特許第6671486号(P6671486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671486バナジウム電池における高純度電解液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671486
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】バナジウム電池における高純度電解液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20200316BHJP
   C01G 31/02 20060101ALI20200316BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20200316BHJP
【FI】
   H01M8/18
   C01G31/02
   H01M8/02
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-539349(P2018-539349)
(86)(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公表番号】特表2019-510338(P2019-510338A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】CN2017071206
(87)【国際公開番号】WO2017128968
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】201610060029.8
(32)【優先日】2016年1月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513304127
【氏名又は名称】インスティテュート オブ プロセス エンジニアリング,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF PROCESS ENGINEERING, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(73)【特許権者】
【識別番号】517266333
【氏名又は名称】ペキン チョンカイホンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING ZHONGKAIHONGDE TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂゥー,チンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チェンリン
(72)【発明者】
【氏名】ムー,ウェンホン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,クーハ
(72)【発明者】
【氏名】バン,チーシュン
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103401010(CN,A)
【文献】 特表2009−545363(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101880059(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/0297, 8/08−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(1)、液相加水分解装置(2)、五酸化二バナジウム供給装置(3)、予熱システム(4)、還元流動床(5)、燃焼室(6)、冷却システム(7)、二次冷却システム(8)、低原子価酸化バナジウム供給装置(9)、溶解反応器(10)及び活性化装置(11)を備え、
前記液相加水分解装置(2)は、液相加水分解反応槽(2−1)及び洗浄フィルター(2−2)を備え、
前記五酸化二バナジウム供給装置(3)は、五酸化二バナジウムサイロ(3−1)及び五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(3−2)を備え、
前記予熱システム(4)は、ベンチュリ予熱器(4−1)、一次サイクロン予熱器(4−2)、二次サイクロン予熱器(4−3)及びバッグ型除塵機(4−4)を備え、
前記還元流動床(5)は、供給器(5−1)、床体(5−2)、排出器(5−3)、ガス加熱器(5−4)、ガス浄化器(5−5)及び第一サイクロン分離器(5−6)を備え、
前記冷却システム(7)は、ベンチュリ冷却器(7−1)、サイクロン冷却器(7−2)及び第二サイクロン分離器(7−3)を備え、
前記低原子価酸化バナジウム供給装置(9)は、低原子価酸化バナジウムサイロ(9−1)及び低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ(9−2)を備え、
前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(1)底部の排出口が配管によって前記液相加水分解反応槽(2−1)の塩化物供給口に接続され、前記液相加水分解反応槽(2−1)の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記液相加水分解反応槽(2−1)の亜硫酸ガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記液相加水分解反応槽(2−1)のスラリー出口が配管によって前記洗浄フィルター(2−2)のスラリー入口に接続され、前記洗浄フィルター(2−2)の清浄水入口が清浄水本管に接続され、前記洗浄フィルター(2−2)の洗浄液出口が配管によって廃水処理システムに接続され、前記洗浄フィルター(2−2)の固体材料出口が配管によって前記五酸化二バナジウムサイロ(3−1)の供給口に接続され、
前記五酸化二バナジウムサイロ(3−1)底部の排出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(3−2)の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(3−2)の排出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器(4−1)の供給口に接続され、
前記ベンチュリ予熱器(4−1)の吸気口が配管によって前記燃焼室(6)の排気口に接続され、前記ベンチュリ予熱器(4−1)の排気口が配管によって前記一次サイクロン予熱器(4−2)の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器(4−2)の排気口が配管によって前記二次サイクロン予熱器の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器(4−2)の排出口が配管によって前記供給器(5−1)の供給口に接続され、前記二次サイクロン予熱器(4−3)の排気口が配管によって前記バッグ型除塵機(4−4)の吸気口に接続され、前記二次サイクロン予熱器(4−3)の排出口が配管によって前記供給器(5−1)の供給口に接続され、前記バッグ型除塵機(4−4)の排気口が排気ガス処理システムに接続され、前記バッグ型除塵機(4−4)の排出口が配管によって前記供給器(5−1)の供給口に接続され、
