特許第6671504号(P6671504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671504
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】半乾きのインクジェット媒体用の定着機
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20200316BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20200316BHJP
   B65H 37/00 20060101ALI20200316BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B41J2/01 125
   B41M5/00 100
   B65H37/00
   B65H29/70
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-552630(P2018-552630)
(86)(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公表番号】特表2019-509195(P2019-509195A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2016013735
(87)【国際公開番号】WO2017123258
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年6月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ラスムセン,スティーヴ・オー
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー,マーク・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム,ブラッドリー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ビンガム,ジェフリー・ジー
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225315(JP,A)
【文献】 特開2013−028121(JP,A)
【文献】 特開2015−128876(JP,A)
【文献】 特開2002−147952(JP,A)
【文献】 特開2015−231173(JP,A)
【文献】 特開2014−094546(JP,A)
【文献】 特開2014−184711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41M 5/00
B65H 29/70
B65H 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置から半乾きのインクジェット媒体を受け取るように整列されており、それぞれが受け取った前記半乾きのインクジェット媒体に対して圧力を加えるための上側ローラと下側ローラとを備え、該上側ローラまたは該下側ローラへの巻付角度により前記半乾きのインクジェット媒体に生じた張力に追加の圧力を加えるために位置を変更する少なくとも1つの往復移動定着機を含む複数の定着機と、
前記複数の定着機から前記半乾きのインクジェット媒体を受け取る仕上げ機と
を備えている装置。
【請求項2】
前記複数の定着機のいくつかの前記上側ローラが、加熱ローラで構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の定着機のいくつかの前記下側ローラが、加熱ローラで構成されている、請求項1に記載の装置
【請求項4】
前記複数の定着機のうちの第1の定着機が、加熱ローラである下側ローラと、非加熱ローラである上側ローラとを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の定着機のうちの少なくとも1つの往復移動定着機である第2の定着機が、非加熱ローラである下側ローラと、加熱ローラである上側ローラとを備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムであって、
上側ローラまたは下側ローラへの巻付角度により前記半乾きのインクジェット媒体に生じた張力に追加の圧力を加えるために位置を変更する少なくとも1つの往復移動定着機を含む複数の定着機を備える調整機であって、前記複数の定着機は半乾きのインクジェット媒体が前記調整機を通過している間に圧力を加えるものである、調整機と
前記調整機の第1の端部に連結されて、半乾きのインクジェット媒体を前記調整機に送給する印刷装置と、
前記調整機の第2の端部に連結されて、半乾きのインクジェット媒体を前記調整機から受け取る仕上げ装置と
を備えるシステム。
【請求項7】
前記半乾きのインクジェット媒体が第1の定着機から第2の定着機まで通過する間に、前記少なくとも1つの往復移動定着機の位置を変えることができる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの往復移動定着機の位置が、前記半乾きのインクジェット媒体が前記複数の定着機のうちの前記少なくとも1つの往復移動定着機を通過している間に変更される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの往復移動定着機は、少なくとも2つの固定定着機の間に配置されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記調整機に連結されている空気循環装置を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記空気循環装置が前記調整機内の空気を循環させて、前記調整機内から水分を除去する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
