(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671498
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】回転角度センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-544547(P2018-544547)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2019-506614(P2019-506614A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2017054279
(87)【国際公開番号】WO2017144638
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年8月23日
(31)【優先権主張番号】102016202877.4
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ウーターメーレン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メアツ
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−134249(JP,A)
【文献】
特表2007−532872(JP,A)
【文献】
特開2015−59779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信コイル(20)と、前記送信コイル(20)の内側に配置された少なくとも2つの受信コイル(22)とを有するステータエレメント(12)であって、前記送信コイル(20)および前記受信コイル(22)は、1つのプリント基板(18)上に配置されている、ステータエレメント(12)と、
前記ステータエレメント(12)に対して回転軸線(A)を中心にして回転可能に支持されたロータエレメント(14)であって、前記送信コイル(20)は、前記ロータエレメント(14)を介して前記少なくとも2つの受信コイル(22)に誘導結合されており、これにより前記誘導結合は、前記ステータエレメント(12)と前記ロータエレメント(14)との間の回転角度に依存していて、前記送信コイル(20)は、前記少なくとも2つの受信コイル(22)において少なくとも2つの角度依存性の交番電圧を誘導する、ロータエレメント(14)と、
を備える回転角度センサ(10)であって、
前記ロータエレメント(14)および前記少なくとも2つの受信コイル(22)は、正弦波状に前記回転角度に依存している振幅を有する交番電圧が、前記受信コイル(22)において誘導されるように構成されており、
前記少なくとも2つの受信コイル(22)は、相互に電気的に接続された複数の円弧状の導体路(40a,40b)から形成されており、前記少なくとも2つの受信コイル(22)の各々は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線(50a,50b,50c,50d,50e)から形成されており、前記複数の部分巻線(50a,50b,50c,50d,50e)の各々は、半径方向(R)において、左に湾曲している少なくとも1つの円弧状の導体路(40a)と、右に湾曲している少なくとも1つの対向する円弧状の導体路(40b)とによって画定されている、ことを特徴とする、回転角度センサ(10)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの受信コイル(22)は、前記送信コイル(20)の内側のリングセクタ領域(30)に配置されており、
前記リングセクタ領域(30)は、前記回転軸線(A)を中心とした内側円(32)と、前記回転軸線(A)を中心とした外側円(34)と、前記内側円(32)を前記外側円(34)に接続する2つの半径線(36,38)とによって画定されており、
前記2つの半径線(36,38)は、周囲に沿った前記回転角度センサ(10)の測定範囲(β)にわたって相互に離間されており、
前記円弧状の導体路(40a,40b)の端部は、前記リングセクタ領域(30)上に位置している、
請求項1記載の回転角度センサ(10)。
【請求項3】
前記円弧状の導体路(40a,40b)は全て、同じ曲率半径を有する、
請求項1または2記載の回転角度センサ(10)。
【請求項4】
相異なる受信コイル(22a,22b,22c)の部分巻線(50a,50b,50c,50d,50e)同士は、周方向に所定の角度だけ相互にずらされており、
前記角度は、前記受信コイルの個数によって分割された前記測定範囲(β)によって決定されている、
請求項2記載の回転角度センサ(10)。
【請求項5】
1つの受信コイル(22b,22c)は、それぞれ異なる面積を有する複数の部分巻線(50c,50d,50e)を有する、
かつ/または
1つの受信コイル(22a,22b,22c)において、第1の方向に方向決めされた全ての部分巻線(50a,50c,50e)の面積は、第2の方向に方向決めされた全ての部分巻線(50b,50d)の面積に等しい、
請求項1から4までのいずれか1項記載の回転角度センサ(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの受信コイル(22b,22c)は、直線状の導体路(46,48)を有し、
