(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防眩性、耐擦傷性、耐油性に優れた表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の構成は以下のとおりである。
1.ポリウレタンからなり、両面が平坦な保護層と、
前記保護層の一方の面上に形成されたハードコート層とを有し、
前記ハードコート層の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
2.前記保護層の厚さが、50μm以上300μm以下であることを特徴とする1.に記載の表面保護フィルム。
3.前記ハードコート層の厚さが、0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の表面保護フィルム。
4.前記ハードコート層が、フッ素含有化合物を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の表面保護フィルム。
5.前記ポリウレタンが、ポリカーボネート系、または、ポリエステル系であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の表面保護フィルム。
6.前記保護層の他方の面上に、ポリウレタン以外の樹脂からなる透明基材フィルムを有することを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の表面保護フィルム。
7.1.〜6.のいずれかに記載の表面保護フィルムの前記ハードコート層側表面に離型フィルム、他方の表面に剥離フィルムが積層されていることを特徴とする表面保護フィルム積層体。
8.ポリウレタンからなり、両面が平坦な保護層と、
前記保護層の一方の面上に形成されたハードコート層とを有し、
前記ハードコート層の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下である表面保護フィルムの製造方法であって、
凹凸転写フィルムの凹凸を備える面上に、電離放射線硬化型樹脂組成物を塗工し、ハーフキュアして半硬化ハードコート層を備える第一の間隙維持部材を形成し、
前記第一の間隙維持部材と第二の間隙維持部材とを、前記半硬化ハードコート層が前記第二の間隙維持部材と対向する状態で、離間して配置された一対のロールにより連続的に送り出し、材料組成物を前記第一の間隙維持部材と第二の間隙維持部材との間隙に流し込み、
前記材料組成物を、前記第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で熱硬化して前記保護層とし、
前記半硬化ハードコート層をフルキュアして前記ハードコート層とすることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法。
9.前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、フッ素含有化合物を含むことを特徴とする8.に記載の表面保護フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面保護フィルムは、算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下であるハードコート層を備え、防眩性、耐擦傷性、耐油性に優れている。本発明の表面保護フィルムは、ハードコート層をフッ素含有化合物を含む電離放射線硬化型樹脂組成物から形成することにより、さらに耐油性を向上させることができ、皮脂、食用油、化粧品、ハンドクリーム等の油分が長期に亘って付着しても、膨潤や変色が起こりにくい。
【0009】
保護層が50μm以上300μm以下の厚みを有する本発明の表面保護フィルムは、表面保護フィルムとして使用可能な光学特性を満足し、さらに、自己修復性、タッチペンでの筆記感に優れている。
ハードコート層が0.5μm以上5μm以下の厚みを有する本発明の表面保護フィルムは、ハードコート層と保護層との密着性に優れ、層間剥離が生じにくく、耐擦傷性に優れている。
【0010】
ポリカーボネート系ポリウレタンからなる保護層は、耐可塑剤性に優れ、ポリエステル系ポリウレタンからなる保護層は、耐可塑剤性、耐油性に優れる。そのため、これらのポリウレタンからなる保護層を用いた保護フィルムは、さらに耐油性に優れている。
【0011】
本発明の表面保護フィルムに、離型フィルムと剥離フィルムとを積層した表面保護フィルム積層体は、ハードコート層と粘着剤層とが保護されており、取り扱い性に優れている。
【0012】
本発明の製造方法により、保護層とハードコート層との密着性に優れ、防眩性を有する保護フィルムを連続的に製造することができる。さらに、湿式塗布法では製造が困難な50μm以上300μm以下の厚みを有する保護層を、光学特性を低下させることなく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、2に、それぞれ、本発明の一実施態様である表面保護フィルム、一実施態様である表面保護フィルムをディスプレイ表面に位置する透明基板に貼り合わせた様を示す。なお、