前記供給器(5−1)の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記供給器(5−1)の排出口が配管によって前記床体(5−2)の供給口に接続され、前記床体(5−2)の吸気口が配管によって前記ガス加熱器(5−4)の排気口に接続され、前記ガス加熱器(5−4)の吸気口が配管によって前記第二サイクロン分離器(7−3)の排気口及び前記ガス浄化器(5−5)の排気口に接続され、前記ガス加熱器(5−4)の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記ガス加熱器(5−4)の燃料入口が燃料本管に接続され、前記ガス浄化器(5−5)の吸気口が還元ガス本管に接続され、前記床体(5−2)の排出口が配管によって前記排出器(5−3)の供給口に接続され、前記排出器(5−3)の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記排出器(5−3)の排出口が配管によって前記ベンチュリ冷却器(7−1)の供給口に接続され、前記床体(5−2)の排気口が配管によって前記第一サイクロン分離器(5−6)の吸気口に接続され、前記第一サイクロン分離器(5−6)の排出口が配管によって前記排出器(5−3)の供給口に接続され、前記第一サイクロン分離器(5−6)の排気口が配管によって前記燃焼室(6)の吸気口に接続され、
前記燃焼室(6)の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記燃焼室(6)のガス出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器(4−1)のガス入口に接続され、
前記ベンチュリ冷却器(7−1)のガス入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記ベンチュリ冷却器(7−1)の排気口が配管によって前記サイクロン冷却器(7−2)の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器(7−2)の排気口が配管によって前記第二サイクロン分離器(7−3)の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器(7−2)の排出口が配管によって前記二次冷却システム(8)の供給口に接続され、前記第二サイクロン分離器(7−3)のガス出口が配管によって前記ガス加熱器(5−4)のガス入口に接続され、前記第二サイクロン分離器(7−3)の排出口が配管によって前記二次冷却システム(8)の供給口に接続され、
前記二次冷却システム(8)の排出口が配管によって前記低原子価酸化バナジウムサイロ(9−1)の供給口に接続され、前記二次冷却システム(8)のプロセス水入口が配管によってプロセス水本管に接続され、前記二次冷却システム(8)の排水口が配管によって水冷却システムに接続され、
前記低原子価酸化バナジウムサイロ(9−1)底部の排出口が前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ(9−2)の供給口に接続され、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ(9−2)の排出口が配管によって前記溶解反応器(10)の供給口に接続され、
前記溶解反応器(10)の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記溶解反応器(10)の濃硫酸入口が配管によって濃硫酸本管に接続され、前記溶解反応器(10)のガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記溶解反応器(10)の一次電解液出口が配管によって前記活性化装置(11)の一次電解液入口に接続される
製造システムに基づくバナジウム電池における高純度電解液の製造方法であって、
前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク(1)内の三塩化酸化バナジウム液体が配管を通して前記液相加水分解反応槽(2−1)に入った後、清浄水本管からの清浄水と加水分解沈殿し、五酸化二バナジウム沈殿物及び塩酸溶液の混合スラリーを形成し、生成された亜硫酸ガスが配管を通して排気ガス処理システムに送られ、スラリーが前記洗浄フィルター(2−2)に入って清浄水で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物を前記五酸化二バナジウムサイロ(3−1)に送るステップと、
前記五酸化二バナジウムサイロ(3−1)内の五酸化二バナジウム沈殿物が順に前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ(3−2)、前記ベンチュリ予熱器(4−1)を通して、前記一次サイクロン予熱器(4−2)に入り、前記二次サイクロン予熱器(4−3)及び前記バッグ型除塵機(4−4)により回収された微粉とともに前記供給器(5−1)を通して前記床体(5−2)に入り、浄化窒素ガス本管からの浄化窒素ガスが順に前記ベンチュリ冷却器(7−1)、前記サイクロン冷却器(7−2)、前記第二サイクロン分離器(7−3)を通して前記ガス浄化器(5−5)からの浄化還元ガスと合流し、前記ガス加熱器(5−4)により予熱された後、前記床体(5−2)に送られて五酸化二バナジウム粉体材料を流動化するように維持して、それを還元させて、バナジウム平均原子価が3.5である低原子価酸化バナジウム粉体及び還元排気ガスを得るステップと、
低原子価酸化バナジウムが順に前記排出器(5−3)及び前記ベンチュリ冷却器(7−1)を通して前記サイクロン冷却器(7−2)に入り、前記第二サイクロン分離器(7−3)により回収された微粉とともに前記二次冷却システム(8)、前記低原子価酸化バナジウムサイロ(9−1)、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ(9−2)を通して前記溶解反応器(10)に入って清浄水本管からの清浄水、濃硫酸本管からの濃硫酸と溶解反応して一次電解液を得て、生成された酸性霧ガスを排気ガス処理システムに送り、得られた一次電解液を前記活性化装置(11)に与えて、活性化温度が20〜45℃であり、電力密度が10〜300W/mである紫外線によってバナジウムイオンを30〜300分間活性化して、バナジウム電池における高純度電解液を得るステップと、
生成された還元排気ガスが前記第一サイクロン分離器(5−6)により除塵された後、燃焼促進用空気とともに前記燃焼室(6)に送られ、生成された高温排気ガスが順に前記ベンチュリ予熱器(4−1)、前記一次サイクロン予熱器(4−2)、前記二次サイクロン予熱器(4−3)に入り、前記バッグ型除塵機(4−4)により除塵された後に排気ガス処理システムに送られるステップと、
を含むことを特徴とするバナジウム電池における高純度電解液の製造方法
【請求項2】
前記還元流動床(5)の前記床体(5−2)は、複数のサイロを有する矩形のものであり、内部に垂直バッフルが配置されることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法
【請求項3】
三塩化酸化バナジウムの原料は、99%〜99.9999%の純度を有することを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【請求項4】
