特許第6671403号(P6671403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671403
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】エンジンハンガ構造
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   B62M7/02 C
   B62M7/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-35858(P2018-35858)
(22)【出願日】2018年2月28日
(65)【公開番号】特開2019-151148(P2019-151148A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】恩田 博
(72)【発明者】
【氏名】程 毓梁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4236176(JP,B2)
【文献】 特公平7−5114(JP,B2)
【文献】 特開2013−204512(JP,A)
【文献】 特開2002−87367(JP,A)
【文献】 特開2012−236467(JP,A)
【文献】 特開2016−64721(JP,A)
【文献】 特開2015−178303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(4)と、後輪(WR)を回転可能に軸支するスイングアーム(23)と、前記車体フレーム(4)の後部で前記スイングアーム(23)を揺動自在に軸支するピボットシャフト(19)と、前記車体フレーム(4)に支持されるエンジン(E)とを有する鞍乗型車両(1)に適用されるエンジンハンガ構造において、
前記車体フレーム(4)の後端部に、前記ピボットシャフト(19)を軸支すると共に前記ピボットシャフト(19)の上下に延在するピボットプレート(20)が設けられており、
前記ピボットシャフト(19)を挟んで上下で対向する位置に、上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)が設けられており、
前記エンジン(E)の後部が、車幅方向で対向する位置で前記エンジン(E)に螺合する一対のボルト(70,90)によって、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)に支持され、
前記エンジン(E)の後部に、前記上側エンジンハンガ部(50)に向かって突出する上側延出部(60)と、前記下側エンジンハンガ部(51)に向かって延出する下側延出部(80)とが形成されており、
前記上側延出部(60)が前記ピボットシャフト(19)の車体上方で前記上側エンジンハンガ部(50)に支持されると共に、前記下側延出部(80)が前記ピボットシャフト(19)の車体下方で前記下側エンジンハンガ部(51)に支持され、
前記上側延出部(60)および下側延出部(80)が、それぞれ、車幅方向に延在して形成されており、
前記ボルト(70,90)が螺合される車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)が、同一軸線上に形成されており、
前記車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)の間が、中空部(63,83)によって連通していることを特徴とするエンジンハンガ構造。
【請求項2】
前記ピボットプレート(20)が、車体側面視で縦長の略長方形をなしており、
前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)は、前記ピボットプレート(20)に形成した貫通孔(50a,51a)によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンハンガ構造。
【請求項3】
前記雌ねじ部(61,81)のそれぞれの車幅方向寸法より、前記中空部(63,83)の車幅方向寸法の方が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンハンガ構造。
【請求項4】
前記ボルト(70,90)が、断面形状を六角形とする頭部(70a,90a)を有しており、
前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)の車幅方向外側に、前記頭部(70a,90a)が収まる凹部(50b,51b)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエンジンハンガ構造。
【請求項5】
前記車体フレーム(4)に、前記エンジン(E)の前部を支持する前側エンジンハンガ部(42)が設けられており、
前記エンジン(E)の前部が、前記エンジン(E)を貫通する長尺の貫通ボルト(42a)によって前記前側エンジンハンガ部(42)に支持されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエンジンハンガ構造。
【請求項6】