調整機を備える、半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムであって、
前記調整機は、
下側の加熱ローラと上側の非加熱ローラとを備えており、印刷装置から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第1の定着機と、
下側の非加熱ローラと上側の加熱ローラとを備えており、前記第1の定着機から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第2の定着機と、
下側の加熱ローラと上側の非加熱ローラとを備えており、前記第2の定着機から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第3の定着機と
を備えてなり、前記第2の定着機は、前記上側の加熱ローラまたは前記下側の非加熱ローラへの巻付角度により前記半乾きのインクジェット媒体に生じた張力に追加の圧力を加えるために位置を変更する往復移動定着機である、システム。
【請求項13】
前記第1の定着機と前記第3の定着機とを第1の位置で実質的に整列させ、前記第2の定着機を前記第1の位置とは高さが異なる第2の位置に配置している、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の定着機は、前記第1の定着機および前記第3の定着機に比べて上乗せされた張力を前記半乾きのインクジェット媒体に対して加える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記半乾きのインクジェット媒体が前記調整機を通過する際、前記半乾きのインクジェット媒体は対応する加熱ローラに巻き付く、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェットプリンタは、(例えば、紙、プラスチックなどの)印刷可能媒体に或る量の印刷液を被着させることができる。いくつかの例では、インクジェットプリンタによって被着させた印刷液の液滴がまだ完全には乾燥していない間に、インクジェットプリンタによって印刷媒体に反りやしわが生じてしまう場合がある。また、いくつかの例では、インクジェットプリンタによって被着させた印刷液の液滴がまだ完全には乾燥していない間、印刷可能媒体のいくつかの物理的特性に変化が生じてしまう場合がある。例えば、インクジェットプリンタによって被着させた印刷液の液滴がまだ完全には乾燥していない間、印刷可能媒体の剛性が変化してしまう場合がある。そして、反りやしわ、印刷液の液滴によって生じた他の物理的特性の変化によって、仕上げ処理を行うことが困難になる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステムを示す。
図2】本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステムを示す。
図3】本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本明細書では、半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムや装置として、いくつかのシステムや装置を記載している。いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムは、印刷装置から半乾きのインクジェット媒体を受け取るように整列されており、それぞれが受け取った前記半乾きのインクジェット媒体に対して圧力および熱を加えるための上側ローラと下側ローラとを備えている複数の定着機と、複数の定着機から半乾きのインクジェット媒体を受け取る仕上げ機とを備えていてもよい。本明細書において、半乾きのインクジェット媒体(partially dried inkjet media)とは、インクジェット式の印刷装置によって同媒体上に付着した印刷液がまだ完全には乾燥していない状態の媒体を含みうる。
【0004】
半乾きのインクジェット媒体は、積み重ねたり、位置を揃えたり、仕上げ処理を行ったりすることが難しい場合がある。これは、例えば、半乾きのインクジェット媒体には、反り、しわ、剛性の低下、表面粗さの増大、繊維の露出、繊維配向の乱れ、媒体シート間摩擦の増大などの特性変化が生じている場合があるためである。いくつかの例では、これらの特性変化は、印刷液を媒体上に被着させて、媒体が印刷液を吸収することによって生じ得る。例えば、印刷液は、紙などの媒体が吸収可能な液体の状態をとることができる。この例の場合、液体状態の印刷液によって、他の液体によって媒体に生じる特性変化と同様の特性変化が媒体に生じてしまう可能性がある。
【0005】
いくつかの例では、複数の定着機を(例えば、インクジェットプリンタなどの)印刷装置と(例えば、仕上げ機などの)仕上げ装置との間に連結することができる。例えば、複数の定着機は、プリンタから半乾きのインクジェット媒体を受け取って、その半乾きのインクジェット媒体を(例えば、積み重ね、丁合い、ステープル留め、穴あけ、綴じなどの)仕上げ処理を行う仕上げ機に送給することができる。いくつかの例では、複数の定着機のそれぞれがいくつかのローラを備えることができる。例えば、複数の定着機のうちの1つの定着機が、半乾きのインクジェット媒体の第1の面と相互作用する上側ローラと、半乾きのインクジェット媒体の第2の面と相互作用する第2のローラとを備えることができる。
【0006】
複数の定着機を利用して、半乾きのインクジェット媒体に圧力を加えることにより、媒体が印刷液を吸収することによって生じる特性変化を元の状態に戻す、もしくは部分的に元の状態に戻すことができる。例えば、複数の定着機を利用して、圧力、熱、接触ゾーン、巻付角度のうちの少なくとも1つによって、印刷液の乾燥を促進することができる。いくつかの例では、複数の定着機は、第1の定着機から第2の定着機にかけて交互に現れる巻付角度を利用して、半乾きのインクジェット媒体に生じていた特性変化を元の状態に戻す、もしくは部分的に元の状態に戻すことができる。
