特許第6671552号(P6671552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジーの特許一覧

特許6671552新規のピリミジン化合物、それを調製する方法、及び癌及び炎症性疾患を予防又は治療するための該ピリミジン化合物を含有する医薬組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671552
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】新規のピリミジン化合物、それを調製する方法、及び癌及び炎症性疾患を予防又は治療するための該ピリミジン化合物を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/48 20060101AFI20200316BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200316BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20200316BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20200316BHJP
【FI】
   C07D239/48CSP
   C07D405/12
   A61K31/505
   A61K31/506
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P1/00
   A61P1/02
   A61P17/00
   A61P27/02
   A61P25/00 101
   A61P19/02
   A61P3/10
   A61P25/28
   C07D401/12
   A23L33/10
【請求項の数】8
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2019-535276(P2019-535276)
(86)(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公表番号】特表2019-534319(P2019-534319A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2017012222
(87)【国際公開番号】WO2018088749
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0147977
(32)【優先日】2016年11月8日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505386867
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】イ、クァンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョエ、ギルドン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナリ
(72)【発明者】
【氏名】パク、サンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミョンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、キョンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジヒ
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540012(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0176826(US,A1)
【文献】 特表2005−509624(JP,A)
【文献】 特表2006−508997(JP,A)
【文献】 特開2009−155223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 239/48
A23L 33/10
A61K 31/505
A61K 31/506
A61P 1/00
A61P 1/02
A61P 3/10
A61P 17/00
A61P 19/02
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 35/00
C07D 401/12
C07D 405/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
(式1中、
nは1又は2の整数であり、
は−Cl又は−CHであり、
は−H又は−Clであり、
は−H、−F、−Cl、−Br、メチル、エチル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、−OCH
【化2】
であるか、又は、R及び各隣接炭素に連結して、
【化3】
を形成し、
は−H、−Cl、−CH又は−CFである)。
【請求項2】
前記式1で表される化合物が、以下の化合物:
(1)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(2)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(3)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−イソプロピルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(4)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ペンチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(5)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−オクチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(6)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(7)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(8)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(9)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(10)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(11)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−エチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(12)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ヘキシルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(13)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(14)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジメチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(15)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(16)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(17)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(18)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(19)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(20)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(21)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(22)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(23)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(24)6−(4−(3−アミノプロピルアミノ)−5−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン、
(25)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(26)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペリジン−4−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(27)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(28)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(29)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(30)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(31)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(32)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(33)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(34)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(35)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(36)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(37)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジメチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(38)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(39)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(40)N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、及び、
(41)N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(3,5−ジクロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
請求項1に記載の式1で表される化合物の調製方法であって、下記反応式1に示されるように、式2で表される化合物と式3で表される化合物とを反応させることによって、式4で表される化合物を調製する工程(工程1)と、上記工程1において調製された式4で表される化合物と、式5で表される化合物とを酸の存在下で反応させることによって、式1で表される化合物を調製する工程(工程2)とを含む、調製方法。
【化4】
