特許第6671465号(P6671465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671465
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】基材組立体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   H01G9/20 119
   H01G9/20 303B
   H01G9/20 303A
   H01G9/20 121
   H01G9/20 303C
   H01G9/20 113A
   H01G9/20 311
   H01G9/20 205
   H01G9/20 203
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-514608(P2018-514608)
(86)(22)【出願日】2017年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2017016290
(87)【国際公開番号】WO2017188221
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-88189(P2016-88189)
(32)【優先日】2016年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】中 圭介
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−198822(JP,A)
【文献】 特開2011−204680(JP,A)
【文献】 特開2011−029131(JP,A)
【文献】 特開2015−032393(JP,A)
【文献】 特開2013−174688(JP,A)
【文献】 特開2008−115057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
G09F 9/30
H01L 51/50
H05B 33/04,33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、
前記第1基材に対向する第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材を接合する環状の封止部と、
前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に配置される被封止物と、
前記第1基材のうち前記第2基材に対向する面側で且つ前記環状の封止部の外側に設けられる突出部とを備え、
前記突出部が前記封止部及び前記第2基材から離間しており、
前記突出部が前記封止部を包囲するように連続状に設けられており、
前記突出部の厚さが、前記封止部の厚さ及び前記第2基材の厚さの合計以上であり、
前記突出部が前記封止部よりも高い融点を有し、
前記突出部が無機絶縁材料で構成されている、基材組立体。
【請求項2】
下記式(1)で表されるRが1.05以上である、請求項に記載の基材組立体。
R=T5/(T4+T2)・・・(1)
(上記式(1)中、T5は前記突出部の厚さを表し、T4は前記封止部の厚さを表し、T2は前記第2基材の厚さを表す)
【請求項3】
前記式(1)で表されるRが1.3以下である、請求項に記載の基材組立体。
【請求項4】
前記封止部が樹脂で構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基材組立体。
【請求項5】
前記第1基材上で且つ前記封止部の内側に発電部をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の基材組立体。
【請求項6】
第1基材と、
前記第1基材に対向する第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材を接合する環状の封止部と、
前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に配置される被封止物と、
前記第1基材のうち前記第2基材に対向する面側で且つ前記環状の封止部の外側に前記封止部を包囲するように連続状に設けられる突出部とを備える基材組立体を製造する基材組立体の製造方法であって、
前記第1基材及び前記第2基材のうち少なくとも前記第1基材に前記環状の封止部を形成する環状の封止材が固定され、前記突出部が前記第1基材の一面側で且つ前記環状の封止材の外側に前記封止材を包囲するように連続状に設けられる前記第1基材及び前記第2基材を準備する基材準備工程と、
前記基材準備工程で準備された前記第1基材と前記第2基材とを、それらの間に前記封止材を挟み込み且つ前記第1基材と前記第2基材と前記封止材とによって形成される閉空間内に前記被封止物を配置した状態で重ね合せる重合せ工程と、
プレス部を用いて前記第1基材及び前記第2基材を介して前記封止材を加圧し、前記封止材によって前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せて基材組立体を得る貼合せ工程とを含み、
前記基材準備工程において、前記第1基材に設けられる前記突出部が、前記第1基材の前記一面側で且つ前記環状の封止材の外側に前記封止材と離間して設けられ、前記突出部が前記封止部よりも高い融点を有し、前記突出部が無機絶縁材料で構成され、
前記重合せ工程において、前記基材準備工程で準備された前記第1基材と前記第2基材とを、前記突出部を前記第2基材から離間させた状態で重ね合わせ、
前記貼合せ工程において、前記基材組立体における前記突出部が前記封止部及び前記第2基材から離間しており、
前記貼合せ工程において、前記突出部の厚さが、前記封止部の厚さ及び前記第2基材の厚さの合計以上となるように前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せる、基材組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する基材同士が封止部を介して組み立てられ、相対向する基材と封止部とによって形成される閉空間内に被封止物を配置した基材組立体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材組立体としては、色素増感太陽電池、有機EL素子、液晶表示器、有機薄膜太陽電池などの電子機器が知られている。これらの電子機器は、相対向する基材同士が封止部を介して組み立てられ、相対向する基材と封止部とによって形成される閉空間内に電解質などの被封止物を配置している(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−32393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の基材組立体は以下に示す課題を有していた。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に記載の基材組立体は耐久性の点で改善の余地を有していた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性を向上させることができる基材組立体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1基材と、前記第1基材に対向する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材を接合する環状の封止部と、前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に配置される被封止物と、前記第1基材のうち前記第2基材に対向する面側で且つ前記環状の封止部の外側に設けられる少なくとも1つの突出部とを備える、基材組立体である。