図1、2において、各層の厚さは実際の厚さを意味するものではない。
一実施態様である表面保護フィルム10は、ハードコート層1、保護層2、透明基材フィルム3、粘着剤層4の四層がこの順に積層されてなる。また、一実施態様である表面保護フィルム10は、透明基板20上に粘着剤層4を介して貼り合わせられる。
このように、本発明の表面保護フィルムは、透明基板表面に貼り付けられることにより、透明基板の傷付き、ひび割れ、汚れ等を防止するものである。
【0016】
「保護層」
保護層は、ポリウレタンからなる。ポリウレタンは、少なくともポリオールとイソシアネートとアルコール系硬化剤とを含有する材料組成物を反応させて得られる。
【0017】
a.ポリオール
ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、あるいは、ビスフェノールA、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物類のポリエーテル系ポリオール;アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマール酸等の二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類との重合反応により得られるポリエステル系ポリオール;ポリカプロラクトングリコール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール等のポリカプロラクトン系ポリオール;ポリカーボネートグリコール、ポリカーボネートトリオール、ポリカーボネートテトラオール等のポリカーボネート系ポリオール等;及び、これらに側鎖や分岐構造を導入した誘導体、変成体、さらにはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0018】
これらの中で、ポリカーボネート系ポリオールから得られるポリカーボネート系ポリウレタンは、耐可塑剤性に優れ、ゴム製品等の接触により可塑剤が表面保護フィルムに移行して膨潤することを防ぐことができる。また、ポリエステル系ポリオールから得られるポリエステル系ポリウレタンは、耐可塑剤性、耐油性に優れ、可塑剤、皮脂等の様々な油分が表面保護フィルムに移行して膨潤することを防ぐことができる。
【0019】
a1.ポリカーボネート系ポリオール
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオールとの反応物が挙げられる。また、ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートグリコール、ポリカーボネートトリオール、ポリカーボネートテトラオール、これらに側鎖や分岐構造を導入した誘導体、変成体、さらにはこれらの混合物等を用いることもできる。
【0020】
上記ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。上記ジオールとしては、炭素数が4〜9の脂肪族ジオール、または脂環族ジオールが好ましく、例えば、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、および、1,9−ノナンジオールを単独で又は2種以上併用することが好ましい。また、分岐構造を有さないものがより好ましい。
【0021】
a2.ポリエステル系ポリオール
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマール酸等の二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類との重合反応により得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。
これらの中で、二塩基酸としてコハク酸を使用したコハク酸エステル系のポリウレタンが、特に耐可塑剤性、耐油性に優れるため好ましい。
【0022】
ポリオールの数平均分子量は、200以上10,000以下であることが好ましく、500以上5,000以下であることがより好ましく、800以上3,000以下であることがさらに好ましい。数平均分子量が200未満では、反応が速すぎて取り扱い性が悪く、また、成形体が柔軟性を失うとともに脆くなる場合がある。一方、数平均分子量が10,000より大きいと、粘度が高くなりすぎて取り扱い性に劣り、また、成形体が結晶化して白濁する場合がある。なお、本発明において、数平均分子量は、JIS K1557に準じて測定したポリオールの水酸基価より算出した分子量を意味する。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0023】
b.イソシアネート
