(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671281
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ブリスターパック用積層体、及びそれを用いたブリスターパック
(51)【国際特許分類】
A61J 1/03 20060101AFI20200316BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20200316BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20200316BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
A61J1/03 370
B65D75/36
B65D81/26 K
B32B15/08 F
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-529525(P2016-529525)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2015067658
(87)【国際公開番号】WO2015194644
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-125042(P2014-125042)
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友宏
(72)【発明者】
【氏名】和泉 芙美
(72)【発明者】
【氏名】平野 友喬
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周
(72)【発明者】
【氏名】細井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 みどり
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晋久
【審査官】
村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/029899(WO,A1)
【文献】
特開2011−255931(JP,A)
【文献】
特表2005−523188(JP,A)
【文献】
特開2012−000885(JP,A)
【文献】
特開2007−245612(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/156039(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/115264(WO,A1)
【文献】
特開2004−058515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/03
B32B 15/08
B65D 75/36
B65D 81/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、アルミニウム層、吸湿層、及び成形補助層をこの順で含み、
前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面は、ISO8295に準拠して測定した場合に、ポケット部分を成形するためのプラグ材に用いられる超高分子量ポリエチレンとの静摩擦係数が0.36未満であり、かつ
前記成形補助層は、JIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、50%延伸させるために必要な力が、MD方向及びTD方向の両方で160.7MPa未満であるフィルム又はシートである、
ブリスターパック用積層体。
【請求項2】
前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面は、ISO8295に準拠して測定した場合に、前記超高分子量ポリエチレンとの動摩擦係数が0.36未満である、請求項1に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項3】
ISO527−1に準拠して測定した場合に、前記成形補助層の引張弾性率が、MD方向及びTD方向の両方で168MPa超、1778MPa未満である、請求項1又は2に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項4】
前記成形補助層が、無延伸ポリプロピレン樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項5】
前記静摩擦係数が、0.30以下であり、かつJIS K7127に準拠して引張試験を行った場合に、前記50%延伸させるために必要な力が、120MPa以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項6】
