特許第6671311号(P6671311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671311
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   B60H1/00 102C
   B60H1/00 102P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-71118(P2017-71118)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172018(P2018-172018A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】大場 工
(72)【発明者】
【氏名】下坂 隆志
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−249917(JP,A)
【文献】 特開2004−074816(JP,A)
【文献】 特開2007−276732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、該熱交換器の挿入される開口部を有した空調ケースと、前記熱交換器に接続され熱交換媒体の供給・排出を行う配管と、該配管を前記空調ケースに対して固定する固定用カバーとを備えた車両用空調装置において、
前記開口部は、前記空調ケースにおける車両後方側の下面に設けられ、前記熱交換器は前記開口部から上方に向かって挿入され、前記配管は前記空調ケースの車両幅方向の側面に前記固定用カバーによって固定され、
前記空調ケースには、前記熱交換器を挿入する際に前記固定用カバーを固定位置へと案内するガイド部と、
前記固定位置で前記固定用カバーと当接する規制部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記固定用カバーは、前記規制部によって位置決めされ固定部材で固定されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記熱交換器は、ヒートポンプの室内熱交換器であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記ガイド部は、前記空調ケースの側面において下方に向かって開口して形成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記規制部は、前記車両幅方向に延在した第1の規制部と、
車両前方側へと延在した第2の規制部と、
を有することを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され空調ケース内の熱交換器によって温度調整のなされた空気を送風することで車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、ハウジングの内部に冷却手段であるエバポレータと、該エバポレータの下流側に設けられ加熱手段であるコンデンサと、該コンデンサと並列に配置されたヒータコアとを備えている。そして、隣接するように配置されたコンデンサとヒータコアとをハウジングに対して下方、側方という異なる方向から内部へと挿入して取り付けている。
【0003】
また、特許文献2に係る車両用空調装置では、空調ユニットケーシングの内部にヒータコアが収納され、冷却水の導入・排出されるヒータ配管が前記ヒータコアに接続されている。このヒータ配管は、ケーシングの側壁から外部へと延出した後、略直角に折曲され上方へと延在している。そして、ヒータ配管の端部は、該端部形状に対応して窪んだ固定ブラケットと、該固定ブラケットを覆うように接続される着脱ブラケットとの間に挟み込まれた状態で前記ケーシングの端部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−160460号公報
【特許文献2】特開2003−72361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の車両用空調装置のコンデンサのように、下方からハウジングの内部へと収納する場合、その配管もコンデンサと共に前記ハウジングの外部に取り出された状態で側壁に沿って上方へと移動して所定の固定位置へと到達することになる。そのため、例えば、特許文献2に開示された固定ブラケット及び着脱ブラケットのように、配管の端部を収納可能に水平方向に延在するように窪んだ構造では、上方へと移動しながら固定位置へと到達する配管の端部が前記固定ブラケットの下側にぶつかり固定することが困難である。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、空調ケースに対して熱交換器を下方から組み付ける際に配管を容易且つ確実に固定することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、熱交換器と、熱交換器の挿入される開口部を有した空調ケースと、熱交換器に接続され熱交換媒体の供給・排出を行う配管と、配管を空調ケースに対して固定する固定用カバーとを備えた車両用空調装置において、
