(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、滅菌または殺菌を目的とする処理システム、部品、組成物、および関連する操作方法の種々の実施形態を説明する。以下の説明は、開示された技術の特定の実施形態を十分に理解するための、装置、部品、および稼働の具体的な細部を含む。なお、当業者には明らかだが、本技術は別の実施形態を有してもよい。また、本技術は、
図1−11Bを参照して以下に記載された複数の実施形態の細部の内のいくつかを用いずに実施されてもよい。
【0017】
本明細書に用いられているように、「滅菌」は一般に、食品、薬剤、生物培地、または他の適当な物品に存在する全ての形態の真菌、バクテリア、ウイルス、胞子体、または他の微生物生命体を除去、すなわち取り除く処理をいう。また本明細書に用いられているように、「殺菌」は一般に、微生物生命体の全てではなく一部が除去、すなわち取り除かれる、部分的な滅菌処理をいう。「物品」は一般に、滅菌あるいは殺菌することができる任意の適当な製造品をいう。例示的物品には、食品、医療用品、消費財、および/または他の適切な物品が含まれるが、それらに限定されない。「食品」は一般に、人または動物による消費に適した任意の食料品をいう。食品の例には、梱包済食品、缶詰食料、乳製品、ビール、シロップ、水、ワイン、および果汁が含まれるがこれらに限定されない。
【0018】
前述のとおり、食品を熱風、熱水、または蒸気で加熱することによる滅菌または殺菌は、味、質感、色、匂いを損なう、あるいは他の悪影響を及ぼす場合がある。加熱処理の間、食品の表面または外側部分は所望の内部温度に到達するために過度に加熱される場合がある。このような過度の加熱は、食品に前述の悪影響を生じさせ得る一要因である。開示された技術のいくつかの実施形態は、浸漬流体(例えば、調熱水)に浸漬された物品(例えば、食品)を加熱してその物品を滅菌または殺菌するためにマイクロ波を利用する。より詳細に後述するように、開示された技術のいくつかの実施形態は、必要な処理時間が従来技術よりも短く、物品の温度が再現性よくほぼ均等になるという特性があり、効率的かつ費用対効果に優れた滅菌または殺菌を達成することができる。
【0019】
図1は、開示された技術の実施形態による搬送台108に収容された物品101(例えば、食品)の滅菌または殺菌に有用な処理システム100を図示する概略図である。
図1に示されるように、処理システム100は、互いに直列に連結された予熱部102と、加熱部104と、冷却部106(まとめて「処理部」と呼ぶ)とを備えることができる。示された実施形態では、処理システム100は、加熱部104と冷却部106との間に選択保持部105も備える。別の実施形態では、選択保持部105は他の適切な構成を有してもよく、その一例が、
図6を参照しながらより詳細に後述される。さらに別の実施形態では、保持部105はなくてもよい。特定の部品または処理部が
図1に図示されているが、処理システム100は、追加の部品、および/または別の部品を備えることもできる。例えば、処理システム100は、プロセスロジック制御器、空圧式昇降機、ストレイナ、フィルタ、センサ(例えば、高さセンサ、流量計、圧力計など)、および/または別の適切な機械部品・電気部品を備えることもでる。
【0020】
図1に示されるように、処理部は、浸漬流体110を循環および/または保持するように構成されていてもよい。特定の実施形態では、浸漬流体110は水を含むことができ、処理部の1つ以上は、対応する流体供給機に連結されていてもよい。例えば、予熱部102は予熱流体供給機132に連結することができる。冷却部106は冷却流体供給機136に連結される。図示された実施形態では、加熱部104と選択保持部105は、どちらも調熱流体供給機134に連結されている。別の実施形態では、加熱部104と選択保持部105は、それぞれ対応する調熱流体供給機(不図示)に連結されていてもよい。
【0021】
流体供給機132と、136と、138のそれぞれは、稼働温度の浸漬流体110を供給し循環するように構成することができる。例えば、特定の実施形態では、予熱流体供給機132は、予熱部102内の物品101の予熱温度(例えば、60°C)にほぼ等しいかそれを超える温度の浸漬流体110を供給し循環することができる。調熱流体供給機134は、加熱部104内の物品101の所望の加熱温度(例えば、90°C)にほぼ等しいかそれを超える温度の浸漬流体110を供給し循環することができる。予熱温度は、加熱部104内の加熱温度よりも一般に低い。加熱流体供給機132と、調熱流体供給機134と、冷却流体供給機136の実施例が、それぞれ
図5A−5Cを参照しながらより詳細に後述される。別の実施形態では、浸漬流体110は、脂肪、油、高分子溶媒、および/または液状または半液状形態の別の適切な流体を含んでもよい。
【0022】
また
図1に示されるように、1つ以上の分割器111(それぞれ第1分割器111aおよび第2分割器111bと図示される)は、隣接する処理部の間で浸漬流体110を制御可能に分離し、一方で搬送台108を通すように構成してもよい。例えば、図示された実施形態では、第1分割器111aは、予熱部102と加熱部104との間で浸漬流体110を制御可能に分離することができる。第2分割器111bは、加熱部104(および選択保持部105)と冷却部106との間で浸漬流体110を制御可能に分離することができる。別の実施形態では、処理システム100は、分割器111をさらに追加すること、および/または異なる配置にすることもできる。例えば、追加の分割器(不図示)は、加熱部104と保持部105との間でもよい。
【0023】
1つ以上の分割器111はそれぞれ、浸漬流体110が隣接する処理部に流れないように、浸漬流体110を少なくとも部分的に封止するように構成された適切な機械部品および/または電気部品を備えることができる。例えばある実施形態では、分割器111は、弾性材料(例えば、ゴム)、剛性材料(例えば、プラスチック)、または他の適切な材料で作られた引張扉を備えることができる。引張扉は、搬送台108を通すとき以外、通常は閉じられる。別の実施形態では、分割器111は、搬送台108の通過と同期する作動門を備えることができる。作動門の一実施例が、
図4を参照しながら後述される。さらに別の実施形態では、分割器111は、他の適切な作動式のすなわち能動型の部品および/または構成を備えることができる。
【0024】
予熱部102は、滅菌または殺菌される物品101を担持した1つ以上の搬送台108を収容するように構成されている。搬送台108は、
図1には説明の便宜上、各々物品101を3つ搬送するように示されている。別の実施形態では、搬送台108は、物品101を2つ、4つ、5つ、6つ、または任意の他の適切な数だけ搬送することができる。ある実施形態では、搬送台108を1度に複数台収容してもよい。例えば、物品101を伴った複数の搬送台108を、滅菌または殺菌過程の開始前に予熱部102に積載し、前回分の処理が一旦終了したら再度積載してもよい。別の実施形態では、搬送台108を、例えば、ベルトコンベア(不図示)、手動式積載部(不図示)、および/または他の適切な供給源(不図示)から連続的に受け取ってもよい。さらに別の実施形態では、搬送台108を、半連続的な方法あるいは他の適切な方法で受け取ってもよい。
【0025】
