移動工程を実施するとき、
図1に示した冷房運転の状態から、先ず弁V7を閉じる。そうすると、弁V7よりも下流側の主循環路3a内の冷媒が圧縮機5によって吸引される。その後、弁V8を閉じると、弁V7と弁V8との間の区間の冷媒を全て他の区間の冷媒循環路3へ移動された状態が得られる。
「B工程」の冷媒移動工程を実施するとき、
図1に示した冷房運転の状態から、先ず弁V2を閉じる。そうすると、弁V2よりも下流側の主循環路3a内の冷媒が圧縮機5によって吸引される。その後、弁V7及び弁V8を閉じると、弁V7と弁V2との間の区間の主循環路3aには液相状態の冷媒を満たすことができ、弁V2と弁V8との間の区間の主循環路3aには冷媒が存在しない状態が得られる。つまり、弁V7と弁V8との間の区間の冷媒が所定量だけ残して他の区間の冷媒循環路3へ移動された状態が得られる。尚、弁V7と弁V2との間の区間の主循環路3aの容積は既知であるので、冷媒の温度及び圧力を測定すれば、この区間にある冷媒の密度が算出でき、弁V7と弁V8との間の区間に残されている冷媒の量(上述した「所定量」に相当)を導出することはできる。
【0051】
尚、
図2に示した循環状態(液位検出工程を実施するときの冷媒循環路3における冷媒の循環状態)と、
図1に示した冷媒の循環状態とは、制御装置20が有する循環経路制御手段22による各弁の遠隔操作により切り替えることができる。その結果、液位検出工程を実施するときに、作業員が現場に出向くこと等は不要になる。
【0052】
次に、ヒートポンプシステムの検査方法について説明する。この検査方法は、
図2に示した冷媒の循環状態で、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する液位検出工程を実施し、液位検出工程で検出した液位と所定の基準液位との比較結果に基づいて、冷媒循環路3内からの冷媒の漏洩の程度を判定する冷媒漏洩判定工程を実施する方法である。尚、上述したように、弁V5を本発明の「第1膨張弁」として機能させ、及び、排熱回収用熱交換器10を本発明の「蒸発器」として機能させた状態での検査方法について説明する。
【0053】
図3は、第1実施形態のヒートポンプシステムのモリエル線図である。
図3では、等温線を破線で描き、飽和液線及び飽和蒸気線を一点鎖線で描いている。図示するように、圧縮機5から送出された後の状態S2にある冷媒がオイルセパレータ6で二手に分かれ、一方は主循環路3aの途中にある室外熱交換器8へ流入し、他方は副循環路3cの途中にある弁V3へ流入する。
【0054】
オイルセパレータ6から室外熱交換器8に流入した冷媒は、室外熱交換器8において外気への放熱を行って状態S3の液相状態になった後、弁V1によって圧力が低下させられる。その結果、レシーバ9では、冷媒は気液混合状態になる。その後、冷媒は、副循環路3bの途中にある弁V5によって圧力が更に低下させられ(状態S4)、排熱回収用熱交換器10においてエンジン排熱によって蒸発させられて状態S5になる。
これに対して、オイルセパレータ6から副循環路3cに流入した冷媒は、弁V3によって圧力が低下させられて状態S6になる。
【0055】
レシーバ9に貯えられている気液混合状態の冷媒のうち、気相成分の冷媒(状態S7)は、副循環路3dによってレシーバ9から抜き出され、副循環路3dの途中にある弁V6によって圧力が低下させられて状態S8になる。次に、副循環路3dを流れる冷媒は、レシーバ9内に貯えられている冷媒と熱交換を行った後(昇温された後)、状態S9になる。その後、排熱回収用熱交換器10とアキュムレータ11との間の冷媒循環路3の途中で、副循環路3bを流れてきた状態S5の冷媒と、副循環路3cを流れてきた状態S6の冷媒と、副循環路3dを流れてきた状態S9の冷媒とが合流して、状態S1の冷媒が得られる。
【0056】
このように、副循環路3dに冷媒を流すことで、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒の液位が相対的に低くなって、気相状態の冷媒が多くなっているとき、副循環路3dを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間(即ち、副循環路3dの外表面)では、副循環路3dを流れる冷媒によってレシーバ9内の気相状態の冷媒を凝縮させるような熱伝達(凝縮熱伝達)が多くなるため、両者の熱交換量は相対的に大きくなる。その結果、副循環路3dを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後の温度も相対的に高くなる。これに対して、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒の液位が相対的に高くなって、気相状態の冷媒が少なくなっているとき、副循環路3dを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間(即ち、副循環路3dの外表面)では、副循環路3dを流れる冷媒によってレシーバ9内の気相状態の冷媒を凝縮させるような熱伝達(凝縮熱伝達)が少なくなる(但し、副循環路3dを流れる冷媒とレシーバ9内の液相状態の冷媒との間の対流熱伝達はある)ため、両者の熱交換量は相対的に小さくなる。その結果、副循環路3dを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後の温度も相対的に低くなる。