【0008】
この基材組立体によれば、少なくとも1つの突出部が、第1基材のうち第2基材に対向する面側で且つ環状の封止部の外側に設けられるため、第1基材において突出部が設けられる箇所においては突出部の厚さの分だけ第1基材が肉厚化されたことと同様の状態となる。このため、突出部が設けられる第1基材に応力が加わっても、第1基材が反るなどして変形することが十分に抑制される。従って、第1基材と封止部との間に過大な応力が加わることが十分に抑制され、封止部が第1基材から剥離しにくくなる。その結果、封止部が第1基材から剥離することによって水分や空気が被封止物内に侵入することが十分に抑制される。
【0009】
上記基材組立体においては、前記少なくとも1つの突出部が前記封止部及び前記第2基材から離間していることが好ましい。
【0010】
この場合、基材組立体において、突出部が、封止部および第2基材から離間している。このため、封止部が温度変化に伴い、第1基材のうち第2基材に対向する面に直交する方向に伸縮しても、それに伴って突出部が伸縮させられることがない。このため、突出部と第1基材との界面に過大な応力が加わって突出部が第1基材から剥離することが十分に抑制される。その結果、突出部による第1基材の変形抑制機能が長期間にわたって十分に維持される。よって、本発明によれば、耐久性を向上させることができる。
【0011】
上記基材組立体においては、前記突出部の厚さが、前記封止部の厚さ及び前記第2基材の厚さの合計以上であることが好ましい。
【0012】
この場合、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によって規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることが十分に抑制され、封止部の厚さが必要以上に低下することが十分に抑制される。その結果、第1基材に対する封止部の接着性の低下が抑制され、基材組立体の耐久性をより向上させることが可能となる。
【0013】
上記基材組立体においては、下記式(1)で表されるRが1.05以上であることが好ましい。
R=T5/(T4+T2)・・・(1)
(上記式(1)中、T5は前記突出部の厚さを表し、T4は前記封止部の厚さを表し、T2は前記第2基材の厚さを表す)
【0014】
この場合、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によってより十分に規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることがより十分に抑制され、封止部の厚さが必要以上に低下することがより十分に抑制される。その結果、第1基材に対する封止部の接着性の低下がより十分に抑制され、基材組立体の耐久性をより十分に向上させることが可能となる。
【0015】
上記基材組立体においては、前記式(1)で表されるRが1.3以下であることが好ましい。
【0016】
この場合、Rが1.3を超える場合に比べて、基材組立体の全体の高さを小さくすることができる。
【0017】
上記基材組立体においては、前記突出部が前記封止部の融点よりも高い融点を有することが好ましい。
【0018】
この場合、突出部が封止部よりも硬くなるため、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によって効果的に規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることが効果的に抑制される。
【0019】
上記基材組立体においては、前記突出部が絶縁材料で構成されていることが好ましい。
【0020】
この場合、突出部と周囲の導電部材との短絡を防止できる。
【0021】
前記絶縁材料は無機絶縁材料であることが好ましい。
【0022】
この場合、突出部を封止部よりも硬くすることが可能となる。このため、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によって効果的に規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることが効果的に抑制される。
【0023】
上記基材組立体において、前記絶縁材料が無機絶縁材料である場合には、前記封止部が樹脂で構成されていることが好ましい。
【0024】
この場合、突出部を封止部よりも十分に硬くすることが可能となる。このため、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によってより効果的に規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることがより効果的に抑制される。
【0025】
上記基材組立体においては、前記少なくとも1つの突出部が複数の突出部で構成され、前記複数の突出部及び前記封止部を前記第1基材の厚さ方向に見た場合に、前記複数の突出部が前記封止部に沿って不連続状に設けられていることが好ましい。
【0026】
この場合、例えば基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、突出部を加圧しても、突出部のいずれかの部分と第1基材との間の界面に応力が集中することが十分に抑制され、突出部がその部分で第1基材から剥離することがより十分に抑制される。
【0027】
上記基材組立体は、前記第1基材上で且つ前記封止部の内側に発電部をさらに備える場合に有用である。
【0028】
上述したように、突出部が設けられる第1基材に応力が加わっても、第1基材が反るなどして変形することが十分に抑制され、発電部と第1基材との間に過大な応力が加わることが十分に抑制されるため、発電部が第1基材上に設けられると、第1基材から剥離しにくくなり、第1基材から剥離することが十分に抑制されるからである。また、発電部が第1基材から剥離しない場合でも、第1基材の変形に伴う発電部の変形が十分に抑制されるため、発電性能の低下を抑制することも可能となる。
【0029】
また本発明は、第1基材と、前記第1基材に対向する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材を接合する環状の封止部と、前記第1基材と前記第2基材と前記封止部とによって形成される閉空間内に配置される被封止物と、前記第1基材のうち前記第2基材に対向する面側で且つ前記環状の封止部の外側に設けられる少なくとも1つの突出部とを備える基材組立体を製造する基材組立体の製造方法であって、前記第1基材及び前記第2基材のうち少なくとも前記第1基材に前記環状の封止部を形成する環状の封止材が固定され、少なくとも1つの突出部が前記第1基材の一面側で且つ前記環状の封止材の外側に設けられる前記第1基材及び前記第2基材を準備する基材準備工程と、前記基材準備工程で準備された前記第1基材と前記第2基材とを、それらの間に前記封止材を挟み込み且つ前記第1基材と前記第2基材と前記封止材とによって形成される閉空間内に前記被封止物を配置した状態で重ね合せる重合せ工程と、プレス部を用いて前記第1基材及び前記第2基材を介して前記封止材を加圧し、前記封止材によって前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せて基材組立体を得る貼合せ工程とを含む、基材組立体の製造方法である。
