(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671492
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】内燃機関の作動方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/16 20160101AFI20200316BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20200316BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20200316BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
B60W20/16
F02D29/02 ZZHV
B60W10/06 900
F01P7/16 503
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-541486(P2018-541486)
(86)(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公表番号】特表2018-538201(P2018-538201A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2015075715
(87)【国際公開番号】WO2017076444
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,ペール
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−317656(JP,A)
【文献】
特開2010−089718(JP,A)
【文献】
特開2007−118809(JP,A)
【文献】
特開2001−152851(JP,A)
【文献】
特開2004−204740(JP,A)
【文献】
特開2003−102106(JP,A)
【文献】
再公表特許第2013/128552(JP,A1)
【文献】
再公表特許第2012/117554(JP,A1)
【文献】
特開2007−239640(JP,A)
【文献】
特開2008−274885(JP,A)
【文献】
特開昭57−168017(JP,A)
【文献】
特開2006−103537(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0333863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 50/16
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60L 50/00 − 58/40
F02D 29/00 − 29/06
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
B65F 3/00 − 3/28
B60K 23/00 − 23/08
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
F01L 1/34 − 1/356
F01L 9/00 − 9/04
F01L 13/00 − 13/08
F02B 47/00 − 47/06
F02B 49/00
F02M 25/00 − 25/04
F02M 25/08 − 25/14
F02D 13/00 − 28/00
F01N 3/01
F01N 3/02 − 3/038
F01N 3/00
F01N 3/04 − 3/38
F01N 9/00 − 11/00
H02M 7/42 − 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(204)と、
前記燃焼室(204)の近傍に配置された液体冷却通路(206)を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路(200)と、
前記冷却回路(200)に配置され、前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブ(210)と、
を備えた内燃機関(ICE)を作動させる方法であって、
前記内燃機関の作動状態を判定するステップ(S1)と、
前記内燃機関の作動状態に基づいて前記第1のバルブ(210)を制御するステップ(S4)と、
を含み、
前記内燃機関がいつ停止される予定であるかの予測によって前記内燃機関の次回の非作動状態が示されると、前記第1のバルブ(210)を少なくとも部分的に閉弁状態に制御して、前記内燃機関が停止される予定前の所定期間に前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を減少させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記燃焼室(204)の温度を判定するステップ(S2)と、
前記燃焼室(204)の温度を所定の閾値と比較するステップ(S3)と、
をさらに含み、
前記燃焼室(204)の温度が前記所定の閾値未満であれば、前記第1のバルブ(210)を少なくとも部分的に閉弁状態に制御する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内燃機関は、エネルギー貯蔵装置を充電するように構成された発電機を作動させるように構成され、
前記内燃機関の非作動の兆候は、前記エネルギー貯蔵装置の充電状態に基づく、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内燃機関が非作動状態にある予測期間を判定するステップと、
