(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671279
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
B65D41/04 200
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-528691(P2016-528691)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2014066057
(87)【国際公開番号】WO2015193971
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年4月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊也
(72)【発明者】
【氏名】杉森 友彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 力
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−132982(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0075084(US,A1)
【文献】
特開昭60−068256(JP,A)
【文献】
実開昭50−129561(JP,U)
【文献】
実開昭58−033436(JP,U)
【文献】
特開2002−104452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に装着され、
天板部と、
前記天板部の周縁から垂下する筒部と、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリングと、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリングと、
前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の先端部と接触するコンタクトリングと、を備える樹脂製キャップであって、
前記コンタクトリングは、前記天板部の側から前記容器口部の先端部に向かって幅が太くなる逆テーパー部を有し、当該逆テーパー部が、前記容器口部の先端部と接触するよう構成されており、
前記コンタクトリングは、前記容器口部の先端部との接触によって変位可能に構成されており、
前記コンタクトリングは、くびれ部を有する形状であり、当該くびれ部を中心として、前記天板部の側から、前記容器口部の先端部に向かって幅が細くなるテーパー部と、前記逆テーパー部とが接続された形状に構成されており、
前記コンタクトリングの断面形状は、前記くびれ部の中心を通り前記天板部と直交する垂線に対して左右対称であり、
前記逆テーパー部における前記容器口部の先端部と接触する部位は、前記先端部と面接触するように平坦に構成してある樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトル等の容器の口部に使用される着脱自在な樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
このような樹脂製キャップとしては、天板部と、天板部の周縁から垂下する筒部と、天板部の内面に形成され、容器口部の外周面と接触するアウターリングと、天板部の内面に形成され、容器口部の内周面と接触するインナーリングと、を備え、アウターリング及びアウターリングよりも長さ(天板部からの垂直距離)が長いインナーリングで容器口部を挟持することによって容器を密封するものが広く使用されている。
【0003】
天板部の内面には、通常、アウターリングやインナーリングとともに、容器口部の先端部と接触するコンタクトリングも形成されている(例えば、特許文献1参照)。コンタクトリングは、元々、樹脂製キャップの装着時の終端位置を規定するために設けられていたが、近年では、アウターリングやインナーリングと同様、容器を密封するためにも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−40444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ペットボトル等の容器は、内容物を充填した後、口部に樹脂製キャップを装着した状態で加熱殺菌が行われるが、この時の加熱で容器口部が軟化して変位(変形)することにより、アウターリングやインナーリングと容器口部との接触状態が悪化し、容器の密封性が低下する場合がある。