前記静摩擦係数が、0.24以下であり、かつJIS K7127に準拠して引張試験を行った場合に、前記50%延伸させるために必要な力が、70MPa以下である、請求項5に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項7】
前記吸湿層が、前記基材層側の外スキン層、吸湿剤及びバインダー樹脂を有する中間層、並びに内スキン層をこの順で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項8】
前記吸湿層の前記外スキン層及び内スキン層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群よりそれぞれ選択される樹脂を含む、請求項7に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項9】
前記基材層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物からなる群より選択される樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項10】
補強層を、前記アルミニウム層と前記吸湿層との間にさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項11】
前記補強層が、ポリ塩化ビニル、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物からなる群より選択される樹脂を含む、請求項10に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層体、並びに前記アルミニウム層とは別のアルミニウム層及び樹脂層を有する蓋材を含み、前記積層体と前記蓋材とが少なくとも部分的に接着しており、かつ前記積層体にポケット部が形成されて前記積層体と前記蓋材との間に医薬品製剤が収納可能になっている、ブリスターパック。
【請求項13】
請求項12に記載のブリスターパックと、前記ポケット部に収納された医薬品製剤とを有するブリスターパック包装体。
【請求項14】
ブリスターパック用積層体及び蓋材を含み、前記積層体と前記蓋材とが少なくとも部分的に接着しており、かつ前記積層体にポケット部が形成されて前記積層体と前記蓋材との間に医薬品製剤が収納可能になっているブリスターパックであって、
前記積層体は、下記の層をこの順番で含み:
ポリアミドからなる基材層;
アルミニウム層;
ポリエチレン系樹脂からなる外スキン層;
ゼオライト及びポリエチレン系樹脂からなるバインダー樹脂を含む中間層;
ポリエチレン系樹脂からなる内スキン層;並びに
ポリ塩化ビニル樹脂を含む成形補助層、
前記蓋材は、前記成形補助層側のポリ塩化ビニル樹脂層、及び前記アルミニウム層とは別のアルミニウム層を含み、
ISO8295に準拠して測定した場合に、前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面と、ポケット部分を成形するためのプラグ材に用いられる超高分子量ポリエチレンとの静摩擦係数が0.24以下であり、かつ
JIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、前記成形補助層を50%延伸させるために必要な荷重が、MD方向及びTD方向の両方で70.0MPa以下である、
ブリスターパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパック用積層体、及びその積層体を用いたブリスターパックに関する。特に、本発明は、大きな医薬品製剤を包装するために深さのあるポケット部を形成しても成形不良を発生させないブリスターパック用積層体、及びその積層体を用いたブリスターパックに関する。
【背景技術】
【0002】
粉状の医薬品製剤は、薄手の紙袋又はフィルム製袋等に封入されるが、錠剤又はカプセル剤等の医薬品製剤は、PTP(プレススルーパック)と呼ばれるブリスターパックに封入される。ブリスターパックに封入されている医薬品製剤を指で押し込むことによって、アルミニウム等を含む蓋材を破り、そして医薬品製剤を取り出すことができる。
【0003】
医薬品製剤は水分を吸収することにより、高湿度条件下において、薬効成分が変質することがある。そのため、従来は、ブリスターパックを封入する外装袋内にシリカゲル等の乾燥剤が封入されていた。しかし、外装袋内に乾燥剤が投入される作業は手間がかかり、またこれが誤飲又は誤食される恐れもあった。また、外装袋の開封後は、ブリスターパック内を低湿度に保つことができず、医薬品製剤が変質する等の問題もあった。
【0004】
それに対し、特許文献1は、ブリスターパックの内部に吸着剤を有する吸着層を形成することによって、医薬品製剤の長期安定性を向上させる技術を開示している。ここではまず、バリア層である基材と吸着層との積層体に、ドーム状のポケット部分を形成する。そして、そのポケット部分に医薬品製剤を入れて、これを蓋材で封止している。この技術によれば、外装袋に乾燥剤等を同梱しなくても、乾燥状態の維持が可能になると考えられる。