【0057】
本実施形態では、レシーバ9での液位の高低に応じて以上のような現象が起こることを利用して、液位検出工程において、圧縮機5から送出された冷媒が室外熱交換器(凝縮器)8と弁(第1膨張弁)V5と排熱回収用熱交換器(蒸発器)10とを順に通流した後で圧縮機5に帰還するように冷媒を循環させ且つ副循環路(流体通路)3dに冷媒を流した状態で、副循環路(流体通路)3dを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後の温度に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。具体的には、制御装置20が有する演算処理部(図示せず)は、温度センサT1で測定される冷媒温度と温度センサT2で測定される冷媒温度とを記憶装置30から読み出して両者の温度差を導出し、その温度差を、記憶装置30に予め記憶されている、温度差と液位との関係に適用して、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
【0058】
そして、冷媒漏洩判定工程において冷媒漏洩判定手段23は、液位検出工程で検出した冷媒の液位と所定の基準液位との比較結果に基づいて、冷媒循環路3内からの冷媒の漏洩の程度を判定する。具体的には、制御装置20の冷媒漏洩判定手段23は、液位検出工程において検出された上記冷媒の液位を、記憶装置30に予め記憶されている所定の基準液位と比較して、冷媒循環路3内からの冷媒の漏洩の程度を判定する。
【0059】
尚、本実施形態において、室外熱交換器8とレシーバ9との間の冷媒循環路3の途中に設けられる弁V1は、その冷媒循環路3の流路断面積を調節可能な調節器として機能させることができる。そして、弁V1によって調節されている流路断面積の大きさに応じて、レシーバ9に貯えられる液相の冷媒に関する基準液位(基準冷媒量)が決定される。例えば、弁V1の開度(流路断面積)を相対的に小さくすると、レシーバ9に貯えられる液相の冷媒量は相対的に少なくなるので、レシーバ9での基準液位は低くなる。これに対して、弁V1の開度を相対的に大きくすると、レシーバ9に貯えられる液相の冷媒量は相対的に多くなるので、レシーバ9での基準液位は高くなる。従って、記憶装置30に、弁V1の開度とレシーバ9での基準液位との関係を予め記憶しておけば、制御装置20の冷媒漏洩判定手段23は、液位検出工程を実施したときの弁V1の開度についての情報を取得することで、それらの情報に基づいて、液位検出工程を実施したときの基準液位を決定することができる。
【0060】
<第2実施形態>
第2実施形態のヒートポンプシステムの検査方法は、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位の検出手法が上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態のヒートポンプシステムの検査方法について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0061】
図4は、第2実施形態のヒートポンプシステムの構成を示す図であり、液位検出工程を実施するときの冷媒の循環状態を描いている。図示するように、本実施形態のヒートポンプシステムにおいて、冷媒循環路3は、副循環路3e(3)を有する。この副循環路3eは、レシーバ9内から抜き出した液相状態の冷媒が、弁(第2膨張弁)V4によって膨張させられ、レシーバ9内の冷媒と混合せずに熱交換した後で、排熱回収用熱交換器10と圧縮機5との間を流れる冷媒に混合するときに流れる流体通路である。また、レシーバ9内に貯えられている冷媒の残部は、副循環路3bの途中にある弁V5によって圧力が更に低下させられ、排熱回収用熱交換器10においてエンジン排熱を吸熱する。
【0062】
副循環路3eは、レシーバ9の内部を鉛直方向に沿って冷媒が通過するように配置されている。つまり、副循環路3eは、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒及びその上方に滞留している気相状態の冷媒を、最上部と最下部との間の深さ方向に縦断して、その冷媒と熱交換するように配置されている。この冷媒同士の熱交換によって、レシーバ9内に貯えられている冷媒の温度は低下し、副循環路3eを流れる冷媒の温度は上昇する。つまり、副循環路3eの途中のレシーバ9内に配置されている部分は、レシーバ9内に貯えられている冷媒を冷却するための過冷却部17として機能する。副循環路3eの途中には、冷媒の温度を測定する温度センサT3及び温度センサT4が設けられている。温度センサT3は、弁V4によって圧力が低下された後、レシーバ9内の冷媒と熱交換する前の冷媒の温度(二相状態の温度(飽和温度))を測定している。尚、温度センサT3で測定する冷媒の温度(飽和温度)は、同じ個所の冷媒の圧力(飽和圧力)から換算して求めることもできる。温度センサT4は、レシーバ9内の冷媒と熱交換した後の冷媒の温度を測定している。温度センサT3の検出結果及び温度センサT4の検出結果は、制御装置20に伝達され、記憶装置30に記憶される。
