(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗客コンベアの手摺を駆動するための駆動ローラと一体に設けられたスプロケットから外されたチェーンが移動可能な状態で前記チェーンの一部を位置決めするのに用いられるチェーン位置決め治具であって、
一対の挟持部及び一対のグリップ部であって、一体に構成される一方の前記挟持部及び一方の前記グリップ部が、一体に構成される他方の前記挟持部及び他方の前記グリップ部に対して支点を中心に相対回転することによって開閉動作が連動する前記一対の挟持部及び前記一対のグリップ部と、
前記一対の挟持部が被挟持部を挟持している状態を維持する挟持維持部と、を備え、
前記一対の挟持部のうちの前記一方の挟持部の先端部には、前記他方の挟持部の先端部側及び前記一方の挟持部の厚さ方向の両側が開口すると共に、前記チェーンを前記厚さ方向に移動可能に通過させる凹部を画定する凹部画定部が設けられ、
前記凹部画定部における前記他方の挟持部側の先端部と、前記他方の挟持部の先端部とで前記被挟持部を挟持することによって前記被挟持部に据え付けられる、チェーン位置決め治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボス部を軸部から外すためには、ボス部のスプロケットからチェーンを外す必要があるが、スプロケットから外されたチェーンは、重力により下方に落下する。よって、ボス部や軸受の取替後にチェーンを下方から取り上げてスプロケットに掛け渡す作業が必須となるが、この作業が作業効率を低下させる。
【0006】
そのような背景において、チェーンの一部を、ピンチ等を用いて駆動ローラの周辺の部位に据え付けると、チェーンが下方に落下するのを防止できる。しかし、そのようなチェーンの一部の据え付けは、チェーンの移動を不可能にし、チェーンが外されたスプロケットと一体の駆動ローラとは別の駆動ローラの近傍にチェーンの弛みを形成しにくくなる。その結果、当該別の駆動ローラと一体のスプロケットからチェーンが外れにくくなり、そのスプロケットが設けられたボス部の取り外しが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、駆動ローラが取り付けられるボス部の取り外しの際にチェーンが落下することを防止でき、チェーンが外されたスプロケットと一体の駆動ローラとは別の駆動ローラが取り付けられるボス部のスムーズな取り外しも可能になるチェーン位置決め治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチェーン位置決め治具は、乗客コンベアの手摺を駆動するための駆動ローラと一体に設けられたスプロケットから外されたチェーンが移動可能な状態で前記チェーンの一部を位置決めするのに用いられるチェーン位置決め治具であって、一対の挟持部及び一対のグリップ部であって、一体に構成される一方の前記挟持部及び一方の前記グリップ部が、一体に構成される他方の前記挟持部及び他方の前記グリップ部に対して支点を中心に相対回転することによって開閉動作が連動する前記一対の挟持部及び前記一対のグリップ部と、前記一対の挟持部が被挟持部を挟持している状態を維持する挟持維持部と、を備え、前記一対の挟持部のうちの前記一方の挟持部の先端部には、前記他方の挟持部の先端部側及び前記一方の挟持部の厚さ方向の両側が開口すると共に、前記チェーンを前記厚さ方向に移動可能に通過させる凹部を画定する凹部画定部が設けられ、前記凹部画定部における前記他方の挟持部側の先端部と、前記他方の挟持部の先端部とで前記被挟持部を挟持することによって前記被挟持部に据え付けられる。
【0009】
なお、一対のグリップ部及び一対の挟持部は、ペンチやバイスプライヤーで採用されている構成のように、一対のグリップ部を閉じた際に一対の挟持部が閉じる構成でもよい。又は、一対のグリップ部及び一対の挟持部は、洗濯バサミ(洗濯ピンチ)で採用されている構成のように、一対のグリップ部を閉じた際に一対の挟持部が開く構成でもよい。
