特許第6671584号(P6671584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671584
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】水蒸発冷却による冷房装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/039 20190101AFI20200316BHJP
   F24F 3/147 20060101ALI20200316BHJP
   F28D 5/02 20060101ALI20200316BHJP
   F28C 3/08 20060101ALI20200316BHJP
   F24F 1/0007 20190101ALI20200316BHJP
【FI】
   F24F1/039
   F24F3/147
   F28D5/02
   F28C3/08
   F24F1/0007 331
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-224874(P2014-224874)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-90136(P2016-90136A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033113
【氏名又は名称】株式会社GF技研
(72)【発明者】
【氏名】梅津 健児
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087956(JP,A)
【文献】 特開2009−097817(JP,A)
【文献】 特開2006−105541(JP,A)
【文献】 特開2009−264627(JP,A)
【文献】 特開2006−300465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/039
F24F 1/0007
F24F 3/147
F28C 3/08
F28D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の薄い仕切り壁を伝熱面として多数枚数の該伝熱面を所定の間隔の通風路を開けて垂直に設置し、該伝熱面の間の前記通風路に一つおきに流れる冷却する空気と冷却される空気を前記伝熱面を通して熱交換させる空気対空気熱交換器を利用し、
前記冷却する空気乃至は其の通過する通風路内に水を散水させて水の蒸発潜熱で当該通風路に面する伝熱面を冷却することにより当該伝熱面の裏面において前記冷却される空気を冷却し、冷却された当該空気を室内空間に吹き出させ、又は当該空気の冷気を室内空間に伝え、一方、前記冷却する空気を室外に排気させることを特徴とした冷房装置に於いて、
薄いアルミ板乃至は樹脂板を用い、当該伝熱面が鉛直に成るように配置し、且つ当該伝熱面の表面に垂直方向の断面が連続する凸凹があり、水平方向の断面が直線と成る様に、且つ散水された前記水を当該段差の窪み部で保持させる様に連続する凹凸の段差を形成した事を特徴とした前記伝熱面を用いた前記空気対空気熱交換器において、
水平方向に渡り形成される前記窪み部とそれを形成する連続する多数の段差が形成された多数枚数の前記伝熱面を保持する乃至は当該伝熱面の隣同士の通風路を形成する隙間を保持するための伝熱面保持枠体を樹脂乃至はアルミなどの金属で形成したものに於いて、
前記窪み部は前記伝熱面保持枠体の近傍で当該窪み部の展開を存在させないことにより、当該窪み部が枠体に接続する乃至は覆われることの無い構造とした空気対空気熱交換器とした事を特徴とする冷房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
太陽熱、燃料電池の排熱、ガスエンジン発電装置の排熱など、60℃から80℃程度の低温度の熱源を利用して室内空気を除湿即ちデシカントし、其の空気をさらに水の蒸発潜熱を利用して冷却することにより。高いエネルギー効率と室内空気快適性を高めて冷房を行うことを特徴とした、いわゆる熱源利用空気調和装置が開発されてきている。