また予熱部102は、搬送台108に収容された物品101の温度を予熱温度に均等化するように構成されている。ある実施形態では、予熱温度は約60°Cにすることができる。別の実施形態では、予熱温度は、40°C、50°C、または任意の他の適切な温度にすることができる。図示された実施形態では、予熱流体供給機132によって供給された浸漬流体110は、物品101の温度を予熱温度に予熱および/または均等化するために用いられる。別の実施形態では、蒸気、高温の油、および/または他の温度媒体を用いてもよい。
【0026】
図示された実施形態では、予熱部102は、入口112aと、第1分割器111aの近傍の出口112bとを有する搬送機組立品112を備える。搬送機組立品112は、容器、槽、カートリッジ、または他の適切な構造体を備えることができる。特定の実施形態では、搬送機組立品112は、搬送台108が搬送機組立品112の入口112aから出口112bまで通過するときに搬送台108内の物品101の温度が少なくともほぼ均等になる滞留時間を確保するのに十分な容積を有することができる。別の実施形態では、搬送機組立品112は他の適切な容積、構造、形状、または部品を有することもできる。
【0027】
搬送機組立品112は、加熱部104内の物品に静水圧を作用させるために、加熱部104に対して高さHを有することもできる。より詳細に後述するように、個々の物品101に作用する静水圧は、加熱部104内で加熱中の蒸気爆発の危険性を防ぐ、あるいは少なくとも減らすことができる。ある実施形態では、高さHは約5メートルにすることができる。別の実施形態では、高さHは、4メートル、6メートル、または任意の他の適切な距離にすることができる。前述の実施形態のいずれにおいても、高さHは、(1)物品101の所望の加熱温度、(2)物品101の含水量、(3)加熱部104内の浸漬流体110の温度、(4)加熱部内の物品101に供給されるマイクロ波エネルギーの大きさ、または他の適切な因子のうち、少なくとも1つを基に調節されてもよい。
【0028】
搬送機組立品112は、個々の搬送台108を加熱部104に搬送するように構成された搬送機構を備えることもできる。
図1に示されるように、搬送機構の例は、搬送機組立品112の出口112bの近傍に1つ以上のローラ122を備えることができる。1つ以上のローラ122は、1台の搬送台108を、出口112bから第1分割器111a経由で加熱部104に搬送するように構成されることができる。ローラ122を有する搬送機組立品112の例は、
図2を参照しながらより詳細に後述される。
【0029】
別の実施形態では、搬送機組立品112には、ローラ122がなくてもよい。代わりに、搬送機組立品112は、個々の搬送台108を予熱部102から加熱部104に搬送するために、機械式移動装置、噴流、圧縮ガス、および/または他の適切な搬送機構を備えてもよい。さらに別の実施形態では、予熱部102はさらに部品を追加することおよび/または別の部品を備えることもできる。例えば、予熱部102は、直列、並列、または他の適切な方法で配置された2つ、3つ、または他の適切な数の搬送機組立品(不図示)を備えていてもよい。
【0030】
加熱部102は、搬送台108に担持された物品101が浸漬流体110に浸漬されて浸漬流体110の静水圧を受ける間、物品101にマイクロ波エネルギーを作用させるように構成されている。作用させるマイクロ波エネルギーは、物品101の温度(例えば、内部温度)を滅菌または殺菌の達成に十分な目標加熱温度まで、あるいはそれを超える温度まで上昇させるのに十分なエネルギーでよい。内部温度は、個々の物品101の中心温度あるいは中心部近傍の温度でよい。ある実施形態では、目標加熱温度は約90°Cにすることができる。別の実施形態では、目標加熱温度は、70°C、80°C、100°C、または他の適切な温度値にすることができる。
【0031】
加熱部104は、1つ以上のマイクロ波組立品114に連結された搬送機113を備えることができる。搬送機113は、物品101を搬送する搬送台108を予熱部102から受け取るように構成することができる。また搬送機113は、受け取った搬送台108を物品101と一緒に加熱部104内で運送して、マイクロ波組立品114からのマイクロ波エネルギー(矢印117で示される)を照射するように構成することができる。
図1に示されるように、搬送機113は、搬送筐体123と、複数のローラ122と、搬送筐体123の1つ以上のマイクロ波窓125とを備える。マイクロ波窓125は、それぞれマイクロ波透過部品(例えば、ガラスまたはプラスチック板)を設けた開口を備えることができる。搬送機113の例が、
図3を参照しながらより詳細に後述される。
【0032】
各マイクロ波組立品114は、搬送台108で搬送される個々の物品101が搬送機113内で運搬されるのと同時に、物品101の両側にマイクロ波エネルギーを作用させるように構成されている。
図1に示されるように、各マイクロ波組立品114は、搬送機113の両側のマイクロ波導波部118に連結された2組のマイクロ波源116を備える。マイクロ波源116は、特定周波数(例えば、950MHz)の単一モードマイクロ波源、または他の適切なマイクロ波源を備えることができる。マイクロ波導波部118は、マイクロ波源116からのマイクロ波エネルギー117を、搬送機113内の対応するマイクロ波窓125を通じて物品101に向けるように構成された円錐形、台形、または他の適切な形状の構造を備えることができる。
図1には説明の便宜上、2つのマイクロ波組立品114が並んで図示されている。別の実施形態では、加熱部104は、1つ、3つ、または任意の他の適切な数のマイクロ波組立品114を備えることができる。さらに別の実施形態では、マイクロ波組立品114は互いに間を空けることができる。さらにまた別の実施形態では、マイクロ波組立品114は他の適切な配置でもよい。
【0033】
選択保持部105は、滅菌または殺菌の促進または達成のため、加熱された物品101の内部温度をある時間(保持時間と呼ぶ)少なくともほぼ維持するように構成されることができる。理論による束縛はないが、特定の微生物生命体(例えば、バクテリア)を少なくとも一部除去するには、物品101の温度をある時間維持することが必要であると考えられている。例えば、牛乳は72°Cに15秒間加熱して殺菌しても、あるいは63°Cに30分間加熱して殺菌してもよい。ある実施形態では、保持部105は、保持時間に等しいあるいはそれを超える滞留時間を提供するのに十分な容積がある保持槽124を備えることができる。また保持槽124は、搬送台108を冷却部106に搬送するように構成された1つ以上のローラ122を備えることもできる。別の実施形態では、保持部105は、他の適切な構造、容積、および/または構成の保持槽を備えることができる。図示された実施形態では、選択保持部105は加熱部104より低い位置にあるように図示されている。別の実施形態では、保持部105は加熱部104と同じ高さか、またはそれより高い位置にあってもよい。さらに別の実施形態では、保持部105は加熱部104に対して他の適切な配置を有してもよい。
【0034】
冷却部106は、加熱された物品101の全体温度または内部温度を室温(例えば、15°C)まで、あるいは取り扱い、搬送、および/または保管に適した他の温度まで下げるように構成することができる。
