特許第6671443号(P6671443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許6671443-車両用灯具 図000002
  • 特許6671443-車両用灯具 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671443
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/19 20180101AFI20200316BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20200316BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20200316BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20200316BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20200316BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20200316BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200316BHJP
【FI】
   F21S41/19
   F21S41/20
   F21S41/143
   F21V19/00 150
   F21V19/00 170
   F21S45/10
   F21W102:00
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-203817(P2018-203817)
(22)【出願日】2018年10月30日
(62)【分割の表示】特願2014-78630(P2014-78630)の分割
【原出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2019-12710(P2019-12710A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘美
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084855(JP,A)
【文献】 特開2012−004214(JP,A)
【文献】 特開2008−059882(JP,A)
【文献】 特開2008−010228(JP,A)
【文献】 特開2013−069422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21S 41/143
F21S 41/20
F21S 45/10
F21V 19/00
F21W 102/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される灯具であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに装着されて灯室を区画する透光カバーと、
透光性のフィルム、および当該フィルム上に配置された導電層を含む透明基板と、
前記透明基板に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子と、
前記導電層と電気的に接続されており、前記発光素子へ電力を提供するための導電路を有するフレキシブル回路基板と、
前記フレキシブル回路基板の第1の面に配置され、前記導電路と電気的に接続されたコネクタと、
を備えており
前記透明基板、前記発光素子、前記フレキシブル回路基板、および前記コネクタは、前記灯室内に配置されており、
前記透明基板は、前記フレキシブル回路基板よりも低い可撓性を有し、
前記導電路は、前記透明基板の端部において前記導電層と電気的に接続されており、
前記フレキシブル回路基板は、前記灯室の側端部において後方へ延びるように屈曲されており、
前記コネクタは、前記透明基板よりも後方に配置されており、
前記フレキシブル回路基板の第2の面における前記コネクタと対向する位置に、前記透明基板よりも低い可撓性を有する補強部材が設けられている、
灯具。
【請求項2】
前記発光素子から出射された光は、前記透光カバーを通過
前記透光カバーと前記フレキシブル回路基板の間に配置されており、前記コネクタを覆い隠すカバーとを備えている、
請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記発光素子とは異なる光源を備えており、
前記発光素子は、前記透明基板の第1の側に光を出射し、
前記光源から出射された光の少なくとも一部は、前記透明基板を通過して前記第1の側へ照射される、
請求項1または2に記載の灯具。
【請求項4】
前記透明基板は、第1ベースフィルムと第2ベースフィルムを備えており、
前記発光素子は、前記第1ベースフィルムと前記第2ベースフィルムの間に挟まれている、
請求項1からのいずれか一項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の灯具として、光源としての発光素子が実装されたフレキシブル回路基板を灯室内に配置したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。フレキシブル基板は可撓性を有し変形可能であるため、灯室内における発光素子の配置自由度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−15910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子から出射された光は、灯室を区画する透光カバーを通じて所定の方向へ照射される。発光素子はフレキシブル回路基板上に実装されているため、発光素子の非点灯時においては、透光カバーを通じてフレキシブル回路基板が視認可能となり、見栄えが損なわれる。このような事態を避けるためには、フレキシブル回路基板を覆い隠すカバーが必要となり、部品コストや組付け工数が増加する。
【0005】
よって本発明は、発光素子の非点灯時においても見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる一態様は、車両に搭載される灯具であって、
