【実施例】
【0072】
以下、本発明に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、ガラス転移点が210℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM 9011−1000‐NB〕100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、平均粒子径が110nmの疎水性シリカ球状微粒子〔信越化学工業社製 製品名:X‐24‐9163A〕をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して0.5質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
【0073】
ポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X−DSC7000〕を用い、JISK7121に準拠し、昇温速度10℃/分の条件で測定した。また、ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子とは、同方向回転二軸押出機のシリンダー温度340℃、ダイス温度340℃の条件下で同方向回転二軸押出機の原料投入口側のベントを開放した状態で溶融混練し、成形材料に調製した。ダイスの温度から溶融混練時の温度を測定したところ、371℃であった。
【0074】
なお、ガラス転移点が210℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM 9011−1000‐NB〕は、以後、9011−1000と略称する。
【0075】
次いで、調製した成形材料を150℃に加熱した除湿熱風乾燥機〔松井製作所社製 製品名:マルチジェット MJ3〕に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入してその幅900mmのTダイスから連続して押し出すことにより、帯形の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成形した。成形材料の水分率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名:CA‐100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により確認した。以後、成形材料の水分率については、同様の方法により測定した。
【0076】
成形材料を単軸押出機に投入する際、窒素ガス18L/分を供給した。また、単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューとした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は310〜360℃、Tダイスの温度は360〜365℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は360℃、ギアポンプは365℃に調整した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、342℃であった。
【0077】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成形したら、連続した非晶性熱可塑性樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅620mmの非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造した。非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、シリコーンゴムを周面に有する一対の圧着ロール、冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させることにより、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表裏両面に微細な複数の凹凸部を形成した。
【0078】
各圧着ロールのシリコーンゴムの算術平均粗さ(Ra)は、0.44〜0.47μmとした。また、金属ロールとしては、算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を周面に備えた150℃のエッチングロールを用いた。
【0079】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したら、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表1にまとめた。非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面粗さは算術平均粗さ(Ra)、滑り性は静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)、機械的特性は引張強度と引張破断時伸び、耐熱性は貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度、電気的特性は絶縁破壊電圧、音響特性は損失正接で評価した。
【0080】
・フィルム厚
フィルム厚が3〜10μmの非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚さについては、接触式厚さ計〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301 Marh−LVDTを取り付けた装置〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを越え、〜150μmの非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC‐25PJ〕を使用して測定した。
【0081】
測定に際しては、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)とが交わる所定の厚みを100箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの先端部から100mm間隔で100mm、200mm、300mm、400mm、500mmの位置とした。これに対し、幅方向の測定箇所は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの左端部から25mm、次いで30mm間隔で55mm、85mm、115mm、145mm、175mm、205mm、235mm、265mm、295mm、325mm、355mm、385mm、415mm、445mm、475mm、505mm、535mm、565mm、595mmの箇所とした。
【0082】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面性
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面性については、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面を指で触れ、その触感で評価した。具体的には、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面が滑らかな場合を○、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面がゴツゴツした状態の場合を×とした。
【0083】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面粗さ
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で評価した。具体的には、JIS B0601‐2001に準じ、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの縦方向(押出方向)について、圧着ロール面側と冷却ロール面側とをそれぞれ測定した。
【0084】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの滑り性(非晶性熱可塑性樹脂フィルム同士の滑り性)
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの滑り性については、静摩擦係数と動摩擦係数により評価した。これら静摩擦係数と動摩擦係数は、JIS K7125‐1999に準じて測定した。具体的には、表面性測定機〔新東科学社製 製品名:HEDON−14〕を用い、23℃、50%RHの環境下で、試験速度100mm/min、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定した。そして、この条件で移動テーブル側に非晶性熱可塑性樹脂フィルムの冷却ロール面側、平面圧子側に非晶性熱可塑性樹脂フィルムの圧着ロール面側をそれぞれ固定し、200gの負荷を作用させ、試験速度:100mm/minで静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。
【0085】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの滑り性(非晶性熱可塑性樹脂フィルムとポリカーボネート樹脂フィルムとの滑り性)
非晶性熱可塑性樹脂フィルムとポリカーボネート樹脂フィルムとの滑り性についても、静摩擦係数と動摩擦係数により評価した。ポリカーボネート樹脂フィルムについては、市販されている厚さ0.5mmのポリカーボネート樹脂フィルム〔タキロン社製 製品名:PCSMPS610 ポリカーボネート/透明〕を用いた。
【0086】
静摩擦係数と動摩擦係数は、JIS K7125‐1299に準拠して測定した。具体的には、表面性測定機〔新東科学社製 製品名:HEDON−14〕を用い、23℃、50%RHの環境下で、試験速度100mm/min、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定した。そして、この条件で移動テーブル側に非晶性熱可塑性樹脂フィルムの冷却ロール面側、平面圧子側に非晶性熱可塑性樹脂フィルムの圧着ロール面側をそれぞれ固定し、200gの負荷を作用させ、試験速度:100mm/minで静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。
【0087】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの機械的特性
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの機械的特性は、引張強度と引張破断伸びで評価した。具体的には、23℃、50%RHの環境下でJIS K6781に準じ、引張速度50mm/minで押出方向と幅方向を測定した。引張強度として、最大強度を測定した。
【0088】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性は、貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度により評価した。この非晶性熱可塑性樹脂フィルムの貯蔵弾性率は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの押出方向の貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出して測定した。
【0089】
貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60℃〜300℃、チェック間21mmの条件で測定した。
【0090】
