(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6671535
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】田植補助具
(51)【国際特許分類】
A01C 11/00 20060101AFI20200316BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
A01C11/00 Z
A01C11/02 310
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-236435(P2019-236435)
(22)【出願日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519463916
【氏名又は名称】泉 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】泉 武彦
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−134214(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3007712(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3024019(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00−11/04
A01C 5/00− 5/08
A01B 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の先端部が筒状且つ開口している本体を備え、
前記本体の先端部には前記本体の長手方向に沿って第1の切り欠き及び第2の切り欠きが形成されており、
前記第1の切り欠きは稲の苗株を挟んで保持する保持部として機能し、
前記本体の先端部の内部空間が前記苗株の根が収容される収容室として機能し、
前記第2の切り欠きは前記収容室に田の泥を侵入させる泥侵入部として機能する、
ことを特徴とする田植補助具。
【請求項2】
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きの幅が異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の田植補助具。
【請求項3】
前記本体の長さが可変可能である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の田植補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
田植作業では田植機が普及し、ほとんどの田で利用されている。しかし、田植機による作業は機械的作業であるため、機械が苗をつかみ損ねて田植ができなかった箇所や、田の角など田植機では作業できない箇所が生じる。このように、田の全ての範囲に田植機で田植えを行うことは難しく、所謂アキ箇所が発生しやすい。生じたアキ箇所には、後々人の手で手植えが行われる。
【0003】
手植えでは、作業者がアキ箇所まで行き、腰を曲げての作業となるため、重労働である。このような状況を踏まえ、手植えが容易に行えるよう、田植補助具が提案されている(特許文献1)。特許文献1の田植補助具は、ステッキの先端部に二股爪が突出したものである。この二股爪に苗株の根元を挟んだ状態で、アキ箇所に向けて差し込み、引き抜くことで、苗株を植えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3007712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
田植機による田植えを行う際、事前に田に水を引き入れて代掻きを行い、苗を植えやすい状態にする必要がある。田植えにおいては、苗株の根を田の泥の中に押し込む必要があり、代掻き後の水田では泥がゆるいので、苗株の根は泥の中にすんなり入り込んでいく。
【0006】
田植機で田植えをした後、時間の経過とともに田の泥が締まってゆき、苗株の根元を泥の中に押し込みにくくなってゆく。特許文献1の田植補助具は、太さ0.5cmほどで先が尖鋭な棒状体である二股爪に苗株を挟持する構造ゆえ、泥が締まった状態の田では、二股爪は泥に刺さっていくものの、苗株の根元を泥の中に押し込み難いという課題がある。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、田の泥が多少締まった状態でも田植えが可能な田植補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る田植補助具は、
一方の先端部が筒状且つ開口している本体を備え、
前記本体の先端部には前記本体の長手方向に沿って第1の切り欠き及び第2の切り欠きが形成されており、
前記第1の切り欠きは稲の苗株を挟んで保持する保持部として機能し、
前記本体の先端部の内部空間が前記苗株の根が収容される収容室として機能し、
前記第2の切り欠きは前記収容室に田の泥を侵入させる泥侵入部として機能する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きの幅が異なっていてもよい。
【0010】
前記本体の長さが可変可能であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る田植補助具では、田の泥が多少締まった状態でも田植えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2(A)は、田植補助具の先端部を示す平面図、
図2(B)は
図2(A)のA−A’断面図である。
【
図3】
図3(A)は、田植補助具の使用方法を説明する図、
図3(B)は、
図3(A)のA−A’断面図である。
【
図4】
図4(A)は、田植補助具の使用方法を説明する図、
図4(B)は、