イソシアネートとしては、分子中にイソシアネート基を2個以上有するものを特に制限することなく用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等を用いることができる。これらの中から、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明において、保護層を形成するポリウレタンは、イソシアネート成分として芳香環を有さない脂肪族イソシアネートを用いることが好ましい。脂肪族イソシアネートから得られるポリウレタンは、黄変しにくく、光源、太陽光線等からの光や熱により、ポリウレタンが変色して透明性が低下することを防ぐことができる。
【0025】
c.アルコール系硬化剤
本発明の保護層を形成するポリウレタンは、硬化剤としてアルコール系硬化剤を使用する。アルコール系硬化剤は、アミン系硬化剤と比較して人体、環境への悪影響が小さい。
【0026】
アルコール系硬化剤としては、分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有するものであれば、特に制限することなく使用することができる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオール等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらの中で、2価アルコールとしては、取り扱い性、力学物性の観点からは1,4−ブタンジオールが好ましく、白濁防止の観点からはシクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の環状構造を有する2価アルコールが好ましい。3価アルコールとしてはトリメチロールプロパンが、取り扱い性、力学物性の観点から好ましい。
【0027】
アルコール系硬化剤として、2価アルコールを単独で使用した場合は、成形体が結晶化して白濁する場合があること、3価アルコールを主成分とした場合は、強度が低下する場合があることから、2価アルコールと3価アルコールとを併用することが好ましい。具体的には、2価アルコール50〜100重量部、3価アルコール50〜0重量部の範囲で用いることが好ましく、2価アルコール60〜80重量部、3価アルコール40〜20重量部の範囲で用いることがさらに好ましい。そして、2価アルコールとして1,4−ブタンジオールを使用すると白濁する場合には、1,4−ブタンジオールの一部、または全部を環状構造を有する2価アルコールに置き換えればよい。
【0028】
d.触媒
本発明の保護層を形成するポリウレタンは、非アミン系触媒の存在下で熱硬化させることが好ましい。非アミン系触媒を使用することにより、非着色性、透明性、耐候性に優れたポリウレタンを得ることができる。それに対し、アミン系触媒で熱硬化させたポリウレタンは、出射光が黄色くなり、また、経時で外観が着色してしまう場合がある。
非アミン系触媒としては、例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン錫等の有機錫化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、カルボン酸錫塩、カルボン酸ビスマス塩等が挙げられる。これらの中で、有機錫化合物が、反応速度を調節しやすいため好ましい。
【0029】
非アミン系触媒は、上記したa.〜c.の総量に対して、0.0005重量%以上3.0重量%以下となるように添加することが好ましい。0.0005重量%未満では、反応速度が十分に速くならず、効率よく成形体を得ることができない場合がある。3.0重量%より多いと、反応速度が速くなりすぎて、均一な厚みの成形体を得ることができなくなる、成形体の耐熱性や耐候性が低下する、光透過率が低下する、成形体が着色するなどの不具合を生じる場合がある。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0030】
保護層を形成するポリウレタンは、その要求特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0031】
保護層は、少なくとも、ポリオールとイソシアネートとアルコール系硬化剤を含む材料組成物を、触媒で硬化させたポリウレタンからなる成形体であり、その成形方法は、ワンショット法、プレポリマー法、擬プレポリマー法のいずれでもよい。
【0032】
ワンショット法では、ポリオール、イソシアネート、アルコール系硬化剤、任意の添加剤、触媒を一括して投入し、硬化させることによりポリウレタンの成形体を作製することができる。
プレポリマー法では、ポリオールと化学量論的に過剰量のイソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを予め調製しておき、ここに所定量のアルコール系硬化剤、任意の添加剤、触媒を混合して、プレポリマーを硬化させることによりポリウレタンの成形体を作製することができる。