図1に示されるように、冷却部106は、予熱部102の搬送容器112とよく似たローラ122を設けた搬送容器126を備えることができる。特定の実施形態では、搬送容器126は、加熱部104と選択保持部105からの物品101の全体温度または内部温度を下げるのに十分な滞留時間が得られる容積を有することができる。別の実施形態では、搬送容器126は、バッチ式で稼働するように構成されてもよく、したがって任意の適切な容積を有してよい。
【0035】
稼働時、予熱部102は、搬送台108に入った物品101を受け取り、物品101を浸漬流体110で予熱温度まで加熱し、および/あるいはその温度に均等化する。予熱部102は種々のモードで稼働することができる。例えば、ある実施形態では、予熱部102は複数回に分けて稼働してもよい。複数の搬送台108が対応する物品101と共に、先ず搬送組立品112で受け取られる。つぎに予熱流体供給機132が加熱温度(例えば、80°C)の水を供給して、物品101の温度を予熱温度まで加熱、および/あるいは均等化する。物品101の温度がほぼ均等化されたら、搬送機構(例えば、ローラ122)が起動して、各搬送台108を第1分割器111a経由で加熱部104に搬送することができる。
【0036】
別の実施形態では、予熱部102は、通常は連続モードで稼働してもよい。例えば、先ず予熱流体供給機132が、ある温度(例えば、80°C)の浸漬流体110を搬送組立品112内で循環させることができる。続いて、搬送組立品112が、搬送台108を入口112a経由で受け取ることができる。搬送台108が入口112aから出口112bに向かって移動すると、循環水が物品101を加熱し、および/あるいはその温度を均等化する。次に、搬送機構(例えば、ローラ122)が、個々の搬送台108を第1分割器111a経由で加熱部104に連続的に搬送することができる。さらに別の実施形態では、予熱部102は他の適切な方法で稼働してもよい。
【0037】
加熱部104は、温度がほぼ均等な複数の物品101を予熱部102から受け取り、マイクロ波エネルギーにより物品101をさらに加熱することができる。先ず調熱流体供給機134が、浸漬流体110を加熱部104(および選択保持部105)内で循環させることができる。次に、加熱部104の搬送機113が、搬送台108を物品101と一緒に第1分割器111a経由で受け取ることができる。次に、搬送機113内のローラ122が、個々の搬送台108をある方向(矢印127で示される)に沿って選択保持部105に搬送する。浸漬流体110内の物品101がマイクロ波窓125を通過するとき、マイクロ波源116がマイクロ波エネルギーを物品101の両側に作用させて、物品101の内部温度を目標加熱温度まで上げる。次いで、搬送機113内のローラ122は、搬送台108内の加熱された物品101を選択保持部105に搬送することができる。
【0038】
選択保持部105は、目標加熱温度に加熱された物品101を加熱部104から受け取り、物品101を、ある時間(例えば、10分間)目標加熱温度にほぼ維持することができる。前述のとおり、物品101を目標加熱温度またはその付近に維持することによって、物品101内の微生物生命体を減らすまたは除去することができる。前記時間が終了すると、選択保持部105は、搬送台108を物品101と一緒に冷却部106に搬送する。次に、冷却部106が、冷却流体供給機136の冷却温度(例えば、15°C)の浸漬流体110を作用させて、物品101の全体温度または内部温度を室温または他の適切な温度まで下げる。次に、冷却された物品101を冷却部106から取り出し、さらに処理および/または保存することができる。
【0039】
処理システム100の種々の実施形態を用いて、物品101への悪影響がない、あるいは従来の技術よりも少ない状態で物品101を効率的に滅菌または殺菌することができる。熱風、熱水、または蒸気で食品を加熱することによって物品101を加熱する従来の技術とは異なり、物品101はマイクロ波で加熱される。その結果、物品101の内部温度を、従来の加熱技術よりも効率的に上げることができる。
【0040】
処理システム100の種々の実施形態を用いて、処理システム100の処理部を加圧せずに物品101を効率的に滅菌または殺菌することもできる。あるいは、処理システム100の処理部の少なくとも一部は、外気に開放されてもよい。前述のとおり、包装食品などの物品101は一般にある程度の量の水を含む。したがって、加熱部104内で作用されたマイクロ波エネルギーによって蒸気が発生し、この蒸気が包装食品の爆発あるいは破裂を引き起こす場合がある。他の一部の処理システムでは、そのような蒸気爆発を防ぐために、処理部は、例えば不活性ガスまたは空気で加圧されている。しかし、そのように加圧するには処理部を圧力容器として設計する必要があり、したがって製造と設置の費用ならびに操作の煩雑さが増大する。これに対して、処理システム100の種々の実施形態は、加熱中の蒸気爆発の防止または少なくともその危険性の低減に、物品101に対する浸漬流体110の静水圧を利用、したがって、処理部の加圧を必要としない。また、浸漬流体110によって、予熱、加熱、および/または冷却中の物品の温度の均等化も容易になる。
【0041】
図2は、開示された技術の実施形態による
図1の処理システム100の予熱部102または冷却部106に適した搬送機組立品130の例を図示する斜視図である。
図2に示されるように、搬送機組立品130は、入口フランジ144aを設けた入口131aと、出口フランジ144bを設けた出口131bとを有する筐体131を備えることができる。説明の便宜上、筐体131の背板が取り外されて、搬送台108が図示されている。図示された実施形態では、筐体131は、第1端137aと第2端137bとの間に、略矩形状の断面を有する。入口フランジ144aと出口フランジ144bとは互いに略垂直である。さらに別の実施形態では、搬送機組立品130は、台形、円筒形、および/または他の寸法と形状の適切な断面を有して複数の搬送台108を受け取ることができる。別の実施形態では、搬送機組立品130は、入口フランジ144aおよび/または出口フランジ144bの他に、あるいはその代わりに、摩擦式接続具および/または他の適切な連結具を備えることができる。
【0042】
図2に図示された実施形態では、搬送機組立品130は、筐体131の第2端137bの近傍に複数のローラ122を備えることができる。矢印139で示されるように、ローラ122は、一番下にある搬送台108を搬送して、出口131b経由で筐体131から出すように構成されている。ある実施形態では、ローラ122は摩擦ローラにすることができる。別の実施形態では、ローラ122は他の適切な種類のローラを備えることができる。さらに別の実施形態では、搬送機組立品130は、追加のおよび/または異なる搬送部品を備えることもできる。例えば、特定の実施形態では、搬送機組立品130は、一番下にある搬送台108を搬送して、出口131b経由で筐体131から出すために、筐体131の第2端137bの近傍に空圧式押出棒(不図示)を備えることもできる。
【0043】
図2には図示されていないが、搬送機組立品130は、筐体131に流体入口(例えば、流体分配器)と流体出口(例えば、ノズル)とを備えて、予熱流体供給機132(
図1)または冷却流体供給機136(
図1)からの浸漬流体110(
図1)を筐体131の内部133に循環させることができる。筐体131は、筐体131内の浸漬流体110の流量をほぼ均等にするように構成された整流器、分流器、および/または他の適切な流量調整部品を備えることもできる。
【0044】
