特許第6671367号(P6671367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671367
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】環状ジペプチド含有抗肥満用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20200316BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   A61K31/495
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P43/00 111
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-529858(P2017-529858)
(86)(22)【出願日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2016070864
(87)【国際公開番号】WO2017014153
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-142654(P2015-142654)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】金川 典正
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲司
(72)【発明者】
【氏名】小貫 仁
(72)【発明者】
【氏名】野中 翔太
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−537195(JP,A)
【文献】 米国特許第05418218(US,A)
【文献】 Journal of Food Science,2011年,vol.76,C272-C278
【文献】 PRASAD C.,Bioactive Cyclic Dipeptides,Peptides,1995年,vol.16, no.1,p.151-164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する組成物であって、
環状ジペプチドが、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むものであり、
前記組成物が、アシルCoAオキシダーゼ発現量の増加用、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A発現量の増加用、または中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ発現量の増加用である、前記組成物
【請求項2】
環状ジペプチド又はその塩の総量が、20mg/100g/Brix以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
体内の脂肪の分解促進作用を有する、請求項1又は2に記載の組成物
【請求項4】
体内エネルギー消費量の増大作用を有する、請求項1又は2に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満用組成物に関する。さらに詳しくは、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分して含有する抗肥満用組成物、肥満を予防又は改善するための環状ジペプチド又はその塩の使用、及び環状ジペプチド又はその塩を利用した肥満を予防又は改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は現代社会における重大な問題の一つであるが、その主たる要因は日本人の生活様式の欧米化に伴う高脂肪食の摂取量の増加にある。また、脂肪の過剰摂取は、肥満のみならず、肥満に起因する様々な疾患、例えば、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化等に繋がることが知られている。そのため、前記肥満に関連する様々な疾患の発症を予防するためにも、肥満の予防又は改善が極めて重要である。
【0003】
肥満の予防のためには、食事制限によって摂取カロリーを減らすことが有効であるとされているが、この方法は厳密な栄養指導と生活管理が必要とされ、日常生活において実行することは困難である。また、肥満の予防又は改善のために、人工的に合成された食欲抑制剤等を長期的に摂取することは、予期せぬ副作用の発現が懸念されるため好ましくない。
【0004】
このような背景の下、安全でかつ長期摂取可能な有効成分の開発が注目されている。例えば、特許文献1には、ウーロン茶等に含まれるエピガロカテキン多量体がリパーゼ活性の阻害作用を有し、これにより食事由来の脂肪吸収を抑制できることが開示されている。また、特許文献2及び3には、非重合体カテキン類が肝臓のβ酸化関連遺伝子の発現増加作用や血中総ケトン体濃度の上昇作用を有し、これにより脂肪の分解促進効果や脂質の代謝促進効果が発揮されることが開示されている。特許文献4及び5では、コラーゲン等が脂質代謝の調節作用や体内脂肪量の減少作用を示すことも報告されている。さらに、特許文献6には、トリプトファンとヒスチジンからなるジペプチドがAMPキナーゼ活性化作用を有し、これにより肥満の予防又は治療効果が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4668553号公報
【特許文献2】特許3756438号公報
【特許文献3】特開2004−035417号公報
【特許文献4】特開2007−254440号公報
【特許文献5】特許5156330号公報
