(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671490
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】高級エチレンアミンおよびエチレンアミン誘導体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 295/13 20060101AFI20200316BHJP
C07D 233/36 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
C07D295/13
C07D233/36
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-539991(P2018-539991)
(86)(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公表番号】特表2019-506409(P2019-506409A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2017052945
(87)【国際公開番号】WO2017137530
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2018年8月20日
(31)【優先権主張番号】16155549.5
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16155545.3
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エドヴィンソン,ロルフ クリスター
(72)【発明者】
【氏名】カンツァー,アイケ ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,パー フレデリック オルモ
(72)【発明者】
【氏名】レイク,カール フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】テン ケイト,アントーン ジェイコブ ベレンド
(72)【発明者】
【氏名】エーラス,イナ
【審査官】
岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05491263(US,A)
【文献】
米国特許第04684729(US,A)
【文献】
特開昭58−069847(JP,A)
【文献】
特表昭64−500357(JP,A)
【文献】
特開昭52−085991(JP,A)
【文献】
特開昭56−108534(JP,A)
【文献】
特表2012−504611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化炭素誘導剤の存在下で
第一の化合物
と第二の化合物を反応させることによって、
式NH
2−(C
2H
4−NH−)
pH
(式中、pは少なくとも2であり、1つまたは複数の−NH−C
2H
4−NH−単位はピペラジン単位
【化1】
として存在し、ここで、任意選択的に1つまたは複数の−NH−C
2H
4−NH−単位は、環状エチレン尿素単位
【化2】
として存在するか、または2つの−NH−C
2H
4−NH−単位の間にカルボニル部分が存在する)
のエチレンアミンまたはその前駆体を調製する方法であって、
前記
第一の化合物が、エチレン基を介してアミン基に連結されるヒドロキシ基を含有するエタノールアミン官能性化合物、
エチレン基を介してアミン基に連結されるヒドロキシ基を含有するエタノールアミン官能性化合物のカルバメー
トもしくは環状カルバメー
ト、
または、
下記式(1)で示されるUAEEA(アミノエチルエタノールアミンの尿素
化合物)であり、
【化3】
式(1)
前記
第二の化合物が、アルコール基を含有せず、1つまたは複数のアミン基を含有する
アミン官能性化合物か、
または、エチレンジアミンの環状尿素(EU)であり、
前記酸化炭素誘導剤が、二酸化炭素、または、
尿素、直鎖状および環状アルキレン尿素、一置換または二置換アルキレン尿素、アルキルおよびジアルキル尿素、直鎖状および環状カルバメート、
並びに、下記式(2)で示される有機カーボネート
【化4】
式(2)
(式中、R
1およびR
2の少なくとも1つは有機基である)
、
有機炭酸塩、
有機重炭酸塩、カルバミン酸およびカルバミン酸塩からなる群から選択される
前駆体化合物から選択される有機化合物であり、
前記前駆体化合物が、反応条件下でCO2または直鎖状もしくは環状アルキレンカルバメートまたは直鎖状もしくは環状アルキレン尿素化合物に変換されうるものであり、
前記
第二の化合物または前記
第一の化合物の少なくとも1つが、ピペラジン単位を含有し、前記反応が水を含む液体中で行われる、方法。
【請求項2】
前記第一の化合物が、式HO−(C2H4−NH−)qH(式中、qは少なくとも1である)のものであり、