(反応式1中、n、R、R、R及びRは独立して、式1において規定される通りである。)
【請求項4】
癌の予防又は治療のための活性成分として請求項1に記載の式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項5】
前記癌が偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞癌、男性乳癌、脳癌、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢癌、胆道癌、結腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳癌、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、腎癌、腎臓癌、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部腫瘍、悪性骨癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発不明癌、胃リンパ腫、胃癌、胃カルチノイド、消化管間質癌、ウィルムス腫瘍、乳癌、肉腫、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳癌、縦隔癌、直腸癌、直腸カルチノイド、膣癌、脊髄癌、前庭神経鞘腫、膵癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃癌、扁平上皮癌、肺腺癌、肺癌、肺の扁平上皮癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌及び胸腺癌からなる群から選択される1つ以上の癌である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として請求項1に記載の式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項7】
前記炎症性疾患が自己免疫疾患の炎症性大腸炎、クローン病、ベーチェット病、多発性硬化症、黄斑変性症、関節炎、1型糖尿病、脳炎及びウイルス性髄膜炎からなる群から選択される1つ以上の疾患である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
癌の予防又は改善のための活性成分として請求項1に記載の式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のピリミジン化合物、それを調製する方法、及び癌及び炎症性疾患を予防又は治療するための活性成分として該ピリミジン化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
TGF−β(形質転換成長因子−β)は、細胞の増殖、分化、アポトーシス、移動、細胞外基質(ECM)産生、血管形成及び発生等の様々なin vivo生理的過程を調節するサイトカインである。活性TGF−βは、25kDaの二量体の形態である。このサイトカインは、細胞によって分泌され、活性化されると、細胞膜上のセリン/トレオニン受容体キナーゼに結合し、シグナルが伝えられる。細胞膜上のTGF−β受容体は、I型及びII型からなる。受容体がTGF−βに結合すると、これら2種類の受容体がヘテロ四量体複合体を形成し、常時活性のII型受容体がI型受容体をリン酸化することで、キナーゼの活性化がもたらされる。
【0003】
TGF−βによって媒介されるシグナル伝達では、細胞外シグナルを核内に伝えるメディエーターは、Smadと呼ばれる転写因子である。II型受容体によってリン酸化されたI型受容体がSmadをリン酸化し、活性化する。リン酸化Smadタンパク質は、核内に入り、核内の転写因子と協働して様々な遺伝子の発現を調節する(非特許文献1)。
【0004】
TGF−βに対する細胞応答は、細胞の種類及び刺激条件に応じて異なり、例えば増殖、細胞死及び分化等を促進又は阻害する。TGF−βファミリーに属するサイトカインは、様々なI型及びII型受容体を用いる。これまで、ALK(アクチビン受容体様キナーゼ)と呼ばれる7種類のI型受容体が同定され、5種類のII型受容体が同定されている。殆どの細胞型において、TGF−βは、ALK5及びTR−2(精巣受容体−2)受容体を用いる。
【0005】
8種類のSmadタンパク質が同定されており、これらは、受容体活性化Smad(R−Smad;Smad1、Smad2、Smad3、Smad5及びSmad8)、共通メディエーターSmad(Co−Smad;Smad4)及び抑制性Smad(l−Smad;Smad6及びSmad7)のように、機能に応じて3つの群に分けられる。概して、TGF−β/アクチビン/Nodal群は、Smad2及びSmad3を用い、BMP/GDF/MIS群は、R−SmadのSmad1、Smad5及びSmad8を用いる。リガンドが結合すると、I型受容体は、R−Smadのカルボキシ末端のSSXSモチーフを直接リン酸化し、リン酸化R−SmadがCo−SmadであるSmad4に結合し、これが核内に入り、DNA上のSmad結合要素(SBE)に結合する。SBEは、他の転写因子の結合部位となることが多く、Smadタンパク質が他の転写因子に結合し、それらと協働して遺伝子発現を調節することが示唆される。R−Smad及びCo−Smadとは異なり、I−Smad(Smad6、7)は、I型受容体によってリン酸化されるカルボキシ末端を有さず、TGF−βシグナル伝達を阻害する。最もよく知られているTGF−βに対する細胞応答は、細胞成長の停止である。TGF−βは上皮細胞、内皮細胞、血液細胞及びニューロンにおける成長停止を誘導する。TGF−βの刺激は、細胞周期のいずれの段階においてもシグナル伝達を誘導するが、G1細胞周期の停止を誘導する。
【0006】
上皮細胞におけるTGF−βの刺激は、p21Cip1/WAF1及びp151nk4b等のサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の転写を誘導することで、抗増殖応答を活性化し、G1細胞周期の停止を誘導する。加えて、TGF−βは成長因子、並びに分解阻害因子ld1、ld2及びld3の転写を阻害する。さらに、TGF−βは、様々な細胞死応答を誘導することが知られている。
【0007】
上記のように、TGF−β及びそのシグナル伝達メディエーターSmadは、細胞の成長、発生及び分化等の生理的機能だけでなく、癌及び線維症等の様々な疾患の発生及び進行においても重要な役割を果たす要素である。したがって、シグナル伝達を調節する活性系及びそれをスクリーニングする方法についての研究が積極的に行われている。
【0008】
一方、プロテインキナーゼは、セリン、トレオニン又はチロシン(tyrosine)のヒドロキシル基のリン酸化を誘導する触媒酵素であるホスホトランスフェラーゼ(phosphotransferases)の1つである。シグナル伝達系では、受容体チロシンキナーゼは、細胞の成長及び増殖において重要な役割を果たすが、遺伝子過剰発現、遺伝子突然変異及び遺伝子増幅等の様々な理由によって異常に活性化されると様々な疾患の原因となる可能性があるため、治療剤の開発の主要な標的となっている。
【0009】
DRAK(Death-associated protein-kinase-Related Apoptosis Kinase;細胞死関連プロテインキナーゼ関連アポトーシスキナーゼ)は、TGF−βシグナル伝達に関与するタンパク質であり、セリン/トレオニンキナーゼとしてホモ二量体を形成することによって活性化する。
【0010】
DRAK1及びDRAK2によって媒介されるTGF−βは、上述のように細胞増殖、分化、移動及びアポトーシス等の基本的細胞機能に関与する。TGF−βリガンドは、セリン/トレオニンキナーゼであるI型及びII型TGF−β受容体に結合することによってシグナルを伝え、メディエーターとしてI型TGF−β受容体基質Smad2及びSmad3を用いることによって細胞の成長阻害に関与するTGF−β特異的遺伝子の発現を活性化する。この時点で、TGF−βシグナル伝達系によって細胞の恒常性を維持するために、Smad6及びSmad7タンパク質がTGF−βシグナル伝達の抑制において役割を果たす。TGF−βシグナル伝達の結果として、細胞の成長が抑制され、腫瘍を抑制することができる。
【0011】
正常細胞とは異なり、癌細胞はTGF−βに対する抵抗性を示すが、これは、TGF−β/Smadシグナル伝達経路を制御する阻害性/負のフィードバックループに関与することが知られるSmad7、TMEPA I及びFKBP 12等の負の調節因子の過剰発現に起因するようである。
【0012】
TGF−β関連疾患を理解するために、TGF−βシグナル伝達系の既知の負の調節因子に加えて新規の調節因子を開発する必要がある。
【0013】
Cell Reportの最近の論文に、T細胞活性化及び自己免疫疾患に関与するセリン/トレオニンキナーゼであるDRAK2(細胞死関連プロテインキナーゼ関連アポトーシスキナーゼ2)がI型TGF−β受容体に結合することが報告されており、これは、酵母ツーハイブリッドシステムを用いてTGF−β受容体に結合するタンパク質を同定する過程で確認された。DRAK2が上皮細胞癌においてI型TGF−β受容体に結合することによってTGF−β/Smadシグナル伝達を負に阻害し、TGF−βの癌形成阻害能の干渉を引き起こすことも確認されている。
【0014】
DRAK1及びDRAK2タンパク質の機能は、免疫系疾患に重点が置かれているが、より多様な組織における研究の必要性が提唱されている。特に、TGF−βシグナル伝達の新規のアンタゴニストとして機能するこれらのタンパク質は、TGF−β関連疾患の治療剤の開発にとって有望な標的となる可能性がある。
【0015】
このため、本発明者らは、DRAK活性阻害効果を示す化合物の開発を試みた。結果として、本発明者らは、本発明のピリミジン化合物及びその薬学的に許容可能な塩がDRAK阻害因子として機能することができ、癌及び炎症性疾患の予防剤又は治療剤として使用され得ることを確認し、本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Masque J. Seoane J, Wotton D.著 Genes & Development 19: p.2783-2810, 2005年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、新規のピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、上記の新規のピリミジン化合物の調製方法を提供することである。
【0019】
癌の予防又は治療のための活性成分として新規のピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供することも本発明の目的である。
【0020】
炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として新規のピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供することが本発明の更なる目的である。
【0021】
癌の予防又は改善のための活性成分として新規のピリミジン化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む健康機能食品を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【化1】
式1中、
nは1又は2の整数であり、
は−H、ハロゲン、又はC1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルであり、
は−H又はハロゲンであり、
は−H、ハロゲン、C1〜10直鎖状若しくは分岐アルキル、C1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ、
【化2】
であり、R及び各隣接炭素に連結して、
【化3】
を形成し、
は−H、ハロゲン、又は非置換若しくは1つ以上のハロゲンで置換されたC1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルである。
