【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭で挙げた種類の装置によって解決され、その場合に本発明に係る装置は制御装置を有しており、その制御装置は、空気移送装置と温度調節装置を自動的に制御するように整えられている。
【0007】
本発明は、制御装置によって空気移送装置と温度調節装置を自動的に制御することにより、空気移送装置の駆動と温度調節装置の駆動を互いに調整することができる、という認識を利用している。このようにして、温度調節領域内の不適切な温度の発生と、車両シートのユーザーにとって不快な空気流の調節を効果的に回避することができる。さらに、空気移送装置と温度調節装置の自動的な制御が、過度の騒音発生の回避を可能にする。温度調節装置は、たとえば、加熱装置及び/又は冷却装置を有することができるので、温度調節領域へ移送すべき空気は暖めること、かつ/又は冷却することができる。特に空気移送装置は、ベンチレータ、好ましくはラジアルベンチレータを有することができる。したがって車両シートのユーザーのネック領域を温度調節する装置は、たとえば加熱送風機及び/又は冷却送風機として形成することができる。
【0008】
本発明に係る装置の好ましい実施形態において、制御装置は、自動的に予備加熱駆動モードを調節するように整えられており、それにおいて空気移送装置は非作動であり、温度調節装置は能動化されている。予備加熱駆動モードにおいて空気移送装置が非作動であることによって、温度調節されていない、あるいは充分に温度調節されていない空気が温度調節領域へ移送されることは、効果的に回避することができる。したがって車両シートのユーザーが不快な温度を感じることが、回避される。さらに装置をオンにする場合に強い電流ピークが回避される。というのは、空気移送装置が非作動にされていることに基づいて、出力需要が減少されているからである。好ましくは温度調節装置は、予備加熱駆動モードにおいて、所定の出力段のために定められている出力の少なくとも50%をもたらす。本発明の主旨において、能動化された装置というのは、オンにされた装置であるので、能動化された装置は、クロック駆動において、かつパルス幅変調をもって駆動することもできる。
【0009】
本発明に係る装置は、さらに制御装置が、装置が能動化され、かつ/又は周囲温度が温度限界値を下回っている場合に、予備加熱駆動モードを調節するように整えられていることによって、効果的に展開される。そのために装置は、たとえば1つ又は複数の温度センサを有することができる。特に周囲温度が低い場合には、予備加熱されていない空気の吹き出しは、車両シートのユーザーには不快であると認識される。移送すべき空気を予備加熱することによって、装置の温度調節作用は即座に快適と感じられる。したがって予備加熱駆動モードは、たとえば、装置内又はシート内に存在する冷たい空気がまず予熱されて、その後に遅延されたファン始動によって空気移送装置が駆動されることを、保証する。
【0010】
本発明に係る装置の他の実施形態において、制御装置は、予備加熱長さの間、及び/又は周囲温度と温度調節された空気の空気温度と間のあらかじめ定められた差に達するまで、予備加熱駆動モードを維持するように、整えられている。予備加熱長さは、たとえば0秒〜45秒、好ましくは0秒〜2秒、特に好ましくは0.5秒〜2秒の領域内とすることができる。予備加熱駆動モードは、たとえば、温度調節された空気の空気温度が周囲温度を約10℃上回るまで、実施することができる。
【0011】
本発明に係る装置の特に好ましい実施形態において、制御装置は、1つもしくは複数の周囲パラメータ及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数の駆動パラメータに従って予備加熱長さを定めるように、整えられている。したがってこの実施例において、予備加熱長さは静的にあらかじめ選択された時間値ではなく、周囲及び/又は温度調節装置の駆動に依存することができる。1つ又は複数の周囲パラメータは、たとえば周囲温度及び/又は周囲の湿度を含むことができる。温度調節装置の1つ又は複数の駆動パラメータは、たとえば出力消費、電流消費、印加される電圧及び/又は温度調節装置の電気抵抗又はそのコンポーネントを含むことができる。車両ルーフが閉鎖されている場合には、「周囲」という概念は、通常、車両キャビンの内部空間及び車両キャビン内部の空気を意味する。この場合において、たとえば「周囲温度」は、問題となる構成部分の周囲における車両キャビン内部の空気の温度を意味する。しかし「周囲」は、それぞれ構成に応じて、車両キャビンの外部の空間を意味することもできる。これは特に、幌を開けて運転される車両の場合である。この場合において、たとえば「周囲温度」は、車両の外部の空気の温度である。
