特許第6671318号(P6671318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671318パティキュレートフィルタの故障検出装置及び故障検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671318
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】パティキュレートフィルタの故障検出装置及び故障検出方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20200316BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20200316BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20200316BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F01N3/18 C
   F01N3/00 F
   F01N3/24 E
   F01N3/24 L
   F01N3/023 K
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-117948(P2017-117948)
(22)【出願日】2017年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-2355(P2019-2355A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 健介
(72)【発明者】
【氏名】小池 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 豪
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−96166(JP,A)
【文献】 特開2017−96153(JP,A)
【文献】 特開2016−205168(JP,A)
【文献】 特開2016−153737(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114518(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出装置(1)であって、
上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)と、
上記内燃機関の停止中に上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、粒子状物質が燃焼除去可能な再生温度(T)に加熱する再生制御部(10A)と、
上記内燃機関の始動を判定する始動判定部(10B)と、
上記内燃機関の運転中に排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部(10C)と、
上記再生制御部による加熱後に上記内燃機関が始動し、かつ排気中の水滴無と判定されたときに上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱制御部(10D)と、
上記加熱制御部による加熱後に、上記センサの出力値(S)に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定部(10E)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項2】
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出装置(1)であって、
上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)と、
上記内燃機関の停止時又は停止中に、上記センサの出力値を次回始動時の初期値(S1)として記憶する出力記憶部(10F)と、
上記内燃機関の始動を判定する始動判定部(10B)と、
上記内燃機関の運転中に排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部(10C)と、
上記内燃機関の次回始動後に、排気中の水滴無と判定されたときに上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱制御部(10D)と、
上記加熱制御部による加熱後に、上記センサの出力値(S)と上記初期値との差分に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定部(10E)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項3】
上記第一温度は、100℃以上500℃未満の範囲で選択される、請求項1又は2に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項4】
上記加熱制御部は、上記第一温度に代えて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分及び可溶性有機成分を除去可能な第二温度(T2)に加熱する、請求項1又は2に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項5】
上記第二温度は、200℃を超え500℃未満の範囲で選択される、請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項6】
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(F)の故障検出方法であって、
上記パティキュレートフィルタの下流側に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)を配設し、
上記内燃機関の停止中に上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を燃焼除去可能な再生温度に加熱する再生工程(S12)と、
上記再生工程による加熱後の上記内燃機関の始動を判定する始動判定工程(S13)と、
上記再生工程による加熱後の上記内燃機関の運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程(S14)と、
上記乾燥判定工程により排気中の水滴無と判定されたときに、上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱工程(S15)と、
上記加熱工程による加熱後に、上記センサの出力値(S)に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定工程(S16〜S19)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出方法。
【請求項7】
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(F)の故障検出方法であって、
上記パティキュレートフィルタの下流側に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)を配設し、