稼働時、搬送機組立品130は、積み重ねられたまたは他の状態の複数の搬送台108を入口131aから受け取ることができる。ローラ122は、一番下にある搬送台108を方向139に沿って搬送して出口131bから出す。一番下の搬送台108が出口131bを出ると、別の搬送台108が筐体131の第2端137bに向かって下降して、出口131bから搬送される。この過程は、筐体131内に搬送台108がなくなるまで続く。
【0045】
図3は、開示された技術の実施形態による
図1の処理システム100に適した加熱部104の例を説明する斜視図である。
図3に示されるように、加熱部104は、搬送機113に連結されたマイクロ波組立品114を備えることができる。
図3には、分かり易いようにマイクロ波組立品は1つだけ図示されているが、加熱部104は、搬送機113に連結されたマイクロ波組立品114(
図1)をさらに1つ備えることができる。別の実施形態では、加熱部104は、複数のマイクロ波組立品(不図示)を任意の適切な配置で追加してもよい。
【0046】
図3に示されるように、マイクロ波組立品114は、マイクロ波導波部118の第1端118aに1組のフランジ152を介して連結されたマイクロ波源116を備えることができる。
図1を参照しながら前述したように、マイクロ波源116は、単一モードのあるいは他の適切な種類のマイクロ波発生器を備えることができる。図示された実施形態では、マイクロ波導波部118の第2端118bは、搬送機113のマイクロ波窓125aに連結されている。マイクロ波導波部118は、第1端118aと第2端118bとの間に延在する4つの側壁153も備える。側壁153はそれぞれ略台形状である。別の実施形態では、マイクロ波導波部118は適切な形状と寸法の他の適切な構造にすることもできる。
【0047】
図示された実施形態では、マイクロ波組立品118は、マイクロ波導波部118の1つ以上の側壁153に支持された1つ以上のマイクロ波調整器154も備える。マイクロ波調整器154は、マイクロ波源116からマイクロ波窓125aを介して物品101(
図1)に供給されるマイクロ波エネルギーの量を調整するように構成されることができる。マイクロ波調整器154は、1つ以上の機械式摺動ねじ調整器、手動式インピーダンス調整器、自動インピーダンス調整器、または他の適切な種類のマイクロ波調整器を備えることができる。別の実施形態では、マイクロ波調整器154は、マイクロ波組立品114および/または搬送機113上に適切に他の状態に配置されてもよい。さらに別の実施形態では、マイクロ波調整器154はなくてもよい。
【0048】
図3に示されるように、搬送機113は、複数のローラ122を設けた搬送筐体123を備える。図示された実施形態では、搬送筐体123は略直線形で、第1端151aと第2端151bにフランジ155が設けられている。搬送筐体123は、第1側部150aにマイクロ波窓125aと、反対側の第2側部150bに別のマイクロ波窓125bとを有する。ある実施形態では、第1窓125aと第2窓125bは互いにほぼ整列している。別の実施形態では、第1窓125aと第2窓125bは互いにずれているか、あるいは他の適切な配置を有する。ローラ122は、第2側部150bの近傍に並んで配置されて通路156を形成し、その中を搬送台108(
図1)が第1端151aから第2端151bまでローラ122によって搬送されてもよい。別の実施形態では、搬送機123は、搬送台108で搬送される物品101(
図1)にマイクロ波エネルギーを供給するのに適した他の構造、形状、寸法を有することもできる。
【0049】
図3に示されるように、搬送機組立品130は、搬送筐体123に流体入口157a(例えば、流体分配器)と流体出口157b(例えば、ノズル)とを備えて、調熱流体供給機134(
図1)からの浸漬流体110(
図1)を搬送筐体123の通路156に循環させることができる。搬送筐体123は、搬送筐体123内の浸漬流体110の流量をほぼ均等にするように構成された整流器、分流器、および/または他の適切な流量調整部品を備えることもできる。
【0050】
稼働時、物品101を搬送する個々の搬送台108が搬送筐体123の第1端151aで受け取られ、一方、調熱流体供給機134からの浸漬流体110が通路156を満たし、循環する。次に、ローラ122が、個々の搬送台108を第1端151aから第2端151bまで搬送することができる。次に、物品101がマイクロ波窓125aと125bとの下/上を通過するときに、物品101は、浸漬流体110に浸漬された状態でマイクロ波源116からマイクロ波エネルギーを受け取る。
【0051】
ある実施形態では、搬送台108がマイクロ波窓125aと125bとほぼ整列したとき、ローラ122は停止してもよい。次に、マイクロ波源116が起動して、搬送台108上の物品101にマイクロ波エネルギーをある時間(例えば、約10秒間から約3分間)供給してもよい。次いで、ローラ122が起動して、搬送台108を第2端151bに向けて搬送する。別の実施形態では、搬送台108が少なくとも部分的にマイクロ波窓125aと126bとを通じて曝されたとき、ローラ122は減速するが停止せず、一方、マイクロ波源116が起動してマイクロ波エネルギーをマイクロ波窓125aと125bとから供給してもよい。さらに別の実施形態では、ローラ122は、搬送台108を一定速度で通路156内を搬送してもよい。さらにまた別の実施形態では、ローラ122は、搬送台108を他の適切な方法で通路156内を搬送してもよい。
【0052】
図4は、開示された技術の実施形態による
図1の処理システム100に適した分割器111の例を図示する斜視図である。
図4に示されるように、分割器111は、分割器通路161で互いに隔てられた一対のフランジ160aと160bと、分割器通路161内に配置されたゲート162とを備えることができる。図示された実施形態では、ゲート162は、1つ以上の昇降部材164(説明の便宜上、2つが図示されている)に取り付けられた遮断部材163を備える。遮断部材163は、金属、合金、プラスチック、ゴム、または十分な剛性がある任意の他の適切な材料で製造された板、厚板、薄板、または他の適切な構造を備えることができる。ある実施形態では、昇降部材164は遮断部材163と一体に形成されてもよい。別の実施形態では、昇降部材164は、1つ以上の固定具、接着剤、または他の適切な連結機構(不図示)で遮断部材163に取り付けられてもよい。
図4には図示されていないが、分割器111は、フランジ160aと160bおよび/またはゲート162に、取り付けおよび/または形成された、封止材、軌道、移動補助部、および/または他の適切な部品を、備えることもできる。
【0053】
稼働のある様式では、昇降部材164は、電動モータ、空圧シリンダ、および/または他の適切な駆動機構(不図示)で作動して、遮断部材163をフランジ160aと160bとの間の分割器通路161に、矢印166aで示されるように、押し込んでもよい。そのため、遮断部材163は、浸漬流体110(
図1)の少なくとも一部を、フランジ160aまたは160bの片側に隔離することができる。稼働の別の様式では、昇降部材164は、矢印166bで示されるように、遮断部材163を分割器通路161から移動させるよう作動してもよい。
図4に示されるように、遮断部材163が少なくとも部分的に移動すると、フランジ160aと160bとの間に通路168が形成され、搬送台108(
図1)が通過できるようになる。
【0054】