【0010】
本発明によれば、一方の挟持部の先端部に、他方の挟持部の先端部側及び一方の挟持部の厚さ方向の両側が開口すると共にチェーンを通過させる凹部が設けられる。したがって、治具を被挟持部に据え付けた状態で、チェーンの一部を凹部内に収容でき、チェーンの一部を被挟持部の周辺に位置決めできる。よって、チェーンが重力で落下することを防止できるので、駆動ローラが取り付けられるボス部や軸受の取替後にチェーンを下方から取り上げる作業を省略でき、ボス部や軸受の取替の作業効率を向上できる。
【0011】
更には、チェーンが凹部に対して移動可能であるから、治具は、チェーンを移動可能に保持できる。したがって、チェーンが外されたスプロケットと一体の駆動ローラとは別の駆動ローラの近傍にチェーンの弛みを自在に形成することができる。よって、当該別の駆動ローラが取り付けられるボス部の取り外しもスムーズに行うことができる。
【0012】
また、本発明において、前記他方の挟持部の先端部には、前記被挟持部を挟持している状態で前記被挟持部に当接する平板部が設けられてもよい。
【0013】
上記構成によれば、他方の挟持部の先端部に被挟持部を挟持している状態で被挟持部に当接する平板部が設けられるので、大きな面積を有する平板部で被挟持部を均等に押圧できる。よって、治具が被挟持部に据え付けられた状態を安定に維持できる。
【0014】
また、本発明において、前記挟持維持部は、前記一方のグリップ部に固定される被係止部材と、前記他方のグリップ部に相対移動可能に取り付けられる係止部材と、を含み、前記被係止部材において前記一方のグリップ部から前記他方のグリップ部側に延在する歯部に前記係止部材の歯止めを係止することによって、前記一対の挟持部による前記被挟持部の挟持状態を維持してもよい。
【0015】
上記構成によれば、一方のグリップ部に固定された被係止部材の歯部に他方のグリップ部に相対移動可能に取り付けられた係止部材の歯止めを係止することによって、一対の挟持部による被挟持部の挟持状態を確実に維持できる。
【0016】
また、本発明において、前記挟持維持部は、前記一対の挟持部が閉じる方向に力を付勢する付勢部材を含んでもよい。
【0017】
上記構成によれば、挟持維持部を簡単安価に構成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るチェーン位置決め治具によれば、駆動ローラが取り付けられるボス部の取り外しの際にチェーンが落下することを防止でき、チェーンが外されたスプロケットと一体の駆動ローラとは別の駆動ローラが取り付けられるボス部のスムーズな取り外しも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、乗客コンベアがエスカレーターである場合について説明するが、乗客コンベアは複数の踏段が段差なく連なる動く歩道であってもよい。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。
【0021】
図1は、手摺駆動装置11を含むエスカレーター1の概略構成図である。また、
図2は、手摺駆動装置11の駆動ローラユニット15の軸方向の断面図である。本発明の一実施形態に係るチェーン位置決め治具30は、駆動ローラユニット15のメンテナンスに用いられる。以下では、先ず、
図1及び
図2を用いて、エスカレーター1、手摺駆動装置11、及び駆動ローラユニット15の構造について説明する。
【0022】
図1に示すように、エスカレーター1は、本体枠13、一対の欄干2、複数の踏段3、踏段チェーン6、上部踏段スプロケット4、下部踏段スプロケット5、駆動スプロケット7、駆動チェーン9、手摺10、手摺駆動スプロケット12、第1手摺チェーン18及び駆動機8を備える。
【0023】
本体枠13は、隣接する階床間に亘って配設され、一対の欄干2は、本体枠13の幅方向の両側に設けられる。踏段3は、一対の欄干2の間に配設される。複数の踏段3は踏段チェーン6により無端状に連結され、踏段チェーン6は、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケット5の間に掛け渡される。