開口部は、空調ケースにおける車両後方側の下面に設けられ、熱交換器は開口部から上方に向かって挿入され、配管は空調ケースの車両幅方向の側面に固定用カバーによって固定され、
空調ケースには、熱交換器を挿入する際に固定用カバーを固定位置へと案内するガイド部と、
固定位置で固定用カバーと当接する規制部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車両用空調装置を構成する空調ケースには、車両後方側の下面に開口部を有し、熱交換部が開口部から上方に向かって挿入自在に設けられると共に、熱交換器に接続され熱交換媒体の供給・排出を行う配管が、空調ケースにおける車両幅方向の側面に固定用カバーによって固定されると共に、空調ケースには、熱交換器を挿入する際に固定用カバーを固定位置へと案内するガイド部と、固定位置で固定用カバーと当接する規制部を備えている。
【0009】
従って、開口部を通じて熱交換器を空調ケース内へ挿入する際、固定用カバーが空調ケースのガイド部によって所定の固定位置へと導かれると共に、固定位置において固定用カバーが規制部へと当接することで位置決めされる。その結果、空調ケースに対して熱交換器を下方から挿入して組み付ける際、固定用カバーを介して配管を所定の固定位置へと容易に案内し位置決めした状態で確実に固定することができる。
【0010】
また、固定用カバーを、規制部によって位置決めし固定部材で固定することにより、ガイド部によって固定位置へ位置決めされた固定用カバーを固定部材でより強固に固定することができる。
【0011】
さらに、熱交換器を、ヒートポンプの室内熱交換器とすることにより、固定用カバーを耐熱材から構成することで、内燃機関の冷却水回路と接続されるヒータコアの配管より高温となる室内熱交換器の配管を固定用カバーで保持可能となり、空調ケースを耐熱材で形成する必要がなくなるため製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
さらにまた、ガイド部を、空調ケースの側面において下方に向かって開口して形成することにより、熱交換器を空調ケースの開口部を介して上方へと挿入した際、同時に上方へと移動する固定用カバーを容易に挿入ガイドの開口した下方から内部へと挿入することが可能となる。
【0013】
またさらに、規制部が、車両幅方向に延在した第1の規制部と、車両前方側へと延在した第2の規制部とを有することにより、第1の規制部に当接することで固定用カバーの車両前後方向の移動を規制すると共に、第2の規制部に当接することで固定用カバーの車両幅方向の移動を規制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、空調ケースの下面に形成された開口部を通じて熱交換器を内部へ挿入する際、配管を空調ケースに対して固定する固定用カバーが空調ケースのガイド部によって所定の固定位置へと導かれ、空調ケースの規制部に対して固定用カバーが当接することで位置決めされる。その結果、空調ケースに対して熱交換器を下方から挿入して組み付ける際、固定用カバーを介して配管を所定の固定位置へと容易に案内し位置決めした状態で確実に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の一部断面側面図である。
図2図1に示す車両用空調装置の全体正面図である。
図3図3Aは、図1に示す車両用空調装置の固定用カバー近傍の拡大側面図であり、図3Bは、図3Aの空調ケースから固定用カバー及び配管接続部を取り外した状態を示す拡大側面図である。
図4図4Aは、図2に示す車両用空調装置における配管接続部近傍の拡大正面図であり、図4Bは、図4Aの配管接続部近傍を下方から見た拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、車両用空調装置10は、図1に示される左側(矢印A方向)が車両の前方側(エンジンルーム側)となり、右側(矢印B方向)が車両の後方側(車室内側)となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を車両前方とし、矢印B方向を車両後方として説明する。