前記前側エンジンハンガ(42)が、前記車体フレーム(4)を構成するヘッドパイプ(9)から後方下方に延びる左右一対のハンガフレーム(40)の下端部に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のエンジンハンガ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンハンガ構造に係り、特に、鞍乗型車両のエンジンを車体フレームに取り付けるためのエンジンハンガ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鞍乗型車両のエンジンを車体フレームに取り付けるためのエンジンハンガ構造において、エンジンのクランクケースを車幅方向に貫通する長尺の貫通ボルトや、車幅方向外側からクランクケースに直接螺合する短尺ボルトを用いて、エンジンを所定位置に支持する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、ヘッドパイプから車体後方下方に延びる左右一対のメインフレームと、メインフレームの後端部にスイングアームを揺動自在に軸支する自動二輪車において、メインフレームの前端部から車体下方に延びる前側のエンジンハンガに短尺ボルトを用いると共に、スイングアームピボットの上下の位置で車体前方に突出する後側のエンジンハンガに貫通ボルトを用いたエンジンハンガ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2016/047341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、エンジンの支持剛性を高めるという観点からは、走行時に発生する外力によって撓みが生じやすい貫通ボルトより、クランクケースに直接螺合する短尺ボルトを用いた方が好適となることがある。特許文献1では、振動吸収性能を重視したラバーマウント構造とするために前側のエンジンハンガに短尺ボルトを適用しているものの、エンジンの支持剛性を高めるために後側のエンジンハンガに短尺ボルトを適用することは検討されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、短尺ボルトを用いてエンジンの支持剛性を高めることができるエンジンハンガ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、車体フレーム(4)と、後輪(WR)を回転可能に軸支するスイングアーム(23)と、前記車体フレーム(4)の後部で前記スイングアーム(23)を揺動自在に軸支するピボットシャフト(19)と、前記車体フレーム(4)に支持されるエンジン(E)とを有する鞍乗型車両(1)に適用されるエンジンハンガ構造において、前記車体フレーム(4)の後端部に、前記ピボットシャフト(19)を軸支すると共に前記ピボットシャフト(19)の上下に延在するピボットプレート(20)が設けられており、前記ピボットシャフト(19)を挟んで上下で対向する位置に、上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)が設けられており、前記エンジン(E)の後部が、車幅方向で対向する位置で前記エンジン(E)に螺合する一対のボルト(70,90)によって、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)に支持される点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記ピボットプレート(20)が、車体側面視で縦長の略長方形をなしており、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)は、前記ピボットプレート(20)に形成した貫通孔(50a,51a)によって構成される点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記エンジン(E)の後部に、前記上側エンジンハンガ部(50)に向かって突出する上側延出部(60)と、前記下側エンジンハンガ部(51)に向かって延出する下側延出部(80)とが形成されており、前記上側延出部(60)が前記ピボットシャフト(19)の車体上方で前記上側エンジンハンガ部(50)に支持されると共に、前記下側延出部(80)が前記ピボットシャフト(19)の車体下方で前記下側エンジンハンガ部(51)に支持される点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記上側延出部(60)および下側延出部(80)が、それぞれ、車幅方向に延在して形成されており、前記ボルト(70,90)が螺合される車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)が、同一軸線上に形成されており、前記車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)の間が、中空部(63,83)によって連通している点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記雌ねじ部(61,81)のそれぞれの車幅方向寸法より、前記中空部(63,83)の車幅方向寸法の方が大きい点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記ボルト(70,90)が、断面形状を六角形とする頭部(70a,