【特許文献6】特開2014−152149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、より簡便に製造でき、かつ安全性が高く、体内への高い吸収性に優れ、高い効果が期待できる抗肥満用組成物、肥満を予防又は改善するための素材の使用、及び肥満を予防又は改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、環状ジペプチドの利用に着目した。環状ジペプチドは、直鎖状ジペプチドの末端に存在するアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成した環状構造を有するジペプチドであり、近年ではその様々な生理活性が注目を受けている。本発明者らは、特定の環状ジペプチドを組み合わせて摂取することによって、体重増加抑制作用や体脂肪の蓄積抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、体内エネルギー消費量の増大作用、体内の脂肪の分解促進作用等が発揮され、これにより肥満の予防又は改善等の抗肥満効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗肥満用組成物であって、
環状ジペプチドが、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むものである、前記抗肥満用組成物。
(2)環状ジペプチド又はその塩の総量が、20mg/100g/Brix以上である、(1)に記載の抗肥満用組成物。
(3)体重の増加を抑制することにより肥満を予防又は改善するための、(1)又は(2)に記載の抗肥満用組成物。
(4)体脂肪の蓄積を抑制することにより肥満を予防又は改善するための、(1)又は(2)に記載の抗肥満用組成物。
(5)内臓脂肪の蓄積を抑制することにより肥満を予防又は改善するための、(1)又は(2)に記載の抗肥満用組成物。
(6)体内エネルギー消費量の増大を介して肥満を予防又は改善するための、(1)又は(2)に記載の抗肥満用組成物。
(7)体内の脂肪の分解促進を介して肥満を予防又は改善するための、(1)又は(2)に記載の抗肥満用組成物。
(8)アシルCoAオキシダーゼ発現量の増加作用を有する、(7)に記載の抗肥満用組成物。
(9)カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A発現量の増加作用を有する、(7)に記載の抗肥満用組成物。
(10)中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ発現量の増加作用を有する、(7)に記載の抗肥満用組成物。
(11)抗肥満作用により発揮される機能の表示を付した、(1)〜(10)のいずれかに記載の抗肥満用組成物。
(12)機能の表示が、「肥満を予防する」、「肥満を改善する」、「体重の増加を抑制する」、「体脂肪の蓄積を抑制する」、「内臓脂肪の蓄積を抑制する」、「体内エネルギー消費量を増大させる」、「体内の脂肪の分解を促進させる」、「脂肪を消費しやすくする」、「脂肪の燃焼を促進する」、及び「代謝を促進する」からなる群から選択される、(11)に記載の抗肥満用組成物。
(13)肥満を予防又は改善するための、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩の使用であって、
環状ジペプチドが、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むものである、前記使用。
(14)アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、肥満を予防又は改善する方法であって、
環状ジペプチドが、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むものである、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、非常に効果的な抗肥満作用を有する組成物を提供することができる。本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩は安全性が高いため、本発明の抗肥満用組成物は市場における利用価値が高いと言える。また、本発明の抗肥満用組成物を摂取することにより、体重増加抑制作用や体脂肪の蓄積抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、体内エネルギー消費量の増大作用、体内の脂肪の分解促進作用等が発揮されるため、肥満の予防又は改善のために効果的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様は、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗肥満用組成物である。
【0011】
1.環状ジペプチド又はその塩
本明細書において「環状ジペプチド」とは、アミノ酸を構成単位とすることを特徴とし、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成したジケトピペラジン構造を有する環状ジペプチドのことをいう。そのため、環状ジペプチドは、鎖状のジペプチドとは区別される。尚、本明細書において、環状ジペプチド又はその塩をまとめて、単に、環状ジペプチドと称する場合がある。また、本明細書において、環状ジペプチドのアミノ酸構成が同じであれば、それらの記載順序はいずれが先でも構わず、例えば、〔Cyclo(Gly-Arg)〕と〔Cyclo(Arg-Gly)〕とは同じ環状ジペプチドを表すものである。
【0012】