【0023】
本発明は、上記式1で表される化合物の調製方法であって、下記反応式1に示されるように、式2で表される化合物と式3で表される化合物とを反応させることによって、式4で表される化合物を調製する工程(工程1)と、上記工程1において調製された式4で表される化合物と、式5で表される化合物とを酸の存在下で反応させることによって、式1で表される化合物を調製する工程(工程2)とを含む、調製方法も提供する。
【0024】
【化4】
【0025】
反応式1中、n、R、R、R及びRは独立して、式1において規定される通りである。
【0026】
さらに、本発明は、癌の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物も提供する。
【0028】
本発明は、癌の予防又は改善のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む健康機能食品も提供する。
【0029】
本発明は、上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む医薬組成物又は健康機能食品を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、癌を予防又は治療する方法も提供する。
【0030】
本発明は、癌の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物又は健康機能食品の使用も提供する。
【0031】
本発明は、上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む医薬組成物又は健康機能食品を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、炎症性疾患を予防又は治療する方法も提供する。
【0032】
加えて、本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物又は健康機能食品の使用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の新規のピリミジン化合物は、癌増殖の阻害において役割を果たすTGF−βシグナル伝達系に干渉することが知られるDRAKの活性を顕著に阻害する。したがって、このピリミジン化合物は、癌及び炎症性疾患を予防又は治療するための医薬組成物として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0035】
本発明は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【化5】
式1中、
nは1又は2の整数であり、
は−H、ハロゲン、又はC1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルであり、
は−H又はハロゲンであり、
は−H、ハロゲン、C1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ、
【化6】
であり、R及び各隣接炭素に連結して、
【化7】
を形成し、
は−H、ハロゲン、又は非置換若しくは1つ以上のハロゲンで置換されたC1〜10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルである。
【0036】
好ましくは、
nが1又は2の整数であり、
が−H、ハロゲン、又はC1〜8直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルであり、
が−H又はハロゲンであり、
が−H、ハロゲン、C1〜8直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1〜8直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ、
【化8】
であり、R及び各隣接炭素に連結して、
【化9】
を形成し、
が−H、ハロゲン、又は非置換若しくは1つ以上のハロゲンで置換されたC1〜8直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルである。
【0037】
より好ましくは、
nが1又は2の整数であり、
が−H、−Cl又は−CHであり、
が−H又は−Clであり、
が−H、−F、−Cl、−Br、メチル、エチル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、−OCH
【化10】
であり、R及び各隣接炭素に連結して、
【化11】
を形成し、
が−H、−Cl、−CH又は−CFである。
【0038】
最も好ましくは、上記式1で表される化合物が、以下の化合物:
(1)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(2)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(3)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−イソプロピルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(4)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ペンチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(5)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−オクチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(6)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(7)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(8)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(9)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(10)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(11)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−エチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(12)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ヘキシルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(13)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(14)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジメチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(15)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(16)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(17)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(18)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(19)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(20)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、
(21)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(22)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(23)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(24)6−(4−(3−アミノプロピルアミノ)−5−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン、
(25)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(26)N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペリジン−4−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(27)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(28)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(29)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(30)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(31)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(32)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(33)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(34)N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン、
(35)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(36)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(37)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジメチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(38)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(39)N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミン、
(40)N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミン、及び、
(41)N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(3,5−ジクロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンからなる群から選択される。
【0039】