【0024】
駆動スプロケット7は、上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられ、駆動チェーン9は、駆動スプロケット7と駆動機8の間に掛け渡される。駆動機8の駆動力が、駆動チェーン9、駆動スプロケット7、及び上部踏段スプロケット4を介して踏段チェーン6に伝達されることによって、踏段チェーン6が、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケットの間を循環移動し、それに伴って複数の踏段3が循環移動する。
【0025】
手摺10は、欄干2の周縁部に循環移動可能に取り付けられ、手摺駆動装置11によって循環移動する。詳しくは、手摺駆動装置11は,上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられた手摺駆動スプロケット12に巻き掛けられた第1手摺チェーン18により駆動される。
【0026】
手摺駆動装置11は、複数の駆動ローラユニット15、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、2連スプロケット21、及び第2手摺チェーン20を有する。駆動ローラユニット15には、駆動ローラ85(
図2参照)及び駆動ローラ用スプロケット86(
図2参照)が同軸上に一体に設けられる。駆動ローラ85、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、及び2連スプロケット21は、欄干2と略平行に延在する取付枠25(
図2参照)に回動自在に取り付けられる。
【0027】
加圧ローラ17は、手摺10を挟んで駆動ローラ85と対向する位置に配設され、アイドラスプロケット19は、駆動ローラユニット15よりも2連スプロケット21側に配設される。2連スプロケット21には、第1及び第2スプロケット21a,21bが同軸上に設けられる。
【0028】
第2手摺チェーン20は、無端のループ状であり、駆動ローラ用スプロケット86、アイドラスプロケット19、及び第1スプロケット21aに掛け渡される。詳述しないが、アイドラスプロケット19の軸部は、
図1に矢印Aで示す方向に延在する長孔(図示せず)に取り付けられ、アイドラスプロケット19の取付位置は、矢印A方向に移動可能になっている。このことから、第2手摺チェーン20の張力は、アイドラスプロケットの取付位置の調整によって調整可能になっている。駆動機8の動力により、第1手摺チェーン18を介して2連スプロケット21が回動し、その結果、第2手摺チェーン20が循環移動して、第2手摺チェーン20が掛け渡された駆動ローラ用スプロケット86と一体の駆動ローラ85が回動する。そして、駆動ローラ85の回動により、駆動ローラ85と加圧ローラ17に挟まれた手摺10が摩擦駆動される。加圧ローラ17は、手摺10を駆動ローラ85に押し付け、従動回転する。
【0029】
次に、駆動ローラユニット15の詳細な構造について説明する。
図2に示すように、駆動ローラユニット15は、軸部71、ボス部72、2つの転がり軸受73、駆動ローラ85、及びC型止め輪87を有する。軸部71は、取付枠25において鉛直方向に延在する平板状の本体部25aと一体に構成され、本体部25aの一方側表面からその法線方向に突出する。ボス部72は、2つの転がり軸受73を介して軸部71に回動自在に取り付けられる。ボス部72の外周面の本体部25a側には、駆動ローラ用スプロケット86が設けられ、駆動ローラ用スプロケット86には、第2手摺チェーン20が掛け渡される。
【0030】
