特許第6671462号(P6671462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671462混合排気および圧縮解放エンジンブレーキのための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671462
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】混合排気および圧縮解放エンジンブレーキのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/04 20060101AFI20200316BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20200316BHJP
   F01L 13/06 20060101ALI20200316BHJP
   F02D 9/06 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F02D13/04 A
   F01L13/00 301Y
   F01L13/06
   F02D9/06 C
   F02D9/06 D
【請求項の数】32
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-511105(P2018-511105)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-526572(P2018-526572A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016049819
(87)【国際公開番号】WO2017040736
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年4月24日
(31)【優先権主張番号】62/213,002
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、マテイ
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−108777(JP,A)
【文献】 特開2002−242705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0060166(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0031372(US,A1)
【文献】 特開2001−098913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34 − 1/356
F01L 9/00 − 9/04
F01L13/00 − 13/08
F02D 9/00 − 11/10
F02D13/00 − 28/00
F02D41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関が、圧縮解放ブレーキサブシステムを備え、排気システムが、排気ブレーキサブシステムを備え、コントローラが、前記圧縮解放ブレーキサブシステムおよび前記排気ブレーキサブシステムと通信する、前記排気システムに動作可能に接続された前記内燃機関と一緒に使用するための前記コントローラにおいて、エンジンブレーキを実施するための方法であって、
前記コントローラによって、エンジンブレーキの要求を受信することと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、前記コントローラによって、前記排気ブレーキサブシステムを作動させることと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、かつ前記排気ブレーキサブシステムの作動に応答して、前記コントローラによって、一定時間が経過することを決定し前記決定された一定時間の後、前記コントローラによって、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを作動させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記一定時間は、前記排気システム内に上昇した背圧を発生させるのに充分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一定時間は、少なくとも1秒である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントローラによって、前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することと、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したという判定に続いて、前記コントローラによって、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを低制動力モードで動作させることと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することは、
前記コントローラによって、前記排気システム内の背圧が閾値未満であることを判定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することは、