【0012】
本発明に係る装置の展開において、温度調節装置は1つ又は複数のPTC線条抵抗を有し、あるいは1つ又は複数のPTC線条抵抗から形成されている。制御装置は、好ましくは1つ又は複数のPTC線条抵抗の抵抗値に従って予備加熱長さを定めるように、整えられている。PTC線条抵抗の抵抗値は、その温度に依存する。好ましくは予備加熱駆動モードは、30℃を上回るPTC線条抵抗の温度に対応づけることができる抵抗値が検出されるまで、実施される。
【0013】
本発明に係る装置の他の好ましい実施形態において、制御装置は、1つ又は複数のPTC線条抵抗の抵抗値の勾配に従って予備加熱長さを定めるように、整えられている。抵抗値の勾配が考慮されることにより、装置が最大の電流消費を有する時間を減少させることができる。特に好ましくは、抵抗値も抵抗値の勾配も定められた領域内に来るまで、予備加熱駆動モードが実施される。
【0014】
始動プロセスが繰り返される場合に、予備加熱駆動モードにおいて空気の強すぎる温度調節を回避するために、装置が非作動であった2つの始動プロセスの間の期間を、1つ又は複数のPTC線条抵抗が冷却のために必要とする期間と比較することができる。装置が非作動であった期間が、1つ又は複数のPTC線条抵抗が冷却のために必要とする期間を下回る場合に、予備加熱駆動モードは抑圧され、短縮され、あるいは減少された出力段で駆動される。
【0015】
好ましくは、本発明に係る装置の制御装置は、自動的に始動駆動モードを調節するように整えられており、それにおいて空気移送装置と温度調節装置は能動化されており、空気移送装置の駆動状態及び/又は温度調節装置の駆動状態は少なくとも一時的に変化する。始動駆動モードは、移送出力を温度調節装置の実際に支配的な温度調節出力に適合させることを可能にする。たとえば始動駆動モードにおいて、空気移送装置の適切な制御により、あるいは流体移送出力の適切な適合によって、まだ完全に暖められていない加熱送風機あるいは目標温度まで加熱されていない線条抵抗によって暖めることができるよりも多くの空気が移送されないことを、保証することができる。この始動駆動モードにおいて、温度調節装置は所定の出力段のために定められているその出力の、好ましくは少なくとも50%をもたらす。
【0016】
本発明に係る装置の特に好ましい実施形態において、制御装置は、始動駆動モードの間空気移送装置の移送出力に影響を及ぼす電気的な影響パラメータ及び/又は流体流を変化させるように、整えられている。電気的な影響パラメータは、たとえば、印加される電圧の大きさ、所定の期間内の出力消費、パルス幅変調駆動における平均のスイッチオン長さ、又は流れる電流強さとすることができる。流体流の変化は、たとえば移送装置の電気的な出力消費の変化、移送される流体体積もしくは流体体積流の量の変化、又は空気移送装置のベンチレータの回転数の変化を介して行うことができる。好ましくは予備加熱駆動モード及び/又は始動駆動モードの間に空気移送装置及び/又は温度調節装置を通る電流の流れは、12ボルトにおいて最大で16〜25A、好ましくは16〜20A、もしくは48ボルトにおいて4〜5Aの領域内にある。
【0017】
本発明に係る装置の展開において、電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の変化は、電気的な影響パラメータ及び/又は流体流が、好ましくは始動期間にわたって、初期値から目標値へ上昇することによって行われる。始動期間は、好ましくは0秒〜40秒、好ましくは1秒〜20秒、特に好ましくは1.5秒〜2秒の領域内にある。電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の上昇は、連続的及び/又は段階的に行うことができる。
【0018】
本発明に係る装置の他の好ましい実施形態において、制御装置は、電気的な影響パラメータ及び/又は流体流を少なくとも部分的に線形、双曲線状あるいは漸近線状に上昇させるように、整えられている。好ましくは制御装置は、電気的な影響パラメータ及び/又は流体流を少なくとも部分的にランプ形状に線形に、あるいはランプ形状に双曲線状に上昇させるように、整えられている。電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の様々な上昇推移は、それぞれ選択された駆動条件において、たとえば車両シートのユーザーのための快適性最大化あるいは空気温度調節の促進を達成するために、有利であり得る。