前記直線状の導体路(46,48)は、前記リングセクタ領域(30)の前記半径線(36,38)に沿って延在している、
請求項2記載の回転角度センサ(10)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの受信コイル(22a,22b,22c)は、前記プリント基板(18)の2つの平面に形成されている、
かつ/または
前記円弧状の導体路(40a,40b)の端部にスルーホールコンタクト(54)が設けられており、前記スルーホールコンタクト(54)において、それぞれ異なる平面にある前記円弧状の導体路(40a,40b)同士が接続されている、
かつ/または
1つの受信コイル(22a,22b,22c)の複数の前記円弧状の導体路(40a,40b)は、前記プリント基板(18)の相互に反対側に位置する平面に交互に配置されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の回転角度センサ(10)。
【請求項8】
前記ロータエレメント(14)は、当該ロータエレメント(14)の、前記回転軸線(A)を中心にして周方向に隣に位置する領域とは異なる導電性を有する少なくとも1つの誘導セグメント(26)を有する、
かつ/または
前記少なくとも1つの誘導セグメント(26)は、リングセクタ形である、
請求項2記載の回転角度センサ(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの誘導セグメント(26)は、周方向において、前記回転角度センサ(10)の前記測定範囲(β)の半分の大きさの開き角度を有する、
請求項8記載の回転角度センサ(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの誘導セグメント(26’)は、当該誘導セグメント(26’)とは異なる導電性を有する複数の半径方向の切欠部(58)を有する、
かつ/または
前記切欠部(58)は、前記誘導セグメント(26’)の周方向における縁部に配置されている、
かつ/または
前記切欠部(58)同士は、周方向において、前記回転角度センサ(10)の前記測定範囲(β)の半分の大きさの角度だけ離間されている、
請求項8記載の回転角度センサ(10)。
【請求項11】
回転角度センサ(10)のためのステータエレメント(12)であって、
前記ステータエレメント(12)は、送信コイル(20)と、前記送信コイル(20)の内側に配置された少なくとも2つの受信コイル(22)とを含み、前記送信コイル(20)および前記受信コイル(22)は、1つのプリント基板(18)上に配置されており、
前記少なくとも2つの受信コイル(22)は、相互に電気的に接続された複数の円弧状の導体路(40a,40b)から形成されており、
したがって、前記少なくとも2つの受信コイル(22)の各々は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線(50a,50b,50c,50d)から形成されており、
前記複数の部分巻線(50a,50b,50c,50d)の各々は、半径方向(R)において、左に湾曲している少なくとも1つの円弧状の導体路(40a)と、右に湾曲している少なくとも1つの対向する円弧状の導体路(40b)とによって画定されている、
ステータエレメント(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えばシャフトと他の構成要素との間の回転角度を特定することができる回転角度センサに関する。本発明はさらに、このような回転角度センサのためのステータエレメントに関する。
【0002】
従来技術
回転角度を測定するために、例えば、対応する磁場センサによって磁石が回転させられる回転角度センサが公知である。この場合、磁場ベクトルを測定することによって回転角度を帰納的に推定することが可能となる。このようなセンサはまた、例えば、隣り合って配置された電流ケーブルの電流の流れによって引き起こされる外部磁場にも反応し、非常に敏感であり得る。
【0003】
別の形式の回転角度センサは、渦電流効果を利用する。この場合、例えば、金属ターゲットがセンサコイルによって動かされ、このセンサコイルには交番電圧が供給され、このセンサコイルがターゲットにおいて渦電流を誘導する。このことにより、センサコイルのインダクタンスが減少し、周波数の変化によって回転角度を推定することが可能となる。例えばコイルは、共振回路の構成部分であり、この共振回路の共振周波数は、インダクタンスが変化するとシフトする。しかしながら、この形式の回転角度センサは、設置誤差(特にターゲットの傾き)に対して高い交差感度を有し得る。また、一般的に数10MHzの範囲の周波数で動作されるので、生成される周波数が外部電磁場によって干渉され得る(インジェクションロッキング)。
【0004】
欧州特許第0909955号明細書は、励磁コイルの交番電磁場と相互作用する、ターゲット上で短絡された平坦な導体ループを有する回転角度センサを示す。
【0005】
この場合には、例えば回転角度に依存した矩形信号に類似した信号が生成され、この信号を、評価ユニットによって面倒にも回転角度に変換する必要がある。このような信号の急峻なエッジに起因して、角度分解能が制限される可能性がある。
【0006】
発明の開示
発明の利点
本発明の実施形態は、有利な方法により、生成されたセンサ信号を簡単に評価することが可能な、ロバストかつ低コストでわずかな構造スペースしか必要としない回転角度センサを提供することを可能にする。