また、副循環路3eは、レシーバ9の相対的に下部側に接続されている。その結果、レシーバ9に対する副循環路3eの接続箇所が冷媒の液位よりも下方にあることを期待でき、レシーバ9内から液相状態の冷媒を抜き出し易くなる。
【0063】
図5は、第2実施形態のヒートポンプシステムのモリエル線図である。尚、
図5では、副循環路3bを流れる冷媒の状態については図示を省略している。
図示するように、レシーバ9に貯えられている気液混合状態の冷媒のうち、液相成分の冷媒が、副循環路3eによってレシーバ9から抜き出され、副循環路3eの途中にある弁V4によって圧力が低下させられて状態S10になる。次に、副循環路3eを流れる冷媒は、レシーバ9内に貯えられている冷媒と熱交換を行った後(即ち、過冷却部17で吸熱した後)、ある一定以上の熱交換量の場合は過熱度が確保でき、状態S11になる。その後、排熱回収用熱交換器10とアキュムレータ11との間の冷媒循環路3の途中で、副循環路3cを流れてきた状態S6の冷媒と、副循環路3eを流れてきた状態S11の冷媒と、
図5では記載を省略している排熱回収用熱交換器10を経由して流れてきた状態S5の冷媒とが合流して、状態S1の冷媒が得られる。
【0064】
このような副循環路3eを設けて冷媒を流すことで、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒の液位が相対的に低くなって、気相状態の冷媒が多くなっているとき、副循環路3eを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間(即ち、副循環路3eの外表面)では、副循環路3eを流れる冷媒によってレシーバ9内の気相状態の冷媒を凝縮させるような熱伝達(凝縮熱伝達)が多くなるため、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出できる過熱度も相対的に大きくなる。例えば、上記過熱度は、気相状態(状態S11)の冷媒の飽和圧力を測定して、その飽和圧力から飽和温度を導出し、温度センサT4で測定される熱交換後の冷媒温度と飽和温度との温度差から導出できる。
これに対して、レシーバ9内に貯えられている液相状態の冷媒の液位が相対的に高くなって、気相状態の冷媒が少なくなっているとき、副循環路3eを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間(即ち、副循環路3eの外表面)では、副循環路3eを流れる冷媒によってレシーバ9内の気相状態の冷媒を凝縮させるような熱伝達(凝縮熱伝達)が少なくなる(但し、副循環路3eを流れる冷媒とレシーバ9内の液相状態の冷媒との間の対流熱伝達はある)ため、温度センサT4で測定される冷媒温度から導出できる過熱度も相対的に小さくなる。
【0065】
言い換えると、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒量の多少に応じて(液位の高低に応じて)、副循環路3eを流れる冷媒が、レシーバ9に貯えられている冷媒から受け取ることのできる熱量も増減する。この場合、弁V4の開度を小さくして、相対的に少ない量の冷媒が単位時間当たりに副循環路3eを流れるようにすると(即ち、副循環路3eを流れる少ない量の冷媒で、レシーバ9に貯えられている冷媒から熱を受け取ると)、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度は相対的に大きくなる。これに対して、弁V4の開度を大きくして、相対的に多い量の冷媒が単位時間当たりに副循環路3eを流れるようにすると(即ち、副循環路3eを流れる多い量の冷媒で、レシーバ9に貯えられている冷媒から熱を受け取ると)、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度は相対的に小さくなる。このように、弁V4の開度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での過熱度とは、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位に関連する。
【0066】
