特許第6671345号(P6671345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671345
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】トーショナルバイブレーションダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/75 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   F16D13/75 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-510570(P2017-510570)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公表番号】特表2017-524113(P2017-524113A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】DE2015200431
(87)【国際公開番号】WO2016026491
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】102014216594.6
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ホイベアガー
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500853(JP,A)
【文献】 特表平9−504355(JP,A)
【文献】 特表2000−500852(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2317207(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第10155146(DE,A1)
【文献】 米国特許第2774452(US,A)
【文献】 米国特許第5349882(US,A)
【文献】 特開2003−322175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーショナルバイブレーションダンパあって、
自動車の摩擦クラッチ(50)のカウンタプレート(58)に対する、プレッシャプレート(56)の、摩擦に起因する誤った間隔を後調整するための後調整装置(20)を備え
前記後調整装置(20)は、周方向に回動可能なランプリング(22)を有し、該ランプリング(22)は、軸方向に突出する複数のランプ(24)を有し、
前記ランプリング(22)の前記ランプ(24)に対するカウンタ支持部を形成するための構成要素(25)が設けられており、
前記後調整装置(20)は、前記構成要素(25)に対して相対的に前記ランプリング(22)を回動させるための、前記ランプリング(22)に作用する位置調整ユニット(26)を有し、
前記位置調整ユニット(26)は、距離制御式の位置調整ユニット(32)であり、
前記距離制御式の位置調整ユニット(26)は、スピンドルシステム(34)として構成されており、該スピンドルシステム(34)は、前記ランプリング(22)を回動させるための、スピンドル(36)に螺着されたスピンドルナット(38)と、前記スピンドル(36)と相対回動不能に結合されたピニオン(40)とを有し、該ピニオン(40)は、該ピニオン(40)の周に係合可能な駆動レバー(42)により回動可能である、
トーショナルバイブレーションダンパ。
【請求項2】
前記構成要素(25)は、軸方向に突出する複数のカウンタランプ(28)を有する、請求項記載のトーショナルバイブレーションダンパ。
【請求項3】
前記構成要素(25)は、はずみディスク(12)または摩擦リング(16)として構成されている、請求項1または2記載のトーショナルバイブレーションダンパ。
【請求項4】
前記駆動レバー(42)は、駆動ばね(44)に配置されており、該駆動ばね(44)は、クラッチ部分より可動である、請求項1から3までのいずれか1項記載のトーショナルバイブレーションダンパ。
【請求項5】
前記クラッチ部分は、プレッシャプレート(56)として構成されている、請求項4記載のトーショナルバイブレーションダンパ。
【請求項6】
前記トーショナルバイブレーションダンパは、シングルマスフライホイールまたはデュアルマスフライホイールとして構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のトーショナルバイブレーションダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後調整装置を備えるトーショナルバイブレーションダンパ、特に後調整装置を備えるシングルマスフライホイールまたはデュアルマスフライホイールに関する。後調整装置により、自動車の摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩擦に起因する誤った間隔の後調整を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