【0007】
本明細書において、参照番号は、最上位桁が図面番号に対応し、それ以外の桁が図面における要素やコンポーネントを識別するという番号付け規則に従っている。本明細書において、図中に示す各要素は、追加や交換、省略が可能であり、これにより、さらにいくつかの本開示の例が得られ得る。さらに、図に示す各要素の比率や相対的な大きさは、本開示の例を説明することを意図するものであって、限定的な意味で解釈すべきではない。
【0008】
図1は、本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステム100を示している。システム100を利用して、半乾きのインクジェット媒体に生じていたいくつかの特性変化を元の状態に戻して、あるいは部分的に元の状態に戻して、仕上げ処理を行うことができる。本明細書に記載するように、半乾きのインクジェット媒体に生じているこれらいくつかの特性変化によって、仕上げ処理を行おうとすると問題が生じてしまう可能性がある。
【0009】
システム100は、プリンタ102を備えることができる。いくつかの例では、プリンタ102は、(例えば、インクなどの)印刷液を印刷媒体に被着させることができるインクジェットプリンタであってもよい。本明細書に記載するように、印刷媒体は、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nに送給された時点ではまだ完全には乾燥していない場合がある。例えば、プリンタ102は、半乾きのインクジェット媒体を生成して、この半乾きのインクジェット媒体をいくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nに送給することができる。いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nはプリンタ102に連結されており、半乾きのインクジェット媒体をプリンタ102からいくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nに直接送給できるようになっていてもよい。
【0010】
いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nは、(例えば、加熱ローラ106−1,106−2、非加熱ローラ108−1,108−2などの)いくつかのローラを備えることができる。いくつかの例では、これらいくつかのローラを、プリンタ102から受け取った半乾きのインクジェット媒体に圧力を加えるように配置することができる。いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nのそれぞれが、いくつかの加熱ローラ106−1,106−2と、これらと対になる対応する数の非加熱ローラ108−1,108−2とを備えることができる。いくつかの例では、加熱ローラ106−1,106−2として、ローラ表面を加熱するための内部熱源を有する「ホットローラ(hot roller)」を備えることができる。他の例では、各加熱ローラ106−1,106−2は、加熱接触ゾーンを有するアセンブリとすることができる。例えば、加熱ローラ106−1,106−2は、このアセンブリの表面のある領域内において発熱することができる。これらいくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nは、半乾きのインクジェット媒体に加えられる圧力と熱とを利用して、いくつかの特性変化を元の状態に戻すことができる。
【0011】
いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nは、いくつかのアクティブローラといくつかのパッシブローラとを利用して、半乾きのインクジェット媒体をプリンタ102から仕上げ機110に移送することができる。本明細書において、アクティブローラ(active roller)とは、特定の方向に向かって機械的に動くローラを含みうる。例えば、アクティブローラを、能動的にローラを動かすモータに接続することができる。いくつかの例では、いくつかの加熱ローラ106−1,106−2をアクティブローラとすることができる。いくつかの例では、これらいくつかの加熱ローラ106−1,106−2をアクティブローラとして、半乾きのインクジェット媒体との接触部をより大きくすることができる。逆に、いくつかの非加熱ローラ108−1,108−2をアクティブローラとすることもできる。
【0012】
本明細書において、パッシブローラ(passive roller)とは、(例えば、アクティブローラなどの)他のローラとは独立に機械的に動くことはないローラを含みうる。例えば、いくつかのパッシブローラは、これらいくつかのパッシブローラが動けるようにするベアリングには接続され得るが、これらいくつかのパッシブローラを物理的に動かす機械的装置に接続されることはない。いくつかの例では、いくつかの非加熱ローラ108−1,108−2をパッシブローラとすることができる。例えば、これらのいくつかの非加熱ローラ108−1,108−2をベアリングシステムに接続されたパッシブローラとして、非加熱ローラ108−1,108−2が加熱ローラ106−1,106−2によって動かされるようにすることができる。
【0013】
いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nを通過する半乾きのインクジェット媒体の巻付角度が0°〜20°となるように、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nを実質的に直線状に整列させることができる。本明細書にさらに記載するように、半乾きのインクジェット媒体の巻付角度は、(例えば、プリンタの種類、付着させる印刷液の量、印刷液の用途などの)いくつかの因子に基づいて調整することができる。いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nが作り出したこの半乾きのインクジェット媒体の巻付角度によって、半乾きのインクジェット媒体に張力を加えることができる。いくつかの例では、この半乾きのインクジェット媒体に加えられた張力によって、半乾きのインクジェット媒体に生じていたいくつかの特性変化を元の状態に戻すことができる。