この装置では主に室内空気からなる処理される空気、及び主に室外空気からなる処理する空気との間で熱移動及び湿氣の移動を行って処理される空気の冷却と除湿を行う、即ち冷房を行う事を目的としている。
【0002】
冷房処理される空気と処理する空気の熱交換を有効に行うため、水分吸着機能を有する材質を回転ロータ状に構成して両方の空気をそこに通じて、回転ロータによって一方の空気から他方の空気に湿分を移動させたり、吸湿放湿によりエネルギー交換させたりする所謂デシカント方式が実現されている。
【0003】
また、別の基幹技術として、処理する空気により処理される空気の冷却を行う装置では、より高いエネルギー効率と冷却能力を得るため、処理する空気即ち冷却用空気の湿球温度を利用することが有効であることは知られている。このために冷却用空気に散水しその温度を湿球温度まで下げて、それを冷却源として利用することが有効であることは良く知られている。
【0004】
本出願は、この様に、水の蒸発潜熱を使って冷却を行うという、処理される空気である室内空気を処理する空気である室外空気によって冷却を行う冷房装置の技術に関するものである。其の技術により、冷房効果を高め、蒸発潜熱による冷却における水の消費量を軽減し、当該水の蒸発による水に含まれる硬度成分の析出による装置の性能の悪化量を軽減し、且つ装置の構成を簡略化し、ひいては装置の費用を軽減するなどの成果を高めることを目指している。
【背景技術】
【0005】
特許文献1及び2には何れも換気の排熱の空気の温湿度即ちエンタルピーを高めてその結果室内空間を冷房する方式ではあるが、何れも冷却空気は乾球温度を用いており、それより低温度が得られる湿球温度を利用していない。即ち乾球温度を利用して換気冷房乃至は換気除湿を行っている事例であり、そのエネルギー効率は優れているとは云えない。
確かに、これらの技術は建物の内部空間から単純に室内空気を排気する方式に比べて換気空気のエンタルピーを高めて廃棄し、それによる空調エネルギーの損失が減少する効果を生じている。しかも何れも換気エレメント乃至は全熱交換器と呼ばれる室内外空気間の温度と湿度即ち全熱の熱交換器を設置して換気によるエネルギー損失を低減させている効果も有しているし、デシカント除湿機能や除湿運転機能を備えている点では湿度制御による空調の快適性確保という点でも優れたシステムである。
しかしながら、前述した加熱乃至は冷却にエネルギーを消費している事に加え、デシカ
ント除湿機能と排気を利用した換気空調の間には相乗効果が無く、消費エネルギー削減効
果が限定的である。即ち特許文献1では冷却器と再熱器の実現に多大なエネルギーを消費
しており、特許文献2では冷却器6、7と加熱再手段4にやはり多大なエネルギーを消費
している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−123444号広報
【特許文献2】特開2000−111096号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとしている課題は、冷媒圧縮機などの動力源をほとんど消費することなく 室内空間を冷却できる装置の実現であり、除湿装置と組み合わせて冷房システムを実現するために必要な高性能な空気対空気熱交換器システムの具体化、実現である。
具体的には、冷却する空気の温度を散水によって湿球温度近くまで低温度化した上で冷却される空気と接触させて、効果的に冷却を実現しようとするもので、所謂水蒸発間接冷却器に関するものである。例えば双方の空気が同じ温度でも冷却する空気に散水して湿球温度近くまでその温度を下げ、それで冷却される空気と熱交換させれば冷却される空気を冷却することができるわけで、この原理を利用すれば湿度の低い時には、室内空気を、室外空気の湿球温度によって冷却することが可能になるわけで、冷凍サイクルや、吸着装置、デシカント装置を使うことなく冷房ができるわけである。
【0008】
この空気対空気熱交換器の冷却効果を高めるには、冷却する空気側の伝熱面に散水した水を伝熱面全体に広めて伝熱面全面の濡れ性を維持して伝熱量を確保し、かつ、伝熱面を当該散水した水が流れ落ちることにより全伝熱面の水の温度が均一化されてしまって其の結果十分な総伝熱量を確保できない現象を防ぐ?この両方の性能向上効果を如何に実現するか、大きな課題である。