導電層を含む透明基板と、
前記透明基板に支持され、前記導電層と電気的に接続された発光素子と、
前記透明基板の端部において前記導電層と電気的に接続された接続部と、
前記接続部と電気的に接続されたコネクタとを備える。
【0007】
発光素子は導電層を含む透明基板に支持されているため、発光素子の非点灯時においても、各発光素子を支持する基板を灯室の外側から視認することは困難である。したがって、当該基板を覆い隠すカバーを設ける必要がない。これにより、発光素子の非点灯時においても灯具の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0008】
前記接続部は、前記透明基板よりも高い可撓性を有する構成としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、コネクタを灯室の外側から視認しにくい位置に配置することが容易となる。これにより、コネクタを覆い隠すカバーの寸法を小さくできる。また接続部を適宜の方向に屈曲させることにより、透明基板の長手方向における灯室の寸法を小さくできる。換言すると、灯室の外部から視認可能な部分を最大限利用して透明基板を配置できる。したがって、発光素子の非点灯時においても灯具の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0010】
前記接続部は非透明である構成としてもよい。
【0011】
透明基板よりも高い可撓性を利用して接続部を適宜の方向へ屈曲させることにより、不透明部分を灯室の外側から視認しにくい位置に配置することが容易となる。これにより、当該不透明部分を覆い隠すカバーの寸法を小さくできる。したがって、発光素子の非点灯時においても灯具の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0012】
前記接続部は、フレキシブル回路基板である構成としてもよい。この場合、前記コネクタは、前記フレキシブル回路基板の第1の面に配置される。また、前記フレキシブル回路基板の第2の面における前記コネクタと対向する位置に、前記透明基板よりも低い可撓性を有する補強部材が設けられる。
【0013】
このような構成によれば、上述の効果に加え、コネクタの配置自由度を得るための高い可撓性と、コネクタを支持するための強度とを、接続部に与えることができる。また補強部材を利用することにより、コネクタを灯室における適宜の箇所に固定することが容易となる。
【0014】
前記発光素子とは異なる光源を備える構成としてもよい。この場合、前記発光素子は、前記透明基板の第1の側に光を出射し、前記光源から出射された光の少なくとも一部は、前記透明基板を通過して前記第1の側へ照射される。
【0015】
このような構成によれば、上述の効果に加え、発光素子から出射される光と光源から出射される光が重なって照射されることによって、従来にない発光パターンが形成されうる。また発光素子と光源の非点灯時においては、光源の前方に発光素子が浮かんでいるように視認され、従来にない斬新な見栄えを提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る灯具ユニットを備える照明装置を、一部断面視で示す平面図である。
図2図1の灯具ユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。また以降の説明に用いる「右」および「左」は、運転席から見た左右の方向を示している。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る左前照灯装置1の一部を、水平面で切断して上方から見た状態を示す図である。左前照灯装置1は、車両の前部左寄りに搭載され、前方を照明するための装置である。左前照灯装置1は、ハウジング2と、当該ハウジング2に装着されて灯室3を区画形成する透光カバー4とを備えている。灯室3内には、本発明の一実施形態に係る灯具ユニット10(灯具の一例)が配置されている。
【0019】
図2の(a)は、灯具ユニット10の外観を示す正面図である。図2の(b)は、灯具ユニット10の外観を示す側面図である。灯具ユニット10は、透明基板11、複数の発光素子12、接続部13、およびコネクタ14を備えている。各発光素子12は、例えば所定の色の光を出射するように構成された発光ダイオードである。
【0020】
図2の(c)は、透明基板11の一部を拡大して示す断面図である。透明基板11は、第1ベースフィルム11a、第1導電層11b、第2ベースフィルム11c、第2導電層11d、および接着層11eを含んでいる。第1ベースフィルム11a、第1導電層11b、第2ベースフィルム11c、第2導電層11d、および接着層11eは、いずれも透光性である。第1ベースフィルム11aと第2ベースフィルム11cは、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)からなる。第1導電層11bと第2導電層11dは、例えばITO(酸化インジウムスズ)からなる。
【0021】
第1導電層11bは、第1ベースフィルム11a上に積層されている。第2導電層11dは、第2ベースフィルム11c上に積層されている。各発光素子12は、第1導電層11bと第2導電層11dに挟まれるように配置され、第1導電層11bおよび第2導電層11dと電気的に接続される。接着層11eは、第1導電層11bと第2導電層11dを接着するとともに、各発光素子12を所定の位置に固定する。
【0022】
各発光素子12から出射された光は、第2導電層11dおよび第2ベースフィルム11cを通過し、図2の(b)における上側(第1の側の一例)に出射される。図2の(a)に示す正面視において、透明基板11に支持された各発光素子12は、第2ベースフィルム11cと第2導電層11dを通じてあたかも宙に浮いているかのように視認される。
【0023】
接続部13は、透明基板11の長手方向における端部において、第1導電層11bおよび第2導電層11dと電気的に接続されている。すなわち接続部13は、第1導電層11bおよび第2導電層11dと電気的に接続される導電路(図示せず)を備えている。
【0024】
コネクタ14は、接続部13と電気的に接続されている。すなわちコネクタ14は、接続部が備える導電路と電気的に接続される端子(図示せず)を備えている。
【0025】