前記予測期間に基づいて前記第1のバルブ(210)の開度を制御するステップと、
をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
燃焼室(204)と、
前記燃焼室(204)の近傍に配置された液体冷却通路(206)を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路(200)と、
前記冷却回路(200)に配置され、前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブ(210)と、
を備えた内燃機関(ICE)であって、
前記内燃機関がいつ停止される予定であるかの予測に基づいて、前記内燃機関の次回の非作動の兆候を受信すると、前記第1のバルブ(210)が、少なくとも部分的に閉弁状態に制御されて、前記内燃機関が停止される予定前の所定期間に前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を減少させるように構成された、
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
前記第1のバルブ(210)の作動は、さらに、前記燃焼室(204)の温度に依存する、
請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記内燃機関は、エネルギー貯蔵装置を充電するように構成された発電機を作動するように構成され、
前記内燃機関の非作動の兆候は、前記エネルギー貯蔵装置の充電状態に基づく、
請求項5に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記第1のバルブ(210)は、前記冷却回路(200)に設けられたサーモスタットに含まれる、
請求項5〜7のいずれか1つに記載の内燃機関。
【請求項9】
前記第1のバルブ(210)は、電気的に制御可能なバルブである、
請求項5〜8のいずれか1つに記載の内燃機関。
【請求項10】
前記第1のバルブ(210)の開度は、前記内燃機関の非作動の予測期間に依存する、
請求項5〜9のいずれか1つに記載の内燃機関。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1つに記載の内燃機関を備えた動力システム。
【請求項12】
電気モータと、
前記内燃機関及び前記電動モータを制御して選択的に作動させるように構成された制御ユニット(212)と、
をさらに備えた、請求項11に記載の動力システム。
【請求項13】
前記動力システムは、車両(100,100’)である、
請求項11又は12に記載の動力システム。
【請求項14】
燃焼室(204)と、
前記燃焼室(204)の近傍に配置された液体冷却通路(206)を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路(200)と、
前記冷却回路(200)に配置され、前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブ(210)と、
を備えた内燃機関(ICE)を作動させるコンピュータプログラム手段が格納された、コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記内燃機関の作動状態を判定するコードと、
前記内燃機関の作動状態に基づいて前記第1のバルブ(210)を制御するコードと、
を含み、
前記内燃機関がいつ停止される予定であるかの予測によって前記内燃機関の次回の非作動状態が示されると、前記第1のバルブ(210)を少なくとも部分的に閉弁状態に制御して、前記内燃機関が停止される予定前の所定期間に前記液体冷却通路(206)を通って流れる前記クーラントの流量を減少させる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に車両に搭載された内燃機関(ICE)の作動方法に関する。本発明はまた、対応する内燃機関及びこれに関連したコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関(ICE)を作動させるとき、相当量の熱量が発生する。この熱量を効率よく放散して、内燃機関へのダメージを防止しなければならない。これは、一般的に、クーラントベースの冷却回路によって成し遂げられ、その冷却回路には、配管を通ってクーラントをラジエータに循環させるポンプが配設されている。空気が配管を介してクーラントを冷却し、その後、クーラントは、内燃機関の燃焼室を含む内燃機関の様々なコンポーネントを通って圧送され、これによって内燃機関を冷却する。
【0003】
内燃機関のコールドスタート段階では、一般的に、内燃機関の燃焼室温度を急速に上昇させて理想的な作動温度範囲内にすることで、燃料消費及びエミッション放出を低減することが望ましい。これは、コールドスタート段階において、冷却回路に配置されたサーモスタットなどの温度制御弁を使用することによって、クーラントの流量を抑制して達成される。流量抑制中、温度制御弁は、少なくとも部分的に閉弁状態となる。いったん燃焼室温度が上昇して所定の閾値に達すると、温度制御弁が開弁状態となり、クーラントが冷却回路を通って自由に流れることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新しい車両タイプ及び車両の制御方法の進歩により、上述したタイプの温度ベースの内燃機関の冷却制御が逆効果となるシナリオが存在する。