ボス部72の外周面の本体部25a側とは反対側には、駆動ローラ取付用の円筒外周面75が設けられ、ボス部72の本体部25a側とは反対側の軸方向の端面には、駆動ローラ85を取り付けるためのタップ孔が設けられる。また、駆動ローラ85は、全体として円形キャップ状の形状を有し、円板部93が筒部94の軸方向の一方側に配設された構成を有し、円板部93には、軸部挿通孔85a及びボルト挿通孔85bが設けられる。筒部94を円筒外周面75に外嵌した状態でボルト89を円板部93のボルト挿通孔85b及びボス部72のタップ孔に締め込むことによって、駆動ローラ85がボス部72に取り付けられる。C型止め輪87は、軸部71の先端部に設けられたC型止め輪取付用の環状溝に陥入される。C型止め輪87は、転がり軸受73が軸部71から外れるのを防止するために設けられる。なお、駆動ローラ85は、軸部71を中心として回転し、駆動ローラ85の周面の加圧ローラ17と対向する部分が手摺10に接触して、手摺10を送る。
【0031】
次に、チェーン位置決め治具30の構造について説明する。
図3は、チェーン位置決め治具30の正面図である。
図3に示すように、治具30は、一対の挟持部40a,40bと、一対のグリップ部41a,41bと、一対の連結部42a,42bと、挟持維持部45とを備える。一方の連結部42aは、一方の挟持部40aと一方のグリップ部41aとを連結し、他方の連結部42bは、他方の挟持部40bと他方のグリップ部41bとを連結する。この例では、ペンチやバイスプライヤーのように、一対のグリップ部41a,41bを閉じた際に一対の挟持部40a,40bが閉じるように構成されているが、後に変形例で説明するように、洗濯バサミのように、一対のグリップ部を閉じた際に一対の挟持部が開く構成でもよい。
【0032】
一方の連結部42aは貫通孔を有し、他方の連結部42bはその貫通孔を通過している。他方の連結部42bは、治具30の厚さ方向Z(紙面に垂直な方向)で貫通孔に重なる箇所において厚さ方向Zに延在するピポット48で一方の連結部42aに回動自在に取り付けられる。他方の連結部42bは、ピポット48の中心を支点として一方の連結部42aに対して回転自在になっている。
【0033】
係る構成によって、一方の連結部42aに一体に構成された一方のグリップ部41aと、他方の連結部42bに一体に構成された他方のグリップ部41bとが、矢印B方向に開閉自在となり、一方の連結部42aに一体に構成された一方の挟持部40aと、他方の連結部42bに一体に構成された他方の挟持部40bとが、矢印C方向に開閉自在となる。一対のグリップ部41a,41bが同時に握られて、一方のグリップ部41aと他方のグリップ部41bとが互いの距離が短くなるように閉じると、一方の挟持部40aと他方の挟持部40bとが互いの距離が短くなるように閉じ、一対の挟持部40a,40bが被挟持部を挟持する。
【0034】
一方の挟持部40aの先端部には、凹部画定部50が設けられる。凹部画定部50は、他方の挟持部40bの先端側(治具30の幅方向Yにおける他方の挟持部40b側)が開口すると共に厚さ方向Zの両側も開口する。凹部画定部50は、厚さ方向Zに垂直な断面で略矩形の凹部51を画定する。また、他方の挟持部40bの先端部には、被挟持部を挟持している状態で被挟持部に当接する平板部53が設けられる。
【0035】
凹部画定部50は、一方の挟持部40aの本体部56に回動可能に取り付けられた取付部57を有し、本体部56に対し矢印Dで示す方向に揺動可能になっている。また、平板部53も、他方の挟持部40bの本体部58に回動可能に取り付けられた取付部59を有し、本体部58に対し矢印Eで示す方向に揺動可能になっている。その結果、挟持部40a,40bが被挟持部を挟持する際、凹部画定部50及び平板部53が、被挟持部の形状に応じた(ならった)姿勢になるように自発的に揺動し、挟持部40a,40bが、大きな力で挟持部を挟持できる。
【0036】
なお、凹部画定部50が、断面略矩形の凹部51を画定する場合について説明したが、凹部画定部は、厚さ方向Zに垂直な断面で如何なる形状の凹部を画定してもよく、例えば、断面半円や断面半楕円の凹部を画定してもよい。また、凹部画定部50及び平板部53が揺動可能である場合について説明したが、凹部画定部及び平板部の一方又は両方は、揺動不可能であってもよい。また、他方の挟持部40bの先端部に平板部53を設ける場合について説明したが、他方の挟持部の先端部に平板部が設けられなくてもよい。