擬プレポリマー法では、ポリオールの一部を予めアルコール系硬化剤に混合しておき、残りのポリオールとイソシアネートによりプレポリマーの調製を行い、ここに予め混合しておいたポリオールとアルコール系硬化剤、任意の添加剤、触媒との混合物を混合して硬化させることによりポリウレタンの成形体を作製することができる。
【0033】
本発明において、ポリウレタンの熱硬化前の材料組成物における、アルコール系硬化剤に含まれる水酸基(−OH)のモル数と、イソシアネートまたはプレポリマーのイソシアネート基(−NCO)のモル数との比(−OH/−NCO:以下、α比という。)が、0.80以上1.50以下であることがより好ましく、0.90以上1.45以下がより好ましく、1.02以上1.4以下がさらに好ましい。0.80未満では、力学物性が不安定になり、1.50より大きいと、表面粘着性が増し、良好な書き味が損なわれる。
【0034】
また、ポリウレタンは、アクリル骨格(アクリル骨格又はメタクリル骨格)を含有しないことが好ましい。すなわち、本発明の保護層を形成するポリウレタンは、アクリル変性ポリウレタンを含まないことが好ましい。アクリル骨格を有するポリウレタンは、ポリウレタンの柔軟性が損なわれるとともに耐摩耗性や引裂強度などの力学的強度が低下することがあり、また、アクリル骨格又はアクリル骨格を導入するために使用した触媒の残渣により、出射光が着色することがある。
【0035】
本発明において、保護層はその両面が平坦である。これは、下記製造方法で詳述するが、材料組成物が、表面が平坦な間隙維持部材の間に挟まれた状態で熱硬化して保護層となるためである。なお、本発明において、保護層が平坦であるとは、算術平均粗さRaが、0.05μm以下であることを意味する。
【0036】
保護層の厚みは、50μm以上300μm以下が好ましく、100μm以上200μm以下がより好ましい。保護層が50μm以上300μm以下の厚みを有することにより、タッチペンの書き味、滑り性が非常に良好となり、操作性、自己修復性にも優れる。保護層の厚みが50μm未満では、書き味、自己修復性が低下する。保護層の厚みが300μmより厚いと、書き味、滑り性、操作性、自己修復性が低下し、また、均一な厚さで成形することが困難となる。50μm以上300μm以下であれば、表面保護フィルムに求められる性能がバランスよく発揮され、また、製造も容易である。
【0037】
「ハードコート層」
ハードコート層は、保護層の一方の面上に設けられ、その算術平均粗さRaが、0.1μm以上0.8μm以下である。
ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物に紫外線、電子線等を照射して、重合・硬化することにより形成することができる。ハードコート層を形成する電離放射線硬化型樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)としては、公知のものを使用することができ、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等の電離放射線重合性官能基を一分子中に2つ以上有する多官能重合性モノマーを主成分とし、光重合開始剤、レベリング剤等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0038】
多官能重合性モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。また、多官能重合性モノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
ハードコート層を形成する樹脂組成物は、フッ素含有化合物を含むことが好ましい。本発明の表面保護フィルムにおいて、最表面に位置するハードコート層がフッ素含有化合物を含むことにより、耐油性、防汚性を向上させることができる。フッ素含有化合物としては、特に制限されず、フッ素系レベリング剤、フッ素含有モノマー、フッ素原子を含有するシランカップリング剤等を使用することができるが、多官能重合性モノマーと共有結合を形成することのできるフッ素含有モノマーを使用することが好ましい。フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基等のフッ化炭化水素基と、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等の電離放射線重合性官能基とを有する化合物が挙げられる。また、市販品としては、共栄社化学株式会社製のトリフロロエチルメタクリレート(ライトエステルM−3F)、超高硬度ハードコート剤(HX−RPH)、超耐擦傷性ハードコート剤(HX−RSC)、ダイキン工業株式会社製の指紋付着防止剤(オプツールDAC)、DIC株式会社製のUV反応型表面改質剤(メガファックRS シリーズ)等が挙げられる。
【0040】