【0005】
また、医薬品製剤に含まれる薬効成分の中には、紫外線等により変質するものもあり、包装容器が透明であると、薬効成分が劣化するおそれがある。これに対して、例えば特許文献2は、ブリスターパックの裏側の蓋材だけではなく、表側のブリスターパック用積層体にもアルミニウム層を形成する技術、いわゆるアルミブリスター包装を開示している。この技術によれば、ブリスターパックの内部にアルミニウム層を形成するので医薬品製剤は視認できないが、バリア性をさらに高めることができる。
【0006】
上記の2つの技術を単純に組み合わせた態様では、ブリスターパック用積層体にドーム状のポケットを成形する際に、ドームの天井部分が破れたり、裾の部分又は肩の部分に亀裂が発生したりする成形上の問題が発生するが、特許文献3はこれに対処するために、特定のポリマーを用いた補強層を、アルミニウム層と吸湿層との間に挿入している。この態様では、成形性にかなりの改善があるものの、成形機の型又は成形深さによっては、ポケットの肩の部分が裂けたり、ピンホールが発生したりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/115264号
【特許文献2】特開2004−58515号公報
【特許文献3】国際公開第2012/029899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ポケットを一定の深さまで形成しても成形不良が発生しにくい、ブリスターパックに十分な成形性を与えるブリスターパック用積層体、及びその積層体を用いたブリスターパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
[1] 基材層、アルミニウム層、吸湿層、及び成形補助層をこの順で含み、
前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面は、ISO8295に準拠して測定した場合に、超高分子量ポリエチレンとの静摩擦係数が0.36未満であり、かつ
前記成形補助層は、JIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、50%延伸させるために必要な力が、MD方向及びTD方向の両方で160.7MPa未満であるフィルム又はシートである、
ブリスターパック用積層体。
[2] 前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面は、ISO8295に準拠して測定した場合に、超高分子量ポリエチレンとの動摩擦係数が0.36未満である、[1]に記載のブリスターパック用積層体。
[3] ISO527−1に準拠して測定した場合に、前記成形補助層の引張弾性率が、MD方向及びTD方向の両方で168MPa超、1778MPa未満である、[1]又は[2]に記載のブリスターパック用積層体。
[4] 前記成形補助層が、無延伸ポリプロピレン樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
[5] 前記静摩擦係数が、0.30以下であり、かつJIS K7127に準拠して引張試験を行った場合に、前記50%延伸させるために必要な力が、120MPa以下である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
[6] 前記静摩擦係数が、0.24以下であり、かつJIS K7127に準拠して引張試験を行った場合に、前記50%延伸させるために必要な力が、70MPa以下である、[5]に記載のブリスターパック用積層体。
[7] 前記吸湿層が、前記基材層側の外スキン層、吸湿剤及びバインダー樹脂を有する中間層、並びに内スキン層をこの順で含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
[8] 前記吸湿層の前記外スキン層及び内スキン層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群よりそれぞれ選択される樹脂を含む、[7]に記載のブリスターパック用積層体。
[9] 前記基材層が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物からなる群より選択される樹脂を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
[10] 補強層を、前記アルミニウム層と前記吸湿層との間にさらに含む、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のブリスターパック用積層体。