環状ジペプチドではアミド結合を介して二個のアミノ酸の末端部分が結合しているため(即ち、環状ジペプチドは、アミノ末端とカルボキシ末端とがアミド結合することによって形成される環状構造を有しているため)、分子末端部分に極性基であるカルボキシル基やアミノ基が露出している直鎖状ジペプチド(特に、同種のアミノ酸組成からなる直鎖状ジペプチド)と比較して環状ジペプチドは脂溶性が高いという特徴を有する。そのため、環状ジペプチドは直鎖状のジペプチドと比較して、消化管透過性や膜透過性に優れる。このことは、過去に報告されているラット反転腸管を用いた化合物透過試験の結果からも明らかである(J. Pharmacol, 1998, 50: 167-172)。また環状ジペプチドは、その特異的な構造から各種ペプチダーゼに対する耐性も高まると考えられる。
【0013】
本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩は特に限定されないが、例えば、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕からなる群から選択される1種以上のものである。環状ジペプチド又はその塩の数は特に限定されないが、例えば、前述の環状ジペプチドから選択される2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、10種以上、15種以上、20種以上、又は30種以上を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の抗肥満用組成物に含まれる複数の環状ジペプチド又はその塩の種類は特に限定されないが、抗肥満効果が高い環状ジペプチド又はその塩を選択して含めることが好ましい。尚、当該抗肥満効果は、アシルCoAオキシダーゼや中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ等のβ酸化系酵素の発現量の増加効果やカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A発現量の増加効果、体重の増加抑制効果、体脂肪の蓄積抑制効果、内臓脂肪の蓄積抑制効果、体内エネルギー消費量の増大効果、又は体内の脂肪の分解促進効果等に基づいて決定することができる。
【0015】
また、抗肥満効果の観点から、本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩は、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むことがより好ましい。
【0016】
本明細書において「環状ジペプチドの塩」とは、前記環状ジペプチドの薬理学的に許容される任意の塩(無機塩及び有機塩を含む)をいい、例えば、前記環状ジペプチドのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)等が挙げられるが、これらに限定されない。環状ジペプチドの塩は、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に調製され得る。
【0017】
本発明で用いる環状ジペプチドは、当該分野で公知の方法に従って調製することができる。例えば、化学合成法や酵素法、微生物発酵法により製造されてもよく、直鎖状ペプチドを脱水及び環化させることにより合成されてもよく、特開2003−252896号公報やJournal of Peptide Science, 10, 737-737, 2004に記載の方法に従って調製することもできる。例えば、動植物由来タンパク質を含む原料に酵素処理や熱処理を施して得られる動植物由来ペプチドを、さらに高温加熱処理することで、環状ジペプチドを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を得ることができる。これらの点から、本発明で用いる環状ジペプチド又はその塩は、化学的又は生物的に合成されるものであってもよいし、或いは動植物由来ペプチドから得られるものであってもよい。
【0018】
2.動植物由来ペプチド
本明細書における「動植物由来ペプチド」は特に限定されないが、例えば、大豆ペプチド、茶ペプチド、麦芽ペプチド、乳ペプチド、プラセンタペプチド、コラーゲンペプチド等を用いることができる。動植物由来のタンパク質又はタンパク質を含む原料から動植物由来ペプチドを調製して用いてもよいが、市販品を用いてもよい。
【0019】
2−1.大豆ペプチド
本明細書でいう「大豆ペプチド」とは、大豆タンパク質に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。原料となる大豆(学名:Glycine max)は品種や産地などの制限なく用いることができ、粉砕品などの加工品段階のものを用いることもできる。
【0020】
2−2.茶ペプチド
本明細書でいう「茶ペプチド」とは、茶(茶葉や茶殻を含む)抽出物に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる茶由来の低分子ペプチドをいう。抽出原料となる茶葉としては、茶樹(学名:Camellia sinensis)を用いて製造された茶葉の葉、茎など、抽出して飲用可能な部位を使用することができる。また、その形態も大葉、粉状など制限されない。茶葉の収穫期についても、所望する香味に合わせて適宜選択できる。
【0021】
2−3.麦芽ペプチド
本明細書でいう「麦芽ペプチド」とは、麦芽又はその粉砕物から得られる抽出物に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる麦芽由来の低分子ペプチドをいう。原料となる麦芽ペプチドは、品種や産地などの制限なく用いることができるが、特に大麦の種子を発芽させた大麦麦芽が好適に用いられる。本明細書においては、大麦麦芽を単に「麦芽」と表記することもある。
【0022】
2−4.乳ペプチド