上記内燃機関の停止時又は停止中に、上記センサの出力値を次回始動時の初期値(S1)として記憶する出力記憶工程(S22)と、
上記出力記憶工程後の上記内燃機関の始動を判定する始動判定工程(S23)と、
上記内燃機関の次回始動後の運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程(S24)と、
上記乾燥判定部により排気中の水滴無と判定されたときに、上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱工程(S25)と、
上記加熱工程による加熱後に、上記センサの出力値(S)と上記初期値との差分に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定工程(S26〜S29)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出方法。
【請求項8】
上記第一温度は、100℃以上500℃未満の範囲で選択される、請求項6又は7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出方法。
【請求項9】
上記加熱工程において、上記第一温度に代えて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分及び可溶性有機成分を除去可能な第二温度(T2)に加熱する、請求項6又は7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出方法。
【請求項10】
上記第二温度は、200℃を超え500℃未満の範囲で選択される、請求項9に記載のパティキュレートフィルタの故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタの故障検出装置及び故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車エンジンの排出規制が厳しくなっており、排気通路にパティキュレートフィルタを設けて粒子状物質(すなわち、Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集することが行われている。粒子状物質は、導電性のSoot(すなわち、煤)を主成分とし、未燃の燃料やエンジンオイルに由来するSOF(すなわち、Soluble Organic Fraction;可溶性有機成分)を含む混合物である。また、粒子状物質を検出するPMセンサを設けて、パティキュレートフィルタの故障を速やかに検出することが要求されている。
【0003】
PMセンサは、例えば、絶縁性基体の表面に一対の電極を配置した電気抵抗式のセンサ素子を備え、素子表面に粒子状物質が堆積して一対の電極間が導通すると、PM堆積量に応じた電流出力が検出される。また、静電容量式のセンサ素子を備えるPMセンサがあり、例えば、一対の電極間の静電容量が粒子状物質の堆積と共に変化することを利用して、PM堆積量を算出する。このようなPMセンサをパティキュレートフィルタの下流側に配置することで、センサ出力に基づき、故障の有無を検出することができる。
【0004】
堆積型のPMセンサを用いた故障検出装置は、通常、周期的に実行される判定処理に先立ち、再生処理を行って、PMセンサに付着した粒子状物質を燃焼除去している。その場合、再生処理を行っている間は、判定処理が実行されないため、粒子状物質を検出可能な期間がその分短くなる。この検出可能な期間を長くするため、例えば、特許文献1には、エンジンにおけるPM排出量異常を検出する装置において、PMセンサを用いたエンジン始動時の異常診断に先立ち、エンジン停止時に加熱手段による粒子状物質の燃焼除去を実施することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2に開示されるフィルタの故障診断装置は、エンジン停止中にPMセンサの再生を行う再生制御手段を設けると共に、排気管の乾燥判定を行う乾燥判定手段を設けて、センサ再生の可否を判断している。例えば、乾燥判定されない状態でエンジン停止した場合は、センサ再生が中止され、センサ再生が完了する前にエンジンが始動した場合は、センサ再生が終了される。このような制御により、PMセンサが被水した状態で加熱されることによる被水割れが抑制され、始動後のセンサ再生が不要又は短くなるので、診断期間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5533477号公報
【特許文献2】特開2016−205168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エンジン始動時には、比較的多くの粒子状物質が排出されるため、特許文献1、2のように、エンジン停止中に再生処理を行うことで、エンジン始動後に速やかに故障判定を行い、パティキュレートフィルタの故障を早期に検出することが期待される。ところが、エンジン停止後、再始動までに時間が経過した場合には、排気管内の温度が低下して排気に含まれる水分が凝縮水となり、PMセンサが被水しやすい状態となる。
【0008】
冷間始動時のように排気管内に多量の水滴が存在する条件下で、エンジンが始動すると、排気流れに乗って水滴が移動し、PMセンサに取り込まれやすくなる。粒子状物質と共にセンサ素子の一対の電極間に付着する水分量が増大すると、電気抵抗や静電容量に影響を及ぼすためにセンサ出力が変化し、検出精度を低下させるおそれがある。したがって、従来は、冷間始動時には、排気管内が乾燥状態となってから改めて再生処理を行う必要があり、冷間始動時に排出された粒子状物質を検出できなかった。
【0009】
なお、特許文献2では、始動時に乾燥判定を行い、不成立の場合は低温での加熱を継続する処理を行うことで、始動後の再生処理を行わないようにしている。しかしながら、乾燥判定が成立するまで、粒子状物質及び水分が付着しないように、再生温度より低く排気温度より高い温度に保持し、乾燥後に粒子状物質の捕集を開始するもので、この場合も、冷間始動時に排出された粒子状物質は検出できない。また、乾燥後も適度に冷却されるまで粒子状物質が付着しないので、捕集開始のタイミングが変化すると出力ばらつきや誤差要因となりやすい。
【0010】
また、近年は、エンジンの燃焼制御技術の改良が進められており、暖気後のPM排出量が大きく低下する傾向にある。そのため、冷間始動時のPM排出量を検出可能として、パティキュレートフィルタの故障判定を早期に行うことが望まれている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、内燃機関の冷間始動時のように排気通路に水滴が存在する条件下でも、排出される粒子状物質を精度よく検出することができ、排気通路に配置されるパティキュレートフィルタの故障を早期に検出することができる、パティキュレートフィルタの故障検出装置及びパティキュレートフィルタの故障検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出装置(1)であって、
上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)と、
上記内燃機関の停止中に上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、粒子状物質が燃焼除去可能な再生温度(T)に加熱する再生制御部(10A)と、