[11] 前記補強層が、ポリ塩化ビニル、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリアミド及びこれらの混合物からなる群より選択される樹脂を含む、[10]に記載のブリスターパック用積層体。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の積層体、並びに前記アルミニウム層とは別のアルミニウム層及び樹脂層を有する蓋材を含み、前記積層体と前記蓋材とが少なくとも部分的に接着しており、かつ前記積層体にポケット部が形成されて前記積層体と前記蓋材との間に医薬品製剤が収納可能になっている、ブリスターパック。
[13] [12]に記載のブリスターパックと、前記ポケット部に収納された医薬品製剤とを有するブリスターパック包装体。
[14] ブリスターパック用積層体及び蓋材を含み、前記積層体と前記蓋材とが少なくとも部分的に接着しており、かつ前記積層体にポケット部が形成されて前記積層体と前記蓋材との間に医薬品製剤が収納可能になっているブリスターパックであって、
前記積層体は、下記の層をこの順番で含み:
ポリアミドからなる基材層;
アルミニウム層;
ポリエチレン系樹脂からなる外スキン層;
ゼオライト及びポリエチレン系樹脂からなるバインダー樹脂を含む中間層;
ポリエチレン系樹脂からなる内スキン層;並びに
ポリ塩化ビニル樹脂を含む成形補助層、
前記蓋材は、前記成形補助層側のポリ塩化ビニル樹脂層、及び前記アルミニウム層とは別のアルミニウム層を含み、
ISO8295に準拠して測定した場合に、前記成形補助層の前記吸湿層とは反対の面と超高分子量ポリエチレンとの静摩擦係数が0.24以下であり、かつ
JIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、前記成形補助層を50%延伸させるために必要な荷重が、MD方向及びTD方向の両方で70.0MPa以下である、
ブリスターパック。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、深さのあるポケットを有する吸湿層付きブリスターパックを、成形不良の発生を最小限にして生産することができる。このようなブリスターパックを用いることによって、比較的大きな医薬品製剤を長期間安定(変質を抑制)した状態で保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】吸湿層付きのブリスターパックの概略図である。
【
図2】本発明のブリスターパックの層構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ブリスターパック用積層体>
本発明のブリスターパック用積層体は、基材層、アルミニウム層、吸湿層、及び成形補助層をこの順で含む。アルミニウム層と吸湿層との間に補強層を有してもよい。また、基材層、アルミニウム層、補強層、及び吸湿層のいずれか二層の間、並びに吸湿層と成形補助層の間に、接着層を有してもよい。例えば、
図1に示すように、本発明のブリスターパック用積層体10は、基材層2、アルミニウム層3、吸湿層4、及び成形補助層5を有する。
【0013】
基材層、アルミニウム層、補強層、吸湿層、及び成形補助層の少なくとも二層を貼り合せる方法としては、ドライラミネーション法、サンドラミネート法、及び押出しラミネート法等が挙げられる。ドライラミネーション法は、接着剤を塗布し乾燥させた後、加圧し、接着剤を硬化させて貼り合せる方法である。また押出しラミネート法は、押出機で溶融させた接着用樹脂を押出し貼り合せる方法である。またサンドラミネーション法は、基材と、貼り合せる側のフィルムとの間に、溶融した接着用樹脂を押出し貼り合せる方法である。
【0014】
ブリスターパック用積層体には、医薬品製剤等を入れるためのポケット部が形成される。ポケット部を成形する際の成形方法としては、平板式空圧成形法、プラグアシスト圧空成形法、ドラム式真空成型法、プラグ成形法等が挙げられる。この中でも、粘度平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレン樹脂の先端部が丸い円柱状の棒(プラグ材)を用いたプラグ成形法が、ポケットを形成するためには好ましい。しかし、この方法において深いポケットを形成しようとすると、ドーム状のポケット部の肩の部分又はすその部分に亀裂が発生したり、ドームの天井部分に凹みが生じたり、しわが生じたりするといった成形不良が発生することがある。
【0015】
本発明者らは、プラグ材とプラグ材が接触する積層体の表面層の摩擦が大きい場合には、ポケット部を成形する際に、ブリスターパック用積層体に高い確率で亀裂が発生することを見出した。すなわち、プラグ材と表面層との摩擦が大きい場合、プラグ材と表面層との接触部分のみが大きく引き伸ばされ、その箇所で積層体に大きな引っ張り応力が発生し、亀裂が発生すると考えられる。
【0016】
そこで本発明者らは、ブリスターパック用積層体のプラグ材と接触する側の表面層として、プラグ材との摩擦を小さくする成形補助層を新たに設けることによって、プラグ材を積層体に押し込めた際に、押し込み面全体にできるだけ均一にひずみを与えるようにした。また、本発明者らは、この成形補助層が適度な弾性を有している場合には、上記の成形不良がさらに発生しにくくなることを見出し、上記の本発明に至った。