90a)を有しており、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)の車幅方向外側に、前記頭部(70a,90a)が収まる凹部(50b,51b)が設けられている点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記車体フレーム(4)に、前記エンジン(E)の前部を支持する前側エンジンハンガ部(42)が設けられており、前記エンジン(E)の前部が、前記エンジン(E)を貫通する長尺の貫通ボルト(42a)によって前記前側エンジンハンガ部(42)に支持される点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、前記前側エンジンハンガ(42)が、前記フレーム(4)を構成するヘッドパイプ(9)から後方下方に延びる左右一対のハンガフレーム(40)の下端部に形成されている点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴によれば、車体フレーム(4)と、後輪(WR)を回転可能に軸支するスイングアーム(23)と、前記車体フレーム(4)の後部で前記スイングアーム(23)を揺動自在に軸支するピボットシャフト(19)と、前記車体フレーム(4)に支持されるエンジン(E)とを有する鞍乗型車両(1)に適用されるエンジンハンガ構造において、前記車体フレーム(4)の後端部に、前記ピボットシャフト(19)を軸支すると共に前記ピボットシャフト(19)の上下に延在するピボットプレート(20)が設けられており、前記ピボットシャフト(19)を挟んで上下で対向する位置に、上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)が設けられており、前記エンジン(E)の後部が、車幅方向で対向する位置で前記エンジン(E)に螺合する一対のボルト(70,90)によって、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)に支持されるので、車幅方向左右で独立したボルトを適用することで、走行時に発生する外力で撓みやすい貫通ボルトを適用した場合に比して、エンジン後部の支持剛性を高めることができる。また、ピボットの近傍で上下に対向する位置にエンジンハンガ部を設けることにより、エンジン後部の支持剛性がより一層高められる。
【0016】
第2の特徴によれば、前記ピボットプレート(20)が、車体側面視で縦長の略長方形をなしており、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)は、前記ピボットプレート(20)に形成した貫通孔(50a,51a)によって構成されるので、ピボットプレートの車体前方にステー状のエンジンハンガ部が延出する構成に比して、エンジンハンガ部の支持剛性を高めることが可能となる。
【0017】
第3の特徴によれば、前記エンジン(E)の後部に、前記上側エンジンハンガ部(50)に向かって突出する上側延出部(60)と、前記下側エンジンハンガ部(51)に向かって延出する下側延出部(80)とが形成されており、前記上側延出部(60)が前記ピボットシャフト(19)の車体上方で前記上側エンジンハンガ部(50)に支持されると共に、前記下側延出部(80)が前記ピボットシャフト(19)の車体下方で前記下側エンジンハンガ部(51)に支持されるので、エンジン後部とピボットとの干渉を避けつつ、上下の延出部によってエンジンの後部を支持することが可能となる。
【0018】
第4の特徴によれば、前記上側延出部(60)および下側延出部(80)が、それぞれ、車幅方向に延在して形成されており、前記ボルト(70,90)が螺合される車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)が、同一軸線上に形成されており、前記車幅方向に一対の雌ねじ部(61,81)の間が、中空部(63,83)によって連通しているので、延出部を車幅方向に延在させて支持剛性を高めつつ、中空部を設けることで延出部の重量増加を抑えることができる。
【0019】
第5の特徴によれば、前記雌ねじ部(61,81)のそれぞれの車幅方向寸法より、前記中空部(63,83)の車幅方向寸法の方が大きいので、延出部を設けた際の重量増加を抑えることができる。
【0020】
第6の特徴によれば、前記ボルト(70,90)が、断面形状を六角形とする頭部(70a,90a)を有しており、前記上側エンジンハンガ部(50)および下側エンジンハンガ部(51)の車幅方向外側に、前記頭部(70a,90a)が収まる凹部(50b,51b)が設けられているので、ボルトの頭部が乗員の足等に触れることを防止できる。
【0021】
第7の特徴によれば、前記車体フレーム(4)に、前記エンジン(E)の前部を支持する前側エンジンハンガ部(42)が設けられており、前記エンジン(E)の前部が、前記エンジン(E)を貫通する長尺の貫通ボルト(42a)によって前記前側エンジンハンガ部(42)に支持されるので、支持剛性の向上が求められるエンジンの後部では左右で対向するボルトを用いる一方、多少の柔軟性が求められるエンジンの前部では貫通ボルトを用いることで、所望する走行フィーリングを得ることが可能となる。
【0022】