【0030】
この基材組立体の製造方法によれば、得られる基材組立体において、少なくとも1つの突出部が、第1基材のうち第2基材に対向する面側で且つ環状の封止部の外側に設けられることとなるため、第1基材において突出部が設けられる箇所においては突出部の厚さの分だけ第1基材が肉厚化されたことと同様の状態となる。このため、突出部が設けられる第1基材に応力が加わっても、第1基材が反るなどして変形することが十分に抑制される。従って、第1基材と封止部との間に過大な応力が加わることが十分に抑制され、封止部が第1基材から剥離しにくくなる。その結果、封止部が第1基材から剥離することによって水分や空気が被封止物内に侵入することが十分に抑制される。
【0031】
前記基材準備工程においては、前記第1基材に設けられる前記少なくとも1つの突出部が、前記第1基材の前記一面側で且つ前記環状の封止材の外側に前記封止材と離間して設けられ、前記重合せ工程において、前記基材準備工程で準備された前記第1基材と前記第2基材とを、前記突出部を前記第2基材から離間させた状態で重ね合わせ、前記貼合せ工程において、前記基材組立体における前記少なくとも1つの突出部が前記封止部及び前記第2基材から離間していることが好ましい。
【0032】
この場合、得られる基材組立体において、突出部が、封止部および第2基材から離間する。このため、封止部が温度変化に伴い、その厚さ方向に伸縮しても、それに伴って突出部が伸縮させられることがない。このため、突出部と第1基材との界面に過大な応力が加わって突出部が第1基材から剥離することが十分に抑制される。その結果、突出部による第1基材の変形抑制機能が長期間にわたって十分に維持される。よって、本発明によれば、耐久性を向上させることができる基材組立体を製造することができる。
【0033】
上記製造方法においては、前記貼合せ工程において、前記突出部の厚さが、前記封止部の厚さ及び前記第2基材の厚さの合計以上となるように前記第1基材と前記第2基材とを貼り合せることが好ましい。
【0034】
この場合、得られる基材組立体が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材側から第2基材を加圧して第1基材側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部によって規制される。このため、第2基材が第1基材側に移動することにより封止部が潰されることが十分に抑制され、封止部の厚さが必要以上に低下することが十分に抑制される。その結果、第1基材に対する封止部の接着性の低下が抑制され、基材組立体の耐久性をより向上させることが可能となる。
【0035】
またこの製造方法によれば、貼合せ工程において、プレス部を用いて第1基材及び第2基材を介して封止材を加圧する際に、プレス部が突出部に当接された後はプレス部の第1基材側への移動が規制される。このため、得られる基材組立体において、封止部の厚さの均一性を向上させることができる。
【0036】
上記製造方法においては、前記少なくとも1つの突出部が複数の突出部で構成され、前記貼合せ工程において、前記複数の突出部及び前記封止材を前記第1基材の厚さ方向に見た場合に、前記複数の突出部が前記封止材に沿うように設けられることが好ましい。
【0037】
この場合、複数の突出部及び封止材を第1基材の厚さ方向に見た場合に、複数の突出部が封止材に沿うように設けられるため、得られる基材組立体において、封止部の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0038】
なお、本発明において、突出部、封止部及び第2基材の「厚さ」とは、第1基材のうち第2基材に対向する面に直交する方向における厚さを言うものとする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、耐久性を向上させることができる基材組立体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の基材組立体の一実施形態を示す切断面端面図である。
図2図1の基材組立体を示す平面図である。
図3図1の基材組立体を製造する製造装置の一例を示す部分切断面端面図である。
図4図3のプレス部を示す切断面端面図である。
図5図2の基材組立体の製造装置を用いた基材組立体の製造方法の一工程を示す部分切断面端面図である。
図6図2の基材組立体の製造装置を用いた基材組立体の製造方法の一工程を示す部分切断面端面図である。
図7図2の基材組立体の製造装置を用いた基材組立体の製造方法の一工程を示す部分切断面端面図である。
図8図2の基材組立体の製造装置を用いた基材組立体の製造方法の一工程を示す部分切断面端面図である。
図9図2のプレス部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の基材組立体の実施形態について図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の基材組立体の一実施形態を示す切断面端面図、図2は、図1の基材組立体を示す平面図である。
【0042】
図1及び図2に示すように、本実施形態の基材組立体100は、色素を用いた光電変換素子からなり、第1基材10と、第1基材10に対向する第2基材20と、第1基材10及び第2基材20を接合する環状の封止部40と、第1基材10と第2基材20と環状の封止部40との間の閉空間S内に配置される被封止物30と、第1基材10のうち第2基材20に対向する面10a上で且つ環状の封止部40の外側に設けられる複数の突出部50と、第1基材10の一面10a上で且つ封止部40の内側に設けられる発電部60とを備えている。ここで、複数の突出部50はいずれも、封止部40および第2基材20から離間している。言い換えると、複数の突出部50は、封止部40および第2基材20に接着されていない。
【0043】
図2に示すように、複数の突出部50及び封止部40を第1基材10の厚さ方向(すなわち第1基材10の一面10aに直交する方向)Bに見た場合に、複数の突出部50は、封止部40の外側で封止部40に沿って不連続状に設けられている。ここで、図1に示すように、突出部50の厚さT5は、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上となっている。
【0044】
この基材組立体100によれば、突出部50が、第1基材10のうち第2基材20に対向する面10a上で且つ環状の封止部40の外側に設けられる。このため、第1基材10において突出部50が設けられる箇所においては突出部50の厚さの分だけ第1基材10が肉厚化されたことと同様の状態となる。このため、突出部50が設けられる第1基材10に応力が加わっても、第1基材10が反るなどして変形することが十分に抑制される。従って、第1基材10と封止部40との間に過大な応力が加わることが十分に抑制され、封止部40が第1基材10から剥離しにくくなる。その結果、封止部40が第1基材10から剥離することによって水分や空気が被封止物30内に侵入することが十分に抑制される。また、基材組立体100では、突出部50が、封止部40および第2基材20から離間している。このため、封止部40が温度変化に伴い、その厚さ方向(図1のB方向)に伸縮しても、それに伴って突出部50が伸縮させられることがない。このため、突出部50と第1基材10との界面に過大な応力が加わって突出部50が第1基材10から剥離することが十分に抑制される。その結果、突出部50による第1基材10の変形抑制機能が長期間にわたって十分に維持される。よって、基材組立体100によれば、耐久性を向上させることができる。