図4(A)のA−A’断面図である。
【
図5】
図5(A)は、田植補助具の使用方法を説明する図、
図5(B)は、
図5(A)のA−A’断面図である。
【
図6】
図6(A)は、田植補助具の使用方法を説明する図、
図6(B)は、
図6(A)のA−A’断面図である。
【
図7】
図7は、他の形態に係る田植補助具の斜視図である。
【
図8】
図8は、他の形態に係る田植補助具の先端部の断面図である。
【
図9】
図9(A)、(B)、(C)は、他の形態に係る田植補助具の先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る田植補助具1は、
図1、
図2に示すように、一方の先端部が筒状、且つ、開口している本体10を備える。本体10の先端部には、対向する2つの切り欠き11a、11bが形成されている。切り欠き11a、11bは本体10の長手方向に沿って形成されている。切り欠き11a、11bの幅(
図2に示すD1、D2)は、例えば、5〜10mm程度であり、長さは10〜30mm程度である。なお、本体10の他方の先端部は、作業者が手に持つグリップとなる。
【0014】
一方の切り欠き11aは、稲の苗株を挟持して保持する保持部として機能する。また、他方の切り欠き11bは、田の泥を収容室12に侵入させる泥侵入部として機能する。そして、切り欠き11bを挟む本体10の壁が泥掻き部として機能し、泥掻き部は泥を掻き分けて、苗株の根が配置される空間を作りだす。そして、切り欠き11a、11bを挟む本体10の壁に囲まれた空間が苗株の根が収容される収容室12として機能する。
【0015】
この田植補助具1を使用して田植えを行う方法について説明する。まず、
図3(A)、(B)に示すように、稲の苗株の根が収容室12に収容されるようにして、苗株を挟持して保持させる。
【0016】
苗株を保持した後、
図4(A)、(B)に示すように、田植補助具1の先端部を田のアキ箇所の泥の中に押し込む。押し込むことにより先端部が泥を掻き分けてゆくとともに、泥が切り欠き11bから収容室12に入り込んでいく。
【0017】
そして、
図5(A)、(B)に示すように、所定の深さまで、先端部を泥に押し込む。具体的には苗株の根の上部が2cm程度埋まるまで、即ち、切り欠き11aが2cm程度埋まるまで、押し込めばよい。田の泥の締まり具合によって収容室12への泥の侵入速度が異なるので、泥の締まり具合に応じ、収容室12の内部が十分に泥で満たされるまで適宜待つとよい。
【0018】
その後、
図6(A)、(B)に示すように、田植補助具1を泥の中から引き抜く。田植補助具1を引き抜く際、田植補助具1の長手方向に直線的に引き抜くとよい。収容室12内が泥で満たされていると、苗株の根が泥に埋まった状態になっているので、田植補助具1を引き抜けば保持されていた苗株は切り欠き11aから離脱する。このようにして苗株を植えることができる。
【0019】
このように田植補助具1は、泥を掻き分けて苗株の根が泥の中に入るスペースを作り、そのスペースに苗株を配置することができるため、田植機による田植えが終わった後、多少泥が締まった状態であっても、苗株を植えることが可能である。
【0020】
なお、本体10の長さは、例えば、80cm〜120cmなど、適宜設定されればよい。また、本体10は、状況に応じて適宜長さが変えられる形態であってもよい。例えば、
図7に示すように、本体10a、10bが相互にスライドして伸縮可能な形態や、本体10が複数本の継手式として長さが調節できる形態などが挙げられる。
【0021】
また、本体10の材質は、作業性及び泥の中への押し込みの安定性の観点から、軽量で物理的強度を備えていればよく、例えば、塩化ビニル等の樹脂のパイプであってもよい。塩化ビニル等の樹脂のパイプは十分な厚み(例えば、2〜3mm)があれば、機械的強度が保たれるとともに、軽量であるので作業性に優れる。また、塩化ビニル等の樹脂のパイプは安価で加工が容易なため、田植補助具1の製造コストも安くできる。なお、本体10の材質に特に制限はなく、塩化ビニル以外の硬質の樹脂のほか、アルミニウム等の金属製であってもよい。
【0022】
対向して形成されるそれぞれの切り欠き11a、11bの幅(
図2(B)に示すD1、D2)は、異なっていてもよい。例えば、一方の切り欠き11aの幅を8mm、他方の切り欠き11bの幅を10mmとし、苗株の太さや量に応じていずれかの切り欠き11a又は切り欠き11bが保持部として機能して苗株を保持することで、1本の田植用補助具1で適宜使い分けることができる。この場合、他方の切り欠き11b、11aが収容室12への泥の侵入を促す泥侵入部として機能することになる。
【0023】
また、切り欠き11a、11bは3つ以上形成されていてもよく、例えば、
図8に示すように、4つの切り欠き11a、11bが形成されていてもよい。いずれか1つの切り欠き11aが保持部として機能し、他の3つの切り欠き11bが泥侵入部として機能する形態であってもよい。
【0024】
また、先端部の形状は、円形状のほか、例えば、
図9(A)、(B)、(C)に示すように、3角形や4角形、6角形などの多角形状など、上述した機能を果たす限り種々の形状であってもよい。なお、泥を掻き分ける機能が損なわれないよう、泥掻き部が湾曲状やテーパー状等、切り欠き11bから切り欠き11aの方に向けて広がっている形状であるとよい。
【符号の説明】
【0025】
1 田植補助具
10 本体
10a 本体
10b 本体
11a 切り欠き(保持部)
11b 切り欠き(泥侵入部)
12 収容室
【要約】
【課題】田の泥が多少締まった状態でも田植えが可能な田植補助具を提供する。
【解決手段】田植補助具1は、一方の先端部が筒状且つ開口している本体10を備え、本体10の先端部には本体10の長手方向に沿って第1の切り欠き11a及び第2の切り欠き11bが形成されており、第1の切り欠き11aは稲の苗株を挟んで保持する保持部として機能し、本体10の先端部の内部空間が苗株の根が収容される収容室12として機能し、第2の切り欠き11bは収容室12に田の泥を侵入させる泥侵入部として機能する。
【選択図】
図1