第8の特徴によれば、前記前側エンジンハンガ(42)が、前記フレーム(4)を構成するヘッドパイプ(9)から後方下方に延びる左右一対のハンガフレーム(40)の下端部に形成されているので、ハンガフレーム自体が柔軟性を有することで長尺ボルトの柔軟性をより生かしやすくなり、理想とする走行フィーリングに近づけやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンハンガ構造を適用した自動二輪車の左側面図である。
図2】自動二輪車の右側面図である。
図3】自動二輪車の正面図である。
図4】エンジンのクランクケースを支持する車体フレームの左側面図である。
図5】車体フレームの一部拡大斜視図である。
図6】エンジンの後部の拡大側面図である。
図7図6に車体フレームを加えた状態の拡大側面図である。
図8図7のA−A線断面図およびB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンハンガ構造を適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は同右側面図であり、図3は同正面図である。鞍乗型車両としての自動二輪車1の車体フレーム4は、ヘッドパイプ9から車体後方に延出する左右一対のメインフレーム5を有する。ヘッドパイプ9に揺動自在に軸支される前輪WFの操舵系は、車軸17によって前輪WFを軸支する左右一対のフロントフォーク15と、ヘッドパイプ9の上下でフロントフォーク15をクランプするトップブリッジ8およびボトムブリッジ11と、トップブリッジ8およびボトムブリッジ11を互いに連結してヘッドパイプ9に軸支されるステアリングステム(不図示)とからなる。前輪WFのホイール16には、左右一対のブレーキディスク33が固定されており、フロントフォーク15に固定されるフロントブレーキキャリパ34と共に前輪WF側の油圧ブレーキシステムが構成される。フロントフォーク15の上部には、操向ハンドル6が固定されている。
【0025】
メインフレーム5の後方下部には、スイングアーム23を揺動可能に軸支するピボット19を支持する左右一対のピボットプレート20が接続されている。メインフレーム5の下部には、4サイクルV型4気筒のエンジンEが固定されている。エンジンEの燃焼ガスは、排気管を介して車幅方向右側のマフラ37に導かれる。エンジンEの駆動力は、スイングアーム23の後端に回転自在に軸支された後輪WRに伝達される。
【0026】
ヘッドパイプ9の前方には、防風スクリーン7を備えるフロントカウル10が配設されている。フロントカウル10の下方には、左右一対のサイドカウル28が連結されており、サイドカウル28の下端部には、エンジンEの下部を覆うアンダカウル21が連結されている。前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ14は、フロントフォーク15に固定されている。メインフレーム5の上部には、燃料タンク31およびエアクリーナボックス3の上部を覆うタンクカバー2が取り付けられている。タンクカバー2に取り付けられるシート30の後方には、リヤカウル29が配設されている。後輪WRの上部を覆うリヤフェンダ27は、スイングアーム23の上部に固定されている。
【0027】
スイングアーム23の後端部には、車軸24によって後輪WRが回転自在に軸支されている。エンジンEの出力軸18から出力される駆動力は、ドライブチェーン(不図示)を介して後輪WRのホイール25に車幅方向左側に固定されたドリブンスプロケット26に伝達される。後輪WRのホイール25の車幅方向右側には、ブレーキディスク35が固定されており、スイングアーム23の下側に配設されるリヤブレーキキャリパ36と共に後輪WR側の油圧ブレーキシステムが構成される。スイングアーム23は、ピボット19の後方に配設されるリヤクッション32によって車体フレーム4に吊り下げられている。
【0028】
メインフレーム5の車幅方向外側には、エアクリーナボックス3の下部に外気を導くエアダクト13が左右一対で配設されている。エアダクト13は、フロントフォーク15の車幅方向外側を通ってヘッドパイプ9の前方で集合し、フロントカウル10の車幅方向中央に設けられた開口12に接続される。エンジンEの車体前方にはラジエータ39が配設されている。本実施形態に係る自動二輪車1の重心Gは、エアダクト13の後端近傍の車幅方向中央に位置する。
【0029】
図4は、エンジンEのクランクケースCを支持する車体フレーム4の左側面図である。また、図5は車体フレーム4の一部拡大斜視図である。アルミ等の金属で形成される車体フレーム4は、ヘッドパイプ9の上方寄りの位置から後方下方に向かって延びる左右一対のメインフレーム5と、メインフレーム5の後端部に連結されるピボットプレート20と、ヘッドパイプ9の下方寄りの位置から後方下方に向かって延びる左右一対のハンガフレーム40とを有する。メインフレーム5から下方に延出するハンガフレーム40には、エアクリーナボックス3に外気を導入するエアダクト13(図1参照)が通る開口41が形成される。
【0030】
ピボットプレート20は、車体側面視で縦長の略長方形をなしており、その上下方向略中央の車体前方寄りの位置に、スイングアーム23を軸支するピボット(以下、ピボットシャフトと示すこともある)19を支持する貫通孔45が形成されている。
【0031】