本発明の式1で表される化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態として使用することができ、該塩は、薬学的に許容可能な遊離酸によって形成される酸付加塩であることが好ましい。本明細書において、酸付加塩を、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸及び亜リン酸等の無機酸;脂肪族モノ/ジカルボキシレート、フェニル置換アルカノエート、ヒドロキシアルカノエート、アルカンジオエート(alkandioate)、芳香族酸、及び脂肪族/芳香族スルホン酸等の毒性のない有機酸;又は酢酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、酒石酸及びフマル酸等の有機酸から得ることができる。薬学的に毒性のない塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩(propiolate)、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩(sebacate)、フマル酸塩、マレイン酸塩(maleate)、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキサン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩(phenylbutyrate)、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシ酪酸塩(hydroxybutyrate)、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、及びマンデル酸塩により例示される。
【0040】
本発明において酸付加塩を、当業者に知られている従来の方法によって調製することができる。例えば、式1で表される誘導体をメタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン及びアセトニトリル等の有機溶媒に溶解し、これに有機酸又は無機酸を添加して沈殿を誘導する。次いで、沈殿物を濾過し、乾燥させて塩を得る。或いは、溶媒及び過剰な酸を減圧下で留出させ、乾燥させて塩を得る。或いは、沈殿物を有機溶媒中で結晶化させて塩を得る。
【0041】
薬学的に許容可能な金属塩は、塩基を使用して調製することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は以下の方法によって得られる:過剰なアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の溶液中に化合物を溶解し、不溶性化合物塩を濾過し、残留する溶液を蒸発させ、それを乾燥させる。この時、金属塩は、好ましくはナトリウム、カリウム又はカルシウムの塩の薬学的に好適な形態で調製される。また、対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩と適切な銀塩(例えば、硝酸銀)との反応によって調製される。
【0042】
本発明は、式1で表される化合物だけでなく、その薬学的に許容可能な塩、及びこの化合物から作製される可能性がある溶媒和化合物、立体異性体又は水和物も含む。
【0043】
本発明は、下記反応式1に示されるように、式2で表される化合物と式3で表される化合物とを反応させることによって、式4で表される化合物を調製する工程(工程1)と、上記工程1において調製された式4で表される化合物と、式5で表される化合物とを酸の存在下で反応させることによって、式1で表される化合物を調製する工程(工程2)とを含む、上記式1で表される化合物の調製方法も提供する。
【0044】
【化12】
【0045】
反応式1中、n、R、R、R及びRは独立して、式1において規定される通りである。
【0046】
以下、本発明の式1で表される化合物の調製方法を段階的により詳細に説明する。
【0047】
本発明の式1で表される化合物の調製方法において、工程1は、式2で表される化合物と式3で表される化合物とを反応させることによって、式4で表される化合物を調製する工程である。
【0048】
この際、反応温度は特に限定されないが、反応は0℃〜100℃、好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは20℃〜40℃、最も好ましくは25℃で行うことができる。
【0049】
反応時間もまた特に限定されないが、反応は1時間〜10時間、好ましくは2時間〜8時間、より好ましくは3時間〜6時間、最も好ましくは5時間にわたって行うことができる。
【0050】
本発明による式1で表される化合物の調製方法において、工程2は、上記工程1において調製された式4で表される化合物と、式5で表される化合物とを反応させることによって、式1で表される化合物を調製する工程である。
【0051】
この際、反応温度は特に限定されないが、反応は30℃〜150℃、好ましくは50℃〜140℃、より好ましくは60℃〜120℃、最も好ましくは100℃で行うことができる。
【0052】
反応時間もまた特に限定されないが、反応は6時間〜20時間、好ましくは10時間〜18時間、より好ましくは12時間〜18時間、最も好ましくは16時間にわたって行うことができる。
【0053】
酸は、−Bocの脱保護が可能な酸であれば限定されず、例えば塩酸を使用することができる。
【0054】
本発明は、癌の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物も提供する。ここで、上記癌は、偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞癌、男性乳癌、脳癌、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢癌、胆道癌、結腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔癌(sinonasal cancer)、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳癌、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、腎癌(renal cancer)、腎臓癌(kidney cancer)、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部腫瘍、悪性骨癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発不明癌、胃リンパ腫、胃癌、胃カルチノイド、消化管間質癌、ウィルムス腫瘍、乳癌、肉腫、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性(gestational trophoblastic)疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳癌、縦隔癌、直腸癌、直腸カルチノイド、膣癌、脊髄癌、前庭神経鞘腫、膵癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃癌、扁平上皮癌、肺腺癌、肺癌、肺の扁平上皮(squamous cell)癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌及び胸腺癌からなる群から選択される。
【0055】
本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物も提供する。ここで、炎症性疾患は自己免疫疾患の炎症性大腸炎、クローン病、ベーチェット病、多発性硬化症、黄斑変性症、関節炎、1型糖尿病、脳炎及びウイルス性髄膜炎からなる群から選択される。
【0056】
本発明による式1で表される化合物は、一般に使用される希釈剤、又は充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤等の賦形剤と混合することによって経口投与又は非経口投与のために調製することができる。
【0057】
経口投与用の製剤は、錠剤、丸剤、硬質/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、顆粒、及びエリキシル剤等によって例示される。これらの製剤は、活性成分に加えて、希釈剤(例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/又はグリシン)、及び滑沢剤(例えばシリカ、タルク、ステアリン酸及びそのマグネシウム塩又はカルシウム塩、及び/又はポリエチレングリコール)を含んでもよい。錠剤は、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、澱粉糊、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン等の結合剤を含んでもよく、また必要に応じて、デンプン、アガロース、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩等の崩壊剤、又は共沸混合物及び/又は吸収剤、着色剤、香料及び甘味料を更にそこに含んでもよい。
【0058】
式1で表される化合物を活性成分として含む医薬組成物は、非経口投与することができ、非経口投与には皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射及び胸腔内注射が含まれる。
【0059】
組成物を非経口投与用の製剤として調製するためには、式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を安定化剤又は緩衝剤と混合して、溶液又は懸濁液を作製し、これを続いてアンプル又はバイアルとして製剤化する。本明細書の組成物は滅菌することができ、防腐剤、安定化剤、水和剤又は乳化剤、浸透圧の調整のための塩及び/又はバッファー、並びに他の治療的に有用な物質を更に含んでもよく、該組成物を従来の混合、造粒、又はコーティングの方法によって製剤化することができる。
【0060】
本発明の式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物の効果的な投与量は患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患の重症度に応じて変化し得る。体重70kgの成人患者に基づくと、投与量は概して0.1mg/日〜1000mg/日、好ましくは1mg/日〜500mg/日である。本発明の組成物は、医師又は薬剤師の判断に従って1日1回、又は所定の時間間隔で数回投与することができる。
【0061】
本発明は、癌の予防又は改善のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む健康機能食品も提供する。
【0062】
本発明は、上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む医薬組成物又は健康機能食品を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、癌を予防又は治療する方法も提供する。
【0063】
本発明は、癌の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物又は健康機能食品の使用も提供する。
【0064】
本発明は、上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む医薬組成物又は健康機能食品を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、炎症性疾患を予防又は治療する方法も提供する。
【0065】
加えて、本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための活性成分として上記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物又は健康機能食品の使用を提供する。
【0066】
本発明の新規のピリミジン化合物は、低濃度で著しく優れたDRAK阻害活性を示すため、癌及び炎症性疾患の予防又は治療のための医薬組成物として効果的に使用することができる。このことは、以下の実験によって支持されている。
【0067】
本発明の実際的な現時点で好ましい実施形態は、以下の実施例に示されるように例示的なものである。
【0068】
しかしながら、当業者が本開示を検討することで、本発明の趣旨及び範囲内の変更及び改善を行い得ることが理解される。
【実施例】
【0069】
実施例1:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0070】