【0037】
挟持維持部45は、被係止部材60と、係止部材61とを有する。被係止部材60は、一方のグリップ部41aに相対移動不可に取り付けられる。被係止部材60は、平面視で円弧状の形状を有し、一方のグリップ部41aから他方のグリップ部41bの方に延びる。被係止部材60の治具30の長手方向Xにおけるピポット48側とは反対側には、長手方向Xの外側に凸の円弧面70が設けられる。また、その円弧面70には、複数の三角形状の歯からなるノコギリ歯状の歯部79が円弧面70の延在方向に沿って配設される。
【0038】
係止部材61は、他方のグリップ部41bに相対移動可能に取り付けられる。係止部材61は、基部63及び係止部64を有し、係止部64は、基部63に締結部材65により相対移動不可に取り付けられる。基部63は、他方のグリップ部41bに図示しない支点を中心に矢印F方向に回動可能に取り付けられる。例えば、基部63の図における左下端部をピンなどで他方のグリップ部41bにピポット固定することができる。係止部64の先端部には、円弧面70に対応する円弧面68が設けられ、その円弧面68には、複数の三角形状の歯からなるノコギリ歯状の歯部が延在方向に沿って配設される。円弧面68の歯部は、歯止めを構成する。
【0039】
基部63が矢印F方向の被係止部材60側に回動すると、被係止部材60の円弧面70の歯部に係止部64の歯部が噛み合う。基部63は、図示しない付勢部材によって常時矢印F方向の被係止部材60側に付勢されている。例えば、基部63の図における右下端部と他方のグリップ部41bの間にばねを配置することができる。もちろん付勢部材を設けずに、ユーザが基部63を操作して、係止部64と被係止部材60の係止、非係止を変更してもよい。この際、大きな静止摩擦力で係止部64と被係止部材60の係止を実行してもよい。また、各種ロック機構により、グリップ部41a,41b間の移動をロックできるようにしてもよい。一対のグリップ部41a,41bが同時に握られると、係止部64の円弧面68が被係止部材60の円弧面70上を一方のグリップ部41a側に移動する。その後、挟持部40a,40bが被挟持部を挟持すると、係止部64の円弧面68の歯部が、上記付勢部材の付勢力によって被係止部材60の円弧面70の歯部に噛み合う。この歯部同士の噛み合いによって、挟持状態が安定に維持される。なお、後に変形例で説明するように、グリップ部41a,41bの開放側の両先端間にばねを配設し、通常には両者が開く側に付勢することもできる。
【0040】
他方、ユーザからの上記付勢力よりも大きな力で基部63が矢印F方向の他方側に移動すると、係止部64が被係止部材60から離れ、歯部同士の噛み合いが外れる。その結果、一方のグリップ部41aが他方のグリップ部41bに対して自在に相対移動可能になり、挟持部40a,40bによる挟持状態が解除される。
【0041】
次に、
図4〜
図9を主に用いて、駆動ローラユニット15(
図2参照)から、駆動ローラ85、ボス部72及び2つの転がり軸受73を取り替える場合を例に治具30の用い方を説明する。
図4、
図6及び
図8は、
図1において、欄干2の延在方向でアイドラスプロケット19の片側に配設された2つの駆動ローラユニット15のメンテナンス途中状態を示す正面図である。また、
図5は、
図4に示す領域を、矢印Gで示す方向から見たときのメンテナンス途中状態における駆動ローラユニット15の一部断面図であり、
図7は、
図5に示す領域を、矢印Hで示す方向から見たときのメンテナンス途中状態における駆動ローラユニット15の一部断面図である。また、
図9は、
図8に示す領域を、矢印Iで示す方向から見たときのメンテナンス途中状態における駆動ローラユニット15の一部断面図である。
【0042】
先ず、
図5に示すように、
図2に示すメンテナンス前の駆動ローラユニット15からボルト89を取り外すことによってメンテナンス前の駆動ローラユニット15から駆動ローラ85を離脱させ、その後、駆動ローラユニット15からC型止め輪87を取り外す。この状態で、