具体的には、そのような冷却回路を適合させて、燃料消費をさらに低減し、内燃機関によって生成されたエミッションを最小限にすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、燃焼室と、燃焼室の近傍に配置された液体冷却通路を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路と、冷却回路に配置されて、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブと、を備えた内燃機関(ICE)の作動方法によって、上記課題が少なくとも部分的に軽減される。この作動方法は、内燃機関の作動状態を判定するステップと、内燃機関の作動状態に基づいて第1のバルブを制御するステップと、を含み、内燃機関が非作動状態であれば、第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御することで、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を減少させる。
【0006】
本発明によれば、燃焼室壁が冷却するのにかかる時間が長くなるように、内燃機関の燃焼室の温度低下率を制御することが可能となる。内燃機関が非作動状態にあるときに流量抑制を行わない従来技術の解決策では、自然対流に基づく受動的な熱交換を可能にする物理的効果である、熱対流原理によってクーラントが流れ続けることができる。実際には、冷却回路に設けられたクーラントポンプが動いていないにもかかわらず、燃焼室温度が冷却回路に通常設けられたサーモスタットの所定温度を超えている限り(即ち、サーモスタットが開弁状態にある限り)、これが適用される。熱対流原理によれば、ループ内の液体が加熱されると液体の対流運動が開始され、液体が膨張して密度が低くなって、ループの底部の低温の液体より浮力がでる。対流は加熱された液体をシステムの上方へと移動させ、重力によって戻される冷たい液体で同時に入れ替えられる。一般的な冷却システムでは、クーラントは冷却システムに設けられたラジエータ内で冷却され(大気にさらされたとき)、内燃機関が停止又は非作動状態であってもクーラントが循環し続ける。
【0007】
本発明の思想は、従来技術の解決策と比較して、内燃機関の非作動中に第1のバルブを制御することによってより長い時間、燃焼室温度をより高く維持できるようにし、内燃機関が再び作動状態になったとき、燃焼室温度が燃焼室の理想的な作動温度範囲に近づくことを可能にする(従来技術の構成と比較して)。従って、内燃機関は始動からより効率的に作動することができ、できる限り(possibly)内燃機関のエネルギー消費を低下させる。例えば、内燃機関が作動状態と非作動状態との間で連続的に変化して作動する構成では、内燃機関の非作動中にも燃焼室壁の温度が「できるだけ高く」維持され、内燃機関はより迅速にその理想的な作動温度範囲に再び達することができる。
【0008】
本発明の考えられうる構成では、微粒子排出を低減する選択接触還元(SCR)ユニットが内燃機関に備えられ、SCRは十分に作動するために比較的高い作動温度に維持される必要がある。上述したように対応する方法では、内燃機関が再び作動状態になると、SCRは燃焼室の比較的高い温度の恩恵を受けるであろう。従って、本発明の思想は、SCRをより迅速にその作動温度に達することを可能にし、これによって、排気エミッション(例えば、NOx)のさらなる低減を可能にする。
【0009】
また、燃焼室温度を比較的高く維持することができるので、本発明の思想は、内燃機関が再び作動状態になると、燃焼室温度を上昇させる電気予熱手段を使用する必要性を排除することができる。当技術分野で知られているように、例えば、燃料ベースの解決策を含む、他の方法を予熱に適用してもよいことを理解すべきである。
【0010】
第1のバルブは、できる限り冷却回路に設けられたサーモスタットに含まれる、電気的に制御可能なバルブであってもよい。また、本発明の範囲内で、すでに利用可能な従来技術のサーモスタットに加えて(例えば、アップグレード手順として)、第1のバルブを追加コンポーネントとして設けることも可能である。代替案としての第1のバルブは、空気圧式又は油圧式と同様に制御されてもよいことに留意すべきである。
【0011】
好ましい実施形態によれば、この方法は、内燃機関の次回(upcoming)の非作動の兆候(indication)を受信するステップと、内燃機関の次回の非作動前の期間に第1のバルブを制御して少なくとも部分的に閉弁状態にするステップと、を更に含んでいる。例えば、内燃機関は、バッテリなどのエネルギー貯蔵装置を充電するために設けられた発電機を作動させるように構成されてもよい。そのような構成では、所望の充電レベルと比較して、現在のバッテリの充電状態SoCを使用して、内燃機関がいつ停止される予定であるか、即ち、充電状態SoCが所望の充電レベルに達することを判定又は予測することができる。他の実施例では、内燃機関の作動は、例えば、以下でさらに説明するハイブリッド構成において、「事前に計画された」ものであってもよい。
【0012】
燃焼室壁の温度は、内燃機関を停止する前に第1のバルブを閉弁した結果として、できる限り理想的な作動温度範囲を上回って上昇する。しかしながら、これはまた、内燃機関が非作動状態になると、より高温な始動温度を与えるであろう。これによって、ある時間後に内燃機関が再び始動すると、燃焼室壁の温度がさらにわずかに高くなり、理想的な作動温度範囲に再び達するのにかかる時間をさらに短縮する。
【0013】