前記コントローラによって、前記内燃機関の吸気サブシステム内の給気圧が閾値よりも高いことを判定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させることは、最大制動力未満で前記圧縮解放ブレーキサブシステムを動作させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させることは、前記コントローラによって、前記圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみを作動させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラによって、前記排気システム内の背圧を上昇させるために前記排気システムの構成を変更することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
排気システムに動作可能に接続された内燃機関と一緒に使用するためのコントローラであって、前記内燃機関は、圧縮解放ブレーキサブシステムを備え、前記排気システムは、排気ブレーキサブシステムを備え、前記コントローラは、前記圧縮解放ブレーキサブシステムおよび前記排気ブレーキサブシステムと通信し、前記コントローラは、
少なくとも1つの処理機器と、
実行可能命令を記憶しているメモリであって、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つの処理機器によって実行されたとき、前記少なくとも1つの処理機器に、
エンジンブレーキの要求を受信することと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、前記排気ブレーキサブシステムを作動させることと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、かつ前記排気ブレーキサブシステムの作動に応答して、一定時間が経過することを決定し、前記決定された一定時間の満了後、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを作動させることと、を行わせる、メモリと、を備える、コントローラ。
【請求項11】
前記一定時間は、前記内燃機関に動作可能に接続された排気システム内に上昇した背圧を発生させるのに充分である、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記一定時間は、少なくとも1秒である、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記メモリは、実行可能命令をさらに含み、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することと、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したという判定に続いて、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを低制動力モードで動作させることと、を行わせる、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記排気システム内の背圧が閾値未満であることを判定させるようにさらに動作する、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記内燃機関の吸気サブシステム内の給気圧が閾値よりも高いことを判定させるようにさらに動作する、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、最大制動力未満で前記圧縮解放ブレーキサブシステムを動作させるようにさらに動作する、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみを作動させるようにさらに動作する、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記メモリは、実行可能命令をさらに含み、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記排気システム内の背圧を上昇させるために前記排気システムの構成を変更させる、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項19】
請求項10に記載のコントローラを備える、内燃機関。
【請求項20】
内燃機関が、圧縮解放ブレーキサブシステムを備え、排気システムが、排気ブレーキサブシステムを備え、コントローラが、前記圧縮解放ブレーキサブシステムおよび前記排気ブレーキサブシステムと通信する、前記排気システムに動作可能に接続された前記内燃機関と一緒に使用するための前記コントローラにおいて、エンジンブレーキを実施するための方法であって、
前記コントローラによって、エンジンブレーキの要求を受信することと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、前記コントローラによって、前記排気ブレーキサブシステムを作動させることと、
前記コントローラによって、前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することと、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したという判定に続いて、前記コントローラによって、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを低制動力モードで動作させることと、を含む、方法。
【請求項21】