【0045】
また基材組立体100においては、突出部50の厚さT5が、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上となっている。このため、例えば基材組立体100が筺体(図示せず)内に収納され、その筺体の一部が、第2基材20側から第2基材20を加圧して第1基材10側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部50によって規制される。このため、第2基材20が第1基材10側に移動することにより封止部40が潰されることが十分に抑制され、封止部40の厚さT4が必要以上に低下することが十分に抑制される。その結果、第1基材10に対する封止部40の接着性の低下が抑制され、基材組立体100の耐久性をより向上させることが可能となる。
【0046】
さらに基材組立体100においては、突出部50が設けられる第1基材10に応力が加わっても、第1基材10が反るなどして変形することが十分に抑制され、発電部60と第1基材10との間に過大な応力が加わることが十分に抑制される。このため、発電部60が第1基材10の一面10a上に設けられると、第1基材10から剥離することが十分に抑制される。また、発電部20が第1基材10から剥離しない場合でも、第1基材10の変形に伴う発電部60の変形が十分に抑制されるため、発電性能の低下を抑制することも可能となる。
【0047】
さらにまた、基材組立体100においては、複数の突出部50及び封止部40を第1基材10の厚さ方向Bに見た場合に、複数の突出部50は、封止部40の外側で封止部40に沿って不連続状に設けられている。このため、例えば基材組立体100が筺体内に収納され、その筺体の一部が、突出部50を加圧しても、突出部50のいずれかの部分と第1基材10との間の界面に応力が集中することが十分に抑制され、突出部50がその部分で第1基材10から剥離することがより十分に抑制される。
【0048】
次に、第1基材10、第2基材20、被封止物30、封止部40、突出部50及び発電部60について詳細に説明する。
【0049】
(第1基材)
第1基材10は導電性基板で構成される。導電性基板は、例えば基板と、基板上に設けられる導電層とを備える。
【0050】
基板を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、および、ポリエーテルスルフォン(PES)などの絶縁材料が挙げられる。基板の厚さは、基材組立体100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
【0051】
導電層を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、及び、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。導電層は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。導電層が単層で構成される場合、導電層は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。導電層の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0052】
(第2基材)
第2基材20は、導電性基板と、導電性基板の第1基材10側の面上に設けられる触媒層とを備える。
【0053】
導電性基板は、基板と電極を兼ねる場合、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス等の耐食性の金属材料で構成される。また、導電性基板は、基板と電極を分けて、樹脂フィルム上にITO、FTO等の導電性酸化物からなる導電層を電極として形成した積層体で構成されてもよく、ガラス上にITO、FTO等の導電性酸化物からなる導電層を電極として形成した積層体でもよい。導電性基板の厚さは、基材組立体100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.01〜4mmとすればよい。
【0054】
触媒層は、導電性材料で構成される。導電性材料としては、例えば白金などの金属材料、炭素系材料又は導電性高分子などの非金属材料が挙げられる。
【0055】
(被封止物)
被封止物30は、光電変換素子が、色素を用いた太陽電池である場合には例えば電解質で構成される。電解質は、酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、などを用いることができる。酸化還元対としては、例えばヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I)、臭化物イオン/ポリ臭化物イオンなどのハロゲン原子を含む酸化還元対のほか、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。なお、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオンは、ヨウ素(I)と、アニオンとしてのアイオダイド(I)を含む塩(イオン性液体や固体塩)とによって形成することができる。アニオンとしてアイオダイドを有するイオン性液体を用いる場合には、ヨウ素のみ添加すればよく、有機溶媒や、アニオンとしてアイオダイド以外のイオン性液体を用いる場合には、ヨウ素だけでなく、LiIやテトラブチルアンモニウムアイオダイドなどのアニオンとしてアイオダイド(I)を含む塩をも添加すればよい。また被封止物30は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩などが用いられる。このようなヨウ素塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0056】
また、電解質は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0057】
また電解質には添加剤を加えることができる。添加剤としては、1−メチルベンゾイミダゾール(NMB)、1−ブチルベンゾイミダゾール(NBB)などのベンゾイミダゾール、LiI、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネートなどが挙げられる。中でも、ベンゾイミダゾールが添加剤として好ましい。
【0058】
さらに電解質としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0059】
(封止部)
封止部40としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂などの樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0060】
(突出部)