本発明の考えられうる実施形態では、この方法はまた、燃焼室の温度を判定するステップと、燃焼室の温度を所定の閾値と比較するステップと、を含み、燃焼室の温度が所定の閾値未満であれば、第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御する。従って、温度が「高すぎる」と判定された場合、温度が所定の閾値未満になるまで、流量抑制をわずかに延期することができる。第1のバルブを制御するこの条件は、内燃機関のオーバヒートのリスクを低減するので有利である。
【0014】
第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御する合計期間は、内燃機関が非作動状態にある予想期間に依存することができる。例えば、非作動状態の予測期間が所定期間より長ければ、その予測期間の終わりでの燃焼室壁の温度が大気温度に近いと判定されて、その代わりに、内燃機関の非作動中にも第1のバルブが開弁状態に維持されるという利点がある。また、内燃機関の非作動の予測期間は、その代わりに、第1のバルブが少なくとも部分的に閉弁されなければならない、内燃機関の非作動前のどのくらい早くかの判定に使用してもよい。
【0015】
本発明の他の態様によれば、燃焼室と、燃焼室の近傍に配置された液体冷却通路を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路と、冷却回路に配置されて、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブと、を備え、第1のバルブが、内燃機関が非作動である兆候に応じて、少なくとも部分的に閉弁状態に制御可能に構成された、内燃機関が提供される。本発明のこの態様は、本発明の先の態様に関して前述したのと同様の利点を提供する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、内燃機関は、例えば、車両の動力システムのコンポーネントとして設けられている。車両は、例えば、トラック又は乗用車とすることができる。しかしながら、内燃機関はまた、建設機械などに設けられていてもよい。しかしながら、内燃機関は、例えば、電力ステーション(例えば、発電所)のような固定装置に設けられていてもよい。内燃機関は、例えば、ディーゼルエンジン、オットーエンジン、それらの間のハイブリッドであってもよい。
【0017】
内燃機関はまた、ハイブリッド車両などのハイブリッドシステムのコンポーネントとして配置することができる。車両は地上車両(land based vehicle)に限定される必要はなく、本発明の範囲内で、海洋用途(例えば、ボート)も可能であることに留意されたい。
【0018】
内燃機関が車両に搭載されている場合、本発明の思想は、例えば、スタート・ストップ概念が実装されている状況に適用可能である。そのような構成では、車両が静止しているとき(例えば、赤信号のとき)、内燃機関が一般的に停止される。従って、そのような状況では、第1をバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御することで、車両停止中に燃焼室壁の温度がわずかにだけ低下することを可能にする。
【0019】
他の実施形態では、内燃機関がハイブリッド車両に搭載されている場合、内燃機関を使用して車両を推進する状態から電気モータを使用して車両を推進する状態への次回の推移が、内燃機関の次回の非作動状態の兆候の基礎を形成するすることができる。そのような推移は、例えば、ハイブリッド車両が走行している道路の地形に依存、例えば、ハイブリッド車両を推進する事前計画(pre-planning)に基づくことができる。例えば、内燃機関が登坂シナリオで車両を推進していれば、丘の頂上に達する前の所定期間、第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御することができる。上述したように、燃焼室壁の温度が、結果として、できる限り理想的な作動温度範囲を超えて上昇するかもしれない。従って、丘の頂上に達する前に第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁する正確な時間は、内燃機関が再び作動状態になったとき、内燃機関の理想的な作動温度範囲と燃焼室壁の実際の温度との偏差が最小になるように選択することができる。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、内燃機関を作動させるコンピュータプログラム手段が格納された、コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品が提供される。この内燃機関は、燃焼室と、燃焼室の近傍に配置された液体冷却通路を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路と、冷却回路に配置されて、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブと、を備え、コンピュータプログラム製品は、内燃機関の作動状態を判定するコードと、内燃機関の作動状態に基づいて第1のバルブを制御するコードと、を含み、内燃機関が非作動状態であれば、第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御することで、これによって、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を減少させる。本発明のこの態様はまた、本発明の先の態様に関して上述したのと同様な利点を提供する。
【0021】