第一変曲点温度は、
図3に示すように、貯蔵弾性率の変化曲線に対する2つの直線部を延長した交点の温度とした。第一変曲点温度を求める場合には、先ず、貯蔵弾性率の最初に急激に低下する前の直線部を高温側に延長して1本目の直線aを引き、貯蔵弾性率が最初に急激に低下した後の直線部を低音側に延長して2本目の直線bを引き、その後、両線a、bの交点における垂直線を横軸の温度軸に引き、その温度を第一変曲点温度とした。
【0091】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの電気的特性
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの電気的特性は、絶縁破壊電圧により評価した。この絶縁破壊電圧については、JIS C2110‐1994に準じ、気中法による短時間絶縁破壊試験で測定した。具体的には、23℃の環境下で、冷却ロール面側より絶縁破壊電圧を測定し、評価した。絶縁破壊試験機は耐電圧・絶縁抵抗試験機〔菊水電子工業社製 製品名:TOS9201〕、電極は気中試験電極装置〔多摩電測社製 製品名:TJ‐20〕を使用した。電極の形は円柱形(上部形状 直径25mm、高さ25mm、下部形状 直径25mm、高さ15mm)とした。
絶縁破壊試験機の測定上限値は6100Vなので、6100Vに達した非晶性熱可塑性樹脂フィルムの電気的特性は評価しないこととした。
【0092】
・非晶性熱可塑性樹脂フィルムの音響特性
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの音響特性は、20℃における損失正接で評価した。この非晶性熱可塑性樹脂フィルムの損失正接は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
【0093】
具体的には、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出して測定した。測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60℃〜300℃、チェック間21mmの条件で測定した。
【0094】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様だが、疎水性シリカ球状微粒子の添加量をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して1.0質量部に変更した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、376℃であった。また、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、343℃であった。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したら、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表1にまとめた。
【0095】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様だが、疎水性シリカ球状微粒子の添加量をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して5.0質量部に変更した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、376℃であった。また、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、346℃であった。金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた180℃のエッチングロールに変更した。
【0096】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したら、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表1にまとめた。
【0097】
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様だが、疎水性シリカ球状微粒子の添加量をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して10質量部に変更した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、372℃であった。また、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、341℃であった。金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた210℃のエッチングロールに変更した。
【0098】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表1にまとめた。但し、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧が6100Vに達したので、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧については評価しなかった。
【0099】
【表1】
【0100】
〔実施例5〕
ガラス転移点が211℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM 1010−1000‐NB〕100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、平均粒子径が35nmの疎水性シリカ球状微粒子〔信越化学工業社製 製品名:X‐24‐9404〕をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して5.0質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、379℃であった。
【0101】
なお、ガラス転移点が211℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM 1010−1000‐NB〕は、以後、1010−1000と略称する。
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、340℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた210℃のエッチングロールに変更した。
【0102】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表2に記載した。但し、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧が6100Vに達したので、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧については評価しなかった。
【0103】
〔実施例6〕
実施例5のポリエーテルイミド樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、平均粒子径が77nmの疎水性シリカ球状微粒子〔信越化学工業社製 製品名:X‐24‐9600‐80〕をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して3.0質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、375℃であった。
【0104】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、342℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を周面に備えた180℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表2に記載した。
【0105】
〔実施例7〕
ガラス転移点が222℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM CRS5001−1000‐NB〕100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例6の疎水性シリカ球状微粒子をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して15質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
【0106】
同方向回転二軸押出機のシリンダー温度は350℃、ダイス温度は350℃に変更した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、385℃であった。
なお、ガラス転移点が222℃のポリエーテルイミド樹脂〔SABIC イノベーティブプラスチックス社製 製品名:ULTEM CRS5001−1000‐NB〕は、以後、CRS5001−1000と略称する。
【0107】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、単軸押出成形機のシリンダー温度は310〜370℃、Tダイスの温度は370〜375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃、ギアポンプは375℃に変更した。成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、353℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた210℃のエッチングロールに変更した。
【0108】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表2に記載した。但し、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧が6100Vに達したので、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧については評価しなかった。
【0109】
〔実施例8〕
ガラス転移点が220℃のポリエーテルサルホン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名ベラデルポリエーテルサルホン A‐301NT〕100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリエーテルサルホン樹脂100質量部に対して3.0質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
【0110】
同方向回転二軸押出機のシリンダー温度は350℃、ダイス温度は350℃に変更した。ポリエーテルサルホン樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、383℃であった。
なお、ガラス転移点が220℃のポリエーテルサルホン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名ベラデルポリエーテルサルホン A‐301NT〕は、以後、A‐301NTと略称する。
【0111】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、単軸押出成形機のシリンダー温度は310〜370℃、Tダイスの温度は370〜375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃、ギアポンプは375℃に変更した。成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、355℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を周面に備えた150℃のエッチングロールに変更した。