前記アミン官能性化合物が、式NH2−(C2H4−NH−)rH(式中、rは少なくとも1である)のものであって、
qまたはr単位の少なくとも1つは、ピペラジン単位として存在し、任意選択的に1つまたは複数のqまたはr単位は、環状エチレン尿素、環状エチレンカルバメートまたはさらなるピペラジン単位として存在してもよい、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二の化合物が、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)、もしくはジアミノエチルピペラジン(DAEP)、ピペラジノエチルエチレンジアミン(PEEDA)、またはそれらの直鎖状尿素化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の化合物が、モノエタノールアミン(MEA)、もしくはアミノエチルエタノールアミン(AEEA)、またはそれらの環状もしくは直鎖状カルバメートもしくは尿素化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体が、液体の総重量に対して、少なくとも75重量%の水を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の化合物1モルに対する水のモル比が、0.2より大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の化合物1モルに対する水のモル比が、0.5より大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の化合物1モルに対する水のモル比が、1より大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミン官能性化合物1モルに対する第一の化合物のモル比が、少なくとも0.7である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第二の化合物1モルに対する酸化炭素誘導剤のモル比が、少なくとも0.2である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第一の化合物と第二の化合物のモル比が、0.8:1から5:1の間であり、酸化炭素誘導剤と第二の化合物のモル比が、0.5:1から20:1の間である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第一の化合物と第二の化合物のモル比が、0.7:1から2:1の間であり、酸化炭素誘導剤と第二の化合物のモル比が、0.7:1から3:1の間である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の化合物および前記酸化炭素誘導剤が、カルバメート付加物を用いて、少なくとも部分的に1つの化合物として添加される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の化合物が、モノエタノールアミン(MEA)、MEAの環状カルバメート(CMEA)またはそれらの混合物であり、
前記第二の化合物が、PIP、または、PIP、エチレンジアミン(EDA)およびEDAの環状尿素(EU)の混合物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
EDA+EU+PIPの1モルに対するMEA+CMEAのモル比が、2より大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
EDA+EU+PIP1モルに対するMEA+CMEAのモル比が3より大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法により得られたエチレン尿素化合物をそれらの対応するエチレンアミンへ転換するステップが行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化炭素誘導剤の存在下でエタノールアミン官能性化合物をアミン官能性化合物と反応させることによって、ピペラジン単位含有高級エチレンアミン(EA)、すなわちエチレン単位およびアミン基ならびに少なくとも1つのピペラジン単位
【0002】
【化1】
を含有するエチレンアミンおよび尿素誘導体のようなその誘導体(または前駆体)を作製するための方法であって、ここで、「高級」は、アミンが少なくとも3つのエチレン単位を含有することを表し、少なくとも1つの反応物は、ピペラジン単位を含有する、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エチレンアミンは、エチレン単位によって連結された2つ以上の窒素原子からなる。エチレンアミンは、直鎖の形態H
2N(−C
2H
4NH)
p−Hで存在することができる。p=1、2、3、4、…の場合、これらは、EDA、DETA、L−TETA、L−TEPA、…と表される。