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することは、
前記コントローラによって、前記排気システム内の背圧が背圧閾値未満であることを判定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することは、
前記コントローラによって、前記内燃機関の吸気サブシステム内の給気圧が閾値よりも高いことを判定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させることは、最大制動力未満で前記圧縮解放ブレーキサブシステムを動作させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させることは、前記コントローラによって、前記圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみを作動させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記コントローラによって、前記排気システム内の背圧を上昇させるために前記排気システムの構成を変更することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
排気システムに動作可能に接続された内燃機関と一緒に使用するためのコントローラであって、前記内燃機関は、圧縮解放ブレーキサブシステムを備え、前記排気システムは、排気ブレーキサブシステムを備え、前記コントローラは、前記圧縮解放ブレーキサブシステムおよび前記排気ブレーキサブシステムと通信し、前記コントローラは、
少なくとも1つの処理機器と、
実行可能命令を記憶しているメモリであって、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つの処理機器によって実行されたとき、前記少なくとも1つの処理機器に、
エンジンブレーキの要求を受信することと、
前記エンジンブレーキの要求に応答して、前記排気ブレーキサブシステムを作動させることと、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定することと、
前記排気ブレーキサブシステムが故障したという判定に続いて、前記圧縮解放ブレーキサブシステムを低制動力モードで動作させることと、を行わせる、メモリと、を備える、コントローラ。
【請求項27】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記排気システム内の背圧が背圧閾値未満であることを判定すること行わせるようにさらに動作する、請求項26に記載のコントローラ。
【請求項28】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記排気ブレーキサブシステムが故障したことを判定させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記内燃機関の吸気サブシステム内の給気圧が閾値よりも高いことを判定させるようにさらに動作する、請求項26に記載のコントローラ。
【請求項29】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、最大制動力未満で前記圧縮解放ブレーキサブシステムを動作させるようにさらに動作する、請求項26に記載のコントローラ。
【請求項30】
前記少なくとも1つのプロセッサに前記圧縮解放ブレーキサブシステムを前記低制動力モードで動作させる前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみを作動させるようにさらに動作する、請求項26に記載のコントローラ。
【請求項31】
前記メモリは、実行可能命令をさらに含み、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記排気システム内の背圧を上昇させるために前記排気システムの構成を変更させる、請求項26に記載のコントローラ。
【請求項32】
請求項26に記載のコントローラを備える内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「System and Method for Controlling Backpressure and System Loading」と題され、2015年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/213,002号の利益を主張し、その教示は、この参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、エンジンブレーキ、より具体的には、混合排気および圧縮解放エンジンブレーキのための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジンブレーキシステムは、既知であり、内燃機関、特にディーゼルエンジンと併せて何十年も使用されている。このようなシステムは、圧縮解放ブレーキおよび排気ブレーキを含む。これらのブレーキシステムは、単体または互いに組み合わせて使用され得る。
【0004】
簡単に言うと、圧縮解放ブレーキは、圧縮解放機構を使用して内燃機関を動力吸収空気圧縮機に向けることによって標準サービスブレーキの負荷を減らす。圧縮解放形式ブレーキが作動されるとき、1つ以上の非燃料シリンダの排気バルブが圧縮ストロークの最上部近くに開かれる。これは、ピストンに返される小さなエネルギーにより排気システムを通して高圧縮空気を解放する。サイクルを繰り返すと、車両の前進運動のエネルギー(車両のドライブトレインを通ってエンジンに伝達される)が散逸され、車両の減速を引き起こす。