前記液相加水分解反応槽(2−1)内において、加えた三塩化酸化バナジウムに対する清浄水の質量比が0.5〜20であり、操作温度が30〜90℃であることを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【請求項5】
前記ガス浄化器(5−5)内に供給する還元ガスは、水素ガス又は石炭ガスであることを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【請求項6】
前記還元流動床(5)の前記床体(5−2)内において、還元時の操作温度が300〜700℃であり、還元ガスが前記ガス浄化器(5−5)により浄化された後、有機物の含有量が1mg/Nmより小さく、固体粒子の総含有量が2mg/Nmより小さく、供給された窒素ガス及び還元ガスの混合ガスにおける還元ガスの体積分率が10%〜90%であり、粉体の平均滞留時間が20〜120分であることを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【請求項7】
前記溶解反応器(10)において、加えた清浄水の抵抗率が12.0MΩ・cm以上であり、濃硫酸が電子グレード濃硫酸であり、溶解温度が30〜90℃であることを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【請求項8】
前記バナジウム電池における高純度電解液は、V(III)及びV(IV)バナジウムイオンを1:1のモル濃度比で混合する電解液であり、バナジウムイオンの平均原子価が3.5であることを特徴とする請求項に記載のバナジウム電池における高純度電解液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー及び化学工業の分野に属し、特に、バナジウム電池における高純度電解液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化石燃料は、常に主なエネルギー供給源であるが、長期間の採掘及び大量使用のため、資源の枯渇という問題に直面すると同時に深刻な環境汚染をもたらす。風力エネルギー、水力エネルギー、太陽エネルギー、潮汐エネルギー等のクリーンな再生可能エネルギーの開発及び利用が徐々に人間社会に重視されるようになってきた。しかしながら、再生可能エネルギーは、固有の間欠性を有しているため、従来のエネルギー管理システムにおいて効果的に利用することが困難である。
【0003】
エネルギー貯蔵技術はこのような問題を解決する方法の1つである。様々なエネルギー貯蔵システムにおいて、全バナジウム型レドックスフロー電池(VRB)は魅力的なエネルギー貯蔵装置の1つである。VRBの最大の利点は、その柔軟性であり、電力及びエネルギー貯蔵容量が独立していることである。VRBの電力は電池セルの数及び電池セルの有効電極面積に依存するが、エネルギー貯蔵容量は電解液における活性物質の濃度及び電解液の体積に依存する。各電池セルは2つの極室(正極室及び負極室)で構成され、中央がプロトン交換膜で仕切られている。電解液であるバナジウムの硫酸塩溶液はエネルギーを貯蔵することに用いられる。電解液が電池セルを流れる時、正負極室にそれぞれV(IV)/V(V)及びV(II)/V(III)酸化還元反応が発生する。バナジウム電解液は全バナジウム型レドックスフロー電池の非常に重要な構成部分である。
【0004】
新しいバナジウム電池スタックは、一般的にV(III)及びV(IV)を1:1の濃度比で混合した電解液を用いて構成される。つまり、電解液におけるバナジウムイオンの平均原子価が3.5である。そのような電解液は、正負極室に直接加えて使用することができ、操作しやすい。
【0005】
バナジウム電解液の純度は、電池の性能に対して非常に重要な役割を果たす。電解液内の不純物の濃度が高くなると、以下の問題を引き起こしてしまう。
(1)不純物イオン及びバナジウムイオンの間で競争反応が起こるため、電池効率を低下させる。
(2)正極室において、不純物イオンがグラファイトフェルト電極に堆積し、グラファイトフェルトの隙間を塞ぎ、グラファイトフェルトの比表面積を減少させることで、充放電効率に影響を与える。
(3)負極室において、不純物イオンが水素発生過電圧に影響を与え、ガスの産出が電池内部の圧力バランスに影響を与える。
(4)不純物イオンがプロトン交換膜の寿命を低下させる。
(5)不純物イオンがバナジウムイオンの安定化に影響を与え、電解液の老化を加速する。
【0006】
バナジウム電解液の活性とは、電解液内で充放電に用いることができる有効なバナジウムイオンの濃度を意味する。電解液内のバナジウムイオンが温度、不純物等の影響を受けて酸素橋結合が形成され、重縮合の生成及び電気化学的活性の低下が生じる。バナジウム電解液の活性を増加させると、バナジウム資源の利用効率が効果的に改善され、バナジウム電池のコストを削減することができる。
【0007】
VRB電解液の製造方法は以下を含む。
(1)VOSO方法
米国特許第849094号明細書には、VOSOを硫酸溶液に溶解し、次に電気化学的に原子価を調整することでV(III)及びV(IV)を1:1の濃度比で混合した電解液の製造方法が開示されている。この方法の主な問題は、VOSOの製造プロセスがより複雑であり、且つ価格が高く、VRBの大規模的な応用に不利となることである。また、VOSOは高純度化が困難であり、このようなプロセスで製造された電解液はより多くの不純物を含む。さらに、電解液におけるバナジウムイオンの平均原子価を3.5となるように、V(III)及びV(IV)の濃度比を1:1に調整するための電気化学処理が必要となる。
【0008】
(2)化学的還元法
中国特許第101562256号明細書には、V及び硫酸溶液の混合系にシュウ酸、ブチルアルデヒド等の還元剤を加え、50〜100℃で0.5〜10時間保温し、化学的還元によってV(III)及びV(IV)を混合するバナジウム電解液の製造方法が開示されている。この方法の主な問題は、還元度を正確に制御しにくいことである。また、従来のプロセスで製造されたVは高純度化を実現しにくく、このようなプロセスで製造された電解液は、より多くの不純物を含む。さらに、還元剤を加えることで新たな不純物がバナジウム電解液系に導入されてしまい、電解液の純度に影響を与える。
【0009】
(3)電解法
国際PCT特許AKU88/000471には、Vを活性化した後に硫酸溶液を加え、定電流で電解することによりV(III)及びV(IV)を1:1の濃度比で混合したバナジウム電解液の製造方法が説明されている。電解法でバナジウム電解液を製造することは電解液の量産に適しているが、予備的な活性化処理を行う必要があり、さらなる電解装置を必要とすると共に消費を消費する。また、電解液がより多くの不純物を含むという問題がある。
【0010】
(4)低原子価酸化バナジウムの溶解方法
中国特許出願公開第101728560号明細書には、高純度Vを原料とし、80〜150℃温度下で、1:1の希硫酸に溶解することで、V(SO溶液を製造して負極電解液に使用することが開示されている。該プロセスの主な問題は、80〜150℃温度で操作すると、V(III)バナジウムイオン水和物が酸素橋結合を形成しやすくなり重縮合を引き起こし、電解液の活性低下を招き、活性化工程の欠如をもたらすことである。また、この方法は負極電解液の製造のみに適しており、適用範囲がより狭い。さらに、特許に用いられた工業用高純度Vは、全てのバナジウムの含有量が67%であり、これは98.5%の純度に相当し、依然として多くの不純物イオンを含んでいる。
