(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による内燃機関100、及び内燃機関100を制御する電子制御ユニット200の概略構成図である。
【0011】
内燃機関100は、機関本体1と、燃料噴射装置2と、吸気装置3と、排気装置4と、を備える。
【0012】
機関本体1は、各気筒10に形成される燃焼室内で燃料を燃焼させて、例えば車両などを駆動するための動力を発生させる。
【0013】
燃料噴射装置2は、センター燃料噴射弁20と、第1サイド燃料噴射弁21と、第2サイド燃料噴射弁22と、コモンレール23と、サプライポンプ24と、燃料タンク25と、インジェクションパイプ26と、圧送パイプ27と、を備え、各燃料噴射弁20,21,22から噴射する燃料の噴射量(噴射時間や噴射圧)、及び噴射時期を変更することができるように構成されている。
【0014】
センター燃料噴射弁20、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22は、それぞれ各気筒10の燃焼室内に直接燃料を噴射することができるように機関本体1に設けられる。
【0015】
図2は、各燃料噴射弁20,21,22の配置位置を示す概略図である。
【0016】
図2に示すように、センター燃料噴射弁20は、その噴孔が各気筒10の燃焼室の頂部中央に臨むように機関本体1に設けられる。
【0017】
一方で第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22は、それらの噴孔がそれぞれ各気筒10の燃焼室の外周部に臨むように機関本体1に設けられており、後述するスワール生成装置36(
図3参照)によって生成されるスワール流Wの方向と対向する方向に燃料を噴射することができるようになっている。なお本実施形態では、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22はそれぞれ3つの噴孔を有しており、そのうちの2つの噴孔からは、スワール流Wと対向する方向に燃料が噴射されるようになっている。一方で残りの1つの噴孔からは、気筒中心軸に向かって燃料が噴射されるようになっている。
【0018】
各燃料噴射弁20,21,22の開弁時間(噴射時間)及び開弁時期(噴射時期)は電子制御ユニット200からの制御信号によって変更される。各燃料噴射弁20,21,22は、対応するインジェクションパイプ26を介してコモンレール23に接続される。
【0019】
図1に戻り、コモンレール23は、圧送パイプ27を介して燃料タンク25に接続される。圧送パイプ27の途中には、燃料タンク25に貯蔵された燃料を加圧してコモンレール23に供給するためのサプライポンプ24が設けられる。コモンレール23は、サプライポンプ24から圧送されてきた高圧燃料を一時的に貯蔵する。各燃料噴射弁20,21,22が開弁されると、コモンレール23に貯蔵された高圧燃料がインジェクションパイプ26を介して各燃料噴射弁20,21,22から燃焼室内に噴射される。コモンレール23には、コモンレール23内の燃料圧力(以下「レール圧」という。)、すなわち各燃料噴射弁20,21,22から燃焼室内に噴射される燃料の圧力(噴射圧)を検出するためのレール圧センサ211が設けられる。
【0020】
サプライポンプ24は、吐出量を変更することができるように構成されており、サプライポンプ24の吐出量は、電子制御ユニット200からの制御信号によって変更される。サプライポンプ24の吐出量を制御することで、レール圧、すなわち各燃料噴射弁20,21,22の噴射圧が制御される。
【0021】
吸気装置3は、各気筒10の燃焼室内に吸気を導くための装置であって、燃焼室内に吸入される吸気の状態(吸気の流れ方向や強さ、吸気圧、吸気量、外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス量等)を変更することができるように構成される。吸気装置3は、エアクリーナ30と、吸気管31と、吸気マニホールド32と、エアフローメータ212と、可変容量型のターボチャージャ5のコンプレッサ51と、インタクーラ33と、スロットル弁34と、EGR装置35と、スワール生成装置36(
図3参照)と、を備える。
【0022】
エアクリーナ30は、吸気中に含まれる砂や埃などの異物を除去する。
【0023】
吸気管31は、一端がエアクリーナ30に接続され、他端が吸気マニホールド32の吸気コレクタ32aに接続される。
【0024】
吸気マニホールド32は、吸気コレクタ32aと、吸気コレクタ32aから分岐して機関本体1のシリンダヘッド内に形成されている各吸気ポート(
