特許第6671276号(P6671276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671276TL1A機能および関連するシグナル経路の抑制による線維症および炎症の緩和および回復
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671276
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】TL1A機能および関連するシグナル経路の抑制による線維症および炎症の緩和および回復
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20200316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61P43/00 105
   A61P29/00
   A61P1/00
   !C07K16/24
【請求項の数】24
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-505570(P2016-505570)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公表番号】特表2016-522164(P2016-522164A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】US2014032054
(87)【国際公開番号】WO2014160883
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/805,806
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/872,020
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398062149
【氏名又は名称】セダーズ−シナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シー, デイビッド キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ターガン, ステファン アール.
(72)【発明者】
【氏名】リ, ダリン
(72)【発明者】
【氏名】ビルスボロー, ジャニーン
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−526756(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0079611(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317388(US,A1)
【文献】 Gastroenterology,2008年,Vol.135,pp.552-567
【文献】 INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR MEDICINE,2007年,Vol.19,pp.941-946
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 1/00
A61P 29/00
A61P 43/00
C07K 16/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常者におけるIL31RAを含む遺伝子から発現される遺伝子発現産物のレベルと比較して高レベルの前記遺伝子発現産物を発現すると判定された対象における線維症の治療に使用するために前記遺伝子発現産物の発現を低減させるための組成物であって、前記組成物は、TL1A−DR3シグナル伝達機能抑制物質を含み、前記TL1A−DR3シグナル伝達機能抑制物質は、TL1Aに直接結合することでTL1A機能を抑制するTL1A遮断抗体を含む、組成物。
【請求項2】
前記線維症から炎症前のレベルまで回復させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記線維症が結腸の線維症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記対象における腸炎症を抑制するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記対象における原発性腸筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
健常者におけるIL31RAを含む遺伝子から発現される遺伝子発現産物のレベルと比較して高レベルの前記遺伝子発現産物を発現すると判定された対象における前記遺伝子発現産物の発現を低減させることにより線維症の回復に使用するための組成物であって、前記組成物は、TL1A抑制物質を含み、前記TL1A抑制物質は、TL1Aに直接結合することでTL1A機能を抑制するTL1A遮断抗体を含む、組成物。
【請求項8】
健常者におけるIL31RAを含む遺伝子から発現される遺伝子発現産物のレベルと比較して高レベルの前記遺伝子発現産物を発現すると判定された線維症を有する対象における前記遺伝子発現産物の発現を低減させるために使用するための組成物であって、前記組成物は、TL1Aに直接結合することでTL1A機能を抑制するTL1A遮断抗体を含む、組成物。
【請求項9】
前記組成物が前記対象へ静脈注射によって投与されることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記遺伝子発現産物がRNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記遺伝子発現産物がタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記遺伝子発現産物がRNAを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
前記遺伝子発現産物がタンパク質を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
前記遺伝子発現産物がRNAを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項15】
前記遺伝子発現産物がタンパク質を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項16】
前記遺伝子が、IFNG、CTGF、IL17、TGFB1、COLLA2及び/またはIGF1を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記遺伝子が、IFNG、CTGF、IL17、TGFB1、COLLA2及び/またはIGF1を更に含む、請求項に記載の組成物。
【請求項18】
前記遺伝子が、IFNG、CTGF、IL17、TGFB1、COLLA2及び/またはIGF1を更に含む、請求項に記載の組成物。
【請求項19】
前記対象における腸炎症の抑制のための、請求項に記載の組成物。
【請求項20】
前記対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項に記載の組成物。
【請求項21】
前記対象における原発性腸筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項に記載の組成物。
【請求項22】
前記対象における腸炎症の抑制のための、請求項に記載の組成物。
【請求項23】
前記対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項に記載の組成物。
【請求項24】
前記対象における原発性腸筋線維芽細胞の数を減少させるための、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TL1A機能及び線維症に関する状態の治療及び診断のための方法ならびに組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の全ての出版物は、個々の出版物または特許出願が参照によって特に及び個々に組み込まれるよう指示されたかのように、参照によって同程度まで組み込まれる。以下の記載には本発明の理解に役立ち得る情報が含まれる。これは、本明細書に提供される情報のいずれもが先行技術であることもしくは本願発明と関連していること、または特にもしくは暗黙的に参照されたあらゆる出版物が先行技術であることを承認するものではない。
【0003】
Crohn病(CD)は、斑上の全層性炎症及び繊維性狭窄(fibrostenosis)などの病理学的特徴を伴う慢性炎症状態である。強力な消炎症療法にも関わらず、CD患者の最大20%が依然として外科的処置の必要な構造的合併症を発症する。線維症を制御する経路は、炎症を媒介する経路とは異なり得る。TNFスーパーファミリーのメンバーであるTL1Aは、デスドメイン受容体3(DR3)と結合し、適応的免疫応答を調節する。TL1Aは、CD、腸の繊維性狭窄、及びより高い外科手術の必要性に関連し得る。確立された線維症を回復するための療法を含む、TL1A/DR3シグナル経路と関連する疾患、CD、ならびに関連する合併症を治療するための新規かつ効果的な療法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に記載の様々な実施形態には、対象における線維症の治療方法が含まれ、これには1つ以上のTL1A機能抑制物質を含む組成物を提供すること、及び治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。一実施形態において、組成物には1つ以上のTL1A遮断抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物には1つ以上のDr3遮断抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物にはTL1Aと直接結合することでTL1A機能を抑制する1つ以上の化合物が含まれる。別の実施形態において、組成物には、Ifngamma、IL17、Ctgf、及びIL31Raの抑制物質が1つ以上含まれる。別の実施形態において、組成物にはTgfbeta1及びIgf1の抑制物質が1つ以上含まれる。別の実施形態において、組成物にはIL31シグナル伝達抑制物質が1つ以上含まれる。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、線維症の炎症前のレベルまでの回復がもたらされる。別の実施形態において、線維症は腸の線維症である。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、対象における腸炎症の抑制が更にもたらされる。
【0005】
その他の実施形態には、対象における疾患の治療方法が含まれ、これにはIL31Raシグナル伝達の抑制物質を含む組成物を提供すること、及び有効量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、疾患はTL1A関連疾患である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、疾患は小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、疾患は小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、組成物には1つ以上のTL1A Abが含まれる。別の実施形態において、組成物には、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1シグナル伝達の抑制物質が1つ以上含まれる。
【0006】
その他の実施形態には、対象におけるTL1A関連疾患に対する感受性の診断方法が含まれ、これには、対象から試料を得ること、試料を試験して健常者と比べて高レベルなIL31Ra発現が存在するかまたは存在しないかを判定すること、及び健常者と比べて高レベルなIL31RA発現の存在に基づいて、TL1A関連疾患に対する感受性を診断することが含まれる。別の実施形態において、TL1A関連疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は線維症である。別の実施形態において、この方法には更に、健常者と比べて高レベルな、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の発現の存在を判定することが含まれる。
【0007】
様々な実施形態に、対象におけるTL1A関連疾患の診断方法が含まれており、これには、対象から試料を得ること、1つ以上のTL1A関連疾患と関連するリスクバリアント及び/またはマーカーが存在するかまたは存在しないかを判定すること、ならびにTL1A関連疾患と関連する1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーの存在に基づいて、TL1A関連疾患を診断することが含まれる。別の実施形態において、1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーにはIL31RAの高発現が含まれる。その他の実施形態には、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の高発現を含む1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーが含まれる。別の実施形態において、TL1A関連疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、TL1A関連疾患は小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は線維症である。別の実施形態において、この方法には更に、1つ以上のTL1A抑制物質を投与することでTL1A関連疾患を治療することが含まれる。別の実施形態において、この方法には更に、TL1A抑制物質を投与することでTL1A関連疾患を治療することが含まれる。別の実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、この方法には更に、Dr3抑制物質を投与することでTL1A関連疾患を治療することが含まれる。