【0011】
中国特許出願公開第102468509号明細書には、メタバナジウム酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムを原料とし、200〜300℃及び600〜700℃の温度で段階的にか焼してVを製造することを含む、バナジウム電池電解液の製造方法が開示されている。50〜120℃の温度でVを希硫酸に溶解し、5〜20時間反応して、V(SO溶液を得る。80〜110℃の温度でVをV(SO溶液に溶解し、1〜3時間反応して、バナジウムイオンの平均濃度が3.5の原子価であるバナジウム電池電解液を得る。この特許において製造されたV(SO溶液は負極電解液に使用される。このような方法の主な問題は、より高い温度で溶解操作を長期間行うと、V(III)バナジウムイオン水和物が酸素橋結合を形成しやすくなり重縮合を引き起こし、電解液の活性低下を招き、活性化過程の欠如をもたらし、電解液の純度が高くないことである。
【0012】
中国特許出願公開第103401010号明細書には、V粉末を水素ガスで還元してV粉末及びV粉末を製造することを含む、全バナジウム型レドックスフロー電池電解液の製造方法が開示されている。V及びVをそれぞれ濃硫酸に溶解して、バナジウム電池の正極及び負極電解液を得る。この特許の主な問題は、具体的な還元プロセスを提供していないことである。水素ガスでVを還元してV粉末を製造するが、このような製造過程は、過還元又は還元不良が発生しやすく、正確に制御するしか実現できないにもかかわらず、該特許には還元の正確な制御措置が列挙されていない。また、純度がより低いことも問題である。
【0013】
中国特許出願公開第101880059号明細書及び中国特許出願公開第102557134号明細書には、高純度三酸化バナジウムを製造する流動化還元炉及び還元方法が開示されており、流動床に熱交換用内部部材を加えることで、熱交換の強化を図り、サイクロン予熱によってエネルギー利用率を向上させ、Vの効率的な製造を実現している。この2つの特許に記載された方法は、Vの製造のみに適し、他の原子価の低原子価酸化バナジウムの製造に適しておらず、その理由は、当該システムが還元を正確に制御する機能を有しないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
要するに、本技術分野は、全バナジウム型レドックスフロー電池電解液の製造プロセス及び技術の欠点を解決し、製造プロセスの簡素化、電解液の純度及び活性の向上、電解液の製造及び使用についての容易性の向上を実現するように強く要望されている。
【0015】
以上の問題に対して、本発明は、バナジウム電池における高純度電解液の製造方法を提供し、製造プロセスの簡素化、電解液の純度の向上、電解液の製造についての容易性の向上、輸送の容易化を実現する。これらの目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明バナジウム電池における高純度電解液の製造方法で用いる製造システムは、三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1、液相加水分解装置2、五酸化二バナジウム供給装置3、予熱システム4、還元流動床5、燃焼室6、冷却システム7、二次冷却システム8、低原子価酸化バナジウム供給装置9、溶解反応器10及び活性化装置11を備える。
【0017】
前記液相加水分解装置2は、液相加水分解反応槽2−1及び洗浄フィルター2−2を備える。
【0018】
前記五酸化二バナジウム供給装置3は、五酸化二バナジウムサイロ3−1及び五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2を備える。
【0019】
前記予熱システム4は、ベンチュリ予熱器4−1、一次サイクロン予熱器4−2、二次サイクロン予熱器4−3及びバッグ型除塵機4−4を備える。
【0020】
前記還元流動床5は、供給器5−1、床体5−2、排出器5−3、ガス加熱器5−4、ガス浄化器5−5及び第一サイクロン分離器5−6を備える。
【0021】
前記冷却システム7は、ベンチュリ冷却器7−1、サイクロン冷却器7−2及び第二サイクロン分離器7−3を備える。
【0022】
前記低原子価酸化バナジウム供給装置9は、低原子価酸化バナジウムサイロ9−1及び低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2を備える。
【0023】
前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1底部の排出口が配管によって前記液相加水分解反応槽2−1の塩化物供給口に接続され、前記液相加水分解反応槽2−1の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記液相加水分解反応槽2−1の亜硫酸ガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記液相加水分解反応槽2−1のスラリー出口が配管によって前記洗浄フィルター2−2のスラリー入口に接続され、前記洗浄フィルター2−2の清浄水入口が清浄水本管に接続され、前記洗浄フィルター2−2の洗浄液出口が配管によって廃水処理システムに接続され、前記洗浄フィルター2−2の固体材料出口が配管によって前記五酸化二バナジウムサイロ3−1の供給口に接続される。
【0024】
前記五酸化二バナジウムサイロ3−1底部の排出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2の排出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器4−1の供給口に接続される。
【0025】
前記ベンチュリ予熱器4−1の吸気口が配管によって前記燃焼室6の排気口に接続され、前記ベンチュリ予熱器4−1の排気口が配管によって前記一次サイクロン予熱器4−2の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器の排気口が配管によって前記二次サイクロン予熱器の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器4−2の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続され、前記二次サイクロン予熱器4−3の排気口が配管によって前記バッグ型除塵機4−4の吸気口に接続され、前記二次サイクロン予熱器4−3の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続され、前記バッグ型除塵機4−4の排気口が排気ガス処理システムに接続され、前記バッグ型除塵機4−4の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続される。
【0026】