例えば、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒が少なく(液位が低く)、気相状態の冷媒が多ければ、上述したように、副循環路3eを流れる冷媒が、レシーバ9に貯えられている冷媒から受け取ることのできる熱量も多くなる。そのため、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度を設定値にするためには、弁V4の開度を大きくして、単位時間当たりに、より多くの量の冷媒が副循環路3eを流れるようにする必要がある。これに対して、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒が多く(液位が高く)、気相状態の冷媒が少なければ、上述したように、副循環路3eを流れる冷媒が、レシーバ9に貯えられている冷媒から受け取ることのできる熱量も少なくなる。そのため、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度を設定値にするためには、弁V4の開度を小さくして、単位時間当たりに、より少ない量の冷媒が副循環路3eを流れるようにする必要がある。
【0067】
そこで、本実施形態では、液位検出工程において、弁(第2膨張弁)V4の開度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での過熱度との関係に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
具体的には、「手法1」として、制御装置20の循環経路制御手段22が、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度が設定値になるように弁V4の開度を調節して、その弁V4の開度を測定する手法、及び、「手法2」として、制御装置20の循環経路制御手段22が、弁V4の開度を一定にした状態で、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度を測定する手法がある。
【0068】
手法1の場合、制御装置20の循環経路制御手段22は、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度が、記憶装置30に予め記憶されている設定値と等しくなるように弁V4の開度を調節する。記憶装置30には、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度を設定値と等しくするときの、弁V4の開度と、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位との第1関係(弁V4の開度が大きくなるほど液位が高くなる関係)が記憶されている。そして、制御装置20の演算制御部は、その第1関係に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
このように、手法1では、液位検出工程において、副循環路(流体通路)3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での過熱度が所定の過熱度になるときの弁(第2膨張弁)V4の開度に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
【0069】
手法2の場合、制御装置20の循環経路制御手段22が、弁V4の開度を、記憶装置30に記憶されている所定の開度で一定にした状態で温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度を測定する。記憶装置30には、弁V4の開度を、記憶装置30に記憶されている所定の開度で一定にした状態での、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度と、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位との第2関係(過熱度が大きくなるほど液位が高くなる関係)が記憶されている。そして、制御装置20の演算制御部は、温度センサT4で測定される冷媒温度に基づいて導出される過熱度と第2関係とに基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
このように、手法2では、液位検出工程において、弁(第2膨張弁)V4を所定の開度で一定にした状態での、副循環路(流体通路)3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での過熱度に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出する。
【0070】
また、
図5に示すように、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度が大きくなると、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度との間の温度差(
図5中で「温度差」と記載する)が小さくなる。これに対して、副循環路3eを流れる冷媒の過熱度が小さくなると、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度との間の温度差が大きくなる。