上記内燃機関の始動を判定する始動判定部(10B)と、
上記内燃機関の運転中に排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部(10C)と、
上記再生制御部による加熱後に上記内燃機関が始動し、かつ排気中の水滴無と判定されたときに、上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱制御部(10D)と、
上記加熱制御部による加熱後に、上記センサの出力値(S)に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定部(10E)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出装置にある。
【0012】
本発明の他の態様は、
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出装置(1)であって、
上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)と、
上記内燃機関の停止時又は停止中に、上記センサの出力値を次回始動時の初期値(S1)として記憶する出力記憶部(10F)と、
上記内燃機関の始動を判定する始動判定部(10B)と、
上記内燃機関の運転中に排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部(10C)と、
上記内燃機関の次回始動後に、排気中の水滴無と判定されたときに上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱制御部(10D)と、
上記加熱制御部による加熱後に、上記センサの出力値(S)と上記初期値との差分に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定部(10E)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出装置にある。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出方法であって、
上記パティキュレートフィルタの下流側に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)を配設し、
上記内燃機関の停止中に上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を燃焼除去可能な再生温度に加熱する再生工程(S12)と、
上記再生工程による加熱後の上記内燃機関の始動を判定する始動判定工程(S13)と、
上記再生工程による加熱後の上記内燃機関の運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程(S14)と、
上記乾燥判定工程により排気中の水滴無と判定されたときに上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱工程(S15)と、
上記加熱工程による加熱後に、上記センサの出力値(S)に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定工程(S16〜S19)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出方法にある。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、
内燃機関(E)の排気通路(EX)に配設されたパティキュレートフィルタ(101)の故障検出方法であって、
上記パティキュレートフィルタの下流側に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気中の粒子状物質を表面に堆積させ、堆積量に対応する信号を出力する粒子状物質検出部(20)と、上記粒子状物質検出部を加熱するヒータ部(3)と、を有するセンサ(2)を配設し、
上記内燃機関の停止時又は停止中に、上記センサの出力値を次回始動時の初期値(S1)として記憶する出力記憶工程(S22)と、
上記出力記憶後の上記内燃機関の始動を判定する始動判定工程(S23)と、
上記内燃機関の次回始動後の運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程(S24)と、
上記乾燥判定部により排気中の水滴無と判定されたときに上記ヒータ部を作動させて、上記粒子状物質検出部を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度(T1)に加熱する加熱工程(S25)と、
上記加熱工程による加熱後に、上記センサの出力値(S)と上記初期値との差分に基づいて、上記パティキュレートフィルタの故障の有無を判定する故障判定工程(S26〜S29)と、を備える、パティキュレートフィルタの故障検出方法にある。
【発明の効果】
【0015】
上記一態様の故障検出装置において、再生制御部は、内燃機関の停止中にヒータ部を作動させて、粒子状物質検出部を所定の再生温度に加熱し、粒子状物質を燃焼除去する。その後、始動判定部により内燃機関の始動判定がなされると、乾燥判定部により水滴無と判定されるまで、粒子状物質検出部に粒子状物質が堆積する。加熱制御部は、乾燥判定部により水滴無と判定されると、ヒータ部を作動させて、粒子状物質検出部を所定の第一温度に加熱する。この第一温度は、堆積した粒子状物質に含まれる水分を除去可能であるものの粒子状物質は除去されない比較的低い温度であり、被水割れは抑制される。また、排気通路に水滴が存在しない状態となっているので、新たな水分は付着しない。つまり、この状態での粒子状物質検出部の出力値は、水分を含まない粒子状物質の量に対応しており、これに基づいて、故障判定部において、パティキュレートフィルタの故障検出を行うことができる。
【0016】
したがって、冷間始動時に堆積したものであっても、排気通路が乾燥状態となってから、粒子状物質に含まれる水分のみを除去することで、PM排出量を正確に検出することができる。あるいは、再生制御部による再生を行う代わりに、内燃機関の停止時又は停止中の出力値を次回始動時の初期値とし、粒子状物質検出部の出力値との差分を基に故障判定を行っても同様の効果が得られる。
そして、これら故障検出装置を用いて故障検出を行う方法として、上記したさらに他の態様の故障検出方法における再生工程又は出力記憶工程と、これら工程に続く始動判定工程、乾燥判定工程、加熱工程及び故障判定工程を順次実行することができる。これにより、比較的PM排出量が多い運転条件における出力値を用いて、速やかに故障判定を実施し、パティキュレートフィルタの故障検出を精度よく行うことができる。
【0017】
以上のごとく、上記態様によれば、内燃機関の冷間始動時のように排気通路に水滴が存在する条件下でも、排出される粒子状物質を精度よく検出することができ、排気通路に配置されるパティキュレートフィルタの故障を早期に検出することができる、パティキュレートフィルタの故障検出装置及びパティキュレートフィルタの故障検出方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1における、パティキュレートフィルタの故障検出装置を備える内燃機関の概略構成図。