【0005】
これに対し、排気ブレーキは、排気ガスの流れを制限し、エンジン内側の背圧を上昇させることによって制動力を著しく上昇させるためにエンジン内の排気背圧を使用する。本明細書において使用される、エンジン排気背圧は、ガスを大気に放出するためにエンジンの排気システムの流体力学的抵抗を打ち消すようにエンジンによって生成された圧力である。エンジン内で上昇した背圧は、ピストンに対する抵抗を作り出し、クランクシャフトの回転を減速させ、車両速度を制御することを助ける。
【0006】
当分野において知られるように、圧縮解放および排気エンジンブレーキは、制動力の実質的なレベルを実現するために共に使用され得る。残念ながら、圧縮解放および排気ブレーキの組み合わせの欠点の1つとして、特に過渡事象中に、オーバーヘッドまたはバルブトレイン、つまり、カム、ロッカーアーム、カムフォロア(ローラーまたはフラット)等のような、エンジンバルブにバルブ作動運動を正常に伝達する構成要素によって見られる高システム負荷がある。この例が図1に例示される。
【0007】
特に、図1は、排気エンジンブレーキサブシステムの動作を制御するために使用される制御信号104、圧縮解放エンジンブレーキサブシステムの動作を制御するために使用される別の制御信号106、および秒単位で測定された時間の関数としてシリンダ圧に起因するバルブトレイン構成要素に適用された力を例示するトレース102を例示する。当分野において既知であるように、トレース102に例示される各ピークは、与えられたエンジンシリンダの各ピストンサイクルを通してバルブトレインに適用されたピーク力を表現する。制御信号104、106が、この例において、圧縮解放および排気エンジンブレーキサブシステムの両方を略同時に作動するように低位から高位に変遷するとき、これは正常な定常動作112の前に長期間の異常に高いピーク110が後に続く、一般的な圧縮開放過渡ピーク108を結果としてもたらす。過度に高い負荷110の期間の結果として、バルブトレインまたはオーバーヘッド上に損傷が加えられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの問題を克服する技術は、当分野において歓迎すべき前進を示すことになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、先行技術のシステムの上記の欠点を実質的に克服する混合排気および圧縮解放エンジンブレーキのための方法および装置を説明する。第1実施形態において、内燃機関と併せて使用されるコントローラは、エンジンブレーキの要求を受信し、それに応答して、内燃機関の排気ブレーキサブシステムを作動させる。加えて、一定時間の経過後、コントローラは、内燃機関の圧縮解放ブレーキサブシステムをさらに作動させる。一定時間は、内燃機関の排気システム内の上昇した背圧の発生を許容するように好ましくは選択される。
【0010】
第1実施形態に加えて、またはこれとは別に実施され得る第2実施形態において、コントローラは、エンジンブレーキの要求に応答して排気ブレーキサブシステムを作動させる。この実施形態において、コントローラは、排気ブレーキサブシステムの作動に続き、排気ブレーキサブシステムが故障したか否かをさらに判定し、故障した場合、コントローラは、圧縮解放ブレーキサブシステムに、低制動力モード、例えば、潜在的に制動力がなくなるまで下がり、かつ制動力がないことを含む、最大制動力未満で動作することを行わせる。低制動力モードは、圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみを作動するコントローラによって実現され得る。加えて、コントローラは、排気システム内の背圧を上昇させようとする排気システムの構成内の変化を引き起こし得る。排気ブレーキサブシステムが故障したかどうかを判定するために、コントローラは、排気システム内の背圧が閾値よりも高いことを判定し得る。一実装例において、背圧が閾値を超えたことの判定は、内燃機関の吸気システム内の給気圧が閾値よりも高いことの判定にさらに基づく。
【0011】
本開示に説明される特徴は、特に添付の請求項により明らかになる。これらの特徴および付随する利点は、添付図面と併せて用いられる、以下の詳細な説明の検討から明らかになるであろう。1つ以上の実施形態が、同様の参照番号が同様の要素を表現する添付図面を参照して、例示のみの方式によって、ここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】排気および圧縮解放エンジンブレーキサブシステムを備えるシステム、かつ先行技術による、制御信号およびバルブトレイン構成要素に適用された力の時間プロットである。
図2】本開示によるエンジンシリンダおよびバルブ作動システムの概略的断面図である。
図3】本開示による内燃機関の概略的例示である。
図4】本開示による処理を例示するフローチャートである。
