特許第6671284号(P6671284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許66712842−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含む酸組成物の精製方法
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  • 特許6671284-2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含む酸組成物の精製方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671284
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含む酸組成物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/56 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   C07D307/56
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-538881(P2016-538881)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公表番号】特表2016-529290(P2016-529290A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】NL2014050589
(87)【国際公開番号】WO2015030590
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】2011362
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】515337626
【氏名又は名称】フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャグディープ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・マカーイ
(72)【発明者】
【氏名】ビン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】マテウス・アドリアヌス・ダム
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドゥス・ヨハネス・マリア・グルター
(72)【発明者】
【氏名】アナ・ソフィア・ヴァゲイロ・デ・ソウサ・ディアス
【審査官】 薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/161968(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161970(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161971(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161972(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161973(WO,A1)
【文献】 特開平03−157348(JP,A)
【文献】 特開2001−019659(JP,A)
【文献】 特開平10−087556(JP,A)
【文献】 特表平10−506626(JP,A)
【文献】 特開2007−230975(JP,A)
【文献】 The Journal of Organic Chemistry,1962年,Vol.27,p.2946-2947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/00
C07C 51/487
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含む酸組成物を精製する方法であって、
前記酸組成物を、アルコールと接触させてエステル化組成物を得る工程;
前記エステル化組成物から2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルを分離して、精製されたエステル化組成物を得る工程;および
前記精製されたエステル化組成物を鹸化または加水分解のために水と接触させて、2,5−フランジカルボン酸および低減された量の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を含む生成組成物を得る工程
を含み、
前記酸組成物を、エステル化触媒の存在下でアルコールと接触させ、前記エステル化触媒は酸触媒である;または
前記酸組成物を、エステル化触媒の非存在下でアルコールと接触させる、方法。
【請求項2】
前記酸組成物が、5−アルコキシメチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、またはこれらの混合物の酸化によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸組成物が、前記酸組成物の質量に基づいて0.1〜4.0質量%の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸組成物を、モノ−アルコールと接触させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モノ−アルコールが、1〜8個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モノ−アルコールが、エタノールまたはメタノールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールが前記酸組成物に対しモル過剰で存在し、アルコールと前記酸組成物との間のモル比が、5:1〜100:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸触媒が、無機鉱酸、ゼオライト、イオン交換樹脂、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸組成物を、60℃〜250℃の温度、および1〜100バールの圧力で、アルコールと接触させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸組成物を、70℃〜200℃の温度