通常、この種の熱交換器で、双方の空気間で顕熱熱交換する場合、対向流で流す場合は空気の流れ方向に従って温度分布は変わり、全伝熱面が同じ温度に成らない。その効果により冷却伝熱量が増加するのが普通である。
今回の水蒸発潜熱を利用するケースでは冷却用の水を大量に供給して循環させると水の温度は伝熱面に渡って均一化されてしまい、空気を対向流で流してその間の伝熱量を増やそうとする場合、其の対向流による温度傾斜による伝熱量が増える効果は失われてしまうからである。
【0009】
以上の空気対空気熱交換器を用いて熱交換して後に冷却される空気を室内空間に、冷却する空気を室外に排気させることにより室内を冷房させることは可能である。その効果は冷却される空気の到達温度は冷却する空気の湿球温度によって冷却されるため、当該湿球温度以下には下げることが出来ない。例えば冷房機に関するJISの運転標準条件は室外空気温度は35℃、其の相対湿度は40%であり、其の湿球温度は24℃である。従ってこの空気を冷却する空気として利用した場合は冷却される空気の到達最低温度は24℃となり、水の蒸発潜熱利用技術では決してそれ以下の温度は得ることはできない。冷房の快適性から要求される冷房機の吹き出し温度は20℃以下であるので、この温度ギャップが課題であり、冷媒圧縮方式のエアコンが使われる理由であると言える。
【0010】
上記空気対空気熱交換器の冷却する空気側の伝熱面には水を散水して其の温度を下げることが行われる。この散水された水は分散ノズルで通風路上部から散水される。しかしてこの水は通風路の伝熱面を下に流れると同時に相互に集まり、筋状になって伝熱面上を流れ落ちるため、伝熱面にくまなく分散して其の面を濡らすことは無い。このため伝熱面の材料にもよるが、水の存在しない面積が大半となってしまい、当初計画した冷却特性を発揮できない。この伝熱面の濡れ性を確保することが性能向上に重要で、伝熱面に細い繊維を植毛したり、伝熱面上に吸湿性の良い布状の材料を貼り付けたりする。この結果、水濡れ性は向上し、冷却性能が向上する。しかしながら、使用時間が経つと、この方法では水に含まれるケイ酸カルシュームや炭酸カルシュームなどが析出してスケールと成って固着するため、植毛や布は吸湿性を失う。この結果水濡れ性は劣化し、伝熱面を効果的に濡らすことができなくなり、冷却性能を維持できなくなるという問題がある。
【0011】
冷却効果を高めるため、冷却する空気と冷却される空気は対向流に構成した流路を形成し、一方水はその蒸発潜熱を利用するため、水の自然落下の効果を利用して上部に於いて散水し、下部でドレンパンに集める。これらの空気対空気熱交換器としての構成は簡単では無く、複雑な構成であって高度な冷却性能を発揮させることができる組立構造である必要がある。
【0012】
さらに、冷却器としての次の様な特性に叶った材料、構造である必要がある。即ち全部材の水に対する耐蝕性、水濡れ性、伝熱面と本体枠体の構成と製造性、水の散水と集水保持構造、其の上での熱交換器のサービス交換性などを満たす空気対空気熱交換器を構成する基本的な技術、材料、構造の明確化が重要であり、本発明の空気対空気熱交換器を具体化する技術が求められる。
以上の冷却方式では水の蒸発による冷却効果が需要である。水が蒸発した結果水に含まれるシリカ成分などの硬質水成分が析出しやすくなり、当該熱交換器やドレンパンにスケールやごみとなって堆積する。これを有効に防止する方法の実現が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の各種課題を解決するための手段を列記し、各特許提案請求項との関係を明確化する。
この冷房装置を実現する基本的な方式に関する発明を請求項1に示す。この空気対空気熱交換器は冷却される空気と、冷却する空気を別々に一つおきの通風路に通風させて、通風路を構成する伝熱面を通して熱交換させるもので、冷却する空気の通る通風路側の伝熱面上には冷却させるための水を散水して蒸発冷却を行う。この伝熱性能を高めるには両方の空気を対向する様に流して対向流熱交換を行わせることが重要である。並行流では両方の空気の温度変化の和は両方の空気の最初の温度差を超えることは無いが、それが対向流であれば最初の温度差を越えて、夫々が相手の最初の温度に近づくことが可能である。即ち伝熱効率が向上する。