図5】排気および圧縮解放エンジンブレーキサブシステムを備えるシステム、かつ本開示による、制御信号およびバルブトレイン構成要素に適用された力の時間プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2は、本開示によるエンジンシリンダおよびバルブ作動システムの概略的断面図である。示されるように、エンジンシリンダ202は、シリンダ202の順方向動力発生(つまり、ピストン204を駆動する燃料の燃焼)およびエンジンブレーキ動作(つまり、空気圧縮を実現するピストンの使用)の両方の間で上下に繰り返し往復運動するピストン204をその中に配設している。シリンダ202の最上部において、少なくとも1つの吸気バルブ206および少なくとも1つの排気バルブ208が存在し得る。吸気バルブ206および排気バルブ208は、それぞれ、吸気ガス通路210および排気ガス通路212との連通を提供するように開閉され得る。吸気バルブ206および排気バルブ208は、例えば、吸気バルブ作動サブシステム216、順方向動力排気バルブ作動サブシステム218、およびエンジンブレーキ排気バルブ作動サブシステム220等の、バルブ作動サブシステム214によって開閉され得る。順方向動力排気バルブ作動サブシステム218およびエンジンブレーキ排気バルブ作動サブシステム220は、いくつかの実施形態において単一システムに統合されてもよく、他の実施形態において分離されてもよい。
【0014】
バルブ作動サブシステム214は、任意の数の機械的、流体力学的、流体力学機械的、電磁的、または他の種類のバルブトレイン要素を含み得る。例えば、当分野において既知のように、排気バルブ作動サブシステム218および/または220は、排気バルブ208にバルブ作動動作を伝達するために使用される、1つ以上のカム、カムフォロア、ロッカーアーム、バルブブリッジ、プッシュチューブ等を含み得る。加えて、1つ以上のロストモーション構成要素が、任意のバルブ作動サブシステム214に含まれ得、これによって、バルブ作動サブシステム214によって一般に伝えられるバルブ作動運動のいくつかまたは全てが、バルブ206、208に達することを防止する、つまり、それらが「ロスト」される。
【0015】
バルブ作動サブシステム214は、限定されるものではないが、主吸気、主排気、圧縮解放ブレーキ、および他の補助的バルブ作動運動等の、エンジンバルブ事象を生成するために吸気バルブ206および排気バルブ208を作動し得る。バルブ作動サブシステム214は、例えば、エンジンバルブ作動の量およびタイミングを選択的に制御するためにコントローラ222によって制御され得る。コントローラ222は、バルブ作動サブシステム214と通信し、かつ可能な吸気および排気バルブ作動のいくつかまたは全てが吸気バルブ206および排気バルブ208に伝達されることを引き起こすための任意の電子的、機械的、流体力学的、電子流体力学的、または他の種類の制御機器を備え得る。コントローラ222は、マイクロプロセッサと、エンジン速度、車両速度、油温、冷媒温度、マニホールド(またはポート)温度、マニホールド(またはポート)圧力、シリンダ温度、シリンダ圧力、微粒子情報、他の排気ガスパラメータ、ドライバー入力(例えば、エンジンブレーキ開始の要求等)、トランスミッション入力、車両制御入力、エンジンクランク角、ならびに様々な他のエンジンおよび車両パラメータ等の入力に基づいて、エンジンバルブの適切な動作を判定および選択するために他のエンジン構成要素に連結された機器と、を含み得る。特に、そして以下にさらに詳細に説明される実施形態によると、コントローラは、エンジンブレーキの要求に応答してエンジンブレーキ排気バルブ作動サブシステム220を作動し得る。
【0016】
上記のように、ピストン204の往復運動を通してシリンダ202内に発生する圧力は、エンジンバルブ206、208を開く間にバルブ作動サブシステム214上に負荷を与える。例えば、ピストン204がその下死点中心位置またはその近くにあるとき、シリンダ202内の圧力は、比較的低くなり、バルブ206、208のいずれかを開いているときにバルブ作動サブシステム214上に与えられる負荷は、同様に比較的低くなる。一方で、ピストン204がその上死点中心位置またはその近くにあるとき、シリンダ202内の圧力は、比較的高くなり、バルブ206、208のいずれかを開いているときにバルブ作動サブシステム214上に与えられる負荷は、同様に比較的高くなる。この後者のシナリオは、順方向動力発生動作と異なり、ピストン204がその上死点中心位置にまさに閉じるとき、排気バルブ208が開かれ始める場合に特に正しい。
【0017】
図2は、本文脈において、排気システムの流体力学的流体流が、シリンダ202内に誘発された圧力に対抗して排気バルブ208に適用された力として自体を示す、背圧213の概念をさらに例示する。当分野において既知であるように、排気ブレーキシステムの作動は、排気システム内に上昇した背圧を結果としてもたらす。しかしながら、このような上昇した背圧は、発生するのに一定時間を要し得る。これから、そして図1を再び参照して、過度に高い負荷110の期間、ここでは質量流量慣性パルス(MFIP)と呼び、これは、バルブトレイン218、220に適用された負荷に別途対抗することになる上昇した背圧の発生前に、圧縮解放ブレーキサブシステムによって発生されたシリンダ圧力の急適用に起因する。
【0018】
ここで図3を参照すると、内燃機関300は、排気システム330に動作可能に接続されて示される。内燃機関300は、複数のシリンダ302、吸気マニホールド304および排気マニホールド306を備える。当業者によって認められることになるように、シリンダ302の数および構成、ならびに吸気マニホールド304および排気マニホールド306の構成は、設計選択上、例示された例とは異なってもよい。図3はまた、当分野において既知であるように、1つ以上の排気バルブを作動するための圧縮解放ブレーキサブシステム220を概略的に例示する。次に、排気システム330は、通常の配管に加えて、排気ブレーキサブシステム332および、例示された実施形態において、ターボチャージャー334を備える。当分野において既知であるように、ターボチャージャー334は、圧縮機338に動作可能に接続されたタービン336を備え得、排気マニホールド306による排気ガス(黒い矢印で例示される)出力がタービン336を回転させ、次に、これが圧縮機338を動作させる。排気ブレーキサブシステム332は、任意の数の市販の排気ブレーキを備え得る。