図3参照)の開口に連結される複数の吸気枝管32bと、を備える。吸気マニホールド32は、吸気管31から吸気コレクタ32aに流入してきた吸気を、吸気枝管32bを介して各気筒10の燃焼室内に均等に分配する。吸気管31、吸気マニホールド32及び各吸気ポートが、各気筒10の燃焼室内に吸気を導くための吸気通路を形成する。
【0025】
吸気マニホールド32の吸気コレクタ32aには、各気筒10内に吸入される吸気の圧力(吸気圧)を検出するための吸気圧センサ213と、各気筒10内に吸入される吸気の温度(吸気温)を検出するための吸気温センサ214と、が設けられる。
【0026】
エアフローメータ212は、吸気管31に設けられる。エアフローメータ212は、吸気管31内を流れて最終的に各気筒10の燃焼室内に吸入される空気の流量(吸気量)を検出する。
【0027】
コンプレッサ51は、エアフローメータ212よりも下流側の吸気管31に設けられる。コンプレッサ51は、コンプレッサハウジング51aと、コンプレッサハウジング51a内に配置されたコンプレッサホイール51bと、を備える。コンプレッサホイール51bは、同軸上に取り付けられたタービンホイール52bによって回転駆動され、コンプレッサハウジング51a内に流入してきた吸気を圧縮して吐出する。ターボチャージャ5のタービン52には、タービンホイール52bの回転速度を制御するための可変ノズル52cが設けられており、可変ノズル52cによってタービンホイール52bの回転速度が制御されることで、コンプレッサハウジング51a内から吐出される吸気の圧力(過給圧)が制御される。
【0028】
インタクーラ33は、コンプレッサ51よりも下流側の吸気管31に設けられる。インタクーラ33は、コンプレッサ51によって圧縮されて高温になった吸気を、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
【0029】
スロットル弁34は、インタクーラ33よりも下流側の吸気管31に設けられる。スロットル弁34は、吸気管31の通路断面積を変化させることで、吸気マニホールド32の吸気コレクタ32aに導入する吸気量を調整する。スロットル弁34は、スロットルアクチュエータ34aによって開閉駆動され、スロットルセンサ215によってその開度(スロットル開度)が検出される。
【0030】
EGR装置35は、各気筒10の燃焼室から排出された排気を吸気通路に還流させるための装置であって、EGR通路351と、EGRクーラ352と、EGR弁353と、を備える。
【0031】
EGR通路351は、後述する排気マニホールド41と吸気マニホールド32の吸気コレクタ32aとを連通し、各気筒10の燃焼室から排出された排気の一部を圧力差によって吸気コレクタ32aに戻すための通路である。以下、EGR通路351に流入した排気のことを「外部EGRガス」という。外部EGRガスを吸気コレクタ32a、ひいては各気筒10の燃焼室に還流させることで、燃焼温度を低減させて窒素酸化物(NOx)の排出を抑えることができる。
【0032】
EGRクーラ352は、EGR通路351に設けられる。EGRクーラ352は、EGRガスを、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
【0033】
EGR弁353は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度は電子制御ユニット200によって制御される。EGR弁353の開度を制御して吸気コレクタ32aに還流させる外部EGRガスの流量を調節することで、EGR率(吸気中に占める外部EGRガスの割合)が制御される。
【0034】
スワール生成装置36は、各気筒10の燃焼室内にスワール流Wを発生させるための装置である。スワール装置36の詳細については、
図3を参照して説明する。
【0035】
図3は、スワール装置36の詳細について説明する図であり、各気筒10の燃焼室の頂壁(シリンダヘッド内壁)をピストン側から見た概略平面図である。
【0036】
図3に示すように、本実施形態によるスワール生成装置36は、スワール制御弁361を備える。
【0037】
スワール制御弁361は、機関本体1のシリンダヘッド内に形成された二股状の各吸気ポートの一方のポートに設けられ、各吸気ポートの一方のポートの通路断面積を変化させる。スワール制御弁361は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度(以下「スワール開度」という。)は電子制御ユニット200によって制御される。
【0038】
スワール開度を小さくしていくことで(すなわちスワール制御弁361の閉弁度合いを大きくしていくことで)、各吸気ポートの一方のポートから各気筒10の燃焼室内に導入される吸気量に対して、他方のポートから各気筒10の燃焼室内に導入される吸気量が多くなる。その結果、