図2】実施形態1における、PMセンサのセンサ素子の構成例を示す概略斜視図。
図3】実施形態1における、故障検出装置に設けられるPMセンサの全体断面図。
図4】実施形態1における、PMセンサの検出原理を説明するためのセンサ素子主要部の模式的な図。
図5】実施形態1における、故障検出装置において実行されるパティキュレートフィルタの故障検出処理のフローチャート図。
図6】実施形態1における、粒子状物質の構造を説明するための模式的な図。
図7】実施形態1における、PMセンサの出力値の時間変化を、比較形態1の故障検出処理による出力値の時間変化と比較して示すタイムチャート図。
図8】実施形態2における、PMセンサの検出原理を説明するためのセンサ素子主要部の模式的な図。
図9】実施形態2における、故障検出装置において実行されるパティキュレートフィルタの故障検出処理のフローチャート図。
図10】実施形態8における、PMセンサの出力値の時間変化を、比較形態1の故障検出処理による出力値の時間変化と比較して示すタイムチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
次に、パティキュレートフィルタの故障検出装置の実施形態1について、図1図7を参照して説明する。図1に示すように、内燃機関は、例えば、ディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)Eであり、過給機T/Cを備えた4気筒直噴エンジンとして構成されている。その排気通路である排気管EXには、パティキュレートフィルタ101が配設されており、パティキュレートフィルタ101の故障を検出するために、故障検出装置1が設けられる。排気管EXには、パティキュレートフィルタ101の上流側に、酸化触媒102が配置されている。パティキュレートフィルタ101の下流側には、センサとしてのPMセンサ2が配置されており、パティキュレートフィルタ101を通過して下流側へ排出される粒子状物質を捕集し、PM堆積量に対応する信号を出力する。
【0020】
図2に示すように、PMセンサ2は、粒子状物質検出部としてのセンサ素子20を有している。また、センサ素子20と一体に、センサ素子20に堆積する粒子状物質を加熱するためのヒータ部3が設けられる。センサ素子20は、細長い直方体形状の絶縁性基体23にて構成され、その一端側の表面(例えば、図2の左端側の上面)に、櫛歯状の一対の電極21、22を有する。センサ素子2の内部には、一対の電極21、22に対応する位置に、ヒータ部3を構成するヒータ電極31が埋設されている。一対の電極21、22から長手方向に延びるリード線21a、22aは、センサ素子2の他端側において端子部21b、22bを介して外部の電圧印加部24に接続し、一対の電極21、22に所定の検出用電圧を印加可能となっている。同様に、ヒータ電極31は、センサ素子2の他端側へ引き出されるリード線31a、31bを介して、図示しない車載バッテリ等の電源部に接続される。絶縁性基体23は、例えば、アルミナ等の絶縁性セラミックスからなり、一対の電極21、22、ヒータ電極31は、例えば、Pt等の貴金属電極からなる。
【0021】
図3に示すように、PMセンサ2は、センサ素子20が収容されるハウジングHと、ハウジングHの先端側に取付けられる排気側カバーC1と、基端側に取付けられる大気側カバーC2とを有している。センサ素子20は、その長手方向がPMセンサ2の軸方向Xと一致し、一対の電極21、22を有する一端側が、排気側カバーC1内に位置するように、筒状絶縁体H1を介してハウジングHの内周に保持固定される。PMセンサ2は、ハウジングHの外周に設けられるネジ部によって、排気管EX(例えば、図1参照)の管壁に取り付けられる。これにより、センサ素子20の一端側は、排気側カバーC1に保護された状態で、排気管EX内に突出位置し、排気管EX内を流通する排気に晒される。排気側カバーC1は、例えば、インナカバーC11とアウタカバーC12からなる二重容器状で、両カバーC11、C12に設けた通孔C11a、C12aを介して、排気が流通可能となっている。
【0022】
ここで、図4を参照して、PMセンサ2によるPM量の検出原理を説明する。電気抵抗式のPMセンサ2において、センサ素子20の絶縁性基体23の一表面には、一対の電極21、22が互いに離間し、かつ対向して配設されている。検出期間中には、例えば、一対の電極21、22間に、電圧印加部24によって所定の検出用電圧を印加することができる。これにより、一対の電極21、22間に発生する電界によって、センサ素子20の近傍に浮遊している粒子状物質(すなわち、図中のPM)が静電捕集される。絶縁性基体23の表面に、導電性の粒子状物質が徐々に堆積していき、一対の電極21、22間が粒子状物質によって接続されると導電パスが形成される。そのため、その出力特性は、導電パスが形成されるまでセンサ出力が0となる不感期間を示す。なお、静電捕集によらず、熱泳動や物理的な衝突を利用して、一対の電極21、22間に粒子状物質を堆積させてもよい。
【0023】
その後、センサ出力が立ち上がると、PM堆積量の増加と共に電極間抵抗が低下する。したがって、このときに流れる電流値を、電流計25にて検出することで、PM堆積量に応じた出力値が得られる。また、この不感期間に対応するPM堆積量以上の所定の閾値を設定することで、あるいは、不感期間の長さをパラメータとして、PM堆積量に基づくパティキュレートフィルタ101の故障判定が可能になる。
【0024】
図1において、PMセンサ2の検出信号は、エンジン制御装置(以下、ECUと称する)100に接続されるセンサ制御部10に随時入力される。
センサ制御部10は、再生制御部10Aを備え、エンジンEの停止中にヒータ部3を作動させて、センサ素子20を、粒子状物質が燃焼除去可能な再生温度Tに加熱する。
また、エンジン制御装置100内には、エンジンEの始動を判定する始動判定部10Bと、エンジンEの運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部10Cと、が設けられる。
センサ制御部10に設けられる加熱制御部10Dは、これらの判定結果に基づいて、再生制御部10Aによる加熱後にエンジンEが始動し、かつ排気中の水滴無と判定されたときにヒータ部3を作動させて、センサ素子2を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度T1に加熱する。
また、加熱制御部10Cによる加熱後に、PMセンサ2の出力値(以下、適宜、センサ出力値と称する)Sに基づいて、パティキュレートフィルタ101の故障の有無を判定する故障判定部10Eを備える。
これら各部を用いて故障検出装置1により実行される故障検出処理の詳細は、後述する。
【0025】
エンジンEには、各気筒に対応させて燃料噴射弁INJが設けられ、ECU100からの指令を受ける駆動装置103によって駆動されて、燃焼室内に燃料を直接噴射する。燃焼後の排気は、排気通路EXに排出され、酸化触媒102及びパティキュレートフィルタ101を通過する間に浄化される。パティキュレートフィルタ101は、例えば、公知のウォールフロータイプのフィルタ構造を有し、排気に含まれる粒子状物質を捕集する。具体的には、コーディエライト等からなる多孔質セラミックスハニカム構造体内に、ガス流路となる多数のセルを形成し、多数のセルの入口側又は出口側を互い違いとなるように目封じした構成のものが好適に用いられる。