【0017】
(成形補助層)
(成形補助層−静摩擦係数)
成形補助層は、少なくともその吸湿層と接する表面とは反対の面で、ISO8295に準拠して測定した場合に、超高分子量ポリエチレンとの静摩擦係数(μS)が0.36未満となる。ここで、超高分子量ポリエチレンとは、JIS K7367−3:1999に基づいて測定した粘度平均分子量が100万以上のポリエチレンであり、特に粘度平均分子量550万の超高分子量ポリエチレン樹脂(製品名:ニューライト(商標)NL−W、作新工業株式会社製)である。これは、ブリスターパックのポケット部分を成形する際に用いるプラグ材に通常用いられる超高分子量ポリエチレンと同じとするためである。静摩擦係数が小さい場合には、ポケット部成形時にプラグ材と成形補助層との滑りが良くなり、プラグ材と成形補助層との接触部分の局所的なひずみが発生しにくくなる。上記の静摩擦係数は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.27以下であり、さらに好ましくは0.24以下であり、最も好ましくは0.23以下である。
【0018】
(成形補助層−50%延伸させるために必要な力)
成形補助層は、JIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、50%延伸させるために必要な力が、MD(Machine Direction)方向及びTD(Traverse Direction)方向の両方で160.7MPa未満のフィルム又はシートである。MD方向とは、フィルムを製造する際のフィルムの機械搬送方向のことであり、TD方向とは、MD方向に垂直な方向である。この力は、好ましくは120.0MPa以下であり、100.0MPa以下であり、より好ましくは70.0MPa以下であり、さらに好ましくは65.0MPa以下である。また、好ましくはこの力は、9.2MPa超、10.0MPa以上、又は14.0MPa以上である。この場合、「50%延伸させるために必要な力」とは、50%延伸させるために必要な荷重を、フィルムに荷重を加えた幅とフィルムの厚みとで除した値である。理論に拘束されないが、50%延伸させるために必要な力がこのような範囲であれば、ポケット部成形時に積層体に加わる応力が適切な範囲となり、成形不良が発生しなくなったものと考えられる。
【0019】
なお、成形補助層を有するブリスターパック用積層体に5.75mmの深さのポケット部を成形すると、成形補助層が引き伸ばされて、層の厚みが約2/3となる場所が発生する。一方で、成形補助層のみでJIS K7127に準拠して引張り試験を行った場合に、50%延伸させると、その厚みが約2/3となる。したがって、5.75mmの深さのポケット部を成形する際には、成形補助層は、50%延伸時と同程度に延伸されていると評価することができ、すなわち、上記の50%延伸させるために必要な力は、5.75mmの深さのポケット部を成形する際に掛かる力であると評価することができる。
【0020】
(成形補助層−引張弾性率)
成形補助層は、ISO527−1に準拠して測定した場合の引張弾性率が、MD方向及びTD方向の両方で168MPa超1778MPa未満であることが好ましい。このような弾性率の成形補助層は、積層体に適切な弾性を与えて、積層体の成形性を向上させることができる。
【0021】
(成形補助層−動摩擦係数)
成形補助層は、その少なくともその吸湿層と接する表面とは反対の面で、ISO8295に準拠して測定した場合に、超高分子量ポリエチレンとの動摩擦係数(μD)が0.36未満となる。ここで、超高分子量ポリエチレンとは、分子量が100万以上のポリエチレンである。これは、ブリスターパックのポケット部分を成形する際に用いるプラグ材に通常用いられる超高分子量ポリエチレンと同じとするためである。動摩擦係数が小さい場合には、ポケット部成形中にプラグ材と成形補助層との滑りが良くなり、プラグ材と成形補助層との接触部分の局所的なひずみが発生しにくくなる。上記の動摩擦係数は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.26以下であり、さらに好ましくは0.22以下、最も好ましくは0.21以下である。
【0022】
(成形補助層−その他)
成形補助層は、上記の物性を有するフィルム又はシートであれば、特に材料の種類に限定されないが、このような物性を満たすフィルム又はシートとしては、例えば無延伸ポリプロピレンフィルム及びポリ塩化ビニルシートが挙げられる。
【0023】
成形補助層の厚みは、適度な成形性及び弾性を得る観点から、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であることが好ましく、200μm以下、100μm以下、又は70μm以下であることが好ましい。
【0024】
(基材層)