【0112】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表2に記載した。
【0113】
【表2】
【0114】
〔実施例9〕
ガラス転移点が218℃のポリフェニルサルホン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名レーデルポリフェニルサルホン R‐5000NT〕100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリフェニルサルホン樹脂100質量部に対して1.0質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。
【0115】
同方向回転二軸押出機のシリンダー温度は350℃、ダイス温度は350℃とした。ポリフェニルサルホン樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、380℃であった。
なお、ガラス転移点が218℃のポリフェニルサルホン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名レーデルポリフェニルサルホン R‐5000NT〕は、以後、R‐5000NTと略称する。
【0116】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、単軸押出成形機のシリンダー温度は310〜370℃、Tダイスの温度は370〜375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃、ギアポンプは375℃に変更した。成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、355℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた210℃のエッチングロールに変更した。
【0117】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表3に記載した。但し、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧が6100Vに達したので、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧については評価しなかった。
【0118】
【表3】
【0119】
〔比較例1〕
実施例1のポリエーテルイミド樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して0.02質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、370℃であった。
【0120】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、343℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を周面に備えた150℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表4に記載した。
【0121】
〔比較例2〕
実施例1のポリエーテルイミド樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して25質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、373℃であった。
【0122】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、347℃であった。金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた180℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表4に記載した。
【0123】
〔比較例3〕
実施例8のポリエーテルサルホン樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリエーテルサルホン樹脂100質量部に対して0.05質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルサルホン樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、381℃であった。
【0124】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、348℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を周面に備えた150℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表4に記載した。
【0125】
〔比較例4〕
実施例9のポリフェニルサルホン樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、実施例1の疎水性シリカ球状微粒子をポリフェニルサルホン樹脂100質量部に対して25質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリフェニルサルホン樹脂と疎水性シリカ球状微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、386℃であった。
【0126】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、359℃であった。また、金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた210℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表4に記載した。
【0127】
【表4】
【0128】
〔比較例5〕
実施例1のポリエーテルイミド樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、平均粒子径が6.4nmの真球状シリカ微粒子〔アドマテックス社製 製品名:5μm‐E1〕をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して5.0質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と真球状シリカ微粒子との溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、369℃であった。
【0129】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、341℃であった。金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた180℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表5に記載した。但し、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧が6100Vに達したので、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの絶縁破壊電圧については評価しなかった。
【0130】
〔比較例6〕
実施例1のポリエーテルイミド樹脂100質量部を同方向回転二軸押出機の原料投入口に投入して溶融させ、同方向回転二軸押出機のダイス側のサイドフィーダに、平均粒子径が0.07μmの合成炭酸カルシウム〔Specialty Minerals Inc。社製 製品名:MULTIFEX‐MM〕をポリエーテルイミド樹脂100質量部に対して10質量部となるように供給して溶融混練分散させ、溶融混練物を同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後にペレタイザーでカットすることにより、ペレット形の成形材料を調製した。ポリエーテルイミド樹脂と合成炭酸カルシウムとの溶融混練温度を実施例1と同様に測定したところ、372℃であった。
【0131】
以下、実施例1と同様にして非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造したが、成形材料をφ40mmの単軸押出機に投入して溶融させた際の温度を測定したところ、343℃であった。金属ロールは、算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を周面に備えた150℃のエッチングロールに変更した。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造後、この非晶性熱可塑性樹脂フィルムのフィルム厚、表面状態、表面粗さ、滑り性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性を評価して表5に記載した。
【0132】
【表5】
【0133】
〔結 果〕
各実施例の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、引張強度が80N/mm
2以上とし、引張破断時伸びが90%以上、耐熱性(貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度)が200℃以上、電気的特性が絶縁破壊電圧で250V/μm以上、音響特性が20℃における損失正接で0.015以上であり、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性に優れていた。また、滑り性が静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)で1.0以下であり、優れた滑り性を得ることができた。
【0134】
これに対し、比較例1、3の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、機械的特性、耐熱性、電気的特性、及び音響特性に優れるものの、フィルム同士が貼り付き、滑り性を得ることができなかった。
比較例2、4の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、滑り性が静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)で1.0以下であり、優れた滑り性を得ることができた。また、耐熱性も200℃以上であり、耐熱性にも優れていた。しかしながら、引張強度が50N/mm
2未満、引張破断時伸びが50%未満、電気的特性が絶縁破壊電圧で200V/μm未満、音響特性が20℃における損失正接で0.015未満であり、機械的特性、電気的特性、及び音響特性が不十分であった。
【0135】
比較例5、6の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、滑り性が静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)で1.0以下であり、優れた滑り性を得られた。また、耐熱性が200℃以上、音響特性が20℃における損失正接で0.015以上であり、優れた耐熱性と音響特性を得ることができた。しかし、フィルムの表面がゴツゴツしており、滑らかさがきわめて不十分であった。また、張強度が50N/mm
2未満、引張破断時伸びが50%未満、電気的特性が絶縁破壊電圧で200V/μm未満であり、機械的特性と電気的特性が不十分であった。