【文献】
YUAN ZHOU ET AL.,Chemiluminescence immunoassay for the rapid and sensitive detection of antibody against porcine parvovirus by using horseradish peroxidase/detection antibody-coated gold nanoparticles as nanoprobes : Porcine parvovirus antibody detected by chemiluminescence immunoassay,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL AND CHEMICAL LUMINESCENCE,2013年,vol. 29, no. 4,p338 - 343
【文献】
RON GILL ET AL.,Optical Detection of Glucose and Acetylcholine Esterase Inhibitors by H2O2-Sensitive CdSe/ZnS Quantum Dots,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,2008年 2月15日,vol. 47, no. 9,pages 1676 - 1679
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒によって生成された前記メディエーターは、活性酸素種、活性窒素種、過酸化脂質又は脂質酸化生成物、トリプロピルアミン(TPA)、中間原子価化合物、3,3’,5,5’−テトラ−メチルベンジジン(TMB)、窒素酸化物系持続性ラジカル、ラジカル付加体、α−フェニルN−ターシャリー−ブチルニトロン(PBN)、5,5−ジメチル−ピロリンN−オキシド(DMPO)、グルタチオン、グルタチオンジスルフィド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)及びC−ニトロソスピントラップの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の分子プローブ。
前記エネルギーは、化学エネルギー、放射エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、音波エネルギー、機械エネルギー、又はそれらの任意の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の分子プローブ。
前記エネルギーは、化学エネルギー、放射エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、音波エネルギー、機械エネルギー、又はそれらの任意の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
前記触媒によって生成された前記メディエーターは、活性酸素種、活性窒素種、過酸化脂質又は脂質酸化生成物、トリプロピルアミン(TPA)、中間原子価化合物、3,3’,5,5’−テトラ−メチルベンジジン(TMB)、窒素酸化物系持続性ラジカル、ラジカル付加体、α−フェニルN−ターシャリー−ブチルニトロン(PBN)、5,5−ジメチル−ピロリンN−オキシド(DMPO)、グルタチオン、グルタチオンジスルフィド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)及びC−ニトロソスピントラップの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、本発明の様々な例示的な実施形態を示す添付の図面を参照しながら、以下により完全に記述される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0037】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、「一(a)」、「一(an)」及び「前記(the)」という単数形は、文脈が、そうではないと明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「備える(comprises)」及び/又は「備える(comprising)」、又は「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」、又は「有する(has)」及び/又は「有する(having)」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、領域、完全体、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を明示するが、1つ又は複数の他の特徴、領域、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグループの存在又は追加を解除しないことがさらに理解されるであろう。