図5A−5Cは、開示された技術の実施形態による
図1の処理システム100の予熱部102、加熱部106、および冷却部108にそれぞれ適切な予熱流体供給機132、調熱流体供給機134、および冷却流体供給機136の概略図である。
図5A−5Cでは、同一の参照番号は、構造および/または機能が類似の要素を表す。具体的な部品が
図5A−5Cに示されているが、流体供給機132、流体供給機134、および流体供給機136は、流量計、圧力ゲージ、圧力伝達器、弁位置切替器/伝達器、および/または他の適切な部品(不図示)を備えてもよい。
【0055】
図5Aに示されるように、予熱流体供給機132は、互いに稼働可能に連結された循環ポンプ170と、蒸気熱交換器172と、蒸気弁174と、温度センサ178と、制御器176とを備えることができる。循環ポンプ170は、遠心ポンプ、歯車ポンプ、または他の適切な種類のポンプを備えることができる。蒸気熱交換器172は、板管式、板式、または他の適切な種類の熱交換部品を備えることができる。温度センサ178は、熱電対、抵抗式温度検出器、または他の適切な種類の温度センサを備えることができる。蒸気弁174は、作動玉形弁、蝶形弁、ボール弁、または他の適切な種類の弁を備えることができる。制御器176は、単ループ制御器またはプログラム式プロセス制御器の制御モジュールを備えることができる。
【0056】
稼働時、循環ポンプ170が、予熱部102(
図1)から浸漬流体110を受け取り、受け取った浸漬流体110を蒸気熱交換器172に移す。浸漬流体172が蒸気熱交換器172内を通過する間、蒸気(例えば、60重量ポンド毎平方インチゲージの蒸気)が、蒸気弁174から導入され、浸漬流体172を加熱する。温度センサ178が、蒸気熱交換器172から出る浸漬流体110の温度を測定し、測定値を制御器176に提供する。そのため、制御器176は、蒸気熱交換器172から出る浸漬流体110の温度の設定値と温度センサ178の測定値とを基に、蒸気弁174を調節することができる。
【0057】
図示された実施形態では、導入された蒸気は、熱交換器172の通過後に凝集液として集められる。集められた凝集液は、その後再利用されても、廃棄されても、あるいは別の処理が行われてもよい。別の実施形態では、熱交換器172は、導入された蒸気と浸漬流体110とを直接混合するように構成された蒸気−水混合器(不図示)と置き換えられてもよい。
【0058】
図5Bに示されるように、調熱流体供給機134は、
図5Aに図示された予熱流体供給機132とほぼ類似したものにできるが、蒸気熱交換器172と直列の冷却熱交換器173と、冷却熱交換器173に冷却水を導入するように構成された冷却水弁175とを備える点で異なる。
図5Bには、冷却熱交換器173は熱交換器172の下流に図示されているが、別の実施形態では、冷却熱交換器173は、蒸気熱交換器172の上流または他の適切な場所に配置することもできる。
【0059】
稼働時、制御器176は、加熱部104(
図1)への浸漬流体110の温度の設定値に達するよう、冷却水弁175と蒸気弁174の両方の調節を行うことができる。例えば、制御器176が分割制御を実行するように構成して、それに従い蒸気弁174に正の制御操作が、冷却水弁173に負の制御操作が実行されるようにしてもよい。そのため、浸漬流体110は、蒸気熱交換器172を通過するとき、蒸気で加熱されてもよく、冷却熱交換器173を通過するとき、冷却水で冷却されてもよい。別の実施例では、制御器176は、工程制御、閾値制御、または他の適切な制御方式を実行するように構成されてもよい。
【0060】
図5Cに示されるように、冷却流体供給機136は、
図5Bの調熱流体供給機134とほぼ類似したものにすることができるが、冷却流体供給機136が蒸気熱交換器172または蒸気弁174を含まない点で異なる。稼働時、冷却水弁175が冷却熱交換器173に冷却水を入れて浸漬流体110を除熱する。温度センサ178は、冷却熱交換器173から出る浸漬流体110の温度を測定し、測定値を制御器176に提供する。そのため、制御器176は、冷却熱交換器173から出る浸漬流体110の温度の設定値と温度センサ178の測定値とを基に、冷却水弁175を調節することができる。
【0061】
図6は、開示された技術の実施形態による滅菌または殺菌に有用な別の処理システム100’を図示する概略図である。
図6に示されるように、処理システム100’は、
図1の処理システムとほぼ類似するものにすることができるが、予熱部102と冷却部106とを加熱部104に対してほぼ同じ高さHにできる点で異なる。また、
図6の処理システム100’には選択保持部105を備えない。代わりに、処理システム100’は加熱部104と冷却部106との間に搬送部107を備える。搬送部107は、加熱部104とほぼ同じ高さにすることができる。別の実施形態では、搬送部107が取り除かれ、加熱部104が冷却部106に直接連結されていてもよい。さらに別の実施形態では、処理システム100’は適切に配置された他の適切な部品、組立品、および処理部を備えてもよい。
【0062】
図7Aは、開示された技術の実施形態による
図1の処理システム100に適した搬送台108の例の斜視図である。
図7Aに示されるように、搬送台108は、1つ以上の横断部材182を搬送する搬送台基部180を備えることができる。搬送台基部180は、搬送台基部180に搬送される物品101(
図1)の少なくとも1つの形状または寸法を基に、任意の適切な形状を有することができる。例えば、図示された実施形態では、搬送台基部180は略矩形状を有し、搬送台基部180の第1端180aと第2端180bとの間に延在する第1側部181aと第2側部181b(まとめて側部または側部181と呼ぶ)とを備える。別の実施形態では、搬送台基部180は、略楕円、正方形、および/または他の適切な形状を有することができる。
【0063】
図7Aに示されるように、第1側部181aと第2側部181bは、それぞれ多孔板185を備える。多孔板185は第1支持部184と第2支持部186とを有し、第1支持部184と第2支持部186は多孔板185から離れるように延在する。第1支持部184は搬送台基部180の内部領域に向かって延在し、第2支持部186は第1支持部184と反対方向に延在する。第1支持部184と第2支持部186は、どちらも第1端180aと第2端180bとの間を横断するように延在する。第1支持部184は、搬送台108で搬送される1つ以上の物品101を支持するように構成されてもよい。第2支持部186は、ローラ122(
図1)または処理システム100の他の適切な部品と係合するように構成されてもよい。第1端180aと第2端180bは、1本以上の端部棒183を備える(説明の便宜上、両端に3本ずつ示されている)。別の実施形態では、第1端180aと第2端180bは、代わりに横断部材182を備えることができる。
【0064】
横断部材182は、第1側部181aと第2側部181bとの間に延在する細長い部品を備えることができる。横断部材182は、略円形、矩形、立方体、楕円、または任意の他の適切な断面を有することができる。図示された実施形態では、説明の便宜上、一対の横断部材182が図示されている。別の実施形態では、搬送台基部180は互いに略平行な2つ、3つ、4つ、または任意の適切な数の横断部材182を保持することができる。さらに別の実施形態では、搬送台基部180は、