【化13】
【0071】
工程1:tert−ブチル(3−((2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)アミノ)プロピル)カルバメートの調製
2,4,5−トリクロロピリミジン(5.7mmol、1.05g)をイソプロパノール(40mL)に0℃で添加し、続いて撹拌した。tert−ブチル(3−アミノプロピル)カルバメート(5.7mmol、1g)及びトリエチルアミン(TEA)(29mmol、4mL)をこれにゆっくりと添加し、室温で5時間反応させた。反応の終了後に、反応混合物を室温に冷却した後、溶媒を減圧下で除去した。混合物をmplc(中圧液体クロマトグラフィー)によって分離した。結果として、tert−ブチル(3−((2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)アミノ)プロピル)カルバメートが白色の固体として収率89%で得られた。
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.99(br s,1H)、6.46(br s,1H)、4.85(br s,1H)、3.58(m,2H)、3.21(m,2H)、1.73(m,2H)、1.45(s,9H);
質量(M+H) C1218l2の計算値320.1、実測値321.1
【0072】
工程2:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
tert−ブチル(3−((2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)アミノ)プロピル)カルバメート(0.27mmol、86mg)及び4−クロロベンゼンアミン(0.54mmol、87mg)を、0.08N HClを含有する2−エトキシエタノールに溶解し、続いて100℃で16時間加熱した。反応の終了後に、混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。混合物を分取TLC(分取薄層(平面)クロマトグラフィー)によって分離した。結果として、N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンが固体として収率40%で得られた。
H NMR(DMSO−d6,300MHz)δ10.30(br s,1H)、8.32(br s,1H)、8.15(s,1H)、7.98(br s,2H)、7.67(d,J=8.70Hz,2H)、7.40(d,J=8.76Hz,2H)、3.50(m,2H)、2.79(m,2H)、1.89(m,2H);
質量(M+H) C1315Clの計算値311.0、実測値312.1。
【0073】
実施例2:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0074】
【化14】
【0075】
3,5−ジクロロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率12%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.06(s,1H)、7.64(s,2H)、7.29(s,2H)、3.66(t,J=6.55Hz,2H)、3.00(t,J=8.00Hz,2H)、2.04(m,2H);
質量(M+H) C1314Clの計算値345.0、実測値346.0。
【0076】
実施例3:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−イソプロピルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0077】
【化15】
【0078】
4−イソプロピルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率21%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.94(s,1H)、7.43(d,J=8.46Hz,2H)、7.33(d,J=8.46Hz,2H)、3.65(t,J=6.57Hz,2H)、2.93(m,3H)、2.02(m,2H)、1.28(d,J=6.90Hz,6H);
質量(M+H) C1622ClNの計算値319.1、実測値320.0。
【0079】
実施例4:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ペンチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0080】
【化16】
【0081】
4−ペンチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率26%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.92(s,1H)、7.43(d,J=8.28Hz,2H)、7.24(d,J=8.25Hz,2H)、3.64(t,J=6.48Hz,2H)、2.97(t,J=7.53Hz,2H)、2.63(t,J=7.53Hz,2H)、2.01(m,2H)、1.63(m,2H)、1.36(m,4H)、0.92(t,J=6.57Hz,3H);
質量(M+H) C1826ClNの計算値347.1、実測値348.1。
【0082】
実施例5:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−オクチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0083】
【化17】
【0084】
4−オクチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率49%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.87(s,1H)、7.36(d,J=8.40Hz,2H)、7.21(d,J=8.40Hz,2H)、3.59(t,J=6.57Hz,2H)、2.91(t,J=7.68Hz,2H)、2.58(t,J=8.28Hz,2H)、1.93(m,2H)、1.58(m,2H)、1.25(m,8H)、0.85(t,J=6.99Hz,3H);
質量(M+H) C2132ClNの計算値389.2、実測値390.2。
【0085】
実施例6:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0086】
【化18】
【0087】
3−クロロ−4−メチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率38%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.96(s,1H)、7.83(s,1H)、7.28(m,2H)、3.65(t,J=6.60Hz,2H)、3.01(t,J=7.68Hz,2H)、2.35(s,3H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1417Clの計算値325.1、実測値326.1。
【0088】
実施例7:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0089】
【化19】
【0090】
3−クロロ−4−フルオロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率11%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.04(dd,J=6.72Hz,2.64Hz,1H)、7.90(s,1H)、7.40(m,1H)、7.15(m1H)、3.62(t,J=6.42Hz,2H)、3.01(t,J=7.47Hz,2H)、2.03(m,2H);
質量(M+H) C1314ClFNの計算値329.0、実測値330.0。
【0091】
実施例8:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジクロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0092】
【化20】
【0093】
3,4−ジクロロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率20%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.11(s,1H)、7.98(s,1H)、7.43(m,2H)、3.65(t,J=6.57Hz,2H)、2.99(t,J=8.01Hz,2H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1314Clの計算値345.0、実測値346.0。
【0094】
実施例9:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0095】
【化21】
【0096】
4−フルオロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率40%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ7.99(s,1H)、7.53(m,2H)、7.24(t,J=8.60Hz,2H)、3.64(t,J=6.60Hz,2H)、2.96(t,J=7.70Hz,2H)、2.01(m,2H);
質量(M+H) C1315ClFNの計算値295.1、実測値296.1。
【0097】
実施例10:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0098】
【化22】
【0099】
4−フェノキシベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率89%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ7.96(s,1H)、7.48(d,J=8.75Hz,2H)、7.41(m,2H)、7.17(t,J=7.5Hz,1H)、7.10(m,2H)、7.05(d,J=7.90Hz,2H)、3.66(t,J=6.65Hz,2H)、2.98(t,J=7.70Hz,2H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1920ClNOの計算値369.1、実測値370.1。
【0100】
実施例11:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−エチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0101】
【化23】
【0102】
4−エチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率55%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ7.94(s,1H)、7.40(d,J=8.25Hz,2H)、7.33(d,J=8.35Hz,2H)、3.66(t,J=6.70Hz,2H)、2.98(t,J=7.75Hz,2H)、2.70(m,2H)、2.02(m,2H)、1.27(t,J=7.60Hz,3H);
質量(M+H) C1520ClNの計算値305.1、実測値305.9。
【0103】
実施例12:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−ヘキシルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0104】
【化24】
【0105】