ハードコート層は、算術平均粗さRaが、0.1μm以上0.8μm以下である。ハードコート層の算術平均粗さRaが、上記した範囲内であることにより、表面保護フィルムに防眩性を付与することができる。また、防眩性を有する表面保護フィルムは、表面が傷ついても目立ちにくい。算術平均粗さRaは、0.3μm以上0.7μm以下であることがより好ましく、0.4μm以上0.6μm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ハードコート層の厚さは、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。ハードコート層の厚さが、上記した範囲内であることにより、本発明の表面保護フィルムは、優れた耐油性と耐擦傷性とを備える。ハードコート層の厚さが0.5μm未満では、耐油性が低下する場合がある。また、ハードコート層の厚さが5μmより厚いと、剛直なハードコート層が柔軟な保護層の動きに追従できなくなり、ハードコート層と保護層との間での剥離やハードコート層に割れが生じる場合がある。ハードコート層の厚さは、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、ハードコート層の厚さは、表面保護フィルムの厚さ方向断面を電子顕微鏡等で撮影した画像において、任意の10点以上で測定した厚さの加重平均を意味する。
【0042】
「透明基材フィルム」
透明基材フィルムは、保護層を保持するものである。透明基材フィルムを構成する材料は、透明性、可撓性、機械的強度に優れるものであれば特に制限することなく用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン系樹脂(COP)、ポリイミド(PI)などを好適に用いることができる。
【0043】
透明基材フィルムの厚さは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。本発明の表面保護フィルムにおいて、通常、保護層を形成するポリウレタンの熱膨張係数が、透明基材フィルムを構成する材料の熱膨張係数よりも大きいため、透明基材フィルムの厚さが50μm未満では、低温時の保護層の収縮に透明基材フィルムが抗しきれず、表面保護フィルムが透明基板から剥がれることがある。透明基材フィルムの厚さが500μmより厚いと、表面保護フィルムが嵩張り、コストが増加する。また、タッチパネル式のディスプレイ表面に貼り合わせた際の操作性が低下する。なお、下記「表面保護フィルムの製造方法」で詳述するが、保護層は、透明基材フィルム上に直接成形することができる。この製造方法を用いる場合、材料組成物を熱硬化させて保護層とする際の加熱時の変形を防ぐために、透明基材フィルムは厚いほうが好ましい。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0044】
「粘着剤層」
粘着剤層は、ディスプレイ表面の透明基板に、表面保護フィルムを貼り合わせるためのものである。粘着剤の種類は特に限定されず、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂等を用いることができる。これらの中で、アクリル系樹脂は、防汚処理、低反射処理等の表面処理がなされた透明基板であっても貼り付けることができる。また、シリコン系樹脂は、Wetting性に優れ、透明基板への貼り付け時に気泡が生じにくく、再剥離性がよく剥離時に糊残りしにくい。粘着剤層の厚みは、通常5μm以上60μm以下の範囲内であるが、要求仕様に合わせて適宜調節することができる。
【0045】
「表面保護フィルム」
一実施態様である表面保護フィルム10は、ハードコート層1、ポリウレタンからなる保護層2、透明基材フィルム3、粘着剤層4の四層がこの順に積層されてなる。本発明の表面保護フィルムは、その他の層を備えていてもよく、例えば、ブルーライトをカットするブルーライトカット層等を備えることもできる。
【0046】
表面保護フィルムの全光線透過率は、90%以上であることが視認性の点から好ましい。ただし、青色領域の可視光をカットするブルーライトカット能を備える場合は、全光線透過率は60%以上であることが好ましい。
表面保護フィルムのヘイズ値は、5%以上40%以下であることが防眩性の点から好ましい。表面保護フィルムのヘイズ値は、10%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の表面保護フィルムを、生産時から透明基板へ貼付して使用されるまで保護するために、表面保護フィルムのハードコート層側、粘着剤層側の表面に、それぞれ離型フィルム、剥離フィルムを貼着し、表面保護フィルム積層体とすることができる。
図3に、一実施態様である表面保護フィルム10に、離型フィルム5、剥離フィルム6を貼着した表面保護フィルム積層体30を示す。なお、
図3において、各層の厚さは実際の厚さを意味するものではない。
【0048】