【0007】
本発明の実施形態に至る着想は、とりわけ、以下に説明される思想および認識に基づいていると見なすことができる。
【0008】
本発明は、特に大きい干渉電磁場を有する環境において使用することができる回転角度センサに関する。例えば、スロットルバルブの位置、BLDCモータのロータ位置、アクセルペダルの位置、または、カムシャフトの位置を特定するために、例えば、車両のエンジンルームの内部または近傍において回転角度センサを使用することができる。以下に説明される回転角度センサは、低コストであり、わずかな構造スペースしか必要とせず、また、簡単な測定原理に基づいている。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記回転角度センサは、送信コイルと、前記送信コイルの内側に配置された少なくとも2つの受信コイルとを有するステータエレメントを含み、前記送信コイルおよび前記受信コイルは、1つのプリント基板上に配置されており、前記回転角度センサは、前記ステータエレメントに対して回転軸線を中心にして回転可能に支持されたロータエレメントを含み、前記送信コイルは、前記ロータエレメントを介して前記少なくとも2つの受信コイルに誘導結合されており、これによって前記誘導結合は、前記ステータエレメントと前記ロータエレメントとの間の回転角度に依存していて、前記送信コイルは、前記少なくとも2つの受信コイルにおいて少なくとも2つの角度依存性の交番電圧を誘導する。
【0010】
「送信コイルの内側」という用語は、送信コイルが配置されている平面に関して、受信コイルが、この平面またはこの平面への投影図において、送信コイルの(外側)輪郭の内側に配置されていることを意味すると理解すべきである。
【0011】
評価ユニットを支持することができるステータエレメントを、例えばロータエレメントが固定されているシャフトの端部に対向して配置することができる。ロータエレメントは、シャフトと共に移動する1つまたは複数の誘導セグメントを支持することができ、これらの誘導セグメントは、受信コイルを覆っており、これによって受信コイルのインダクタンス、または送信コイルと受信コイルとの間のそれぞれの誘導結合を変化させる。送信コイルに交番電圧が給電されると、受信コイルにおいて交番電圧が誘導され、この交番電圧の振幅は、それぞれの誘導結合に依存している。そうすると、例えば評価ユニットは、測定信号としてセンサが出力するこれらの交番電圧または交番電圧の振幅から、回転角度信号を計算することができる。このようにして、高価な磁石が必要とされないので、回転角度センサを低コストに実現することが可能となる。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、前記ロータエレメントおよび前記少なくとも2つの受信コイルは、正弦波状に前記回転角度に依存している振幅を有する交番電圧が、前記受信コイルにおいて誘導されるように構成されている。換言すれば、受信コイルから供給される測定信号、すなわち受信コイルにおいて誘導される交番電圧の振幅は、受信コイルおよびロータエレメントの幾何形状に基づいて正弦波形であるか、または回転角度に依存している正弦関数である。
【0013】
正弦波形の測定信号は、純粋な正弦関数から5%未満または1%未満だけ相違している信号であってもよいことを理解すべきである。
【0014】
例えば、ステータエレメントには、例えば周方向に所定の角度だけ相互にずらされた2つまたは3つの受信コイルを配置することができ、これらの受信コイルは、それぞれ角度がずらされた測定信号を供給する。2つまたは3つの受信コイルの場合には、逆変換が可能であるので、正弦波信号を測定信号として特に簡単に評価することができる。これは、2つの受信コイル(すなわち2相システム)の場合にはアークタンジェント変換とすることができ、または3つの受信コイル(すなわち3相システム)の場合にはクラーク変換とすることができる。これらの逆変換により、例えば機械的な誤差によって発生するオフセットを測定信号から簡単に算出することも可能となる。
【0015】
ステータエレメントに、2つの冗長的な受信コイルシステム(例えばそれぞれ2つまたは3つの受信コイルからなる)を配置することも可能である。この場合には、それぞれの受信コイルシステムの測定信号を、上述した方法で評価することができる。これによって、1つのシステムが故障した場合にも依然として回転角度の特定が可能となり、このことによって重要なシステムにおける安全性を高めることができる。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、前記少なくとも2つの受信コイルは、相互に電気的に接続された複数の円弧状の導体路から形成されており、したがって、前記少なくとも2つの受信コイルの各々は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線から形成されており、前記複数の部分巻線の各々は、半径方向において、左に湾曲している少なくとも1つの例えば円弧状の導体路と、右に湾曲している少なくとも1つの対向する例えば円弧状の導体路とによって画定されている。
【0017】