突出部50を構成する材料は、特に限定されないが、突出部50を構成する材料としては、具体的には、絶縁材料及び金属が挙げられる。これらのうち突出部50を構成する材料としては、絶縁材料が好ましい。この場合、突出部50は、周囲の導電部材との短絡を防止できる。特に、周囲に電子機器(太陽電池等)が配置されている場合、電子機器は電極や配線などの導電部材を有しており、突出部50が金属で構成される場合には電極や配線などの導電部材と突出部50との間で短絡が起こりやすいので、電極や配線などの導電部材と突出部50との短絡防止のメリットが顕著である。
【0061】
絶縁材料としては、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)などの有機絶縁材料や、セラミック、ガラスなどの無機絶縁材料が挙げられる。中でも、絶縁材料が無機絶縁材料であることが好ましい。この場合、突出部50を封止部40よりも硬くすることが可能となる。このため、筺体などの物体が、第2基材20側から第2基材20を加圧して第1基材10側に移動させようとしても、その物体の移動が突出部50によって効果的に規制される。このため、第2基材20が第1基材10側に移動することにより封止部40が潰されることが効果的に抑制される。特に、封止部40が樹脂で構成される場合には、絶縁材料が無機絶縁材料であることが好ましい。
【0062】
金属としては、銅、SUSなどが挙げられる。
【0063】
突出部50は、封止部40の融点よりも高い融点を有していてもよいし、封止部40の融点以下の融点を有していてもよいが、封止部40の融点よりも高い融点を有していることが好ましい。この場合、突出部50が封止部40よりも硬くなるため、筺体などの物体が、第2基材20側から第2基材20を加圧して第1基材10側に移動させようとしても、その物体の移動が突出部50によって効果的に規制される。このため、第2基材20が第1基材10側に移動することにより封止部40が潰されることが効果的に抑制される。
【0064】
本実施形態では、突出部50の厚さT5は、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上、すなわち、下記式(1)で表されるRが1以上であればよいが、下記式(1)で表されるRが1.05以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。
R=T5/(T4+T2)・・・(1)
【0065】
但し、Rは1.3以下であることが好ましい。この場合、Rが1.3を超える場合に比べて、基材組立体100の全体の高さを小さくすることができる。
【0066】
(発電部)
発電部60は光を電気に変換する機能を有する部分であればよい。基材組立体100が色素増感太陽電池である場合には、発電部60は酸化物半導体層と酸化物半導体層に担持される色素とで構成される。
【0067】
酸化物半導体層は酸化物半導体粒子で構成される。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、又はこれらの2種以上で構成される。酸化物半導体層の厚さは、例えば0.1〜100μmとすればよい。
【0068】
(色素)
色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などの光増感色素や、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト結晶などの有機−無機複合色素などが挙げられる。ハロゲン化鉛系ペロブスカイトとしては、例えばCHNHPbX(X=Cl、Br、I)が用いられる。上記色素の中でも、ビピリジン構造又はターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体が好ましい。この場合、基材組立体100の光電変換特性をより向上させることができる。なお、色素として、光増感色素を用いる場合には、光電変換素子100は色素増感光電変換素子となる。
【0069】
次に、基材組立体100の製造方法について説明する。
【0070】
まず、基材組立体100の製造方法の説明に先立ち、基材組立体100を製造するための基材組立体の製造装置200について図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、基材組立体100を製造する製造装置200の一例を示す部分切断面端面図、図4は、図3のプレス部を示す切断面端面図である。
【0071】
図3に示すように、基材組立体の製造装置200はチャンバ201を有している。チャンバ201は、開口201dを有する本体部201aと、本体部201aの開口201dを塞ぐように設けられる蓋部201bとを有している。
【0072】
チャンバ201の本体部201aには、ガスを流通させるガス流通口201cが形成され、ガス流通口201cにはガス排出管202aを介して真空ポンプ202bが接続されている。ガス排出管202aにはバルブV1が設置されている。なお、チャンバ201を構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼、SUSなどが用いられる。
【0073】
またチャンバ201の蓋部201bには、第2基材20を第1基材10側に向けて加圧するためのプレス部203が固定されている。
【0074】
チャンバ201の本体部201a内には、プレス部203に対向配置され、第1基材10をプレス部203側に配置させる第1基材配置部211が設けられており、第1基材配置部211は、第1基材10を配置させる第1基材配置面211aをプレス部203側に有している。なお、第1基材配置部211を構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼、SUSなどが用いられる。
【0075】
ここで、プレス部203について説明する。
【0076】
図3及び図4に示すように、プレス部203は、本体部203aと、本体部203aのうち第1基材配置部211側の平坦な一面203dに設けられ、第2基材20を介して封止部40を構成する封止材41,42を加圧する加圧部203bとを有している。加圧部203bは環状となっており、封止材41,42の形状に対応するパターン形状を有している。本体部203aの一面203dであって加圧部203bの内側には凹部203eが形成されている。なお、本実施形態では、プレス部203は加熱機能をも有しており、加圧部203bは封止材41,42を加熱することが可能となっている。
【0077】
プレス部203を構成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、炭素鋼、銅、SUSなどが用いられる。
【0078】
さらに基材組立体の製造装置200は、第1基材配置部211をプレス部203に向かって移動させる移動機構230を備えている。移動機構230は、第1基材配置部211の下面で第1基材配置部211を支持し、チャンバ201の本体部201aを貫通して図2の矢印A方向に沿って第1基材配置部211を昇降させる昇降シャフト231と、チャンバ201の外側に配置され、昇降シャフト231を昇降させる駆動部232とを有している。移動機構230としては、例えばエアシリンダが用いられる。なお、基材組立体の製造装置200においては、チャンバ201の本体部201aと駆動部232とが気密保持部材240によって気密に接続されている。気密保持部材240としては、例えばベローズなどが用いられる。
【0079】
次に、上述した基材組立体の製造装置200を用いた基材組立体100の製造方法について、図5図8を参照しながら、基材組立体100として色素増感太陽電池を製造する場合を例にして説明する。図5図8は、図2の基材組立体の製造装置200を用いた基材組立体100の製造方法の一連の工程を示す部分切断面端面図である。