図5に示すように、転がり軸受73が軸部71からその軸方向に取り外し可能になる。また、この状態で、
図4に示すように、第2手摺チェーン20が、一方の駆動ローラ用スプロケット86の上側から他方の駆動ローラ用スプロケット86の上側に延びるのが視認され、第2手摺チェーン20が、各駆動ローラ用スプロケット86の上側及び一方側の側方に掛け渡されるのが視認される。
【0043】
次に、
図1を参照して、アイドラスプロケット19を
図1に矢印Aで示す方向における駆動ローラユニット15側に移動させ、第2手摺チェーン20を弛める。その後、
図6及び
図7に示すように、複数のプラスドライバー90を第2手摺チェーン20と一方の駆動ローラ用スプロケット86との間に挿入する。複数のプラスドライバー90は、互いに間隔をおいて配置され、各プラスドライバー90は、駆動ローラ用スプロケット86の歯の間に挿入される。このようにして、複数のプラスドライバー90で第2手摺チェーン20を一方の駆動ローラ用スプロケット86から上方に浮かし、第2手摺チェーン20と一方の駆動ローラ用スプロケット86との噛合を外す。
【0044】
続いて、
図8及び
図9に示すように、一方の駆動ローラ用スプロケット86から上方に浮かした第2手摺チェーン20を複数の治具30によって取付枠25に据え付ける。詳しくは、
図9に示すように、取付枠25は、本体部25aの上部から本体部25aに垂直な方向(水平方向)に延在する平板状の垂直延在部25bを有する。浮かした第2手摺チェーン20を、各治具30の凹部画定部50の凹部51内を治具30の厚さ方向の一方側から他方側に通過させた状態で一対のグリップ部41a,41bを閉じることによって一対の挟持部40a,40bで垂直延在部25bを挟持する。垂直延在部25bは、被挟持部を構成する。
図8に示すように、複数の治具30は、取付枠25の延在方向(欄干2(
図1参照)の延在方向)に間隔をおいて配置される。なお、
図8では、一対の挟持部40a,40bによる挟持状態を理解し易くするため、治具30は、挟持部40a,40bの先端部のみが示されている。
【0045】
治具30が配置される際、凹部画定部50及び平板部53は、垂直延在部25bの形状に応じた姿勢になるように自発的に揺動する。そして、凹部画定部50の2つの側壁の先端50a,50bが垂直延在部25bの一方側面に当接し、平板部53が垂直延在部25bの他方側面に当接する。この状態で、挟持維持部45の係止部64の円弧面68の歯部が、被係止部材60の円弧面70の歯部79に噛み合い、一対の挟持部40a,40bによる挟持状態が安定に維持される。
【0046】
その後、一方の駆動ローラユニット15のボス部72の内側段部76(
図9参照)に公知のギヤプーラー(図示せず)の爪を引っ掛けて、ギヤプーラーを介してボス部72に軸方向外側の力を付与することにより、軸部71からその軸方向にボス部72及び2つの転がり軸受73を引き抜く。この作業と同時又は時間差をもうけて、例えば、
図8の紙面で右側に示す他方の駆動ローラユニット(別の駆動ローラユニット)15においても、
図8の紙面で左側に示す一方の駆動ローラユニット15と同様に、プラスドライバーが用いられることによって第2手摺チェーン20が駆動ローラ用スプロケット86から外される。
【0047】
続いて、一方の駆動ローラユニット15において、新しいボス部72及び2つの転がり軸受73からなるアッセンブリが軸部71に挿入された後、C型止め輪87(
図2参照)が軸部71の環状溝に嵌入され、新しい駆動ローラ85がボルト89によってボス部72に取り付けられる。この作業と同時又は時間差をもうけて、他方の駆動ローラユニット15においても、2つの転がり軸受73、ボス部72及び駆動ローラ85が取り替えられる。なお、他方の駆動ローラユニット15における2つの転がり軸受73、ボス部72及び駆動ローラ85の取替においても治具30が用いられてもよい。
【0048】