【0019】
図3にさらに示されるように、様々な構成要素が、空気を吸気マニホールド304に提供する吸気システムを形成し得る。例示された例において、吸気管308は、大気を圧縮機338に提供し、次に、これが、加圧空気を給気冷却器312に圧縮機排気管310を通して提供し、これが、加圧空気を冷却する。給気冷却器312の出力は、冷却された加圧空気を吸気マニホールド入口314に導く。当分野において既知のように、圧縮機338によって提供される圧縮(または給気圧)のレベルは、排気システム330を通って排出する排気ガスの圧力に依存する。
【0020】
図3にさらに示されるように、コントローラ222が提供され、圧縮解放ブレーキサブシステム220および排気ブレーキサブシステム332に動作可能に接続される。この様式において、コントローラ222は、圧縮解放ブレーキサブシステム220および排気ブレーキサブシステム332の両方の動作を制御する。例示された実施形態において、コントローラ222は、記憶構成要素またはメモリ344を連結したプロセッサまたは処理機器342を備える。メモリ204は、次に、記憶された実行可能命令およびデータを備える。実施形態において、プロセッサ342は、記憶された命令を実行し、かつ記憶されたデータに基づいて動作可能なマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、コプロセッサなど、またはその組み合わせのうちの1つ以上を備え得る。同様に、メモリ204は、限定されるものではないが、ランダムアクセスメモリ(RAM)または読み出し専用メモリ(ROM)を含む揮発性または不揮発性メモリ等の1つ以上の機器を備え得る。図2に例示された種類のプロセッサおよび記憶装置配置は、当業者にとって周知である。一実施形態において、本明細書に説明される処理技術は、プロセッサ342によって実行される/動作される、メモリ344内の実行可能命令およびデータの組み合わせとして実装される。
【0021】
コントローラ222は、本明細書に説明された技術を実装するための一形式として説明されたが、当業者は、他の機能的に同等の技術が採用され得ることを認めるであろう。例えば、当分野において既知のように、実行可能命令を介して実装される機能のいくつかまたは全てはまた、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックアレイ、状態機械等のファームウェアおよび/またはハードウェア機器を使用して実装され得る。さらに、コントローラ222の他の実装例は、例示されたものよりも多いかまたは少ない数の構成要素を含み得る。再度、当業者は、使用され得る幅広い数の変形例がこの様式であることを認めるであろう。さらにまた、単一コントローラ222が図3に例示されるが、このような処理機器の組み合わせが、本開示の教示を実装するために互いに併せて、または互いに独立的に動作するように構成され得ることが理解される。
【0022】
ここで図4を参照すると、本開示による処理が例示される。特に、図4に例示される処理は、上記に説明されたようにコントローラ222によって実装され得る。ブロック402で開始し、コントローラは、エンジンブレーキの要求を受信する。上記のように、このような要求は、当分野において既知のように、スイッチの作動または他のユーザ選択可能機構を通して等のユーザ入力の形式で提供され得る。これにかかわらず、受信した要求に応答して、処理は、ブロック404に進み、コントローラ222が排気ブレーキサブシステムを作動する。当分野において既知のように、ブレーキサブシステムの作動(排気、圧縮解放または他の種類のいずれにせよ)は、例えば、ソレノイドの制御を通してもたらされ、次に、エンジンブレーキ動作を開始するロストモーションシステムまたはアクチュエータに対し流体流の流れを制御する。この目的に対して使用される信号504の例が図5に例示され、低電圧から高電圧への信号504の変遷が排気ブレーキシステムの作動に対応する。当業者は、本明細書に例示される特定種類の制御信号が、限定によるものではなく、実施において、他の種類(例えば、高電圧から低電圧への変遷)が同等に採用され得ることを認めるであろう。
【0023】
その後、ブロック408において、排気ブレーキシステムの作動に続いて、一定時間が満了したかどうかの判定が行われる。つまり、排気ブレーキサブシステムの作動と実質的に同時に、コントローラは、周知の技術によって一定時間を測定するタイマーを始動し、その後、タイマーが満了したか否かを継続的に確認する(408)(この例において)。実施形態において、一定時間は、排気ブレーキの作動が排気システム内に上昇した背圧を発生することを許容するのに充分な長さであり、それにより、排気バルブトレイン上に与えられた負荷およびシリンダ圧力がより有効に対抗し、これによって、上記に説明されたように、任意の期間の高負荷110を最小化または排除する。実施において、所望の一定時間は、エンジン速度、排気ガス流および排気システムの容量の関数であることになり、このため特定の実装例ならびにエンジンおよび排気システムの動作に応じて変更する必要があることになる。例えば、試験は、いくつかの共通的に利用可能なエンジンおよび排気システムにおいて、一定時間が少なくとも1秒であるべきことを明らかにした。
【0024】