、および1〜70バールの圧力で、アルコールと接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エステル化組成物を、結晶化および/または蒸留にかける、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エステル化組成物を、−30℃〜40℃の温度に冷却することによって結晶化させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エステル化組成物を、−10℃〜30℃の温度に冷却することによって結晶化させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記精製されたエステル化組成物を、加水分解触媒の存在下で水と接触させる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記精製されたエステル化組成物を、加水分解触媒の非存在下で水と接触させる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記精製されたエステル化組成物を、120℃〜180℃の温度および5〜30バールの圧力で水と接触させる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
連続法として実施される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸(FFCA)および2,5−フランジカルボン酸(FDCA)を含む酸組成物を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2012/0302765号には、粗および/または精製カルボン酸生成物を製造するための酸化方法が記載されている。生成物は、2,5−フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物である。これは、5−ヒドロキシメチルフルフラールを含有する原料(feedstock)を、酸素、2〜6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒、および触媒系の存在下で酸化する工程を含む方法で得られている。前記原料は、5−ヒドロキシメチルフルフラールのエーテル類、例えば5−エトキシメチルフルフラール等をも含んでいてよい。酸化反応によって、2,5−フランジカルボン酸、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸、および任意選択でいくつかの他のフラン誘導体(例えば、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のアルキルエーテル等)の混合物の形成がもたらされることが記載されている。2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の量は、0.1質量%〜約4質量%の範囲であってよい。酸化工程の後、得られた粗生成物は、有機酸溶媒(例えば、酢酸)および水で洗浄される。精製された2,5−フランジカルボン酸を得ることができることが記載されているが、この精製された生成物は、いくらかの量の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を依然として含有していることが分かった。米国特許出願公開第2012/0302765号は、2,5−フランジカルボン酸生成物中の有意な濃度の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸などの一官能性分子が、これらがポリエステル縮合反応の際の鎖停止剤として作用し得るため、重合プロセスに特に有害であることを認めている。
【0003】
本発明者らは、さらなる洗浄工程は、何らのより純度の高い生成物をももたらさないことを見出した。2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸は、2,5−フランジカルボン酸の結晶に包摂されており、これによって洗浄による精製が実用的でないものとなっていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0302765号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0302768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、2,5−フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物中の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の量を低減することを可能とする方法が必要とされている。このような組成物中の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の量が、組成物のエステル化、および得られたエステル化組成物のその後の分離によって、かなり低減できることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含む酸組成物を精製する方法であって、
前記酸組成物を、アルコールと接触させてエステル化組成物を得る工程;
前記エステル化組成物から2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルを分離して、精製されたエステル化生成物を得る工程;および
前記精製されたエステル化組成物を鹸化または加水分解のために水と接触させて、2,5−フランジカルボン酸および低減された量の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を含む生成組成物を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0007】
本発明の方法は、エステル化組成物が、エステル化生成物からの2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステル化合物の分離を、酸組成物からの相当する酸の分離と比較して、より容易に可能にするという驚くべき事実を用いる。2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルの分子は、2,5−フランジカルボン酸のジエステルの結晶に、組み入れられないかまたはより少ない程度で組み入れられると考えられる。本方法の生成物は、酸組成物における2,5−フランジカルボン酸化合物の含量と比較して、高められた含量の2,5−フランジカルボン酸化合物を含む組成物である。「2,5−フランジカルボン酸化合物」は、2,5−フランジカルボン酸のみならず2,5−フランジカルボン酸化合物のモノ−およびジエステルをも含むと理解される。