また、加熱殺菌は容器を転倒させた状態で行われることもあるが、この場合、インナーリングには加熱された内容物が接触することになるため、インナーリングが軟化してしまい、容器口部との接触状態が更に悪化する場合がある。また、熱水等により容器を加熱殺菌する場合はアウターシールがその高温の雰囲気と接するため、アウターシールが軟化する場合もあり、容器の密封性が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、加熱殺菌に起因する容器の密封性の低下を抑制できる樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂製キャップの特徴構成は、容器口部に装着され、天板部と、前記天板部の周縁から垂下する筒部と、前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の外周面と接触するアウターリングと、前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の内周面と接触するインナーリングと、前記天板部の内面に形成され、前記容器口部の先端部と接触するコンタクトリングと、を備える樹脂製キャップであって、
前記コンタクトリングは、前記天板部の側から前記容器口部の先端部に向かって幅が太くなる逆テーパー部を有し、当該逆テーパー部が、前記容器口部の先端部と接触するよう構成されており、前記コンタクトリングを、前記容器口部の先端部との接触によって変位可能に構成した点にある。
【0008】
この構成によれば、コンタクトリング
が逆テーパー部を有するように構成すれば、コンタクトリングと容器口部の先端部との接触面積を大きくしてシール性を向上することができる。また、当該逆テーパー部が容器口部の先端部
と接触してコンタクトリングを変位可能な構成とすることにより、加熱殺菌によって容器口部が軟化して変位しても、コンタクトリングがその変位に追随することができるため、加熱殺菌に起因する容器の密封性の低下を抑制できる。
また、容器を転倒して加熱殺菌を行う場合であっても、コンタクトリングは、アウターリングやインナーリングと異なり、加熱された液体と直接接触しないため、加熱殺菌による軟化の影響を受けにくいという利点もある。
【0009】
本発明
では、前記コンタクトリングを、くびれ部を有する形状とし、当該くびれ部を中心として、前記天板部の側から、前記容器口部の先端部に向かって幅が細くなるテーパー部と、前記逆テーパー部とが接続された形状に構成し
、前記コンタクトリングの断面形状は、前記くびれ部の中心を通り前記天板部と直交する垂線に対して左右対称であり、前記逆テーパー部における前記容器口部の先端部と接触する部位は、前記先端部と面接触するように平坦に構成してある。
【0010】
この構成によれば、
コンタクトリングの可動域を大きくすることができるため、コンタクトリングの可動性とシール性とを両立させることができる状態で、コンタクトリングを容易に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の樹脂製キャップを容器口部に装着した状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の樹脂製キャップの要部拡大図であり、(A)は容器口部に装着する途中の状態を、(B)は容器口部に装着した状態を示す。
【
図4】本発明の樹脂製キャップの変形例を示す要部拡大図であり、(A)は容器口部に装着する途中の状態を、(B)は容器口部に装着した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の樹脂製キャップについて説明する。
【0015】
[実施形態1]
本実施形態に係る樹脂製キャップ10は、
図1に示すように、樹脂製の容器口部20に使用される。
本実施形態に係る樹脂製キャップ10は、
図1〜3に示すように、天板部11と、天板部11の周縁から垂下する筒部12と、天板部11の内面に形成され、容器口部20の外周面と接触するアウターリング13と、天板部11の内面に形成され、容器口部20の内周面と接触するインナーリング14と、天板部11の内面に形成され、容器口部20の先端部と接触するコンタクトリング15とを備えており、コンタクトリング15を、容器口部20の先端部との接触によって変位可能な構成としてある。
【0016】
樹脂製キャップ10は、材質、製法等が特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂を用い、天板部11、筒部12、アウターリング13、インターリング14、コンタクトリング15を一体に射出成型することにより製造することができる。
【0017】
樹脂製キャップ10の天板部11は、容器口部20の形状に合わせて円板状に形成してあり、筒部12の内周面にねじ山12aを設けて、容器口部20の外周面に形成されたねじ山20aと螺合することにより、樹脂製キャップ10が容器口部20に装着されるようにしてある。
【0018】
アウターリング13、インナーリング14及びコンタクトリング15は、天板部11の内面から突出した形状を有する。アウターリング13の内周面が容器口部20の外周面に、インナーリング14の外周面が容器口部20の内周面に、コンタクトリング15の先端部が容器口部20の先端部にそれぞれ接触することで、容器が密封される。
【0019】
アウターリング13の形状は、本実施形態では、その外周面の一部が容器口部20の内周面と当接する場合を例示しているが、容器口部20と接触できる形状であれば特に限定されず、
図1〜3に示した形状以外に、一般的な種々の形状を採用できる。インナーリング14についても同様である。
【0020】