【0008】
その他の実施形態には、対象における線維症の治療方法が含まれ、これにはTL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、TL1A抑制物質はTL1A Abである。
【0009】
その他の実施形態には、対象における線維症の回復方法が含まれ、これにはTL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物には更に、Ifngamma、IL17、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質が含まれる。
【0010】
様々な実施形態に、炎症の治療方法が含まれ、これにはTL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物には更に、Ifngamma、IL17、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質が含まれる。
【0011】
その他の実施形態には、対象における疾患の治療方法が含まれ、これには、Ifnγ及びIl−17発現を抑制すること、Tgfβシグナル伝達を下方制御すること、及び/または線維芽細胞/筋線維芽細胞を減少させること、ならびに対象を治療することが含まれる。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患である。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、疾患は腸炎症である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患と関連する合併症である。
【0012】
その他の実施形態には、TL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を1つ以上含む組成物、ならびに薬剤的に許容可能な担体が含まれる。別の実施形態において、1つ以上のTL1A抑制物質はTL1A Abである。別の実施形態において、1つ以上のDR3抑制物質はDR3抗体である。
【0013】
本明細書に記載の様々な実施形態には、IBDと関連する合併症の治療方法が含まれ、これにはTL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象に投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物は静脈注射によって対象へ投与される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における線維症の治療方法であって、
TL1A−DR3シグナル伝達機能抑制物質を1つ以上含む組成物を提供すること;及び
治療効果のある用量の組成物を前記対象へ投与することを含む、前記対象における線維症の治療方法。
(項目2)
前記組成物が1つ以上のTL1A遮断抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物が1つ以上のDr3遮断抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記組成物が、TL1Aに直接結合することでTL1A機能を抑制する1つ以上の化合物を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記組成物が、Ifngamma、IL17、Ctgf、及びIL31Raの抑制物質を1つ以上含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記組成物が、Tgfbeta1及びIgf1の抑制物質を1つ以上含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記組成物が、IL31シグナル伝達の抑制物質を1つ以上含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
治療効果のある用量の前記組成物を投与することで、前記線維症から炎症前のレベルまでの回復をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記線維症が結腸の線維症である、項目1に記載の方法。
(項目10)
治療効果のある用量の前記組成物を投与することで、前記対象における腸炎症の抑制を更にもたらす、項目1に記載の方法。
(項目11)
治療効果のある用量の前記組成物を投与することで、前記対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞の数を減少させる、項目1に記載の方法。
(項目12)
治療効果のある用量の前記組成物を投与することで、前記対象における原発性腸筋線維芽細胞の数を減少させる、項目1に記載の方法。
(項目13)
対象における疾患の治療方法であって、
IL31Raシグナル伝達抑制物質を含む組成物を提供すること;及び、
有効量の前記組成物を前記対象へ投与することを含む、前記治療方法。
(項目14)
前記疾患がTL1A関連疾患である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記疾患が炎症性腸疾患(IBD)である、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記疾患が、前記小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記疾患が、小腸及び大腸の繊維性狭窄(fibrostenosis)である、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記疾患が線維症である、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記組成物が1つ以上のTL1A Abを含む、項目13に記載の方法。
(項目20)
前記組成物が、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1シグナル伝達の抑制物質を1つ以上含む、項目13に記載の方法。
(項目21)
治療効果のある用量の前記組成物を投与することで、前記対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞を減少させる、項目13に記載の方法。
(項目22)
対象におけるTL1A関連疾患への感受性の診断方法であって、
前記対象から試料を得ること;
前記試料を試験して、健常者と比べて高レベルなIL31Ra発現が存在するかまたは存在しないかを判定すること;及び、
健常者と比べて高レベルなIL31RA発現の存在に基づいて、前記TL1A関連疾患に対する感受性を診断することを含む、前記対象におけるTL1A関連疾患への感受性の診断方法。
(項目23)
前記TL1A関連疾患が炎症性腸疾患(IBD)である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記TL1A関連疾患が、前記小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記TL1A関連疾患が、小腸及び大腸の繊維性狭窄である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記TL1A関連疾患が線維症である、項目22に記載の方法。
(項目27)
健常者と比べて高レベルな、コラーゲン、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の発現の存在を判定することを更に含む、項目22に記載の方法。
(項目28)
対象におけるTL1A関連疾患の診断方法であって、
前記対象から試料を得ること;
前記試料を試験して、1つ以上の前記TL1A関連疾患と関連するリスクバリアント及び/またはマーカーが存在するかまたは存在しないかを判定すること;ならびに、
前記TL1A関連疾患と関連する1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーの存在に基づいて、前記TL1A関連疾患を診断することを含む、前記対象におけるTL1A関連疾患の診断方法。
(項目29)
前記1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーがIL31RAの高発現を含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーが、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の高発現を含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記TL1A関連疾患が炎症性腸疾患(IBD)である、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記TL1A関連疾患が、前記小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する、項目28に記載の方法。
(項目33)
前記TL1A関連疾患が、小腸及び大腸の繊維性狭窄である、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記TL1A関連疾患が線維症である、項目28に記載の方法。
(項目35)
1つ以上のTL1A抑制物質を投与することで前記TL1A関連疾患を治療することを更に含む、項目28に記載の方法。
(項目36)
TL1A抑制物質を投与することで前記TL1A関連疾患を治療することを更に含む、項目28に記載の方法。
(項目37)
前記対象がヒトである、項目28に記載の方法。
(項目38)
Dr3抑制物質を投与することで前記TL1A関連疾患を治療することを更に含む、項目28に記載の方法。
(項目39)
対象における線維症の治療方法であって、
TL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること;ならびに、
治療効果のある用量の前記組成物を前記対象へ投与することを含む、前記対象における線維症の治療方法。
(項目40)
前記TL1A抑制物質がTL1A Abである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記DR3抑制物質がDR3の発現を除去する、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記線維症が減少する、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記組成物がTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する、項目39に記載の方法。
(項目44)
対象における線維症の回復方法であって、
TL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること;ならびに、
治療効果のある用量の前記組成物を前記対象へ投与することを含む、前記対象における線維症の回復方法。
(項目45)
前記組成物が、Ifngamma、IL17、Tgfbeta1、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を更に含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記組成物がTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する、項目44に記載の方法。
(項目47)
炎症の治療方法であって、以下:
TL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を提供すること;ならびに、
治療効果のある用量の前記組成物を前記対象へ投与することを含む、前記炎症の治療方法。
(項目48)
前記組成物が、Ifngamma、IL17、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を更に含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記組成物がTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する、項目47に記載の方法。
(項目50)
対象における疾患の治療方法であって、
Ifnγ及びIl−17発現を抑制すること、Tgfβシグナル伝達を下方制御すること、及び/または線維芽細胞/筋線維芽細胞を減少させること;ならびに、
前記対象を治療することを含む、前記対象における疾患の治療方法。
(項目51)
前記疾患が炎症性腸疾患である、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記疾患が線維症である、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記疾患が腸炎症である、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記疾患が炎症性腸疾患と関連する合併症である、項目50に記載の方法。