トーショナルバイブレーションダンパは、自動車エンジンのドライブシャフトのねじり振動を減衰するものとして知られている。たとえば、独国特許出願公開第102008004150号明細書では、デュアルマスフライホイールが公知であり、このデュアルマスフライホイールでは、自動車用内燃機関のクランクシャフトのねじり振動を減衰するために、プライマリマスが、アーチ型のコイルばねを介して、プライマリマスに対して相対的に回動可能なセカンダリマスと連結されている。アーチ型のコイルばねは、アーチ型のコイルばね用の溝に配置されており、アーチ型のコイルばね用の溝の溝壁は、プライマリマスにより形成されている。アーチ型のコイルばね用の溝に、セカンダリマスのフランジが突出し、このフランジは、摩擦リングを介して溝壁に支持されている。
【0003】
さらに、摩擦クラッチに、発生する摩擦ライニングの摩耗を補整するために、力制御式の後調整装置が設けられていることが知られている。ここでは、プレッシャプレート、たとえば皿ばねを移動させるための、摩擦クラッチのカウンタプレートに力を加える操作システムの圧着力の、摩耗に基づく不都合な発生が検出され、圧着力に応じて後調整が成される。代替的に、クラッチディスクの摩擦ライニングの摩耗状態で発生する、クラッチハウジングと操作システムとの間の誤った間隔を求めて(センシングして)、誤った間隔に応じて修正を行うことができる。この場合、修正のために、カウンタプレートと操作システムとの間に配置された、ランプシステムまたはねじ山などの補整手段が回動させられる。
【0004】
独国特許出願公開第102009035225号明細書、国際公開第2009/056092号および独国特許出願公開第102011086995号明細書において、それぞれ距離制御式の後調整装置を備える摩擦クラッチが公知である。摩擦クラッチでは、皿ばねとプレッシャプレートとを有する操作システムの間隔に応じて軸方向に変位する、センシングプレートの駆動レバーが、スピンドルのピニオンに作用し、スピンドル上に保持されたスピンドルナットが、スピンドルの回動時、ランプシステムの、プレッシャプレートと皿ばねとの間に配置されたランプリングを、プレッシャプレートのカウンタランプに対して相対的に回動させ、これにより、プレッシャプレートに対する操作システムの初期の間隔が再び形成されることが知られている。プレッシャプレートに対するカウンタプレートの移動中、駆動レバーは、ピニオンの歯の表面上をスライドし、所定の摩耗状態で、2つの歯の間の歯溝に係合する。駆動レバーは、摩擦クラッチの次の開放動作に際してピニオンを形状接続(形状による束縛)式に連行し、その際、ピニオンを、ひいてはスピンドルを回動させる。これにより、スピンドルナットは、スピンドルに沿って移動させられ、ランプリングを、対応する角度の値だけ回動させ、これにより、摩擦クラッチが後調整される。このような作動原理を有する後調整装置は、以下、「TAC−スピンドル」とも称される。ランプリングは、係合開口を有し、係合開口に、スピンドルナットから突出する歯が係合するので、スピンドルの回動時およびスピンドルに沿ったスピンドルナットの軸方向移動時、スピンドルナットの歯は、ランプリングを回動させることができる。このような作動原理を有する後調整装置は、以下、「TAC−スピンドル」とも称される。
【0005】
装置、特にトーショナルバイブレーションダンパが追加的な機能を有するようにする絶え間ない要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、自動車の摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩擦に起因する誤った間隔を後調整することができるトーショナルバイブレーションダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴部に記載の構成を有するトーショナルバイブレーションダンパにより解決される。本発明の好適な形態は、従属請求項に記載されており、従属請求項に記載の好適な形態は、それぞれ単独でまたは組み合わせて、本発明の態様を成すことができる。
【0008】
本発明によれば、自動車の摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩擦に起因する誤った間隔を後調整するための後調整装置を備える、トーショナルバイブレーションダンパ、特にフライホイールが設けられている。
【0009】