【0004】
3つ以上のエチレン単位の場合、N(CH
2CH
2NH
2)
3、TAEAなどの分岐状エチレンアミンを形成することも可能である。2つのエチレン単位によって連結される2つの隣接する窒素原子は、ピペラジン環
【0005】
【化2】
と呼ばれる。ピペラジン環は、より長鎖で存在して、対応する環状エチレンアミンを生じることができる。
【0006】
1つのエチレン単位によって連結される2つの隣接する窒素原子および1つのカルボニル部分は、環状エチレン尿素(EU)を形成する。2つの窒素原子がカルボニル部分
【0007】
【化3】
によって分子内連結されているエチレンアミン(EA)は、ここでUEAと称される。カルボニル部分を2つの水素原子で置換すると、対応するエチレンアミンが生じる。例えば:EU⇔EDA、UDETA⇔DETA、UAEEA⇔AEEA、UTETA⇔L−TETA、UTEPA⇔L−TEPA。高級アミンの一部は、1つ超のカルボニル部分を受容することができ、例えばL−TETAのジウレアであるDUTETAが挙げられる。カルボニル部分は、独立する2つの分子上の窒素原子を連結してもよく、直鎖状ウレアを生じる。例えばH
2NC
2H
4NH−CO−NHC
2H
4NH
2は、カルボニル部分を2つの水素原子で置換すると、2つのEDAを生じる。
【0008】
エチレンアミンおよびエチレン尿素中の各アミン官能基は、一級、二級または三級であり得る。さらに二級アミンは、直鎖状(直鎖状二級アミン、LSA)または環状(環状二級アミン、CSA)であり得る。
【0009】
任意のブレンステッド酸(例えば水など)の存在下で、エチレンアミン(EA)は、プロトン化(EAH
+)され得る。別段の記載がない限り、本文献におけるアミンという用語は、プロトン化形態および非プロトン化形態の両方を含む。
【0010】
いくつかのエチレンアミンおよびその尿素誘導体が、例示として下記に示す。これは、とりわけペンタアミン、ヘキサミンなどを含むように、当然拡張することができる。
【0011】
【化4】
【0012】
分子の命名に関し、EDAはエチレンジアミンを、DETAはジエチレントリアミンを、TETAはトリエチレンテトラミンを、TEPAはテトラエチレンペンタミンを、PEHAはペンタエチレンヘキサミンを表す。分子中に1つの環状尿素がある場合、これは、Uを名称の前に加えることによって表示され、すなわち、UTETAは、TETAの環状尿素を意味し、一方、分子中に2つの環状尿素がある場合、これは、DUで表示され、すなわち、DUTETAは、TETAの内部環状ジウレアを意味する。Uに対し示されている数がある場合、これは、U基が位置するアミノ基を意味する。この命名には、例外が1つあり、それは、UEDAに代わってエチレン尿素を表す略語EUが使用されることである。さらに、TAEAは、トリスアミノエチルアミンを表し、PIPは、ピペラジンを表し、AEPは、アミノエチルピペラジンを、DAEPは、ジアミノエチルピペラジンを表し、PEPは、ピペラジノエチルピペラジンを表し、PEEDAは、ピペラジノエチルエチレンジアミンを、PEAEPは、ピペラジノエチルアミノエチルピペラジンを表す。
【0013】
エチレンアミンは、現在、2つの主流な経路によって製造される。2つの経路は、MEAの還元的アミノ化およびEDC経路である。
【0014】
MEAの還元的アミノ化は、過剰なアンモニア中で、水素化/脱水素化触媒の存在下で進行する。EDAを生じるMEAの還元的アミノ化に次いで、アミノ基転移を含むいくつかの副反応によって、多数のエチレンとエタノールアミンの混合物が生成される。産出物の大部分を、モノおよびジエチレン生成物(EDA、DETA、PIPおよびAEEA)が占める。高級エチレンおよびエタノールアミンも形成されるが、混合物は複雑であり、高収率の特定分子を、高い選択性で得る効果がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在は、高級エチレンアミンに対する高い需要が存在し、したがって、特定のエチレンアミンを、改善された収率で、選択的に作製するための方法が必要とされる。特に、良好な収率および選択性で、環状二級アミンを一級アミン含有鎖で置換する方法が必要とされる。さらに、大量の廃棄物塩が同時に生成しない、置換ピペラジンを作製するための方法が必要とされる。
【0016】
米国特許第5,262,534号明細書は、ピペラジンを、モノエタノールアミンのカルバメートであるオキサゾリジノンと反応させる方法を開示し、したがって、1つの化合物中に存在するアルカノールアミンおよびカルボニル誘導剤と、ピペラジンとの反応を開示する。最良の実施例において得られる収率は、モノアミノエチルピペラジンが27.48面積%、ジアミノエチルピペラジンが5.81面積%である。反応は、無溶媒設定で行われる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、本発明は、酸化炭素誘導剤の存在下でエタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物を反応させることによって、式NH