(項目55)
組成物であって、以下:
1つ以上のTL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質;ならびに、
薬剤的に許容可能な担体を含む、前記組成物。
(項目56)
前記1つ以上のTL1A抑制物質がTL1A Abである、項目55に記載の組成物。
(項目57)
前記1つ以上のDR3抑制物質がDR3抗体である、項目55に記載の組成物。
(項目58)
IBDと関連する合併症の治療方法であって、
TL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を含む組成物を提供すること;ならびに、
治療効果のある用量の前記組成物を前記対象へ投与することを含む、前記IBDと関連する合併症の治療方法。
(項目59)
前記組成物が前記対象へ静脈注射によって投与される、項目58に記載の方法。
【0014】
例示的な実施形態を参照図にて説明する。本明細書に開示の実施形態及び図は制限よりも説明を目的とすることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本明細書に記載の実施形態に従い、Tl1a Ab減少結腸疾患の特徴を示す。(A)養子移植モデルに関するTl1a Ab治療の結線図;ベースラインRag−/−対照マウス(Rag Co)、ベースライン野生型対照マウス(WT Co)、治療前群(Pre−Tx)、アイソタイプ抗体群(Iso Ab)、治療後群(Post−Tx)。(B)DAIはIsoとTl1a Ab治療群との間で比較される。(C)結腸の代表的な外観(左図)を定量的な炎症スコア(右図)と共に示す。データは平均値±SDとして表す。(D)全単核細胞数をMLN及びLPMCから単離した。各黒丸は独立したマウスを表す。Tl1a Ab治療群はPre−Tx及びIso Ab群と比較される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2図2は、本明細書に記載の実施形態に従い、Tl1a Ab治療逆確立大腸炎症を示す。(A)拡大率200倍の代表的なH&E染色結腸中間部。(B)養子移植モデルに関する定量的組織診断スコア。少なくとも20ヶ所の独立した場所をスコア化し、データを平均値±SDとして表す。(C)ミエロペルオキシダーゼ活性を測定し、結腸のタンパク質抽出物のグラム(g)毎の活性単位(u)として表した。各黒丸は独立したマウスを表す。Tl1a Ab治療群は、ベースラインRag Co、Pre−Tx、及びIso Ab実験群と比較される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3図3は、本明細書に記載の実施形態に従い、Tl1a Ab減少Th−1及び−17免疫応答を示す。(A)細胞内のIfnγ及びIl17発現を染色したゲート開閉CD4+細胞の代表的なフローサイトメトリー図を、MLN(上図)及びLPMC(下図)に関して示す。CD4+Il17+、CD4+Ifnγ+、及びCD4+Il17+Ifnγ+T細胞の割合を、MLN(B)及びLPMC(C)に関して定量化した。MLN及びLPMCから単離した単核細胞を抗CD3及び抗CD28で刺激し、分泌されたIl17(D)及びIfnγ(E)の濃度をELISAによって評価した。各黒丸は独立したマウスから得た値を表す。Tl1a Ab治療群は、Pre−Tx及びIso Ab実験群と比較される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4図4は、本明細書に記載の実施形態に従い、養子移植モデルにおける確立した線維症のTl1a Ab療法による回復を示す。(A)拡大率200倍の結腸中間部におけるコラーゲン沈着の代表的なSirius Red染色。黒い矢印はコラーゲン沈着の厚さを示す。(B)結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びαSMA(赤色)の代表的な免疫蛍光染色を示す。オレンジ色の矢印は、ビメンチン及びαSMAを同時発現する筋線維芽細胞を示す。結腸中間部由来のコラーゲン厚さ(C)及び活性化線維芽細胞の割合(D)の定量化が示され、平均値±SDとして表される。群毎に少なくとも20ヶ所の独立した場所をスコア化した。Tl1a Ab治療群は、ベースラインRag Co、Pre−Tx、及びIso Ab実験群と比較される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図5図5は、本明細書に記載の実施形態に従い、Dr3欠損を有する腸の線維芽細胞増殖の減少を示す。(A)マウスDr3内在性遺伝子座の略図及び遺伝子ターゲティングの戦略。(B)Dr3遺伝子型の代表的なポリメラーゼ連鎖反応を、506bpにおける標的化(Dr3 KO)バンド、及び353bpにおける内在性Dr3座位によって示す。(C)同腹仔WT及びDr3−/−結腸(左図)より回収した腸の線維芽細胞の6枚の写真のうち代表的な写真、ならびに結腸毎の個々の総線維芽細数(右図)が図表化されている。(D)WT及びDr3−/−マウス由来の増殖性線維芽細胞(上図)及びアポトーシスが進行中の線維芽細胞(下図)の定量化を示す、代表的なフローサイトメトリーのヒストグラム。CellTrace Violet蛍光強度の減少は、増殖を示す。アネキシンV染色の増殖は、アポトーシスを示す。同様の結果を伴う、少なくとも6つの独立した実験の代表的なフローサイトメトリーのヒストグラムが示されている。***p<0.001。
図6図6は、本明細書に記載の実施形態に従い、Dr3を発現し、Tl1a刺激へ応答する、腸の線維芽細胞を示す。(A)Dr3 mRNAはWTにおいて検出されるが、Dr3−/−線維芽細胞(上図)では検出されない。ND=検出せず。WT線維芽細胞の免疫蛍光染色により、陽性Dr3染色を赤色(下図)で示した。(B)原発性腸線維芽細胞を、Dr3、αSMA、及びビメンチンで染色した。αSMA陽性及び陰性線維芽細胞を示したようにゲート開閉したことで、Dr3染色がαSMA+WTにて見出されるが、Dr3−/−及びαSMA陰性細胞では見出されない。示したデータは、同様の結果を伴う少なくとも3つの独立した実験のうち代表的な実験である。(C)Tl1a刺激の増殖(0〜200ng/mL)を伴うWT原発性腸線維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Ra mRNAの発現を示し、平均値±SDとして示した。(D)WT及びDr3−/−腸におけるCol1a2及びIl31RamRNAのTl1aによる相対的な誘発であり、平均値±SDとして示した。p<0.05。
図7図7は、本明細書に記載の実施形態に従い、慢性的なDSS投与によるTl1a Ab減少炎症性疾患活性を示す。(A)DAIは、アイソタイプAb(n=14)及びTl1a Ab(n=9)治療群間にて比較される。(B)結腸の代表的な外観(左図)を定量的炎症スコア(右図)と共に示す。データは平均値+/−SDとして表す。(C)総単核細胞数をMLN及びLPより単離した。各黒塗りの記号は独立したマウスを表す。Tl1a Ab治療群はPre−Tx及びIso Ab群と比較される。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図8図8は、本明細書に記載の実施形態に従い、慢性DSSモデルにおけるTl1a Ab逆確立大腸炎症を示す。(A)拡大率200倍で代表的なH&E染色結腸中間部を示す。(B)少なくとも20ヶ所の独立した結腸中間部由来の組織炎症の定量化をスコア化し、データを平均値+/−SDとして表す。(C)ミエロペルオキシダーゼ活性を測定し、結腸のタンパク質抽出物のグラム(g)毎の活性単位(u)として表した。Tl1a Ab治療群は、ベースラインWT Co、Pre−Tx、及びIso Ab実験群と比較される。各黒丸は独立した結腸からのMPO活性を表す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図9図9は、本明細書に記載の実施形態に従い、慢性DSS大腸炎モデルにおけるTl1a Ab減少Th−1及び−17免疫応答を示す。(A)細胞内のIfnγ及びIl−17を染色した、(上図)からのゲート開閉CD4+細胞及びLPMC(下図)の代表的なフローサイトメトリー図。CD4+Il17+、CD4+Ifnγ+、及びCD4+Il17+Ifnγ+T細胞の割合を、MLN(B)及びLPMC(C)に関して定量化した。MLN及びLPMCから単離した単核細胞を抗CD3ε及び抗CD28で刺激し、分泌されたIl17(D)及びIfnγ(E)の濃度をELISAによって評価した。各黒丸は独立シタマウスから得られた値を表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図10図10は、本明細書に記載の実施形態に従い、慢性DSS大腸炎モデルにおける確立した線維症のTl1a Abによる回復を示す。(A)拡大率200倍の結腸中間部におけるコラーゲン沈着の代表的なSirius Red染色を示す。黒い矢印はコラーゲン沈着の厚さを示す。(B)結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びαSMA(赤色)の代表的な免疫蛍光染色を示す。オレンジ色の矢印は、ビメンチン及びαSMAを同時発現する筋線維芽細胞を示す。結腸中間部由来のコラーゲン厚さ(C)及び活性化線維芽細胞の割合(D)の定量化が示され、平均値±SDとして表される。群毎に少なくとも20ヶ所の独立した場所をスコア化した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図11-1】図11は、本明細書に記載の実施形態に従い、Tl1a Ab減少筋線維芽細胞数、ならびにDr3及びTl1aの発現を示す。養子移植モデル(a)ならびに慢性DSSモデル(b)からの結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びαSMA(赤色)の、代表的な免疫蛍光染色を拡大率630倍で示す。オレンジ色の矢印は、ビメンチン及びαSMAを同時発現する筋線維芽細胞を示す。結腸中間部由来の筋線維芽細胞の割合を定量化し、平均値±SDとして養子移植モデル(a、右図)及び慢性DSSモデル(b、右図)に関して表した。少なくとも10ヶ所の独立した場所を、群毎に(a)及び(b)についてスコア化した。結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びDr3(赤色)の代表的な免疫蛍光染色を、養子移植モデル(c)及び慢性DSSモデル(d)から示す。(c)及び(d)の挿入図は、拡大率200倍で得られた画像の更に大きな画像である。少なくとも8ヶ所の独立した場所を群毎に定量化し、強拡大視野(HPF)毎にDr3+細胞として図表化した。結腸のDr3(e)及びTl1a(f)mRNAを定量化し、平均値±SD(n=5〜14)として示す。Tl1a Ab治療群は、ベースラインRag Co、Wt Co、Pre−Tx、及びIso Ab実験群と比較される。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。特に、図11(c)及び(d)は、治療前群及びアイソタイプ抗体群(どちらも高いコラーゲン沈着と関係する)における線維芽細胞のDr3染色の増加を、Tl1a Ab治療群(低いコラーゲン沈着と関係する)と比較して示す。その上、図11(e)及び(f)は、RT−PCR発現分析によって、アイソタイプ群(高コラーゲン沈着と関係)と比較してTl1a及びDr3発現がどちらもTl1a Ab群(低コラーゲン沈着と関係)にて下方制御されていることを示す。
図11-2】図11は、本明細書に記載の実施形態に従い、Tl1a Ab減少筋線維芽細胞数、ならびにDr3及びTl1aの発現を示す。養子移植モデル(a)ならびに慢性DSSモデル(b)からの結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びαSMA(赤色)の、代表的な免疫蛍光染色を拡大率630倍で示す。オレンジ色の矢印は、ビメンチン及びαSMAを同時発現する筋線維芽細胞を示す。結腸中間部由来の筋線維芽細胞の割合を定量化し、平均値±SDとして養子移植モデル(a、右図)及び慢性DSSモデル(b、右図)に関して表した。少なくとも10ヶ所の独立した場所を、群毎に(a)及び(b)についてスコア化した。結腸中間部由来のビメンチン(緑色)及びDr3(赤色)の代表的な免疫蛍光染色を、養子移植モデル(c)及び慢性DSSモデル(d)から示す。(c)及び(d)の挿入図は、拡大率200倍で得られた画像の更に大きな画像である。少なくとも8ヶ所の独立した場所を群毎に定量化し、強拡大視野(HPF)毎にDr3+細胞として図表化した。結腸のDr3(e)及びTl1a(f)mRNAを定量化し、平均値±SD(n=5〜14)として示す。Tl1a Ab治療群は、ベースラインRag Co、Wt Co、Pre−Tx、及びIso Ab実験群と比較される。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。特に、図11(c)及び(d)は、治療前群及びアイソタイプ抗体群(どちらも高いコラーゲン沈着と関係する)における線維芽細胞のDr3染色の増加を、Tl1a Ab治療群(低いコラーゲン沈着と関係する)と比較して示す。その上、図11(e)及び(f)は、RT−PCR発現分析によって、アイソタイプ群(高コラーゲン沈着と関係)と比較してTl1a及びDr3発現がどちらもTl1a Ab群(低コラーゲン沈着と関係)にて下方制御されていることを示す。