【0014】
冷却する側の空気の温度を湿球温度にして、十分な伝熱量を得ようとする場合は、冷却する空気乃至は伝熱面に水を散水する。この散水が伝熱面を行き渡って全面を湿球温度まで下げようとすると、ポンプの出力をまして其の水の散水量を増加してやることが望ましい。この散水量を増やすと伝熱面上の水は全面に行き渡って連続して流れ落ち、連続的にポンプで汲み上げることが行われる。この場合、流れる水の温度は均一化して熱交換器の入り口も出口も其の水の温度は同一になる。この結果、前述した対向流による伝熱量を増加させる効果は失われる。
【0015】
しかして、伝熱面上の水濡れ性を良くして散水量を増やすか、伝熱面上の温度分布を維持するために散水量を減らすか、二者択一に迫られる。
請求項1は伝熱面の水濡れ性を良好にし、且つ伝熱面の温度分布を保持した状態に維持するという双方の効果を満たす技術として、断続的に散水することを提示している。実験ではアルミ板の伝熱面の場合、30秒間連続最大量散水を行い、6分間散水を停止する方式が有効であった。この繰り返しにより上記の効果を実現できることを確認している。30秒間の多量の散水により伝熱面のほぼ全面に水が行き渡る、散水を停止すると数秒後には伝熱面の各点の温度、即ち水の温度は空気側の条件によって其の分布を変える。この結果、全面が均一な温度であるより多量の伝熱が行われることが確認できている。双方の空気が対向流であれば前述した通りに、より多くの伝熱を行わせえることができるし、対向流でない場合でも、其の伝熱量増加への影響は小さくない。6分間の散水停止時間は伝熱面の状態、即ち水を保持しやすいか否かによって最適時間を選定する。
この様にして高い伝熱性能で冷却された空気は室内に直接吹き出すことにより室内を冷房する。または、室内を冷房する為の循環水をこの冷却された空気を用いて熱交換させて冷却した後に各部屋、各部処にこの循環水を循環させる方式も有効である。この循環水を導き、天井、壁面、床面に冷却器を設置して空間内を冷却・冷房させる方式である。これとは別に当該空間内の空気を除湿する機能を持たせれば、高い快適性の冷房を行わせることができる。
【0016】
請求項2は以上の空気対空気熱交換器で伝熱させる2つの空気として双方とも室内空気を用いる方式についての技術を提示している。空気の温度には3種の温度があり、伝熱に応用されている。室内空気を空調する際の基準となるJIS標準条件では冷却する屋外空気の温度における其の3つの温度は、乾球温度として35℃、湿球温度として約24℃であるが其の露天温度は約19℃である。一方室内空気は同様にJIS標準条件では乾球温度27℃、湿球温度は約19℃であるが、露天温度は約15.6℃である。請求項2の技術により室内空気温度を其の露天温度近くまで冷却する技術を提示している。其の方法は室内空気を冷却した出口の冷却された空気の25%程度を分離して其の冷えた空気を用いて水蒸発冷却を行う技術である。最初から25%の空気を冷却する空気とし、75%の空気を冷却する場合は、冷却する25%の空気に散水、加湿し、それを湿球温度(19℃)とし、それで室内空気を冷却すれば、22〜23℃程度まで冷却できる。ところが冷却された室内空気を散水加湿すると露天温度(15.6℃)近く、これを冷却に用いれば室内空気を18〜19℃まで冷却できるもので、この冷却原理を利用し、冷却に用いた室内空気がこの冷却工程で室外空気エンタルピ近くまで到達した後に換気空気として排気させる。と同時に其の換気させる風量とほぼ同等の屋外空気を取り込んで前記室内空気に加えて前記冷却される空気とすれば、室内空気を低温度まで冷却できると同時に換気による屋外空気の蒸し暑い高エンタルピ空気によるエネルギー流入ロスを殆どゼロに抑えることができるものである。以上は熱力学的、及び実験的に実証されている。
【0017】