換言すれば、受信コイルの各々は、回転軸線から出発して半径方向に延在する仮想の直線が、受信コイルの内側を通って延在する場合に、この直線が受信コイルの左に湾曲する円弧状の導体路および右に湾曲する円弧状の導体路と交差するように形成されている。このようにして、受信コイルにおいて誘導される交番電圧の振幅または測定信号が、実質的に正弦関数として回転角度に依存するということが達成される。
【0018】
この場合、受信コイルの部分巻線は、受信コイルの相互に交差していない複数の導体路によって取り囲まれた、受信コイルの一部として定義することができる。部分巻線の向きは、受信コイルを通る電流の流れによって決定される。相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線は、受信コイルを通って電流が流れると、それぞれ逆向きの電流の流れを有する。すなわち、第1の向きを有する部分巻線の場合には、この部分巻線を通って時計回りまたは右に電流が流れ、第2の反対の向きを有する部分巻線の場合には、この部分巻線を通って反時計回りまたは左に電流が流れる。
【0019】
送信コイルおよび受信コイルは、回転軸線を完全に取り囲む必要はなく、回転軸線を中心とした円に対する1つのサークルセクタ形のみに配置することもできる。この場合には、受信コイルの開き角度が測定範囲を決定する。このようにして、ステータエレメントを、完全な360°を検出すべき回転角度センサの場合よりも小さい構造にすることが可能となる。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、前記少なくとも2つの受信コイルは、前記送信コイルの内側のリングセクタ領域に配置されており、前記リングセクタ領域は、前記回転軸線を中心とした内側円と、前記回転軸線を中心とした外側円と、前記内側円を前記外側円に接続する2つの半径線とによって画定されており、前記2つの半径線は、前記回転角度センサの測定範囲にわたって相互に離間されている。送信コイルは、リングセクタ領域を取り囲むことができ、実質的に(わずかにより大きい)リングセクタの周囲のように成形することもできる。前記円弧状の導体路の端部は、前記リングセクタ領域上に位置することができる。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、前記円弧状の導体路は全て、同じ曲率半径を有する。曲率半径は、円弧状の導体路を画定している円の半径とすることができる。これらの円の中心点は、受信コイルが配置されているリングセクタ領域の外側にあってもよいことを理解すべきである。これによって有利には、回転角度センサを特に簡単かつ低コストに製造することが可能となる。これによってさらに有利には、理想的な正弦波信号からの測定信号の相違を小さくすることが可能となり、これによって有利には、角度特定の精度を改善することが可能となる。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、相異なる受信コイルの部分巻線同士は、所定の角度だけ相互にずらされており、前記角度は、前記受信コイルの個数によって分割された前記測定範囲の半分によって決定されている。このようにして、受信コイルごとに最大限に異なっている測定信号が得られる。これによって有利には、角度特定の精度が改善される。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、1つの受信コイルは、それぞれ異なる面積を有する複数の部分巻線を有する。この場合、1つの受信コイルにおいて、第1の方向に方向決めされた全ての部分巻線の面積を、第2の方向に方向決めされた全ての部分巻線の面積に等しくすることができる。例えば、第1の受信コイルは、同じ大きさの複数の部分巻線を有することができ、その一方で、第2の受信コイルは、第1の、例えば中央の部分巻線を有し、この第1の、例えば中央の部分巻線は、第1の受信コイルの部分巻線と同じ大きさであるが、この第1の受信コイルの部分巻線に対して角度がずらされている。第2の受信コイルはさらに、周方向において第1の、例えば中央の部分巻線の隣に、2つのより小さい、例えば側方の部分巻線(第2の部分巻線および第3の部分巻線)を有することができ、これらの側方の部分巻線は、第1の、例えば中央の部分巻線とは逆向きに方向決めされているが、合計して第1の、例えば中央の部分巻線と同じ面積を占めている。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの受信コイルは、直線状の導体路を有し、前記直線状の導体路は、前記リングセクタ領域の前記半径線に沿って延在している。このようにして、側方の部分巻線を成形するために、側方の部分巻線の円弧状の導体路同士を相互に電気的に接続させることができる。このことは例えば、リングセクタ領域を側方に、すなわち周方向に超えて延在しうる導体路の場合に当てはまるであろう。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、前記少なくとも2つの受信コイルは、前記プリント基板の2つの平面(のみ)に、すなわちとりわけ外側表面上に形成されている。このようにして、プリント基板を低コストに製造することが可能となる。多層のプリント基板、とりわけ3つ以上の層を有するプリント基板は必要なくなる。これによって、製造を格段に簡単に、より低コストに実施することが可能となる。
【0026】