【0026】
酸化触媒102は、例えば、コーディエライト等からなる多孔質セラミックスハニカム構造体からなる担体表面に、酸化触媒成分を担持して構成される。酸化触媒102の上流側には、排気中に燃料を添加するための燃料添加弁104が配設され、例えば、パティキュレートフィルタ101の再生時に、燃料添加弁104から供給される燃料を酸化触媒102上にて酸化燃焼させて、排気を昇温することができる。
【0027】
吸気通路である吸気管INには、アクセル開度に応じて吸入空気量を調整するスロットルバルブ105の上流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ106が設けられる。過給機107は、排気管EXに設けられるタービン107aが、吸気管INに設けられるコンプレッサ107bを駆動して、吸入空気を所定の過給圧となるように圧縮する。また、排気管EXと吸気管INとの間は、EGR弁108aを備えるEGR通路108にて接続されており、EGR弁108aの開度に応じた流量の排気が吸気管INへ再循環される。EGR通路108の下流側の吸気管INには、吸気圧センサ109が配設される。
【0028】
ECU100には、入出力インターフェイス100Aを介して、エアフローメータ106、吸気圧センサ109からの検出信号の他、図示しないアクセル開度センサ、エンジン回転数センサ等の各種センサからの検出信号が入力される。ECU100は、これら各種センサからの検出信号に基づいて、エンジンEの運転状態を知り、予め記憶されたプラグラムや運転条件毎のマップ値等に基づいて、最適なエンジン燃焼状態となるように、エンジン各部を制御する。駆動装置103は、ECU100からの指令信号に基づいて、燃料噴射弁INJ、燃料添加弁104、スロットルバルブ105、タービン107a、EGR弁108aを、それぞれ所定のタイミングで駆動する。このような制御により、過給圧やEGR量が適正に制御されて、排気と共に排出される粒子状物質やNOx等を低減させることが可能になる。また、排気管EXに設置されるパティキュレートフィルタ101により、粒子状物質が捕集されるので、外部への放出が抑制される。
【0029】
ところが、パティキュレートフィルタ101に何らかの故障が生じた場合には、パティキュレートフィルタ101の捕集機能が低下して、下流側に粒子状物質が排出されるおそれがある。ここで、パティキュレートフィルタ101の「故障」とは、パティキュレートフィルタ101を構成する多孔質セラミックスハニカム構造体に割れが生じることによる部分的な機能喪失のみならず、微小クラックや劣化による捕集率の低下、その他の異常を含む。故障検出装置1は、このような故障を速やかに検出して運転者に知らせるために、パティキュレートフィルタ101の下流に漏れ出す粒子状物質をPMセンサ2にて検出し、センサ制御部10にて故障判定を行う。
【0030】
故障検出装置1は、具体的には、再生制御部10A、始動判定部10B、乾燥判定部10C、加熱制御部10D及び故障判定部10Eが、以下の再生工程、始動判定工程、乾燥判定工程、加熱工程及び故障判定工程を、順次実行することにより、パティキュレートフィルタ101の故障を検出する。
すなわち、再生制御部10Aは、エンジンEが停止したと判定されると、エンジンEの停止中にヒータ部3を作動させて、センサ素子20を再生する再生工程を実行する。このとき、センサ素子20は、堆積した粒子状物質を燃焼除去可能な再生温度Tに加熱される。
その後、始動判定部10Bが、再生工程による加熱後のエンジンEの始動を判定する始動判定工程を実行する。また、エンジンEの始動と共にセンサ素子20による粒子状物質の捕集が開始される。
次いで、乾燥判定部10Cが、再生工程による加熱後のエンジンEの運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程を実行する。
さらに、加熱制御部10Dが、乾燥判定工程により水滴無と判定されたときに、ヒータ部3を作動させて、センサ素子20を加熱する加熱工程を実行する。このとき、センサ素子20は、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度T1に加熱される。
そして、故障判定部10Eが、加熱工程による加熱後に、PMセンサ2の出力値Sに基づいて、パティキュレートフィルタ101の故障の有無を判定する故障判定工程を実行する。
【0031】
以下に、これら各工程について詳細に説明する。図5に示されるフローチャートは、故障検出装置1において周期的に実行される故障検出処理の一例であり、ステップS12が再生工程に、ステップS13が始動判定工程に、ステップS14が乾燥判定工程に、ステップS15が加熱工程に、ステップS16〜S19が故障判定工程に、それぞれ対応する。
【0032】
まず、故障検出処理が開始されると、ステップS11において、エンジンEが停止したか否かを判定する。ステップS11が肯定判定されたら、ステップS12に進んでPMセンサ2を再生する。否定判定された場合は、肯定判定されるまで、ステップS11を繰り返す。
ここで、エンジンEの停止とは、例えば、運転者がエンジンスイッチ又はエンジンキーを操作してイグニッションスイッチがオフとなった場合や、エンジン回転数センサにて検出されるエンジン回転数が0になった場合等である。なお、アイドリングストップ機能を有する車両では、停車時のアイドリング状態を検知してエンジンEが自動停止するが、ごく短時間で再始動することが予測され、被水のおそれが小さい。また、次ステップの再生期間が完了しない可能性があるため、アイドリングストップによる自動停止時には、ステップS11を肯定判定しないことが望ましい。
【0033】
ステップS12では、PMセンサ2のセンサ素子20に内蔵されるヒータ部3を作動させて、センサ素子20の再生温度Tに加熱して、表面に付着している粒子状物質を燃焼除去する。図6に示されるように、排気に含まれる粒子状物質は、導電性の炭素成分からなる煤粒子であるSootと、その表面に付着する非導電性の成分、例えば、未燃燃料やオイル由来の膜状の炭化水素(すなわち、Adsorbed Hydrocarbons)又は粒子状の炭化水素(すなわち、Hydrocarbon Particles)からなるSOF分や、燃料中の硫黄分に由来する硫黄酸化物と水分を含むサルフェート(すなわち、Sulfate)等を含んで構成されている。ステップS12において、再生温度Tは、Sootを燃焼除去可能な600℃以上の温度(例えば、700℃)に設定されることが望ましい。これにより、粒子状物質を完全に燃焼除去することができる。
【0034】
このように、エンジンEの停止中に、予め設定された再生温度Tに昇温し所定期間保持することで、PMセンサ2をリセットすることができる。また、ステップS12に先立ち、乾燥判定を行って、PMセンサ2の被水が生じない条件下でのみ、PMセンサ2の再生を行うようにしてもよい。乾燥判定は、例えば、図示しない排気温度センサによって排気管EX内の排気温度を検出することによって行い、排気温度が、排気管EX内の凝縮水が蒸発可能な所定温度(例えば、100℃)以上であるときに、乾燥と判定することができる。排気温度は、例えば、停止直前のエンジンEの運転状態から推定することもできる。また、図示しないエンジンEの冷却水温センサの検出結果や、エンジンEの停止前の運転時間等に基づいて、乾燥判定を行ってもよい。