4−ヘキシルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率20%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ7.94(s,1H)、7.39(d,J=8.15Hz,2H)、7.31(d,J=8.25Hz,2H)、3.66(t,J=6.50Hz,2H)、2.99(t,J=7.60Hz,2H)、2.67(t,J=7.60Hz,2H)、2.04(m,2H)、1.64(m,2H)、1.36(m,6H)、0.92(t,J=6.80Hz,3H);
質量(M+H) C1928ClNの計算値361.2、実測値362.2。
【0106】
実施例13:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0107】
【化25】
【0108】
4−(4−ニトロフェニルスルホニル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率30%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ8.44(d,J=8.85Hz,2H)、8.25(d,J=8.80Hz,2H)、8.11(s,1H)、8.09(d,J=8.90Hz,2H)、7.87(d,J=8.80Hz,2H)、3.70(t,J=6.70Hz,2H)、3.01(t,J=7.65Hz,2H)、2.04(m,2H);
質量(M+H) C1919ClNSの計算値462.1、実測値463.1。
【0109】
実施例14:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3,4−ジメチルフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0110】
【化26】
【0111】
3,4−ジメチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率64%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.91(s,1H)、7.21(m,3H)、3.66(t,J=6.42Hz,2H)、2.98(t,J=7.71Hz,2H)、2.30(s,3H)、2.28(s,3H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1520ClNの計算値305.1、実測値306.1。
【0112】
実施例15:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0113】
【化27】
【0114】
4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率70%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.07(s,1H)、8.05(m,1H)、7.80(m,1H)、7.46(m,1H)、3.65(t,J=6.63Hz,2H)、2.96(t,J=7.80Hz,2H)、2.00(m,2H);
質量(M+H) C1414ClFの計算値363.1、実測値364.1。
【0115】
実施例16:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0116】
【化28】
【0117】
4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率18%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.35(s,1H)、7.98(s,1H)、7.69(m,2H)、3.65(t,J=6.42Hz,2H)、2.99(t,J=7.65Hz,2H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1414BrClFの計算値423.0、実測値424.0。
【0118】
実施例17:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0119】
【化29】
【0120】
4−ブロモベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率35%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.99(s,1H)、7.54(m,4H)、3.64(t,J=6.70Hz,2H)、2.98(t,J=6.57Hz,2H)、2.97(t,J=7.68Hz,2H)、1.99(m,2H);
質量(M+H) C1315BrClNの計算値355.0、実測値356.0。
【0121】
実施例18:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0122】
【化30】
【0123】
3−クロロ−4−メトキシベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率42%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.97(s,1H)、7.72(d,J=2.19Hz,1H)、7.34(dd,J=8.85Hz,2.55Hz,1H)、7.15(d,J=8.88Hz,1H)、3.92(s,3H)、3.64(t,J=6.72Hz,2H)、2.98(t,J=7.80Hz,2H)、2.00(m,2H);
質量(M+H) C1417ClOの計算値341.1、実測値342.1。
【0124】
実施例19:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0125】
【化31】
【0126】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率45%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.58(s,1H)、7.59(m,4H)、3.65(t,J=6.12Hz,2H)、2.98(t,J=7.38Hz,2H)、2.09(s,3H)、2.02(m,2H);
質量(M+H) C1418ClNの計算値291.1、実測値292.0。
【0127】
実施例20:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0128】
【化32】
【0129】
ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率21%で得た。
H NMR(DMSO−d6,500MHz)δ10.64(br s,1H)、8.02(s,1H)、7.94(br s,1H)、7.38(s,2H)、7.01(d,J=8.44Hz,1H)、6.87(dd,J=8.35Hz,1.65Hz,2H)、5.99(s,2H)、3.47(m,2H)、2.80(m,2H)、1.88(m,2H);
質量(M+H) C1416ClNの計算値321.1、実測値322.0。
【0130】
実施例21:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0131】
【化33】
【0132】
2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率34%で得た。
H NMR(DMSO−d6,300MHz)δ9.02(s,1H)、7.88(s,1H)、7.68(s,1H)、7.36(m,2H)、7.07(d,J=8.10Hz,1H)、3.46(m,2H)、2.80(m,4H)、2.62(m,2H)、1.99(m,2H)、1.65(m,2H);
質量(M+H) C1620ClNの計算値317.14、実測値318.1。
【0133】
実施例22:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0134】
【化34】
【0135】
2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率25%で得た。
H NMR(DMSO−d6,300MHz)δ10.59(br s,1H)、8.87(br s,1H)、8.20(s,1H)、8.15(br s,2H)、7.20(d,J=1.71Hz,1H)、6.91(m,2H)、4.25(m,4H)、3.50(m,2H)、2.81(m,2H)、1.91(m,2H);
質量(M+H) C1518ClNの計算値335.11、実測値336.1。
【0136】
実施例23:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0137】
【化35】
【0138】
5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率30%で得た。
H NMR(DMSO−d6,300MHz)δ10.14(br s,1H)、8.41(br s,1H)、8.14(s,1H)、8.05(br s,2H)、7.37(s,1H)、7.28(d,J=7.35Hz,1H)、7.02(d,J=7.89Hz,1H)、3.51(m,2H)、2.81(m,2H)、2.70(m,4H)、1.91(m,2H)、1.73(m,4H);
質量(M+H) C1722ClNの計算値331.1、実測値331.9。
【0139】
実施例24:6−(4−(3−アミノプロピルアミノ)−5−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オンの調製
【0140】
【化36】
【0141】
6−アミノ−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率20%で得た。
H NMR(CDCD,500MHz)δ8.10(s,1H)、8.04(d,J=8.55Hz,1H)、7.60(d,J=8.55Hz,1H)、7.54(br s,1H)、3.72(t,J=6.60Hz,2H)、3.04(m,4H)、2.68(t,J=6.30Hz,2H)、2.17(m,2H)、2.08(m,2H);
質量(M+H) C1720ClNOの計算値345.14、実測値346.1。
【0142】
実施例25:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0143】
【化37】
【0144】
4−(ピペラジン−1−イル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率30%で得た。
H NMR(DMSO−d6,300MHz)δ10.64(br s,1H)、9.41(br s,1H)、8.92(br s,1H)、8.22(s,1H)、8.16(br s,2H)、7.45(d,J=8.82Hz,2H)、7.08(d,J=8.80Hz,2H)、3.51(m,2H)、3.39(br s,4H)、3.21(br s,4H)、2.77(m,2H)、1.88(m,2H);
質量(M+H) C1724ClNの計算値361.1、実測値361.8。
【0145】
実施例26:N4−(3−アミノプロピル)−5−クロロ−N2−(4−(ピペリジン−4−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0146】
【化38】
【0147】
4−(ピペリジン−4−イル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率15%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.97(s,1H)、7.51(d,J=8.43Hz,2H)、7.38(d,J=8.52Hz,2H)、3.66(t,J=6.63Hz,2H)、3.53(m,2H)、3.16(m,2H)、2.98(t,J=7.41Hz,2H)、2.00(m,6H);
質量(M+H) C1825ClNの計算値360.1、実測値361.1。
【0148】
実施例27:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0149】
【化39】