図1に示すように、図示しない電源からの電力を供給するコネクタ20が灯室3に配置されている。コネクタ20は、コネクタ14に接続される。コネクタ14と接続部13を経由して当該電力が透明基板11に供給される。ここで例えば、第1導電層11bは給電側の導電経路として利用され、第2導電層11dは接地側の導電経路として利用される。供給された電力により、各発光素子12が発光する。灯具ユニット10は、各発光素子12から出射された光が透光カバー4へ向かうように、灯室3内に配置される。すなわち灯具ユニット10は、透明基板11の第2ベースフィルム11cが灯室3の外側に面するように配置される。
【0026】
上述のように、各発光素子12は導電層を含む透明基板11に支持されている。そのため、各発光素子12の非点灯時においても、各発光素子12を支持する基板を灯室3の外側から視認することは困難である。したがって、当該基板を覆い隠すカバーを設ける必要がない。これにより、各発光素子12の非点灯時においても灯具ユニット10の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0027】
図1に示すように、透明基板11は可撓性を有しており、若干湾曲された状態で灯室3に配置されうる。接続部13は、透明基板11よりも高い可撓性を有している。接続部13は、灯室3の側端部3aにおいて屈曲されて後方に延びている。これによりコネクタ14は、透明基板11よりも後方に配置され、コネクタ20と接続されている。コネクタ14、20の前方には、これらを覆い隠すカバー30が配置されている。
【0028】
接続部13が透明基板11よりも高い可撓性を有することにより、コネクタ14、20を灯室3の外側から視認しにくい位置に配置することが容易となる。これにより、コネクタ14、20を覆い隠すカバーの寸法を小さくできる。また接続部13を適宜の方向に屈曲させることにより、透明基板11の長手方向における灯室3の寸法を小さくできる。換言すると、灯室3の外部から視認可能な部分を最大限利用して透明基板11を配置できる。したがって、各発光素子12の非点灯時においても灯具ユニット10の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0029】
本実施形態において、接続部13は、フレキシブル回路基板である。しかしながら、コネクタ14を通じて供給される電力を、透明基板11に支持された各発光素子12に提供しうる導電路を有する限りにおいて、接続部13はワイヤーハーネスで構成してもよい。
【0030】
これらの部材は一般に不透明であるが、透明基板11よりも高い可撓性を利用して接続部13を適宜の方向へ屈曲させることにより、不透明部分を灯室3の外側から視認しにくい位置に配置することが容易となる。これにより、当該不透明部分を覆い隠すカバーの寸法を小さくできる。したがって、各発光素子12の非点灯時においても灯具ユニット10の見栄えを損なうことなく、部品コストや組付け工数の増加を回避しうる。
【0031】
図2の(b)に示すように、コネクタ14は、接続部13(フレキシブル回路基板)の上面13a(第1の面の一例)に配置されている。接続部13の下面13b(第2の面の一例)におけるコネクタ14と対向する位置には、補強部材13cが設けられている。補強部材13cは、透明基板11よりも低い可撓性を有している。
【0032】
このような構成によれば、上述の効果に加え、コネクタ14の配置自由度を得るための高い可撓性と、コネクタ14を支持するための強度とを、接続部13に与えることができる。また補強部材13cを利用することにより、コネクタ14、20の接続部分を灯室3における適宜の箇所に固定することが容易となる。
【0033】
図1に示すように、灯具ユニット10は、各発光素子12とは異なる複数の光源40をさらに備えている。各光源40は、発光ダイオード、レーザダイオード、有機EL素子などの半導体発光素子でもよいし、白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプ、ネオンランプなどのランプ光源でもよい。
【0034】
灯具ユニット10は、複数のレンズ41をさらに備えている。各レンズ41は、複数の光源40のうち対応する1つと透明基板11の間に配置されている。各光源40から出射された光の少なくとも一部は、対応するレンズ41と透明基板11を通過し、透明基板11の前方(第1の側の一例)へ照射される。
【0035】
各光源40から出射される光の照射方向は適宜に定められうる。図1に示す例では、各発光素子12から出射される光L1と各光源40から出射される光L2の照射方向は相違している。しかしながら両者が一致するように、各光源40や各レンズ41の配置等が適宜に変更されうる。レンズ41に加えてあるいは代えて、リフレクタ等の光学部品を設けることにより光L2の照射方向を調節してもよい。
【0036】
このような構成によれば、上述の効果に加え、光L1と光L2が重なって照射されることによって従来にない発光パターンが形成されうる。また各発光素子12と各光源40の非点灯時においては、各光源40の前方に各発光素子12が浮かんでいるように視認され、従来にない斬新な見栄えを提供しうる。
【0037】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0038】
上記の実施形態においては、透明基板11が第1導電層11bと第2導電層11dを備えている。しかしながら、各発光素子12を駆動する給電経路を形成可能な限りにおいて、少なくとも1層の導電層を有する構成としてもよい。
【0039】
上記の実施形態においては、7個の発光素子12が透明基板11に支持されている。しかしながら、所望の照明機能を満足しうる限りにおいて、発光素子12の数は任意に定められうる。
【0040】
すなわち本発明に係る灯具ユニット10が搭載される照明装置は、左前照灯装置1に限られるものではない。右前照灯装置に搭載されうることは勿論のこと、各種標識灯などの車両用照明装置に搭載される灯具に対して、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10:灯具ユニット、11:透明基板、11b:第1導電層、11d:第2導電層、12:発光素子、13:接続部(フレキシブル回路基板)、13a:フレキシブル回路基板の上面、13b:フレキシブル回路基板の下面、13c:補強部材、14:コネクタ、40:光源
図1
図2