【0035】
ステップS12によるPMセンサ2の再生後は、ステップS13へ進んで、エンジンEが始動したか否かを判定する。ステップS13では、例えば、運転者のエンジンスイッチ又はエンジンキーの操作により、イグニッションスイッチがオンとなった場合や、エンジン回転数センサにて検出されるエンジン回転数が0から所定値以上となった場合に、エンジンEが始動したと判定することができる。好適には、PMセンサ2の被水の可能性がある冷間始動であることを条件として、ステップS12を肯定判定することが望ましい。エンジンEの冷間始動は、例えば、図示しない排気温度センサ、エンジンEの冷却水温センサからの検出信号やエンジンEの停止後の経過時間に基づいて判断することができる。
【0036】
エンジンEが始動し、ステップS13が肯定判定されると、PMセンサ2による粒子状物質の捕集が開始される。例えば、静電捕集による場合には、センサ素子20の一対の電極21、22間に、電圧印加部24から検出用電圧が印加される。エンジンEの始動と共に、排気管EX内に排出される排気は、パティキュレートフィルタ101を通過して、PMセンサ2に到達する。このとき、パティキュレートフィルタ101に何らかの故障が生じていると、排気中の粒子状物質が捕集されずに、下流側に漏れ出すことになる。この下流側に漏れ出す粒子状物質を、一対の電極21、22を有するセンサ素子20の表面に堆積させ、その堆積量を、一対の電極21、22間の抵抗値変化として検出することで、パティキュレートフィルタ101の故障を検出することができる。
【0037】
ここで、ステップS11においてエンジンEが停止した後、比較的長い時間が経過した場合などには、ステップS13にてエンジンEが再始動するまでに、エンジンEの温度が低下して冷間始動状態となる。その場合は、排気中に比較的多量の粒子状物質が排出されると共に、水分が凝集した水滴となって、排気管EXに排出される。また、排気管EX内に残留する排気が壁面に接触すると、排気中の水蒸気が凝集して水滴となる。これら水滴が、排気に乗ってPMセンサ2の排気側カバーC1の通孔C11から内部に侵入すると、粒子状物質と共に、センサ素子20の表面に付着してしまう。
【0038】
このようにセンサ素子20が被水した状態では、PM量を正確に検出できないため、検出可能となるまで、粒子状物質の捕集を継続する。そのため、ステップS13が肯定判定されたら、続いて、ステップS14に進んで、乾燥判定を行い、また、乾燥判定結果から乾燥判定の終了条件となったか否かを判定する。乾燥判定の終了条件とは、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定を行って、排気中に水滴が存在しないと判断される状態となった場合であり、乾燥判定は、ステップS12と同様にして行うことができる。例えば、排気管EX内の排気温度を、排気温度センサによって検出し、あるいは、エンジンEの運転状態から推定して、排気管EX内の水分が蒸発可能な所定温度(例えば、100℃)以上であるときに、乾燥と判定することができる。また、図示しないエンジンEの冷却水温センサの検出結果や、エンジンEの始動後の運転時間等に基づいて、乾燥判定を行ってもよい。
【0039】
ステップS14が、否定判定された場合には、肯定判定されるまで、ステップS14において乾燥判定を繰り返し、乾燥して水滴がない状態と判定されたら、乾燥判定を終了してステップS15へ進む。ステップS15では、PMセンサ2のセンサ素子20に内蔵されるヒータ部3を作動させて、センサ素子20を所定の第一温度T1に加熱して、表面に付着している水分を除去する。第一温度T1は、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な温度であり、100℃〜500℃の範囲(例えば、200℃)に設定することが望ましい。第一温度T1が100℃未満であると、水分が完全に蒸発せず、500℃を超えると粒子状物質が燃焼してしまうおそれがある。
【0040】
あるいは、ステップS15において、センサ素子20を、第一温度T1に代えて、所定の第二温度T2に加熱して、表面に付着している水分及びSOF分を除去することもできる。第二温度T2は、200℃を超え500℃未満の範囲(例えば、300℃)に設定することができる。非導電性のSOF分の含有量が多くなると、導電性のSootに基づくセンサ素子20の出力への影響が無視できないものとなり、出力感度の低下や出力ばらつきの要因となる。その場合は、水分に加えて、非導電性のSOF分をも除去可能な第二温度T2にて加熱し、導電性のSootを残留させることで、PM堆積量をより正確に検出することができる。第二温度T2は200℃以下であると、SOF分の除去が不十分となり、500℃を超えると粒子状物質が燃焼してしまうおそれがある。
【0041】
ステップS15において、第一温度T1又は第二温度T2にて所定の期間、加熱を行うことで、粒子状物質に含まれる水分、又は、水分及びSOF分を除去することができる。その後、ステップS16に進んで、センサ出力の検出を実施する。ステップS16では、PMセンサ2の出力値Sを読み込み、ステップS17において、所定の閾値S0と比較して、センサ出力値Sが所定の閾値S0未満か否かを判定する(すなわち、S<S0?)。
【0042】
閾値S0は、パティキュレートフィルタ101が正常である場合のセンサ出力を超える所定値であり、予め行われる実機試験等の結果に基づいて、吸入空気量等の運転条件の変化を考慮して決定される。閾値S0は、例えば、センサ制御部10又はECU100の記憶領域に、エアフローメータ106によって検出される吸入空気量毎のマップ値として記憶しておくことができる。あるいは、吸入空気量等をパラメータとしてECU100の演算部にて、その都度、算出した閾値S0を、センサ制御部10に出力するようにしてもよい。
【0043】
ステップS17が肯定判定されたら、ステップS18に進んで、パティキュレートフィルタ101は正常と判定する。ステップS17が否定判定されたら、ステップS19に進んで、パティキュレートフィルタ101に何らかの故障が生じているとして、故障判定する。その後、本処理を一旦終了する。
【0044】
次に、図7のタイムチャートにより、上記図5のフローチャートに従って故障検出処理を行った場合の効果を説明する。パティキュレートフィルタ101として、予めPM捕集率が所定の基準値を下回るように構成された基準故障ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、基準故障DPFと称する)を用い、エンジンEの排気管EXに装着して、その下流の管壁にPMセンサ2を取り付けた。エンジンEを冷間始動させたときのPM排出量と、PMセンサ2のセンサ出力値Sの時間変化を、従来の故障検出処理を行った場合(すなわち、図中の中段の比較形態1)と比較した。比較形態1による故障検出処理は、エンジンEの始動後、排気管EX内の乾燥が完了した状態と判定されてから、センサ再生処理を行い、その後にPM捕集を行ってセンサ出力値Sによる故障又は正常判定を行うものである。
【0045】