図3において矢印で示すようなスワール流Wを各気筒10の燃焼室内に発生させると共に、その強さを変更することができる。
【0039】
図1に戻り、排気装置4は、各気筒10の燃焼室内から排出された排気を外部に排出するための装置であって、排気マニホールド41と、排気管42と、ターボチャージャ5のタービン52と、排気後処理装置43と、を備える。
【0040】
排気マニホールド41は、一端側が機関本体1のシリンダヘッド内に形成されている各排気ポート(
図3参照)の開口に連結され、他端側が排気管42に連結されており、各気筒10の燃焼室内から排出された排気を纏めて排気管42に導入する。
【0041】
タービン52は、排気管42に設けられる。タービン52は、タービンハウジング52aと、タービンハウジング52a内に配置されたタービンホイール52bと、を備える。タービンホイール52bは、タービンハウジング52a内に流入してきた排気のエネルギによって回転駆動され、同軸上に取り付けられたコンプレッサホイール51bを駆動する。
【0042】
タービンホイール52bの外側には、前述した可変ノズル52cが設けられている。可変ノズル52cは絞り弁として機能し、可変ノズル52cのノズル開度(弁開度)は電子制御ユニット200によって制御される。可変ノズル52cのノズル開度を変化させることでタービンホイール52bを駆動する排気の流速をタービンハウジング52a内で変化させることができる。すなわち、可変ノズル52cのノズル開度を変化させることで、タービンホイール52bの回転速度を変化させて吸気圧(過給圧)を変化させることができる。具体的には、可変ノズル52cのノズル開度を小さくする(可変ノズル52cを絞る)と、排気の流速が上がってタービンホイール52bの回転速度が増大し、吸気圧が増大する。
【0043】
排気後処理装置43は、タービン52よりも下流側の排気管42に設けられる。排気後処理装置43は、各気筒10の燃焼室内から排出される排気中の有害物質を取り除くための装置であって、触媒装置431と、パティキュレートフィルタ432と、を備える。
【0044】
触媒装置431は、担体に排気浄化触媒を担持させたものである。排気浄化触媒は、例えば酸化触媒(二元触媒)や三元触媒であり、これらに限らず内燃機関100の種類や用途に応じて適当な触媒を用いることができる。本実施形態では、排気浄化触媒として酸化触媒を用いている。排気浄化触媒として酸化触媒を用いた場合は、排気中の有害物質であるハイドロカーボン(HC)及び一酸化炭素(CO)が酸化触媒によって酸化除去される。
【0045】
パティキュレートフィルタ432は、その内部に導入された排気中のパティキュレート(粒子状物質)を捕集する。
【0046】
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バス201によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、CPU(マイクロプロセッサ)204、入力ポート205及び出力ポート206を備える。
【0047】
入力ポート205には、前述したレール圧センサ211やエアフローメータ212、吸気圧センサ213、吸気温センサ214、スロットルセンサ215などの出力信号が、対応する各AD変換器207を介して入力される。また、入力ポート205には、アクセルペダル221の踏み込み量(以下「アクセル踏込量」という。)Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ217の出力電圧が、対応するAD変換器207を介して入力される。さらに入力ポート205には、機関回転速度Nなどを算出するための信号として、機関本体1のクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ218の出力信号が入力される。このように入力ポート205には、内燃機関100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力される。
【0048】
出力ポート206には、対応する駆動回路208を介してセンター燃料噴射弁20などの各制御部品が電気的に接続される。
【0049】
電子制御ユニット200は、入力ポート205に入力された各種センサの出力信号に基づいて、各制御部品を制御するための制御信号を出力ポート206から出力して内燃機関100を制御する。以下、電子制御ユニット200が実施する内燃機関100の制御について説明する。
【0050】
電子制御ユニット200は、機関運転状態(機関回転速度及び機関負荷)に基づいてスワール制御弁361によってスワール開度を制御し、吸入時におけるスワール流Wの強さを制御している。具体的には、吸入時におけるスワール比、すなわちクランクシャフトの角速度ω