【0019】
さらに、本発明に係る装置において好ましくは、制御装置は、電気的な影響パラメータ及び/又は流体流を、1つもしくは複数の周囲パラメータ、温度調節領域内の温度及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数の駆動パラメータに従って上昇させるように、整えられている。1つ又は複数の周囲パラメータは、たとえば周囲温度を含むことができる。電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の上昇が、温度領域内の温度に従って行われる場合に、しかるべき制御によって、始動駆動モードの間、温度領域内を常に等しい温度が支配することを達成することができる。これが、車両シートのユーザーにとって快適性の著しい向上をもたらす。
【0020】
本発明に係る装置の特に好ましい実施形態において、制御装置は、1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値及び/又は1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値の勾配に従って電気的な影響パラメータ又は流体流を上昇させるように、整えられている。好ましくは始動駆動モードにおける1つ又は複数のPTC線条抵抗の各抵抗値について、空気移送装置の流体移送量が格納されている。したがって流体移送量はPTC抵抗に従って増大するので、始動駆動モードの間、流体流は常に同じ温度を有している。
【0021】
本発明に係る装置の他の好ましい実施形態において、制御装置は、1つ又は複数のPTC線条抵抗の目標抵抗値に達した後は、この目標抵抗値を維持するように、整えられている。このようにして、知覚可能な騒音変化が回避され、それによって利用快適性が向上する。
【0022】
さらに本発明に係る装置において、好ましくは、制御装置は、自動的に連続駆動モードを調節するように、整えられている。この連続駆動モードにおいて、空気移送装置と温度調節装置は実質的に一定に目標状態において駆動される。その場合に好ましくは、温度調節装置は所定の出力段のために定められたその出力の少なくとも50%をもたらす。特に制御装置は、少なくとも1つの電気的な影響パラメータを終端値へ上昇させる。その場合に特に終端値とは、連続駆動に適した目標値に相当する値である。この終端値は、好ましくは最大±20%の許容誤差をもって維持される。したがってそれは、意図される目標値から最大±20%の偏差を有する。好ましくは電気的な影響パラメータは、空気移送装置の移送出力に影響を及ぼすパラメータである。
【0023】
好ましくは制御装置は、始動駆動モードが調節される前に、まず予備加熱駆動モードを調節するように整えられている。さらに装置は、連続駆動モードが調節される前に、まず始動駆動モードで駆動される。連続駆動モードにおいて装置は、好ましくは過渡状態が収まった状態にあるので、連続駆動モードは時間的な終端制限なしで実施することができる。
【0024】
本発明の基礎となる課題は、さらに、冒頭で挙げた種類のヘッドレスト又は車両シートによって解決され、その場合にユーザーのネック領域を温度調節する装置は、上述した実施形態のいずれかに従って形成されている。したがってヘッドレスト及び/又は車両シートは、たとえば、乗客のネック領域に冷たい空気及び/又は暖かい空気を流すために加熱送風機を有することができる。本発明に係る車両シートの他の利点及び修正形態に関しては、本発明に係る装置の利点及び修正形態を参照することができる。
【0025】
本発明の基礎となる課題は、さらに、冒頭で挙げた種類の制御方法によって解決され、その場合に空気移送装置と温度調節装置が制御装置によって自動的に制御される。特に本発明に係る制御方法は、上述した実施形態のいずれか1つに記載の車両シートのユーザーのネック領域を温度調節する装置を駆動するために使用される。
【0026】
好ましい実施形態において本発明に係る制御方法は、空気移送装置が非作動であり、温度調節装置が能動化されている、制御装置による予備加熱駆動モードの自動的な調節、空気移送装置と温度調節装置が能動化されており、空気移送装置の駆動状態及び/もしくは温度調節装置の駆動状態が少なくとも一時的に変化する、制御装置による始動駆動モードの自動的な調節ならびに/又は空気移送装置と温度調節装置が実質的に一定に目標状態において駆動される、制御装置による連続駆動モードの自動的な調節を有している。
【0027】