従って、上述した過熱度(即ち、副循環路(流体通路)3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での過熱度)に基づくのではなく、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度との間の温度差に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出してもよい。つまり、上記液位検出工程において、弁(第2膨張弁)V4の開度と、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度、及び、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度の間の温度差との関係に基づいて、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を導出してもよい。ここで、
図4に示すように、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度は温度センサT6を用いて測定できる。また、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度は温度センサT4を用いて測定できる。その結果、温度センサT6によって測定された温度から、温度センサT4によって測定された温度を減算することで、レシーバ9内の気相状態の冷媒の温度と、副循環路3eを流れる冷媒の、レシーバ9内の冷媒との熱交換後での温度との間の温度差を導出できる。
【0071】
<第3実施形態>
第3実施形態のヒートポンプシステムの検査方法は、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位の検出手法が上記実施形態と異なっている。以下に第3実施形態のヒートポンプシステムの検査方法について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0072】
図6は、第3実施形態のヒートポンプシステムの一部分の構成を示す図であり、液位検出工程を実施するときの冷媒の循環状態を描いている。図示は省略しているが、本実施形態でも、ヒートポンプシステムは、冷媒が循環する冷媒循環路3と、冷媒循環路3を流れる冷媒を圧縮する圧縮機5と、冷媒循環路3を流れる冷媒から放熱させる凝縮器(室外熱交換器8)と、冷媒循環路3を流れる冷媒に吸熱させる蒸発器(室内熱交換器14、排熱回収用熱交換器10)と、蒸発器(室内熱交換器14、排熱回収用熱交換器10)に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁(弁V2、V5)とを備える。また、ヒートポンプシステムは、凝縮器(室外熱交換器8)と蒸発器(室内熱交換器14、排熱回収用熱交換器10)との間の冷媒循環路3の途中に、気液混合状態にある冷媒を一時的に貯えることができる空間を有する貯留空間部としてのレシーバ9を備える。
【0073】
以下に説明するように、本実施形態では、液位検出工程において、圧縮機5から送出された冷媒が凝縮器(室外熱交換器8)とレシーバ9と弁(第1膨張弁)V5と蒸発器(排熱回収用熱交換器10)とを順に通流した後で圧縮機5に帰還するように冷媒を循環させた状態で、鉛直方向に隣り合う二つの抜出配管3fa〜3fgによってレシーバ9から抜き出した各冷媒を、所定の開度に維持された弁(第3膨張弁)V9によって膨張させた後の冷媒温度をそれぞれ測定し、測定される二つの冷媒温度の間に所定値以上の差が存在するとき、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位はそれら二つの抜出配管3fa〜3fgの間にあると判定する。そして、冷媒漏洩判定工程では、その液位検出工程で検出した液位と所定の基準液位との比較結果に基づいて、冷媒循環路内からの冷媒の漏洩の程度を判定する。
【0074】
具体的に説明すると、
図6に示すように、本実施形態のヒートポンプシステムにおいて、冷媒循環路3は、副循環路3f(3)を有する。この副循環路3fは、副循環路3fの一部を構成する抜出配管3fa〜3fgを介してレシーバ9内から抜き出された液相状態又は気相状態の冷媒が、弁(第3膨張弁)V9によって膨張させられた後で、蒸発器としての排熱回収用熱交換器10と圧縮機5との間を流れる冷媒に混合するときに流れる流体通路である。冷媒を外部に取り出すことができる抜出配管3fa〜3fgは、レシーバ9の側部に、鉛直方向に間隔を空けて複数個設けられている。抜出配管3fa〜3fgのそれぞれには、流路を開閉するための開閉弁Va〜Vgが設けられている。開閉弁Va〜Vgの開閉動作は制御装置20の循環経路制御手段22が制御する。
また、レシーバ9内に貯えられている冷媒の残部は、副循環路3bの途中にある弁V5によって圧力が更に低下させられ、排熱回収用熱交換器10においてエンジン排熱によって蒸発させられる。
【0075】