コンピュータ可読媒体は、着脱可能な不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク(登録商標)、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリ、SDメモリカード、又は、当分野で公知の同様なコンピュータ可読媒体の1つを含む、任意タイプのメモリデバイスであってもよい。
【0022】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付図面を参照して、例として挙げられる本発明の実施形態のより詳細な説明を以下に示す。
【0024】
【
図1A】本発明の思想による適応冷却機構を備えた異なるタイプの車両を示す。
【
図1B】本発明の思想による適応冷却機構を備えた異なるタイプの車両を示す。
【
図2】本発明の思想により制御されるように構成された内燃機関の冷却回路を示す。
【
図3】異なる作動段階における内燃機関の温度を概念的に示す図である。
【
図4】本発明による方法を実行する処理ステップを概念的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の現在好ましい実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、一貫性(thoroughness)及び完全性のために提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるものである。同様な参照符号は、全体を通して同様な要素を参照する。
【0026】
ここで、図面、特に、
図1A及び1Bを参照すると、
図1Aにおいて、本発明による適応冷却機構が組み込まれている、本明細書ではトラック100として示されている例示的な車両が図示されている。もちろん、本発明の思想は、
図1Bに示すように、できる限りわずかに異なる方法で、乗用車100’に実装することもできる。
【0027】
図2に示すように、内燃機関(ICE)の冷却回路200が設けられている。冷却回路200は、クーラントを冷却回路200に循環させるクーラントポンプ202を備えている。クーラントポンプ202は、燃焼室のシリンダブロック及びシリンダヘッドを通る冷却通路206を有する内燃機関のエンジン本体204と、できる限りファンでアシストされる、クーラントによって吸収されたエンジン本体の熱を雰囲気に晒すラジエータ208と、の間に配設されている。
【0028】
冷却回路200には、図示の構成では電気的に制御可能なバルブである、第1のバルブ210が設けられている。第1のバルブ210は、内燃機関の作動状態に応じて、ラジエータ208とクーラントポンプ202とを接続する冷却通路206を調整可能に開閉するように構成されている。上述したように、第1のバルブ210は、その代わりに、例えば、空気圧式又は油圧式に制御されてもよい。これに加えて、第1のバルブ210の作動を制御するために、制御ユニット212が接続されて設けられている。さらに、エンジン本体204又はその近傍に、燃焼室の温度を測定して制御ユニット212に供給する、温度センサ214が配置されている。温度センサ214は、その代わりに(又はさらに)、クーラントの温度を測定するように構成されてもよい。第1のバルブ210は、例えば、温度センサ214によって測定された温度に応じて、0−100%の開度に調整可能に制御することができると理解されるべきである。しかしながら、例えば、内燃機関の作動に基づいて温度が判定される場合、温度は「仮想温度センサ」を使用して測定されてもよいことを理解されたい。
【0029】
制御ユニット212はまた、例えば、通信インターフェース(例えば、CANバス若しくは同様のもの、又は、専用通信インターフェースなど)に接続されてもよい。例えば、電子水平線データ(e-horizon data)をトラック100に格納することが可能なマップ情報を格納するデータベース218と組み合わされて、例えば、GPS(全地球測位システム又は同様なシステム)装置216など、例えば、
図1に示すような例示的なトラック100の位置を判定する装置を含む、他のコンポーネントが制御ユニット212に接続されていてもよい。このマップ又は電子水平線データは、例えば、道路のタイプ、車線数、道路の地形、及び/又は、道路上の静止障害物に関する情報を含むことができる。
【0030】
制御ユニット212は、処理用に構成された、汎用プロセッサ、特定用途向けプロセッサ、処理コンポーネントを含む回路、分散処理コンポーネントグループ、分散コンピュータグループなどを含むことができる。プロセッサは、データ処理若しくは信号処理、又は、メモリに格納されたコンピュータコードを実行する、任意数のハードウエアコンポーネント又はこれを含んでもよい。メモリは、本明細書に記載の様々な方法を完成又は容易にする、データ及び/又はコンピュータコードを格納する1つ以上のデバイスであってもよい。メモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含むことができる。メモリは、本明細書の様々なアクティビティをサポートする、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、任意の他のタイプの情報構造を含むことができる。例示的な実施形態によれば、本明細書のシステム及び方法について、任意の分散メモリデバイス又はローカルメモリデバイスを利用することができる。例示的な実施形態によれば、メモリは、プロセッサに対して通信可能に接続され(例えば、回路、任意の他の有線ネットワーク接続若しくは無線ネットワーク接続を介して)、本明細書に記載の1つ以上の処理を実行するコンピュータコードを含んでいる。制御ユニット212は、別個のユニットとして提供されてもよく、及び/又は、トラック100に搭載された電子制御ユニットの少なくとも一部を形成してもよい。
【0031】