【0008】
出発物質、すなわち酸組成物の再結晶を用いてより純度の高い生成物を得ることができるにも関わらず、2,5−フランジカルボン酸の結晶中の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の組み入れ(inclusion:包摂)については、相当な収率の損失を伴う場合にのみより純度の高い生成物を得ることができるという難点があった。エステル化後の混合物は、その混合物中に、2,5−フランジカルボン酸のモノ−およびジエステルだけではなく、少量の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸が存在することとなるという点でより複雑となる傾向があるため、エステル化によってより単純かつより効率的な精製方法が可能になることは驚くべきことであった。この混合物の複雑性にも関わらず、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルの分離が単純化され、その結果、例えば酸組成物の再結晶と比較して、高い純度の生成物が高められた収率で得られた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の方法の一実施態様の単純化されたフロースキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法のための原料として用いる酸組成物は、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載されたものと同様の方法で製造することができる。すなわち、酸組成物は、5−ヒドロキシメチルフルフラールの酸化によって得ることができる。また、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載されているように、出発物質は、5−ヒドロキシメチルフルフラールのエーテルまたはエステル、例えば、5−アルコキシメチルフルフラールなどであってもよい。好ましくは、酸組成物は、5−アルコキシメチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、またはこれらの混合物の酸化によって得られたものである。酸組成物が、5−アルコキシメチルフルフラール含有原料の酸化に由来するものである場合、酸化生成物はFDCAおよびFFCAのみならず、FDCAのモノ−およびジエステルならびにFFCAのアルキルエステルをも含み得る。本発明の方法は、この複雑な混合物を純粋なFDCAに精製する優れた手順を提供する。
【0011】
5−ヒドロキシメチルフルフラールまたはその誘導体の酸化は、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載のとおりに行うことができる。5−アルコキシメチルフルフラールを酸化するための適切な方法は、国際公開第2011/043660号にも記載されている。後者の出願による条件には、60〜220℃、好ましくは100〜210℃、より好ましくは150〜200℃、最も好ましくは160〜190℃の反応温度、および5〜100バール、好ましくは10〜80バールの圧力が含まれる。この酸化反応に用いることができる触媒は、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載されているものと同様である。これらの触媒は、適切には、コバルトおよびマンガンを含む。加えて、これらの触媒は、臭素源を含有する。コバルトのマンガンに対するモル比(Co/Mn)は、典型的には、1/1000〜100/1、好ましくは1/100〜10/1、より好ましくは1/10〜4/1である。臭素の金属に対するモル比(例えば、Br/(Co+Mn))は、典型的には、0.001〜5.00.好ましくは0.01〜2.00、より好ましくは0.1〜0.9である。酸素は、適切には空気によって供給されるが、酸素が富化された空気または酸素が枯渇した空気を用いることもできる。国際公開第2011/0043660号による酸化の主生成物が、フラン−2.5−ジカルボン酸のモノエステルよりもむしろ、フラン−2.5−ジカルボン酸を主生成物として生じることは驚くべきことである。
【0012】
米国特許出願公開第2012/0302768号に示されているように、このような酸化反応によって得られる酸組成物は、相当の濃度に及ぶ2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を含有し得る。酸化反応の出発物質がエーテルを含む場合、その生成物もまた、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルを含み得る。しかし、主たる副生物は、エーテルの酸化の場合でも、酸化合物である。酸組成物中の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の量は、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載のものと同じ桁数であり得る。典型的には、酸組成物は、酸組成物の質量に基づいて、0.1〜4.0質量%の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸を含む。この組成物は、米国特許出願公開第2012/0302768号に記載されているように洗浄され得る。しかし、そのような洗浄工程によっては、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸の含量の何らの有意な低減も起こらないことが観察された。適切な洗浄液体には、酢酸、水、およびこれらの混合物が含まれる。
【0013】