【0018】
この車両用空調装置10は、図1及び図2に示されるように、空気の各通路12を構成する空調ケース14と、該空調ケース14の内部に配設され前記空気を冷却するエバポレータ16と、該空気を加熱するヒートポンプの室内熱交換器(熱交換器)18と、前記各通路12内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構20とを有する。なお、ダンパ機構20は、図示しない駆動手段の駆動作用下にそれぞれ回動動作する。
【0019】
空調ケース14は、例えば、車両の幅方向(図2中、矢印C方向)に分割可能に設けられた第1及び第2分割ケース22、24からなり、その上方には乗員の顔近傍に送風を行うベント送風口26と、該ベント送風口26と隣接し車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うデフロスタ送風口28とが開口している。
【0020】
一方、空調ケース14の後方側(図1中、矢印B方向)には、下方に向かって開口し乗員の足元近傍に送風を行うフット送風口30が形成される。なお、空調ケース14の側部には、エバポレータ16の上流側となる位置に外気・内気を取り込む内外気切替ユニット(図示せず)がダクトを介して連結されている。
【0021】
また、空調ケース14の下部には、車両後方側となる位置に車両の幅方向(図2中、矢印C方向)に沿って長尺な挿入口(開口部)32が略長方形状に開口し、後述する室内熱交換器18が外部から内部へと挿入可能に形成される。この挿入口32は、第1分割ケース22と第2分割ケース24とに跨るように形成されている。
【0022】
一方、空調ケース14の内部には、本実施の形態においては、例えば、挿入口32から車両前方側(矢印A方向)に向かって若干だけ傾斜した斜め上方(図1中、矢印D方向)に向かって延在するガイド壁34が形成される。このガイド壁34は、室内熱交換器18の厚さ寸法に対応した一定幅で一直線状に形成され、挿入口32から挿入された室内熱交換器18が前記ガイド壁34に沿って内部へと収納自在に設けられる。
【0023】
さらに、空調ケース14を構成する第1分割ケース22には、図1図4Bに示されるように、車両前方側(矢印A方向)となる上側部に、後述する室内熱交換器18の配管接続部66及び固定用カバー70を固定するための固定部36が設けられる。
【0024】
この固定部36は、図2に示されるように、第1分割ケース22の側壁22aから幅方向外側(矢印C1方向)に膨出するように設けられ、最も幅方向外側となる側壁が鉛直方向に延在する平面状に形成され、図2図3Bに示されるように、この側壁に形成され後述する固定用カバー70を案内する挿入ガイド(ガイド部)38と、該挿入ガイド38の下端部に設けられ該固定用カバー70の空調ケース14に対する移動を規制する相対的な規制リブ(規制部)40とを備える。
【0025】
挿入ガイド38は、図3Bに示されるように、下方に向かって開口した断面略U字状に形成され、固定部36の側壁から突出したリブ状に形成され、車両の前後方向(矢印A、B方向)に沿った一定幅を有しガイド壁34と略平行に延在した直線部42と、該直線部42の下部に形成され車両後方側(矢印B方向)に向かって徐々に拡幅した拡幅部44とから構成される。換言すれば、直線部42は、ガイド壁34(図1参照)の延在方向となる矢印D方向に沿って延在するように形成され、一方、拡幅部44は、車両後方側に向かって徐々に幅広状となるように形成される。
【0026】
また、挿入ガイド38の上方には、図3Bに示されるように、後述する第1カバー部材72を固定するための固定ねじ(固定部材)46が螺合される第1ねじ孔48が形成され、一方、前記挿入ガイド38の内側には、後述する第2カバー部材74を固定するための固定ねじ46が螺合される第2ねじ孔50が形成される。
【0027】
規制リブ40は、図3B図4Bに示されるように、直線部42の車両前方側(矢印A方向)となる下端に設けられ、鉛直下方に向かって直線状に形成されると共に、第1分割ケース22の側壁22a側となる幅方向内側(矢印C2方向)に向かって延在した第1規制部52を有している。すなわち、第1規制部52は、車両前後方向と直交するように幅方向に延在した平面状に形成され、後述する第2カバー部材74を固定する固定ねじ46が挿通される孔部(図示せず)が形成される。
【0028】