このことは、前記円弧状の導体路の端部にスルーホールコンタクトを設け、前記スルーホールコンタクトにおいて、それぞれ異なる平面にある前記円弧状の導体路同士を接続することによって達成することができる。とりわけ、1つの受信コイルの複数の前記円弧状の導体路を、前記プリント基板の相互に反対側に位置する平面に交互に配置することができる。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、前記ロータエレメントは、当該ロータエレメントの、前記回転軸線を中心にして周方向に隣に位置する領域とは異なる導電性を有する少なくとも1つの誘導セグメントを有する。誘導セグメントは、例えばロータエレメントの非金属製の部分に取り付けられた(高導電率の)金属製のセグメントとすることができ、ロータエレメント上の金属製の隆起部とすることができるが、金属製のロータエレメントの(低導電率の)切欠部とすることもできる。
【0028】
例えば、前記少なくとも1つの誘導セグメントを、リングセクタ形とすることができる。ロータエレメントは、複数の同様の形状の誘導セグメントを有することが可能である。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、前記少なくとも1つの誘導セグメントは、周方向において、前記回転角度センサの前記測定範囲の半分の大きさの開き角度(すなわち誘導セグメントによって形成される最大角度)を有する。受信コイルの部分巻線も、このような開き角度を有することができる。このようにして、測定範囲にわたる測定信号の最大の変化を達成することができる。これによって有利には、精度を改善し、よりロバストな信号を提供することが可能となる。
【0030】
本発明の1つの実施形態では、前記少なくとも1つの誘導セグメントは、当該誘導セグメントとは異なる導電性を有する複数の半径方向の切欠部を有する。切欠部を、誘導セグメントの周方向における縁部に配置することができ、この場合、誘導セグメントは、測定範囲の半分よりも大きな開き角度を有することができる。前記切欠部同士を、周方向において、前記回転角度センサの前記測定範囲の半分の大きさの角度だけ離間させることができる。誘導セグメントを、1つの大きなサブセグメントと、この大きなサブセグメントから周方向に離間された複数のより小さなサブセグメントとに分割することができる。
【0031】
これらの切欠部を用いることによって、測定信号を成形することができる。なぜなら、より小さなサブセグメントは、大きなサブセグメントによってちょうど覆われている部分巻線の隣に配置されている部分巻線の誘導結合に影響を与えることができるからである。とりわけ、依然として受信コイルに起因して正弦関数からの比較的小さい相違を有する測定信号に、誘導セグメントによって、この相違がより小さくなるように影響を与えることができる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、前述および後述するような回転角度センサのためのステータエレメントに関する。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、前記ステータエレメントは、送信コイルと、前記送信コイルの内側に配置された少なくとも2つの受信コイルとを含み、前記送信コイルおよび前記受信コイルは、1つのプリント基板上に配置されており、前記少なくとも2つの受信コイルは、相互に電気的に接続された複数の円弧状の導体路から形成されており、したがって、前記少なくとも2つの受信コイルの各々は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線から形成されており、前記複数の部分巻線の各々は、半径方向において、左に湾曲している少なくとも1つの例えば円弧状の導体路と、右に湾曲している少なくとも1つの対向する例えば円弧状の導体路とによって画定されている。
【0034】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の1つの実施形態による回転角度センサの概略縦断面図である。
【
図2】
図1の回転角度センサのためのステータエレメントの概略平面図である。
【
図3】
図2のステータエレメントの概略平面図であり、ここでは、第1の受信コイルのみが図示されている。
【
図4】
図2のステータエレメントの概略平面図であり、ここでは、第2の受信コイルのみが図示されている。
【
図5】
図2のステータエレメントの概略平面図を示し、ここでは、第3の受信コイルのみが図示されている。
【
図6】
図1の回転角度センサのためのロータエレメントの概略平面図である。
【
図7】
図6のロータエレメントのための代替的な誘導セグメントの概略平面図である。
【
図8】本発明の1つの実施形態による回転角度センサによって生成される測定信号を有する線図である。
【0036】
図面は、概略的なものに過ぎず、縮尺通りではない。同一の参照符号は、図面において、同一の、または同等の作用を有する特徴を表している。
【0037】
発明を実施するための形態
図1は、ステータエレメント12およびロータエレメント14からなる回転角度センサ10を示す。ロータエレメント14は、例えば、スロットルバルブ、モータ、カムシャフト、アクセルペダル等のような構成要素のシャフト16に固定することができ、またはこのシャフト16によって提供することができる。シャフト16は、軸線Aを中心にして回転可能であり、ステータエレメント12は、対応する軸線方向においてロータエレメント14に対向している。例えば、ステータエレメント12は、構成要素のハウジングに固定されている。
【0038】