本発明の方法は、酸組成物をアルコールと接触させる工程を含む。アルコールは、広範なアルコール化合物から選択することができる。そのようなアルコール化合物には、モノアルコールのみならず、ポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトールなども含まれる。好ましくは、アルコールは、1〜16個、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する。アルコールは、適切にはモノアルコールである。そのようなアルコールには、直鎖または分岐の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、および芳香族アルコールが含まれる。アルコールは、適切には、1〜16個、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルカノールである。そのようなアルコールは、エステル化反応に容易に使用することができ、得られるエステルの適切に異なる挙動を提供して、得られるエステルの分離の容易性をもたらすことができる。アルカノールは、直鎖であっても分岐であってもよく、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチルへキシルアルコール、n−オクタノールなどが含まれる。最も好ましいのは、メタノールおよびエタノールである。
【0014】
アルコールは、酸組成物中の酸官能基に対して広範な範囲の比率で存在することができる。エステル化は平衡反応であるため、酸組成物中の酸官能基に対してモル過剰のアルコールを用いることが好ましい。適切には、アルコールは、酸組成物のモル過剰で存在し、アルコールと酸組成物との間のそのモル比は、2:1〜100:1であることが好ましい。2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸が容易にエステル化されること、およびこのエステル化の平衡が大きくエステル側あることが、驚くべきことに見出された。したがって、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸エステルへのエステル化は、事実上定量的に達成され得る。このエステル化反応によって生じる水を除去する必要はない。そのような水の除去が考慮される場合、乾燥モレキュラーシーブの使用、または他の従来技術の乾燥剤(無水塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、およびその混合物など)の使用が実用的である。乾燥剤は、酸組成物およびアルコールの混合物に添加することができ、生じたいかなる水もその乾燥剤に吸収され得る。いくらかの水を含有するアルコールを還流させて液体を乾燥剤に通す、ソックスレー装置または類似の器具を使用することも可能である。水を除去する別の方法は、欧州特許第2481733号に記載されているものと同様の方法、すなわちパージガスを使用する方法で実施することができる。したがって、本発明の方法において、パージガスが存在していてもよい。パージガスは、好ましくは、不活性ガス、すなわち本発明の方法の遊離物、生成物、中間体、および器機と非反応性であるガスである。有用な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、および全ての希ガス、例えば、ネオン、アルゴン、ならびにこれらの混合物である。特に好ましいのは、窒素ガスであるかまたは窒素ガスを含むパージガスである。そして、水は、反応チャンバから出た後のパージガスから、例えば凝縮または吸着によって除去することができる。パージガスは、好ましくはリサイクルされる。先に述べたように、水の除去は必須ではない。酸組成物とアルコールとの混合物に希釈剤を添加することさえ可能である。そのような希釈剤には水が含まれ得る。他の希釈剤には、有機溶媒、例えば、スルホキシド類、例えばジメチルスルホキシド等、およびケトン類、例えばアセトンが含まれ得る。
【0015】
エステル化速度を加速するために、酸組成物とアルコールとの接触を、適切には、エステル化触媒の存在下で行うことができる。適切なエステル化触媒は、酸触媒である。多くの酸触媒が、本発明のエステル化反応を触媒するために適している。適切な触媒には、無機鉱酸、有機ブレンステッド酸、ルイス酸、酸イオン交換樹脂、および酸ゼオライトが含まれる。触媒は均一であってよく、しかし不均一であってもよく、欧州特許第2481733号に記載されている触媒を含む。無機鉱酸の例には、塩酸、硫酸、リン酸、および硝酸が含まれる。適切な有機ブレンステッド酸には、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、およびトリクロロ酢酸が含まれる。適切なルイス酸には、三フッ化ホウ素および三塩化アルミニウムが含まれる。好ましくは、酸触媒は、無機鉱酸、ゼオライト、イオン交換樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ミネラル無機酸の例は、上述したものである。イオン交換樹脂の例は、スルホン酸基を有するジビニルベンゼン/スチレンポリマー樹脂である。適切なゼオライトは、結晶アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートである。適切なゼオライトには、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトベータ、フェリエライト、モルデナイト、チャバザイト、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-23、SAPO-5、SAPO-11、およびSAPO-34が含まれる。好ましくは、ゼオライトは、それらのH-型である。このH-型は、ゼオライトがイオン交換を受けてアルカリ金属イオンなどの金属カチオンが水素で置換され、それによってその酸性度が高まっていることを示す。適切なイオン交換樹脂には、スルホン化ポリマー樹脂、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー(例えば、Amberlyst樹脂(Rohm and Haas社製)等)、およびスルホン化テトラフルオロエチレンをベースとするフルオロポリマー−コポリマー(例えば、ナフィオン樹脂(例えば、デュポン社)等)が含まれる。特に適したイオン交換樹脂は、ハロゲン化されることが報告されており、高い熱安定性を示すことが記載されている、スルホン酸基を有するスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである、Amberlyst 70である。
【0016】
不均一触媒は、連続法に適切に用いることができる。そのような方法では、触媒が、例えば反応混合物中の不純物によって、あるいは熱分解によって、不活性化され得る。とりわけイオン交換樹脂は、硫酸のアルコール(特にメタノールまたはエタノール)溶液を不活性化された触媒にフラッシュさせ、それによってイオン交換樹脂の酸部位を回復させることによって、容易に再生可能であることが見出された。
【0017】