【0080】
まず発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10と、封止材41が設けられた第2基材20とを準備する(基材準備工程)。
【0081】
発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10は、例えば以下のようにして準備する。すなわち、まず第1基材10を準備し、第1基材10の上に、発電部60を固定する。次に、発電部60を包囲するように複数の突出部50を固定し、複数の突出部50と発電部60との間で第1基材10の一面10a上に環状の封止材42を固定することによって、発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10を準備する。このとき、複数の突出部50は、環状の封止材42の外側で、封止材42に沿って不連続状に配置されるように且つ封止材42から離間するように第1基材10の一面10a上に固定する。突出部50は、例えば耐熱性の接着剤で第1基材10に接着させることにより固定させることができる。このとき、第1基材10として、例えば導電性基板を用い、導電性基板としては、例えば透明基板上に透明導電層を形成したものを用いる。発電部60としては、例えば多孔質酸化物半導体層に色素を担持させたものを用いる。
【0082】
一方、封止材41が設けられた第2基材20は、第2基材20に環状の封止材41を固定することによって得ることができる。このとき、第2基材20としては、例えば対極を用い、対極としては、例えば導電性基板上に触媒層が形成されたものを用いる。
【0083】
次に、図5に示すように、チャンバ201の蓋部201bを取り外した状態で、チャンバ201の本体部201a内において、第1基材配置部211の第1基材配置面211a上に、発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10を配置させる。その後、第1基材10の発電部60上に被封止物30を配置する。
【0084】
一方、図6に示すように、封止材41が固定された第2基材20をチャンバ201の本体部201a内に入れる。
【0085】
そして、封止材41が固定された第2基材20を、封止材42が固定された第1基材10上に重ね合わせる(重合せ工程)。このとき、環状の封止材41及び環状の封止材42が互いに重なり合うようにする。また第2基材20は、第2基材20及び突出部50を第1基材10の厚さ方向に見た場合に突出部50と重ならないようにする。さらに、第2基材20は、突出部50と離間するように第1基材10に重ね合わせる。
【0086】
続いて、チャンバ201の本体部201aに蓋部201bを取り付ける。このとき、蓋部201bにはプレス部203を固定しておく。そして、バルブV1を開き、真空ポンプ202bを作動させて、チャンバ201内のガス流通口201cからガスを排出する。こうしてチャンバ201の内部を減圧して真空雰囲気とする。
【0087】
その後、移動機構230により、第1基材配置部211をプレス部203に向かって移動させる。具体的には、駆動部232を駆動することにより、昇降シャフト231を図6の矢印A方向に移動させる。すると、やがて、第2基材20がプレス部203の加圧部203bに接触する(図7参照)。これにより、封止材41,42はプレス部203の加圧部203bによって加熱及び加圧される。
【0088】
このとき、第2基材20の移動は停止される。しかし、突出部50がこの時点でまだプレス部203の加圧部203bに接触していない場合には、封止材41,42は加熱により溶融されるので、第1基材配置部211の移動はまだ可能である。このため、さらに移動機構230により、突出部50がプレス部203の加圧部203bに接触するまで第1基材配置部211をプレス部203に向かって移動させる。こうして突出部50をプレス部203の加圧部203bに接触させた後も引き続き、封止材41,42の加熱及び加圧が行われる(図8参照)。
【0089】
突出部50がこの時点でプレス部203の加圧部203bに接触している場合には、第1基材配置部211はこれ以上プレス部203の本体部203a側に移動することはできない。このため、この場合は、引き続き、封止材41,42の加熱及び加圧が行われる。
【0090】
こうして、封止材41、42によって第1基材10と第2基材20との貼合せが行われ、基材組立体100が得られる(貼合せ工程)。このとき、突出部50の厚さT5が封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上となるように第1基材10と第2基材20とが貼り合わされる。
【0091】
こうして得られる基材組立体100によれば、突出部50が、第1基材10のうち第2基材20に対向する面10a上で且つ環状の封止部40の外側に設けられる。このため、第1基材10において突出部50が設けられる箇所においては突出部50の厚さの分だけ第1基材10が肉厚化されたことと同様の状態となる。このため、突出部50が設けられる第1基材10に応力が加わっても、第1基材10が反るなどして変形することが十分に抑制される。その結果、第1基材10と封止部40との間に過大な応力が加わることが十分に抑制され、封止部40が第1基材10から剥離しにくくなる。また、基材組立体100の製造方法では、得られる基材組立体100において、突出部50が、封止部40および第2基材20から離間する。このため、封止部40が温度変化に伴い、第1基材10のうち第2基材20に対向する面10aに直交する方向に伸縮しても、それに伴って突出部50が伸縮させられることがない。このため、突出部50と第1基材10との界面に過大な応力が加わって突出部50が第1基材10から剥離することが十分に抑制される。その結果、突出部50による第1基材10の変形抑制機能が長期間にわたって十分に維持される。よって、上記製造方法によれば、耐久性を向上させることができる基材組立体100を製造することができる。
【0092】
また上記製造方法においては、貼合せ工程において、突出部50の厚さT5が、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上となるように第1基材10と第2基材20とが貼り合わされる。このため、得られる基材組立体100が筺体内に収納され、その筺体の一部が、第2基材20側から第2基材20を加圧して第1基材10側に移動させようとしても、その筺体の一部の移動が突出部50によって規制される。このため、第2基材20が第1基材10側に移動することにより封止部40が潰されることが十分に抑制され、封止部40の厚さが必要以上に低下することが十分に抑制される。その結果、基材組立体100の耐久性をより向上させることが可能となる。またこの製造方法によれば、貼合せ工程において、プレス部203を用いて第1基材10及び第2基材20を介して封止材41、42を加圧する際に、プレス部203が突出部50に当接された後はプレス部203の第1基材10側への移動が規制される。このため、得られる基材組立体100において、封止部40の厚さの均一性を向上させることができる。
【0093】
さらに上記製造方法においては、突出部50が複数の突出部50で構成され、貼合せ工程において、複数の突出部50及び封止材42を第1基材10の厚さ方向に見た場合に、複数の突出部50が封止材42に沿うように設けられる。このため、得られる基材組立体100において、封止部40の厚さの均一性をより向上させることができる。