基材層に用いられる樹脂としては、ブリスターパック用積層体に適度な成形性を与える樹脂であれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、飽和又は不飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、及びポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6)、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、外部からの水分の浸入を防ぎ、防湿性に優れているものがよく、特にポリプロピレン系樹脂、ポリアミド及びポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0025】
なお、本明細書においてポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0026】
本明細書においてポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
基材層の厚みは、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上が好ましく、また300μm以下、200μm以下、又は100μm以下が好ましい。
【0028】
(吸湿層)
吸湿層は、吸湿性の機能を有する層であり、この層によって医薬品製剤の長期安定性を向上させることができる。吸湿層は、好ましくは外スキン層、吸湿剤及びバインダー樹脂を含む中間層、並びに内スキン層をこの順で含む。この場合、中間層に含まれる吸湿剤が使用中に脱離することを防止し、また吸湿層を製造しやすくなることから上下のスキン層でサンドイッチして用いられる。ここで、外スキン層は、ブリスターパックの医薬品製剤を入れる側とは反対側(外側)に用いられる層であり、内スキン層は、医薬品製剤を入れる側(内側)に用いられる層である。
図1で示されるように、吸湿層4は、本発明のブリスターパック用積層体10において、基材層2、アルミニウム層3、及び成形補助層5と積層して用いることができる。また例えば、
図2で示されるように、吸湿層4は、外スキン層41、中間層42、及び内スキン層43を有する。
【0029】
外スキン層、中間層、及び内スキン層を含む吸湿層は、インフレーション法によって製造することができる。これは複数の押出機によって同時に複数の樹脂をチューブ状に押出して、この中に空気を送って膨らませて、多層フィルムを製造する方法である。また、吸湿層の中間層をインフレーション法、Tダイ法、共押出等の押出成形又は射出成形することによりフィルム状又はシート状に形成し、外スキン層及び内スキン層を、公知の方法でフィルム化した後に、中間層を挟んでラミネートすることによって、吸湿層を製造することもできる。
【0030】
内スキン層及び外スキン層を構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、内スキン層及び外スキン層は、中間層と同じ樹脂、特にLDPE、LLDPE、HDPE、ランダムPP、ブロックPP、及び/又はPVCを含み、それにより中間層との接着性を高める。
【0031】
内スキン層及び外スキン層の厚みは、適度な成形性及び弾性を得る観点から、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であることが好ましく、100μm以下、70μm以下、50μm以下、又は40μm以下であることが好ましい。
【0032】
中間層は、バインダー樹脂に吸湿剤が分散されている。中間層は、ブリスターパック内の水分を吸湿する層として機能する。
【0033】
中間層の吸湿剤としては、ゼオライトを用いることができる。ゼオライトは、低湿度領域でも高い吸湿性を得ることができ、ブリスターパック内部にわずかに含まれる湿分をも吸湿することができる。
【0034】
ゼオライトとしては、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライト等を使用することができる。ゼオライトは、分子の大きさの違いによって物質を分離するのに用いられる多孔質の粒状物質であり、均一な細孔をもつ構造であって、細孔の空洞に入る小さな分子を吸収して一種の篩の作用を有するため、水(蒸気、水蒸気)を吸収することができる。合成ゼオライトの一例としてはモレキュラーシーブがあり、この中でも特に細孔(吸収口)径が0.3nm〜1nmのモレキュラーシーブを使用することができる。通常、細孔径が0.3nm、0.4nm、0.5nm、1nmのモレキュラーシーブを、それぞれモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13Xと称する。細孔径は、X線回折法による構造解析で確認することができる。モレキュラーシーブの平均粒子径(レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径)は、例えば10μm前後のものが用いられる。本発明では、内容物の性質等に合わせて、これらのゼオライトを適宜使い分けることができる。