本明細書でいう「乳ペプチド」とは、天然の乳由来の成分である乳蛋白質をアミノ酸が少なくとも数個結合した分子に分解したものである。より具体的には、ホエイ(乳清タンパク質)又はカゼイン等の乳蛋白質をプロテナーゼ等の酵素により加水分解し、これを濾過して得られる濾液を殺菌及び/又は濃縮して乾燥することにより得られるホエイペプチド、カゼインペプチド等が挙げられる。
【0023】
2−5.プラセンタペプチド
プラセンタとは哺乳類の胎盤のことであり、その優れた機能性から、近年、健康食品、化粧品、医薬品素材として用いられている。本明細書において「プラセンタペプチド」とは、プラセンタを酵素処理、又は亜臨界処理により可溶化、低分子化したものをいう。また、本来の意味とは異なるが、植物の胎座から得られる抽出物が胎盤由来のプラセンタと同等の生理学的効果を有するものとして健康食品、化粧品等に利用されており、これらは植物プラセンタと呼ばれる。本明細書における「プラセンタペプチド」には、植物プラセンタに酵素処理、又は亜臨界処理等を施し、可溶化、低分子化したものも含まれる。
【0024】
2−6.コラーゲンペプチド
本明細書でいう「コラーゲンペプチド」とは、コラーゲン又はその粉砕物を酵素処理や熱処理を施し、コラーゲンを低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。コラーゲンは動物の結合組織の主要なタンパク質であり、ヒトを含めた哺乳類の身体に最も大量に含まれるタンパク質である。
【0025】
3.動植物由来ペプチド熱処理物
上述した通り、動植物由来ペプチドを高温加熱処理することで、環状ジペプチドを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を得ることができる。本明細書において「高温加熱処理」とは、100℃以上の温度かつ大気圧を超える圧力下で一定時間処理することを意味する。高温高圧処理装置としては、耐圧性抽出装置や圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
【0026】
高温加熱処理における温度は、100℃以上である限り特に限定されないが、好ましくは100℃〜170℃、より好ましくは110℃〜150℃、さらにより好ましくは120℃〜140℃である。尚、この温度は、加熱装置として耐圧性抽出装置を用いた場合には抽出カラムの出口温度を測定した値を示し、加熱装置としてオートクレーブを用いた場合には、圧力容器内の中心温度の温度を測定した値を示す。
【0027】
高温加熱処理における圧力は、大気圧を超える圧力である限り特に限定されないが、好ましくは0.101MPa〜0.79MPa、より好ましくは0.101MPa〜0.60MPa、さらにより好ましくは0.101MPa〜0.48MPaである。
【0028】
高温加熱処理時間は、環状ジペプチドを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは15分〜600分程度、より好ましくは30分〜500分程度、さらにより好ましくは60分〜300分程度である。
【0029】
また、動植物由来ペプチドの高温加熱処理条件は、環状ジペプチドを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは[温度:圧力:時間]が[100℃〜170℃:0.101MPa〜0.79MPa:15分〜600分]、より好ましくは[110℃〜150℃:0.101MPa〜0.60MPa:30分〜500分]、さらにより好ましくは[120℃〜140℃:0.101MPa〜0.48MPa:60分〜300分]である。
【0030】
尚、得られた動植物由来ペプチド熱処理物に対して、所望により、濾過、遠心分離、濃縮、限外濾過、凍結乾燥、粉末化等の処理を行ってもよい。また、動植物由来ペプチド熱処理物中の特定の環状ジペプチドが所望の含有量に満たなければ、不足する特定の環状ジペプチドについては他の動植物由来ペプチドや市販品、合成品を用いて適宜追加することもできる。
【0031】
4.抗肥満用組成物
4−1.環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗肥満用組成物
本発明の一態様は、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗肥満用組成物である。
【0032】
本発明の抗肥満用組成物は、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕からなる群から選択される1種以上の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含むものである。本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩の数は特に限定されないが、本発明では、前述の環状ジペプチド又はその塩から選択される2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、10種以上、15種以上、20種以上、又は30種以上が含まれることが好ましい。また、本発明の抗肥満用組成物に含まれる複数の環状ジペプチド又はその塩の種類は特に限定されないが、抗肥満効果が高い環状ジペプチド又はその塩を選択して含めることが好ましい。
【0033】
さらに、抗肥満効果の観点から、本発明の抗肥満用組成物は、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含むことがより好ましい。
【0034】