エンジンEのクランクケースCには、クランクシャフトの軸支開口C1および出力軸の軸支開口C2が形成される。アルミブロックから削り出されて形成されるクランクケースCは、ハンガフレーム40の下端部に設けられる前側エンジンハンガ部42と、ピボットプレート20に設けられる上側エンジンハンガ部50および下側エンジンハンガ部51によって車体フレーム4に支持される。上側エンジンハンガ部50および下側エンジンハンガ部51は、ピボットシャフト19の貫通孔45を挟んで上下で対向する位置に設けられている。
【0032】
前側エンジンハンガ部42、上側エンジンハンガ部50および下側エンジンハンガ部51には、それぞれ、クランクケースCを支持するためのボルトを通す貫通孔が形成されている。前側エンジンハンガ部42では、クランクケースCの前端部を車幅方向に貫通する長尺の貫通ボルト42aによって、クランクケースCの前端部が支持される。一方、上側エンジンハンガ部50および下側エンジンハンガ部51では、左右一対の短尺ボルト(図8参照)によって、クランクケースCの後端上部およびクランクケースCの後端下部がそれぞれ支持される。
【0033】
本願発明に係るエンジンハンガ構造では、クランクケースCの後部を支持する上側エンジンハンガ部50および下側エンジンハンガ部51を支持するボルトを、左右別体の短尺ボルトとして支持剛性を高める点に特徴がある。一方、多少の柔軟性が求められるエンジンEの前部では貫通ボルト42aを用い、ハンガフレーム40自体が柔軟性を有することと併せて、長尺ボルトの柔軟性を生かした走行フィーリングを得ることを可能としている。
【0034】
図5を参照して、左右のピボットプレート20の間は、車幅方向に指向する上側クロスフレーム44および下側クロスフレーム47によって互いに連結されている。上側クロスフレーム44は、上側エンジンハンガ部50の車体後方に位置しており、上側クロスフレーム44の車幅方向中央には、リヤクッション32の上端部を揺動自在に軸支するリヤクッション支持部46が形成されている。また、下側クロスフレーム47は、下側エンジンハンガ部51の車体後方に位置しており、下側クロスフレーム47の車幅方向中央の下面には、リヤクッション32のリンク機構に接続されるリンクロッド(不図示)を揺動自在に軸支するリンクロッド支持部48が形成されている。
【0035】
クランクケースCの後端上部には、左右の上側エンジンハンガ部50の間に収まる上側延出部60が形成されている。一方、クランクケースCの後端下部には、左右の下側エンジンハンガ部51の間に収まる下側延出部80が形成されている。本願発明に係るエンジンハンガ構造では、クランクケースCを支持するために車体フレーム4側からステー部材を延出させるのではなく、クランクケースC側に幅広の延出部60,80を設けて、この延出部60,80をピボットプレート20および上下のクロスフレーム44,47からなる高剛性部材で囲むように固定することで、クランクケースCの後部の支持剛性を高めている。
【0036】
図6は、エンジンEの後部の拡大側面図である。また、図7図6に車体フレーム4を加えた状態の拡大側面図である。クランクケースCに形成される軸支開口C2(図4参照)には、ドライブチェーン(不図示)が巻きかけられるドライブスプロケット(不図示)が固定される出力軸18が軸支される。上側延出部60は、車体側面視で、出力軸18の位置から後方上方に向かって延びるように形成されており、下側延出部80は、出力軸18の後方下方に向かって延びるように形成されている。
【0037】
上側延出部60の端部には、雌ねじ部61および円形の座面を有するボス62が形成されている。同様に、下側延出部80の端部には、雌ねじ部81および円形の座面を有するボス82が形成されている。上側延出部60の上部は、V型4気筒とされるエンジンEの後側気筒100に近接する位置にあり、上側延出部60と後側気筒100との間には、後側気筒100の排気管(不図示)が配索される。一方、下側延出部80の下方には、下側クロスフレーム47の下面に近接配置される前側気筒の排気管102が配索されている。
【0038】
上記したように、本願発明に係るエンジンハンガ構造では、クランクケースCの後端上部に設けられる上側延出部60と、クランクケースCの後端下部に設けられる下側延出部80とを左右のピボットプレート20で挟むようにして支持することで、出力軸18とピボット19とを可能な限り近接配置してスイングアーム23を長尺化しつつ、クランクケースCの後部を左右のピボットプレート20で支持して支持剛性を高めている。
【0039】
ピボットプレート20に形成される上側エンジンハンガ部50は、後述する短尺ボルトのボルト軸部が通る貫通孔50aおよびボルト頭部が収まる凹部50bを有する。下側エンジンハンガ部51も同様に、ボルト軸部が通る貫通孔51aおよびボルト頭部が収まる凹部51bを有する。
【0040】
図8は、図7のA−A線断面図およびB−B線断面図である。(A)に示す上側エンジンハンガ部50および(B)に示す下側エンジンハンガ部51は、いずれも短尺のボルト90,70によって車幅方向外側から支持されている。ボルト90,70は、3本の第1ボルト90が共通部品とされ、車幅方向左側の下側延出部80に螺合される第2ボルト70のみが第1ボルト90より短尺仕様とされる。具体的には、六角形状の頭部90a,70aと、軸部91,71と、雄ねじ部92,72を有する基本構成は共通であるものの、第2ボルト70の軸部71が第1ボルト90の軸部91より短くなっている。