離型フィルムは、最表面に位置するハードコート層の汚れ、埃付着、傷付き等を防止するものである。また、下記製造方法で詳述するが、離型フィルムは、ハードコート層表面に算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下の凹凸を転写する凹凸転写フィルムである。そのため、離型フィルム(凹凸転写フィルム)は、ハードコート層と貼り合わせる側の表面に離型処理が施されたフィルムを用いることが好ましい。離型処理が施された離型フィルムを、ハードコート層から剥離すると、ハードコート層表面に離型フィルムに含まれていた離型剤が移行し、離型フィルムを剥離した直後のハードコート層表面に滑り性を付与することができ、使用開始直後からタッチ操作を違和感なく行うことができる。
【0049】
剥離フィルムは、粘着剤層の汚れ、埃付着、粘着力の低下等を防ぐものである。剥離フィルムは、特に制限されず、粘着剤層と貼り合わせる側の表面に離型処理が施されたフィルムを好適に利用することができる。
【0050】
「表面保護フィルムの製造方法」
図4に、表面保護フィルムの製造方法の模式図を示す。以下、
図4を用いて製造方法を説明する。
予め、凹凸転写フィルム425の凹凸を備える面上に、電離放射線硬化型樹脂組成物を塗工し、電離放射線硬化型樹脂組成物をハーフキュアして半硬化ハードコート層421とし、凹凸転写フィルム425上に半硬化ハードコート層421が積層された第一の間隙維持部材42aを準備する。
【0051】
第一の間隙維持部材42aと第二の間隙維持部材42bとを、半硬化ハードコート層421が第二の間隙維持部材42bと対向するように配置して、離間して配置された一対のロール43a、43bにより連続的に送り出し、材料組成物40aを、注型機41を介して、この第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に流し込む。
第一、および第二の間隙維持部材42a、42bは、その間に材料組成物40aを保持した状態で加熱装置46内に導かれる。材料組成物40aは、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間に保持された状態で熱硬化して、ポリウレタンのシート状物40となる。第一、および第二の間隙維持部材の対向する面は平坦であり、この平坦な面の間に保持された状態で熱硬化することにより、平坦なポリウレタンのシート状物40を製造することができる。次いで、半硬化ハードコート層421に、紫外線照射装置48により紫外線を照射し、フルキュアする。
【0052】
なお、
図4において、44は第一、および第二の間隙維持部材42a、42bを送り出すための搬送ロール、45は補助ロール、47は材料組成物40aを間に保持した第一、および第二の間隙維持部材42a、42bを加熱装置46内で搬送するためのコンベアベルトである。
【0053】
第一の間隙維持部材42aにおける凹凸転写フィルム425、第二の間隙維持部材42bは、材料組成物を熱硬化させる際に熱変形しない材料であれば、特に制限することなく使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン系樹脂(COP)、ポリイミド(PI)等の高分子材料からなる長尺フィルムを用いることができる。なお、
図4に示す模式図では、第2の間隙維持部材42bとして高分子材料からなる長尺フィルムを用いているが、これらの高分子材料やアルミニウム等の金属材料からなる無端ベルトを用いることもできる。
【0054】
第一、および第二の間隙維持部材42a、42bは、その間に材料組成物40aを保持しながら同一の張力で引っ張られて搬送されるため、その間隙を一定の大きさに維持することができる。材料組成物40aは、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bに挟まれ、一定の厚みを維持した状態で硬化することにより、厚み精度に優れたポリウレタンのシート状物40となる。また、半硬化ハードコート層421は、ハーフキュアされて流動性を消失しており、材料組成物40aは平坦な面で挟持された状態で熱硬化するため、両面が平坦なポリウレタンのシート状物40が得られる。この製造方法により、塗布では困難な50μm以上の厚みを有し、表面保護フィルムの保護層として実用的な光学特性を有するシート状物40を連続的に成形することができる。
【0055】
注型機41のヘッド部41aの位置は、搬送ロール43a、43bの中央部(第一、および第二の間隙維持部材42a、42bがなす間隙の中央部)より、いずれか一方の搬送ロール側に偏在していることが好ましく、また、偏在距離が搬送ロールの半径以下であることが好ましい。すなわち、注型機41のヘッド部41aの直下は、一対の搬送ロール43a、43bの中央部から一方の搬送ロールの中心軸までの間に位置することが好ましい。また、ヘッド部41aの先端部と、搬送ロールの表面との最短距離は、5cm以下であることが好ましい。ヘッド部41aをこのように配設することにより、ポリウレタンのシート状物40の厚み精度がより向上するとともに、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に流し込まれた未硬化の材料組成物40aに気泡が混入しにくく、また、混入した気泡が抜けやすい。