前記供給器5−1の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記供給器5−1の排出口が配管によって前記床体5−2の供給口に接続され、前記床体5−2の吸気口が配管によって前記ガス加熱器5−4の排気口に接続され、前記ガス加熱器5−4の吸気口が配管によって前記第二サイクロン分離器7−3の排気口及び前記ガス浄化器5−5の排気口に接続され、前記ガス加熱器5−4の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記ガス加熱器5−4の燃料入口が燃料本管に接続され、前記ガス浄化器5−5の吸気口が還元ガス本管に接続され、前記床体5−2の排出口が配管によって前記排出器5−3の供給口に接続され、前記排出器5−3の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記排出器5−3の排出口が配管によって前記ベンチュリ冷却器7−1の供給口に接続され、前記床体5−2の排気口が配管によって前記第一サイクロン分離器5−6の吸気口に接続され、前記第一サイクロン分離器5−6の排出口が配管によって前記排出器5−3の供給口に接続され、前記第一サイクロン分離器5−6の排気口が配管によって前記燃焼室6の吸気口に接続される。
【0027】
前記燃焼室6の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記燃焼室6のガス出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器のガス入口に接続される。
【0028】
前記ベンチュリ冷却器7−1のガス入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記ベンチュリ冷却器7−1の排気口が配管によって前記サイクロン冷却器7−2の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器7−2の排気口が配管によって前記第二サイクロン分離器7−3の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器7−2の排出口が配管によって前記二次冷却システム8の供給口に接続され、前記第二サイクロン分離器7−3のガス出口が配管によって前記ガス加熱器5−4のガス入口に接続され、前記第二サイクロン分離器7−3の排出口が配管によって前記二次冷却システム8の供給口に接続される。
【0029】
前記二次冷却システム8の排出口が配管によって前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1の供給口に接続され、前記二次冷却システム8のプロセス水入口が配管によってプロセス水本管に接続され、前記二次冷却システム8の排水口が配管によって水冷却システムに接続される。
【0030】
前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1底部の排出口が前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2の供給口に接続され、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2の排出口が配管によって前記溶解反応器10の供給口に接続される。
【0031】
前記溶解反応器10の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記溶解反応器10の濃硫酸入口が配管によって濃硫酸本管に接続され、前記溶解反応器10のガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記溶解反応器10の一次電解液出口が配管によって前記活性化装置11の一次電解液入口に接続される。
【0032】
また、本発明は、上記製造システムに基づくバナジウム電池における高純度電解液の製造方法を提供する。該製造方法は、以下の各ステップを含む。
【0033】
最初のステップでは、前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1内の三塩化酸化バナジウム液体が配管を通して前記液相加水分解反応槽2−1に入った後、清浄水本管からの清浄水と加水分解沈殿し、五酸化二バナジウム沈殿物及び塩酸溶液の混合スラリーを形成し、生成された亜硫酸ガスが配管を通して排気ガス処理システムに送られ、スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物を前記五酸化二バナジウムサイロ3−1に送る。
【0034】
次のステップでは、前記五酸化二バナジウムサイロ3−1内の五酸化二バナジウム沈殿物が順に前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2、前記ベンチュリ予熱器4−1を通して、前記一次サイクロン予熱器4−2に入り、前記二次サイクロン予熱器4−3及び前記バッグ型除塵機4−4により回収された微粉とともに前記供給器5−1を通して前記床体5−2に入り、浄化窒素ガス本管からの浄化窒素ガスが順に前記ベンチュリ冷却器7−1、前記サイクロン冷却器7−2、前記第二サイクロン分離器7−3を通して前記ガス浄化器5−5からの浄化還元ガスと合流し、前記ガス加熱器5−4により予熱された後、前記床体5−2に送られて五酸化二バナジウム粉体材料を流動化するように維持して、それを還元させて、バナジウム平均原子価が3.5である低原子価酸化バナジウム粉体及び還元排気ガスを得る。
【0035】
次のステップでは、低原子価酸化バナジウムが順に前記排出器5−3及び前記ベンチュリ冷却器7−1を通して前記サイクロン冷却器7−2に入り、前記第二サイクロン分離器7−3により回収された微粉とともに前記二次冷却システム8、前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2を通して前記溶解反応器10に入って清浄水本管からの清浄水、濃硫酸本管からの濃硫酸と溶解反応して一次電解液を得て、生成された酸性霧ガスを排気ガス処理システムに送り、得られた一次電解液を前記活性化装置11に与えて、活性化温度が20〜45℃であり、電力密度が10〜300W/mである紫外線によってバナジウムイオンを30〜300分間活性化して、バナジウム電池における高純度電解液を得る。
【0036】
次のステップでは、生成された還元排気ガスが前記第一サイクロン分離器5−6により除塵された後、燃焼促進用空気とともに前記燃焼室6に送られ、生成された高温排気ガスが順に前記ベンチュリ予熱器4−1、前記一次サイクロン予熱器4−2、前記二次サイクロン予熱器4−3に入り、前記バッグ型除塵機4−4により除塵された後に排気ガス処理システムに送られる。
【0037】
本発明の第一の特徴は、前記還元流動床5の床体5−2が複数のサイロを有する矩形のものであり、内部に垂直バッフルが配置されることである。
【0038】
本発明の第二の特徴は、三塩化酸化バナジウムの原料が99%〜99.9999%、すなわち2N〜6Nの純度を有することである。
【0039】
本発明の第三の特徴は、前記液相加水分解反応槽2−1内において、加えた三塩化酸化バナジウムに対する清浄水の質量比が0.5〜20であり、操作温度が30〜90℃であることである。
【0040】
本発明の第四の特徴は、前記ガス浄化器5−5に供給する還元ガスが水素ガス又は石炭ガスであることである。
【0041】
本発明の第五の特徴は、前記還元流動床5の前記床体5−2内において、還元時の操作温度が300〜700℃であり、還元ガスが前記ガス浄化器5−5により浄化された後、有機物の含有量が1mg/Nmより小さく、固体粒子の総含有量が2mg/Nmより小さく、供給された窒素ガス及び還元ガスの混合ガスにおける還元ガスの体積分率が10%〜90%であり、粉体の平均滞留時間が20〜120分であることである。