コンタクトリング15は、容器口部20の先端部との接触によって変位可能な構成とされており、本実施形態においては、くびれ部15aを有する形状で形成されている。これにより、
図2に示すように、コンタクトリング15がバネのように機能して、コンタクトリング15が容器口部20の先端部との接触に合わせて変位することができるため、容器口部20が軟化して変位した場合であっても、容器口部20の変位にコンタクトリング15を追随させ、容器口部20とコンタクトリング15との接触を維持することができる。
【0021】
また、コンタクトリング15は、幅(径方向の長さ)を細くすると可動域が大きくなって容器口部20の変位に追随し易くなるが、その一方で、コンタクトリング15と容器口部20との接触面積が小さくなり、コンタクトリング15のシール性が低下する傾向がある。これに対し、本実施形態では、コンタクトリング15が、くびれ部15aを中心として、天板部11側から、容器口部20の先端部に向かって幅が細くなるテーパー部と、容器口部20の先端部に向かって幅が太くなる逆テーパー部とが接続された形状で形成されているため、コンタクトリング15の可動域を大きくしながら、コンタクトリング15と容器口部20との接触面積を大きくして、コンタクトリング15の可動性とシール性とを両立させることができる。
【0022】
コンタクトリング15の長さ(天板部11からの垂直距離)は、樹脂製キャップ10を容器口部20に装着したとき、コンタクトリング15の先端部が容器口部20の先端部に接触できる範囲であれば特に限定されないが、0.1〜0.5mm程度が好ましい。
また、コンタクトリング15の先端部の幅は、0.1〜1.0mm程度が好ましい。
また、くびれ部15aの幅(コンタクトリング15の最小幅)は、コンタクトリング15の最大幅の4/5〜1/5程度が好ましい。
なお、これらの数値範囲は、樹脂製キャップ10を容器口部20に装着していない状態、すなわち、コンタクトリング15が容器口部20の先端部と接触していない状態のものである。コンタクトリング15が容器口部20の先端部と接触した状態では、容器口部20からの圧力でコンタクトリング15が変形して、これらの数値範囲から外れる場合がある。
【0023】
容器口部20を有する容器としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフタレート等の合成樹脂から製造された飲料用等の樹脂製容器に適用することができる。特に、果汁飲料、スポーツドリンク、お茶等に使用される、内容物を高温状態で充填する樹脂製容器に好適である。
【0024】
[その他の実施形態]
上記の実施形態においては、コンタクトリング15がくびれ部15aを有する形状で形成された場合を例示したが、コンタクトリング15の形状はこれに限定されない。例えば、
図4に示すように、容器口部20の先端部と接触していない状態において、コンタクトリング15が天板部11の径方向に湾曲した形状で形成されてもよい。この形状でも、上記の実施形態と同様、コンタクトリング15がバネのように機能して、コンタクトリング15が容器口部20の先端部との接触に合わせて変位することができるため、容器口部20が軟化して変位した場合であっても、容器口部20の変位にコンタクトリング15を追随させ、容器口部20とコンタクトリング15との接触を維持することができる。
【0025】
また、
図4では、コンタクトリング15が天板部11の径方向外側に湾曲した形状で形成された場合を例示しているが、コンタクトリング15は天板部11の径方向内側に湾曲した形状で形成されてもよい。
【0026】
なお、コンタクトリング15がくびれ部15aを有する形状や、コンタクトリング15が天板部11の径方向に湾曲した形状は、あくまでコンタクトリング15の好適な形状の例示として挙げたものであり、コンタクトリング15の形状はこれに限定されない。容器口部20の先端部との接触で変位可能であれば、コンタクトリング15を他の形状で形成してもよく、例えば、容器口部20の先端部に向かって幅が太くなる逆テーパー形状でコンタクトリング15全体を形成してもよい。
【0027】
上記の実施形態では、コンタクトリング15が容器口部20の先端の面部分と接触するように形成された場合について例示したが、これに限定されず、容器口部20の先端の角部分と接触するようにコンタクトリング15を形成してもよい。
【0028】
上記の実施形態では、コンタクトリング15が容器口部20の中心からインナーリング14側に寄った位置に形成された場合について例示したが、コンタクトリング15の位置はアウターリング13及びインナーリング14の位置や大きさによって適宜調整すればよく、コンタクトリング15が容器口部20の略中心に形成されてもよいし、コンタクトリング15が容器口部20の中心からアウターリング13側に寄った位置に形成されてもよい。
【0029】
上記の本実施形態では、コンタクトリング15が一つ形成された場合を例示したが、これに限定されず、コンタクトリング15が複数形成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 :樹脂製キャップ
11 :天板部
12 :筒部
12a :ねじ山
13 :アウターリング
14 :インナーリング
15 :コンタクトリング
15a :くびれ部
20 :容器口部
20a :ねじ山