図7の上段に排気管EX中のPM濃度の推移を示すように、時刻T0でエンジンEが始動した後、エンジンEの燃焼室へ燃料が噴射されて燃焼することで、排気管EXへ排出される排気が増大する。これにより、時刻T0からやや時間をおいてPM排出量が急増し、その後、燃焼が継続されて排気温度が上昇することで、PM排出量は急減する。その付近の時刻T1において、排気管EX内は乾燥状態となり、以後のPM排出量はごくわずかとなる。そのため、図7の中段に示す比較形態1では、PM排出量が急減した後に、センサ素子20を加熱してセンサ再生処理(例えば、700℃)を行い、再生が終了する時刻T3以降にPM堆積が開始されることになる。
【0046】
ところが、時刻T3においては、既に、エンジンEの冷間始動に由来する過大なPM排出が終了しており、また、暖機後に排出されるPM量はごくわずかなため、センサ出力が立ち上がらず、時刻T3以降のセンサ出力値Sは閾値S0を大きく下回ったままとなる。そのため、パティキュレートフィルタ101の故障判定を正しく行うことができない。なお、比較形態例1においては、エンジン始動からセンサ再生が終了するまでの時間T0〜T3においては、センサ出力信号検出のための電圧印加がされないため、センサ出力はゼロとなっている。
【0047】
これに対して、図7の下段に示す実施形態1では、時刻T0でエンジンEが始動した後に、PM堆積が開始される。時刻T1において乾燥判定が終了すると、水分を除去するための加熱(例えば、200℃)が開始され、時刻T3より早い時刻T2にて水分除去が終了する。このとき、時間T0〜T1においてPMセンサ2に堆積した物質のうち水分のみが除去され導電成分である粒子状物質は残留している。なお、加熱による水分除去が終了するまでの時間T0〜T2においては、センサ出力信号検出のための電圧印加がされないため、センサ出力値Sはゼロとなっている。その後、PMセンサ2からの出力信号検出を開始すると、冷間始動中に排出されたPMに起因するセンサ出力値Sが、速やかに立ち上がり、所定の閾値S0を超える。上述したように、閾値S0は、パティキュレートフィルタ101が故障したと判断可能なPM量に相当するから、閾値S0に到達した時点で、故障判定がなされる。
【0048】
したがって、実施形態1によれば、冷間始動時においても、センサ出力値SがPM排出量を反映したものとなり、所定の閾値S0とを比較することで、パティキュレートフィルタ101の故障検出を精度よく行うことができる。
【0049】
(実施形態2)
パティキュレートフィルタの故障検出装置の実施形態2について、図8図10を参照して説明する。PMセンサ2が備えるセンサ素子20は、素子表面に粒子状物質を堆積させることによりセンサ出力が発生するものであればよく、センサ出力を間欠的又は不連続に発生するセンサ素子20であっても、センサ出力を連続的に発生するセンサ素子20であってもよい。上記実施形態1では、センサ出力を間欠的に発生する例として電気抵抗式のセンサ素子20を用いたが、本形態では、センサ出力を連続的に発生する例として、静電容量式のセンサ素子20を用いる。本形態における故障検出装置1、PMセンサ2の基本構造は、上記実施形態1と同様であり、図示を省略する。以下、相違点を中心に説明する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0050】
図8に示すように、静電容量式のセンサ素子20は、例えば、上記実施形態1と同様の一対の電極21、22を有し、電極間抵抗の変化を検出する代わりに、静電容量の変化を検出するものであればよい。具体的には、センサ素子20の表面に、一対の電極21、22を覆うように誘電体層26が形成されており、粒子状物質(すなわち、図7中のPM)は、誘電体層26上に堆積する。一対の電極21、22間の静電容量Cは、一般に下記式1で表される。
式1:C=ε×(S/d)
式1中、εは誘電率、Sは電極21、22の表面積、dは電極21、22間の距離である。
式1において、電極21、22の表面積Sは一定であるから、誘電体層26上に粒子状物質が堆積することによって、電極21、22の間の誘電率εが変化すると、これに伴い静電容量Cが変化することになる。
【0051】
したがって、一対の電極21、22間の静電容量Cを測定することで、PMセンサ2の出力値SからPM堆積量を検出することができる。また、PMセンサ2の出力値Sに基づいて、パティキュレートフィルタ101の故障又は正常判定を行うことができる。
また、本形態では、上記実施形態1のようにセンサ出力を初期値(すなわち、出力値S=0)に戻してもよいが、初期値に戻さずに、連続的に発生するセンサ出力の差分に基づいてPM堆積量を検出してもよい。その場合は、エンジンEの停止中にセンサ再生処理を行わずに、センサ出力を記憶して次回の初期値S1とする。
【0052】
そのために、本形態における故障検出装置1は、センサ制御部10に、上記図1における再生制御部10Aに代えて、出力記憶部10Fを有する。
出力記憶部10Fは、エンジンEの停止時又は停止中に、PMセンサ2の出力値を次回始動時の初期値S1として記憶する。
また、ECU100には、エンジンEの始動を判定する始動判定部10Bと、
エンジンEの運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定部10Cと、が設けられ、センサ制御部10には、
エンジンEの次回始動後に、排気中の水滴無と判定されたときにヒータ部3を作動させて、センサ素子2を、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度T1に加熱する加熱制御部10Dと、
加熱制御部10Cによる加熱後に、PMセンサ2の出力値Sと初期値S1との差分に基づいて、パティキュレートフィルタ101の故障の有無を判定する故障判定部10Eと、が設けられる。
【0053】
なお、上記実施形態1と同様に、センサ出力を初期値に戻す処理を行う場合には、上記実施形態1と同様の再生制御部10Aを設けることができる。そして、エンジンEの停止中にヒータ部3を作動させて、センサ素子20を再生温度Tに加熱し、粒子状物質を燃焼除去する。その場合は、加熱制御部10Dと、故障判定部10Eによる処理も、上記実施形態1と同様に行う。
【0054】
故障検出装置1は、具体的には、出力記憶部10F、始動判定部10B、乾燥判定部10C、加熱制御部10D及び故障判定部10Eが、以下の出力記憶工程、始動判定工程、乾燥判定工程、加熱工程及び故障判定工程を、順次実行することにより、パティキュレートフィルタ101の故障を検出する。
すなわち、出力記憶部10Fは、エンジンEが停止したと判定されると、エンジンEの停止時又は停止中に、PMセンサ2の出力値Sを次回始動時の初期値S1として記憶する出力記憶工程を実行する。
その後、始動判定部10Bが、出力記憶工程後のエンジンEの始動を判定する始動判定工程を実行する。また、エンジンEの始動と共にセンサ素子20による粒子状物質の捕集が開始される。
次いで、乾燥判定部10Cが、エンジンEの次回始動後の運転中に、排気中の水滴の有無を判定する乾燥判定工程を実行する。
さらに、加熱制御部10Dが、乾燥判定工程により水滴無と判定されたときに、ヒータ部3を作動させて、センサ素子20を加熱する加熱工程を実行する。このとき、センサ素子20は、堆積した粒子状物質を残留させ粒子状物質に含まれる水分を除去可能な第一温度T1に加熱される。
そして、故障判定部10Eが、加熱工程による加熱後に、PMセンサ2の出力値Sと初期値S1との差分に基づいて、パティキュレートフィルタ101の故障の有無を判定する故障判定工程を実行する。
【0055】