上述のように、自動車の摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩擦に起因する誤った間隔を後調整するための後調整装置が知られている。公知のクラッチでは、後調整装置は、たとえばプレッシャプレートと皿ばねとの間または皿ばねとクラッチカバーとの間などの、プレッシャプレートの側に配置されている。
【0010】
本発明による着想は、後調整装置が、プレッシャプレートの側に配置されているのではなく、カウンタプレートの側に、特にトーショナルバイブレーションダンパに配置されている点に認められる。トーショナルバイブレーションダンパは、たとえばシングルマスフライホイールまたはデュアルマスフライホイールとして構成されてよい。
【0011】
シングルマスフライホイールは、はずみディスクと、カバーと、はずみディスクとカバーとの間に配置された摩擦リングとを有してよい。摩擦リングは、たとえば鋳造部材または鋼部材として構成されてよい。鋼摩擦リングの場合に十分な質量を生じさせるために、複数の摩擦リングが互いに結合されてよい。リングの間の結合は、たとえばリベット止めまたは溶接により行ってよい。同様に、熱伝達を促進するために、摩擦リング上にアルミニウムから成る薄い層を使用することも可能である。摩擦リングは、様々な材料から形成されてよく、少なくとも1つの摩擦リングは、板ばねを介して、はずみディスクに取り付けられている。後調整装置は、たとえばはずみディスクと摩擦リングとの間に装着されてよい。後調整時、摩擦リングは、後調整装置により、軸方向に移動させることができる。摩擦リングは、直接にカウンタプレートに配置されてよく、それ自体の移動により、カウンタプレートを変位させることができる。摩擦クラッチのカウンタプレートは、摩擦リングから構成されていてもよい。摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩耗に起因する誤った間隔は、カウンタプレートの変位により後調整することができる。
【0012】
好適には、後調整装置は、周方向に回動可能なランプリングを有してよく、ランプリングは、軸方向に突出する複数のランプ有してよい。たとえば、ランプリングは、はずみディスクと摩擦リングとの間に、または摩擦リングとトーショナルバイブレーションダンパのカバーとの間に配置されてよい。特に、ランプは、互いにほぼ同一に構成されて、周方向で均一に分配されていてよい。ランプの同一の構成および均一な分布により、不均等な構成要素荷重に基づく摩耗を回避することができる。
【0013】
好適には、トーショナルバイブレーションダンパは、ランプリングのランプに対するカウンタ支持部を形成するための構成要素、特にはずみディスクまたは摩擦リングを有してよく、この構成要素は、軸方向に突出する複数のカウンタランプを有してよい。好適には、カウンタランプは、はずみディスクから直接に成形加工されてよい。カウンタランプは、摩擦リングまたはカバーに配置されてもよい。特に、カウンタランプは、互いにほぼ同一に構成されるとともに、周方向で均一に分配されてよい。好適には、カウンタランプの数は、ランプリングのランプの数に相当する。
【0014】
構成要素に対して相対的にランプリングを回動させるために、後調整装置は、ランプリングに作用する位置調整ユニットを有してよい。位置調整装置は、たとえばはずみディスクに取り付けられてよい。位置調整ユニットは、摩擦リングまたはカバーに取り付けられてもよい。
【0015】
さらに本発明の好適な改良形態によれば、位置調整ユニットは、距離制御式の位置調整ユニットとして構成されてよい。好適には、位置調整ユニットは、スピンドルシステムとして構成されてよい。スピンドルシステムは、ランプリングを回動させるための、スピンドルに螺着されたスピンドルナットと、スピンドルと相対回動不能に結合されたピニオンとを有し、ピニオンは、ピニオンの周に係合可能な駆動レバーにより回動可能である。
【0016】
好適には、駆動レバーは、駆動ばねに配置されてよく、駆動ばねは、クラッチ部分、特にプレッシャプレートにより可動であってよい。カウンタプレートに対してプレッシャプレートを動かす間、駆動ばねは、プレッシャプレートにより押圧されて、駆動レバーが、ピニオンの歯の表面上をスライドし、所定の摩耗状態で、2つの歯の間の歯溝に係合する。駆動レバーは、摩擦クラッチの次の開放動作に際してピニオンを形状接続式に連行し、その際、ピニオンを、ひいてはスピンドルを回動させる。これにより、スピンドルナットは、スピンドルに沿って移動させられ、ランプリングを、対応する角度の値だけ回動させ、これにより、摩擦クラッチが後調整される。距離制御式の位置調整ユニットは、特に、その他の点では独国特許出願公開第102009035225号明細書、国際公開第2009/056092号および独国特許出願公開第102011086995号明細書に記載されたように構成されかつ改良されてよく、これに関して、これらの文献の内容は本発明の一部として援用される。
【0017】