2−(C
2H
4−NH−)
pH(式中、pは、少なくとも2であり、1つまたは複数の−NH−C
2H
4−NH−単位は、ピペラジン単位
【0018】
【化5】
として存在し、ここで、任意選択的に1つまたは複数の−NH−C
2H
4−NH−単位は、環状エチレン尿素単位
【0019】
【化6】
として存在するか、または2つの−NH−C
2H
4−NH−単位の間にカルボニル部分
【0020】
【化7】
が存在する)
のエチレンアミンまたはその前駆体を調製する方法であって、反応は、水を含む液体中で行われる、方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
記載される液体中で反応を行うと、収率および選択性の両方が向上し得ることが見出された。エタノールアミン官能性化合物、アミン官能性化合物または酸化炭素誘導剤のうちの1つまたは複数が、当該反応条件の液体であっても、それらは、本方法が行われる上記の液体の一部であると考えられない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好ましい実施形態において、液体は、少なくとも50重量%の水、最大で100重量%の水を含有し、ここで、より好ましくは、最大で50重量%の残余は、本発明の方法において使用される条件で水と均一に混ざり合う極性液体である。さらにより好ましくは、液体は、液体の総重量に対して、少なくとも75重量%の水を、さらにより好ましくは、少なくとも90重量%を、最も好ましくは、少なくとも95重量%の水を含有する。
【0023】
他の好ましい実施形態において、水とアミン官能性化合物の間のモル比は、0.2より大きく、好ましくは、0.5より大きく、最も好ましくは、1より大きい。好ましい実施形態において、比は、200より小さい。
【0024】
アミン官能性化合物は、1つまたは複数のアミン基、好ましくは少なくとも2つのアミン基を含有し、アルコール基を含有しない化合物である。
【0025】
エタノールアミン官能性化合物は、エチレンを介してアミノ基に連結されるヒドロキシ基を1つ含有する化合物であり、任意選択的にそのカルバメート均等物または環状カルバメート均等物として存在してもよい。
【0026】
アミン官能性化合物およびエタノールアミン官能性化合物の少なくとも1つは、1つまたは複数のピペラジン単位
【0028】
本方法における好ましい実施形態において、エタノールアミン官能性化合物は、式HO−(C
2H
4−NH−)
qH(式中、qは少なくとも1である)のものであり、アミン官能性化合物は、式NH
2−(C
2H
4−NH−)
rH(式中、rは少なくとも1である)のものであり、ここで、qまたはr単位の少なくとも1つは、ピペラジン単位として存在し、任意選択的に1つまたは複数のqまたはr単位は、環状エチレン尿素、環状エチレンカルバメートまたはさらなるピペラジン単位として存在してもよい。
【0029】
さらにより好ましい実施形態において、ピペラジン単位は、アミン官能性化合物中に存在する。
【0030】
より好ましくは、アミン官能性化合物は、少なくとも1つの環状二級アミン基、および任意選択的に一級、二級および/または三級アミンであり得る追加のアミン基を含有し、ここで、化合物中のアミン基は、エチレン基を介して、任意選択的に一部はカルボニル基、および/または追加のエチレン基によって、互いに連結される(アミン官能性化合物中に、ピペラジンまたは尿素単位を生じる)。
【0031】
アミン官能性化合物として、ピペラジン、ピペラジンエチレンピペラジン(PEP)、および以下に示されるアミン官能性化合物がさらにより好ましく、ここで、nは0以上、mは1以上、pは1以上、かつoは1以上である。
【0033】
アミン官能性化合物は、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)、ジアミノエチルピペラジン(DAEP)、ピペラジノエチルエチレンジアミン(PEEDA)またはそれらの直鎖状尿素を含むことが最も好ましい。
【0034】
一般的に、エタノールアミン官能性化合物は、以下の式で表される。
【0035】
【化10】
式中、Rは実施形態において、不飽和部分ならびに酸素および窒素などのヘテロ原子も含有し得る置換または無置換のアルキル基である。
【0036】
エタノールアミン官能性化合物の例として、
【0038】
命名法について、MEAは、モノエタノールアミンを表し、AEEAは、アミノエチルエタノールアミン(ヒドロキシエチルエチレンアミンとも称される)を表し、HE−DETAは、ヒドロキシエチルジエチレントリアミンを表し、その先は、HE−TETAは、ヒドロキシエチルトリエチレンテトラミンなどと続く。PE−MEAは、ピペラジノエチルモノエタノールアミンを表す。文字Cを用いることで、環状カルバメート環が分子内に存在することを示す。