以下に、これら各工程について詳細に説明する。図9に示されるフローチャートは、故障検出装置1において周期的に実行される故障検出処理の一例であり、ステップS22が出力記憶工程に、ステップS23が始動判定工程に、ステップS24が乾燥判定工程に、ステップS25が加熱工程に、ステップS26〜S29が故障判定工程に、それぞれ対応する。
【0056】
まず、故障検出処理が開始されると、ステップS21において、エンジンEが停止したか否かを判定する。エンジンEの停止判定は、上記実施形態1におけるステップS11と同様にして行うことができる。ステップS21が肯定判定されたら、ステップS12に進んでPMセンサ2を再生する。否定判定された場合は、肯定判定されるまで、ステップS21を繰り返す。
【0057】
ステップS22では、この時点におけるPMセンサ2の出力値Sを次回始動時の初期値S1として、例えば、センサ制御部10の記憶領域に記憶する。続いて、ステップS23へ進んで、エンジンEが始動したか否かを判定する。エンジンEの始動判定は、上記実施形態1におけるステップS13と同様にして行うことができ、好適には、PMセンサ2の被水の可能性がある冷間始動であることを条件として、ステップS12を肯定判定することが望ましい。
【0058】
エンジンEが始動し、ステップS23が肯定判定されると、例えば、センサ素子20の一対の電極21、22間に検出用電圧が印加され、PMセンサ2による粒子状物質の捕集が開始される。続いて、ステップS24に進んで、上記実施形態1におけるステップS14と同様にして乾燥判定を行い、また、乾燥判定の終了条件となったか否かを判定する。ステップS24が、否定判定された場合には、肯定判定されるまで、ステップS24において乾燥判定を繰り返し、乾燥して水滴がない状態と判定されたら、乾燥判定を終了してステップS25へ進む。
【0059】
ステップS25では、PMセンサ2のセンサ素子20に内蔵されるヒータ部3を作動させる。そして、上記実施形態1におけるステップS25と同様にして、センサ素子20を所定の第一温度T1(例えば、200℃)に加熱して、表面に付着している水分を除去する。あるいは、ステップS25において、センサ素子20を、第一温度T1に代えて、所定の第二温度T2(例えば、300℃)に加熱して、表面に付着している水分及びSOF分を除去することもできる。
【0060】
ステップS25において、第一温度T1又は第二温度T2にて所定の期間、加熱を行うことで、粒子状物質に含まれる水分、又は、水分及びSOF分を除去することができる。その後、ステップS26に進んで、センサ出力の検出を実施する。ステップS26では、PMセンサ2のセンサ出力値Sを読み込み、さらに、ステップS22で記憶した初期値S1を用いて、センサ出力値Sと初期値S1との差分であるS−S1を算出する。次いで、ステップS27に進んで、所定の閾値S0を読み込み、差分S−S1が所定の閾値S0未満か否かを判定する(すなわち、S−S1<S0?)。閾値S0は、静電容量式のセンサ素子20を備えるPMセンサ2について、予め実機試験等を行って、適宜決定されるものである。
【0061】
ステップS27が肯定判定されたら、ステップS28に進んで、パティキュレートフィルタ101は正常と判定する。ステップS27が否定判定されたら、ステップS29に進んで、パティキュレートフィルタ101に何らかの故障が生じているとして、故障判定する。その後、本処理を一旦終了する。
【0062】
次に、図10のタイムチャートにより、上記図9のフローチャートに従って故障検出処理を行った場合の効果を説明する。この場合も、パティキュレートフィルタ101として、実施形態1と同様の基準故障DPFを用いて試験を行い、エンジンEを冷間始動させたときのPM排出量と、PMセンサ2の出力値の時間変化を、従来の故障検出処理を行った場合(すなわち、図中の中段の比較形態2)と比較した。
【0063】
比較形態2では、実施形態2と同様に、センサ信号を連続的に出力可能な静電容量式のセンサ素子20を備えるPMセンサ2を用いており、それ以外は、比較形態1と同様にして故障判定を行っている。すなわち、エンジンEの始動後、排気管EX内の乾燥が完了した状態と判定されてから、センサ再生処理を行い、その後にPM捕集を行った場合のセンサ出力値Sによる故障判定を行うものである。
【0064】
図10の上段に示す排気管EX中のPM濃度の推移は、上記図7と同様であり、時刻T0でエンジンEが始動した時刻T0からやや時間をおいてPM排出量が急増し、その後、PM排出量は急減する。その付近の時刻T1において、排気管EX内は乾燥状態となり、以後のPM排出量はごくわずかとなる。そのため、図9の中段に示す比較形態2では、PM排出量が急減した後に、センサ素子20を加熱してセンサ再生処理(例えば、700℃)を行い、再生が終了する時刻T3以降にPM堆積が開始されることになる。
【0065】
これにより、比較形態1では、センサの再生が終了するまでの時間T0〜T3においては、センサ信号検出のための電圧印加がなされずにセンサ出力はゼロとなっており、時刻T3以降においてセンサ出力が徐々に増加するものの、センサ出力値Sは閾値S0を大きく下回ったままとなる。これは、時刻T3においては、既に、エンジンEの冷間始動に由来する過大なPM排出が終了しており、また、暖機後に排出されるPM量はごくわずかなためである。そのため、パティキュレートフィルタ101の故障判定を精度よく行うことができない。
【0066】
これに対して、図10の下段に示す実施形態2では、時刻T0でエンジンEが始動した後に、PM堆積が開始される。時刻T1において乾燥判定が終了すると、水分を除去するための加熱(例えば、200℃)が開始され、時刻T3より早い時刻T2にて水分除去が終了する。このとき、時間T0〜T1においてPMセンサ2に堆積した物質のうち水分のみが除去され導電成分である粒子状物質は残留している。加熱による水分除去が終了するまでの時間T0〜T2においては、センサ信号検出のための電圧印加がされないため、センサ出力値Sはゼロとなっている。その後、PMセンサ2の信号検出を開始すると、冷間始動中に排出されたPMに起因するセンサ出力値Sが、直ちに立ち上がる。
【0067】
したがって、センサ出力値Sと初期値S1との差分S−S1(すなわち、図中のΔS)が、所定の閾値S0よりも大きくなり、故障判定が可能になる。このように、本形態によっても、冷間始動時において、PM排出量を反映した値である差分S−S1と所定の閾値S0とを比較することで、パティキュレートフィルタ101の故障検出を精度よく行うことができる。
【0068】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、上記実施形態では、過給機及びEGR機構を備える内燃機関への適用例を示したが、内燃機関を含むシステム構成は、適宜変更することができる。また、内燃機関は、ディーゼルエンジンに限定されるものでなく、ガソリンエンジン、ガスエンジンその他であってもよい。また、自動車用に限らず各種用途に利用することができ、PMセンサやセンサ素子の構造も、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 故障検出装置
10A 再生制御部
10B 始動判定部
10C 乾燥判定部
10D 加熱制御部
10E 故障判定部
101 パティキュレートフィルタ
2 PMセンサ(センサ)
20 センサ素子(粒子状物質検出部)
3 ヒータ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10