本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩の総量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果が得られるような量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、本発明の抗肥満用組成物に含まれる環状ジペプチド又はその塩の総量は、ブリックス(Brix)あたりで200ppm/Brix以上、より好ましくは300ppm/Brix以上であり、5000ppm/Brix以下、より好ましくは4000ppm/Brix以下であり、典型的には、200ppm/Brix〜5000ppm/Brix、より好ましくは300ppm/Brix〜4000ppm/Brixである。また、本発明の抗肥満用組成物に含まれる各環状ジペプチド又はその塩の個別の含有量としては、1ppm/Brix以上、より好ましくは3ppm/Brix以上であり、3000ppm/Brix以下、より好ましくは2000ppm/Brix以下であり、典型的には、1ppm/Brix〜3000ppm/Brix、より好ましくは3ppm/Brix〜2000ppm/Brixである。本明細書において「Brixあたりの量」は、20℃のショ糖溶液(ショ糖のみを溶質として含む水溶液)の質量百分率に相当する値で定められる量を意味する。尚、特に断りがない限り、本明細書において用いる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
【0035】
4−2.他の成分
本発明の組成物は、その形態に応じて、前述の環状ジペプチド又はその塩の他に、任意の添加剤、通常用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分の他、製剤化において配合される溶剤、分散剤、崩壊剤、滑沢剤、賦形剤、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤、又はコーティング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
4−3.作用メカニズム
食事由来の脂質は小腸での吸収後、β酸化によってNADH2やATP等の体内エネルギーに変換される。一方で、体内エネルギーに変換されなかった脂質は全身に輸送され、脂肪組織として蓄積される。前記β酸化に関与する酵素はβ酸化関連酵素として知られており、例えば、ペルオキシソームβ酸化酵素であるアシルCoAオキシダーゼ(Acyl-CoA oxidase(ACO))、ミトコンドリア内への脂質輸送に関与するカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(carnitine palmitoyltransferase 1A(CPT1A))、ミトコンドリアβ酸化酵素である中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(medium-chain acyl-CoA dehydrogenase(MCAD))等が挙げられる。そして、これらのβ酸化関連酵素の発現量を増大させることでβ酸化が促進され、それに伴い脂質の分解及び体内エネルギーへの変換も促進される。その結果、体重増加抑制作用や体脂肪の蓄積抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、体内エネルギー消費量の増大作用、体内の脂肪の分解促進作用等が得られ、肥満の予防又は改善等の抗肥満効果に繋がる。
【0037】
4−4.用途
本発明の抗肥満用組成物を摂取することで、体内におけるアシルCoAオキシダーゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ等の発現量を増大させることができ、これによりβ酸化が促進されると共に、脂質の分解及び体内エネルギーへの変換も促進される。従って、本発明の一態様は、アシルCoAオキシダーゼ発現促進作用、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A発現促進作用、又は中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ発現促進作用を有する抗肥満用組成物である。また、前記作用により、体重増加抑制作用や体脂肪の蓄積抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、体内エネルギー消費量の増大作用、体内の脂肪の分解促進作用等が発揮され、肥満の予防又は改善等の抗肥満効果を得ることができる。従って、本発明の一態様は、体重の増加抑制、体脂肪の蓄積抑制、内臓脂肪の蓄積抑制、体内エネルギー消費量の増大、又は体内の脂肪の分解促進等により肥満を予防又は改善するための抗肥満用組成物でもある。
【0038】
本発明の抗肥満用組成物は、公知の方法に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、又はカプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、又は乳剤等の液剤等に製剤化することができる。これらの組成物はそのまま水等と共に服用することができる。また、容易に配合することが出来る形態(例えば、粉末形態や顆粒形態)に調製後、例えば、医薬品の原材料として用いることができる。
【0039】
本発明は、一例として、組成物の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではなく、例えば剤の形態で提供することもできる。また、前記剤をそのまま組成物として、或いは、前記剤を含む組成物として提供することもできる。一例として、医薬等の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。本発明の組成物としては、医薬組成物、飲食品組成物、食品組成物、飲料組成物、化粧用組成物等が挙げられるが、これらに限定されない。食品組成物の限定的でない例として、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、食事療法用食品、健康食品、サプリメント、食品添加剤等が挙げられる。