【0094】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、複数の突出部50がいずれも、封止部40および第2基材20から離間しているが、複数の突出部50は、封止部40および第2基材20から離間していなくてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、突出部50が第1基材10のうち第2基材20に対向する面10a上に直接設けられているが、突出部50は、基材10のうち第2基材20に対向する面10aとの間に絶縁層を介在させていてもよい。ここで、絶縁層は、封止部40と第1基材10のうち第2基材20に対向する面10aとの間まで延びていてもよい。
【0096】
絶縁層は絶縁材料で構成されていればよく、上記絶縁材料としては、例えばガラスフリットなどの無機絶縁材料;ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの有機絶縁材料が挙げられる。中でも、ガラスフリットなどの無機絶縁材料又は熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。この場合、封止部40が高温時に流動性を有するようになっても、絶縁層は、熱可塑性樹脂からなる場合に比べて高温時でも流動化しにくい。特に、絶縁材料はガラスフリットなどの無機絶縁材料が好ましい。この場合、絶縁材料が有機絶縁材料である場合に比べて、基材組立体100において、より優れた耐久性が得られる。絶縁層の第1基材10からの厚さは通常、10〜30μmであり、好ましくは15〜25μmである。
【0097】
なお、突出部50を構成する材料は、絶縁層を構成する絶縁材料と同一でも異なっていてもよい。
【0098】
また上記実施形態では、突出部50が第1基材10のうち第2基材20に対向する面10a側にのみ設けられているが、突出部50は第2基材20のうち第1基材10に対向する面側で且つ環状の封止部40の外側にさらに設けることもできる。この場合、第2基材20のうち第1基材10に対向する面側で且つ環状の封止部40の外側にも突出部50が設けられるため、第2基材20において突出部50が設けられる箇所においては突出部50の厚さの分だけ第2基材20が肉厚化されたことと同様の状態となる。このため、突出部50が設けられる第2基材20に応力が加わっても、第2基材20が反るなどして変形することが十分に抑制される。その結果、第2基材20と封止部40との間に過大な応力が加わることが十分に抑制され、封止部40が第2基材20から剥離しにくくなる。よって、基材組立体の耐久性をより向上させることができる。
【0099】
また上記実施形態では、突出部50の厚さT5は、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計以上となっているが、突出部50の厚さT5は、封止部40の厚さT4及び第2基材20の厚さT2の合計より小さくてもよい。すなわち、上記式(1)で表されるRが1より小さくてもよい。
【0100】
さらに上記実施形態では、発電部60が第1基材10上で且つ封止部40の内側に設けられているが、発電部60は第1基材10上で且つ封止部40の内側に代えて、第2基材20上で且つ封止部40の内側に設けられてもよい。
【0101】
また上記実施形態では、基材組立体100を製造する際に、第1基材10及び第2基材20の各々に封止材41,42が固定されているが、第1基材10及び第2基材20のいずれか一方に封止材が固定されるだけでもよい。
【0102】
さらに上記実施形態では、突出部50は、環状の封止部40の外側で環状の加圧部203bに沿って不連続状に設けられているが、突出部50は、環状の封止部40の外側に環状の封止部40を包囲するように連続状に設けられていてもよいし、例えば突出部50が2本である場合には、環状の封止部40を挟むように設けられていてもよい。
【0103】
さらに上記実施形態では、突出部50が環状の封止部40の外側に設けられているが、基材組立体自体が環状である場合には、環状の封止部40の外側のみならず、環状の封止部40の内側にさらに突出部50が設けられてもよい。
【0104】
また上記実施形態では、プレス部203において、本体部203aの一面203dに1つの加圧部203bのみが設けられているが、図9に示すプレス部303のように、本体部303aの一面303dに複数の(図9では4つの)加圧部303bが設けられてもよい。
【0105】
また上記実施形態では、封止材41,42を加熱しながらプレスして第1基材10と第2基材20との貼合せが行われているが、封止材41,42がエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの紫外線硬化性樹脂を含む場合には、紫外線を照射しながら封止材41,42をプレスすることによって第1基材10と第2基材20との貼合せを行うこともできる。あるいは、封止材41,42がブチルゴム等の常温硬化性樹脂を含む場合には、封止材41,42をプレスするだけで第1基材10と第2基材20との貼合せを行うことができる。
【0106】
さらにまた上記実施形態では、基材組立体100が、色素を用いた光電変換素子からなるが、基材組立体100は、色素を用いない光電変換素子である有機薄膜太陽電池のほか、有機EL素子、液晶表示器であってもよい。但し、基材組立体100が有機EL素子、液晶表示器である場合には、被封止物30は電解質の代わりに、有機発光体又は液晶となり、発電部60は不要となる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
図2に示す基材組立体の製造装置200を用いて基材組立体を製造した。但し、プレス部としては、プレス部203に代えて、図9に示す形状のプレス部303を使用した。具体的には、本体部303aの一面303dに4個の矩形環状の加圧部303bが形成されたプレス部を用いた。
【0109】
プレス部303を構成する材料としては、タフピッチ銅を用いた。各加圧部303bは、110mm×80mmの外形寸法を有し、その内側の幅を2mmとした。
【0110】
次に、発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10と、封止材41が設けられた第2基材20とを4つずつ準備した。
【0111】
このとき、発電部60、封止材42及び突出部50が設けられた第1基材10は、305mm×305mm×厚さ2.2mmの透明導電性基板を準備し、その上にチタニアからなる厚さ10μmの多孔質酸化物半導体層を発電部60として固定し、4本の帯状の突出部50を、多孔質酸化物半導体層を包囲するように且つ不連続状に透明導電性基板上に固定した後、多孔質酸化物半導体層と突出部50との間に、厚さ60μm、幅2mmの矩形環状の封止材42を固定することによって準備した。このとき、透明導電性基板としては、透明ガラス基板の上にFTO膜が形成されたものを用い、突出部50としては、低融点ガラス(商品名「G3−4430」、奥野製薬者製)を用い、封止材42としては、バイネル(商品名、デュポン社製)を用いた。さらにまたこのとき、4本の突出部50の形状は以下の通りとした。すなわち、封止材42の長辺に対向させる突出部50の寸法は、長辺110mm×幅7mm×厚さ0.15mmとし、封止材42の短辺に対向させる突出部50の寸法は、短片80mm×幅7mm×厚さ0.15mm(150μm)とした。さらに、突出部50と封止材42とは互いに離間させ、突出部50と封止材42との間の間隔は、1mmとした。
【0112】