請求項3は冷却器の伝熱面に関するもので、前述した課題3に対応するものである。特に伝熱面全体に冷却水を保持させ冷却効果を高める為の具体的な技術である。冷却水の膜厚を薄くして伝熱冷却効果を高める為に伝熱面は鉛直に設置し、伝熱面を間隙を開けて多数枚数重ねあわせた構造が望ましい、其の場合、散水により水は伝熱面の上を流れて落ちてしまい、伝熱面を薄く濡らし続けるという理想通りに成らない。そこで伝熱面に給水布を敷く、植毛をするなどの方法が試みられている。其の場合、水の浸透力により其の表面に保持される。しかしながらこれでは水が蒸発することによって生じる残留物であシリカ成分などが堆積するため、やがて保水性は失われ、伝熱面は長期間の使用に絶えない。
そこで請求項3では伝熱面上に水平方向に渡って保水のための溝を形成する方法である。溝の上下巾は3mm程度で溝の深さは0.7mm程度で溝ピッチは6mm程度が選ばれる。伝熱面に水を散水すると各溝の中に水が保持され、5〜6分間伝熱面の冷却に有効に働くことが解って居る。
【0018】
請求項4はこの溝による効果を台無しにすることを防ぐ技術を提示してる。溝は水を保持する効果を有するが、例えば伝熱面の全幅に渡ってこの溝を整形し枠体などに取り付けて冷却器を構成する方法の場合、当該溝に保持された水は伝熱面が枠体と接するところで枠体を伝わり流れ落ちてしまうことが解って居る。そこで枠体と接するところの近傍で当該溝を終了させておくことが有効である。この事実をさらに展開したのが請求項5である。即ち、上記溝が伝熱面の巾方向に渡って形成されるものと同等の効果を持たせる方法として溝状の凸凹を例えば千鳥足状に形成して、散布水が平坦部を流れ落ちることを同様に防止できることが解っている。即ち上下に連続する平坦な道を伝熱面上に形成しないことが有効である。
【0019】
請求項6は、このように伝熱面を鉛直に配置し、冷却される空気と冷却する空気を冷却器の上下から流入させて対向流となし、両方の空気の出口を側面の開口部から流出させる構成である。この構成は散水が伝熱面全体に広がること容易になり、かつ前述した側面の開口部近傍を含めて散水により伝熱面の水濡れを確保でき、伝熱面積を最大に確保して伝熱性能を高めることが可能であるからである。この水濡れ性を確保するのが請求項1のポンプの作動が有効である。
【0020】
請求項7はこの複雑な構造の空気対空気熱交換器の製造方法に関わる技術である。伝熱面と其の周囲を保持する枠体を一体にし、それを積層して全体の空気対空気熱交換器を構成する。この場合のポイントは散水した水が冷却する空気の通風路のみを流れ、冷却される空気の通風路には流れ込まず、滲み出さない構造が必要である。請求項8は額縁状の枠体に二枚の伝熱面を挿入してその間を通風路とする。その後にその枠体を重ねあわせて熱交換器を構成させる。この二枚の伝熱面と枠体で囲われた通風路を冷却する空気を流し、散水させる様にすれば、冷却される側の通風路に水が流れ込み、乃至は滲みだすことを容易に防止できる。この伝熱面と枠体の間は密着しやすく接着剤などで水の滲み出しを防止する。通常冷却する空気の風量は冷却すされる空気の風量の3〜5分の一に設定されるから、隣り合う2つの通風路は冷却される空気の側の方を広くして其の風量の確保を計る。
【0021】
請求項8は、冷却水の蒸発によって生じるスケールやゴミの析出、堆積を最小化する技術を提示している。供給する水道水を装置が必要とする水量より多くし、ドレンパン等から自然にオーバーフローさせる方法である。極めて簡単な方法で確実は効果が見込める。
水道水の供給水圧には夫々の地域で差があるから、水道水供給部に定圧供給弁を設置するか、装置を設置する時に供給水量を設定した水量に調節できる機構を設置する方法などが有効である。
この冷房機に置いて冷却される空気を冷却する手段は、以上に述べてきた冷却する空気による水状蒸発冷却器によるものと、屋外空気による水蒸発冷却によるものの足しあわ
せた効果により冷房することができる。請求項9はこの屋外空気による冷却を前記空気対空気熱交換器の冷却される空気の入口となる部分に熱交換部を設け、前記空気対空気熱交換器に於いて冷却する空気で冷却される空気を水蒸発冷却する前段で、屋外空気で冷却される空気を水蒸発冷却させることを提示している。後述する実施例で詳細を述べるが、双方の冷却部分を一体化することにより、冷却性能の向上と冷房機のコンパクト化が図れる。