エステル化反応は、回分式または連続式反応器で行うことができる。回分式反応器内で、反応混合物を、実質的に平衡に達するまで維持することができる。好ましくは、エステル化は、連続反応器内で行う。適切な反応器には、連続撹拌タンク反応器及びプラグフロー反応器が含まれる。有利には、エステル化反応は、反応性ストリッピングカラム内で実施する。そのようなカラム内では、酸組成物を含有する液体、例えば、C〜Cアルコール(例えばメタノールおよびエタノール等)中の酸組成物の溶液等を、不均一触媒の床の上に通し、向流的に、ガスを触媒上に通す。ガスには、不活性ガス、例えば、窒素、希ガス、または二酸化炭素が含まれ得る。この場合、アルコールは、液相中の酸組成物と共に触媒上に通すことができる。しかし、アルコールが支配的な条件で蒸気質である場合、アルコール蒸気を用いることが好ましい。酸含有液体を、通常、触媒床上を下方に通過させ、ガスを、通常、上方に通過させる。ガスは、エステル形成の程度に影響する、エステル化反応中に形成された水の少なくとも一部を同伴する。この反応性ストリッピングの使用は、水の除去により形成されるモノエステルの量が低下する一方、ジエステルの形成が増進されるため、本発明の方法ではとりわけ有利である。したがって、本発明の方法で得られるエステル化組成物は、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルと、主生成物としての2,5−フランジカルボン酸のジエステルとを含む。これらの2つの化合物間の分離は比較的容易である。
【0018】
酸組成物とアルコールとの混合物がすでに酸化合物、すなわち2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸を含有しているため、混合物は既に酸性である。したがって、追加の酸性のエステル化触媒を混合物に添加することは必要とされない。満足なエステル化度、とりわけ2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステル化度が、本発明のエステル化がエステル化触媒の非存在下で実施され、エステル化が自動的に触媒される場合に得られることが分かった。「エステル化触媒」は、酸組成物中の酸以外の任意の触媒を意味する。エステル化を自動触媒によって行うことが、この方法では他の酸成分が反応混合物に全く導入されないため、有利である。これにより、何らかのその後の中和および/または精製工程が不必要となる。
【0019】
エステル化反応は、温度及び圧力に関して広範囲の条件で実施することができる。温度は、酸組成物に接触させるアルコールの還流温度という低い温度であってよい。これは、適切な最低限の温度は65℃程度であることを意味する。圧力は、大気圧であってよい。反応速度を高めるために、温度および圧力を適切に高めることができる。適切には、酸組成物を、アルコールに、100℃〜250℃、好ましくは120℃〜180℃の温度で接触させる。圧力は、適切には、アルコールが支配的な温度で液相中に存在するように選択する。典型的には、このことは、圧力の最小値は、適切には少なくともアルコールの蒸気圧であることを意味する。圧力の最大値は、実際的な事情によって決定される。典型的には、このことは、圧力が1〜100バール、好ましくは1〜50バールで変動可能であることを意味する。
【0020】
一方の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステル化合物と、他方の2,5−フランジカルボン酸のエステル化合物との異なる特性に起因して、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸エステルをエステル化生成物から分離することが可能である。適切な分離技術には、溶解、蒸留および結晶化が含まれる。溶解度の差のおかげで、エステル化生成物を、2,5−フランジカルボン酸のモノ−および/またはジエステルよりも2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸エステルに対してより高い溶解性を提供する洗浄液(washing liquid)で、洗浄することができる。適切な洗浄液は、アルコール、例えばメタノール等であり得る。酸、例えば酢酸等を使用することも実用的である。アルコールおよび/または酸は、水とさらに混合されていてよい。このような洗浄処理は、エステル化生成物が固体生成物として得られ、洗浄工程に供することができる場合にとりわけ適切である。適切には、エステル化組成物は、結晶化および/または蒸留に供される。
【0021】
非常に適切な分離技術は、結晶化である。結晶化は、エステル化が、高められた温度で、溶液中で行われる場合に非常に便利である。酸組成物とアルコールとの間の接触が行われた反応混合物を冷却することによって、エステル化された組成物は結晶化する傾向がある。溶解度の違いに起因して、結晶化した生成物は、低減された含量の2−ホルミル−フラン−5−カルボキシレート基含有化合物を含有する。この結晶化された固体物質は、2,5−フランジカルボン酸、ならびにそのモノ−および/またはジエステルで主に構成されている。これが、本発明の方法で得られた精製されたエステル化生成物を分離するための非常に便利な方法となるため、この方法は、エステル化組成物を−10℃〜30℃の温度に冷却することによって結晶化させるように行うことが好ましい。
【0022】
別の適切な結晶化技術は、溶融結晶化である。同等の融点を有する2種以上の物質を、なんらかの冷却の程度によって分離しなければならない場合には、溶融結晶化が適していると考えられる。このような分離の完全性の程度は、相平衡関係に依存する。結晶をそれに吸蔵された物質の除去によって精製しなければならない場合に、回収する物質を、溶融した形態でプロセスから取り出すことができる。その物質は、その後、フレークまたは噴霧顆粒として固化することができる。溶融結晶化(時には、抽出結晶化と呼ばれる)は、不純な溶融物質をその凝固点まで冷却し、さらに熱を除去すると、その物質の一部が固化するという原理に基づいている。ほとんどの場合、固化した物質は純粋である。不純物は融液に集中する傾向がある。精製された生成物は、溶融物から固化した物質を分離し、再溶融することによって取り出される。当技術分野で知られているように、溶融結晶化は、静的流下膜式装置および懸濁結晶化装置で実施することができる。
【0023】