また、規制リブ40は、図4A及び図4Bに示されるように、最も幅方向内側(矢印C2方向)となる端部に第1規制部52に対して車両前方側(矢印A方向)に向かって立設した第2規制部56を有している。すなわち、規制リブ40において、第1規制部52と第2規制部56とが略直交するように形成される。
【0029】
一方、図1に示されるように、空調ケース14の内部には、車両前方側(矢印A方向)にエバポレータ16が直立するように収納されると共に、該エバポレータ16の下流側、すなわち、車両後方側(矢印B方向)に室内熱交換器18が収納される。この室内熱交換器18は、挿入口32から延在したガイド壁34に沿って内部へと収納され、その上端部が空調ケース14の内壁面から幅方向に立設したホルダ58によって保持される。
【0030】
そして、空調ケース14には、エバポレータ16の上流側となる位置に接続された図示しないダクトを通じて内外気切替ユニットから空気が導入され、前記エバポレータ16を通過することで空気が冷却され、一方、室内熱交換器18を通過することで前記空気が加熱される。
【0031】
室内熱交換器18は、例えば、内部に熱交換媒体が循環し熱の吸収・排出を行う熱交換部60と、前記熱交換部60の両端部に設けられる一対のタンク部62a、62bと、下方に配置される一方のタンク部62aに接続され前記熱交換媒体を導入・排出する一組のヒート配管(配管)64a、64bとを含んだヒートポンプの室内熱交換器である。
【0032】
このヒート配管64a、64bはタンク部62aの下面に接続され、挿入口32を通じて空調ケース14の外部へと取り出され、前記タンク部62aに沿って第1分割ケース22の側壁22a側となる幅方向外側(矢印C1方向)へと延在した後、前記第1分割ケース22の側壁22aに沿うように略直角に折曲され車両前方側(矢印A方向)となる斜め上方にそれぞれ延在している。
【0033】
図1図4Aに示されるように、このヒート配管64a、64bの端部には配管接続部66が設けられ、この配管接続部66は、上下方向に配置された二本のヒート配管64a、64bを束ねて保持可能な長円状に形成され、前記ヒート配管64a、64bと連通した2つのポート68(図4A参照)が開口している。そして、配管接続部66は図示しないヒートポンプ回路と接続される。
【0034】
この配管接続部66には、その外周側を覆うように固定用カバー70が装着され、この固定用カバー70は、例えば、耐熱性を有した樹脂製材料から形成され、幅方向(図4A中、矢印C方向)に分割可能な第1及び第2カバー部材72、74から構成される。
【0035】
第1及び第2カバー部材72、74は、図4A及び図4Bに示されるように、例えば、樹脂製材料からそれぞれ断面略半長円状に形成され、前記第1カバー部材72が第1分割ケース22側(矢印C2方向)に設けられ、その合わせ面72aが断面略平面状で前記第2カバー部材74側(矢印C1方向)となるように配置される。
【0036】
また、第1カバー部材72の下部には、第1分割ケース22側となる幅方向内側(矢印C2方向)に向かって延在したアーム部76を有し、このアーム部76が、第1分割ケース22における固定部36の第1規制部52に当接すると共に、前記アーム部76の端部に形成され折曲したフック78が第2規制部56に当接するように係合される。このアーム部76には、第1分割ケース22の規制リブ40を固定するための第3ねじ孔54が形成されている。
【0037】
一方、第1カバー部材72の上部には、固定部36の第1ねじ孔48に臨むように孔部(図示せず)が形成され、固定ねじ46が挿通され前記第1ねじ孔48へと螺合されることで第1カバー部材72が固定部36に対して固定される。
【0038】
さらに、図3A及び図3Bに示されるように、固定部36に臨む第1カバー部材72の側面には、該固定部36側(矢印C2方向)に向かって突出し挿入ガイド38へ挿入される挿入部82が形成される。
【0039】
この挿入部82は、第1カバー部材72の合わせ面72aと略平行で所定高さだけ膨出した平坦状に形成され、挿入ガイド38の形状に対応した形状で形成される。また、挿入部82は、図3Bに示されるように、上部側に形成され一定幅で斜め上方に向かって延在した本体部84と、該本体部84の下部に形成され下方に向かって徐々に幅広状となった幅広部86とを有し、前記本体部84が挿入ガイド38の直線部42に挿入可能であり、幅広部86が拡幅部44に挿入可能に形成される。この本体部84は、挿入ガイド38の直線部42と略平行となるように、上方に向かって車両前方側(矢印A方向)へと傾斜するように形成される。
【0040】
そして、挿入部82が挿入ガイド38の内部に挿入されることで、第1カバー部材72が固定部36の所定位置へと位置決めされ、車両の前後方向(矢印A、B方向)への移動が規制された状態で保持される。なお、第1カバー部材72の内部には配管接続部66の半分が収納される。