続いて、挟持維持部45の基部63を矢印F方向の被係止部材60側とは反対側に移動させて係止部64と被係止部材60との噛合を解除することによって、治具30を垂直延在部25bから取り外す。その後、第2手摺チェーン20を全ての治具30の凹部51から取り出した後、一方及び他方の駆動ローラユニット15の駆動ローラ用スプロケット86に掛け渡すことによって、一方及び他方の駆動ローラユニット15のメンテナンスが完了する。
【0049】
上記実施形態の治具30によれば、一方の挟持部40aの先端部に、他方の挟持部40bの先端部側及び一方の挟持部40aの厚さ方向の両側が開口すると共に第2手摺チェーン20を通過させる凹部51が設けられる。したがって、治具30を垂直延在部25bに据え付けた状態で第2手摺チェーン20の一部を凹部51内に収容でき、第2手摺チェーン20の一部を垂直延在部25bの周辺に位置決めできる。よって、第2手摺チェーン20が重力で落下できることを防止できるので、ボス部72や転がり軸受73の取替後に第2手摺チェーン20を下方から取り上げる作業を省略でき、駆動ローラ85や転がり軸受73の取替の作業効率を向上できる。
【0050】
また、第2手摺チェーン20が凹部51に対して移動可能であるので、治具30は第2手摺チェーン20を移動可能に保持できる。したがって、第2手摺チェーン20が外された駆動ローラユニット15とは別の駆動ローラユニット15の近傍に第2手摺チェーン20の弛みを自在に形成することができ、当該別の駆動ローラユニット15におけるボス部72や転がり軸受73の取替もスムーズに行うことができる。
【0051】
また、他方の挟持部40bの先端部に、垂直延在部25bを挟持している状態で垂直延在部25bに当接する平板部53が設けられるので、大きな面積を有する平板部53で垂直延在部25bを均等に押圧できる。よって、治具30が垂直延在部25bに据え付けられた状態を安定に維持できる。
【0052】
更には、一方のグリップ部41aに固定された被係止部材60の歯部79に他方のグリップ部41bに相対移動可能に取り付けられた係止部材61の歯部を係止することによって、一対の挟持部40a,40bによる垂直延在部25bの挟持状態を確実に維持できる。
【0053】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、挟持維持部45が、一方のグリップ部41aに固定された歯部79に他方のグリップ部41bに相対移動可能に取り付けられた係止部64を係止することによって挟持状態を維持する場合について説明した。しかし、挟持維持部は、一方のグリップ部と他方のグリップ部とを連結するように配設されて、一方及び他方のグリップ部を開き方向(一方及び他方の挟持部を閉じ方向(挟持方向))に付勢する付勢部材(例えば、ばねで構成される)を含んでもよい。そして、一対のグリップ部が握られて閉じると、一対の挟持部が閉状態から一時的に開く構成でもよい。
【0055】
また、挟持維持部は、洗濯バサミ(洗濯ピンチ)と同様な構造で構成されてもよい。すなわち、挟持維持部は、金属製のC型リングで構成されてもよく、C型リングの一方側の先端部を一方の挟持部に固定する一方、C型リングの他方側の先端部を他方の挟持部に固定してもよい。そのようにして、C型リングで一対の挟持部を閉じ方向に付勢してもよく、一対のグリップ部が握られて閉じる方向に移動すると、C型リングがその間隙が広がるように変形することによって一対の挟持部が閉状態から一時的に開く構成でもよい。
【0056】
また、
図3に示すように、一体に構成された一方の挟持部40a及び一方のグリップ部41aと、一体に構成される他方の挟持部40b及び他方のグリップ部41bとが、互いにクロスするように配置される場合について説明した。しかし、洗濯バサミ(洗濯ピンチ)で採用されている構成のように、一体に構成される一方の挟持部及び一方のグリップが、一体に構成される他方の挟持部及び他方のグリップに対してクロスしない状態で他方の挟持部及び他方のグリップに対して支点を中心に相対回転する構成でもよい。