本発明の別の変形例は、位置調整ユニットが力制御式の位置調整ユニットとして構成されてよい点に認められる。
【0018】
好適には、力制御式の位置調整ユニットは、ランプリングを回動させるための、ほぼ接線方向に作用する推進力をランプリングに及ぼす送りばねと、ランプリングを摩擦接続式にロックするための、ランプリングに作用可能なクランプばねとを有してよく、クランプばねからランプリングに及ぼすことができるクランプ力は、プレッシャプレートの移動距離(ストローク距離)に応じて変更可能である。力制御式の位置調整ユニットは、特に、その他の点では国際公開第2008/058508号に記載されたように構成されかつ改良されてよく、これに関して、その文献の内容は本発明の一部として援用される。
【0019】
以下、添付の図面に関連して、好適な実施の形態に基づいて本発明を例示的に説明する。以下に記載の特徴は、それぞれ単独でも組み合わせても本発明の態様を成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態のトーショナルバイブレーションダンパの分解図である。
図2】本発明の第2の実施の形態のトーショナルバイブレーションダンパの分解図である。
図3図2のトーショナルバイブレーションダンパを有する摩擦クラッチの概略断面図である。
図4図3においてIIIで示された領域の拡大図である。
図5】本発明に係るトーショナルバイブレーションダンパの位置調整ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態のトーショナルバイブレーションダンパの分解図を示している。トーショナルバイブレーションダンパ10は、スタータリングギア11とはずみディスク12とを有し、はずみディスク12とカバー14が結合されている。カバー14に、摩擦リング16が配置されている。摩擦リング16は、複数の板ばね18により、はずみディスク12に取り付けられている。板ばね18は、リベット19により、はずみディスク12および摩擦リング16上に取り付けられている。板ばね18を介する結合により、摩擦リング16は、トーショナルバイブレーションダンパ10の軸方向に、限定的に移動可能である。自動車の摩擦クラッチのカウンタプレートに対する、プレッシャプレートの、摩擦に起因する誤った間隔を後調整するために、トーショナルバイブレーションダンパ10は、後調整装置20を備える。後調整装置20は、周方向に回動可能なランプリング22を有し、ランプリング22は、軸方向に突出する複数のランプ(傾斜部)24を有する。この実施の形態では、ランプリング22は、はずみディスク12と摩擦リング16との間に配置されている。ランプリング22のランプ24に対するカウンタ支持部を形成するために、構成要素25が設けられている。本実施の形態では、構成要素25は、はずみディスク12である。はずみディスク12は、軸方向に突出する複数のカウンタランプ28を有する。図1に示すように、カウンタランプ28は、本実施の形態では、はずみディスク12から軸方向に突出する突出部30として構成されている。突出部30は、互いにほぼ同一に構成されているとともに、周方向で均一に分配されている。
【0022】
さらに、後調整装置20は、はずみディスク12に対して相対的にランプリング22を回動させるための、ランプリング22に作用する位置調整ユニット26を有する。本実施の形態では、位置調整ユニット26は、距離制御式の位置調整ユニット32である。この距離制御式の位置調整ユニット32は、スピンドルシステム34として構成されている。図1に示すように、スピンドルシステム34は、ランプリング22を回動させるための、スピンドル36に螺着されたスピンドルナット38と、スピンドル36と回動不能に結合されたピニオン40とを有する。ピニオン40は、ピニオン40の周に係合する駆動レバー42により回動させることができる。駆動レバー42は、駆動ばね44に配置されている。
【0023】
図2は、本発明の第2の実施の形態のトーショナルバイブレーションダンパの分解図を示している。図1のトーショナルバイブレーションダンパ10と図2のトーショナルバイブレーションダンパ10との違いは、図2に示したトーショナルバイブレーションダンパ10は、第1の摩擦リング46と第2の摩擦リング48とを有する一方、図1に示したトーショナルバイブレーションダンパ10は、1つの摩擦リング16しか有しない点である。両方の摩擦リング46,48は、直接に相並んで配置されている。
【0024】