図12図12は、本明細書に記載の実施形態に従い、Dr3欠損を有する腸の線維芽細胞の減少を示す。(a)拡大率100倍の代表的なH&E染色結腸を炎症の定量化と共に、上図に示す。拡大率200倍の代表的なビメンチン/αSMA染色結腸(挿入画像は拡大率200倍のより大きな画像)を、HPF毎の線維芽細胞の定量化と共に中間図に示す。同腹仔のWT及びDr3−/−結腸から回収した腸の線維芽細胞、ならびに個々の結腸毎の総線維芽細胞の代表的な画像を示す(a、下図)。WT及びDr3−/−マウス由来の増殖性線維芽細胞(b)及びアポトーシスが進行中の線維芽細胞(c)由来の代表的なフローサイトメトリーのヒストグラムを示す。CellTrace Violet蛍光強度の減少は、増殖を示す。アネキシンV染色の増加は、アポトーシスを示す。同様の結果を伴う、少なくとも6つの独立した実験の代表的なフローサイトメトリーのヒストグラムが示されている。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。特に、12(a)に関して、上図は、Dr3KO結腸中の線維芽細胞数の減少を引き起こしている進行中の炎症ではないことを説明する、野生型及びDr3KO結腸間の組織炎症には違いが無いことを示す。12(a)の中間図は、結腸部の直接染色(図12a、中間図)にて、Dr3欠損結腸においてビメンチン陽性細胞の減少が存在することを示し、これは、結腸から線維芽細胞を単離するより前に結腸中には既に線維芽細胞の減少が存在していたことを示すため、重要である。
図13-1】図13は、本明細書に記載の実施形態に従い、Dr3を発現し、Tl1a刺激に応答する、腸の線維芽細胞を示す。(a)原発性腸線維芽細胞を、Dr3、αSMA、及びビメンチンで染色し、フローサイトメトリーで分析した。高、中、及び低αSMA発現線維芽細胞を、示したようにゲート開閉した。Dr3染色は、αSMAにおいて高>中間>低で見出されている。3つの独立した実験を実施した。特に、図13(a)は、Dr3発現とαSMA発現との間に直接的な相関関係が存在することを占めす。より高いαSMA発現(より活性な線維芽細胞)を有する線維芽細胞がより高発現(Dr3発現)であることを示すためにこれは重要であり、これらのより活性な線維芽細胞はTl1aシグナル伝達に対してより受容性であることを示す。この実験に関して、発明者らはαSMA低、中、及び高発現筋線維芽細胞を別々にゲート開閉させ、その後Dr3を発現する細胞の割合を示した(図13a)。図は、Dr3がαSMA高>αSMA中>αSMA低線維芽細胞にて発現されることを説明している。(b)データは、拡大率200倍にて独立して選別された3つのαSMA陽性筋線維芽細胞を示す。WTにはDr3の共染色が存在するが、Dr3欠損αSMA陽性筋線維芽細胞には存在しない。特に、図13(b)は、Tl1aの受容体であるDr3が筋線維芽細胞上にて発現されることを直接示している。線維症を媒介する筋線維芽細胞がTl1aからのシグナル伝達を受けることができることを示すため、これは重要である。この実験を行うために、発明者らは抗αSMA及びDR3抗体で染色したαSMA陽性細胞を選別した。その後、発明者らは、Dr3がαSMA陽性WT上で発現されるが、DR3 KO筋線維芽細胞では発現されないことを、免疫蛍光顕微鏡を用いて示した(図13b)。(c)Tl1a刺激の増加(0〜200ng/mL)を伴うWT原発性腸線維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Ra mRNAの発現であって、平均値±SDとして表される(n=3)。(d)WTならびにDr3−/−腸における、Tl1a、Tgfβ/Igf1、及びTnfαによるCol1a2及びIl31Ra mRNAの誘導が示され、平均値±SD(n=3)として表される。P<0.05、**P<0.01。特に、図13(d)はインビトロ実験を促進するためのさらなる実験を示す(図13d)。発明者らはTgfβ及びIgf1を原型の線維芽細胞増殖因子として使用し、WT及びDr3欠損原発性腸線維芽細胞間にはCol1a2及びIl31Ra発現の誘導における差が存在しないことを示した(図13d)。発明者らはTnfαを原型の炎症誘発性刺激として使用し、WT及びDr3欠損原発性腸線維芽細胞と比較してCol1a2及びIl31Raの誘導に差がないことを示した。これは、Dr3欠損原発性腸線維芽細胞と比較して、WTにおけるCol1a2及びIl31Ra発現の有意な誘導が存在するTl1aでの刺激と対照的である。
図13-2】図13は、本明細書に記載の実施形態に従い、Dr3を発現し、Tl1a刺激に応答する、腸の線維芽細胞を示す。(a)原発性腸線維芽細胞を、Dr3、αSMA、及びビメンチンで染色し、フローサイトメトリーで分析した。高、中、及び低αSMA発現線維芽細胞を、示したようにゲート開閉した。Dr3染色は、αSMAにおいて高>中間>低で見出されている。3つの独立した実験を実施した。特に、図13(a)は、Dr3発現とαSMA発現との間に直接的な相関関係が存在することを占めす。より高いαSMA発現(より活性な線維芽細胞)を有する線維芽細胞がより高発現(Dr3発現)であることを示すためにこれは重要であり、これらのより活性な線維芽細胞はTl1aシグナル伝達に対してより受容性であることを示す。この実験に関して、発明者らはαSMA低、中、及び高発現筋線維芽細胞を別々にゲート開閉させ、その後Dr3を発現する細胞の割合を示した(図13a)。図は、Dr3がαSMA高>αSMA中>αSMA低線維芽細胞にて発現されることを説明している。(b)データは、拡大率200倍にて独立して選別された3つのαSMA陽性筋線維芽細胞を示す。WTにはDr3の共染色が存在するが、Dr3欠損αSMA陽性筋線維芽細胞には存在しない。特に、図13(b)は、Tl1aの受容体であるDr3が筋線維芽細胞上にて発現されることを直接示している。線維症を媒介する筋線維芽細胞がTl1aからのシグナル伝達を受けることができることを示すため、これは重要である。この実験を行うために、発明者らは抗αSMA及びDR3抗体で染色したαSMA陽性細胞を選別した。その後、発明者らは、Dr3がαSMA陽性WT上で発現されるが、DR3 KO筋線維芽細胞では発現されないことを、免疫蛍光顕微鏡を用いて示した(図13b)。(c)Tl1a刺激の増加(0〜200ng/mL)を伴うWT原発性腸線維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Ra mRNAの発現であって、平均値±SDとして表される(n=3)。(d)WTならびにDr3−/−腸における、Tl1a、Tgfβ/Igf1、及びTnfαによるCol1a2及びIl31Ra mRNAの誘導が示され、平均値±SD(n=3)として表される。P<0.05、**P<0.01。特に、図13(d)はインビトロ実験を促進するためのさらなる実験を示す(図13d)。発明者らはTgfβ及びIgf1を原型の線維芽細胞増殖因子として使用し、WT及びDr3欠損原発性腸線維芽細胞間にはCol1a2及びIl31Ra発現の誘導における差が存在しないことを示した(図13d)。発明者らはTnfαを原型の炎症誘発性刺激として使用し、WT及びDr3欠損原発性腸線維芽細胞と比較してCol1a2及びIl31Raの誘導に差がないことを示した。これは、Dr3欠損原発性腸線維芽細胞と比較して、WTにおけるCol1a2及びIl31Ra発現の有意な誘導が存在するTl1aでの刺激と対照的である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に引用される全ての参照は、その内容が全て記載されているのと同様に参照によって組み込まれる。特に断りがない限り、本明細書にて用いられる技術的及び化学的用語は、本発明が属する当該技術分野にて当業者に通常理解されている意味と同じ意味を持つ。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 4th ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2012);March,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 5th ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2001);及び、Sambrook and Russel,Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2012);は、当業者に本出願にて用いられる用語の多くに関する一般的な指針を提供する。当業者は、本発明の実施に使用することができた本明細書にて説明される方法及び物質と、同様または等価である方法及び物質を理解するであろう。実際に、本発明は記載された方法及び物質を制限するものでは決してない。
【0017】
本明細書にて説明の通り、腸繊維性狭窄は重症なCrohn病の特徴の1つである。ある特定のTNFSF15バリアントを有する患者はTL1Aを過剰発現し、小腸で狭窄が発生する危険性がより高い。その上、長時間のTl1a発現を有するマウスは、腸炎惹起状態下において小腸及び大腸の繊維性狭窄に至った。発明者らは、Tl1a機能を中和することで確立されたマウスの大腸炎及び結腸線維症を回復することができるかどうかを調査した。
【0018】
本明細書に更に開示されるように、Tl1a遮断抗体(12F6A)またはアイソタイプ対照Igを確立された慢性マウス大腸炎及び結腸線維症に罹ったマウスへ投与した。Dr3欠損(Dr3−/−)を伴うマウスを作成した。原発性マウス腸線維芽細胞を単離した。組織染色及び免疫蛍光染色、フローサイトメトリー、ELISA、ならびにmRNAレベルを使用して、炎症及び線維症の程度を比較した。CellTrace及びアネキシンV染色を使用して、細胞増殖及びアポトーシスを各々測定した。発明者らは、Tl1a抗体による治療がマウス大腸炎を緩和し、結腸線維症を本来の炎症前のレベルまで回復したことを見出した。これは、Ifnγ、Il17、Ctgf、Il31Ra発現の低下、ならびにTgfβ1及びIgf1シグナル伝達の下方制御によるものであり得る。くわえて、Tl1a機能の遮断は線維芽細胞及び筋線維芽細胞の数の減少をもたらした。原発性腸筋線維芽細胞はDr3を発現し、コラーゲン及びIl31Ra発現を増加させることで直接Tl1aシグナル伝達へと機能的に応答することができる。要するに、TL1Aシグナル伝達の調節は腸炎症及び線維症の両方を抑制する。
【0019】
一実施形態において、本発明は対象における疾患の治療方法を提供し、これにはIL31シグナル伝達の抑制物質を含む組成物を提供すること、及び有効量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、疾患はTL1A関連疾患である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、疾患は小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、疾患は小腸及び大腸繊維性狭窄である。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、組成物には1つ以上のTL1A抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物には、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1シグナル伝達の抑制物質のうち1つ以上が含まれる。
【0020】
別の実施形態において、本発明は対象における疾患の治療方法を提供し、これにはIL31Raシグナル伝達の抑制物質を含む組成物を提供すること、及び有効量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、疾患はTL1A関連疾患である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、疾患は小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、組成物には1つ以上のTL1A抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物には、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1シグナル伝達の抑制物質のうち1つ以上が含まれる。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞の数が減少する。
【0021】
一実施形態において、本発明は対象におけるTL1A関連疾患に対する感受性の診断方法を提供し、これには、対象から試料を得ること、試料を試験して健常者と比べて高レベルなIL31発現が存在するかまたは存在しないかを判定すること、及び健常者と比べて高レベルなIL31発現の存在に基づいてTL1A関連疾患に対する感受性を診断することが含まれる。別の実施形態において、TL1A関連疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、TL1A関連疾患は小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は線維症である。別の実施形態において、方法には更に、健常者と比べて高レベルな、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の発現の存在を判定することが含まれる。
【0022】