【0056】
搬送ロール43a、43bは、単に搬送機能のみを有するものでもよいが、加熱ロールであることが好ましい。搬送ロールが加熱ロールであると、材料組成物40aが、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に保持された直後から硬化を開始することができ、材料組成物40aが加熱装置46内に導入されるまでに厚さをより均一に維持することができ、より厚み精度に優れるポリウレタンのシート状物40を成形することができる。搬送ロール43a、43bを加熱する際の搬送面温度は、10℃以上60℃以下に設定することが好ましい。10℃未満では、材料組成物40aの粘度が高くなって気泡が抜けにくくなるとともに、硬化反応が遅くなってシート状物40の厚み精度が低下する。60℃を超えると、搬送ロール上で材料組成物40aが硬化したり、シート状物40に気泡が入ったりする場合がある。
【0057】
加熱装置46は、ヒータを備えた加熱炉であり、材料組成物40aの硬化温度まで炉内温度を上昇させることができるものであればよい。また、加熱装置46内での加熱条件(硬化条件)は特に限定されず、材料組成物40aの組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、40℃以上160℃以下、1分以上180分以下の条件で行えばよい。
加熱装置46からは、第一の間隙維持部材42a、ポリウレタンのシート状物40、第二の間隙維持部材42bからなる長尺状積層体が搬出される。
【0058】
紫外線照射装置48は、加熱装置46から搬出される長尺状積層体に紫外線を照射し、半硬化ハードコート層421をフルキュアするものである。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯などが挙げられる。紫外線は、半硬化ハードコート層に到達できればよく、第一間隙維持部材42a、第二の間隙維持部材42bのどちら側から照射してもよく、また、両側から照射することもできる。
【0059】
「表面保護フィルム積層体の製造方法」
上記製造方法において、第一の間隙維持部材42aは、凹凸転写フィルム425を有し、凹凸転写フィルム425を剥離することにより、表面に凹凸を備えるハードコート層1を製造することができる。この際、第二の間隙維持部材42bを表面保護フィルムの透明基材フィルム3、凹凸転写フィルム425を表面保護フィルム積層体の離型フィルム5とすることができる。
そして、第二の間隙維持部材42bの表面に塗布等により粘着剤層4を形成し、この粘着剤4層上に剥離フィルム6を貼り合わせることにより、長尺状の表面保護フィルム積層体30を得ることができる。
【0060】
なお、上記した表面保護フィルム積層体の製造方法は一例であり、例えば、透明基材フィルム/粘着剤層/剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を、第二の間隙維持部材42bとして用いることもできる。
【0061】
本製造方法により、表面保護フィルム積層体30をいわゆるロールtoロールで連続的に製造することができる。製造された表面保護フィルム積層体30は、両面にそれぞれ離型フィルム5と剥離フィルム6とを備えているため、表面保護フィルムの傷付き、汚染等を防ぐことができ、取り扱い性に優れている。なお、上記したとおり、表面保護フィルム積層体は、全体を通じてロールtoロールで製造することもできるが、裁断後に粘着剤層の形成を行うこともできる。
【0062】
表面保護フィルム積層体は、ロール状に巻回して出荷してもよく、シート状に裁断してから出荷してもよい。また、第一の間隙維持部材42a、ポリウレタンのシート状物40、第二の間隙維持部材42bからなる長尺状積層体として、またはこの長尺状積層体を裁断したシート状積層体として出荷し、ディスプレイ工場等で粘着剤層の形成を行うこともできる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
「実施例1」
分子量2000、水酸基価55であるポリ(1,6−ヘキサンカーボネート)ジオール(東ソー株式会社製、商品名:980R)を100g、イソホロンジイソシアネートを48.0g、1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=60/40の重量比からなるアルコール系硬化剤を16.0g(α比=1.05)、非アミン系触媒として有機錫化合物を250ppm添加し、撹拌・混合を行い、材料組成物とした。
【0065】
凹凸転写フィルムとしてシリコン処理した表面に凹凸を有する厚み125μmのPETを使用し、この凹凸面に、フッ素含有モノマーを含むUV硬化型ウレタンアクリレートを厚さ2.3μmとなるように塗布し、80℃、1minの熱処理後、紫外線を150mJ/cm
2照射してハーフキュアし、半硬化ハードコート層とした。