図7は、第3実施形態のヒートポンプシステムのモリエル線図である。尚、図中では、副循環路3fの部分での状態遷移のみを描いている。
図示するように、レシーバ9に貯えられている冷媒は、液相状態(飽和液)の冷媒(状態S12)及び気相状態(飽和蒸気)の冷媒(S14)の何れであっても同じ等温線上(
図7において「温度:高」の等温線上)にある。但し、所定の開度に維持された弁V9によって膨張させられた後は、液相状態にある状態S12の冷媒は状態S13の等温線上(
図7において「温度:低」の等温線上)に遷移し、気相状態にある状態S14の冷媒は状態S15の等温線上(
図7において「温度:中」の等温線上)に遷移する。このように、弁V9で膨張させられた後の冷媒の温度(温度センサT5で測定される冷媒温度)は、膨張前の冷媒が液相状態であるか或いは気相状態であるかによって変化する。
【0076】
そこで、本実施形態では、開閉弁Va〜Vgのうちの何れか一つを開き及び残りの全てを閉じた状態で、弁V9で膨張させられた後の冷媒の温度を測定するという温度測定工程を実施する。具体的には、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、制御装置20の循環経路制御手段22は、開閉弁Va〜Vgのうちの何れか一つを開き及び残りの全てを閉じた状態で温度センサT5によって冷媒温度を測定する。
【0077】
図6(a)に示す例では、開閉弁Veを開き、他の全ての開閉弁Va〜Vd,Vf,Vgを閉じている。この場合、開閉弁Veが設けられている抜出配管3feは液相状態の冷媒に浸かっている(即ち、冷媒の液面以下にある)。そして、レシーバ9から抜き出された液相状態(状態S12)の冷媒が、所定の開度に維持された弁V9によって膨張させられて状態S13の冷媒となり、温度センサT5では「温度:低」が測定される。
また、
図6(b)に示す例では、開閉弁Vdを開き、他の全ての開閉弁Va〜Vc,Ve〜Vgを閉じている。この場合、開閉弁Vdが設けられている抜出配管3fdは液相状態に冷媒に浸かっていない(即ち、冷媒の液面よりも上にある)。そして、レシーバ9から抜き出された気相状態(状態S14)の冷媒が、所定の開度に維持された弁V9によって膨張させられて状態S15の冷媒となり、温度センサT5では「温度:中」が測定される。
【0078】
このように、レシーバ9から冷媒を取り出す抜出配管3fa〜3fgの位置を鉛直方向に変える前後での、温度センサT5で測定される冷媒温度に上述のような変化が現れたということは、抜出配管3fa〜3fgから抜き出される各冷媒は、一方が液相状態で、他方が気相状態であったということを示している。特に、
図6に示すように、鉛直方向に隣り合う二つの抜出配管3fe,3fdによってレシーバ9から抜き出した各冷媒を弁V9によって膨張させた後の冷媒温度をそれぞれ測定し、測定される二つの冷媒温度の間に所定値以上の差が存在するとき、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位はそれら二つの抜出配管3fe,3fdの間にあると判定できる。
【0079】
従って、開く開閉弁Va〜Vgを順次変更しながら、上述した温度測定工程を繰り返し実施して、弁V9で膨張させられた後の冷媒温度を取得することで、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位を判定することができる。
【0080】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、ヒートポンプシステムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成については適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、圧縮機5がエンジン4によって駆動されるヒートポンプシステムを説明したが、圧縮機5が電動モータによって駆動されるヒートポンプシステムに変更してもよい。更に、複数台の圧縮機5を用いて冷媒を圧縮してもよい。その場合、複数台の圧縮機5を駆動するために複数台のエンジンを利用すること、複数台の電動モータを利用すること、エンジンと電動モータとを併用することなどを行うことができる。
また、上記実施形態では、ヒートポンプシステムがエンジン4を備えることで、エンジン4の駆動力が圧縮機5に伝達され及びエンジン4の排熱が排熱回収用熱交換器(第3熱交換器)10に与えられる例を説明したが、ヒートポンプシステムがエンジン4に代えて燃料電池及び電動モータを備えた構成を採用してもよい。この場合、燃料電池の発電電力によって動作する電動モータが圧縮機5を駆動し、燃料電池の排熱が排熱回収用熱交換器10に与えられるような構成となる。
【0081】
他の変更例として、レシーバ9内に配置される副循環路3d,3e(3)の一部又は全部は、冷媒が流れる配管を旋回させた螺旋状に形成されていてもよい。
図8〜
図11は、別実施形態の副循環路の構成を示す図である。具体的には、
図8は、上述した
図1及び