本発明に係る制御方法の好ましい展開において、装置は能動化されて、周囲温度が検出され、その場合に装置が能動化され、かつ/又は周囲温度が温度限界値を下回る場合に、予備加熱駆動モードが調節される。特に周囲温度が低い場合には、予備加熱されていない空気の吹き出しは、車両シートのユーザーによって不快であると知覚されることがあり得る。移送すべき空気を予備加熱することによって、装置の温度調節作用は即座に快適であると感じられる。
【0028】
さらに、本発明に係る制御方法において好ましくは、予備加熱長さが定められ、かつ/又は予備加熱長さの経過後に、駆動モードが自動的に予備加熱駆動モードから始動駆動モードへ切り替えられる。予備加熱駆動モードから始動駆動モードへ自動的に切り替えることによって、予備加熱駆動モードにおける温度調節が終了した後に、ユーザーの介入は不要である。したがって快適性がさらに向上する。
【0029】
本発明に係る制御方法の他の好ましい実施形態において、予備加熱長さは、1つもしくは複数の周囲パラメータ及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数の駆動パラメータに従って定められる。好ましくはさらに、本発明に係る制御方法において、予備加熱長さを定めることは、温度調節装置の1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値の検出及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値の勾配の検出を有しており、その場合に予備加熱長さを定めることは、1つ又は複数のPTC線条抵抗の検出された抵抗値及び/又は検出された抵抗値の勾配に従って行われる。抵抗値の勾配が考慮されることにより、装置が最大の電流消費を有する時間を減少させることができる。特に好ましくは、抵抗値も抵抗値の勾配も定められた領域に来るまで、予備加熱駆動モードが実施される。
【0030】
本発明に係る制御方法の他の実施形態において、始動駆動モードにおいて、空気移送装置の移送出力を調節する電気的な影響パラメータ及び/もしくは流体流を変化させ、電気的な影響パラメータ及び/もしくは流体流を、好ましくは始動期間にわたって初期値から目標値へ上昇させ、電気的な影響パラメータ及び/もしくは流体流を少なくとも部分的に線形、双曲線状もしくは漸近線状に上昇させ、かつ/又は電気的な影響パラメータ及び/もしくは流体流を、1つもしくは複数の周囲パラメータ、温度調節領域内の温度及び/もしくは温度調節装置の1つもしくは複数の駆動パラメータに従って上昇させる。好ましくは電気的な影響パラメータ及び/又は流体流を、少なくとも部分的にランプ形状に線形に、あるいはランプ形状に双曲線状に上昇させる。電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の様々な上昇推移は、それぞれ選択された駆動条件において、たとえば車両シートのユーザーにとっての快適性最大化又は空気温度調節の促進を達成するために、有利であり得る。
【0031】
好ましくは本発明に係る制御方法において、始動駆動モードにおいて1つもしくは複数の周囲パラメータ、温度領域内の温度及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数の駆動パラメータが検出される。予備加熱長さは、好ましくはあらかじめ選択された静的な時間値ではない。1つ又は複数の周囲パラメータは、たとえば周囲温度及び/又は周囲の湿度を含むことができる。温度調節領域の1つ又は複数の駆動パラメータは、たとえば出力消費、電流消費、印加される電圧及び/又は温度調節装置の電気的抵抗又はそのコンポーネントを有することができる。
【0032】
本発明に係る制御方法の好ましい展開において、温度調節装置の1つ又は複数の駆動パラメータの検出は、温度調節装置の1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値の検出及び/又は温度調節装置の1つもしくは複数のPTC線条抵抗の抵抗値の勾配の検出を有しており、その場合に電気的な影響パラメータ及び/又は流体流の上昇は、検出された抵抗値及び/又は抵抗値の検出された勾配に従って行われる。本発明に係る方法は、さらに、目標抵抗値の達成後に1つ又は複数のPTC線条抵抗の目標抵抗値の維持を有することができる。
【0033】
本発明に係る制御方法の利点及び修正形態に関しては、本発明に係る装置の利点及び修正形態を参照することができる。先行する説明における「1つ(ein/eine)」は、不定冠詞を意味し、「少なくとも1つ又は複数」を表す。
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。