ステータエレメント12は、プリント基板18を含み、プリント基板18上には、1つの送信コイル20と複数の受信コイル22とが、プリント基板18上の導体路によって形成されている。コイル20,22の導体路は、プリント基板18の両側に配置することができる。これらの導体路を、プリント基板を貫通するビア(スルーホールコンタクト)を介して相互に電気的に接続することができる。プリント基板18上には、評価ユニット24のための別の構成要素を配置することができる。評価ユニット24は、送信コイル20に交番電圧を供給することができ、受信コイル22において、誘導された交番電圧を特定することもできる。これらの測定値に基づいて評価ユニット24は、ステータエレメント12とロータエレメント14との間の相対的な回転角度を特定することができる。
【0039】
ロータエレメント14は、軸線方向において送信コイル20および受信コイル22に対向する1つまたは複数の誘導セグメント26を含む。誘導セグメント26は、
図1に示されているように、シャフト16に固定された別のプリント基板の上に配置することができる。シャフト16の端部を加工することによって1つまたは複数の誘導セグメント26を形成することも可能である。
【0040】
図2は、ステータエレメント12の平面図を示す。プリント基板18は、略半円形であり、固定用孔28を有することができる。送信コイル20も受信コイル22も、平面コイルとして形成されている。
【0041】
リングセクタ形の送信コイル20は、複数の導体ループを有することができ、十分に大きな場を形成することができるようにするために、これらの導体ループを、多層のプリント基板18の複数の平面で実現することも可能である。
【0042】
第1、第2、および第3の受信コイル22a,22b,22cは、送信コイル20の内側のリングセクタ領域30に配置されており、このリングセクタ領域30は、回転軸線Aを中心とした内側円32と、回転軸線Aを中心とした外側円34と、内側円32を外側円34に接続する2つの半径線36,38とによって画定されている。半径線36と半径線38とは、回転角度センサ10の測定範囲でもある角度βだけ周方向に相互に離間されている。
【0043】
受信コイル22a,22b,22cは、円弧状の導体路40から形成されており、これらの導体路は全て、同じ曲率半径を有する。
図3、4、および5に関連してより詳細に説明される受信コイル22a,22b,22cの特別な形状により、正弦関数によってロータエレメント14の回転角度に依存している振幅(測定信号として)を有する交番電圧を、受信コイル22a,22b,22cにおいて誘導することが可能となる。このことにより、回転角度を特定するために測定信号の特に容易な評価が可能となる。
【0044】
例えば送信コイル20には、数MHz(好ましくは5MHz)の範囲の周波数を有する交番電圧、および/または0.5V〜10V(好ましくは1.5V)の範囲の振幅を有する交番電圧を、評価ユニット24によって印加することができる。これによって交番電磁場が形成され、この交番電磁場は、受信コイル22a,22b,22cに結合し、そこで対応する交番電圧を誘導する。誘導セグメント26を相応に成形することにより、送信コイル20と受信コイル22a,22b,22cとの間の結合は、回転角度に依存して影響を受ける。受信コイル22a,22b,22cと送信コイル20との結合係数の典型的な値範囲、すなわち受信コイルと送信コイルとの間の振幅比を、−0.3〜+0.3の間にすることができる。受信コイル22a,22b,22cにおいて誘導された測定信号を搬送波信号(送信コイルの信号)によって復調することにより、結合の振幅および位相を推定することができる。振幅は、回転角度と共に連続的に変化する。位相は、理想的には0°または180°である。
【0045】
図3、4、および5は、
図2のステータエレメント12を示し、これらの図では、見やすくするために、受信コイル22a,22b,22cの各々が1つずつ図示されている。
【0046】
回転角度センサ10の測定範囲βは、例えば120°である。基本的に、360°より小さい任意の値をとることができる。送信コイル20の、半径方向に延在する導体路42の領域における磁場の不均一性が、受信コイル22a,22b,22cに対して与える影響を低く保つために、環状の送信コイル20の開き角度α(
図3では、見やすくするために対角が示されている)は、好ましくは回転角度センサ10の測定範囲βよりも5°〜10°大きくなっている。
【0047】
半径方向に延在するこれらの導体路42同士は、円弧状の導体路44によって接続されており、円弧状の導体路44の内側は、内側半径riによって画定されており、円弧状の導体路44の外側は、半径raによって画定されている。外側半径raの上側は、利用可能な構造スペースによって制限されており、10〜30mmの間、例えば約25mmとすることができる。内側半径riは、シャフトが回転軸線Aにおいてステータエレメント12を通過することが可能となるように寸法設定することができるが、このことが必要でない場合には、0mmとすることもできる。
【0048】
受信コイル22a,22b,22cは、左に湾曲した円弧状の導体路40aと、右に湾曲した円弧状の導体路40bとから形成されている。この場合、それぞれの湾曲方向は、回転軸線Aから半径方向外側への視線方向から理解すべきである。
【0049】