【0039】
エタノールアミン官能性化合物は、好ましくはモノエタノールアミン(MEA)もしくはアミノエチルエタノールアミン(AEEA)またはそれらの環状もしくは直鎖状カルバメートもしくは尿素である。
【0040】
酸化炭素誘導剤は、エタノールアミン官能性化合物に転移し、CMEA(2−オキサゾリジノン)などの環状カルバメートの形成をもたらすことができるか、またはエチレンアミン(EA)に転移し、対応する環状エチレン尿素(UEA)の形成をもたらすことができるカルボニル部分を含有する化合物である。環状化合物とは別に、直鎖状カルバメートおよび尿素が形成してもよい。
【0041】
本発明の範囲内の酸化炭素誘導剤として、二酸化炭素、およびカルボニル部分が前述のように転移されるよう利用可能な有機化合物が挙げられる。カルボニル部分が利用可能な有機化合物として、尿素およびその誘導体、直鎖状および環状アルキレン尿素、特に環状尿素、一置換または二置換アルキレン尿素、アルキルおよびジアルキル尿素、直鎖状および環状カルバメート、有機カーボネートおよびそれらの誘導体または前駆体が挙げられる。
【0042】
そのような誘導体または前駆体として、例えば、炭酸塩または重炭酸塩、カルバミン酸および会合塩などのイオン性化合物を挙げることができ、本発明の方法におけるいくつかの実施形態において、イオン性化合物は、それらの非イオン性対応物、例えば直鎖状および環状カルバメートまたは尿素化合物に、変換され得る。本発明においてそのようなイオン性化合物を使用する場合、イオン性化合物は、有機炭化水素系の炭酸塩、重炭酸塩またはカルバミン酸塩である。好ましくは、CO誘導剤は、CO2または酸化炭素誘導剤としての使用に適切な有機化合物であり、ここでアルキレンは、エチレン、または尿素または炭酸エチレンであり、より好ましくは、酸化炭素誘導剤は、二酸化炭素または尿素として少なくとも部分的に添加される。本方法において、酸化炭素誘導剤は、前述の尿素またはカルバメート化合物を用いることによって、アミン官能性化合物またはエタノールアミン官能性化合物と同一の分子内に存在し得る。
【0045】
上記の図においても、CAEEAはアミノエチルエタノールアミンのカルバメートを表し、UDETAはジエチレントリアミンの尿素を、DAEUはジアミノエチル尿素を表し、AE AEカルバメートはアミノエチルアミノエタノールカルバメートを表し、CHE−DETAはヒドロキシエチルジエチレントリアミンのカルバメートを表し、U1TETAは、トリエチレンテトラミンの末端尿素を表し、およびDUTETAはトリエチレンテトラミンの1,3−ジウレアを表す。
【0046】
酸化炭素誘導剤は、二酸化炭素、エタノールアミン官能性化合物のカルバメート誘導体もしくはアミン官能性化合物の尿素誘導体の形態、またはそれらの組み合わせで反応へ添加されることが最も好ましい。
【0047】
アミン官能性化合物に対し少なくとも0.7モル当量のエタノールアミン官能性化合物、およびアミン官能性化合物に対し少なくとも0.05モル当量の酸化炭素誘導剤を使用する好ましい実施形態において、特定の高級エチレンアミンに向かう反応の選択性はさらに高められ得る。
【0048】
他の好ましい実施形態において、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比は、少なくとも0.2:1であり、さらにより好ましくは、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比は、0.5:1から20:1の間である。
【0049】
より好ましくは、エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物のモル比は、0.8から5:1の間であり、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比は、0.5:1から20:1の間であり、さらにより好ましくは、エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物のモル比は、0.7:1から2:1の間であり、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比は、0.7:1から3:1の間である。
【0050】
さらに別の好ましい実施形態において、ピペラジンは、二置換ピペラジンを生じるよう反応することができる。そのとき、ピペラジンの各当量がそれぞれ2当量のエタノールアミン官能性化合物と反応し得るため、エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物ピペラジンのモル比は、2:1と等しいか、またはさらにより好ましくは2:1より大きい必要があると理解されるべきである。
【0051】
分子から遊離してエタノールアミン官能性化合物へ転移し得る1つ超のカルボニル部分を含有する化合物が存在することに留意すべきである。そのような化合物についてモル比を決定する場合、当該化合物から遊離し、エタノールアミン官能性化合物へ転移し得るか、そうでなければ本発明の方法に寄与し得る酸化炭素のモル量を調整する必要がある。