【0042】
本発明の第六の特徴は、前記溶解反応器10に加えた清浄水の抵抗率が12.0MΩ・cm以上であり、濃硫酸が電子グレード濃硫酸であり、溶解温度が30〜90℃であることである。
【0043】
本発明の第七の特徴は、前記バナジウム電解液がV(III)及びV(IV)バナジウムイオンを1:1のモル濃度比で混合する電解液であり、バナジウムイオンの平均原子価が3.5であり、新しい全バナジウム型レドックスフロー電池スタックに直接的に使用可能であることである。
【0044】
本発明の第八の特徴は、前記活性化装置11において、紫外線によってバナジウムイオンを活性化し、溶解活性化時間が30〜300分であり、溶解活性化温度が20〜45℃であり、電力密度が10〜300W/mであることである。
【発明の効果】
【0045】
本発明によって製造された電解液は純度が高く、活性が高く、電解液の製造が簡単である。本発明は以下の顕著な利点を有する。
【0046】
(1)高純度
高純度化させやすい三塩化酸化バナジウムを原料として選択することで、純度が2N〜6Nである高純度の三塩化酸化バナジウムを容易に得ることができる。5Nの三塩化酸化バナジウムを例として挙げると、本発明によって純度が4N5(すなわち99.995%の純度)の低原子価酸化バナジウムを製造することができ、それによって、高純度バナジウム電解液を製造することができる。不純物の総含有量は有効成分を除いて5ppm未満である。
【0047】
(2)液相加水分解
操作しやすく、工業的に使用しやすい。
【0048】
(3)流動床における高温排気ガス及び高温還元生成物の熱利用を実現
還元流動床の高温排気ガスの燃焼によってバナジウム粉末材料を予熱して高温排気ガスの顕熱及び潜熱を回収し、還元生成物及び流動化窒素ガスの熱交換によって還元生成物の顕熱を回収する。
【0049】
(4)還元の正確な制御
複数のサイロを有する矩形流動床を用いて、原子価還元の正確な制御を実現する。
【0050】
(5)高活性
紫外線照射によってバナジウムイオンを活性化し、電解液の活性を大幅に向上させる。
【0051】
(6)輸送の容易さ
電解液の製造プロセスが短く、バナジウム電池の現場製造に適し、低原子価酸化バナジウムを輸送でき、輸送コストを大幅に削減することができる。
【0052】
(7)3.5原子価電解液
当該電解液は、新しいバナジウム電池スタックの構成に適しており、正負極室に直接加えて使用することができ、操作しやすい。
【0053】
本発明は、製造時のエネルギー消費量及び操作コストが低く、製品の純度が高く、品質が安定し、電解液の製造及び調製が容易であるといった利点を有し、全バナジウム型レドックスフロー電池電解液の大規模な工業生産に適し、良好な経済的便益及び社会的便益を有する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面は本発明を更に詳しく説明するためのものであって、明細書の一部となり、本発明の実施例とともに本発明を説明することに用いられ、本発明を制限するためのものではない。
【0055】
図1】本発明に係るバナジウム電池における高純度電解液の製造システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面を参照しながら本発明の実施例における技術的解決手段を明確、完全に説明する。無論、説明された実施例は本発明の実施例の一部であって、実施例のすべてではない。ただし、実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものであり、それを制限するためのものではない。図1は、本発明に係るバナジウム電池における高純度電解液の製造システムの構成を示す模式図である。
【実施例1】
【0057】
図1に示すように、実施例1に使用されるバナジウム電池における高純度電解液の製造システムは、三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1、液相加水分解装置2、五酸化二バナジウム供給装置3、予熱システム4、還元流動床5、燃焼室6、冷却システム7、二次冷却システム8、低原子価酸化バナジウム供給装置9、溶解反応器10及び活性化装置11を備える。
【0058】
前記液相加水分解装置2は、液相加水分解反応槽2−1及び洗浄フィルター2−2を備える。
【0059】
前記五酸化二バナジウム供給装置3は、五酸化二バナジウムサイロ3−1及び五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2を備える。
【0060】
前記予熱システム4は、ベンチュリ予熱器4−1、一次サイクロン予熱器4−2、二次サイクロン予熱器4−3及びバッグ型除塵機4−4を備える。
【0061】
前記還元流動床5は、供給器5−1、床体5−2、排出器5−3、ガス加熱器5−4、ガス浄化器5−5及び第一サイクロン分離器5−6を備える。
【0062】
前記冷却システム7は、ベンチュリ冷却器7−1、サイクロン冷却器7−2及び第二サイクロン分離器7−3を備える。
【0063】
前記低原子価酸化バナジウム供給装置9は、低原子価酸化バナジウムサイロ9−1及び低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2を備える。
【0064】
前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1底部の排出口が配管によって前記液相加水分解反応槽2−1の塩化物供給口に接続され、前記液相加水分解反応槽2−1の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記液相加水分解反応槽2−1の亜硫酸ガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記液相加水分解反応槽2−1のスラリー出口が配管によって前記洗浄フィルター2−2のスラリー入口に接続され、前記洗浄フィルター2−2の清浄水入口が清浄水本管に接続され、前記洗浄フィルター2−2の洗浄液出口が配管によって廃水処理システムに接続され、前記洗浄フィルター2−2の固体材料出口が配管によって前記五酸化二バナジウムサイロ3−1の供給口に接続される。
【0065】
前記五酸化二バナジウムサイロ3−1底部の排出口が前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2の供給口に接続され、前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2の排出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器4−1の供給口に接続される。
【0066】
前記ベンチュリ予熱器4−1の吸気口が配管によって前記燃焼室6の排気口に接続され、前記ベンチュリ予熱器4−1の排気口が配管によって前記一次サイクロン予熱器4−2の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器4−2の排気口が配管によって前記二次サイクロン予熱器4−3の吸気口に接続され、前記一次サイクロン予熱器4−2の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続され、前記二次サイクロン予熱器4−3の排気口が配管によって前記バッグ型除塵機4−4の吸気口に接続され、前記二次サイクロン予熱器4−3の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続され、前記バッグ型除塵機4−4の排気口が排気ガス処理システムに接続され、前記バッグ型除塵機4−4の排出口が配管によって前記供給器5−1の供給口に接続される。