【0035】
吸湿剤は、吸湿能力の観点から、中間層の重量に対して、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上の範囲で中間層に含まれることができ、またバインダー樹脂への分散性及び成形性の観点から90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下の範囲で中間層に含まれることができる。
【0036】
中間層に用いることができるバインダー樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、アイオノマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
中間層の厚みは、吸湿能力、成形性、及び弾性の観点から、20μm以上、30μm以上、又は40μm以上であることが好ましく、500μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下であることが好ましい。
【0038】
(アルミニウム層)
アルミニウム層は、バリア性を付与するために用いられる。これは、純アルミニウム系のアルミニウム箔であってもよく、アルミニウム合金系のアルミニウム箔であってもよい。ブリスターパック用積層体に適切な成形性及び弾性を与えるために、アルミニウム層の厚みは、好ましくは7μm以上、10μm以上、又は20μm以上であり、また60μm以下、50μm以下、又は40μm以下である。
【0039】
(補強層)
補強層は、ブリスターパック用積層体の成形性を向上させるために用いられる。これは、ポリ塩化ビニル、飽和又は不飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド及びこれらの混合物から構成されていてもよい。補強層の厚みは、好ましくは10μm以上、15μm以上、又は25μm以上であり、また60μm以下、又は50μm以下である。本発明において補強層は、上記の特許文献3に記載のような補強層を用いることができる。
【0040】
(接着層)
本発明のブリスターパック用積層体は、基材層、アルミニウム層、補強層、及び吸湿層のいずれか二層の間に、接着層を有してもよい。この接着層に用いてもよい接着剤としては、ウレタン系接着剤、オレフィン系樹脂接着剤、ブチルゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0041】
<ブリスターパック、及びブリスターパック包装体>
本発明のブリスターパックは、上記のブリスターパック用積層体、及び蓋材を有する。蓋材は、積層体と少なくとも部分的に接着し、特に成形補助層と接着する。ブリスターパック用積層体に、医薬品製剤を収納するためのポケット部の成形をした後に医薬品製剤をポケット部に収容し、蓋材を接着させて、ブリスターパックのポケット部に医薬品製剤を収納したブリスターパック包装体を作製することができる。
【0042】
(蓋材)
蓋材は、樹脂層を含み、さらに上記のブリスターパック用積層体に含まれるアルミニウム層とは別のアルミニウム層を含む。ここで、「別のアルミニウム層」とは、同一の材質及び厚みであってもよく、すなわち同一のアルミニウム層が、ブリスターパック用積層体と蓋材とにそれぞれ存在していてもよいことを意味している。その樹脂層の樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアセテート共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、蓋材は、アルミニウム層に樹脂層がコーティングされた形態である。好ましくは、蓋材の樹脂層と、ブリスターパック用積層体の接着する層(成形補助層)とは、接着性を高める観点から、同じ樹脂を含む。
【0043】
図1は、吸湿層付きのブリスターパック包装体1の概略図である。ここでは、順に基材層2、アルミニウム層3、吸湿層4、及び成形補助層5が積層してなるブリスターパック用積層体10に、蓋材6が接着されており、積層体10に形成されたドーム状のポケット部に、医薬品製剤100が内包されている。図示していないが、ドライラミネーション法によって積層させた場合、基材層とアルミニウム層との間、アルミニウム層と吸湿層との間、吸湿層と成形補助層の間には、接着剤層が存在する。
【0044】
図2は、本発明のブリスターパックの層構造の概略図である。この図においては、ブリスターパックの、ポケット部が形成されていない端部を示しており、順に、基材層2、アルミニウム層3、吸湿層4、及び成形補助層5が積層されてなるブリスターパック用積層体10に、蓋材6が接着されている。吸湿層4は、外スキン層41、中間層42、及び内スキン層43から構成され、また蓋材6は、樹脂層61及びアルミニウム層62から構成される。積層体10には、医薬品製剤を収容するためのポケット部が形成される。