【0038】
「及び/又は」と「少なくとも1つ」という用語は、1つ又は複数の関連するリストされたアイテムの任意の組み合わせ及びすべての組み合わせを含むことが理解されるであろう。本明細書においては、様々な要素、構成要素、領域、部品、及び/又は部分を記述するにあたって「第1」、「第2」、「第3」などの用語を用いる場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、部品、及び/又は部分をこれらの用語によって制限すべきではないことも理解されるであろう。これらの用語は、単に、1つの要素、構成要素、領域、部品及び/又は部分を他の要素、構成要素、領域、層、又は部分から識別する目的のみで使われている。従って、以下に記述される第1要素、構成要素、領域、部品又は部分を、本開示の教示から逸脱することなく、第2要素、構成要素、領域、層又は部分と呼ぶこともできる。
【0039】
本明細書に記載の「分子検出アッセイ」という用語は、溶液(例えば、生物学的液体)中の標的分子(即ち、検体)の存在及び/又は濃度を測定する試験を指す。
図1に例示されるように、典型的な分子検出アッセイの構成要素は、標的分子2に特異的な捕捉抗体1(即ち、標的分子との特異的結合を可能にする標的分子に対して親和性又は特異的特性を有する)、及び標的分子にも特異的であり、タグ4に結合される検出抗体3を含む。タグ4は、試薬又は反応物質5と接触したときに検出可能な変化を生じさせる化学反応を触媒して、検出抗体3の標的分子2への結合に応じて、測定可能な信号6をもたらす。
【0040】
分子検出アッセイによって行われる化学反応は、還元−酸化(酸化還元)反応、光化学反応、電気化学反応、光電気化学反応、又は、検出可能な標識を生成する他の反応であってもよい。検出可能な信号は、光学特性、電磁特性、熱力学特性又は機械的特性の変化の形態であってもよい。より具体的には、光学特性は、発光強度、蛍光強度、色、発光波長プロファイル、蛍光波長プロファイル、及び光波長プロファイルを含むことができるが、これらに限定されない。電磁特性は、電流強度、電位、導電率、電荷、電圧、及び比誘電率を含むことができるが、これらに限定されない。熱力学特性は、温度を含むことができるが、これに限定されない。機械的特性は、光学密度(例えば、吸光度)、共振周波数、振動周波数、表面弾性波、ピエゾ電気、及びインプラント安定指数を含むことができるが、これらに限定されない。
【0041】
化学反応により生成された信号は、ポテンショスタット、ガルバノスタット、サイクリックボルタンメーター、電気化学的分析装置、エレクトロクロミック分析装置、蛍光分光器、化学発光分光器、電気化学発光分光器、光化学発光分光器、光電気化学発光分光器、電流測定センサ、導電率計、高温計、圧電センサ、共振周波数分析装置、電圧計、電位差計、オシロスコープ、ラマン分光計、表面弾性波センサ、又は水晶マイクロバランスによって検出可能である。
【0042】
化学反応の反応物質は、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)、Ru(bpy)
32+、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMPPD)、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−β−D’−ガラクトピラノ−イルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMPGD)、Amplex Red試薬(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン)、ルシフェリン、ルシゲニン、ペルオキシダーゼ、アルスロマイセスラモサス(Arthromyces ramosus)ペルオキシダーゼ(ARP)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ヒドロラーゼ、アルカリホスファターゼ(ALP)、グルコースオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ルシフェラーゼ、金ナノ粒子、ヘミン、金属錯体(例えば、Cu
2+及びFe
3+フタロシアニン錯体)、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0043】