【0067】
前記供給器5−1の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記供給器5−1の排出口が配管によって前記床体5−2の供給口に接続され、前記床体5−2の吸気口が配管によって前記ガス加熱器5−4の排気口に接続され、前記ガス加熱器5−4の吸気口が配管によって前記第二サイクロン分離器7−3の排気口及び前記ガス浄化器5−5の排気口に接続され、前記ガス加熱器5−4の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記ガス加熱器5−4の燃料入口が燃料本管に接続され、前記ガス浄化器5−5の吸気口が還元ガス本管に接続され、前記床体5−2の排出口が配管によって前記排出器5−3の供給口に接続され、前記排出器5−3の通気入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記排出器5−3の排出口が配管によって前記ベンチュリ冷却器7−1の供給口に接続され、前記床体5−2の排気口が配管によって前記第一サイクロン分離器5−6の吸気口に接続され、前記第一サイクロン分離器5−6の排出口が配管によって前記排出器5−3の供給口に接続され、前記第一サイクロン分離器5−6の排気口が配管によって前記燃焼室6の吸気口に接続される。
【0068】
前記燃焼室6の燃焼促進用空気入口が圧縮空気本管に接続され、前記燃焼室6のガス出口が配管によって前記ベンチュリ予熱器4−1のガス入口に接続される。
【0069】
前記ベンチュリ冷却器7−1のガス入口が浄化窒素ガス本管に接続され、前記ベンチュリ冷却器7−1の排気口が配管によって前記サイクロン冷却器7−2の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器7−2の排気口が配管によって前記第二サイクロン分離器7−3の吸気口に接続され、前記サイクロン冷却器7−2の排出口が配管によって前記二次冷却システム8の供給口に接続され、前記第二サイクロン分離器7−3のガス出口が配管によって前記ガス加熱器5−4のガス入口に接続され、前記第二サイクロン分離器7−3の排出口が配管によって前記二次冷却システム8の供給口に接続される。
【0070】
前記二次冷却システム8の排出口が配管によって前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1の供給口に接続され、前記二次冷却システム8のプロセス水入口が配管によってプロセス水本管に接続され、前記二次冷却システム8の排水口が配管によって水冷却システムに接続される。
【0071】
前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1底部の排出口が前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2の供給口に接続され、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2の排出口が配管によって前記溶解反応器10の供給口に接続される。
【0072】
前記溶解反応器10の清浄水入口が配管によって清浄水本管に接続され、前記溶解反応器10の濃硫酸入口が配管によって濃硫酸本管に接続され、前記溶解反応器10のガス出口が排気ガス処理システムに接続され、前記溶解反応器10の一次電解液出口が配管によって前記活性化装置11の一次電解液入口に接続される。
【実施例2】
【0073】
実施例2に係る、上記実施例1の製造システムを利用してバナジウム電池における高純度電解液を製造する方法は、具体的に、次に示すような各ステップを含む。
【0074】
最初のステップでは、前記三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク1内の三塩化酸化バナジウム液体が配管を通して前記液相加水分解反応槽2−1に入った後、清浄水本管からの清浄水と加水分解沈殿し、五酸化二バナジウム沈殿物及び塩酸溶液の混合スラリーを形成する。生成された亜硫酸ガスが配管を通して排気ガス処理システムに送られる。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得る。洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物を前記五酸化二バナジウムサイロ3−1に送る。
【0075】
次のステップでは、前記五酸化二バナジウムサイロ3−1内の五酸化二バナジウム沈殿物が順に前記五酸化二バナジウムスクリューフィーダ3−2、前記ベンチュリ予熱器4−1を通して、前記一次サイクロン予熱器4−2に入り、前記二次サイクロン予熱器4−3及び前記バッグ型除塵機4−4により回収された微粉とともに前記供給器5−1を通して前記床体5−2に入る。浄化窒素ガス本管からの浄化窒素ガスが順に前記ベンチュリ冷却器7−1、前記サイクロン冷却器7−2、前記第二サイクロン分離器7−3を通して前記ガス浄化器5−5からの浄化還元ガスと合流し、前記ガス加熱器5−4により予熱された後、前記床体5−2に送られて五酸化二バナジウム粉体材料を流動化するように維持して、それを還元させて、バナジウム平均原子価が3.5である低原子価酸化バナジウム粉体及び還元排気ガスを得る。
【0076】
次のステップでは、低原子価酸化バナジウムが順に前記排出器5−3及び前記ベンチュリ冷却器7−1を通して前記サイクロン冷却器7−2に入り、前記第二サイクロン分離器7−3により回収された微粉とともに前記二次冷却システム8、前記低原子価酸化バナジウムサイロ9−1、前記低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ9−2を通して前記溶解反応器10に入って清浄水本管からの清浄水、濃硫酸本管からの濃硫酸と溶解反応して一次電解液を得る。生成された酸性霧ガスを排気ガス処理システムに送り、一次電解液を前記活性化装置11により活性化して、バナジウム電池における高純度電解液を得る。
【0077】
次のステップでは、生成された還元排気ガスが前記第一サイクロン分離器5−6により除塵された後、燃焼促進用空気とともに前記燃焼室6に送られ、生成された高温排気ガスが順に前記ベンチュリ予熱器4−1、前記一次サイクロン予熱器4−2、前記二次サイクロン予熱器4−3に入り、前記バッグ型除塵機4−4により除塵された後に排気ガス処理システムに送られる。
【実施例3】
【0078】