ne[rad/sec]に対するスワール流Wの角速度(気筒中心軸周りの吸気の角速度;以下「スワール速度」という。)ω
sw[rad/sec]の比(=ω
sw/ω
ne)が、機関運転状態に応じた目標スワール比となるように、スワール制御弁361によってスワール開度を制御している。
【0051】
このように各気筒10の燃焼室内にスワール流Wを発生させることで、燃料燃焼時における空気利用率を高めてスモークの原因となる煤の発生を抑制できるので、排気エミッションの悪化を抑制できる。
【0052】
しかしながら、発明者の鋭意研究の結果、例えば
図8に示す本実施形態とは異なる比較例のように、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22から噴射される燃料の方向を、スワール流Wの方向と同一方向にすると、燃料噴霧によってスワール流Wが強められて高温の既燃ガスと気筒10の内壁面との相対速度が増加し、気筒10の内壁面の熱伝達率が大きくなって熱損失が増加することがわかった。
【0053】
そこで本実施形態では、
図2に示すように、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22から噴射される燃料の方向を、スワール流Wの方向と対向する方向(すなわちスワール流Wの方向と逆方向)にすることとした。
【0054】
具体的には、吸入時におけるスワール流の角運動量L
sw[Nms]と、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22から噴射される燃料の総角運動量(以下、単に「燃料の角運動量」という。)L
inj[Nms]と、の差分値の絶対値が所定差分値以下となる吸入時の目標スワール比SW
st_tを算出し、吸入時のスワール比SW
stが当該目標スワール比SW
st_tとなるようにスワール制御弁361を制御することとした。すなわち、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endが所定のスワール比以下となる吸入時の目標スワール比SW
st_tを算出し、吸入時のスワール比SW
stが目標スワール比S
st_tとなるようにスワール制御弁361を制御することとした。
【0055】
本実施形態では、吸入時におけるスワール流の角運動量L
swと、燃料の角運動量L
injと、の差分値がゼロ、すなわち燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endがゼロとなる吸入時の目標スワール比SW
st_tを算出し、当該目標スワール比S
st_tとなるようにスワール制御弁361によってスワール開度を制御するようにしている。
【0056】
このように、スワール流Wの方向と燃料噴射方向とを対向させた上で、吸入時のスワール比SW
stを、吸入時におけるスワール流Wの角運動量L
swと、燃料の角運動量L
injと、の差分値がゼロとなるような目標スワール比SW
st_tに制御することで、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endをゼロにすることができる。すなわち、燃料噴霧によってスワール流Wを減衰させて、高温の既燃ガスと気筒10の内壁面との相対速度を低下させることができる。そのため、気筒10の内壁面の熱伝達率を小さくすることできるので、熱損失の増加を抑制して燃費の向上を図ることができる。
【0057】
以下、この本実施形態による吸入時の目標スワール比SW
st_tの算出方法について説明する。
【0058】
スワール流Wを直径が各気筒10のボア径B[m]の円盤と仮定すると、スワール流Wの角運動量L
swは、スワール流Wの慣性モーメントI
sw[kg・m
2]、及びスワール速度ω
swを用いて下記式(1)の通り表すことができる。
【0060】
ここでスワール流Wの慣性モーメントI
swは、各気筒10の吸気質量M
sw[kg]、及びボア径Bを用いて下記式(2)の通り表すことができる。また吸気質量M
swは、各気筒10のストロークH[m]、ボア径D、及び吸気密度ρ
air[kg/m
3]を用いて下記式(3)の通り表すことができる。さらに吸気密度ρ
airは、吸気温T
air[K]、及び吸気圧P
air[kPa]を用いて下記式(4)の通り表すことができる。
【0062】
したがって、スワール流Wの角運動量L
swは、下記式(5)の通り表すことができる。
【0064】
したがって、吸入時におけるスワール流Wの角運動量L
swと、燃料の角運動量L
injと、の差分値をゼロにするための吸入時のスワール速度ω
sw_stは、下記式(6)の通り表すことができる。
【0066】
そして前述したように、スワール比SWは、クランクシャフトの角速度ω