【0150】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、3−クロロ−4−メチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率27%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.80(s,1H)、7.56(s,1H)、7.30(br s,2H)、3.66(t,J=6.57Hz,2H)、3.02(t,J=7.62Hz,2H)、2.33(s,3H)、2.06(br s,5H);
質量(M+H) C1520ClNの計算値305.1、実測値306.1。
【0151】
実施例28:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0152】
【化40】
【0153】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−フルオロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率49%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.54(s,1H)、7.52(m,2H)、7.18(m,2H)、3.63(t,J=6.54Hz,2H)、2.95(t,J=7.65Hz,2H)、2.06(s,3H)、2.00(m,2H);
質量(M+H) C1418FNの計算値275.1、実測値276.0。
【0154】
実施例29:N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0155】
【化41】
【0156】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−(ピペラジン−1−イル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率4%で得た。
H NMR(CD3CD,500MHz)δ7.48(s,1H)、7.39(d,J=8.65Hz,2H)、7.14(d,J=8.75Hz,2H)、3.65(t,J=6.50Hz,2H)、3.44(m,8H)、2.99(t,J=7.50Hz,2H)、2.06(br s,5H);
質量(M+H) C1827の計算値341.2、実測値342.1。
【0157】
実施例30:N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0158】
【化42】
【0159】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率31%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.48(s,1H)、7.17(m,3H)、3.65(t,J=6.57Hz,2H)、2.98(t,J=7.59Hz,2H)、2.79(br s,4H)、2.05(br s,5H)、1.83(br s,4H);
質量(M+H) C1825の計算値311.2、実測値312.1。
【0160】
実施例31:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0161】
【化43】
【0162】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率3%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.23(m,1H)、7.71(m,1H)、7.68(s,1H)、7.23(t,J=9.72Hz,1H)、3.63(t,J=6.09Hz,2H)、2.98(t,J=7.32Hz,2H)、2.00(br s,5H);
質量(M+H) C1517の計算値343.1、実測値344.0。
【0163】
実施例32:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0164】
【化44】
【0165】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率2%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ8.39(s,1H)、7.71(s,1H)、7.66(br s,2H)、3.64(t,J=6.06Hz,2H)、2.99(t,J=7.44Hz,2H)、2.01(br s,5H);
質量(M+H) C1517BrFの計算値403.0、実測値403.9。
【0166】
実施例33:N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0167】
【化45】
【0168】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−フェノキシベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率3%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.57(s,1H)、7.50(d,J=8.75Hz,2H)、7.37(m,2H)、7.13(t,J=7.44Hz,1H)、7.03(m,4H)、3.63(m,2H)、2.96(t,J=7.44Hz,2H)、2.04(m,5H);
質量(M+H) C2023Oの計算値349.1、実測値350.1。
【0169】
実施例34:N4−(3−アミノプロピル)−5−メチル−N2−(4−(4−ニトロフェニルスルホニル)フェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0170】
【化46】
【0171】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−(4−ニトロフェニルスルホニル)ベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率3%で得た。
H NMR(CD3CD,300MHz)δ8.41(d,J=8.88Hz,2H)、8.19(d,J=8.88Hz,2H)、7.91(m,4H)、7.73(s,1H)、3.68(m,2H)、3.00(t,J=7.29Hz,2H)、1.98(br s,5H);
質量(M−H) C2022Sの計算値442.1、実測値440.9。
【0172】
実施例35:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−ブロモフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0173】
【化47】
【0174】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、4−ブロモベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率8%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.53(m,5H)、3.64(t,J=6.15Hz,2H)、2.97(t,J=7.17Hz,2H)、2.01(m,5H);
質量(M+H) C1418BrNの計算値335.1、実測値336.0。
【0175】
実施例36:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0176】
【化48】
【0177】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−アミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率35%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.48(s,1H)、7.14(br s,1H)、6.87(br s,2H)、4.27(br s,4H)、3.63(t,J=6.69Hz,2H)、3.01(t,J=8.53Hz,2H)、2.05(br s,5H);
質量(M+H) C1621の計算値315.1、実測値316.1。
【0178】
実施例37:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジメチルフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0179】
【化49】
【0180】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、3,4−ジメチルベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率36%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.48(s,1H)、7.25(s,1H)、7.20(br s,2H)、3.65(t,J=6.48Hz,2H)、2.97(t,J=7.68Hz,2H)、2.30(s,3H)、2.28(s,3H)、2.05(br s,5H);
質量(M+H) C1623の計算値285.2、実測値286.1。
【0181】
実施例38:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0182】
【化50】
【0183】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、3−クロロ−4−フルオロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率26%で得た。
H NMR(CDCD,300MHz)δ7.89(m,1H)、7.60(br s,1H)、7.43(m,1H)、7.30(m 1H)、3.65(t,J=6.69Hz,2H)、3.00(t,J=7.68Hz,2H)、2.08(br s,5H);
質量(M+H) C1417ClFNの計算値309.1、実測値310.0。
【0184】
実施例39:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0185】
【化51】
【0186】
2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用し、3,4−ジクロロベンゼンアミンを4−クロロベンゼンアミンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって、標的化合物を収率26%で得た。
H NMR(CD3CD,300MHz)δ8.03(s,1H)、7.61(s,1H)、7.53(d,J=8.73Hz,1H)、7.41(dd,J=8.73Hz,2.34Hz,1H)、3.67(t,J=6.72Hz,2H)、3.03(t,J=7.62Hz,2H)、2.08(br s,5H);
質量(M−H) C1417Clの計算値325.1、実測値323.9。
【0187】
実施例1〜実施例39において調製された化合物の特定の構造を下記表1に示す。
【0188】
実施例40:N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0189】
【化52】
【0190】
工程1:tert−ブチル(4−((2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)アミノ)ブチル)カルバメートの調製
tert−ブチル(4−アミノブチル)カルバメートを工程1において使用した以外は調製実施例1に記載された方法と同じ方法によって標的化合物を得た(収率:46%)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ8.00(s,1H)、5.65(br s,1H)、4.62(br s,1H)、3.55(m,2H)、3.18(m,2H)、1.68(m,4H)、1.44(s,9H)。
【0191】