図3及び4をさらに参照すると、本発明の冷却機構の作動中、処理は、特に、制御ユニット212がトラック100及び内燃機関の作動に関する情報を収集/受信することによって開始される。そのような情報は、一般的に、上述したように、燃焼室の温度及び/又は冷却回路200の内部を循環するクーラントの温度を含んでいる。また、制御ユニット212は、GPS受信機216及びデータベース218からGPS及びマップデータを受信することができる。
【0032】
制御ユニット212は、S1において、収集された作動情報/受信された作動情報に基づいて、内燃機関の現在の作動状態及び次回の作動状態の少なくとも1つを判定する。上述したように、内燃機関の状態は、一般的に、内燃機関が、例えば、トラック100を能動的に推進する(及び/又は、その代わりに、バッテリを充電するために使用される)作動状態か、内燃機関が停止している非作動状態か、のいずれか一方である。内燃機関の現在の非作動状態の判定はかなり簡単であるが、内燃機関の次回の非作動状態の判定/予測は、より複雑になる可能性がある。
【0033】
一例として、本発明による内燃機関がバッテリによって駆動される電気モータと一緒のコンポーネントとして設けられているハイブリッドトラック(明確に図示されていない)では、制御ユニット212(又は、トラックに設けられている他の電子制御ユニットECU)は、内燃機関と電気モータとの間の作動スプリット(operational split)を判定するために使用することができる。作動スプリットは、ハイブリッドトラックの計画ルート、できる限り計画ルートの地形データに依存することができる。そのような構成では、制御ユニット212/電子制御ユニットECUは、内燃機関が作動状態及び非作動状態のときの詳細な計画を有することができる。従って、この情報は、第1のバルブ210がいつ及びどのように制御されるべきかを判定するためにも使用することができる。
【0034】
一般的なトラック、即ち、ハイブリッドトラックではない他の状況も存在する。一例としては、例えば、内燃機関の非作動状態を予測するために、道路の次回の降坂区間の情報がトラック100の速度とともに使用され得る、上述の道路の地形であってもよい。即ち、道路の降坂区間中、道路の傾斜はトラック100の重量とともに、降坂区間中にも所望の速度に達するのに十分であるため、内燃機関を非作動状態に選択することができる。また、内燃機関の将来の非作動状態を予測するために、一般的なトリップ計画を使用することができる。例えば、配送トラックの所定の停止位置(地理的位置)を使用して、例えば、一般的には、GPS装置216からの情報とともに、所定の停止位置の1つからの所定距離として定義された、内燃機関の次回の非作動状態を予測することができる。
【0035】
上述したように、制御ユニット212はまた、S2において、燃焼室(又は同様なもの)の温度を判定し、S3において、測定された温度を所定の閾値と比較するように構成されている。詳細には、温度(閾値と比較して)が有利に使用されて、第1のバルブ210をどのように制御すべきかを判定し、燃焼室の温度が内燃機関の作動のための特定の温度限界内に安全に維持されることを保証する。第1のバルブ210が(少なくとも部分的に)閉弁状態になるのを抑制すべき他の状況が存在し得ることも留意すべきである。従って、第1のバルブ210の現在の作動を「より高いレベル」で制御できるようにする、「オーバーライド」機能を実装することが有利であり得る。例えば、内燃機関の他のコンポーネント(即ち、燃焼室に加えて)が流れるクーラントを必要とする場合、第1のバルブ210を配置することは不利になり得る。従って、制御ユニット212は、そのようなオーバーライド機能を実装し、適切な方法でこれを実行するデータを収集/処理するように構成することができる。
【0036】
図3は、燃焼室の温度が、第1のバルブ210がどのように制御されるかに依存する、3つの実施例を提供する。一般的に、本発明の思想が適用されていない従来技術の構成の第1の実施例では、クーラントは、内燃機関の非作動状態中にも、熱対流原理に応じて、冷却通路206を自由に流れることができる。
図3から理解できるように、内燃機関が作動状態(即ち、稼働)にある限り、燃焼室は理想的な作動温度T1(例示された上述の理想的な温度範囲内)に維持される。時間t1で内燃機関が停止されて非作動状態になると、燃焼室及び冷却回路200を通って流れるクーラントの温度は、実線302によって示されるように低下する。時間t2において、クーラント/内燃機関の温度は、理想的な作動温度T1未満の温度に達している。
【0037】
本発明に従う第2の実施例では、制御ユニット212によってなされた上述のような判定によって、冷却回路200を通って流れるクーラントの流量、特に、エンジン本体204の内部の冷却通路206を通って流れるクーラントの流量は、S4において、第1のバルブ210を使用して制御することができる。
図3の点線304で示されるように、制御ユニット212は、特に時間t1において、燃焼室の温度が所定の閾値未満であり、かつ、内燃機関が非作動状態に移行したことを判定した。従って、クーラントの流量は少なくとも部分的に減少され、できる限り完全に遮断される。即ち、第1のバルブ210を少なくとも部分的に閉弁状態に制御することによって、熱対流原理を部分的又は完全に打ち消す。しかしながら、燃焼室の温度は、実線302で示した従来技術の状況と比較して低い速度で低下する。従って、時間t2において、燃焼室の温度は、実線302で示した従来技術の状況の温度と比較して、より高くなっている。
【0038】