上記成形方法により、透明基材フィルムとなる厚み100μmのPETと半硬化ハードコート層を備える厚み125μmPETとで材料組成物を挟持して、材料組成物を80℃、12時間加熱して熱硬化し、紫外線を800mJ/cm
2照射して半硬化ハードコート層をフルキュアして、凹凸転写フィルム/ハードコート層/保護層(厚み150μm)/透明基材フィルムの積層体を製造した。
【0066】
「実施例2」
ハードコート層の厚さを1.7μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
「実施例3」
ハードコート層の厚さを1.4μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
【0067】
「比較例1」
凹凸転写フィルムとしてシリコン処理した表面に凹凸を有する厚み125μmのPETと、透明基材フィルムとして厚み100μmのPETを使用し、これらで挟持した実施例1と同一の材料組成物を80℃、12時間加熱して熱硬化し、凹凸転写フィルム/保護層(厚み150μm)/透明基材フィルムの積層体を製造した。
この積層体から、凹凸転写フィルムを剥離し、露出した保護層表面に実施例1で使用したフッ素含有モノマーを含むUV硬化型ウレタンアクリレートを厚さ2.3μmとなるように塗布し、80℃、1minの熱処理後、紫外線を800mJ/cm
2照射してフルキュアし、ハードコート層/保護層(厚み150μm)/透明基材フィルムの積層体を製造した。
【0068】
「比較例2」
ハードコート層の厚さを1.7μmとした以外は、比較例1と同様にして積層体を製造した。
「比較例3」
ハードコート層の厚さを1.4μmとした以外は、比較例1と同様にして積層体を製造した。
【0069】
「比較例4」
ハードコート層の厚さを16μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
「比較例5」
よりRaが小さい凹凸転写フィルムを使用した以外は、比較例4と同様にして積層体を製造した。
【0070】
上記で製造した各表面保護フィルムについて、下記評価を行った。結果を表2に示す。
・算術平均粗さ(Ra)
上記で製造した各積層体のハードコート層の表面形状を、表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製、装置名:SURFTEST SV−3000)を用いてJIS B0601−2001に準拠して任意の箇所を3回測定し、付属の表面粗さ解析プログラム(SURFPAK−SV)で算術平均粗さ(Ra)を求め、平均値を算出した。測定条件、評価条件を下記表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
・ヘイズ、全光線透過率
作成した積層体から5cm角のサンプルを裁断し、凹凸転写フィルムを剥がし、ハードコート層側の表面が光源側にくるようにサンプルをセットし、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、装置名:NDH7000(CU−II仕様))を用いて測定した。
【0073】
・耐油性
ハードコート層に、オレイン酸、市販の乳液(株式会社良品計画製、バランス肌用乳液)を1滴滴下した。滴下して1日後、3日後、7日後に、オレイン酸、乳液を全て拭き取り、滴下箇所を目視で確認し、下記基準で評価した。
5:接触痕なし
4:反射させると輪郭が見える
3:うっすら輪郭が見える
2:はっきり輪郭が見える
1:膨らむ
【0074】
・防眩性
室内の蛍光灯の光をハードコート層側の表面に映りこませ、蛍光灯のぼやけ方を5段階で評価する。
5:蛍光灯の輪郭が全く見えない
4:光灯の輪郭がほぼ見えない
3:蛍光灯の輪郭がうっすら見える
2:蛍光灯の輪郭がほぼ見える
1:蛍光灯の輪郭がはっきりと見える
【0075】
・割れ
Φ6mmのシャフトに保護シートを巻き付けた際に、シート表面に割れが発生していないかかを目視で確認する。
○:割れなし
×:割れあり
【0076】
【表2】
【0077】
本発明である実施例1〜3の表面保護フィルムは、ハードコート層表面が凹凸を備えていることから、良好な防眩性を有していた。また、耐油性に優れ、ハードコート層は保護層の動きに追従することができた。
それに対し、表面凹凸を有する保護層上にハードコート層を塗布した比較例1〜3の表面保護フィルムは、ハードコート層により保護層表面の凹凸が埋められてしまったため、算術平均粗さが小さくなり、防眩性が低下した。
比較例4、5の表面保護フィルムは、ハードコート層が厚く保護層の動きに追従できないため、割れが生じた。
防眩性、耐擦傷性、耐油性に優れた表面保護フィルムを提供することを課題とする。解決手段として、ポリウレタンからなり、両面が平坦な保護層と、前記保護層の一方の面上に形成されたハードコート層とを有し、前記ハードコート層の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下である表面保護フィルムを提供する。