好適に適用することができる他の分離技術は、蒸留である。一般的に、アルコールは蒸留によって最初に除去され、その後、エステル化生成物を分別にかける。典型的には、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステル、 2,5−フランジカルボン酸のモノ−および/またはジエステル、および存在する場合には残留2,5−フランジカルボン酸を、一つ以上の分留カラムで分画する。蒸留は、一般的に、現実的な低い温度を可能にするために、減圧下で行う。当業者であれば、還流比、リボイラーなどの使用を含む、適切な蒸留条件を選択することができるであろう。温度が200℃未満、好ましくは180℃未満であれば化合物が熱的な影響を受けないことが分かった。したがって、適切な蒸留条件には、150〜200℃、好ましくは150〜180℃の範囲の底部カラム温度、および、120〜150℃の範囲の上部カラム温度、ならびに1〜30ミリバールの範囲のカラム圧が含まれる。
【0024】
本発明の方法で得られた精製されたエステル化生成物は、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸エステルの低減された含有量を有する。 2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸エステルの量は、そのエステルを、エステル化生成物から分離する条件の厳格度に依存し得る。分離は、適切に結晶化および/または蒸留により行うことができる。当業者であれば、例えば、分離工程を繰り返すこと、例えば、精製されたエステル化生成物を1回以上再結晶することによって、得られる生成物の純度をさらに高めることができることを理解するであろう。典型的には、精製されたエステル化生成物は、0〜200質量ppm(ppmw)の範囲の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルの含量を有する。繰り返し蒸留および/または再結晶することによって、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステルの量を、0〜100質量ppm(ppmw)、適切には0〜50質量ppmwに低減することができる。
【0025】
本発明によれば、精製されたエステル化組成物を、加水分解または鹸化のために水と接触させて、2,5−フランジカルボン酸と、本発明の方法における出発物質として用いた酸組成物と比較して低減された量の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸と、を含む生成組成物を得る。
【0026】
「鹸化」は、エステルの塩基触媒加水分解であり、鹸化によって、アルコールと、酸の塩とが形成されることが理解される。この方法には、通常、水性のアルカリ金属塩基、例えばNaOHまたはKOH等と、エステルとの反応が含まれ、アルカリ金属塩が形成される。アルカリ金属塩基は、通常、塩の形成を可能にするために、少なくとも化学量論量存在する。
【0027】
エステルの加水分解は、当技術分野で知られている。この反応は、問題のエステルを水と接触させる工程を含む。適切には、水は、酸性またはアルカリ性にされている。酸および塩基は、エステルの加水分解を触媒する傾向がある。したがって、精製されたエステル化生成物を、加水分解触媒の存在下で水と接触させることが適切である。触媒は、広範な酸性化合物またはアルカリ性化合物から選択することができる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸を適用することが最も便利である。また、三塩化アルミニウムなどのルイス酸を使用することもできる。適切なアルカリ性触媒には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が含まれるが、弱有機酸の塩を使用することもできる。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、または酪酸の塩は、適切な例である。陽イオンは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンなどの任意の金属イオンであってよい。亜鉛塩などの弱有機酸などのその他の金属塩を使用してもよい。塩が水溶性であると有利である。当業者であれば、加水分解触媒の性質は、決定的に重要ではないことを理解するであろう。
【0028】
加水分解触媒は、加水分解の反応速度を高めることができるが、その触媒の導入によって、結果として得られる酸を汚染する可能性がある余分な化合物が添加されるという欠点を有し得る。したがって、精製されたエステル化組成物の加水分解、すなわち精製されたエステル化組成物と水との接触は、適切には、加水分解触媒の非存在下で行う。精製されたエステル化組成物中のエステルの変換反応は、追加の加水分解触媒なしでスムーズに進行するようであった。追加の加水分解触媒の非存在下で加水分解を行うことによって汚染の危険が回避されるので、このような方法が好ましい。
【0029】
加水分解条件は、当分野でよく知られている。酸または塩基の存在下または非存在下で水中でエステルを加熱することが一般的である。適切な温度範囲は、100〜200℃とすることができる。本発明の場合、100℃を超える温度で加水分解を行うことが有利であり、1バールを超える圧力を適用することが望ましいことが判明している。したがって、精製されたエステル化組成物は、120〜180℃の温度および5〜30バールの圧力で水と接触させることが好ましい。
【0030】
鹸化条件は、加水分解のものと同じであってよい。しかし、温度をいくらかより低く、例えば、60〜200℃にすることができる。圧力も約1〜30バールの範囲であってよい。
【0031】
本発明の方法は、回分式で行うことができる。これにより、当業者は、その後のいずれの工程とも切り離して、各ステップのために最適な条件を適用することができるようになる。そのような条件には、アルコールと酸組成物との接触時間、任意の結晶化装置内での滞留時間、および、精製されたエステル化組成物が加水分解または鹸化にかけられる場合のその組成物と水との接触時間が含まれる。しかし、本発明の方法は、連続法で行うことが好ましい。連続法は、連続撹拌タンク反応器又は任意の他の連続反応器で行うことができる。酸組成物とアルコールとの接触時間は、例えば、プラグフロー反応器で実施することができる。
【0032】
図を参照して、濾過ユニットAには、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸および2,5−フランジカルボン酸、ならびに酢酸等の希釈剤を含む酸組成物を含む供給流1を導入する。濾過ユニットAから、希釈剤を含む母液がライン3を介して引き出され、酸組成物は、濾過ユニットAからライン2を介して引き出される。酸組成物は、洗浄ユニットBに導入され、そこで酸組成物は、ライン4を介して供給される水などの洗浄液で洗浄されて、不純物(例えば残留酢酸)が除かれる。この洗浄工程は、高められた温度、例えば80℃で、特定の期間、例えば0.25〜1.0時間、酸組成物を洗浄液で洗浄することによって達成され得る。その後、残ったスラリーをろ過する。ろ過ケーキ(すなわち酸組成物)を、さらなる処理の前に乾燥することができる(図示せず)。