封止材41が設けられた第2基材20は、厚さ42μmのチタン箔からなる導電性基板上に白金からなる厚さ10nmの触媒層が形成されたものを準備し、触媒層の上に封止材41を固定することによって準備した。このとき、封止材41としては、バイネル(商品名、デュポン社製)を用いた。
【0113】
次に、図5に示すように、チャンバ201の蓋部201bを取り外した状態で、チャンバ201の本体部201a内において、SUSからなる厚さ2cmの第1基材配置部211の第1基材配置面211a上に、発電部60、封止材42及び突出部50が固定された第1基材10を配置させた。その後、第1基材10の多孔質酸化物半導体層上に被封止物としての電解質を配置した。電解質としては、溶媒としてのアセトニトリルとヨウ素系溶質とで構成されるものを用いた。
【0114】
一方、図5に示すように、封止材41が固定された第2基材20をチャンバ201の本体部201a内に入れた。
【0115】
そして、第2基材20に環状の封止材41を固定したものを、第1基材10に環状の封止材42を固定したものの上に重ね合わせた。このとき、突出部50が第2基材20から離間するようにした。
【0116】
次に、図6に示すように、チャンバ201の本体部201aに蓋部201bを取り付けた。このとき、蓋部201bにはプレス部303を固定した。そして、バルブV1を開き、真空ポンプ202bを作動させて、チャンバ201内のガス流通口201cからガスを排出した。こうしてチャンバ201の内部を減圧して真空雰囲気とした。
【0117】
その後、移動機構230としてのエアシリンダにより、第1基材配置部211をプレス部303に向かって移動させた。具体的には、エアシリンダの推力を0.17MPaに設定して、昇降シャフト231を図6の矢印A方向に移動させた。やがて、第2基材20がプレス部303に接触した後、移動機構230により、プレス部303が突出部50に接触するまで第1基材配置部211をプレス部303に向かって移動させ、封止材41,42をプレス部303の加圧部303bによって加熱及び加圧した。このとき、加熱及び加圧の時間は90秒とし、加圧部303bの表面温度は200℃とした。
【0118】
こうして、封止材41、42によって第1基材10と第2基材20とを貼り合せ、基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを得た。この色素増感太陽電池モジュールにおいては、下記式(1)で表されるRは1.11であった。
R=T5/(T4+T2)・・・(1)
【0119】
(実施例2)
表1に示すように、第1基材10と第2基材20とを貼り合せる際のエアシリンダの推力を0.25MPaとし、上記式(1)で表されるRを1.14としたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0120】
(実施例3)
表1に示すように、突出部50の厚さを100μmとすることにより上記式(1)で表されるRを0.74としたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0121】
(実施例4)
表1に示すように、突出部50の構成材料をポリイミドとしたこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0122】
(比較例1)
表1に示すように、第1基材10の上に突出部50を固定しなかったこと以外は実施例1と同様にして基材組立体としての色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0123】
<特性評価>
(耐久性)
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の色素増感太陽電池モジュールについて、以下のようにして耐久性を評価した。
【0124】
すなわち、実施例1〜4及び比較例1の色素増感太陽電池モジュールについて光電変換効率(η0)を測定した。続いて、実施例1〜4及び比較例1の色素増感太陽電池モジュールについて、JIS C 8938に準じたヒートサイクル試験を行った後の光電変換効率(η)も測定した。そして、下記式:
光電変換効率の維持率(%)=η/η0×100
に基づき、光電変換効率の維持率を算出した。結果を表1に示す。なお、ヒートサイクル試験は、環境温度を−40℃から90℃まで上昇させた後、90℃から−40℃まで下降させるサイクルを1サイクルとした場合に200サイクル行った。
【0125】
<歩留まり評価>
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の色素増感太陽電池モジュールを構成する各色素増感太陽電池について、第2基材(対極)20の厚さt及び封止材41,42の厚さTの合計厚さ(=t+T)をマイクロゲージで測定し、4つの色素増感太陽電池における合計厚さ(=t+T)の平均値及び標準偏差σ(バラツキ)を算出した。結果を表1に示す。
【0126】
またこのとき、合計厚さ(=t+T)の合格基準を115〜165μmの範囲内とし、歩留まりを下記式に基づいて算出した。結果を表1に示す。
歩留まり(%)=100×(N−合格基準を満たさなかった色素増感太陽電池の数)/N
(式中、Nは色素増感太陽電池モジュールを構成する全色素増感太陽電池の数を表す。)

【表1】
【0127】
表1に示す結果より、実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールでは、光電変換効率の維持率が90%以上となっていたのに対し、比較例1の色素増感太陽電池モジュールでは、光電変換効率の維持率が84%となっていた。この結果より、実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールは、比較例1の色素増感太陽電池モジュールよりも耐久性を向上させることができることが分かった。
【0128】
また実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールでは合計厚さ(=t+T)のバラツキを表す標準偏差σが10未満であったのに対し、比較例1の色素増感太陽電池モジュールでは標準偏差σが12.7であり、実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールにおける封止部の厚さの均一性が比較例1の色素増感太陽電池モジュールにおける封止部の厚さの均一性よりも向上していることが分かった。また実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールでは歩留まりが90%以上であったのに対し、比較例1の色素増感太陽電池モジュールでは歩留まりは75%であり、実施例1〜4の色素増感太陽電池モジュールにおける歩留まりが比較例1の色素増感太陽電池モジュールにおける歩留まりよりも大きいことが分かった。
【0129】
以上より、本発明の基材組立体によれば、耐久性を向上させることができることができることが確認された。
【符号の説明】
【0130】
10…第1基材
10a…第1基材のうち第2基材に対向する面
20…第2基材
30…被封止物
40…封止部
41、42…封止材
50…突出部
60…発電部
100,200…基材組立体
203,303…プレス部
B…第1基材の厚さ方向
S…閉空間
T2…第2基材の厚さ
T4…封止部の厚さ
T5…突出部の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9