図7Aに示されるように、2つの横断部材182の代わりに1つの横断部材182を、第1端180aと第2端180bとの間の特定の位置に保持することができる。
【0065】
前述の実施形態のいずれにおいても、搬送台基部180と横断部材182の種々の部品は、ステンレス鋼、アルミニウム、プラスチック、または十分な機械的強度を有する他の適切な材料で製造されてもよい。ある実施例では、第1側部181aと、第2側部181bと、第1端180aと、第2端180bはステンレス鋼で製造されてもよく、第1支持部184と横断部材182はポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、または他の適切なプラスチック材料で製造されてもよい。別の実施例では、搬送台基部180と横断部材182は全てステンレス鋼またはプラスチック材料で製造されることができる。さらに別の実施例では、搬送台基部180と横断部材182は、他の適切な製造材料の組み合わせでもよい。
【0066】
稼働時、搬送台基部180は、1つ、2つ、または任意の適切な数の物品101を保持し支持することができる。例えば、
図7Bを参照しながらより詳細に後述するように、物品101は、横断部材182および/または第1端180aと第2端180bに、網を用いて固定あるいは取り付けてもよい。別の実施形態では、物品101は、留め具、紐、ベルト、ハンガー、および/または他の適切な取付機構を用いて固定あるいは取り付けてもよい。
【0067】
図7Aでは、搬送台108は、特定の部品を有するように図示されているが、別の実施形態では、搬送台108はさらに追加のおよび/または異なる部品を他の適切な配置で備えることもできる。例えば、搬送台基部180は、第1支持部184に固定されたおよび/またはそれに支持された基台部材(例えば、不図示の板、薄板、網など)を備えてもよい。
図7Bと7Cとを参照しながらより詳細に後述するように、別の実施形態では、搬送台108は横方向部材188(
図7B)を備えてもよい。
【0068】
図7Bは、開示された技術の実施形態による横方向部材を備えた搬送台108の平面図である。
図7Bに示されるように、搬送台108は、第1側部181aの近傍の第1横方向部材188aと、第2側部181bの近傍の第2横方向部材188bとを備えることができる。第1横方向部材188aと第2横方向部材188bとは、第1端180aと第2端180bとの間に横方向に延在する。ある実施形態では、横方向部材188aと188bとは、それぞれ第1側部181aと第2側部181bと形状および寸法がほぼ類似する。別の実施形態では、横方向部材188aと横方向部材188bは他の適切な形状および寸法を有することができる。さらに別の実施形態では、横方向部材188aと188bとは互いに別の形状および/または寸法を有してもよい。以下、
図7Cを参照しながら、横方向部材188の例を説明する。
【0069】
第1横方向部材188aと第2横方向部材188bとは、自在に移動でき、それぞれ第1側部181aと第2側部181bに対して相対的に配置を変えてもよい。
図7Bに図示された実施形態では、第1横方向部材188aと第1横方向部材188bとは、それぞれ第1側部181aと第2側部181bから同じ距離Dだけ離れている。別の実施形態では、第1横方向部材188aと第2横方向部材188bとは、それぞれ第1側部181aと第2側部181bと接して、物品101に接する、あるいは他の適切な位置にあってもよい。さらに別の実施形態では、第1横方向部材188aと第2横方向部材188bとは、それぞれ第1側部181aと第2側部181bと異なる距離(不図示)に離れていてもよい。
【0070】
図8A−8Eを参照しながらより詳細に後述するように、発明者は、搬送台108の特定の構造的特徴が物品101個々の加熱特性に影響を与えることを発見した。そのような構造的特徴には、横断部材182を作る材料、横方向部材188aと188bとの位置、ならびに横方向部材188aと横方向部材188bを作る材料が含まれる。その結果、(1)横断部材182および/または横方向部材188aと188bとのそれぞれを作る材料の選択、および/または(2)第1側部181aと第2側部181bに対する横方向部材188aと188bそれぞれの相対位置の調整によって目標加熱特性を達成してもよい。
【0071】
図7Bに示されるように、搬送台108は網189を備え、この網189は、横断部材182および/または第1端180aと第2端180bから下げられ、それらに留められ、あるいはそれらに取り付けられている。網189は、複数の物品101を搬送する。図示された実施形態では、網189は2つの層を有し、層と層との間に物品101を備えるように図示されている。別の実施形態では、網189は物品を1層で、および/または他の適切な方法で搬送することができる。網189に適した網製品の1つ(#G−632896801)が、ニューヨーク州バッファローのGreenbelt Industries, Inc.(グリーンベルト・インダストリーズ社)から提供されている。前述のとおり、別の実施形態では、搬送台108は、物品101を搬送するように構成された他の適切な部品を備えてもよい。
【0072】
図7Cは、開示された技術の実施形態による
図7Bの搬送台108に適した横方向部材188の例の側面視断面図である。
図7Cに示されるように、横方向部材188は、複数の孔194を有する基部192を備えることができる。図示された実施形態では、基部192は略矩形の板を備える。別の実施形態では、基部192は、薄板、棒、円筒、または適切な形状の他の適切な構造を備えることもできる。孔194は、横断部材182(
図7B)が貫通可能な形状および寸法にすることができる。
図7Cには説明の便宜上、5つの孔194が図示されている。別の実施形態では、基部192は、2つ、3つ、4つ、6つ、7つ、または任意の他の適切な数の孔194を備えることができる。
【0073】
図7Cに示されるように、基部192は、基部192の端部193から対応する孔194まで延在する1つ以上の開口195を備えることもできる。図示された実施形態では、説明の便宜上、2つの開口195が図示されている。別の実施形態では、基部192は、1つ、3つ、または他の適切な数の開口195を備えることができる。一部の実施形態では、開口195にねじを切って、位置決め部品196(例えば、セットねじ、ピン、圧縮取付具など)と係合するようにすることができる。別の実施形態では、開口195はなくてもよく、基部192は、摩擦、ばね(不図示)、磁石、または他の適切な係合機構によって、横断部材182と係合してもよい。
【0074】
前述のとおり、発明者は、搬送台108の特定の構造的特徴が、マイクロ波エネルギーが作用されたとき、個々の物品101の加熱特性に影響を与えることを発見した。
図1の処理システム100とほぼ類似する処理システムで、模擬組成物を有する物品101を殺菌する種々の試験が行われた。物品101は、
図7A−7Cに図示された搬送台108にほぼ類似した搬送台108で搬送されて、水に浸漬された。
【0075】
模擬組成物は、種々の温度条件での加熱に応じた観察可能な影響が現れるように構成されている。一部の実施形態では、この模擬組成物は以下の成分の組み合わせを含むことができる。
・褐色化前駆体
・担体
・誘電性調整剤
・粘性調整剤
・水