【0040】
本発明の抗肥満用組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。具体的には、医薬品、医薬部外品及び化粧料としての使用が挙げられ、また、薬事法上はこれらに属さないが、肥満の予防効果、肥満の改善効果、体重の増加抑制効果、体脂肪の蓄積抑制効果、内臓脂肪の蓄積抑制効果、体内エネルギー消費量の増大効果、体内の脂肪の分解促進効果等を明示的又は暗示的に訴求する組成物としての使用が挙げられる。
【0041】
本発明は、別の側面では、抗肥満作用により発揮される機能の表示を付した、前記抗肥満用組成物に関する。このような表示又は機能表示は特に限定されないが、例えば、「肥満を予防する」、「肥満を改善する」、「体重の増加を抑制する」、「体脂肪の蓄積を抑制する」、「内臓脂肪の蓄積を抑制する」、「体内エネルギー消費量の増大させる」、「体内の脂肪の分解を促進させる」、「脂肪を消費しやすくする」、「脂肪の燃焼を促進する」、「代謝を促進する」等が挙げられる。尚、本発明において、当該表示及び機能表示のような表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0042】
本発明の抗肥満用組成物は、その形態に応じた適当な方法で摂取することができる。摂取方法としては、例えば、内用(経口用)、外用、注射等による方法が挙げられるが、本発明の所望の効果が発揮される限り、その方法は特に限定されない。尚、本明細書において「摂取」とは、摂取、服用、又は飲用等の全態様を含むものとして用いられる。
【0043】
本発明の抗肥満用組成物の摂取量は、その形態、摂取方法、使用目的及び摂取対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適時設定され、一定ではない。本発明における環状ジペプチド又はその塩の有効ヒト摂取量としては、一定ではないが、例えば、体重50kgのヒトで一日あたり、好ましくは10mg以上、より好ましくは100mg以上である。また、投与は所望の摂取量範囲内において、1日内において単回又は数回に分けて行ってもよい。摂取期間も任意である。尚、ここで本発明における環状ジペプチド又はその塩の有効ヒト摂取量とは、ヒトにおいて有効な効果を示す環状ジペプチド又はその塩の合計摂取量を意味する。
【0044】
本発明の抗肥満用組成物の摂取対象は、好ましくはヒトであるが、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。ヒト以外の動物を対象に摂取させる場合、マウス1個体当たり約20gに対して1日あたりの使用量は、組成物中の有効成分の含有量、摂取対象の状態、体重、性別及び年齢等の条件により異なるが、通常、環状ジペプチド又はその塩の総配合量は、好ましくは10mg/kg以上、より好ましくは100mg/kg以上である。
【0045】
5.肥満を予防又は改善するための環状ジペプチド又はその塩の使用
本発明の一態様は、環状ジペプチド又はその塩の肥満を予防又は改善するための使用である。好ましくは、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕からなる群から選択される1種以上の、肥満を予防又は改善するための使用である。環状ジペプチド又はその塩の数は特に限定されないが、前述の環状ジペプチド又はその塩から選択される2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、10種以上、15種以上、20種以上、又は30種以上の、肥満を予防又は改善するための使用であることが好ましい。また、本発明の前記使用で利用される複数の環状ジペプチド又はその塩の種類は特に限定されないが、抗肥満効果が高い環状ジペプチド又はその塩を選択して利用することが好ましい。
【0046】
さらに、抗肥満効果の観点から、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含む環状ジペプチド又はその塩の肥満を予防又は改善するための使用であることがより好ましい。
【0047】
本発明の使用には、例えば、体重の増加抑制、体脂肪の蓄積抑制、内臓脂肪の蓄積抑制、体内エネルギー消費量の増大、体内の脂肪の分解促進、肥満の予防、又は肥満の改善等のための使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、当該使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為、即ち、治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0048】
6.肥満を予防又は改善する方法
本発明の一態様は、肥満の予防又は改善を必要とする対象に、前述の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、肥満を予防又は改善する方法を提供するものである。好ましくは、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕からなる群から選択される1種以上の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、肥満を予防又は改善する方法である。環状ジペプチド又はその塩の数は特に限定されないが、前述の環状ジペプチド又はその塩から選択される2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、10種以上、15種以上、20種以上、又は30種以上の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、肥満を予防又は改善する方法であることが好ましい。また、本発明の前記方法で使用される複数の環状ジペプチド又はその塩の種類は特に限定されないが、抗肥満効果が高い環状ジペプチド又はその塩を選択して使用することが好ましい。