工程2:N4−(4−アミノブチル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
tert−ブチル(4−((2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)アミノ)ブチル)カルバメートを工程2において使用した以外は調製実施例1に記載された方法と同じ方法によって標的化合物を得た(収率:30%)。
H NMR(DMSO−d,300MHz)δ10.27(br s,1H)、8.26(br s,2H)、8.14(s,1H)、7.91(br s,2H)、7.68(d,J=8.91Hz,2H)、7.41(d,J=8.85Hz,2H)、3.42(m,2H)、2.78(m,2H)、1.61(m,4H);
質量(M+H) C1417Clの計算値325.1、実測値326.1。
【0192】
実施例41:N4−(4−n−アミノブチル)−N2−(3,5−ジクロロフェニル)−5−クロロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0193】
【化53】
【0194】
tert−ブチル(3−アミノブチル)カルバメートをtert−ブチル(3−アミノプロピル)カルバメートの代わりに使用した以外は実施例2に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た(収率:12%)。
H NMR(CDOD,300MHz)δ7.91(s,1H)、7.77(s,2H)、6.98(s,1H)、3.59(m,2H)、2.98(m,2H)、1.80(m,4H);
質量(M+H) C1416Clの計算値359.0、実測値360.1。
【0195】
比較例1:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0196】
【化54】
【0197】
2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0198】
比較例2:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0199】
【化55】
【0200】
2,4−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0201】
比較例3:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−メトキシピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0202】
【化56】
【0203】
2,4−ジクロロ−5−メトキシピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0204】
比較例4:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0205】
【化57】
【0206】
2,4−ジクロロピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0207】
比較例5:N4−(3−アミノプロピル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−ニトロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0208】
【化58】
【0209】
2,4−ジクロロ−5−ニトロピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0210】
比較例6:N4−3−アミノプロピル)−5−ブロモ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0211】
【化59】
【0212】
5−ブロモ−2,4−ジクロロピリミジンを2,4,5−トリクロロピリミジンの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0213】
比較例7:N4−(2−アミノエチル)−5−クロロ−N2−(4−クロロフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0214】
【化60】
【0215】
tert−ブチル(3−アミノエチル)カルバメートをtert−ブチル(3−アミノプロピル)カルバメートの代わりに使用した以外は実施例1に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0216】
比較例8:N4−(2−アミノエチル)−N2−(4−クロロフェニル)−5−メチルピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0217】
【化61】
【0218】
tert−ブチル(3−アミノエチル)カルバメートをtert−ブチル(3−アミノプロピル)カルバメートの代わりに使用した以外は実施例19に記載された方法と同じ合成方法によって標的化合物を得た。
【0219】
実施例1〜実施例41において調製された化合物の具体的な構造を下記表1に示し、比較例1〜比較例8において調製された化合物の具体的な構造を下記表2に示す。
【0220】
【表1-1】
【0221】
【表1-2】
【0222】
【表1-3】
【0223】
【表1-4】
【0224】
【表2】
【0225】
実験例1:DRAK1及びDARK2の活性阻害の評価
1−1. 実験準備
DRAK1及びDRAK2組み換えタンパク質は、SignalChem Inc.から購入した。キナーゼ酵素活性を測定するために、Promega Inc.によって提供されるADP−Glo(商標)キットを使用した。キナーゼ反応において使用したバッファーAは、60mM Tris−Cl(pH7.5)、30mM MgCl及び0.15%BSAからなるものであった。実験の直前に、1mM DTTを1M溶液の希釈によって調製し、それに添加した。
【0226】
1−2. 実験方法
DRAK1及びDRAK2の活性を測定するために、基質MRCL3ペプチド及びATPを酵素と混合した。適切な時間の後に、反応生成物であるADPを定量的に分析した。
【0227】
バッファー溶液Aを用いて、ATP及びMRCL3ペプチドの最終濃度がそれぞれ1μMとなるように3倍濃度の3倍基質溶液を作製し、2.5μlの各溶液をOptiplate 384(perkin-elmer)マイクロプレートに分注した。
【0228】
ATP及びMRCL3ペプチドの最終濃度を、バッファーAを用いてそれぞれ1uMとし、続いて3倍基質溶液を調製した。調製した基質溶液をOptiplate 384(Perkin-Elmer)マイクロプレートに分配した(2.5μl/ウェル)。次いで、濃度を最終濃度の3倍にした実施例1〜39の化合物及び比較例1〜6の化合物を、これに分配した(2.5μl/ウェル)。最後に、バッファーAを用いて適切に希釈したDRAK1又はDRAK2酵素溶液を、これに添加した(2.5μl/ウェル)。遠心分離を800rpmで1分間行った後、30℃で酵素反応を誘導した。
【0229】
2時間後に酵素反応を終了した。残留ATPを除去するために、ADP−Glo(商標)に含まれるADP−Glo(商標)試薬を、先に添加した試薬の合計と同じ量である7.5μlの濃度で各ウェルに添加し、続いて遠心分離を上記と同じRPM及び時間で行った。付加的な反応を室温で40分間誘導した。キナーゼ活性によって生じたADPをATPに変換するために、15μlのキナーゼ検出バッファーを各ウェルに添加し、続いて遠心分離を行った。遠心分離が完了した5分後に、Envisionを用いて反応生成物の発光値を決定し、化合物の酵素活性阻害効果を測定した。次いで、各化合物のIC50を、Prismプログラムを用いて決定した。
【0230】
1−3. 実験結果
上記で測定された新規のピリミジン化合物及び比較例化合物のDRAK1及びDRAK2酵素活性阻害効果を下記表3に示す。
【0231】
【表3】
【0232】
表3に示されるように、本発明の実施例1〜41の化合物は、優れたDRAK1及びDRAK2阻害活性を示した。比較例の化合物の幾つかも優れたDRAK2阻害効果を選択的に示した。
【0233】
実験例2:DRAK2選択性の評価
本発明の実施例の化合物がDRAK2についてDRAK1よりも良好な選択性を有するか否かを評価するために、実験例1に記載された方法と同じ方法によって以下の実験を行った。実施例1及び実施例19の化合物を実験群として使用し、比較例6の化合物を対照として使用した。結果を表4に示す。
【0234】
【表4】
【0235】
表4に示されるように、本発明の化学式1におけるRがBrである比較例6の化合物は、DRAK1阻害活性及びDRAK2阻害活性の両方を示し、本発明の実施例1及び19の化合物は、DRAK2阻害活性のみを示し、化合物が優れたDRAK2選択性を有することが示された。
【0236】
したがって、本発明の実施例の化合物がDRAK1を阻害せず、DRAK2のみに対して優れた阻害活性を示したことから、DRAK1阻害によって引き起こされる副作用を防ぐことが可能であることは注目すべきことであった。
【0237】
一方、本発明の式1で表される化合物は、目的に応じて様々な形態に製剤化することができる。
【0238】
以下は、本発明の式1で表される化合物を活性成分として含む組成物の製剤の例であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0239】
実験例3:DRAK2阻害活性の評価
nの数に応じた式1で表される化合物のDRAK2阻害活性を評価するために、実施例1、実施例19、実施例40、比較例7及び比較例8の化合物を用いて、実験例1に記載された方法と同じ方法によって実験を行い、DRAK2に対するIC50を測定した。結果を表5に示す。
【0240】
【表5】
【0241】
表5に示されるように、nが1又は2である実施例1、19及び40の化合物は、nが0である比較例7及び8の化合物よりも顕著に低いIC50を示した。
【0242】
製造例1:医薬製剤の調製
1−1. 粉薬の調製
式1の化合物 500mg
ラクトース 100mg
タルク 10mg
従来の粉薬調製方法に従い、上記の全ての構成成分を混合し、気密パックに充填することによって粉薬を調製した。
【0243】
1−2. 錠剤の調製
式1の化合物 500mg
トウモロコシデンプン 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
従来の錠剤調製方法により、上記の全ての構成成分を混合することによって錠剤を調製した。
【0244】
1−3. カプセル剤の調製
式1の化合物 500mg
トウモロコシデンプン 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
従来のカプセル調製方法に従い、上記の全ての構成成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填することによってカプセル剤を調製した。
【0245】
1−4. 注射液の調製
式1の化合物 500mg
滅菌蒸留水 適量
pH調整剤 適量
従来の注射液調製方法により、上記の全ての構成成分を混合し、混合物を2ml容アンプルに入れ、それを滅菌することによって注射液を調製した。
【0246】
1−4. 液剤の調製
式1の化合物 100mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
上記の全ての構成成分を精製水に溶解した。レモン香料を添加した後、精製水を添加することによって総量を100mlに調整した。従来の液剤調製方法によって、混合物を褐色瓶に入れ、滅菌することによって液剤を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明の新規のピリミジン化合物は、癌増殖の抑制において役割を果たすTGF−βシグナル伝達系に干渉することが知られるDRAKの活性を顕著に阻害する。したがって、このピリミジン化合物は、癌及び炎症性疾患を予防又は治療するための医薬組成物として使用することができる。