さらに、捕捉抗体1は表面に固定化することができ、それにより分子検出アッセイをディッシュ、ウェル、キューブ、チューブ、キャピラリ、電極、チャンバー、膜、粒子、検出器、マイクロタイタープレート、マイクロチップ、半導体センサチップ又はキュベットで行うことができる。分子検出アッセイの幾つかの例は、蛍光アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラテラルフローアッセイ、電気化学アッセイ、光化学アッセイ及び光電気化学アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で明示的に定義されない限り、一般に使用される辞書で定義されたもののような用語は、関連技術の文脈及び本開示におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、理想的な意味又は過度に正式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0045】
図2を参照する。本発明の第1態様は、信号増幅のための分子プローブを提供する。一実施形態において、分子プローブ7は、検出分子8と、検出分子に結合される少なくとも1つの標識9を含む。標識9は検出分子8に、例えばエステル結合、ペプチド結合、若しくはチオエステル結合によって共有結合されるか、又は、例えば水素結合若しくはπ-π相互作用によって非共有結合される。標識9は、溶液から電子及び/又はメディエーターを生成することができる触媒を含む。検出分子8は、標的分子2に特異的である(即ち、特異的に結合することができる)抗体、抗原、配位子、受容体又はヌクレオチド配列であってもよい。標的分子2は、有機化合物、無機化合物、又は生体分子であってもよい。好ましくは、有機化合物は、芳香族化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、アミン、尿素、又はそれらのポリマーもしくは錯体である。無機化合物は、ドデカボレート、窒化物、金属含有錯体である。生体分子は、アミノ酸、ヌクレオチド、脂質、糖類、ペプチド、核酸、多糖類、ビタミン、ホルモン、又はそれらのポリマーもしくは錯体である。
【0046】
検出分子8と標的分子2は、選択的な分子結合によって選択的に相互作用する。選択的な分子結合は、タンパク質に基づく相互作用、ヌクレオチド配列に基づく相互作用、又はそれらの組み合わせであってもよい。タンパク質に基づく相互作用は、リガンド−レセプター相互作用又は抗体−抗原相互作用を含んでもよい。より具体的には、幾つかの実施形態において、リガンド−レセプター相互作用は、タンパク質と脂質(例えば、アネキシンA5とホスファチジルセリン)との間の相互作用、タンパク質とグリカン/多糖類(例えば、インテレクチンと微生物グリカン)との間の相互作用、タンパク質と金属(例えば、フェリチンと鉄)との間の相互作用、又はタンパク質と小分子(例えば、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)とゲフィチニブ、若しくはストレプトアビジンとビオチン)との間の相互作用を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、抗体−抗原相互作用は、DNAと抗体(例えば、抗dsDNA抗体)との間の相互作用、小分子と抗体(例えば、抗アフラトキシン抗体)との間の相互作用、脂質と抗体(例えば、抗リン脂質抗体)との間の相互作用、有機化合物と抗体(例えば、抗クロロフェノール抗体)との間の相互作用、無機化合物と抗体(例えば、抗mercaptoundecahydrododecaborate(抗BSH)抗体)との間の相互作用、又は環境汚染物質若しくは食品汚染物と抗体(例えば、抗直鎖アルキルベンゼン−スルホン酸塩)との間の相互作用を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、ヌクレオチド配列に基づく相互作用は、相補的配列によるDNA/RNAオリゴの間の相互作用、小分子とアプタマー(例えば、抗ドパミンアプタマー)との間の相互作用、タンパク質とアプタマー(例えば、抗トロンビンアプタマー)との間の相互作用、又は核酸とアプタマー(例えば、抗ヒト免疫不全ウイルス(抗HIV)トランス作用応答性要素アプタマー)との間の相互作用を含むが、これらに限定されない。上記相互作用は、イムノアッセイ、核酸検出アッセイ、脂質検出アッセイ、又は糖類検出アッセイによって検出されてもよい。
【0047】
標識9上の触媒は、ナノ材料、酵素、金属及び金属錯体の少なくとも1つであってもよい。ナノ材料は、2次元ナノ構造体(例えば、グラフェンナノシートや酸化グラフェン(GO)ナノシート)、バルクナノ構造材料(例えば、ナノ多孔質材料、ナノコンポジット、及びナノ結晶材料)、及びナノ粒子(例えば、Auナノ粒子、Agナノ粒子、Ptナノ粒子、Feナノ粒子、FeAuナノ粒子、FePtナノ粒子、TiO