対象におけるTL1A関連疾患に対する感受性の診断方法であって、これには、対象から試料を得ること、試料を試験して健常者に比べて高レベルなIL31Ra発現が存在するかまたは存在しないかを判定すること、及び健常者と比べて高レベルなIL31RA発現の存在に基づいて、TL1A関連疾患に対する感受性を診断することが含まれる。別の実施形態において、TL1A関連疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は線維症である。別の実施形態において、本発明には更に、健常者と比べて高レベルな、コラーゲン、IL31RA、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の発現の存在を判定することが含まれる。
【0023】
別の実施形態において、本発明は対象におけるTL1A関連疾患の診断方法を提供し、これには、対象から試料を得ること、試料を試験して1つ以上の前記TL1A関連疾患と関連するリスクバリアント及び/またはマーカーが存在するかまたは存在しないかを判定すること、ならびにTL1A関連疾患と関連する1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーの存在に基づいて、TL1A関連疾患を診断することが含まれる。別の実施形態において、1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーには、IL31RAの高発現が含まれる。別の実施形態において、1つ以上のリスクバリアント及び/またはマーカーには、Ifngamma、IL17、Ctgf、TgfB1、及び/またはIgf1の高発現が含まれる。別の実施形態において、TL1A関連疾患は炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び/または腸炎症において発生した狭窄と関係する。別の実施形態において、TL1A関連疾患は、小腸及び大腸の繊維性狭窄である。別の実施形態において、TL1A関連疾患は線維症である。別の実施形態において、方法には更に、1つ以上のTL1A抑制物質を投与してTL1A関連疾患を治療することが含まれる。別の実施形態において、方法には更に、TL1A抑制物質を投与してTL1A関連疾患を治療することが含まれる。別の実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、方法には更に、Dr3抑制物質を投与してTL1A関連疾患を治療することが含まれる。
【0024】
本明細書に開示の通り、2つの異なる慢性大腸炎モデルにおいて、Tl1a Abは結腸疾患を寛解させ、腸線維症を回復させたことが示された。TL1Aシグナル伝達の調節は、腸炎症及び線維症の両方を治療することでCrohn病の自然史を変化させることができる。TL1A/DR3シグナル経路を遮断することで、確立した線維症の回復を含むCrohn病及びその関連合併症の治療に対する治療手段が提供される。
【0025】
一実施形態において、本発明は、対象において線維症を診断し、その後TL1A−DR3シグナル伝達機能の1つ以上抑制物質を投与すること、例えば、治療効果のあるTL1A抗体を投与すること、またはDR3発現もしくはTL1A発現(TNFSF15の発現)をコード化するdsRNAもしくはsiRNAを除去することなどによって、対象における炎症性腸疾患(IBD)と関連する線維症の治療方法を提供する。または、一実施形態において、TL1A−DR3下流の1つ以上の分子を抑制することによって、該治療方法を提供する。
【0026】
一実施形態において、本発明は、治療効果のある用量のTL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を対象へ投与することで、疾患を治療する方法を提供する。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患である。別の実施形態において、疾患はCrohn病である。別の実施形態において、疾患は大腸炎である。別の実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、TL1A抑制物質はTL1A抗体である。別の実施形態において、DR3抑制物質はDR3抗体である。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、治療効果のある用量のTL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を対象へ投与することによる、個体における線維症の回復方法を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は対象における線維症の治療方法を提供し、これにはTL1A−DR3シグナル伝達機能の1つ以上の抑制物質を含む組成物を提供すること、及び治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物には1つ以上のTL1A遮断抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物には1つ以上のDr3遮断抗体が含まれる。別の実施形態において、組成物には、TL1Aに直接結合することでTL1A機能を抑制する1つ以上の化合物が含まれる。別の実施形態において、組成物には、Ifngamma、IL17、Ctgf、及びIL31Raの1つ以上が含まれる。別の実施形態において、組成物にはTgfbeta1及びIgf1の抑制物質が1つ以上含まれる。別の実施形態において、組成物にはIL31シグナル伝達の抑制物質が1つ以上含まれる。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、線維症の炎症前のレベルまでの回復がもたらされる。別の実施形態において、線維症は腸線維症である。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、対象における腸炎症の抑制が更にもたらされる。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与することで、対象における線維芽細胞及び/または筋線維芽細胞が減少する。別の実施形態において、治療効果のある用量の組成物を投与すること、対象における原発性腸筋線維芽細胞の数が減少する。
【0029】
一実施形態において、本発明は対象における線維症の治療方法を提供し、これにはTL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること;ならびに、治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、TL1A抑制物質はTL1A抗体である。別の実施形態において、DR3抑制物質はDR3の発現を除去する。別の実施形態において、線維症は減少する。別の実施形態において、組成物はTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する。
【0030】
一実施形態において、本発明は対象における線維症の回復を提供し、これにはTL1A抑制物質及びDR3抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物には更に、Ifngamma、IL17、Tgfbeta1、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質が含まれる。別の実施形態において、組成物はTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する。
【0031】
一実施形態において、本発明は炎症の治療方法を提供し、これにはTL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物には更に、Ifngamma、IL17、Ctgf、及び/またはIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質が含まれる。別の実施形態において、組成物はTL1A−DR3シグナル伝達機能を抑制する。
【0032】
一実施形態において、本発明は対象における疾患の治療方法を提供しこれには、Ifnγ及びIl−17発現を抑制すること、Tgfβシグナル伝達を下方制御すること、及び/または線維芽細胞/筋線維芽細胞を減少させること、及び対象を治療することが含まれる。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患である。別の実施形態において、疾患は線維症である。別の実施形態において、疾患は腸炎症である。別の実施形態において、疾患は炎症性腸疾患に関係する合併症である。
【0033】
一実施形態において、本発明はIBDに関連する合併症の治療方法を提供し、これにはTL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の抑制物質を含む組成物を提供すること、ならびに治療効果のある用量の組成物を対象へ投与することが含まれる。別の実施形態において、組成物は対象へ静脈注射によって投与される。
【0034】
一実施形態において、本発明は、1つ以上のTL1A抑制物質及び/または1つ以上のDR3抑制物質を含む組成物、ならびに薬剤的に許容可能な単体を提供する。別の実施形態において、1つ以上のTL1A抑制物質はTL1A抗体である。別の実施形態において、1つ以上のDR3抑制物質はDR3抗体である。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、治療効果のある用量のTL1A抑制物質及び/またはDR3抑制物質を含む組成物を対象へ投与することによる、対象における炎症の低減方法を提供する。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、Ifnγ及びIl−17発現を抑制すること、Tgfβシグナル伝達を下方制御すること、ならびに/または線維芽細胞/筋線維芽細胞を減少させることによる、線維症と関連する状態の抑制方法を提供する。
【0037】
一実施形態において、本発明は、TL1A、DR3、及びIL31RAシグナル伝達機能の1つ以上の抑制物質、ならびに薬剤的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。別の実施形態において、1つ以上のTL1A抑制物質はTL1A抗体である。別の実施形態において、1つ以上のDR3抑制物質はDR3抗体である。
【0038】
ポリペプチド、もしくはタンパク質マイクロアレイを含むその他のマーカー/生物マーカーの存在または非存在を検出する場で容易に使用可能な技術が多くある。例えば、この目標のために使用することのできる検出規範のいくつかには、光学的方法、電気化学的方法(ボルタメトリー及び電流測定技術)、原子間力顕微鏡、ならびに高周波法、例えば多極共鳴分光法(multipolar resonance spectroscopy)が含まれる。光学的方法の説明は、顕微鏡検査に加え、共焦点及び非共焦点のどちらも、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、及び複屈折または屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴法、偏光解析法、共鳴ミラー法、格子カプラー導波管法、もしくは干渉法)の検出である。
【0039】
同様に、生物マーカーの単離及び/または分画に用いることのできる多くの技術が存在する。例えば、生物マーカーは、抗体、アプタマー、または生物マーカーを認識する抗体、及びその変形した形態などの生体分子特異的な捕獲試薬を用いて捕獲することができる。この方法はまた、タンパク質へ結合するか、または抗体によって別様に認識される、及びそれら自身が生物マーカーであり得る、タンパク質インタラクターの捕獲をもたらし得る。生体分子特異的な捕獲試薬はまた、固相とも結合し得る。そして、捕獲されたタンパク質は、SELDI質量分析法によって、またはby 捕獲試薬からタンパク質を溶出し、従来のMALDIもしくはSELDIで溶出されたタンパク質を検出することによって、検知することができる。SELDIの一例は、「親和性捕獲質量分析法」、または「表面増強親和性捕獲」もしくは「SEAC」と呼ばれ、これは、物質と分析物との間の非共有結合性親和性相互作用(吸着)を通じて分析物を捕獲するプローブ表面上に物質を有する、プローブの使用に関する。質量分析計のいくつかの例として、飛行時間型、磁場型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、静電セクター分析系、及びこれらの複合が挙げられる。
【0040】
あるいは、例として、ポリペプチドなどの生物マーカーの存在は従来の免疫測定法を用いて検出することができる。免疫測定法は、分析物の捕獲のために抗体などの生体分子特異的な捕獲試薬を必要とする。アッセイはまたタンパク質とタンパク質の変形形態と特に区別するよう設計してもよく、これはサンドイッチ分析を用いて行うことができる。この分析では、1つの抗体が2つ以上の形態を捕獲し、第2の明確に標識された抗体が特異的に結合し、様々な形態の明確な検出を提供する。抗体は生体分子で免疫化動物によって作成することができる。従来の免疫測定法にはまた、ELISAまたは蛍光ベースの免疫測定法、及びその他の酵素免疫測定法を含む、サンドイッチ免疫測定法が含まれ得る。
【0041】
検出に先んじて、生物マーカーを分画して、溶液中のその他の成分、または検出に干渉し得る血液の成分から生物マーカーを単離してもよい。分画には、クロマトグラフィー、親和性精製、1次元及び2次元マッピング、ならびに当業者に既知である精製のためのその他の方法論などを用いる、他の血液成分からの血小板単離、血小板成分の細胞下分画、及び/または血小板中にて見出される他の生体分子からの所望の生物マーカーの分画が含まれ得る。一実施形態において、試料をバイオチップによる方法で分析する。バイオチップは一般的に固体の基質を含み、概して捕獲試薬(吸着剤または親和性試薬とも呼ばれる)が結合するための平面を持つ。しばしば、バイオチップの表面には複数のアドレス可能な位置が含まれ、各位置はそこに結合する捕獲試薬を有する。