図3には、一例として半径方向Rが示されている。この半径方向Rは、左に湾曲している内側の円弧状の導体路40aと、右に湾曲している外側の(または対向する)円弧状の導体路40bとに交差する。同じことが、円弧状の導体路40aと40bとが相互に接続されているところの角度を除いて、測定範囲βの内側の全ての半径方向Rに当てはまる。
【0050】
第2の受信コイル22b(
図4)および第3の受信コイル22c(
図5)はさらに、半径線36,38に沿って延在する直線状の導体路46,48を有する。
【0051】
第1の受信コイル22a(
図3)は、円弧状の導体路40a,40bのみから構成されており、これらの円弧状の導体路40a,40bの端部は、相互に逆向きに方向決めされた2つの部分巻線50a,50bが形成されるように相互に接続されており、すなわち、受信コイル22aに電流が流れると、これらの円弧状の導体路40a,40bを電流が時計回りまたは反時計回りに流れる。2つの部分巻線50a,50bは、同じ輪郭を有する。部分巻線50a,50bの面積は、同じ大きさであり、したがって、(ロータエレメント14との追加的な結合が発生しない限り)受信コイル22aによって均一な磁場が相殺される。なぜなら、部分コイル50a,50bにおいて、絶対値的に同じであるが極性が逆になっている電圧が誘導されるからである。
【0052】
これに基づいて、回転角度センサ10または評価ユニット24は、自己診断機能を動作させることができ、この自己診断機能によって、ロータエレメント14が欠如していること、および/または受信コイルのうちの1つが電気的な中断部を有することを識別することができる。さらに、通常は均一な場として存在する電磁干渉の障害影響を抑制することができる。
【0053】
第2の受信コイル22bおよび第3の受信コイル22cは、円弧状の導体路40a,40bから構成されており、これらの円弧状の導体路40a,40bは、各自の端部と、直線状の導体路46,48とを介して構成されている。第2および第3の受信コイル22b,22cの各々は、部分巻線50c,50d,50eを有し、これらの部分巻線50c,50d,50eは、周方向に相互に連続して逆向きに方向決めされている。第1の、ここでは中央の部分巻線50dは、第1の受信コイル22aの部分巻線50a,50bのうちの1つと同じ輪郭および/または同じ面積を有する。第2および第3の、ここでは側方の部分巻線50cおよび50eは、組み合わせると部分巻線50a,50b,50cのうちの1つと同じ輪郭を有し、および/または合計して同じ面積を有する。
【0054】
第1、第2、および第3の受信コイル22a,22b,22cの円弧状の導体路40a,40bの各交点は、内側円32(第1の半径r1)、中央円52(第2の半径r2)、および外側円34(第3の半径r3)上に位置している。
【0055】
この場合、第2の半径r2は、第1の半径r1と第3の半径r3との平均値とすることができ、すなわち、r2=(r1+r3)/2である。第1の半径r1は、送信コイル20の導体路42,44の内側半径riと幅bとの合計よりも大きい。例えば、r1=ri+2bおよびr3=ra−2bとすることができる。
【0056】
円弧状の導体路40aと40bとの交点は、周方向に等角度で離間されている。交点間の角度は、β/4(ここでは30°)である。したがって、受信コイル22aの円弧状の導体路40aと40bとの交点は、0°,β/4,β/2,3β/4,およびβに位置している。受信コイル22bおよび22cの円弧状の導体路40aと40bの交点は、受信コイル22aの円弧状の導体路40a,40bの交点に対してそれぞれ左右にβ/12だけずらされている。
【0057】
一般に、受信コイル22の所要の幾何学的な回転ξは、測定範囲βおよび受信コイルの個数mから、ξ=β/(2・m)に従って算出される。
【0058】
図示された実施例では、3相システム(m=3)の場合、3つの受信コイル22a,22b,22cの幾何学的な回転ξは、20°(ξ=120°/(2・3)=20°)となる。回転時には、受信コイル22b,22cの右側の測定範囲βを超えている部分が、0°の左側に挿入される。
【0059】
3つの受信コイル22a,22b,22cを、プリント基板18の2つの平面のみに形成することが可能である。例えば、円弧状の導体路40a,40bおよび直線状の導体路46,48を、プリント基板18の両側に配置することができる。2つの平面のみに形成することは、プリント基板18が低コストになるという利点を有する。さらに、全ての受信コイルとターゲットとの間の平均距離がほぼ同一であるので、測定信号に関してほぼ同じ信号レベルが達成され、また、逆算を単純かつロバストに実施することが可能となる。
【0060】
このことは、以下のようにして達成することができる。すなわち、半径方向内側から半径方向外側に向かって、かつ比較的小さい半径から比較的大きい半径(r1,r2,r3)に向かって延在する円弧状の導体路40a,40bを、一方の平面に配置し、残りの円弧状の導体路40a,40bを、他方の平面に配置することによって達成することができる。第2の受信コイル22bおよび第3の受信コイル22cの場合には、直線状の導体路46,48が、相互に重なるようにそれぞれ異なる平面に配置される。導体路40a,40b,46,48の端部同士は、スルーホールコンタクト54を介して接続されており、見やすくするために、これらのスルーホールコンタクト54の全てに参照番号が付されているわけではない。この場合、受信コイル22aの2つのスルーホールコンタクト54は、リングセクタ領域30の内部へとわずかにずらされている。換言すれば、軸線Aを中心として小さい角度から大きい角度へと移行させるときに、半径方向内側から外側への経路上で延在する(すなわち右に湾曲している)第1の導体路40bを、1つの平面に配置すべきであり、半径方向外側から内側に延在する(すなわち左に湾曲している)第2の導体路40aを、別の平面に配置すべきである。