2ナノ粒子、及び量子ドット(QDs))を含んでもよい。量子ドットは、コア型量子ドット、コアシェル型量子ドット、合金化された量子ドット、CdTe QDs、CdSe QDs、CdS QDs、ZnS QDs、PbS QDs、HgS QDs、PbSe QDs、グラフェン量子ドット (GQDs)、酸化グラフェン量子ドット(GOQDs)、カーボン量子ドット(CQDs)、InAs/ZnSe QDs、InAs/CdSe QDs、InAs/InP QDs、Cu:InP/ZnSe QDs、InAsxP1?x/InP/ZnSe QDs)を含むことができるが、これらに限定されない。酵素は、アルスロマイセスラモサスペルオキシダーゼ(ARP)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チトクロムP450オキシダーゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ、又はリジルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、オキシダーゼ又はその誘導体と、ヒドロラーゼ、アルカリホスファターゼ(ALP)又はその誘導体と、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、リポキシゲナーゼ又はルシフェラーゼなどのグルコースオキシダーゼ又はその誘導体を含むことができるが、これらに限定されない。金属及び金属錯体は、単離された単原子Ru、Cu
2+フタロシアニン錯体、Fe
3+フタロシアニン錯体、ヘミン、遷移金属カルベン錯体(例えば、グラブス触媒)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0048】
幾つかの実施形態では、ナノ材料はMg、O、N、P、B、Fe、Co、Ni、若しくは他のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族元素又は空のd軌道を有する遷移元素で、好ましくは約0モルパーセント(mol%)〜50mol%の割合でさらにドープされる。ナノ材料は、アミノ基(−NH
2)、亜リン酸基(−PO
3)、カルボニル基(−CO)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アシル基、ホウ素原子(B)、水素原子(H)、窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、リン原子(P)又は他のIIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族元素官能基で、好ましくは約0mol%〜50mol%の割合でさらに官能化されてもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、ナノ材料は、約0.34nm〜100nmの範囲の粒径、例えば0.34nm、0.5nm、1nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm又は60nmの粒径を有する。ナノ材料の形状は、一般に球形、柱状又は円盤状である。幾つかの実施形態では、ナノ材料は、約0.34nm〜20nmの範囲の厚さ、例えば0.34、0.5、1、3、5、10、15又は20nmの厚さを有する円盤状の構造のGOQDである。
【0050】
図2を再び参照する。標識9の触媒は、外部エネルギーの印加の有無に関わらず、様々な温度で(好ましくは4〜56℃で、又は、さらに好ましくは4℃、25℃、37℃、若しくは50℃で)、溶液から電子及び/又はメディエーター10を生成することができる。メディエーター10は、活性酸素種(ROS、例えば、有機ヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、ラジカル開始剤、過酸化水素(H
2O
2)、ヒドロキシルアニオン、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシルラジカル、又はオゾン)、活性窒素種(例えば、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシ亜硝酸)、過酸化脂質又は脂質酸化生成物(例えば、脂肪酸ラジカル又は過酸化脂肪酸ラジカル)、トリプロピルアミン(TPA)、中間原子価化合物(例えば、塩化スズ(II)(SnCl
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)、一酸化炭素、酸化ルテニウム(IV)(RuO
2)、又は塩化チタン(III)(TiCl
3))、3,3’,5,5’−テトラ−メチルベンジジン(TMB)、窒素酸化物系持続性ラジカル、ラジカル付加体、α−フェニルN−ターシャリー−ブチルニトロン(PBN)、5,5−ジメチル−ピロリンN−オキシド(DMPO)、グルタチオン、グルタチオンジスルフィド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)及びC−ニトロソスピントラップ(例えば、3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルホン酸(DBNBS)、5−ジイソプロポキシホスホリル−5−メチル−1−ピロリン−N−オキシド(DIPPMPO))の少なくとも1つであってもよい。