【0042】
上に記載の様々な方法及び技術は、本発明を実行するためのいくつかの方法を提供する。もちろん、記載される全ての目的または利点が、必ずしも本明細書に記載のあらゆる特定の実施形態に従って達成され得はしないことを理解されたい。したがって、例えば、本明細書にて教示または示唆され得る限りに必ずしも他の目的もしくは利点を達成することなく本明細書に教示されるある1つの利点もしくは1群の利点を達成または最適化する方法で、方法を実施することができることを、当業者は理解されたい。種々の有益な及び不利益な代替物が本明細書にて言及される。いくつかの好ましい実施形態は特に、1つの、別の、またはいくつかの有益な特徴を含み、一方でその他は特に、1つの、別の、またはいくつかの不利益な特徴を除外するが、更にその他は特に、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を包含することで、本発明の不利益な特徴を軽減することを、理解されたい。
【0043】
更に、当業者は異なる実施形態から様々な特徴の適応性を認識するであろう。同様に、上で開示された様々な要素、特徴、及びステップ、ならびにそのような要素、特徴、またはステップの各々とのその他の既知の等価物は、本明細書に記載の原理に従って方法を実施するために、当業者が混合し、一致させることができる。様々な要素、特徴、及びステップ間で、いくつかは多種多様な実施形態中に特に含まれ、その他は特に除外される。
【0044】
本発明はある特定の実施形態及び実施例に関して開示されているが、本発明の実施形態は特に開示された実施形態を超えて、その他の別の実施形態及び/または使用、ならびにその修正及び等価物にまで及ぶことを、当業者は理解するであろう。
【0045】
多くのバリエーション及び別の要素が本発明の実施形態にて開示されている。また、さらなるバリエーション及び別の要素が当業者には明らかとなるであろう。これらのバリエーション間から、非限定的に、本発明の組成物、ならびにそれによって診断、予測、または治療され得る疾患、及びその他の病態に対する構成モジュールが選択される。本発明の様々な実施形態は特に、これらのバリエーションもしくは要素のいずれかを含むかまたは除外し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、成分の含量、濃度及び反応条件といった特徴の表す数字は、本発明のある特定の実施形態を説明及び特許請求するために使用され、いくつかの場合においては「約」という用語で修正されていることを理解されたい。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、特定の実施形態によって得られるよう求められた所望の特徴に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメーターは報告されている有効桁の数を考慮して、通常の丸め方法を適用することで解釈されるべきである。広範にわたる本発明のいくつかの実施形態を説明する数値範囲及びパラメーターは近似値であるが、特定の実施例に記載の数値は実行可能なよう正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態に示される数値は、それら各々の試験測定値にて見出される標準偏差に必ず由来するある特定の誤差を含有していてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語、ならびに本発明の特定の実施形態を説明する文脈にて(特に、以下のある特定の特許請求の範囲の文脈にて)使用される同様の言及は、単数及び複数の両方を包含するよう解釈することができる。本明細書における値の範囲の詳説は単に、その範囲に含まれる別々の各値へ個々に言及する省略の方法として働くよう意図されているものである。本明細書にて特に示されない限り、個別の各値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特に示されない限り、または文脈で明確に矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で実施することができる。本明細書のある特定の実施形態に対して提供される、いずれかもしくは全ての実施例、または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、別に特許請求される本発明の範囲の制限を提起するものではない。本明細書における言い回しはいずれも、本発明の実施に欠かせないあらゆる非特許請求要素を示すように解釈されるべきではない。
【0048】
本明細書に開示される本発明の別の要素または実施形態の分類は、制限として解釈するものではない。各群のメンバーは、群のその他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素を指し示すことができ、かつ個々にまたはそれらとのあらゆる組み合わせで特許請求され得る。群の1つ以上のメンバーは、便宜及び/または特許性の理由のための群に含まれても、またはそこから削除されてもよい。あらゆるそのような包含または削除が起こった場合、本明細書は群を修正されたものとして含有するよう本明細書中で見なされるため、添付の特許請求の範囲で使用された全てのマルクーシュ群の明細書を満たす。
【0049】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されており、これには、発明者らに既知である本発明を実施するための最良の様式が含まれる。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、先の記述を読むことで当業者に明らかとなるであろう。熟練した技術者はそのようなバリエーションを適切に使用することができ、本発明は本明細書に特に記載されたものとは別様に実施することができることを考慮されたい。したがって、本発明の多くの実施形態には、準拠法により許可されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修正及び等価物が含まれる。そのうえ、全ての可能性のあるバリエーションにおける上記要素のあらゆる組合せは、本明細書にて特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0050】
更に、多数の参照は、本明細書全体を通して特許及び刊行物となっている。上記の参照及び刊行物の各々は、参照によりそれらの全体が個々に本明細書に組み込まれる。
【0051】
最後に、本明細書にて開示の本発明の実施形態は本発明の原理の説明であることを理解されたい。使用することのできるその他の修正は本発明の範囲内であり得る。したがって、例として、非制限的に、本発明の別の構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明の実施形態は正確に示されているもの及び説明されているものに限られない。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、請求された発明をよりよく説明するために提供され、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。具体的な材料が言及されているという点で、単に説明の目的であり、発明を限定することを意図されない。当業者は、独創性のキャパシティーの実施なく、または本発明の範囲を逸脱することなく、同等の手段または反応物質を開発し得る。
【0053】
実施例1
慢性大腸炎の誘導及び治療
C57BL/6JマウスをJackson Laboratoryから購入した。慢性のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎が記載されるように導入された。10養子移植モデルにおいて、大腸炎は、Rag1−/−マウスに、WTマウスから分離された500,000のCD4+CD45RBhiのナイーブなT細胞の腹腔内注入により誘導された。ハムスター抗マウスTl1a Ab(12F6A,TEVA,North Wales,Pennsylvania)は、Tl1aの機能を抑制し、20または80mg/kgで投与され、または対照免疫グロブリン(Ig)G(Leinco Technologies,St.Louis,Missouri)が80mg/kg投与量で、慢性のDSSの15日目及び養子移植モデルの29日目で開始し、1週間に2回マウスに腹腔内に注入された(図1A)。ベースラインの対照(Rag Co or WT Co)は、ナイーブなT細胞のDSS治療または養子移植前に分析されたマウスであった。治療前(Pre−Tx)対照は、慢性のDSSモデルの14日目及び養子移植モデルの28日目で分析されたマウスであった。治療群は、慢性のDSSモデルについて28日目に及び養子移植モデルについて56日目に分析されたマウスであった(図1A)。全てのマウスは、Cedars−Sinai Medical Center(CSMC)の動物施設(Animal Facility)で、特定の病原体フリー条件下で維持された。本研究は、米国国立衛生研究所の実験動物の実験についてのガイドに従って厳密に行われた。動物実験は、CSMC動物実験委員会により承認された(プロトコル3813)。
【0054】
実施例2
疾患活動性の指標、ミエロペルオキシダーゼ、巨視的及び病理組織学的分析
疾患活動性の指標(DAI)スコアが、DSSモデルについて一日おきに、養子移植モデルについて1週間に2回、記載されるように測定された。ミエロペルオキシダーゼ活性が、製造元(Enzo Life Sciences,Plymouth Meeting,PA)のプロトコルに従ってミエロペルオキシダーゼ蛍光検出キットを用いて評価された。炎症の巨視的証拠が確立された分類を用いて盲検でスコア付けされた。組織サンプルは、CSMCヒストロジーコア(Histology−Core)により、処理されてヘマトキシリン−エオジン(H&E)により染色された。シリウスレッド染色が、製造元(IHC World,Woodstock,MD)のプロトコルに従ってNovaUltraのシリウスレッド染色キットを用いて行われた。免疫蛍光染色法が、10%ホルマリンで固定された4μM凍結切片で行われ、1:100希釈でα−SMA Ab及び1:2000希釈でα−ビメンチンAb(Covance,San Diego,CA)により、ロバα−ウサギIgG及びヤギα−トリIgY(Abcam,Cambridge,MA)二次Abにより染色された。病理組織学的スコアは、記載されるように、2人の訓練された動物病理学者(DQS及びJC)により盲検の態様で付与された。マウスあたりの腸の領域あたりに5以上の異なる視野の観察が、200の倍率で組織学的スコア及びコラーゲン沈着を測定するために、Leica TCS SP分光共焦点顕微鏡を用いて630の倍率で繊維芽細胞/筋線維芽細胞数をカウントするために使用された。
【0055】
実施例3
Dr3−/−マウスの作成
Dr3標的ベクターのクローニング及びDr3+/−ファウンダーマウスの作成はgenOway(genOway,Lyon,France)とのコラボレーションで行われた。簡潔には、エクソン1の上流1.5kb及びエクソン8の下流3kbを含むDr3の内在性位置が、C57BL/6JマウスからゲノムDNAを用いてPCR増幅により生成され、pCR4−TOPOベクターにクローニングされた(Invitrogen,Carlsbad,CA)。その後、2つのloxP部位が隣接するDr3エクソン2から5に挿入された(図5A)。FRT部位により隣接されるポジティブ選択ネオマイシン遺伝子が、標的ベクターを作成するためにエクソン1と2の間のイントロンに挿入された(図5A)。クローニングプロセスのそれぞれのステップが限定解析及びシーケンシングにより検証された。Dr3遺伝子標的構造は、直線化され、エレクトロポレーションによりC57BL/6Jバックグラウンドで、genOway所有の胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトされた。相同組換え体がG418により選択され、サザンブロット解析により確認された。正しい5及び3’組換えESクローンは、C57BL/6J胚盤胞にマイクロインジェクトされ、偽妊娠のC57BL/6Jマウスに導入された。雄のキメラの子孫が、生殖細胞系突然変異マウスを得るために繁殖され、その後、ネオマイシンカセットを取り除くためにFlpe欠損マウス種へと繁殖され、その後、loxPに隣接する配列を切除するためにCre欠損マウスへと繁殖され(図5A)、サザンブロットにより確認され、C57BL/6Jの遺伝的背景が維持された。
【0056】
実施例4
発現の分析
総RNAがRNeasy Microarray Tissue Miniキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて分離され、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)がRT2 HT First Strandを用いて行われ、遺伝子発現が、製造元のプロトコルに従って、RT2 Custom Fibrosis Array CAPM11248(Qiagen,Valencia,CA)キットを用いて測定された。サイトカインの濃度は、複合的な免疫測定、製造元のプロトコルに従って、マウスTh1/Th2/Th17/Th22 13plexキットFlowCytomix(eBioscience,San Diego,CA)を用いてアッセイされた。検証されたDr3 qPCRアッセイMm.PT.51.17321439、Il31Ra qPCRアッセイMm.PT.56a.32787326及びβアクチンqPCRアッセイMm.PT.39a.22214843が、IDT Technologies (Skokie,IL)から購入された。