【0014】
いくつかの例では、いくつかの定着機104−1,104−2,104−3,104−Nは、筺体(enclosure、図示せず)の内部にあってもよい。これらの例では、筺体は空気循環装置を備えることができる。空気循環装置を利用して、湿った空気を筺体から排出させることができる。湿った空気を筺体から排出させることにより、印刷媒体に被着した印刷液の乾燥を促進することができる。いくつかの例では、空気循環装置を利用して、半乾きのインクジェット媒体に熱風を当てることもできる。
【0015】
図2は、本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステム200を示している。いくつかの例では、システム200は、図1に参照されるシステム100と同一または同様の要素を備えることができる。例えば、システム200は、プリンタ202と仕上げ機210とを備えることができ、これらはいずれもいくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nに連結されている。本明細書に記載するように、プリンタ202は、半乾きのインクジェット媒体を生成することができるインクジェットプリンタを含みうる。本明細書に記載するように、半乾きのインクジェット媒体は、インクジェット媒体上に被着した印刷液によって生じ得るいくつかの特性変化を含む場合がある。
【0016】
いくつかの例では、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nのそれぞれが、いくつかの加熱ローラ206−1,206−2と、いくつかの非加熱ローラ208−1,208−2とを備えることができる。いくつかの例では、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nのそれぞれが、1つの加熱ローラ206−1,206−2と、1つの非加熱ローラ208−1,208−2とを備えることができる。例えば、定着機204−1は、加熱ローラ206−1である下側ローラと、非加熱ローラ208−1である上側ローラとを備えることができる。この例では、定着機204−1を、半乾きのインクジェット媒体を受け取る第1の定着機とすることができる。この例では、加熱ローラ206−1を、半乾きのインクジェット媒体の最後に印刷された側(面)が加熱ローラ206−1に接触するように配置することができる。
【0017】
いくつかの例では、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nを通過する半乾きのインクジェット媒体の巻付角度が20°〜180°となるように、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nを非直線状に整列させることができる。半乾きのインクジェット媒体の巻付角度は、(例えば、プリンタの種類、付着させる印刷液の量、印刷液の用途などの)いくつかの因子に基づいて調整することができる。例えば、巻付角度を大きくするほど、半乾きのインクジェット媒体の(例えば、張力を加える時間などの)接触時間を長くすることができる。本明細書において、接触時間(contact time)とは、半乾きのインクジェット媒体がいくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nと接触している時間の長さを含みうる。
【0018】
いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体においては、媒体の繊維が印刷液によって露出したり、配向が乱れたりしている場合がある。繊維の露出や配向の乱れによって、印刷液を被着させる前のインクジェット媒体に比べて、半乾きのインクジェット媒体の剛性が比較的低くなってしまう場合がある。また繊維の露出や配向の乱れによって、本明細書に記載するような他のいくつかの特性にも変化が生じてしまう可能性がある。そこで、いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体を加熱ローラ206−1,206−2,206−3に暴露させて乾燥させている間に、半乾きのインクジェット媒体に対して或る時間長または大きさの張力を加えること、元に戻す方向に曲げること、および繰り返し圧力を加えることによって、繊維配向を元に戻したり、露出した繊維を再び差し込んだりする程度をより大きくすることができる。例えば、半乾きのインクジェット媒体に対して張力を加えたり、元に戻す方向に曲げたり、繰り返し圧力を加えたり、熱を加えたりすることのうち1つ以上を行うことにより、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nによって圧力または熱を加えることによっては元の状態に戻すことができなかったような、半乾きのインクジェット媒体に生じているいくつかの特性変化を元の状態に戻すことができる。
【0019】
本明細書で説明するように、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nによって、半乾きのインクジェット媒体に生じているいくつかの特性変化を元の状態に戻すことができる。いくつかの例では、いくつかの定着機204−1,204−2,204−3,204−Nは、半乾きのインクジェット媒体に対して圧力、張力、熱のいずれかまたはすべてを加えることによって、仕上げ装置210用に半乾きのインクジェット媒体を調製することができる。本明細書に記載するように、仕上げ機210は、特性変化が元の状態に戻されている場合あるいは部分的に元の状態に戻されている場合には、いくつかの仕上げ処理を行うことができるが、プリンタ202が生成した後の半乾きのインクジェット媒体に特性変化が存在している場合には、仕上げ処理を行うことができない場合がある。あるいは、仕上げ機210は、所望の仕上げ特性を行うためにそれほど複雑ではない場合もある。