【0051】
溶液は、気溶体、液体溶液、及び 固溶体であってもよい。溶媒が気体である場合、ある特定の条件下で気体のみが溶解する。溶媒が液体である場合、ほとんどすべての気体、液体及び固体を溶解することができ、気体を液体中に、液体を液体中に、固体を液体中に溶解することが含まれる。溶媒が固体である場合、気体、液体及び固体を溶解することができ、気体を固体中に、液体を固体中に、固体を固体中に溶解することが含まれる。液体溶液は、極性溶液と非極性溶液にさらに分類することができる。
【0052】
メディエーターは、溶液に数秒〜数ヶ月の一定期間蓄積して、検出可能な信号6を生成する化学反応に継続的に関与し、それにより、標的分子2の検出に応じて増幅信号を得ることができる。換言すれば、本発明の実施形態の触媒の各々は、多数のメディエーターを生成することができる。各メディエーターは、化学反応の反応物質と反応して多数の検出可能な信号を同時に生成し、それによって、「1対多数」の信号増幅モードを達成する。
【0053】
メディエーターの生成を向上させるための外部から印加されるエネルギーは、化学エネルギー、放射エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、音波エネルギー、機械エネルギー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。エネルギーは、レーザ、水銀ランプ、可視光、紫外光、赤外光、内視鏡光、X線、超音波、電場、磁場、核磁気共鳴、機能発生器、ホットプレート、又は発光ダイオードによって供給されてもよい。
【0054】
本発明の実施形態による分子プローブは、分子検出アッセイの検出信号を増幅するように、分子検出アッセイ(例えば、ELISA、ラテラルフローアッセイ、蛍光イムノアッセイ、電気化学イムノアッセイ、光化学イムノアッセイ又は光電気化学イムノアッセイ)と共に使用されてもよい。より具体的には、幾つかの実施形態において、分子プローブを使用して標的分子をアッセイするための方法は、分子プローブを溶液中の標的分子に結合させるステップと、溶液を一定期間放置するステップと、化学反応のための上記反応物質を溶液に添加するステップと、化学反応によって生成された信号を測定するステップとを含む。実施形態において、標的分子は、タンパク質に基づく相互作用又はヌクレオチド配列に基づく相互作用を介して捕捉抗体又は検出分子と相互作用することによって、分子プローブと結合する前に表面上に固定化される。従って、分子プローブを標的分子と結合させた後、方法は、例えば溶液を繰り返し除去し、標的分子又は分子プローブのない新鮮な溶液を添加することによって、標的分子に結合していない分子プローブの一部を除去するステップを任意に含んでもよい。
【0055】
他の実施形態では、分子プローブ7は表面上に固定化されてもよく、且つその標識9は、標的分子2の結合時の立体構造変化又は他のメカニズムによって活性化されてもよい。
【0056】
好ましくは、溶液中の分子プローブ8上の標識9の最終濃度は、約1x10
−15mg/mL〜500mg/mLの範囲である。方法は、ディッシュ、ウェル、キューブ、チューブ、キャピラリ、電極、チャンバー、膜、粒子、検出器、マイクロタイタープレート、マイクロチップ、半導体センサチップ又はキュベットなどの表面上で行われてもよい。
【0057】
他の実施形態では、分子プローブは、分子検出アッセイの信号を増幅するための分子検出アッセイと共に使用されるキットとして供給されてもよい。一実施形態では、キットは、上記検出分子、上記触媒含有標識、及び検出分子と触媒含有標識を共有的に又は非共有的に結合させるための1つ以上の試薬を含む。検出分子及び標識は、分子検出アッセイを行う前に試薬の添加によって結合する。
【0058】
幾つかの実施形態では、キットは酸化還元促進剤をさらに含む。酸化還元促進剤は、栄養剤、ビタミン、アルカリ塩又は緩衝剤、有機化合物、無機化合物、空のd、f、若しくはg軌道を有する遷移金属イオン、又はそれらの組み合わせであってもよい。栄養剤は、無血清のロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地、無血清のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、無血清の最小必須培地α(MEMα)、無血清のハムF12培地、無血清のライボビッツL−15培地、無血清のHybri−Care培地又はウシ胎児血清を含んでもよい。ビタミンは、アスコルビン酸、補酵素Q10、グルタチオン又はアスタキサンチンを含んでもよい。アルカリ塩又は緩衝剤は、リン酸緩衝食塩水又は多硫化物であってもよい。有機化合物は、ポルフィリン、クロロフィル、ヒスタミン、メタノール、エタノール、トリエタノールアミン、乳酸、尿素、又は少なくとも1つのヒドロキシル基、カルボニル基若しくは窒素を有する他の複素環化合物若しくは大環状化合物を含んでもよい。無機化合物は、硝酸銀又はヨウ素酸ナトリウムを含んでもよい。空のd、f、又はg軌道を有する遷移金属イオンは、第二鉄イオン、過マンガン酸第一鉄又は過マンガン酸カリウム(KMnO