【0033】
使用された洗浄液は、ライン5を介して排出され、洗浄された酸組成物は、ライン6を介してエステル化ユニットCに移される。酸組成物は、ライン7を介して導入される、アルコール(例えば、メタノール)および任意選択でアルコールに組み入れて組合せることができる均一触媒(例えば、硫酸)と接触させられる。酸組成物のアルコールとの接触時間は、例えば、最高で5バールまでの圧力および約80℃の温度で10時間であり得る。あるいは、接触は、大気圧での還流条件(すなわち1バール、例えば65℃)で最高で24時間実施することができる。結果として得られるエステル化生成物は、ライン8を介して引き出され、結晶化ユニットDに移される。ユニットDでは、ライン8からの組成物が、約20℃の温度に冷却され、それによって2,5−フランジカルボン酸のモノ−および/またはジエステルが沈殿する。次いで、得られた生成物を濾過し、アルコール、2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸のエステル、ならびに、場合によりいくらかの2,5−フランジカルボン酸のモノ−およびジエステルを含有する母液を得られる。これがライン9を介して引き出され、主として2,5−フランジカルボン酸化合物を含む精製されたエステル化組成物が、ライン10を介して取り出される。
【0034】
ライン10を用いて、精製されたエステル化組成物を、加水分解ユニットEに移送することができる。ユニットEでは、精製された生成物が、ライン11を介してユニットEに供給される水溶液(例えば水酸化ナトリウム)中に溶解され、ここで、還流条件下での加水分解が起こる。加水分解が(例えば2時間後に)完了すると、塩酸水溶液のアリコートがライン12を介してユニットEに添加されて、溶液が中和される。この結果、2,5−フランジカルボン酸が沈降する。この沈殿物が、残った母液からろ過され、ライン13を介して再結晶ユニットFに移送される。水が、再結晶ユニットFに、ライン14を介して、ユニットEからの沈殿物が完全に溶解される量で添加される。この添加では、2,5−フランジカルボン酸の水に対する約1〜10の質量比が必要とされる。再結晶ユニットF内の化合物は、還流条件下、すなわち大気圧で約100℃の温度に保持することができる。全ての固体が溶解されると、得られた溶液が約20℃の温度に放冷され、結果として精製された2,5−フランジカルボン酸の沈殿が得られる。この沈殿がろ過され、ライン15を介して取り出される。残りの水相は、ライン16を介して排出される。回収された精製された2,5−フランジカルボン酸生成物を、その後の使用の前に乾燥することができる。
【実施例】
【0035】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。
【0036】
[実施例1]
以下の実験では、コバルト、マンガン、および臭化物を含む触媒の存在下で酢酸中の5−メトキシメチルフルフラールの酸化から得られた酸組成物を用いた。この酸組成物は、沈殿されたものであり、その固体生成物を濾過して、酢酸を除去した。その後、酸組成物を水と混合し、80℃にて30分間撹拌し、50ミリバールの減圧下、周囲温度で濾過および乾燥させた。この酸組成物は、約1質量%の2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸(「FFCA」)、約3質量%の2,5−フランジカルボン酸モノメチルエステル(「FDCA−ME」)、および数ppmのFFCAのメチルエステル(「FFCA−ME」を含み、残りは2,5−フランジカルボン酸(「FDCA」)であった。
【0037】
酸組成物1質量部を、4質量部のメタノールにとり(take up)、硫酸をエステル化触媒として加えた。得られたこの混合物を、圧力、温度、および硫酸の量を異ならせた種々のエステル化条件にかけた。エステル化反応が平衡に達した後、混合物を室温に放冷し、一晩放置した。沈殿物が結晶化した。この沈殿物を濾過し、50℃、100ミリバールで一晩乾燥した。この組成物を、HPLC測定した。生成物は、FFCA、FFCA−ME、2,5−フランジカルボン酸化合物(FDCA−c)(すなわち、酸、モノメチルエステル、およびジメチルエステル)を含有していた。FFCAおよびFFCA−MEの量を測定し、残部であるFFDA−cの量を決定した。
【0038】
この試験結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
この結果は、エステル化および結晶化の結果として、もとの酸生成物と比較して顕著に低減された量のFFCA誘導体類を含有する、精製されたエステル化生成物が得られたことを明らかにしている。
【0041】
[比較例1]
実施例1で記述した方法と同様の方法で得られた酸生成物を、水で洗浄して、その中のFFCAの量を測定した。生成物は、その後、90℃の水にとり、完全に溶解させた。酸生成物と水との質量比は1:150であった。この溶液を20℃に冷却し、沈殿を形成させた。沈殿を濾取し、乾燥させた。この沈殿を、この手順を使用して、さらに2回再結晶させた。得られた固体の収率を、酸生成物の質量に基づいて決定した。最終的な沈殿中のFFCAの量も測定した。結果を以下の表C1に示す。
【0042】
再結晶化試験を、同じ酸生成物を出発物質として用いて繰り返したが、生成物を、100℃にて酢酸に溶解させた。酸生成物と酢酸との質量比は1:150であった。この溶液を5℃に冷却し、沈殿を形成させた。この沈殿を濾取し、乾燥させた。3回の再結晶後に得られた固体の収率を、酸生成物の質量に基づいて決定した。最終的な沈殿物中のFFCAの量も測定した。結果を以下の表C1に示す。
【0043】
再結晶化試験を、同じ酸生成物を出発物質として用いて繰り返したが、生成物を、60℃にてメタノールに溶解させた。酸生成物と酢酸との質量比は1:26であった。この溶液を−20℃に冷却し、沈殿を形成させた。この沈殿を濾取し、乾燥させた。3回の再結晶後に得られた固体の収率を、酸生成物の質量に基づいて決定した。最終的な沈殿物中のFFCAの量も測定した。結果を以下の表C1に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
これらの結果は、結晶化が、生成物の損失がかなりあるにも関わらず、酸生成物からのFFCAの除去について緩やかな効果を有するのみであることを明らかにしている。
【0046】
[実施例2]
この試験は、エステル化反応が、連続モードでも実施可能であることを示す。
【0047】