【0057】
実施例5
細胞の分離、培養、細胞内のサイトカインの発現、及びフローサイトメトリー
粘膜固有層の単核細胞(LPMC)、腸間膜リンパ節(MLN)、及び脾細胞の分離と培養、並びにそれらのその後の抗CD28及び抗CD3εによる刺激が行われた。発明者らは、LPMCの分離のために結腸全体及び回腸の端部10cmを使用した。マウスの原発性結腸繊維芽細胞が、37℃で15分間、1mMのDTT(Fisher Scientific,Tustin,CA)で、その後、37℃で30分間5mMのEDTA(Promega,Madison,WI)を含む1mMのDTTでインキュベートされた結腸から分離された。残っている結腸の組織は、1×HBSS(Corning Cellgro,Swedesboro,NJ)でリンスされ、刻まれ、その後、DMEM(Corning Cellgro,Swedesboro,NJ)中の1.5mg/mLのコラゲナーゼII(Worthington,Lakewood,NJ)、0.3mg/mLのDNaseI及び3mg/mLのヒアルロニダーゼ(Sigma,St. Louis,MO)で、30分間37℃で消化された。分離された細胞は、10%FCS、ペニシリン/ストレプトマイシン(100IU/mL)、ファンギゾン(0.5μg/mL)が添加されたDMEMで培養された。原発性腸繊維芽細胞はパッセージ2で使用された。細胞は、LSRIIフローサイトメーターで取得され(BD Biosciences,San Jose,CA)、FlowJo分析ソフトウェアを用いて分析された。
【0058】
実施例6
エクスビボの腸の繊維芽細胞の増殖及びアポトーシスアッセイ
原発性腸繊維芽細胞が分離され、製造元の指示に従ってCellTrace Violet
(Invitrogen,Carlsbad,CA)により染色された。染色された細胞は、その後、10%FCS、ペニシリン/ストレプトマイシン(100IU/mL)、及びファンギゾン(0.5μg/mL)が添加されたDMEMで、100ng/mLのTl1aとともにインキュベートされた。48時間後、培養された腸の繊維芽細胞は、製造元の指示に従ってアネキシンV染色検出キット(eBioscience,San Diego,CA)を用いて染色された。アネキシンV染色後、繊維芽細胞は回収されて、洗浄され、2%パラホルムアルデヒドで固定され、BD LSRIIフローサイトメーターによりフローサイトメトリック分析に供され、FlowJoソフトウェアにより分析された。
【0059】
実施例7
統計的分析
データは平均±標準偏差(SD)として示される。2つの群間の比較は、カテゴリー変数についての両側のフィッシャー直接検定及び連続変数についてのスチューデントt検定により行われた。パラメータテスト及び非パラメータテストが試験の前提の遂行に応じて使用された。3つの群間の比較は、ANOVAを用いてなされ、その後、多重比較のためのターキーのHSD及びベーレンス−フィッシャーの検定の修正による対でのポストhoc分析が続いた。p<0.05が有意であると考えられた。
【0060】
実施例8
確立された慢性大腸炎の疾患活動性及び全体的な炎症を弱毒化したTl1aAb投与
慢性のマウスの大腸炎におけるTl1a機能を中和する効果が、ナイーブなCD4+CD45RBhi T細胞で養子性にトランスファーされた免疫不全のRag1−/−マウスにおけるTl1a Abを用いて評価された。20及び80mg/kgのTl1a Abまたは80mg/kgでアイソタイプ対照Ab(Iso Ab)が、大腸炎が確立されたときに(図1A)、トランスファー後29日目で開始し、1週間に2回投与された。6週目まで及び8週目で実験の最後にわたって継続して、Tl1a Abで治療されたマウスの疾患活動性の指標(DAI)がIso Abを受けたマウスよりも有意に低かった(図1B)。Iso Ab群と比較して、全体的な結腸の炎症が、両方の投与量でTl1a Abを受けたマウスにおいて有意に減少した(図1C)。また、腸間膜リンパ節(MLN)及び粘膜固有層(LP)から回収される単核細胞の数は、Iso Ab群と比較して、Tl1a Ab治療により減少した(図1D)。Tl1a 80−mg/kgAbで治療されたマウスでは、確立された大腸炎及び細胞浸潤の寛解が、重篤な全体的な結腸の炎症が少なくなること及びPre−Tx群よりもLP単核細胞(LPMC)有意に数が低減することにより実証された(図1C及びD)。
【0061】
同様な見解が慢性のDSS大腸炎モデルを用いて得られた。このモデルでは、Tl1a Ab(20−mg/kg)が、大腸炎が確立されたときから15日目で開始し、1週間に2回投与された(図1A)。Iso Ab群と比較して、我々は、より低いDAI(図7A)、低減された全体的な炎症(図7B)、及びMLN及びLPから回収される単核細胞がわずかである(図7C)ことを観察した。また、DAI及び単核細胞の低減は、Pre−Tx群よりも少なかった。これらのデータは、Tl1a Abによる治療が炎症の減少された全体的なインジケータ及び腸における炎症性細胞の蓄積の低減をもたらすことを示した。
【0062】
実施例9
Tl1a Ab投与が確立されたマウスの大腸炎の病理組織学的な特徴を緩和した。
結腸の組織学的実験は、養子移植モデルにおけるIso Ab群と比較して、Tl1aAb治療による低減された細胞浸潤、ムチンの減損、陰窩膿瘍、及び構造上の変化により特徴づけられる低減された炎症を明らかにした(図2A及びB)。組織学的炎症の低減は、また、4週間目のPre−Tx群と比較して有意に低減し(図2A及びB)、部分的に回復された炎症を示した。一貫して、結腸のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性が、Iso Ab群と比較してTl1a Ab投与の両方の投与量で、及びPre−Tx群と比較して80−mg/kgのTl1a Abで有意に低減した(図2C)。Tl1a Ab投与による結腸のMPO活性における低減がRagベースライン対照(Rag Co)群と有意に異ならないレベルに達した場合に、大腸炎の粘膜の分解が示唆された(図2C)。
【0063】
同様に、慢性のDSSモデルにおけるIso Ab及びPre−Tx群の両方と比較して、Tl1a Abによる改善された結腸の組織病理があった(図8A及びB)。Tl1a Ab治療による組織学的炎症における低減はあったが、結腸の炎症は、まだ、ベースラインWT Co群と比較して有意に高かった(図8B)。また、結腸のMPO活性は、Iso Ab及びPre−Tx群の両方と比較して、Tl1a Ab治療により優位に低かった(図8C)。これらの結果は、Tl1a Abの投与が結腸の組織病理学の正常化をもたらすことを示した。
【0064】
実施例10
Tl1a Abは、Th−1及び−17免疫応答を阻害した。
2つの腸炎惹起性のモデルにおける確立されたマウスの大腸炎を低減する潜在的免疫メカニズムを評価するために、Ifnγ、Il13、及びIl17の発現が測定された。Tl1a Abは、養子移植モデルにおけるIso Ab群及びPre−Tx群の両方と比較してMLN及びLPMCにおけるCD4+Il17+T細胞の頻度を低減した(図3A及びB)。CD4+Ifnγ+T細胞は、同様に、Tl1a Abを20−mg/kgで投与したLPMCを除いてTl1a Ab治療の両方の投与量で低減され、Pre−Tx群と比較して有意な低減をもたらさなかった(図3A及びC)。更に、発明者らは、またMLN及びLPMCの両方で、Pre−Tx及びIso Ab群と比較して、Tl1a Ab治療によりIfnγ+及びIl17+ダブルポジティブCD4+T細胞を有意に低減したことを見出した(図3B及びC、右のパネル)。CD3/CD28により刺激されたMLN及びLPMC細胞を用いて、より低いIl17産生が、Iso Ab及びプレ治療群を受けたマウスと比較して、Tl1a Abにより治療されたマウスでみられた(図3D)。MLNを除いて、Tl1a Ab治療は、両方の投与量で、Iso Ab及びPre−Tx群と比較してより低いIfnγ分泌を導いた(図3E)。CD4+Il13+T細胞及びIl13産生のパーセンテージは、群間で有意に異ならなかった。慢性のDSS大腸炎モデルでは、CD4+Il17+、CD4+Ifnγ+及びCD4+Il17+Ifnγ+T細胞の低減が、Tl1a Ab治療によるMLN及びLPMCにおいて同様に観察された(図9AからC)。一貫して、Tl1a Ab治療は、CD3/CD28により刺激された、分離されたMLN及びLPMC細胞におけるIl17及びIfnγのより低い産生をもたらした(図9D及びE)。CD4+Il13+T細胞及びIl13産生のパーセンテージは、慢性のDSS大腸炎モデルにおける群間で異ならなかった。これらのデータは、Tl1a AbがTh−1及び−17炎症誘発免疫応答を低減することを示唆した。
【0065】
実施例11
Tl1a Abは確立された結腸の線維症を逆戻りさせた。
恒常的なTl1a発現を有するマウスは、これまでに、消化管線維症の増加を発達させることが示された。Tl1aシグナル伝達を抑制することが結腸の線維症を低減し得るのかどうかを評価するために、我々は、コラーゲン沈着の程度を測定するためにシリウスレッド染色を行った。発明者は、ベースラインRag Co群と比較して、ナイーブなT細胞がPre−Tx群においてトランスファーした後4週間までに増加したコラーゲン沈着をみつけた(図4A及びC)。コラーゲン沈着の程度は、対照Iso Abを受けたマウスにおいて8週目までにより多くなった。しかしながら、Tl1a Abによる治療は、Iso AbまたはPre−Tx群を受けたマウスと比較される場合に、コラーゲン沈着において有意な低減を導いた(図4A及びC)。とりわけ、コラーゲン沈着は、80mg/kgのTl1a治療が正常なRag Coマウスと比較された場合に、有意に異ならなかった(図4C)。慢性のDSSモデルにおいて、Tl1a Ab治療による、コラーゲン沈着における同様の低減が、Iso AbまたはPre−Tx群と比較して観察された(図4A及びC)。また、Tl1a治療は、WTベースライン対照と有意に異ならないレベルにコラーゲン沈着における低減を導いた(図4A及びC)。ともに、これらのデータは、Tl1aシグナル伝達を抑制することが、炎症の発症前と同様のレベルにコラーゲン沈着を逆戻りさせることを示唆した。
【0066】
実施例12
Tl1a−Dr3シグナル伝達を抑制することが、腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞数を低減させた。
Tl1a Abによるコラーゲン沈着低減のメカニズムを研究することを開始するために、腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の出現頻度が測定された。腸の筋線維芽細胞は、腸の線維形成に伴われる細胞群である。ビメンチン陽性細胞は、繊維芽細胞であり、α平滑筋アクチン(αSMA)の共発現に関し、筋線維芽細胞を表す。データは、ナイーブなT細胞をトランスファーした4週間後に(Pre−Tx群)、繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数が増加することを示した(図4B及びD)。繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数は、Iso Abを受けたマウスで8週目までに更に増加した。しかしながら、Tl1a Abによる治療は、正常なRag Coと同様のレベルまで、繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数における低減を導いた(図4B及びD)。興味深いことに、80−mg/kgのTl1a Abを受けたマウスにおける筋線維芽細胞の低減は、Rag Coマウスと統計的に異ならないレベルに達し(図4B及びD)、線維形成の反転を示唆した。
【0067】
慢性のDSSモデルでは、アイソタイプまたはPre−Tx群と比較した場合、Ab治療による繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数の同様の低減が観察された(捕捉の図4B及びD)。養子移植モデルと一貫して、Tl1a Ab治療による腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数の低減は、WTベースライン対照とは統計学的に異ならないレベルに達した(図10B及びD)。
【0068】
発明者らは、腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数の低減が直接的なTl1a−Dr3シグナル伝達によるかどうかを描写するために、Dr3欠損(Dr3−/−)マウス(図5A及びB)を作製した。野生型同腹子ベースライン(非大腸炎性)マウスと比較して、Dr3−/−において有意に腸の繊維芽細胞が少なかった(図5C)。次に、発明者らは、WT及びDr3−/−マウス間の腸の繊維芽細胞における差が、増殖及び/またはアポトーシスに起因するのかどうかを測定するために、エクスビボCellTrace Violetアッセイ及びアネキシンV染色をそれぞれ行った。フローサイトメトリックな分析は、WT及びDr3−/−腸の繊維芽細胞間の重複したCellTrace Violet強度により明白に同様の増殖率を示した(図5D、上のパネル)。野生型及びDr3−/−腸の繊維芽細胞間のアポトーシス割合の差は観察されなかった(図5D、下のパネル)。
【0069】
実施例13
Tl1a Ab治療による線維形成の反転