4)、コバルトイオン、ニッケルイオン、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好ましくは、酸化還元促進剤は、約1x10
−12体積/体積%(v/v%)〜50v/v%又は約1x10
−15モル(M)〜10Mの濃度範囲でキットに添加される。
【0059】
図3を参照する。本発明の別の態様は、標的分子をアッセイするための方法を提供する。一実施形態では、前記方法は、(S1)表面上に固定化された前記捕捉抗体1を供給するステップと、(S2)溶液中に前記標的分子2を含有するサンプルを添加して、捕捉抗体1を標的分子2に結合させるステップと、(S3)前記分子プローブ7を添加して、分子プローブ7の検出分子8を標的分子2に結合させるステップと、(S4)分子プローブ7の標識9によってメディエーター10を生成させて溶液中に蓄積させるために、溶液を一定期間放置するステップと、(S5)測定可能な信号6を生成する化学反応を開始させるために、前記反応物質5を溶液に添加するステップと、(S6)信号6を測定するステップとを含む。
【0060】
好ましくは、溶液中の分子プローブ8上の標識9の最終濃度は、約1x10
−15mg/mL〜500mg/mLの範囲である。一方、分子プローブが添加される場合、溶液は、化学反応を行うために必要なもの(例えば、化学反応の反応物質)を除いて、アッセイを行うために必要な試薬及び緩衝剤の全てを含んでもよい。
【0061】
標識9によって生成されたメディエーター10は、活性酸素種(ROS)、活性窒素種、過酸化脂質又は脂質酸化生成物、トリプロピルアミン(TPA)、中間原子価化合物、3,3’,5,5’−テトラ−メチルベンジジン(TMB)、窒素酸化物系持続性ラジカル、ラジカル付加体、α−フェニルN−ターシャリー−ブチルニトロン(PBN)、5,5−ジメチル−ピロリンN−オキシド(DMPO)、グルタチオン、グルタチオンジスルフィド、NAD(H)、NADP(H)、及びC−ニトロソスピントラップの少なくとも1つを含む。メディエーターは、好ましくは数分〜数週間の期間で溶液に蓄積して、化学反応に継続的に関与し、それにより、標的分子2の検出に応じて「1対多数」の信号増幅を達成することができる。好ましくは、反応物質5の添加の前に、分子プローブ及び固定化された標的分子を含有する溶液は、室温で1min放置される。しかしながら、本発明は、溶液が放置される期間及び温度を制限しないことが理解されるべきである。メディエーターが安定して生成され溶液中に蓄積すれば、本発明の実施形態は機能することができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、検出可能な信号は、光学特性、電磁特性、熱力学特性又は機械的特性の変化の変化の形態であってもよい。例えば、光学特性は、発光強度、蛍光強度、色、発光波長プロファイル、蛍光波長プロファイル、又は光波長プロファイルであってもよい。電磁特性は、電流強度、電位、導電率、電荷、電圧、又は比誘電率であってもよい。熱力学特性は、温度を含むことができるが、これに限定されない。機械的特性は、光学密度(例えば、吸光度)、共振周波数、振動周波数、表面弾性波、ピエゾ電気、又はインプラント安定指数であってもよい。幾つかの実施形態では、信号は、ポテンショスタット、ガルバノスタット、サイクリックボルタンメーター、電気化学的分析装置、エレクトロクロミック分析装置、蛍光分光器、化学発光分光器、電気化学発光分光器、光化学発光分光器、光電気化学発光分光法、電流測定センサ、導電率計、高温計、圧電センサ、共振周波数分析装置、電圧計、電位差計、オシロスコープ、ラマン分光計、表面弾性波センサ、又は水晶マイクロバランスによって検出されてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、方法は、ディッシュ、ウェル、キューブ、チューブ、キャピラリ、電極、チャンバー、膜、粒子、検出器、マイクロタイタープレート、マイクロチップ、半導体センサチップ又はキュベットなどの表面上で行われてもよい。
【0064】
別の実施形態では、方法は、捕捉抗体の使用を必要としない。即ち、分子プローブ7は表面上に固定化されてもよく、且つその標識9は、標的分子2の結合時の立体構造変化又は他のメカニズムによって活性化されてもよい。
【0065】