【0041】
第2カバー部材74は、図4A及び図4Bに示されるように、第1カバー部材72に対して配管接続部66を挟んで反対側(矢印C1方向)に設けられ、その合わせ面74aが断面略平面状で前記第1カバー部材72の合わせ面72aと当接するように設けられる。これにより、第2カバー部材74と第1カバー部材72との内部に配管接続部66が収納され外周面を覆うように装着される。
【0042】
なお、第2カバー部材74は、第1カバー部材72に対して合わせ面74aを当接させた状態で、図4Bに示されるように、その下部に設けられた係合溝88に第1カバー部材72の爪部90が係合されることで仮組付み可能に形成される。
【0043】
また、第2カバー部材74には、その車両後方側(矢印B方向)にヒート配管64a、64bの挿通される一対の取り出し部92が形成されると共に、この取り出し部92の間には、図3Bに示されるように、固定部36の第2ねじ孔50に臨むように孔部(図示せず)が形成され、固定ねじ46が挿通され前記第2ねじ孔50へと螺合されることで第2カバー部材74が固定部36に対して固定される。
【0044】
ダンパ機構20は、図1に示されるように、エバポレータ16と室内熱交換器18との間に設けられる第1エアミックスダンパ96と、エバポレータ16の下流側においてバイパス通路98を開閉する第2エアミックスダンパ100と、ベント送風口26及びデフロスタ送風口28の送風状態を切り替える第1切替ダンパ102と、フット送風口30への送風状態を調整する第2切替ダンパ104とを有する。
【0045】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に室内熱交換器18を空調ケース14に対して組み付ける場合について説明する。なお、ヒート配管64a、64bの配管接続部66には予め固定用カバー70が装着されているものとする。
【0046】
先ず、図1示される空調ケース14の下方から室内熱交換器18の熱交換部60を挿入口32を通じて内部へと挿入することでガイド壁34に沿って斜め上方(図1中、矢印D方向)に向かって案内され収納されていく。また、同時に、ヒート配管64a、64bは、第1分割ケース22の下方及び側壁22aを回り込み、配管接続部66に装着された固定用カバー70が前記側壁22aに沿って斜め上方へと移動し固定部36に向かって接近していく。
【0047】
そして、室内熱交換器18をガイド壁34に沿ってさらに斜め上方へと移動させることで、上方のタンク部62bが空調ケース14のホルダ58へと接近すると共に、固定用カバー70の挿入部82が固定部36の挿入ガイド38に臨む位置となり、その本体部84が挿入ガイド38の拡幅部44から上方に向かって挿入されていく。この際、挿入ガイド38は、開口した下端部に挿入部82の挿入方向に向かって徐々に拡幅した拡幅部44を有しているため、前記挿入部82を内部へと容易に挿入することが可能となる。
【0048】
この室内熱交換器18をさらに上方へと移動させることで、上方のタンク部62bがホルダ58に保持され、下方のタンク部62aが挿入口32の内部へと収納されると共に、固定用カバー70における挿入部82は、その本体部84が挿入ガイド38の拡幅部44から直線部42の内部へと移動すると共に、幅広部86が拡幅部44に収納された状態となる。これにより、固定用カバー70は、第1分割ケース22の挿入ガイド38の内部に略同一形状の挿入部82が挿入されることで、車両の前後方向(矢印A、B方向)への相対的な移動が規制された状態となる(図3B参照)。
【0049】
また、図4Bに示されるように、第1カバー部材72のアーム部76が、挿入ガイド38の下端に設けられた第1規制部52に対して車両後方側(矢印B方向)で当接すると共に、フック78が第2規制部56に対して第1分割ケース22の側壁22a側(図4A中、矢印C2方向)で当接して係合される。これにより、固定用カバー70は、第1カバー部材72と第1規制部52との当接によって車両の前後方向(矢印A、B方向)への相対的な移動が規制され、第2規制部56との当接によって幅方向(矢印C方向)への移動も規制される。
【0050】
この際、固定用カバー70は、第1カバー部材72の孔部(図示せず)が第1及び第3ねじ孔48、54に臨み、第2カバー部材74の孔部が第2ねじ孔50に臨むように配置される。
【0051】