Tl1a Abによる確立された腸の線維症の反転の分子メカニズムを研究するために、コラーゲンの発現、線維形成性プログラムメディエータ(Tgfβ1、Ctgf、Igf1、Pten、及びIl31Ra)、及び細胞外マトリクス(ECM)リモデリングを伴う因子(Mmp及びTimp)が測定された。より低いレベルのコラーゲン発現が、養子移植及び慢性のDSSモデルの両方で見られた(本明細書の表1及び表2)。Tl1a Abによる線維形成性プログラムの正常化が、養子移植及び慢性のDSSモデルの両方で並びに養子移植モデルにおけるIgf1でTgfβ1及びIl31Raを含む前繊維性のメディエータのより低い発現により観察された(表1及び表2)。結合組織増殖因子(Ctgf)、Tgfβシグナル伝達の下流メディエータの発現が、養子移植モデルにおけるPre−Tx及びIso Ab群と比較して、Tl1a Ab投与により低減された。ECMリモデリングは、メタロプロテアーゼ(Mmp)及びメタロプロテアーゼの組織インヒビタ(Timp)の発現を測定することにより評価された。アイソタイプAb群と比較して、ECM劣化を伴う遺伝子の発現は、養子移植モデルにおけるTl1a Abにより治療されたマウス(Mmp2、Mmp3;表1)において、及び慢性のDSSモデル(Mmp2、Mmp3、Mmp13;表2)において低減された。とりわけ、Timpの発現は、養子移植モデル(Timp2,表1)において及び慢性のDSSモデル(Timp1、Timp2;表2)において、Tl1a治療により、より低くなった。これらの結果は、低減されたコラーゲン合成を導くTl1a Abによる線維形成性プログラムにおける低減があることを論証する。Mmp及びTimpの両方のより低い発現が、組織の損傷を誘導するよりもむしろ確立されたECMコンポーネントの増強された除去に寄与するかもしれない。このように、データは、Tl1a Abによる確立された繊維症の反転が、低減された線維形成性プログラム及びおそらくMmp及びTimpの両方の低減の最終結果であることを示唆する。
【0070】
実施例14
腸の繊維芽細胞がDr3を発現し、Tl1a刺激に反応する。
発明者らは、腸の繊維芽細胞が、直接Tl1aシグナル伝達に対して機能的に反応し得るのかどうかを調査した。Dr3のmRNAレベル、Tl1aの唯一の既知のレセプターが測定され、WTでは低レベルで発現されるが、Dr3欠損原発性腸繊維芽細胞では発現されないことをみいだした(図6A、上のパネル)。一貫して、免疫蛍光染色法は、Dr3は、WT原発性腸繊維芽細胞で発現されることを示した(図6A、下のパネル)。フローサイトメトリーを用いて、発明者らは、Dr3が、αSMA発現なしの繊維芽細胞と比較して、αSMAと供発現する繊維芽細胞で優先的に発現されることを見出した(図6B)。発明者らは、腸の繊維芽細胞がTl1a刺激に反応し得るかどうかを次に確認し、繊維芽細胞活性化のマーカーとしてコラーゲン(Col1a2)及びIl31レセプター(Il31Ra)を使用した。発明者らは、Tl1aが、エクスビボでマウスの原発性腸繊維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Raの発現を投与量に依存して増加させ得ることを示した(図6C)。Tl1a刺激の特性は、エクスビボでDr3−/−マウスの腸の繊維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Raの平滑末端化されたTl1a誘導により論証される(図6D)。これらのデータは、腸の繊維芽細胞がDr3を発現し、直接Tl1aシグナル伝達に機能的に反応し得ることを示す。
【0071】
実施例15
線維症メディエータの発現分析の結果
表1 養子移植大腸炎モデルにおける線維症メディエータの発現分析
【表1】

ns=有意ではない
【0072】
表2 DSSモデルにおける線維症メディエータの発現分析
【表2】

ns=有意ではない
【0073】
実施例16
TL1A−Dr3シグナル伝達を抑制することは、腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数を低減した。−追加の結果
結腸の筋線維芽細胞は、腸の線維形成をともなう細胞群である。Tl1aAbによるコラーゲン沈着低減の細胞メカニズムを研究するために、繊維芽細胞発現のビメンチン及び筋線維芽細胞共発現のビメンチン及びα平滑筋アクチン(αSMA)が、これらの細胞タイプの数を評価するために測定された。Pre−Tx及びIso Ab群の両方でナイーブなT細胞がトランスファーした後に、結腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数が増加した(図11a)。しかしながら、Tl1aAbによる治療は、正常なRagCoと同様のレベルにまで繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数における低減を導いた(図11a)。
【0074】
慢性のDSSモデルにおいて、Tl1a Abで治療されたマウスは、IsoまたはPre−Tx群と比較して、結腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数における同様の低減を示した(図11b)。養子移植モデルで観察されたことと一貫して、Tl1a Ab治療による腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数は、WTベースライン対照と統計学的に異ならないレベルにまで低減した(図11b)。慢性のDSS大腸炎モデルにおけるWT Co群と比較して、Tl1a Ab治療で、まだ有意に悪化された大腸炎があったため、筋線維芽細胞及び繊維芽細胞の低減された数は、低減された炎症による単なる二次的な効果よりもむしろ少なくとも部分的にTl1aを中和する直接的な結果と一貫性があった。
【0075】
慢性大腸炎のこれらのマウスのモデルにおける線維症の変化に関連するDr3発現の変化があるかどうかを次に評価した。免疫蛍光染色法は、養子移植及び慢性のDSS大腸炎モデルの両方におけるベースライン対照群(Rag Co及びWT Co)及びTl1a Ab治療群の両方と比較して、Pre−Tx及びIso Ab群における増加したDr3発現を明らかにした(図11c、d)。とりわけ、Pre−Tx及びアイソタイプAb群での繊維芽細胞のパーセンテージにおけるDr3の発現があった(図11c、d)。リアルタイム定量逆転写酵素PCR分析は、Dr3の発現が、両方のモデルにおける、ベースライン対照(Rag Co及びWT Co)及びTl1a Ab治療群の両方におけるマウスと比較して、Iso Ab群で有意により高かったことを示した(図11e)。更に、Tl1aのmRNA発現は、養子移植及び慢性のDSS大腸炎モデルの両方における、非炎症性の対照(Rag Co及び WT Co)及びTl1a Ab治療群と比較して、Iso Ab群における有意な増加があった(図11f)。これらの結果は、腸の線維症の増加とDr3−Tl1a発現の直接的な関係と一貫性があった。
【0076】
腸の繊維芽細胞及び筋線維芽細胞の数における低減が、直接的にTl1a−Dr3シグナル伝達に起因し得るのかどうかを測定するために、Dr3欠損(Dr3−/−)マウスが作成された。8週齢までのWTまたはDr3−/−マウスにおける自然な大腸炎はなかったが(図12a、上のパネル)、ビメンチンの免疫蛍光染色法(図12a、中央のパネル)及び結腸あたりの合計の回復した繊維芽細胞の定量(図12a、下のパネル)により示されるように、WT同腹子マウスと比較して、Dr3−/−における腸の繊維芽細胞は有意に少なかった。ビメンチン及びαSMA(図12a、中央のパネル)によりまたは光学顕微鏡(図12a、下のパネル)による免疫蛍光染色法により、WT及びDr3−/−繊維芽細胞間に形態学的差異はなかった。エクスビボCellTrace Violetアッセイ及びアネキシンV染色が、WT及びDr3−/−マウス間の腸の繊維芽細胞の数の差が増殖及び/またはアポトーシスにそれぞれ起因するのかどうかを測定するために使用された。フローサイトメトリックな分析は、WT及びDr3−/−腸の繊維芽細胞間の重複するCellTrace Violet強度により証明されるように、同様の増殖率を示した(図12b)。WT及びDr3−/−腸の繊維芽細胞間でアポトーシスの割合における差異はみられなかった(図12c)。
【0077】
実施例17
腸の繊維芽細胞はDr3を発現し、TL1A刺激に対して反応する。−追加の結果
腸の繊維芽細胞が直接的なTl1aシグナル伝達に対して機能的に反応するかどうかを測定するために、Dr3のmRNAレベルが測定されて、Dr3欠損原発性腸繊維芽細胞では検出できないが、WT(0.0018±0.001%βアクチン)では低いレベルで発現されることが分かった。フローサイトメトリックな分析が、Dr3がビメンチン+αSMA−繊維芽細胞またはビメンチン+αSMA+筋線維芽細胞(myoflbroblast)で発現されるかどうかを測定するために行われた。結果は、Dr3が、ビメンチン+αSMA−繊維芽細胞と比較して、ビメンチン+αSMA+筋線維芽細胞で優先的に発現することを示した。更に、筋線維芽細胞でのαSMAレベルと、最も高いαSMA発現との筋線維芽細胞でのDr3発現のより高い比率と、Dr3発現の直接的な相関関係があった(図13a)。更に、αSMA及びDr3により免疫染色された、ソートされたαSMA陽性の原発性腸繊維芽細胞は、WTにおけるDr3の供染色を示したが、Dr3欠損筋線維芽細胞では示されず、Dr3はαSMA陽性の原発性腸繊維芽細胞で発現されることを示した(図13b)。
【0078】
腸の繊維芽細胞が直接的なTl1a刺激と反応し得るかどうかを測定するために、コラーゲン(Col1a2、繊維芽細胞機能についてのマーカー)及びIl31Ra(Il31Raは繊維芽細胞で発現される)の発現における変化が、外因性のTl1aタンパク質の添加により測定された。結果は、エクスビボでのマウスの原発性腸繊維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Raの発現において、Tl1a投与量依存的な増加を示した(図13c)。Tl1a刺激の特異性は、エクスビボでDr3−/−マウスの腸の繊維芽細胞におけるCol1a2及びIl31Raの平滑末端化されたTl1a誘導により論証された(図13d)。これに対し、Col1a2またはIl31Raの分化誘導は、既知の繊維芽細胞増殖因子(Tgfβ及びIgf1)または炎症誘発刺激(Tnfα)を用いてもみられなかった(図13d)。これらのデータは、腸の繊維芽細胞がDr3を発現し、直接的にTl1aシグナル伝達に機能的に反応し得ることを示した。
【0079】
実施例18
全般
腸の線維狭窄は、とりわけ重篤なCrohn病の顕著な特徴である。所定のTNFSF15(遺伝子名TL1A)変異体を有する患者はTL1Aを過剰に発現し、小腸で狭窄を発症するより高いリスクを有する。更に、マウスにおける持続性のTl1a発現は、腸炎惹起性の状況下に小及び大腸を導く。発明者らは、確立されたマウスの結腸の線維症が、Tl1a抗体により逆戻りし得るかどうかを測定した。Tl1a抗体を中和する治療は、結合組織増殖因子(Ctgf)、Il31Ra、形質転換増殖因子(Tgf)β1及びインスリン様増殖因子1(Igf1)のより低い発現の結果として、もとの前炎症性のレベルに結腸の線維症を逆戻りさせた。更に、Tl1a抗体を中和またはデスドメインレセプタ3(Dr3)の欠失のいずれかによりTl1a機能を抑制することは、繊維芽細胞及び筋線維芽細胞、組織の繊維症を媒介する原発性の細胞タイプの数を低減させた。原発性腸筋線維芽細胞がDr3を発現し、コラーゲン及びIl31Ra発現を増加させることにより直接的なTl1aシグナル伝達に機能的に反応した。これらのデータは、組織線維症におけるTL1A−DR3シグナル伝達の直接的な役割、及びTL1A−DR3シグナル伝達の変調が消化管線維症を阻害することを論証した。
【0080】
本発明の種々の実施形態が上記の詳細な説明で述べられる。これらの記載は、上記実施形態を直接的に記載しているが、当業者は、本明細書に示されかつ記載される特定の実施形態に対して変更及び/またはバリエーションを着想することが理解される。本記載の範囲内であるあらゆるこのような変更及びバリエーションは、同様に本明細書に含まれることが意図される。特に記載されない限り、明細書及び請求の範囲における文言及びフレーズは、当業者にとって通常の慣用されている意味を付与されることが発明者の意図である。出願時に出願人に知られている発明の種々の実施形態の上述の記載は、説明及び記載の目的で存在し、意図される。本記載は、開示されている正確な形態に本発明を徹底または限定する意図はなく、多くの変更及びバリエーションが上記の教示に照らして可能である。記載される実施形態は、本発明の原理及びその実際の応用を説明するため、及び当業者が種々の実施形態で、及び考慮される特定の使用に適するように種々の変更をもってその発明を利用できるように提供される。よって、本発明は、本発明を実施するために開示された特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0081】
本発明の特定の実施形態が示されて記載され、一方、当業者にとって、本明細書での教示に基づいて変化や変更が、本発明及びその広い態様から逸脱することなくなされることは自明であり、よって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内であるとして、全てのこのような変化及び変更はそれらの範囲内に包含されるべきである。全般に、本明細書で使用される用語は、概して、「オープン」な用語(例えば、「含んでいる」は、「含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有している」は「少なくとも有している」と解釈されるべきであり、用語「含む」は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである等)として意図されることが当業者により理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】