好ましい実施形態では、標的分子をアッセイするための方法は、溶液を一定期間放置する場合、溶液にエネルギー12を印加するステップをさらに含む。エネルギー12は、化学エネルギー、放射エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、音波エネルギー、機械エネルギー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。エネルギー12は、レーザ、水銀ランプ、可視光、紫外光、赤外光、内視鏡光、X線、超音波、電場、磁場、核磁気共鳴、機能発生器、ホットプレート、又は発光ダイオードによって供給されてもよい。エネルギーは、分子プローブ7の標識9による電子及び/又はメディエーター10の生成を加速又は促進するのに十分であるべきである。好ましくは、エネルギーは、一定期間の露光(例えば、100mW/cm
−2の可視光で20秒間)及び/又は酸化還元促進剤(例えば、10mMのアスコルビン酸)の添加によって、溶液に供給される。
【0066】
さらに具体的には、放射エネルギーは、1pm〜1600nm、又は、好ましくは1pm〜1nm(電離放射線)、10nm〜400nm(紫外線射線)、400nm〜1000nm(可視光及び赤外線放射)の波長範囲又はそれらの組み合わせで供給されてもよい。放射エネルギーは、約1x10
−6W/cm
2〜100W/cm
2、又は、好ましくは10W/cm
2〜5W/cm
2の出力範囲であってもよい。熱エネルギーは、約1x10
−6W/cm
2〜100W/cm
2、又は好ましくは10W/cm
2〜5W/cm
2の出力範囲で供給されてもよい。電気エネルギーは、約0.0001V〜500V、又は、好ましくは−5V〜5Vの電位範囲で供給されてもよい。電気エネルギーは、約1x10
−15A/cm
2〜100A/cm
2、又は、好ましくは1x10
−12〜10A/cm
2の範囲の電流応答を有してもよい。磁気エネルギーは、約1x10
−6W/cm
2〜100W/cm
2、又は、好ましくは約10W/cm
2〜5W/cm
2の出力範囲で供給されてもよい。機械エネルギーは、好ましくは、約1x10
−6W/cm
2〜100W/cm
2、又は、好ましくは約10W/cm
2〜5W/cm
2の出力範囲で供給される超音波エネルギーであってもよい。
【0067】
図4を参照する。本発明の実施形態の分子プローブ上の触媒の量は、メディエーターの生成と相関することが実証される。
図4に示されるような実験では、溶液中のH
2O
2の濃度は、NGOQDの濃度とともに増加することが示され、NGOQDが溶液からH
2O
2を生成するようにトリガされ得ることが示唆される。
【0068】
図5Aと5Bを参照する。本発明の実施形態に従って生成されたメディエーターは、溶液中に蓄積し、長期間維持することが実証される。
図5Aに示されるように、50mW/cm
−2の光に暴露した後に、0.005mg/mLの最終濃度の窒素ドープ酸化グラフェン量子ドット(NGOQD)を実験のアッセイに添加する場合、市販のAmplexR Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキットで測定されたH
2O
2の濃度は、わずか3分で60μMを超えて蓄積することが示された。蓄積したH
2O
2も安定である。
図5Bに示されるように、1μMのH
2O
2は、アッセイ混合物中に少なくとも2時間安定的に存在することが示された。
【0069】
図6Aと6Bを参照する。本発明の実施形態に従って生成されたメディエーターは、発光信号の増幅に強く関連することが実証される。
図6Aに示されるように、セイヨウワサビペルオキシド(HRP)及び化学発光性HRP基質を使用する実験のアッセイの得られた化学発光信号の強度は、H
2O
2の濃度とともに増加することが示された。同様に、
図6Bに示されるような別の実験では、ルミノールから生成された化学発光信号の強度も、H
2O
2の濃度とともに増加することが示された。
【0070】
図7Aと7Bを参照する。本発明の実施形態は、インターロイキン(IL−6)の検出のためのサンドイッチイムノアッセイの検出信号を増幅することが実証されている。分子プローブの標識に窒素ドープ酸化グラフェン(NGOQDs)が含まれ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)及び化学発光HRP基質を用いる発光反応がアッセイに関与していた実験では、
図7Aに示されるように、溶液を100mW/cm
−2の光に20秒間暴露した後に、NGOQD用量依存的な発光の増加が観察される。一方、
図7Bに示されるように、得られた発光信号の強度も、NGOQDsで標識された分子プローブを用いるサンドイッチイムノアッセイにおけるIL−6の濃度と相関することが示される。
【0071】
図8を参照する。本発明の実施形態は、分子検出アッセイにおいて、電子、そして電流を生成することも実証される。