【0049】
さらに、抗肥満効果の観点から、シクログリシルアルギニン〔Cyclo(Gly-Arg)〕、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕、シクログリシルアラニン〔Cyclo(Gly-Ala)〕、シクロヒドロキシプロリルアラニン〔Cyclo(Hyp-Ala)〕、シクログリシルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Gly-Hyp)〕、シクログリシルリシン〔Cyclo(Gly-Lys)〕、シクログリシルセリン〔Cyclo(Gly-Ser)〕、シクロプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Pro-Glu)〕、シクログリシルバリン〔Cyclo(Gly-Val)〕、シクログリシルグルタミン酸〔Cyclo(Gly-Glu)〕、シクログリシルトレオニン〔Cyclo(Gly-Thr)〕、シクロヒドロキシプロリルグルタミン酸〔Cyclo(Hyp-Glu)〕、シクログリシルロイシン〔Cyclo(Gly-Leu)〕、シクログルタミルアルギニン〔Cyclo(Glu-Arg)〕、シクロプロリルヒドロキシプロリン〔Cyclo(Pro-Hyp)〕、シクログリシルアスパラギン酸〔Cyclo(Gly-Asp)〕、シクロプロリルアラニン〔Cyclo(Pro-Ala)〕、シクログリシルメチオニン〔Cyclo(Gly-Met)〕、シクログリシルグリシン〔Cyclo(Gly-Gly)〕、シクログリシルヒスチジン〔Cyclo(Gly-His)〕、シクロアラニルアラニン〔Cyclo(Ala-Ala)〕、シクログリシルイソロイシン〔Cyclo(Gly-Ile)〕、シクロヒドロキシプロリルアルギニン〔Cyclo(Hyp-Arg)〕、シクログルタミルアラニン〔Cyclo(Glu-Ala)〕、シクロアラニルアルギニン〔Cyclo(Ala-Arg)〕、シクログリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Gly-Phe)〕、シクロプロリルアルギニン〔Cyclo(Pro-Arg)〕、シクログリシルチロシン〔Cyclo(Gly-Tyr)〕、シクロプロリルプロリン〔Cyclo(Pro-Pro)〕、シクロアルギニルバリン〔Cyclo(Arg-Val)〕、シクログルタミルグルタミン酸〔Cyclo(Glu-Glu)〕、及びシクロプロリルリシン〔Cyclo(Pro-Lys)〕を含む環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、肥満を予防又は改善する方法であることがより好ましい。
【0050】
上記方法において、肥満の予防又は改善を必要とする対象とは、本発明の抗肥満用組成物の前記適用対象と同様である。また、上記方法における前述の環状ジペプチド又はその塩の使用量は特に限定されないが、有効量以上であることが好ましい。尚、本明細書中において有効量とは、本発明の抗肥満用組成物を上記対象に摂取させた場合に、摂取させていない対象と比較して、肥満を予防又は改善させることができる量のことである。例えば、本発明の抗肥満用組成物を上記対象に摂取させた場合に、摂取させていない対象と比較して、体重の増加を抑制できる量、体脂肪の蓄積を抑制できる量、内臓脂肪の蓄積を抑制できる量、体内エネルギー消費量を増大させることができる量、又は体内の脂肪の分解を促進できる量などである。具体的な有効量としては、摂取形態、摂取方法、使用目的及び対象の年齢、体重、症状等によって適時設定され一定ではない。
【0051】
本発明の方法においては、前記治療有効量となるよう、前述の環状ジペプチド又はその塩をそのまま、或いは、前述の環状ジペプチド又はその塩を含有する組成物として摂取してもよい。
【0052】
本発明の方法によれば、副作用を生じることなく肥満を予防又は改善することが可能になる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0054】
実施例1:環状ジペプチド32種混合物による抗肥満作用の評価
8適齢の雄性C57BL/6J系マウスを8匹ずつ4群に分け、それぞれに低脂肪精製飼料(AIN93M)、高脂肪精製飼料(D12451)、及び環状ジペプチド32種混合物を1.3%添加した高脂肪精製飼料を8週間自由摂取させた。環状ジペプチド混合物中の各環状ジペプチドの混合比率を表1に示す。また、飼料組成を表2に示す。


【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
飼育終了後、体重(g)、1日当たりの摂取カロリー(kcal/day)、摂餌効率(体重増加量(mg)/摂取カロリー(kcal))、内臓脂肪量(g)を各試験群間で比較した。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
注)有意差検定 (n=8)
(a) 低脂肪精製飼料摂取群に対して、P<0.01
(b) 高脂肪精製飼料摂取群に対して、P<0.01
表3の結果から、環状ジペプチド32種混合物を配合した高脂肪精製飼料をマウスに摂取させることで、通常の高脂肪精製飼料を摂取させた群と比較して、体重増加抑制効果、摂餌効率の低下効果、内臓脂肪の蓄積抑制効果が認められた。
【0060】
また、β酸化による脂肪酸の分解が促進されると、過剰量のアセチルCoA産生を介してケトン体濃度が増大する一方、分子内に脂肪酸を含むトリグリセリド濃度は低下する。従って、血清中の総ケトン体濃度及びトリグリセリド濃度を測定することで、β酸化活性を評価することができる。そこで、前記試験後のマウスから得られた血清中の総ケトン体濃度及びトリグリセリド濃度を測定した。結果を表4に示す。