採用された特定の一定時間にかかわらず、一旦、一定時間が経過すると、処理は、ブロック410に進み、圧縮解放ブレーキサブシステムが作動される。これは、再度、図5に示され、一定時間510の満了後、圧縮解放ブレーキサブシステムのための制御信号506が低電圧から高電圧に変遷する。その結果、図5にさらに示されるように、バルブトレインに適用される力は、一般的な圧縮解放過渡状態508を発端に上昇される。しかしながら、図1に例示されたシステムとは異なり、MFIPが誘発される過度な高負荷110の期間が存在しないかまたは非常に短い。再度、排気ブレーキサブシステムのみが作動される間の一定期間510の間に発生した背圧は、結果として生じる別の高負荷110を著しく打ち消す。
【0025】
当分野において既知のように、排気ブレーキサブシステムの故障は、エンジンに対して著しい有害作用を有し得る。排気ブレーキサブシステムが、排気ブレーキサブシステムが停止された後でさえ排気システム内の制限が維持される方式で故障した場合、順方向動力発生中に背圧の著しい上昇が存在することになり、これは、順方向動力発生を低下させ得、ターボチャージャー搭載システムにおいて、給気圧を低下させ得る。一方で、排気ブレーキサブシステムが、排気ブレーキサブシステムが作動されたときに排気システム内の制限が提供されない方式で故障した場合、エンジンブレーキ中に背圧の著しい減少が存在することになり、上記に説明されたように、バルブトレイン構成要素に損傷を結果としてもたらし得る。
【0026】
排気/圧縮解放エンジンブレーキシステムの組み合わせにおける、エンジンブレーキ中の排気ブレーキサブシステムの故障の潜在的な損傷の影響を回避するために、図5に示される別の任意の処理(破線により例示される)がまた、実施され得る。図5の任意の処理が、上記に説明された高バルブトレイン負荷110を最小化または排除するための説明された方法と併せて示されるが、これが本開示にとって必須ではないことが留意される。つまり、ブロック402および404の処理と併せて、図5の別の任意の処理(具体的には、ブロック406および414)が、例えば、排気ブレーキサブシステムのみが提供されるシステムにおいて、別個に組み込まれてもよい。
【0027】
これにかかわらず、この追加の実施形態において、排気ブレーキサブシステムの作動に続いて、ブロック406において、排気ブレーキサブシステムの故障が存在したか否かが判定される。実施において、これは、数個の方式で実現され得る。実施において、排気ブレーキサブシステムが排気システムに対して必要な制限を提供することに故障した場合、故障は、排気システム内の背圧が閾値未満であることが判定されたときに検出され得る。例えば、そして図3を参照すると、これは、排気マニホールド内、またはターボチャージャー334と排気ブレーキサブシステム332との間の排気システムの部分の圧力の測定を通して判定され得る。さらに別の実施形態において、排気ブレーキサブシステムの正常動作を通して排気システム内の制限の存在は、圧縮機338の出口における給気圧(あるいは、例えば、吸気マニホールド304または給気冷却器312の前若しくは後において測定されるもの)を低下させるように働くことになることが認められる。その結果、持続的またはさらに排気ブレーキサブシステムの作動後の上昇した給気レベルの測定は、必要な制限を提供することに対する排気ブレーキサブシステムの故障を示す。
【0028】
判定される様式にかかわらず、排気ブレーキサブシステムの故障がないことがブロック406で判定された場合、処理は、上記に説明されたようにブロック408に進む。しかしながら、故障がブロック406で検出された場合、処理は、ブロック414に進み、ブロック410で通常の様式で圧縮解放ブレーキサブシステムを作動することとは異なり、圧縮解放ブレーキシステムが低制動力モードで動作される。本明細書に使用される、低制動力モードは、制動力の全くないところまで下がり、かつこれを含む圧縮解放ブレーキサブシステムよって別途提供され得る、最大制動力未満によって特徴付けられる。例えば、低制動力モードを実現するために、コントローラは、圧縮解放ブレーキサブシステムの一部分のみが動作される様式で圧縮解放ブレーキサブシステムを動作し得る。したがって、一実施形態において、シリンダの全てが圧縮解放エンジンブレーキ技術によって動作されなくてもよい。別の実施形態において、可能な場合、圧縮解放ブレーキ中の排気バルブの開動作のタイミングは、それらがピークシリンダ圧力の期間に開かれるかまたは閉じられないように変更可能であり、これによって、バルブトレイン上に別途与えられることになる負荷を低減する。
【0029】
さらに別の実施形態において、可能な場合、コントローラはまた、排気システム内の背圧を上昇させるために排気システムの1つ以上の構成要素(排気ブレーキ部分構成要素とは異なる)を構成し得る。例えば、そして図3を参照すると、ターボチャージャー334が当分野において既知であるいわゆる流路可変過給機(VGT)である場合、ターボチャージャーの構成(例えば、タービン336内のタービン翼のアスペクト比)は、排気システム330の背圧を上昇させるように調整され得る。
【0030】
さらに、ブロック406で故障が検出されず、かつブロック410で明らかにされるように圧縮解放ブレーキが作動されたときでさえ、ブロック412によって例示されるように排気ブレーキサブシステムの故障に対する確認を継続することが望まれ得る。圧縮解放ブレーキサブシステムの作動後でもこのような故障が検出された場合において、処理は、ブロック414に進み、上記に説明されたように、動作の低制動力モードが採用され得る。
【0031】
特定の好ましい実施形態が示され説明されたが、当業者は、本教示から逸脱することなく変化および変更が行われ得ることを認めるであろう。上記に説明された教示の任意および全ての変更例、変形例または等価物が、上記に開示され、かつ本明細書に主張される基本的な根底にある原理の範囲内に収まることがさらに企図される。
図1
図2
図3
図4
図5