【実施例】
【0045】
<サンプル作成>
実施例1〜6及び比較例1〜8のブリスターパック用積層体を、以下の表1の構成で、成形補助層のみを変更して作製した。また、比較例9の積層体として、成形補助層がない以外は、表1の構成の積層体を作製した。さらに、比較例10の積層体として、成形補助層はないが、吸湿層とアルミニウム層の間に補強層がある構成の積層体を作製した。比較例10の積層体は、60μmの厚さのポリ塩化ビニル樹脂シート(ビニホイルC−455、三菱樹脂株式会社)を補強層として有している以外は、比較例9と同じである。実施例6では、実施例4の積層体に、補強層として12μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムを追加している。
【0046】
【表1】
【0047】
吸湿層については、内外スキン層としてLLDPEを用いた。中間層としては、LDPEと吸湿剤であるゼオライトを混錬押出機に入れ、樹脂を加熱溶融しながら混練した後、これをペレット状に押し出して冷却することによって、混合ペレットを材料に得た。そして、インフレーション成形法による共押出成形で吸湿層となるフィルムを成膜した。インフレーション成形は、樹脂温度170℃、引取速度13m/minで、三層インフレーション成形機(3SOIB、株式会社プラコー)により行った。
【0048】
基材層、アルミニウム層、吸湿層、及び成形補助層は、貼り合わせる面にワイヤーバーを用いて接着剤を塗布し、溶剤を乾燥させた後に圧着ローラーで圧をかけながらラミネートした。その際には、接着剤として、主剤(A1143)、硬化剤(A12)、及び酢酸エチルを、それぞれ9:1:10の重量比で含むウレタン系接着剤(タケラック(商標)及びタケネート(商標)、三井化学株式会社)を用いた。接着層の厚みは3μmとした。
【0049】
<評価1:すべり性試験>
各例の成形補助層のすべり性(動摩擦係数及び静摩擦係数)を、ISO8295に準拠して測定した。摩擦測定機(TR−2、株式会社東洋精機製作所)を用いて測定した。測定速度は100mm/min、滑り片は200g(40cm
2)を用い、対サンプルは成形プラグと同じ材質の超高分子量ポリエチレンフィルム(粘度平均分子量550万、製品名:ニューライトフィルムNL−W 作新工業株式会社)を使用した。各例の成形補助層の動摩擦係数及び静摩擦係数の結果を表2に示す。
【0050】
<評価2:引張り試験>
各例の成形補助層のフィルム又はシートに対し、JIS K7127に準拠して引張り試験を行い、50%延伸させるために必要な力を評価した。また、ISO527−1に準拠して引張り弾性率を評価した。それらの結果を表2に示す。
【0051】
<評価3:成形試験>
実施例1〜6及び比較例1〜10のブリスターパック用積層体に、室温で深さ4.75〜5.75mmの医薬品製剤のポケット部を成形した。成形機は、日本オートマチックマシン株式会社のハイスピード油圧プレス(HYP505H)を用いた。プラグ材質は、粘度平均分子量550万の超高分子量ポリエチレン樹脂(製品名:ニューライト(商標)NL−W、作新工業株式会社)であり、プラグ径は13mm、成形速度は200mm/sとした。ここでは、成形される部位の周囲が圧を掛けながら固定された後、プラグ(凸部分)が設定された長さだけ押し出されることで、フィルムにドーム型の形が成形される。
【0052】
ここでは、成形したポケット部に割れやキズ、凹み等の外観不良が目視で発生していなかった場合を○とし、ドームの天井部分に凹み等の外観不良が発生した場合を△とし、また裂け、ピンホール等の欠陥が発生した場合を×とした。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜6から分かるように、成形補助層の静摩擦係数が低く、かつ50%延伸時の力が小さい場合には、ポケット部を深く成形することができる。比較例1〜7を参照すると、摩擦が比較的小さくても、50%延伸時の力が大きいものでは、成形不良が発生しやすいことがわかる。成形不良は、局所的に積層体が薄くなったことによりドーム天井部分に凹みが発生しているもので、割れやピンホールが発生する手前の状態と考えることができる。また比較例8から、50%延伸時の力が小さくても摩擦が大きい場合には、5.00mmの深さでも成形不良が発生することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のブリスターパック用積層体には、深いポケットを成形することができ、それを用いたブリスターパックは、比較的大きな医薬品製剤を、長期間安定(変質を抑制)した状態で保管することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 吸湿層付きのブリスターパック包装体
10 ブリスターパック用積層体
2 基材層
3 アルミニウム層
4 吸湿層
41 外スキン層
42 中間層
43 内スキン層
5 成形補助層
6 蓋材
61 樹脂層
62 アルミニウム層
100 医薬品製剤