【0052】
アミン官能性化合物に対する酸化炭素誘導剤の適切なモル量を選択することで、本発明の方法における選択性および収率がさらに向上することが見出された。
【0053】
アミン官能性化合物に対する酸化炭素誘導剤のモル量は、反応物質の用いられる投与レジームにかかわらず、方法における反応物質によって決定される。
【0054】
反応混合物は、反応物質としてエタノールアミン官能性化合物、アミン官能性化合物および酸化炭素誘導剤を含有することを特徴とし、下記の非限定的なスキームによって概略的に表すことができる。
【0055】
スキーム1:アミン官能性化合物は、環状二級アミンである。
【0057】
カルボニル源、エタノールアミン官能性化合物およびアミン官能性化合物の混合物を加熱する際、いくつかの反応が同時に起きる。
【0058】
理論に拘束されることなく、これは、それぞれ複数のサブステップから構成される2つの主な反応ステップ:1)オキサゾリジノン(B)が中間体であると考えられる、カルボニル基によるアルコール官能基(A)の活性化と、2)鎖が延長された一次付加生成物(D)を生じる、活性化アルコール官能基のアミン(C)による置換とに要約される。アンモニアの存在下で、鎖延長をもたらさない、アミン官能基へのアルコール官能基の転換も起こり得る。任意選択的に、CO基は除去されて、エチレンアミン(E)の形成をもたら得る。
【0059】
したがって、得られた生成物組成物がエチレン尿素化合物を含有する本発明の方法の実施形態において、例えば得られたエチレン尿素化合物を加水分解することによって、得られたエチレン尿素化合物をそれらの対応するエチレンアミンへ転換する次のステップが行われる。
【0060】
エタノールアミン、三級以外のアミンおよび酸化炭素誘導剤の適切な混合物を、比較的高温まで加熱することで、高級アミン、および酸化炭素誘導剤として働くことができるそのCO含有誘導体を製造する方法が提供される。
【0061】
他の好ましい実施形態において、エタノールアミン官能性化合物および酸化炭素誘導剤は、カルバメート付加物および/またはアミン官能性化合物を用いて、少なくとも部分的に1つの化合物として添加され、酸化炭素誘導剤は、尿素付加物を用いて、少なくとも部分的に1つの化合物として添加される。
【0062】
好ましい実施形態において、反応物は、アミン官能性化合物であるピペラジン(PIP)、および/またはモノもしくはジアミノエチル置換ピペラジン(AEPまたはDAEP)ならびにエタノールアミン官能性化合物であるモノエタノールアミン(MEA)および/またはアミノエチルエタノールアミン(AEEA)であり、任意選択的に、これらの化合物の1つまたは複数は、カルバメートまたは尿素誘導体として存在してもよい。
【0063】
より好ましい実施形態において、エタノールアミン官能性化合物は、MEA、CMEAまたはそれらの混合物であり、アミン官能性化合物は、ピペラジン(PIP)、またはEDA、EUおよびPIPの混合物である。
【0064】
(MEA+CMEAとPIPの比)の比は、2より大きいことがさらにより好ましく、3より大きいことがさらにより好ましい。
【0065】
本発明の方法の一実施形態において、得られる可能性のある環状エチレン尿素を、その対応するエチレンアミンへ転換する次のステップが行われるが、多くの実施形態において、生成物は、環状二級アミン官能基上に形成できない環状エチレン尿素でないため、このステップは不要である。
【0066】
生成物混合物は、それぞれ独立して純粋な化合物または化合物の混合物の何れかであり、その一部が再利用されてもよい、いくつかの生成物にさらに処理され、または分画され得る。
【0067】
本発明の方法は、アルコールまたは水などの極性液体である液体で実施される。本発明の方法を、液体として水の存在下で行うか、または追加の液体なしに行うことが好ましい。
【0068】
使用される反応器は、連続撹拌槽型反応器、パイプライン反応器、管型反応器、多管型反応器を含む、あらゆる適切な反応器であり得る。反応器は、断熱的であってもよく、または外部もしくは内部加熱装置を備えてもよい。供給は、一点であってもよく、または複数点に分けられてもよい。反応器は、段間で熱交換を行う多段からなり得る。
【0069】
本方法は、好ましくは少なくとも100℃の温度で行われる。温度は、好ましくは400℃未満であるべきである。より好ましくは、温度は、120から320℃の間である。さらにより好ましくは、温度は、150から280℃の間である。最も好ましくは、温度は、190から230℃の間である。
【0070】
エタノールアミン官能性化合物がモノエタノールアミンである実施形態において、温度は、少なくとも100℃である。温度は、好ましくは300℃未満である必要がある。より好ましくは、温度は、120から280℃の間である。さらにより好ましくは、温度は、140から220℃の間である。最も好ましくは、温度は、160から200℃の間である。