【0020】
図3は、本開示の内容と合致する、半乾きのインクジェット媒体用の定着機の例示的なシステム300を示している。システム300は、図1に参照されるシステム100と同一または同様の要素、図2に参照されるシステム200と同一または同様の要素のいずれかまたはすべてを備えることができる。例えば、システム300は、プリンタ302と仕上げ機310とを備えることができ、これらはいくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nに連結されている。いくつかの例では、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nのそれぞれが、いくつかの加熱ローラ306−1,306−2と、いくつかの非加熱ローラ308−1,308−2とを備えることができる。
【0021】
いくつかの例では、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを通過する半乾きのインクジェット媒体の巻付角度が特定の大きさとなるように、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを整列させることができる。例えば、半乾きのインクジェット媒体の巻付角度は、0°〜180°とすることができる。本明細書に記載するように、半乾きのインクジェット媒体の巻付角度によって、或る特定の大きさや時間長の張力を半乾きのインクジェット媒体に対して加えることができる。
【0022】
いくつかの例では、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nは、(例えば、定着機304−2などの)いくつかの往復移動定着機(alternating fuser)を備えることができる。いくつかの例では、これらいくつかの往復移動定着機を、位置を変えることによって張力を生み出して、それを巻付角度によって生み出される張力に上乗せすることができる定着機とすることができる。いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体が往復移動定着機を通過している間に、これらの往復移動定着機を調整することができる。例えば、半乾きのインクジェット媒体が定着機304−2を通過している間に、定着機304−2を矢印312の方向に移動させて、定着機304−2の元の位置よりも相対的に低い位置に来るように調整することができる。
【0023】
いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体が、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nのうちの特定の組み合わせの定着機を通過するときに、往復移動定着機は位置を変えることができる。例えば、定着機304−2を往復移動定着機とすることができる。この例では、半乾きのインクジェット媒体が定着機304−1、定着機304−2、および定着機304−3を通過している間に、定着機304−2が矢印312の方向の位置に来るように調整することができる。この例では、半乾きのインクジェット媒体により大きな張力を加えることができる。例えば、定着機304−2の位置が矢印312の方向に変化すると、半乾きのインクジェット媒体は、定着機304−1と定着機304−3とで半乾きのインクジェット媒体を保持できるような位置をとることができる。
【0024】
いくつかの例では、2つの固定定着機の間ごとに配置されるいくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを、往復移動定着機とすることができる。本明細書において、固定定着機(stationary fuser)は、半乾きのインクジェット媒体の通過には調整を行うことができない定着機とすることができる。例えば、定着機304−1および定着機304−3を固定定着機とする一方、定着機304−2を往復移動定着機とすることができる。いくつかの例では、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nをいずれも往復移動定着機とすることができる。例えば、定着機304−1が(例えば、矢印312の方向とは反対方向の)第1の位置に変化し、定着機304−2が、(例えば、矢印312の方向の)第2の位置に変化し、定着機304−3が第1の位置に変化することができる。これらの例では、半乾きのインクジェット媒体に互いに反対方向の張力を加えることによって、比較的大きな張力を半乾きのインクジェット媒体に加えることができる。このような位置変化は、定着機304−2を所定の位置まで強制的に移動させるのではなく、矢印312の方向に力を加えることによって実現することができる。
【0025】
いくつかの例では、プリンタ302に最も近い定着機を固定定着機とすることができる。いくつかの例では、仕上げ機310に最も近い定着機を固定定着機とすることができる。いくつかの例では、或る定着機に隣接する定着機が媒体を保持している間に、当該或る定着機に対して張力を加えることができる。例えば、半乾きのインクジェット媒体が定着機304−1と定着機304−3とによって保持されている間、定着機308−2に対して矢印312の方向に張力を加えることができる。
【0026】
いくつかの例では、より多数の定着機を設けたり、より少数の定着機を設けたりすることもできる。いくつかの例では、半乾きのインクジェット媒体を仕上げ機310に送給する前に、半乾きのインクジェット媒体がいくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを複数回通過するように送給することにより、利用する定着機の数を低減することができる。また、いくつかの例では、いくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを利用して、半乾きのインクジェット媒体を仕上げ機310に送給する前に、半乾きのインクジェット媒体がいくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを複数回通過するように循環させることもできる。