第3の実施例では、制御ユニット212は、上述したように、内燃機関の次回の非作動状態を予測した。従って、第1のバルブ210は、内燃機関の非作動状態に先立って、即ち、時間t1の前に、冷却通路206を通るクーラントの流量を減少させるように制御される。これによって、理想的な作動温度T1からより高温の温度T2へと燃焼室の温度を上昇させ、上述したように、燃焼室の温度を所定の温度閾値未満にする。従って、点線306で示すように、燃焼室の温度は、時間t1において内燃機関が非作動状態に移行しても、より高い温度T2を有している。従って、冷却通路206を通る流量が連続的に制御されて内燃機関の非作動状態中に減少されても、燃焼室の温度は、時間t2において、実線302及び点線304で示した第1の実施例及び第2の実施例の両方と比較して、より高くなる。
【0039】
図3に示す燃焼室の理想的な作動温度T1は、一例にすぎないことを留意されたい。燃焼室の理想的な作動温度は、異なって設定されてもよく、一般的には、できる限り内燃機関の異なる負荷に基づく所定範囲内にあると定義される。また、内燃機関の理想的な作動温度は、必ずしも一定である必要はなく、むしろ、変動可能であってもよい。従って、内燃機関を制御する開示の方法は、本発明の思想で可能となる昇温性能を最大限にするように、これを考慮に入れて実装することが好ましい。
【0040】
要約すると、本発明は、内燃機関(ICE)の作動方法に関する。この内燃機関は、燃焼室と、燃焼室の近傍に配置された液体冷却通路を含み、クーラントが内部を流れるように構成された冷却回路と、冷却回路に配置され、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を制御するように構成された第1のバルブと、を備えている。この方法は、内燃機関の作動状態を判定するステップと、内燃機関の作動状態に基づいて第1のバルブを制御するステップと、を含み、内燃機関が非作動状態にあれば、第1のバルブを少なくとも部分的に閉弁状態に制御することで、液体冷却通路を通って流れるクーラントの流量を減少させる。
【0041】
本発明の利点は、内燃機関が非作動状態であるか非作動状態に移行しそうなとき、燃焼室の冷却温度を効果的に制御する可能性を含んでいる。本発明の思想は、他の従来技術の解決策と比較して、燃焼室の温度をより長い時間に亘ってより高く維持することを可能にし、内燃機関が再び作動したとき、燃焼室の温度を理想的な作動温度に近づけることを可能にする。その結果、内燃機関は、始動からすでにより効果的に作動することができ、従って、できる限りエネルギー消費及び微粒子排出を低減する。
【0042】
本開示は、方法、システム、及び、様々な作動を達成する任意の機械可読媒体のプログラム製品を意図している。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、この目的若しくは他の目的で組み込まれた適切なシステムの特定目的のコンピュータプロセッサによって、又は、ハードウエアシステムによって実装することができる。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能な命令若しくはデータ構造を保持又は有する、機械可読媒体を含んだプログラム製品を含んでいる。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは特定目的のコンピュータ又はプロセッサを持つ他の機械によってアクセスできる、任意の利用可能な媒体とすることができる。
【0043】
一例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、他の磁気記憶装置、機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態をとる所望のプログラムコードを保持若しくは格納し、汎用若しくは専用コンピュータ又はプロセッサを持つ他の機械によってアクセス可能な任意の他の媒体を含むことができる。ネットワーク又は他の通信接続(有線、無線又は有線と無線の組み合わせ)を介して機械に情報が伝達又は提供されたとき、機械はその接続を機械可読媒体と適切に見做す。従って、そのような接続は、機械可読媒体と適切に呼ばれる。上記の組み合わせも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は、特定の機能若しくは機能のグループを実行する専用処理機械をもたらす命令及びデータを含んでいる。
【0044】
図4は方法ステップの特定順序を示すことができるが、このステップの順序は、図示された順序と異なってもよい。また、2つ以上のステップは、同時に又は部分的に同時に実行されてもよい。そのような変形は、選択されたソフトウエアシステム及びハイドウエアシステム並びに設計者の選択に依存する。そのようなすべての変形は、本開示の範囲内である。同様に、ソフトウエア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを達成する、ルールベースのロジック及び他のロジックを有する標準的なプログラミング技術で達成することができる。さらに、特定の例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者にとって、多くの異なる変更、修正などが明らかになるであろう。
【0045】
開示された実施形態に対する変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する当業者によって理解及び成し遂げることができる。また、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は他の要素又はステップを除外するものでなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。