【0061】
図6は、完全円として形成されたロータエレメント14の概略平面図を示す。
図6に示されたロータエレメント14のうち、1つまたは複数の誘導セグメント26が含まれている角度範囲のみを使用することも可能である。
【0062】
ロータエレメント14を、誘導セグメント26を有するプリント基板として、プリント基板の金属被覆部または金属製の打ち抜き部材として形成することができ、打ち抜き部材の場合には、誘導セグメント26は、打ち抜き部材の隆起部または陥凹部である。
【0063】
誘導セグメント26は円弧状であり、それぞれ測定範囲βの半分にわたって、すなわちここで図示されているように60°にわたって延在している。
【0064】
好ましくは、直線状または線形の半径方向の境界線が使用され、これによって特に簡単で製造確実な生産が保証されている。
【0065】
誘導セグメント26の内側半径ritおよび外側半径ratは、送信コイル20の内側半径riおよび外側半径raに基づいて選択することができる。例えば、rit=(ri+b+r1)/2およびrat=(ra−b+r3)/2とすることができる。この場合、bは、送信コイル20の導体路42,44の幅である。
【0066】
図7は、1つの誘導セグメント26’が複数のサブセグメント56a,56bから形成されている代替的な実施形態を示す。
図6の誘導セグメント26の各々を、
図7の誘導セグメントのように形成することができる。好ましくは、直線状または線形の半径方向の縁部が使用される。
【0067】
サブセグメント56a,56bは、切欠部58(例えばフライス加工)によって相互に分離されており、この切欠部58は、サブセグメント56a,56bとは異なる導電性を有する。このようにして、測定信号の正弦波性を改善することができる。
【0068】
切欠部58の各々は、例えば周方向において2γの角度の幅とすることができる。この場合、中央のサブセグメントは、β/2−2γの角度を有し、外側のサブセグメントは、γの角度を有する。
【0069】
図8は、3つの正弦波形の測定信号60を有する線図を示し、これら3つの正弦波形の測定信号60を、受信コイル22a,22b,22cから出力することができ、
図7による1つまたは複数の誘導セグメント26’を有するロータエレメント14によって、さらに正弦関数に近似させることができる。測定信号は、受信コイルにおいて誘導される交番電圧の振幅を表しており、ステータエレメント12に対するロータエレメント14の角度に依存している。
【0070】
それぞれ長さが異なる給電線、プリント基板18のそれぞれ異なる平面における導体路の配置、および機械的な誤差に起因して、測定信号60は、例えばオフセットを有する可能性がある(すなわち、3つの測定信号60は、このような場合にはx軸に関して対称には延在しない)。
【0071】
このオフセットは、可能な限り正弦波形の測定信号60から、例えばクラーク変換によって特に簡単に算出することができる。例えばsin
2+cos
2=1のような三角法を使用することができ、少なくとも信号の妥当性検査のため、または修正のためにも使用することができるという理由からも、可能な限り正弦波形の測定信号60が有利であろう。
【0072】
例えば、3つの受信コイル22a,22b,22cにおいて、典型的には120°である電気的な位相オフセットを有する3つの正弦波形の測定信号60が発生し、これらの正弦波形の測定信号60を、クラーク変換を使用することによって正弦/余弦システムに変換することができる。そうすると、アークタンジェント関数を用いてここから回転角度を推定することが可能である。
【0073】
回転角度センサ10が、90°の電気的な位相オフセットを有する2つの受信コイル22のみを含むことも可能である(機械的な位相オフセットと電気的な位相オフセットとが異なってもよい)。この場合には、2つの測定信号60の振幅に位相のコサインを乗算することによって(理想的には)オフセットのない正弦/余弦システムが得られる。アークタンジェント関数を用いてここからロータエレメント14の回転角度を推定することが可能である。
【0074】
一般に、アークタンジェント関数によって測定信号60を逆算するためには、少なくとも2つの受信コイル22a,22bが必要とされる。
【0075】
冗長性の理由から、回転角度センサ10に6つの受信コイル22を設けることもでき、これら6つの受信コイル22を全て、例えばプリント基板18の2つの平面に実現することができる。そうすると、6つの受信コイル22のうちのそれぞれ3つを、冗長的な3相システムとして使用することができる。その場合、これらの受信コイル22は全て、平均してロータエレメント14から等距離で離間しているので(6つ以上の平面で実現した場合と比較して)、測定信号60のオフセットがほぼ同一となり、また、レベルの高さが同等になる。このことにより、評価が格段に容易になる。
【0076】
最後に、「有する」、「含む」等のような用語が他の要素またはステップを排除しないこと、また、「1つ」のような用語が複数形を排除しないことに留意すべきである。特許請求の範囲における参照符号は、限定するものとして見なすべきではない。