【0027】
システム300を利用することにより、半乾きのインクジェット媒体がいくつかの定着機304−1,304−2,304−3,304−Nを通過している間に、半乾きのインクジェット媒体に対して熱、圧力、張力のいずれかまたはすべてを加えることができる。本明細書に記載するように、熱、圧力、張力のいずれかまたはすべてを加えることによって、半乾きのインクジェット媒体に生じているいくつかの特性変化を元の状態に戻すことができる。本明細書に記載するように、システム300を利用して、プリンタ302が生成する半乾きのインクジェット媒体を、仕上げ機310が行う仕上げ処理用に調製することができる。
【0028】
本明細書において、「論理回路(logic)」とは、メモリに格納されてプロセッサが実行可能な、例えばソフトウェアやファームウェアなどのコンピュータ実行可能命令ではなく、例えば、様々な形態のトランジスタ論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)などのハードウェアを備えている、本明細書に記載の特定の動作、機能、またはその両方などを実行するための処理リソースである。さらに、本明細書において、「a」または「いくつかの(a number of)」によって導かれるものは、1つのものまたは複数のものを指すことができる。例えば、「いくつかのウィジェット」は、1つのウィジェットまたは複数のウィジェットを指すことができる。
【0029】
上述の明細書、例およびデータは、本開示の方法および用途、ならびに本開示のシステムおよび方法の利用を説明するためのものである。本開示のシステムおよび方法の趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの例を実現することができるため、本明細書は、単にそれら多くの可能な構成例や実施態様例のうちの一部を記載しているに過ぎない。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1〜15の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
印刷装置から半乾きのインクジェット媒体を受け取るように整列されており、それぞれが受け取った前記半乾きのインクジェット媒体に対して圧力を加えるための上側ローラと下側ローラとを備えている複数の定着機と、
前記複数の定着機から前記半乾きのインクジェット媒体を受け取る仕上げ機と
を備えている装置。
(請求項2)
前記複数の定着機のいくつかの前記上側ローラが、加熱ローラで構成されている、請求項1に記載の装置。
(請求項3)
前記複数の定着機のいくつかの前記下側ローラが、加熱ローラで構成されている、請求項1に記載の装置
(請求項4)
前記複数の定着機うちの第1の定着機が、加熱ローラである下側ローラと、非加熱ローラである上側ローラとを備えている、請求項1に記載の装置。
(請求項5)
前記複数の定着機うちの第2の定着機が、非加熱ローラである下側ローラと、加熱ローラである上側ローラとを備えている、請求項4に記載の装置。
(請求項6)
半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムであって、
複数の定着機を備える調整機であって、前記複数の定着機は半乾きのインクジェット媒体が前記調整機を通過している間に圧力を加えるものである、調整機と
前記調整機の第1の端部に連結されて、半乾きのインクジェット媒体を前記調整機に送給する印刷装置と、
前記調整機の第2の端部に連結されて、半乾きのインクジェット媒体を前記調整機から受け取る仕上げ装置と
を備えるシステム。
(請求項7)
前記半乾きのインクジェット媒体が第1の定着機から第2の定着機まで通過する間に、前記複数の定着機が、前記半乾きのインクジェット媒体に対して巻付角度を適用する、請求項6に記載のシステム。
(請求項8)
前記複数の定着機のうちの少なくとも1つの定着機の位置が、前記半乾きのインクジェット媒体が前記複数の定着機のうちの前記少なくとも1つの定着機を通過している間に変更される、請求項7に記載のシステム。
(請求項9)
前記複数の定着機のうちの前記少なくとも1つの定着機は、少なくとも2つの固定定着機の間に配置されている、請求項8に記載のシステム。
(請求項10)
前記調整機に連結されている空気循環装置を備える、請求項6に記載のシステム。
(請求項11)
前記空気循環装置が前記調整機内の空気を循環させて、前記調整機内から水分を除去する、請求項10に記載のシステム。
(請求項12)
調整機を備える、半乾きのインクジェット媒体用の定着機のシステムであって、
前記調整機は、
下側の加熱ローラと上側の非加熱ローラとを備えており、印刷装置から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第1の定着機と、
下側の非加熱ローラと上側の加熱ローラとを備えており、前記第1の定着機から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第2の定着機と、
下側の加熱ローラと上側の非加熱ローラとを備えており、前記第2の定着機から半乾きのインクジェット媒体を受け取る第3の定着機と
を備えてなる、システム。
(請求項13)
前記第1の定着機と前記第3の定着機とを第1のレベルで実質的に整列させ、前記第2の定着機を前記第1のレベルとは異なる第2のレベルに配置している、請求項12に記載のシステム。
(請求項14)
前記第2の定着機は、前記第1の定着機および前記第3の定着機に比べて上乗せされた張力を前記半乾きのインクジェット媒体に対して加える、請求項13に記載のシステム。
(請求項15)
前記半乾きのインクジェット媒体が前記調整機を通過する際、前記半乾きのインクジェット媒体は対応する加熱ローラに巻き付く、請求項13に記載のシステム。
図1
図2
図3