図3は、図2のトーショナルバイブレーションダンパ10を有する摩擦クラッチ50の概略断面図を示している。摩擦クラッチ50は、クラッチカバー52と、皿ばね54により軸方向に可動のプレッシャプレート56とを有し、プレッシャプレート56は、皿ばね54によりカウンタプレート58へ向けて移動させることができ、これにより、摩擦ライニング60を有するクラッチディスク62は、プレッシャプレート56とカウンタプレート58との間で押し付けられて、摩擦クラッチ50が閉じられる。この摩擦クラッチ50は、さらに図2のトーショナルバイブレーションダンパ10を有する。トーショナルバイブレーションダンパ10は、スタータリングギア11とはずみディスク12とを有し、はずみディスク12とカバー14が結合されている。カバー14に、第1の摩擦リング46および第2の摩擦リング48が配置されている。両方の摩擦リング46,48は、直接に相並んで配置されている。本実施の形態では、第2の摩擦リング48は、カウンタプレート58として用いられる。カウンタプレート58に対する、プレッシャプレート56の、摩擦に起因する誤った間隔を後調整するために、トーショナルバイブレーションダンパ10に、後調整装置20が設けられている。後調整装置20は、周方向に回動可能なランプリング22を有し、ランプリング22は、軸方向に突出する複数のランプ24を有する。本実施の形態では、ランプリング22は、はずみディスク12と第1の摩擦リング46との間に配置されている。はずみディスク12は、軸方向に突出する複数のカウンタランプ28を有する。はずみディスク12に対して相対的にランプリング22を回動させるために、後調整装置20は、ランプリング22に作用する位置調整ユニット26を有する。本実施の形態では、位置調整ユニット32は、スピンドルシステム34として構成されている。スピンドルシステム34は、ランプリング22を回動させるための、スピンドル36に螺着されたスピンドルナット38と、スピンドル36と相対回動不能に結合されたピニオン40とを有する。ピニオン40は、ピニオン40の周に係合可能な駆動レバー42により回動させることができる。駆動レバー42は、駆動ばね44に配置されている。駆動ばね44は、プレッシャプレート56により操作することができる。
【0025】
図4は、図3においてIIIで示した領域の拡大図を示している。図4に示すように、駆動ばね44は、結合ロッド64により、プレッシャプレート56と結合されている。カウンタプレート58に対してプレッシャプレート56が移動させられる間、駆動ばね44は、プレッシャプレート56により押圧されて、駆動レバー42がピニオン40の歯66の表面上をスライドし、所定の摩耗状態で、2つの歯66の間の歯溝68に係合する。駆動レバー42は、摩擦クラッチ50の次の開放動作に際してピニオン40を形状接続式に連行し、その際、ピニオン40を、ひいてはスピンドル36を回動させる。これにより、スピンドルナット38は、スピンドル36に沿って移動させられ、ランプリング22を、対応する角度の値だけ回動させ、これにより、摩擦クラッチ50が後調整される。さらに図4に基づいて看取されるように、ピニオン40の周に係合する、はずみディスク12に取り付けられた戻り止め70が設けられており、戻り止め70は、ピニオン40の不意の戻り回動を阻止する。
【0026】
図5は、本発明に係るトーショナルバイブレーションダンパ10の位置調整ユニット32の斜視図を示している。この位置調整ユニット32は、スピンドルシステム34として構成されている。スピンドルシステム34は、スピンドル36を有し、スピンドル36は、スピンドル36と結合されたピニオン40により駆動させることができる。スピンドル36の回動により、スピンドル36に螺着されたスピンドルナット38を、スピンドル36に沿って移動させることができる。スピンドルナット38は、ランプリング22と形状接続式に結合されており、これにより、スピンドルナット38の移動により、ランプリング22は、はずみディスク12に対して相対的に回動させられる。そのために、駆動レバー42が、スピンドル36と結合されたピニオン40に形状接続式に係合し、カウンタプレート58に対する、プレッシャプレート56の十分に大きな誤った間隔が生じると、ピニオン40を回動させることができる。本実施の形態では、さらに、ピニオン40の周に係合する、はずみディスク12に取り付けられた戻り止め70が設けられており、戻り止め70は、ピニオン40の不意の戻り回動を阻止する。スピンドルシステム34は、リベット19により、はずみディスク12に取り付けられている。
【符号の説明】
【0027】
10 トーショナルバイブレーションダンパ
11 スタータリングギア
12 はずみディスク
14 カバー
16 摩擦リング
18 板ばね
19 リベット
20 後調整装置
22 ランプリング
24 ランプ
25 構成要素
26 位置調整ユニット
28 カウンタランプ
30 突出部
32 距離制御式の位置調整ユニット
34 スピンドルシステム
36 スピンドル
38 スピンドルナット
40 ピニオン
42 駆動レバー
44 駆動ばね
46 第1の摩擦リング
48 第2の摩擦リング
50 摩擦クラッチ
52 クラッチカバー
54 皿ばね
56 プレッシャプレート
58 カウンタプレート
60 摩擦ライニング
62 クラッチディスク
64 結合ロッド
66 歯
68 歯溝
70 戻り止め
図1
図2
図3
図4
図5