【0071】
一実施形態において、本方法における反応時間は、5分から10時間の間、好ましくは0.5から6時間の間、より好ましくは、1から4時間の間である。
【0072】
本方法は、1つまたは複数の回分反応器内で、場合により供給回分操作で、ならびに/または1つの反応器内における連続操作システムで、もしくは連続フロー反応器のカスケードで、任意選択的に複数の供給点を用いて行われ得る。反応および分離は、個別のステップで、または少なくとも部分的に同時に行われ得る。反応および分離は、間に分離ステップを介する複数の反応ステップを含むことができる。
【0073】
化学物質の大量生産において、連続プロセスを使用することが好ましい。連続プロセスは、例えば、シングルパスまたはリサイクルプロセスであってもよい。シングルパスプロセスにおいて、試薬の1つまたは複数は、プロセス装置を1回通過し、次いで、結果として得られる反応器からの流出物は、精製またはさらなる処理のために送られる。
【0074】
当業者は、全体の収率、エネルギー消費および廃棄物産出量を決定することによって、適切な反応器および分離ユニットスキームを選択することができる。
【実施例】
【0075】
比較例A(米国特許第5,262,534号明細書/実施例1に基づく):
25.48g(1.18モル)のPIPおよび21.78g(1モル)のCMEAを、撹拌および内部温度モニターを備える300mLのオートクレーブに入れた。反応を、200℃で2時間行った。結果として得られた反応混合物を、GC−FID(炎イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフィー)を用いて分析した。GCの結果は、面積%として報告される。
【0076】
実施例1〜9(PIP+CMEAの反応について、30分後の生成物の収率に対する水の影響):
比較例Aと同様のPIPとCMEAのモル比1.18:1で、PIPおよびCMEAを、各種量の水(PIPの量に対し、0.25から24モル当量の水)と共に、撹拌および内部温度モニターを備える300mLのオートクレーブに入れた。次いで反応を、200℃で30分間行った。結果として得られた反応混合物を、GC−FIDを用いて分析した。GCの結果は、面積%として下記表1に報告される。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例1〜9は、0.2モル当量を超える量の水を添加することにより、水を用いない反応(例A)と比較し、形成される他の生成物の量を増加させることなく、PIPからAEPおよびDAEPへの転換が向上することを明らかに示す。
【0079】
実施例10〜15(PIP+CMEAの200℃における反応について、生成物の収率に対する水および反応時間の影響):
200℃における反応時間を30〜150分で変化させた以外は、実施例1〜9について記載されたものと同じ実験設定を用いた。反応は、水を添加しないか、またはPIPのモル量に対し0.5モル当量の水を用いて行われた。結果として得られた反応混合物を、GC−FIDを用いて分析した。GCの結果は、面積%として下記表2に報告される。
【0080】
【表2】
【0081】
PIP1モル当たり0.5モルの水を添加することにより、水を用いない反応と比較し、形成される他の生成物の量を増加させることなく、より高いAEPおよびDAEPの収率がもたらされることが示された。
【0082】
実施例16〜21(PIP+CMEAの反応について、反応時間2時間後の生成物の収率に対する水および反応温度の影響):
反応温度を120〜200℃で変化させた以外は、実施例1〜9について記載されたものと同じ実験設定を用いた。反応は、水を添加しないか、またはPIPの量に対し4.8モル当量の水を用いて行われた。反応時間は、一定の2時間とした。結果として得られた反応混合物を、GC−FIDを用いて分析した。GCの結果は、面積%として下記表3に報告される。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例10〜15と一致し、同じ反応温度において、水を添加することにより、AEPおよびDAEPの収率の上昇がもたらされ、これは、水を用いない反応と比較し、形成される他の生成物の量を増加させることなく、より低い反応温度で同等のAEPおよびDAEPの収率を得ることができることも意味する。
【0085】
実施例22〜25(AEP+CMEAの反応について、生成物の収率に対する水の影響):
1モルのAEPおよび1モルのCMEAを、水を添加しないか、またはAEPの量に対し0.5、1、または2モル当量の水を用いて、200℃で1時間反応させた以外は、実施例1〜9について記載されたものと同じ実験設定を用いた。結果として得られた反応混合物を、GC−FIDを用いて分析した。GCの結果は、面積%として下記表4に報告される。
【0086】
【表4】
【0087】