最後に、第1及び第2カバー部材72、74の孔部に固定ねじ46を挿通させ、それぞれ第1〜第3ねじ孔48、50、54へと螺合させることで、前記第1及び第2カバー部材72、74からなる固定用カバー70が固定部36に対して固定され、それに伴って、配管接続部66を含むヒート配管64a、64bが第1分割ケース22の固定部36に対して確実に固定される。これにより、空調ケース14に対する室内熱交換器18の組み付け作業が完了する。
【0052】
次に、上述したように室内熱交換器18が空調ケース14に組み付けられた車両用空調装置10の動作について図1を参照しながら説明する。
【0053】
先ず、車室内へ冷風を供給する冷房運転を行う場合には、図示しない乗員の操作に基づいて、第1エアミックスダンパ96が全閉状態となり、且つ、第2エアミックスダンパ100が全開状態となり、エバポレータ16の下流側とバイパス通路98とが連通した状態となる。また、第1切替ダンパ102がデフロスタ送風口28側へと回動し、ベント送風口26とバイパス通路98とを連通させた状態とする。これにより、図示しない送風機から空調ケース14へと供給されエバポレータ16によって冷却された空気が、バイパス通路98を通じて開口したベント送風口26へと供給され、車室内における乗員の顔近傍へと送風される。
【0054】
次に、上述した冷房運転から暖房運転へと切り換える場合には、図示しない乗員の操作に基づき、第1エアミックスダンパ96を全閉状態から回動させ、第2エアミックスダンパ100を回動させ全閉状態とすることでエバポレータ16の下流側とバイパス通路98との連通を遮断する。これにより、エバポレータ16によって冷却された空気が下流側の室内熱交換器18へと供給され、この室内熱交換器18を通過することで加熱された温風が、例えば、第2切替ダンパ104の回動作用下に開放されたフット送風口30を通じて車室内における乗員の足元近傍へと送風される。
【0055】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース14において、下方に開口した挿入口32を通じて室内熱交換器18を上方に向かって空調ケース14の内部へと挿入する際、ヒート配管64a、64bの端部を束ねる配管接続部66を覆った固定用カバー70は、幅方向内側(矢印C2方向)に設けられた挿入部82が空調ケース14の側壁22a(固定部36)に設けられた挿入ガイド38へと挿入されることで容易に所定の固定位置へと導かれる。また、空調ケース14に設けられた規制リブ40の第1規制部52へ固定用カバー70のアーム部76が当接し、該アーム部76の端部に設けられたフック78が第2規制部56へと係合されることで前記固定用カバー70の車両前後方向(矢印A、B方向)及び幅方向(矢印C方向)の移動が規制される。
【0056】
その結果、空調ケース14に対して室内熱交換器18を下方から挿入して組み付ける際、そのヒート配管64a、64bの端部に設けられた配管接続部66を空調ケース14の固定位置へと容易且つ確実に導いて位置決めすることができる。
【0057】
また、挿入口32を通じて空調ケース14の内部へ室内熱交換器18を挿入した後、規制リブ40によって車両前後方向(矢印A、B方向)と車両幅方向(矢印C方向)に位置決めされた固定用カバー70を固定ねじ46で固定部36に対して固定することで、より強固にヒート配管64a、64bの端部(配管接続部66)を空調ケース14へと固定することが可能となる。この規制リブ40は、本実施の形態のように、室内熱交換器18を車両前方側となる上方に向かって挿入する際に特に有効に機能する。
【0058】
さらに、加熱器として用いられるヒートポンプの室内熱交換器18におけるヒート配管64a、64bは、内燃機関の冷却水回路と接続されるヒータコアの配管と比較して高温となるため、一般的に、より耐熱性の高い部材で空調ケース14を形成する必要があるが、上述した実施の形態に係る車両用空調装置10では、耐熱材料を用いた固定用カバー70を採用することで、空調ケース14を耐熱材料から形成する必要がなく安価な材料で形成することができるため、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0059】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用空調装置 14…空調ケース
18…室内熱交換器 22…第1分割ケース
24…第2分割ケース 32…挿入口
36…固定部 38…挿入ガイド
40…規制リブ 42…直線部
44…拡幅部 46…固定ねじ
52…第1規制部 56…第2規制部
64a、64b…ヒート配管 66…配管接続部
70…固定用カバー 72…第1カバー部材
74…第2カバー部材 76…アーム部
78…フック 82…挿入部
84…本体部 86…幅広部
図1
図2
図3
図4