褐色化前駆体は、アミノ酸(例えば、リジン、ロイシン、アスパラギン、グリシンなど)と、還元糖(例えば、リボース、グルコース、グリセルアルデヒド、ガラクトースなど)とを含むことができる。担体は、模擬組成物の他の成分の担持に適した基質材料を含むことができる。担体の例は、ジャガイモ、卵白、および/または他の適切な材料を含むことができる。誘電性調整剤は、蔗糖、塩、または模擬組成物の誘電特性を変えるまたは影響を与えるのに適した他の材料を含むことができる。粘性調整剤は、ゲランガム、澱粉、植物ガム、ペクチン、または食料成分の他の適切な増粘剤、乳化剤、または安定剤を含むことができる。
【0076】
試験中に使用された模擬組成物の例の重量パーセントは以下である。
・ゲランガム:0.5−1.5%、約0−10mMの塩化カルシウムを含む
・蔗糖:0−50%
・塩化ナトリウム:0−300mM
・D−リボース:0.5−2%
・リジン:0.5−2%
・水:42.6−98.5%
上記組成物は以下の過程で作られてもよい
・ゲランガムを水に加え、室温で約1時間攪拌する。
・上記ゲランガムと水を約90°Cに加熱する。
・望ましいゲル強度を基に決定した量の塩化カルシウムを加える。
・90°Cで1分間攪拌し、加熱を停止する。
・混合物温度が約60°Cになったらリボースとリジンを加える。
・混合物を皿に注ぐ。
【0077】
理論による束縛はないが、アミノ酸(例えば、リジン)を還元糖(例えば、D−リボース)と共に加熱したとき、D−リボースは、弱酸性または中性条件でエノール化することにより、リジンと反応して模擬組成物を褐色化させると考えられている。褐色化すなわち色変化の程度は、反応が生じる温度に関連する。その結果、模擬組成物の色変化を観察することによって、加熱特性を導き出すことができる。色変化を観察する技術の例には、色温度測定、光反射測定、および/または他の適切な技術がある。
【0078】
模擬組成物の種々の成分は、対象材料(例えば、食料)と物理的特性が少なくともほぼ一致するように調整することができる。例えば、塩化カルシウムの量は、対象材料の硬度を基に模擬組成物のゲル強度すなわち硬度を達成するように調整されてもよい。誘電性調整剤の量は、対象材料の誘電率と少なくともほぼ一致するように調整されてもよい。粘性調整剤の量は、対象材料の粘度と少なくともほぼ一致するように調整されてもよい。水の量は、対象材料の含水量すなわち水濃度を基に調整してもよい。
【0079】
模擬組成物の種々の実施形態を用いて、
図1の処理システム100(または類似の処理システム)の稼働特性を達成および/または調整してもよい。例えば、模擬組成物を用いて、処理システム100に使用されるときの搬送台108を較正してもよい。別の実施例では、模擬組成物を用いて、例えば処理後の色変化の観察により、処理システム100の加熱効率を検証してもよい。さらに別の実施例では、模擬組成物を用いて処理システム100の加熱特性を決定し、その加熱特性を基に処理を調整して所望の加熱結果を達成してもよい。
【0080】
図8A−8Eは、開示された技術の実施形態による試験結果を図示する。具体的には、
図8A−8Eは、構造的特徴が種々の搬送台108の平面図と、模擬組成物を観察して決定された対応する加熱特性の例とを示す。具体的には、
図8Aは、複数のステンレス鋼の横断部材182と、2つのステンレス鋼の横方向部材188とを備える搬送台108を図示する。
図8Bは、複数のポリエーテルイミド横断部材182’と、2つのステンレス鋼の横方向部材188とを備える搬送台108を図示する。
図8Cは、複数のポリエーテルイミド横断部材182’と、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’とを備える搬送台108を図示し、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’は、どちらも第1側部181aと第2側部181bおよび物品101から離れている。
図8Dは、複数のポリエーテルイミド横断部材182’と、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’とを備える搬送台108を図示し、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’は第1側部181aと第2側部181bから離れ、物品101に接している。
図8Eは、複数のポリエーテルイミド横断部材182’と、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’とを備える搬送台108を図示し、2つのポリエーテルイミド横方向部材188’は物品101から離れ、第1側部181aと第2側部181bに接している。
【0081】
図8A−8Eに明確に図示されているように、搬送台108の種々の構造的特徴により、物品101の温度特性は大きく異なる。理論による束縛はないが、搬送台108の構造的特徴は、物品101(
図1)のマイクロ波エネルギー吸収または反射に影響し、この影響は、物品101近傍の浸漬流体110(
図1)の不連続性の発生、変化、または消滅によると考えられている。例えば、マイクロ波エネルギーが搬送台108内の物品101に作用するとき、横方向部材188aと188b(
図7B)とによって浸漬流体110の不連続性が発生する場合がある。この不連続性は、個々の物品101の表面あるいはその周囲の定在波の形成に影響し、そのため、マイクロ波エネルギーの吸収または反射のパーセンテージに影響する場合がある。
【0082】
前述の認識を基に、(1)個々の横断部材および/または横方向部材188aと188bとを製造する材料の選択、および/または(2)個々の横方向部材188aと188bとの位置の調整によって、
図1の処理システム100の目標加熱特性を達成してもよい。例えば、
図9は、開示された技術の実施形態による滅菌または殺菌用の
図1の処理システム100の調整操作の過程200を示すフローチャートである。
図9に図示されるように、過程200は、種々の温度条件の加熱に応じて観察可能な影響が現れるように構成された模擬組成物の物品(例えば、食品)の処理を含むことができる(過程202)。例えば、特定の実施形態では、物品の処理には、
図1の処理システム100、
図6の処理システム100’、または他の適切な処理システムの中で物品を処理することが含まれる。別の実施形態では、物品の処理には、熱風、熱水、蒸気、または他の適切な熱媒体による物品の加熱が含まれる。
【0083】
過程200は、模擬組成物の物品の加熱様式の決定を含むこともできる(過程204)。ある実施形態では、模擬組成物の薄片や積層、または別の適切な状態の色特性を監視することによって、加熱様式を決定することができる。別の実施形態では、加熱様式は、模擬組成物の粘性、ゲル化の特性、および/または他の特性を監視することで決定することもできる。過程200は、決定した加熱様式が閾値よりも大きいかを判定する決定工程を含むことができる(過程206)。
【0084】
ある実施形態では、閾値は物品の加熱効果のばらつきのパーセンテージである。別の実施形態では、閾値は他の適切な値を含むことができる。決定した加熱様式が閾値より大きいと決定したら、過程200は、搬送台構成を保持することを含むことができる(過程210)。決定した加熱様式が閾値より大きくないと決定したら、過程200は、搬送台構成を調整することを含むことができる(過程208)。
【0085】
前述のとおり、搬送台構成の調整は、(1)個々の横断部材182(
図7B)および/または横方向部材188aと188b(