実施例3においては、三塩化酸化バナジウム(2N以上の純度)を原料とし、処理量が3kg/hである。液相加水分解反応槽2−1に0.5の質量比で清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)及び三塩化酸化バナジウムを加えて、操作温度が90℃であり、五酸化二バナジウムを含有するスラリーを得る。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物が予熱システムにより予熱された後に還元流動床5に入る。還元流動床5に供給する還元ガスが石炭ガスであり、還元流動床5に供給する窒素ガス及び石炭ガスの混合ガスにおける石炭ガスの体積分率が10%であり、粉体の平均滞留時間が120分であり、操作温度が300℃であり、バナジウムの平均原子価が3.5であって、純度が98.5%である低原子価酸化バナジウムを得る。溶解反応器10に電子グレード濃硫酸及び清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)を加え、溶解温度が90℃であり、紫外線電力密度が30W/mであって、活性化温度が20℃の活性化装置11で300分間活性化して、有効成分を除き、不純物の総含有量が0.25%未満であるバナジウム電解液を得る。
【実施例4】
【0079】
実施例4においては、三塩化酸化バナジウム(3N以上の純度)を原料とし、処理量が30kg/hである。液相加水分解反応槽2−1に20の質量比で清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)及び三塩化酸化バナジウムを加えて、操作温度が30℃であり、五酸化二バナジウムを含有するスラリーを得る。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物が予熱システムにより予熱された後に還元流動床に入る。還元流動床5に供給する還元ガスが石炭ガスであり、還元流動床5に供給する窒素ガス及び石炭ガスの混合ガスにおける石炭ガスの体積分率が90%であり、粉体の平均滞留時間が20分であり、操作温度が700℃であり、バナジウムの平均原子価が3.5であって、純度が99.85%である低原子価酸化バナジウムを得る。溶解反応器10に電子グレード濃硫酸及び清浄水(抵抗15.0MΩ・cm)を加え、溶解温度が30℃であり、紫外線電力密度が300W/mであって、活性化温度が45℃の活性化装置11で30分間活性化して、有効成分を除き、不純物の総含有量が0.03%未満である高純度バナジウム電解液を得る。
【実施例5】
【0080】
実施例5においては、三塩化酸化バナジウム(4N以上の純度)を原料とし、処理量が300kg/hである。液相加水分解反応槽2−1に10の質量比で清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)及び三塩化酸化バナジウムを加えて、操作温度が60℃であり、五酸化二バナジウムを含有するスラリーを得る。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物が予熱システムにより予熱された後に還元流動床に入る。還元流動床5に供給する還元ガスが水素ガスであり、還元流動床5に供給する窒素ガス及び水素ガスの混合ガスにおける水素ガスの体積分率が60%であり、粉体の平均滞留時間が90分であり、操作温度が600℃であり、バナジウムの平均原子価が3.5であって、純度が99.98%である低原子価酸化バナジウムを得る。溶解反応器10に電子グレード濃硫酸及び清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)を加え、溶解温度が60℃であり、紫外線電力密度が200W/mであって、活性化温度が40℃の活性化装置11で200分間活性化して、有効成分を除き、不純物の総含有量が0.005%未満である高純度バナジウム電解液を得る。
【実施例6】
【0081】
実施例6においては、三塩化酸化バナジウム(5N以上の純度)を原料とし、処理量が3000kg/hである。液相加水分解反応槽2−1に3の質量比で清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)及び三塩化酸化バナジウムを加え、操作温度が50℃であり、五酸化二バナジウムを含有するスラリーを得る。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物が予熱システムにより予熱された後に還元流動床に入る。還元流動床5に供給する還元ガスが水素ガスであり、還元流動床5に供給する窒素ガス及び水素ガスの混合ガスにおける水素ガスの体積分率が50%であり、粉体の平均滞留時間が30分であり、操作温度が550℃であり、バナジウムの平均原子価が3.5であって、純度が99.997%である低原子価酸化バナジウムを得る。溶解反応器10に電子グレード濃硫酸及び清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)を加え、溶解温度が50℃であり、紫外線電力密度が100W/mであって、活性化温度が30℃の活性化装置11で150分間活性化して、有効成分を除き、不純物の総含有量が5ppm未満である高純度バナジウム電解液を得る。
【実施例7】
【0082】
実施例7においては、三塩化酸化バナジウム(6N以上の純度)を原料とし、処理量が3000kg/hである。液相加水分解反応槽2−1に3の質量比で清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)及び三塩化酸化バナジウムを加え、操作温度が50℃であり、五酸化二バナジウムを含有するスラリーを得る。スラリーが前記洗浄フィルター2−2に入って清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)で洗浄し、濾過した後に洗浄液及び五酸化二バナジウム沈殿物粉体を得て、洗浄液を廃水処理システムに送り、五酸化二バナジウム沈殿物が予熱システムにより予熱された後に還元流動床に入る。還元流動床5に供給する還元ガスが水素ガスであり、還元流動床5に供給する窒素ガス及び水素ガスの混合ガスにおける水素ガスの体積分率が50%であり、粉体の平均滞留時間が30分であり、操作温度が550℃であり、バナジウムの平均原子価が3.5であって、純度が5N5である(すなわち純度が99.9995%である)低原子価酸化バナジウムを得る。溶解反応器10に電子グレード濃硫酸及び清浄水(抵抗18.0MΩ・cm)を加え、溶解温度が50℃であり、紫外線電力密度が100W/mであって、活性化温度が30℃の活性化装置11で150分間活性化して、有効成分を除き、不純物の総含有量が1ppm未満である高純度バナジウム電解液を得る。
【0083】
本発明において詳細に説明していない部分は当該分野の公知技術に属する。
無論、本発明は更に様々な実施例を有してもよい。当業者は、本発明の開示に基づいて、本発明の趣旨や実質を逸脱しない範囲内で種々の対応する変更及び変形を行うことができる。しかし、これらの対応する変更及び変形はすべて本発明の特許請求の保護範囲に属すべきである。
【符号の説明】
【0084】
1 三塩化酸化バナジウム貯蔵タンク
2 液相加水分解装置
2−1 液相加水分解反応槽
2−2 洗浄フィルター
3 五酸化二バナジウム供給装置
3−1 五酸化二バナジウムサイロ
3−2 五酸化二バナジウムスクリューフィーダ
4 予熱システム
4−1 ベンチュリ予熱器
4−2 一次サイクロン予熱器
4−3 二次サイクロン予熱器
4−4 バッグ型除塵機
5 還元流動床
5−1 供給器
5−2 床体
5−3 排出器
5−4 ガス加熱器
5−5 ガス浄化器
5−6 第一サイクロン分離器
6 燃焼室
7 冷却システム
7−1 ベンチュリ冷却器
7−2 サイクロン冷却器
7−3 第二サイクロン分離器
8 二次冷却システム
9 低原子価酸化バナジウム供給装置
9−1 低原子価酸化バナジウムサイロ
9−2 低原子価酸化バナジウムスクリューフィーダ
10 溶解反応器
11 活性化装置
図1