図8に示されるような実験では、NGOQDで標識された分子プローブを含有する溶液を100mW/cm
−2の光に暴露する際に電流が検出された。光は20秒間保持され、その間に、電流は生成され続けるが、時間と共に減衰する。光がオフされた直後に電流の生成は停止した。さらに、電子及びメディエーターが触媒によって本発明の実施形態の分子プローブ上に同時に生成されることが実証されるため、
図8に示される結果はメディエーター(例えば、H
2O
2)の生成のタイミング及び相対量も示す。
【0072】
図9を参照する。本発明の実施形態によるメディエーターの生成の効率は、エネルギー(例えば、光エネルギー)を溶液に供給することによって向上されることが実証される。
図9に示されるような実験において、0.008mg/mL又は0.0008mg/mLのNGOQDを含有する溶液に2mMのアスコルビン酸を供給する場合、50mW/cm
−2の光に10min暴露されたNGOQDs(図にL10minと表示される)は、露光を受けないもの(図中にNLと表示される)と比較して、約5倍のH
2O
2の生成をもたらした。
【0073】
図10を参照する。本発明の実施形態は、標的分子の検出及び定量を容易にすることがさらに実証される。
図10に示されるような実験では、NGOQDで標識された分子プローブをIL−6の検出のためのサンドイッチイムノアッセイに添加すると、検出された電流の強度は、IL−6の濃度とともに増加することが示された。
【0074】
図11を参照する。本発明の実施形態によれば、同時に複数の種類のエネルギーを供給することによって、触媒で標識された分子プローブによる電子の生成は向上されることが実証される。
図11に示される実験で実証されるように、NGOQDで標識された分子プローブを含有する溶液に10mMのアスコルビン酸(即ち、化学エネルギー)及び間欠照明(即ち、放射エネルギー)を同時に供給する場合、化学エネルギーでNGOQDsにより生成された電流を連続的に検出することができ、光エネルギーのオン/オフに応じて変動することが示された。
【0075】
図12Aと12Bを参照する。本発明の幾つかの実施形態によれば、分子プローブ上の触媒は、ナノ粒子又は他の種類の量子ドット(例えば、金属半導体量子ドット)であってもよい。
図12A及び12Bに示される実験で実証されるように、TiO
2及びFePtナノ粒子の両方は、水溶液からH
2O
2を生成することができた。
【0076】
図13を参照する。本発明の幾つかの実施形態によれば、メディエーター生成の効率は、溶液にエネルギー(例えば、化学エネルギー)を供給することによって向上してもよい。例えば、
図13に示される実験は、0.01mg/mL又は0.001mg/mLのFePtナノ粒子を含有する水溶液へのアスコルビン酸(図にAAと表示される)の添加による化学エネルギーを供給することによって、AA(図にMQと表示される)のない対照と比較して、H
2O
2の生成が著しく増加したことを実証した。この結果はまた、FePtナノ粒子によるH
2O
2の生成も用量依存的であったことを示した。
【0077】
図14を参照する。本発明の幾つかの実施形態によれば、他の種類の触媒(例えば、ナノ粒子)により生成されたメディエーターは、溶液に一定時間蓄積することもできる。
図14の実験のように、2mMのアスコルビン酸の存在下で0.001mg/mLのFePtナノ粒子によって生成されたH
2O
2は、30minで8μMを超えるように水に蓄積することが示された。
【0078】
要するに、前記実施形態による本発明は、溶液からメディエーターを生成することができる1つ又は複数の触媒により検出分子を標識することによって、分子検出アッセイの検出信号を増幅するか、又は増幅されたその検出信号を取得する。メディエーターは、分子検出アッセイの化学反応に連続的に関与するように、溶液中に一定期間安定的に蓄積することができ、それにより、標的分子の検出に応じて顕著に増幅された信号(即ち、「1対多数」の増幅)をもたらす。従って、本発明は、少ないコスト又は低減されたコストで、既存のアッセイの検出感度を効果的に改善する。さらに、電子及びメディエーターを同時に生成することができるため、本発明は少なくとも2つのタイプの測定可能な信号を提供するので、分子検出の正確性を保証するために検出される信号を再確認又はダブルチェックする可能性を提供する。
【0079】
以上の説明は、本開示の実施形態のみであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示の特許請求の範囲及び説明による多くの変形や修正は依然として、請求された開示の範囲内にある。また、実施形態及び特許請求の範囲のそれぞれは、開示されたすべての利点又は特徴を達成する必要がない。さらに、要約及び名称は、特許文献の検索を容易にするためにのみ役立つものであり、請求された開示の範囲を限定することを決して意図していない。