【0041】
上側延出部60の左右端部には、雌ねじ部61が形成されている。両側の雌ねじ部61は、小径の中空部63によって連結されている。同様に、下側延出部80の左右端部には、雌ねじ部81が形成されている。両側の雌ねじ部81は、小径の中空部83によって連結されている。中空部63,83の車幅方向寸法は、雌ねじ部61,81のそれぞれの車幅方向寸法より大きく設定されている。
【0042】
図示右上のピボットプレート20の貫通孔50aには雌ねじ50cが形成されており、この雌ねじ50cに対して、雄ねじが形成された中空カラー93が車幅方向内側から螺合される。次に、座面となる凹部50bにワッシャ94を当接させて第1ボルト90を締結することで、上側延出部60が車幅方向右側に寄せられて固定される。
【0043】
同様に、図示右下のピボットプレート20の貫通孔51aには雌ねじ51cが形成されており、この雌ねじ51cに対して、雄ねじが形成された中空カラー93が車幅方向内側から螺合される。次に、座面となる凹部51bにワッシャ94を当接させて第1ボルト90を締結することで、下側延出部80が車幅方向右側に寄せられて固定される。
【0044】
これに対し、図示左上のピボットプレート20の貫通孔50aには雌ねじが形成されておらず、鍔付き円筒カラー95が挿入される。鍔付き円筒カラー95を支持する円筒ボス20aの内側には、幅調整用のリングカラー20bが当接している。リングカラー20bの内周面には、ボス62との間に挟まれる鍔部を有する鍔付きカラー96が挿入されており、第1ボルト90を締結することで、上側延出部60の左側が固定されることとなる。
【0045】
また、図示左下のピボットプレート20の貫通孔51aには雌ねじが形成されておらず、鍔付き円筒カラー95が挿入される。鍔付き円筒カラー95を支持する円筒ボス20aと下側延出部80のボス82との間には、幅調整用の2つの鍔付きカラー85,86が互いに接して挿入されており、第2ボルト70を締結することで、下側延出部80の左側が固定されることとなる。
【0046】
第2ボルト70の部71が短いのは、下側延出部80の左側に形成される雌ねじ部81が、他の3カ所の雌ねじ部より車幅方向外側に位置するためで、部71を短くすることで、他の3カ所と同様のねじのかかり代が確保されている。なお、各ボルトやカラーは、ステンレスやチタン等の金属で形成することができる。また、上側延出部60の両側の雌ねじ部61と、下側延出部80の右側の雌ねじ部84は、クランクケースCの薄肉部を避けてヘリサートを埋め込むことで形成してもよい。
【0047】
上記したように、本願発明に係るエンジンハンガ構造によれば、エンジンEの後部を車幅方向左右で独立したボルト90,70で支持することで、走行時に発生する外力で撓みやすい貫通ボルトを適用した場合に比して、エンジン後部の支持剛性を高めることができる。また、ピボット19の近傍で上下に対向する位置にエンジンハンガ部50,51を設けることにより、エンジン後部の支持剛性がより一層高められる。
【0048】
また、ピボットプレート20が車体側面視で縦長の略長方形をなしており、上下のエンジンハンガ部50,51が、ピボットプレート20に形成した貫通孔50a,51aによって構成されるので、ピボットプレート20の車体前方にステー状のエンジンハンガ部が延出する構成に比して支持剛性を高めることが可能となる。
【0049】
また、上側延出部60がピボットシャフト19の車体上方で上側エンジンハンガ部50に支持されると共に、下側延出部80がピボットシャフト19の車体下方で下側エンジンハンガ部51に支持されるので、エンジンEの後部とピボットシャフト19との干渉を避けつつ、上下の延出部60,80によってエンジンEの後部を支持することが可能となる。
【0050】
また、上側延出部60および下側延出部80が車幅方向に延在して形成されており、第1ボルト90および第2ボルト70を螺合する61,81の間が中空部63,83によって連通しているので、延出部60,80を車幅方向に延在させて支持剛性を高めつつ、中空部63,83を設けることで延出部60,80の重量増加を抑えることができる。
【0051】
なお、エンジンの形式や形状、スイングアームやクランクケースの形状や材質、上側延出部および下側延出部の形状や寸法、第1ボルトおよび第2ボルトの形状や寸法、雌ねじ部や中空部の形状や寸法、各種カラーの形状や寸法等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係るエンジンハンガ構造は、自動二輪車に限られず、車体フレームに揺動自在に軸支されるスイングアームを有する3輪車等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、4…車体フレーム、19…ピボットシャフト、20…ピボットプレート、40…ハンガフレーム、42…前側エンジンハンガ部、42a…貫通ボルト、50…上側エンジンハンガ部、50a,51a…貫通孔、51…下側エンジンハンガ部、60…上側延出部、61,81…雌ねじ部、63,83…中空部、80…上側延出部、90…第1ボルト(ボルト)、70…第2ボルト(ボルト)、70a,90a…頭部、50b,51b…凹部、C…クランクケース、E…エンジン
図1
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