図7B)との製造材料の選択、または(2)横方向部材188aと188bとの個々の位置の調整のうち、少なくとも1つを含むことができる。次に、過程200は、工程202の模擬組成物の他の物品の処理に戻る。例えば、ある実施形態では、製造材料の選択は、横断部材182および/または横方向部材188aと188b用の金属(または金属合金)材料とプラスチック材料との間での選択を含むことができる。別の実施例では、製造材料の選択は、横断部材182(または横方向部材188aと188b)のそれぞれに異なる材料を選択することを含むことができる。他の実施例では、製造材料の選択は、搬送台108の前述の部品のうち少なくとも1つに適した他の材料での間の選択を含むことができる。
【0086】
図7A−8Eを参照しながら、搬送台108は1列の物品101を搬送するように構成されていると説明したが、別の実施形態では、搬送台108と処理システム100とは、それぞれ2列、3列、または任意の適切な列数の物品101を処理し、搬送するように構成されてもよい。例えば、
図10は、処理システム100’の断面図を示す。処理システム100’は搬送台組立品108’を受け取るように構成された搬送筐体123を有し、搬送台組立品108’は第1搬送台108aと第2搬送台108bとを備え、第1搬送台108aと第2搬送台108bは1組以上の接続具304によって互いに連結されている。第1搬送台108aと第2搬送台108bは、それぞれが網189を備え、網189は、第1列物品101aと第2列物品101bを保持するように構成されている。
【0087】
ある実施形態では、第1搬送台108aと第2搬送台108bは構造および機能がほぼ類似している。例えば、第1搬送台108aと第2搬送台108bの各々は、先に
図7A−7Cを参照しながら説明した搬送台108とほぼ類似したものでよい。別の実施形態では、第1搬送台108aと第2搬送台108bは、追加のおよび/または異なる部品を他の適切な構成で備えることもできる。さらに別の実施形態では、第1搬送台108aと第2搬送台108bは、寸法、形状、または他の特性が異なる物品101の搬送に適した別の構成を有することができる。
【0088】
図10に示されるように、図示された実施形態では、処理システム100’は、並列の2つのマイクロ波組立品114aとマイクロ波組立品114bを備えることができる。各マイクロ波組立品は、マイクロ波源116aとマイクロ波源116bを2組有する。マイクロ波源116aとマイクロ波源116bは、搬送筐体123内で物品101aと物品101bに対応するマイクロ波窓125(
図1)からマイクロ波エネルギー117をほぼ同時に供給するように構成されている。別の実施形態では、処理システム100’は、並列のマイクロ波組立品114(不図示)を3組、4組、または任意の適切な組数備え、これらのマイクロ波組立品114を、搬送台108を2台、3台、または任意の適切な数有する搬送台組立品108’を処理するように構成することもできる。
【0089】
図10に示されるように、図示された実施形態では、処理システム100’の搬送機構は、搬送ベルト組立品302と、1つ以上の案内軌道129とを備えることができる。図示された実施形態では、搬送ベルト組立品302は、モータ(不図示)または他の適切な種類の作動装置で駆動されるベルト306を備える。ベルト306は、その表面から搬送台組立品108’に向かって延在する複数の接触部308を備えることができる。ベルト306が搬送筐体123に沿った方向に動いているとき、接触部308は接続具304と接触するように構成されている。稼働時、搬送台組立品108’は、角をそれぞれ案内軌道129と接触させることができる。ベルト306が搬送筐体123に入る方向に動くと、接触部308は、搬送台組立品108’を案内軌道129に沿って搬送筐体123に入れることができる。ベルト306と接触部308の実施例が
図11Aと
図11Bを参照しながらより詳細に後述される。別の実施形態では、搬送機構は、
図1に示されるように、ローラ、案内溝、および/または他の適切な部品を備えることもできる。
【0090】
図11Aは、
図10の処理システムに適した2つの搬送台を有する搬送台組立品108’の概略平面図である。
図11Bは、搬送台組立品108’の概略A−A線端面図である。
図11Aおよび
図11Bでは、分かり易いように網189の図示は省略されている。
図11Aおよび
図11Bに示されるように、搬送台組立品108’は、第1搬送台108aと第2搬送台108bとを備え、第1搬送台108aと第2搬送台108bは3組の接続具304を用いて互いに並列に連結されている。接続具304の各組は2つの接続棒304aと接続棒304bとを備え、これらの接続棒は金属製でも樹脂製でもよく、あるいは十分な機械的特性がある他の適切な材料で製造されてもよい。接続棒304aと接続棒304bの各々は、第1搬送台108aと第2搬送台108bの側部181に、溶接、ねじ、固定具(例えば、ナットとボルト)、および/または他の適切な機構で連結することができる。別の実施形態では、第1搬送台108aと第2搬送台108bは、任意の適切な数の接続部を有する他の適切な組数の接続具304で連結することができる。
【0091】
図11Aに示されるように、各接続具304は、搬送ベルト306の接触部308と対応することができる。前述のとおり、各接触部308は、接続具304の接続棒304bと接触するように構成されている。稼働時、搬送ベルト306が矢印310で示した方向に沿って動くと、各接触部308は、搬送台組立品108’を個々の接続棒304bで同じ方向に駆動することができる。
【0092】
搬送台組立品108’の種々の実施形態は、搬送筐体123(
図10)内のマイクロ波エネルギーの漏れを低減、あるいは防止することができる。例えば、稼働中、第1搬送台108aの(金属または他の適切な材料で製造された)側部181は、マイクロ波源116a(
図10)から放射されたマイクロ波エネルギー117(
図10)が第1搬送台108aから漏れ出て第2搬送台108bに作用するのを低減、あるいは防止することができ、またその逆も可能である。放射されたマイクロ波エネルギー117の流れをそのような方法で制御することにより、第1搬送台108aと第2搬送台108bとでそれぞれ搬送される物品101aと物品101bの加熱様式および加熱速度がほぼ均等になる。
【0093】
図12には、別の搬送台組立品108’が示されており、この搬送台組立品108’は、第1搬送台108aと、第2搬送台108bと、第3搬送台108cとを備え、これらは複数組の接続具304を用いて並列に連結されている。
図12では、搬送台108a―108cは互いにほぼ類似したものにすることができる。別の実施形態では、搬送台108a―108cの少なくとも1つは、構造および/または機能が他の搬送台108a―108cと異なることができる。さらに別の実施形態では、搬送台組立品108’は4つまたは任意の他の適切な数の搬送台組立品108を備え、これらを適切な数の組の接続具304で並列に連結することもできる。
【0094】
本開示の具体的な実施形態を本明細書に説明目的で記述してきたが、以上から、種々の変更形態を本開示から乖離することなく実施できることが明らかである。また、ある実施形態の複数の構成要素を、他の実施形態の構成要素と組み合わせてもよく、あるいは他の実施形態にその構成要素の代わりに組み合わせてもよい。したがって、本技術は、添付の特許請求の範囲のみで規定される。