【0061】
【表4】
【0062】
注)有意差検定 (n=8)
(a) 低脂肪精製飼料摂取群に対して、P<0.01
(b) 低脂肪精製飼料摂取群に対して、P<0.05
(c) 高脂肪精製飼料摂取群に対して、P<0.01
表4の結果から、環状ジペプチド32種混合物を配合した高脂肪精製飼料をマウスに摂取させることで、通常の高脂肪精製飼料を摂取させた群と比較して、血清中の総ケトン体濃度が上昇し、トリグリセリド濃度が低下することが示された。従って、環状ジペプチド32種混合物を配合した高脂肪精製飼料を摂取させることで、β酸化活性が増大することが示された。
【0063】
さらに、本試験後のマウスから肝臓を摘出し、当該肝臓からRNAを抽出した後、NucleoSpin(登録商標)RNA(タカラバイオ社)を用いてRNAを精製した。その後、PrimeScript(登録商標)RT Master Mix(タカラバイオ社)を使用してcDNAを合成し、SYBR(登録商標)Premix Ex Taq(商標)II(タカラバイオ社)を用いたリアルタイムPCRにより、アシルCoAオキシダーゼ(ACO)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT1A)及び中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)のmRNA発現量を測定した。解析には内部標準遺伝子としてgapdh遺伝子を用いた比較Ct法を適用した。当該遺伝子の発現量は、高脂肪精製飼料摂取群に対する相対発現量で示した。データは平均値±標準誤差で表示した。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
注)有意差検定 (n=8)
** 対照群に対して、P<0.01
表5の結果から、環状ジペプチド32種混合物を配合した高脂肪精製飼料をマウスに摂取させることで、通常の高脂肪精製飼料を摂取させた群と比較して、肝臓中のACO、CPT1A及びMCADのmRNA発現量が増大することが示された。
【0066】
実施例2:環状ジペプチド32種混合物による脂肪燃焼促進作用の評価
8適齢の雄性C57BL/6J系マウスを8匹ずつ2群に分け、それぞれに高脂肪精製飼料(D12451)、及び環状ジペプチド32種混合物を0.1%添加した高脂肪精製飼料を1週間自由摂取させた。飼料組成を表6に示す。


【0067】
【表6】
【0068】
飼育1週間目にオキシマックスシステム(Columbus Instruments)を用いて、約22時間(絶食下で約4時間(12:00〜16:00程度)、給餌下で約18時間(16:00〜翌10:00程度)の酸素消費量(VO2)及び二酸化炭素排出量(VCO2)を測定した。呼吸交換比及び体重当たりの総エネルギー消費量(kcal/day/kg)は,得られたVO2及びVCO2の値を基に次式により算出し、試験群間で比較した。尚、測定は1チャンバーにつき1匹で行った。
【0069】
呼吸交換比(呼吸商:RQ)=二酸化炭素排出量(VCO2)/酸素消費量(VO2
総エネルギー消費量(kcal/day)=発熱量(CV)×酸素消費量(VO2)×時間
(CV=3.815+1.232×RQ)
結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
注)有意差検定 (n=8)
* 対照群に対して、P<0.05
表7の結果から、環状ジペプチド32種混合物を配合した高脂肪精製飼料をマウスに摂取させることで、通常の高脂肪精製飼料を摂取させた群と比較して、体重当たりの総エネルギー消費量が増加することが示された。
【0072】
実施例3:環状ジペプチド32種混合物によるβ酸化関連遺伝子の上昇作用の評価
ヒト肝癌由来細胞(HepG2:RCB1889)を24-wellプレート(Corning)に4.8×105cells/wellとなるように播種し、DMEM培地(10%FBS、2mMグルタミン、1%抗生物質添加済)中で24時間培養した後、最終濃度が5.0μg/mLとなるように環状ジペプチド32種混合物を添加した。さらに24時間後、NucleoSpin(登録商標)RNA(タカラバイオ)を用いて細胞からRNAを抽出した。その後、PrimeScript(登録商標)RT Master Mix(タカラバイオ)を使用してcDNAを合成し、SYBR(登録商標)Premix Ex Taq(商標)II(タカラバイオ)を用いたリアルタイムPCRにより、アシルCoAオキシダーゼ(ACO)及びカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT1A)のmRNA発現量を測定した。解析には内部標準遺伝子としてgapdh遺伝子を用いた比較Ct法を適用した。当該遺伝子の発現量は、対照群(コラーゲンペプチド熱処理物非添加群)に対する相対発現量で示した。データは平均値±標準誤差で表示した。結果を表8に示す。
【0073】
【表8】
【0074】
注)有意差検定 (n=8)
* 対照群に対して、P<0.05
表8の結果から、環状ジペプチド32種混合物添加条件下で肝細胞(HepG2)を培養することで、肝細胞(HepG2)中のACO及びCPT1AのmRNA発現量が増大することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗肥満用組成物を提供するものである。本発明は、体重増加抑制、体脂肪の蓄積抑制、内臓脂肪の蓄積抑制、体内エネルギー消費量の増大、体内の脂肪の分解促進等による肥満の予防又は改善のための安全で効果的な新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。