neに対するスワール速度ω
swの比(ω
sw/ω
ne)で表すことができる。したがって、吸入時におけるスワール流Wの角運動量L
swと、燃料の角運動量L
injと、の差分値をゼロにするための吸入時の目標スワール比SWst_tは、機関回転速度をNe[rpm]とすると、下記式(7)の通り表すことができる。
【0068】
したがって、燃料の角運動量L
injが分かれば、基本的に機関回転速度Neに基づいて(厳密にはさらに吸気温T
airと吸気圧P
airとに基づいて)、吸入時の目標スワール比SW
st_tを算出することができるので、吸入時のスワール比SW
stが目標スワール比S
st_tとなるようにスワール制御弁361によってスワール開度を制御することができる。
【0069】
ここで燃料の角運動量L
injは、第1サイド燃料噴射弁21から噴射された燃料の角運動量L1
inj、及び第2サイド燃料噴射弁22から噴射された燃料の角運動量L2
injを用いて下記式(8)の通り表すことができる。
【0071】
本実施形態では、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22は同様の構成をしており、各燃料噴射弁21,22から噴射される燃料の角運動量L1
inj、L2
injも同じとみなせる。
【0072】
そこで
図4を参照して第1サイド燃料噴射弁21から噴射される燃料の角運動量L1
injを考えると、当該角運動量L1
injは、気筒軸心から第1サイド燃料噴射弁21のi番噴孔(本実施形態では、i=3)までの距離r
i、i番噴孔から噴射される燃料の噴射方向と、気筒軸心及びi番噴孔を結ぶ線分と、がなす角θ
i、i番噴孔から噴射される燃料の噴射量m
i、及びi番噴孔から噴射される燃料の噴射速度v
iを用いて下記式(9)の通り表すことができる。
【0074】
そして第1サイド燃料噴射弁21のi番噴孔から噴射される燃料の噴射量m
iは、第1サイド燃料噴射弁21から噴射される総燃料噴射量m
inj、第1サイド燃料噴射弁21の総噴孔面積A
inj、及びi番噴孔の噴孔面積A
iを用いて下記式(10)の通り表すことができる。また第1サイド燃料噴射弁21のi番噴孔から噴射される燃料の噴射速度v
iは、噴射圧と筒内圧との差圧ΔP
cr、燃料密度ρ
fuel、及び速度係数Cを用いて下記式(11)の通り表すことができる。
【0076】
式(10)において、第1サイド燃料噴射弁21の総噴孔面積A
inj、及びi番噴孔の噴孔面積A
iは、予め定まった所定値である。また式(11)において、速度係数Cは、予め実験等によって求めておくことが可能な所定値である。
【0077】
一方で、式(10)における第1サイド燃料噴射弁21から噴射される総燃料噴射量m
inj、式(11)における噴射圧と筒内圧との差圧ΔP
cr、及び燃料密度ρ
fuelは可変値であるが、これらは機関運転状態に応じて変化するものであるため、予め実験等によって機関運転状態に応じた値を求めておくことができる。
【0078】
したがって燃料の角運動量L
injに関しては、機関運転状態と、燃料の角運動量L
injと、を対応させたマップを予め実験等によって作成しておくことで、当該マップを参照することにより、機関運転状態に基づいて算出することができる。
【0079】
図5は、この本実施形態によるスワール制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット200は、本ルーチンを機関運転中に所定の演算周期(例えば10[ms])で繰り返し実行する。
【0080】
ステップS1において、電子制御ユニット200は、クランク角センサ218の出力信号に基づいて算出された機関回転速度Neと、負荷センサ217によって検出された機関負荷と、を読み込み、機関運転状態を検出する。また電子制御ユニット200は、吸気圧センサ213によって検出された吸気圧P
airと、吸気温センサ214によって検出された吸気温T
airと、を読み込む。
【0081】
ステップS2において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成したマップを参照し、機関運転状態に基づいて燃料の角運動量L
injを算出する。
【0082】
ステップS3において、電子制御ユニット200は、前述した式(7)を用い、燃料の角運動量L
inj、吸気圧P
air、吸気温T
air、及び機関回転速度Neに基づいて、吸入時の目標スワール比SW
st_tを算出する。
【0083】
ステップS4において、電子制御ユニット200は、吸入時のスワール比SW
stが目標スワール比SW
st_tとなるように、スワール制御弁361によってスワール開度を制御する。
【0084】