結果は、AEPを出発材料として使用する場合も、水を添加することによる生成物の収率に対する良い効果が認められることを示す。
【0088】
実施例26〜27(PIP+UAEEAの反応に対する水の影響)
水を添加しないか、またはPIPの量に対し2.5モル当量の水を用いて、200℃で30分間、1モルのPIPを1モルのUAEEAと反応させた以外は、実施例1〜9について記載されたものと同じ実験設定を用いた。結果として得られた反応混合物を、GC−FIDを用いて分析した。GCの結果は、面積%として下記表5に報告される。
【0089】
【表5】
【0090】
PIPおよびUAEEAに水を添加することにより、PIPの転換が向上し、より高いPEEDAおよびUPEEDAの収率がもたらされる。
本願発明には以下の態様が含まれる。
[1]
酸化炭素誘導剤の存在下でエタノールアミン官能性化合物、アミン官能性化合物を反応させることによって、式NH2−(C2H4−NH−)pH(式中、pは少なくとも2であり、1つまたは複数の−NH−C2H4−NH−単位はピペラジン単位
【化14】
として存在し、ここで、任意選択的に1つまたは複数の−NH−C2H4−NH−単位は、環状エチレン尿素単位
【化15】
として存在するか、または2つの−NH−C2H4−NH−単位の間にカルボニル部分が存在する)
のエチレンアミンまたはその前駆体を調製する方法であって、
前記アミン官能性化合物または前記エタノールアミン官能性化合物の少なくとも1つが、ピペラジン単位を含有し、前記反応が水を含む液体中で行われる、方法。
[2]
前記アミン官能性化合物が、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)、もしくはジアミノエチルピペラジン(DAEP)、ピペラジノエチルエチレンジアミン(PEEDA)、またはそれらの直鎖状尿素誘導体である、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記エタノールアミン官能性化合物が、モノエタノールアミン(MEA)もしくはアミノエチルエタノールアミン(AEEA)またはそれらの環状もしくは直鎖状カルバメートもしくは尿素誘導体である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記液体が、液体の総重量に対して、少なくとも75重量%の水を含む、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]
水と前記アミン官能性化合物のモル比が、0.2:1より大きく、好ましくは0.5:1より大きく、最も好ましくは1:1より大きい、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]
エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物のモル比が、少なくとも0.7:1である、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]
酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比が、少なくとも0.2:1である、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物のモル比が、0.8から5:1の間であり、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比が、0.5:1から20:1の間である、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]
エタノールアミン官能性化合物とアミン官能性化合物のモル比が、0.7:1から2:1の間であり、酸化炭素誘導剤とアミン官能性化合物のモル比が、0.7:1から3:1の間である、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記エタノールアミン官能性化合物および前記酸化炭素誘導剤が、カルバメート付加物を用いて、少なくとも部分的に1つの化合物として添加される、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記エタノールアミン官能性化合物が、モノエタノールアミン(MEA)、MEAの環状カルバメート(CMEA)またはそれらの混合物であり、
前記アミン官能性化合物が、PIP、または、PIP、エチレンジアミン(EDA)およびEDAの環状尿素(EU)の混合物である、上記[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]
MEA+CMEAとEDA+EU+PIPのモル比が、2より大きい、好ましくは3より大きい、上記[11]に記載の方法。
[13]
次に、得られたエチレン尿素化合物をそれらの対応するエチレンアミンへ転換するステップが行われる、上記[1]から[12]のいずれか一項に記載の方法。