連続モードで、FDCAに基づいて約1質量%のFFCAを含有する、メタノール中1質量%のFDCA組成物の供給溶液を、種々の温度および種々の供給速度(結果として滞留時間が様々となる)で15mlのプラグフロー反応器に通した。定常状態条件を確実にするために、ユニットの容積の少なくとも3倍の量の供給溶液がフラッシュされるまで、生成物の試料を採取しなかった。反応器内の圧力は100バールであった。供給溶液は、エステル化触媒として硫酸を少量含有していた。水の効果は、供給溶液に若干の水を添加することにより調べた。生成物は、エステル化生成物を含んでいた。
【0048】
反応条件および結果を表2に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
これらの結果は、エステル化が、連続法で効果的に実施され得ることを明らかにしている。生成物は、引き続いて、そこに存在する何らかのFFCA誘導体の分離にかけることができる。
【0051】
[実施例3]
実施例2の方法と同様の方法で、FDCAに基づいて1質量%のFFCAを含有する、メタノール中1質量%のFDCA酸組成物の供給溶液を、種々の温度および種々の供給速度(結果として滞留時間が様々となる)で、15mlのプラグフロー反応器に、連続モードで通した。定常状態条件を確実にするために、ユニットの容積の少なくとも3倍の量の供給溶液がフラッシュされるまで、生成物の試料を採取しなかった。生成物の試料を液体クロマトグラフィーを用いて分析した。反応器内の圧力は100バールであり、温度を200℃に維持した。反応器に、表3に指定した不均一触媒を装填した。生成物は、エステル化生成物を含んでいた。各試験の滞留時間は2分であった。
【0052】
用いた触媒は、H−ゼオライトY(触媒No.1)、超安定H−ゼオライトY(触媒No.2)、超超安定H−ゼオライトY(触媒No.3)、脱アルミニウム化超安定H−ゼオライトY(触媒No.4)、およびSAPO−34(触媒No.5)であった。
【0053】
反応条件および結果を表3に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
これらの結果は、FDCA生成物のエステル化が、ゼオライト触媒を用いることによって非常に効果的に達成され得ることを明らかにしている。エステル化された生成物は、結晶化または蒸留などの方法による分離にかけることができる。
【0056】
[実施例4]
実施例3における試験と同様に、ハロゲン化されたスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンイオン交換樹脂(Amberlyst 70の商標の下で市販されている)を用いる一連の試験を実施した。
【0057】
反応器内の圧力は、100バールであった。温度は、130〜160℃の間で変動させた。滞留時間は、供給溶液の流量を調整することによって変動させた。結果を下記表4に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
これらの結果は、エステル化が、触媒としてイオン交換樹脂を用いて効果的に行われ得ることを明らかにしている。
【0060】
[実施例5]
コバルト/マンガン/臭化物触媒によるメトキシメチルフルフラールの2種の別個の酸化から得られた2つの酸生成物を単離した。両生成物における2−ホルミル−フラン−5−カルボン酸およびフラン−2,5−ジカルボン酸の量を決定した。1つの酸生成物を、その酸生成物の質量の10倍の量の水で洗浄した。もう1つの酸生成物を、酢酸で、同様にその酸生成物の質量の10倍の量の酢酸で洗浄した。
【0061】
これらの酸生成物を、その後メタノールに組み入れて20%スラリーにし、回分式反応器内で160℃および40バールに6時間維持した。結果として得られた化合物の量を測定した。洗浄剤、出発物質の組成、および得られた化合物の量を表5に示す。表5において、AcOHは酢酸であり、FDCA−DMEはFDCAのジメチルエステルである。量は、出発物質および得られた化合物にそれぞれ基づいて、モルパーセントで示す。
【0062】
【表6】
【0063】
これらの試験は、エステル化が、追加の触媒を使用することなく好適に行われ得ることを明らかにしている。
【0064】
[実施例6]
一連の回分法の試験において、2,5-フランジカルボン酸のジメチルエステルを、触媒の非存在下または存在下で水に組み入れた。触媒は、硫酸(触媒A)または酢酸亜鉛(触媒B)であった。種々の温度、圧力、および様々な接触時間で、得られた混合物を加水分解にかけた。反応条件および結果を表6に示す。
【0065】
【表7】
【0066】
これらの結果は、エステル化生成物を精製する場合に、FDCAからの酸を回収するための加水分解が(その生成物が所望される場合には)容易に達成され得ることを明らかにしている。
【0067】
[実施例7]
FDCA組成物(「組成物A」)を、密閉容器内のメタノールおよび硫酸中に組み入れた。FDCA組成物のメタノールに対する質量比は1:4であった。得られた混合物を、自己圧力(autogenous pressure)下、80℃にて約12時間エステル化にかけた。沈殿が形成され、この沈殿をろ過して取り出した。ろ過ケーキを、メタノール中に60℃で再溶解させ、25℃に冷却することによって再結晶させた。主としてFDCA−DMEを含有するこの結晶化された生成物を濾過により回収し、乾燥させた(「組成物B」)。
【0068】
組成物Bを、水酸化ナトリウム水溶液と混合した。水酸化ナトリウムのFDCAのジメチルエステルに対する当量比は2.41であった。この混合物をほぼ大気圧で約80℃に加熱することによって、ジエステルが二ナトリウム塩に鹸化された。水の量は、ジナトリウム塩を完全に可溶化するのに十分であった。
【0069】
この二ナトリウム塩を、小過剰の硫酸を添加することによって中和し、これによって、遊離されたFDCAが沈降した。沈殿したFDCAを濾過により回収し、水で洗浄した。洗浄されたFDCA生成物をろ過器から取り出し、水に取り、150℃および5バールでFDCA生成物を完全に水に溶解させた。得られた溶液を、再結晶したFDCAを沈降させながら周囲温度に冷却した。この再結晶FDCA生成物は、ろ過、およびその後の70℃および減圧下での乾燥により得られた(「組成物C」)。組成物Cの収率は、組成物Aに基づいて約65モル%であった。
【0070】
組成物A、B、およびCの成分を表7に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
これらの結果は、FDCA生成物のエステル化と、その後の再結晶および鹸化とを連続して行うことによって、満足すべき収率の純粋なFDCA生成物がもたらされることを明らかにしている。
図1