図2に示した副循環路3d(3)が、配管を旋回させた螺旋部分3dhを有する場合の例であり、
図9は、上述した
図4に示した副循環路3e(3)が、配管を旋回させた螺旋部分3ehを有する場合の例である。このように、配管を螺旋状に形成することで、副循環路3d,3eを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間での鉛直方向に沿った単位長さ当たりの伝熱面積が、配管を直線状に形成している場合の伝熱面積よりも大きくなる。つまり、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位の高低が、副循環路3d,3eを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との熱交換量の大小として検出され易くなる。その結果、液位検出工程において、より正確な冷媒の液位が検出されることが期待できる。
【0082】
また、螺旋部分3dh,3ehの長さ、その配置場所、その形状は適宜変更可能である。例えば、
図10に示すように、レシーバ9内に配置される副循環路3dの一部は、冷媒が流れる配管を旋回させた螺旋状(螺旋部分3dh)に形成され、レシーバ9内に配置される副循環路3dの他部は、冷媒が流れる配管を旋回させない直線状(直線部分3ds)に形成されてもよい。或いは、
図11に示すように、レシーバ9内に配置される副循環路3dの一部は、冷媒が流れる配管を螺旋ピッチが相対的に密になる密巻き螺旋状(密部分3dh1)に形成され、レシーバ9内に配置される副循環路3dの他部は、冷媒が流れる配管を螺旋ピッチが相対的に疎になる疎巻き螺旋状(疎部分3dh2)に形成されてもよい。尚、図示は省略するが、副循環路3eについても
図10及び
図11に示した副循環路3dと同様の形状を採用してもよい。このように、
図10及び
図11に示した例では、レシーバ9内に配置される副循環路3d,3eの一部の外形は、副循環路3d,3eを流れる冷媒とレシーバ9内の冷媒との間での鉛直方向に沿った単位長さ当たりの伝熱面積が、レシーバ9内に配置される副循環路3d,3eの他部との間よりも、レシーバ9内に配置される副循環路3d,3eの一部との間の方が大きくなるように構成されている。これらの場合、伝熱面積が他よりも特に大きくなる部分(例えば、
図10の螺旋部分3dh、
図11の密部分3dh1)では、レシーバ9に貯えられている液相状態の冷媒の液位の高低が、レシーバ9内の冷媒との熱交換量の大小として特に検出され易くなる。その結果、液位検出工程において、より正確な冷媒の液位が検出されることが期待できる。従って、上述したような伝熱面積が他よりも特に大きくなる部分が、レシーバ9内の液面の位置付近に配置されていることが好ましい。
【0083】
更に、レシーバ9内に配置される副循環路3d,3eの少なくとも一部の内面には凹凸構造18が形成されていてもよい。例えば、
図12に示すように、副循環路3d,3e内に、冷媒の流れる方向に沿った溝(凹凸)が凹凸構造18として形成されていてもよい。この溝は、副循環路3d,3e内で冷媒が流れる方向に沿って直線状に形成されていてもよいし、副循環路3d,3e内で螺旋状に形成されていてもよい。尚、凹凸構造18の例は、
図12に示した溝には限定されず、例えば、副循環路3d,3eの内面に形成される複数の窪み或いは突起であってもよい。このような凹凸構造18によって流体通路(副循環路3d,3e)を流れる冷媒に対する熱の伝達効率が向上する。つまり、副循環路3d,3eの内面での熱伝達率が向上することで、レシーバ9内の冷媒の液位の高低に応じて変化する副循環路3d,3eの外面での熱交換量の変化が、副循環路3d,3eの内面を介して、副循環路3d,3eを流れる冷媒に対して伝わり易くなる。その結果、レシーバ9内の冷媒の液位の高低を、より検出し易くなる。
【0084】
<2>
上記実施形態では、冷媒循環路3を流れる冷媒と熱交換する熱交換対象流体が、空調対象空間の空気である場合について説明したが、他の流体(気体又は液体)を熱交換対象流体として用いることもできる。例えば、水などの液体を熱交換対象流体として用いることもできる。この場合、熱交換対象流体としての水を熱交換器19で冷却又は加熱し、それによって得られる低温水又は高温水利用して冷房又は暖房を行うこともできる。
【0085】
<3>
上記実施形態では、排熱回収用熱交換器10を蒸発器として機能させた状態で液位検出工程を実施する例を説明したが、室内熱交換器14を蒸発器として機能させた状態(例えば、
図1に示した状態)で液位検出工程を実施することもできる。
【0086】
<4>
上記実施形態では、室内熱交換器14及び弁V2が室内機12の筐体13に収容されている例を説明したが、室内熱交換器14及び弁V2が室外機1の筐体2に収容されたようなヒートポンプシステムを構築することも可能である。
<5>
上記実施形態では、室外熱交換器(第1熱交換器)8が外気を用いて冷媒との熱交換を行わせているが、例えば、クーリングタワー等から供給される冷却水を用いて冷媒との熱交換を行わせることもできる。