図6は、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endと、熱損失と、の関係を示す図である。
【0085】
図6において、三角で示した点は、スワール流Wの方向と燃料噴射方向とを対向させて、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endがゼロを含む所定の範囲内(概ね−1.0から1.0)となるようにスワール制御弁361によってスワール開度を制御した場合の熱損失を示している。一方で、菱形で示した点は、スワール流Wの方向と燃料噴射方向とを同一方向とした場合の熱損失を示している。なお燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endがゼロ未満の領域は、燃料噴霧によって最終的にスワール流Wが当初の方向と逆方向になっていることを示す。
【0086】
図6に示すように、スワール流Wの方向と燃料噴射方向とを対向させて、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endがゼロを含む所定の範囲内となるようにスワール制御弁361によってスワール開度を制御することで、熱損失を低減できていることがわかる。
【0087】
したがって本実施形態では、前述したように、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endがゼロとなるように吸入時の目標スワール比SW
st_tを設定していたが、これに限らず、燃料噴射終了時におけるスワール比SW
endを、熱損失の低減効果が得られる所定の範囲内となるようにスワール制御弁361によってスワール開度を制御するようにしてもよい。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、機関本体1と、機関本体1の燃焼室内にスワール流Wを発生させることができるように構成されると共に、スワール流Wの強さを変更することができるように構成された吸気装置3と、機関本体1に設けられ、燃焼室内に発生させたスワール流Wの流れ方向と対向する方向に燃料を噴射する第1サイド燃料噴射弁21及び第2燃料噴射弁22(燃料噴射弁)と、を備える内燃機関100を制御する電子制御ユニット200(制御装置)が、機関運転状態に基づいて、吸気装置3を制御して吸入時のスワール流Wの強さを制御するスワール制御部を備える。
【0089】
そしてスワール制御部は、第1サイド燃料噴射弁21及び第2燃料噴射弁22による燃料噴射終了時におけるスワール流Wの強さが所定の強さ以下となるように、吸入時のスワール流Wの強さを制御するように構成されている。
【0090】
具体的にはスワール制御部は、吸入時におけるスワール流の角運動量L
swと、第1サイド燃料噴射弁21及び第2燃料噴射弁22から噴射された燃料の角運動量L
injと、の差分値の絶対値が所定値以下となるように、吸入時のスワール流Wの強さを制御するように構成される。またスワール制御部は、第1サイド燃料噴射弁21及び第2燃料噴射弁22による燃料噴射終了時におけるスワール流Wのスワール比SW
endが、ゼロ含む所定範囲内に収まるように、吸入時のスワール流Wの強さを制御するように構成される。
【0091】
これにより、各気筒10の燃焼室内にスワール流Wを発生させつつ、燃料噴霧によってスワール流Wを減衰させて、高温の既燃ガスと気筒10の内壁面との相対速度を低下させることができる。そのため、燃料燃焼時における空気利用率を高めてスモークの原因となる煤の発生を抑制しつつ、高温の既燃ガスと気筒10の内壁面との相対速度を低下させて気筒10の内壁面の熱伝達率を小さくすることできる。そのため、排気エミッションの悪化を抑制しつつ、熱損失の増加を抑制して燃費の向上を図ることができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0093】
例えば上記の実施形態では、2つのサイド燃料噴射弁20,21を設けていたが、サイド燃料噴射弁は少なくとも1つ以上あればよい。
【0094】
また上記の実施形態では、第1サイド燃料噴射弁21、及び第2サイド燃料噴射弁22は、それぞれ3つの噴孔を有しており、そのうちの2つの噴孔からスワール流Wと対向する方向に燃料を噴射することができるように構成されていたが、
図7に示すように、各サイド燃料噴射弁20、21は、少なくとも1つの噴孔からスワール流Wと対向する方向に燃料を噴射することができるように構成されていればよい。すなわちサイド燃料噴射弁は、1つ以上の噴孔がスワール流の強度を変えることができるノズル構成を有していればよい。またサイド燃料噴射弁の噴孔数や噴孔面積、噴射方向等も、スワール流の強度を変えることができるのであれば、上記の実施形態の構成に限られるものではない。