【0022】
以上の様に水蒸発による冷却を行う上で課題となったスケールや汚れの発生に対する対応技術を請求項10に述べている。水道水に含まれるミネラル成分である炭酸カルシュームなどが濃縮されて析出し、スケールとして固着する。これを防ぐには水道水を定量補給してオーバーフローさせて排水させることが必要である。このため、予め運転による蒸発水量を設定し、それより一定量多い水量を補給し、水蒸発冷却器の下部に設けたドレパンから冷房装置外部へ自動的に排水させることが有効である。
【発明の効果】
【0023】
以上の発明により以下の様な効果を期待できる。
1、水蒸発潜熱を有効に使って、ファンモータと水ポンプ以外に熱源や動力源を使わ
ずに室内空気の冷却を行う冷房装置を提供できる。
2、以上の冷房装置は圧縮機や冷凍サイクルを用いた従来の冷房装置に比べ、製造減価の低減が期待でき、また一次エネルギー使用量の少ない冷房装置を実現できる。
3,高い伝熱特性による高性能な空気対空気熱交換を実現でき、これを用いた冷房装置の高性能化、小型化、コスト低減が実現できる
4,冷却用の水の最適利用が実現でき、水の使用量の削減とスケールや汚れの発生を少なくし、製品の長寿命化が実現できる。
5,環境エネルギー装置として今後の普及が期待される燃料電池、バイオマス発電装置、太陽光ハイブリッド発電温熱装置などの電力と温熱をハイブリッドで出力する装置の電力と温熱を夫々本冷房機のファンモータ電力とデシカント再生用温熱に利用して作動させるシステムの実現に適している。
6,本冷房機の低温度及び低湿度化技術を駆使して、低温度出力空気で冷却水をつくりそれを冷房空間の外周壁や床や天井の冷却に利用し、低湿度空気をその冷房空間に送り、合わせて極めて快適な未来型冷房を簡単なシステムで実現することができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による代表的な冷房装置の構造図
図2】本発明による空気対空気熱交換器の構成図
図3】本発明による水蒸発冷却器伝熱面
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に本発明の技術を織り込んだ冷房装置1を示す。其の中に水蒸発冷却器14を設置している。この冷却器の構造をわかりやすくした図を図2に示す。冷却される空気である室内空気2は図1の左下の室内側から室内空気送風機11により装置1に取り込まれる。室内空気の温湿度はJIS空調標準条件では27℃相対湿度50%である。室内空気送風機は図1では手前の遠心シロッコファンのみ記載されているが、同軸上に奥にもう一台のシロッコファンがあり、合わせて2台のファンで室内空気を送風している。室内空気の約50%が図の左下部分から吸い込まれ、デシカント熱交換器7を通過して除湿され、その後送風機11の手前側ファンに吸引され、水蒸発冷却器14の下部に送風され、そこで室外空気3更にはUターンされた室内空気5により冷却されて冷却器14の最上部に達する。温湿度は20℃、相対湿度:RH40%で。この空気の湿球温度は12.3℃である。
【0026】
この空気は図2のA部矢視図にみられる様に冷却器14の最上部の側面から排出され、そのうち50%が冷却器14の上部から散水された水と一緒に12.3℃に近い温度で冷却器14の冷却風路に入り、下方向に流れ、前述した室内空気と対向流状に流れ、室内空気を20℃まで冷却した後に、図1にみられる様に屋外空気送風機により屋外へと排気される。この風量分が換気されることになる。残りの50%は図1に示される様に室内吹き出しへと送られ、加湿器を経て室内へ送利出され冷房する。
一方、奥のシロッコファンに吸い込まれた室内空気は直接冷却器14に送られ、冷却されて其の出口では19.5℃、RH70%になる。この空気と手前のファンで送られた20℃相対湿度40%の空気の約50%は合流し、加湿器16で加湿調整され且つ冷却されて、室内吹出し空気として室内に送られ室内を冷房する。
【0027】
其の吹き出し空気は平均で17.0℃ RH78%である。この結果27℃ RH50%の室内空気は17.0℃ RH78%に冷房されて室内空間に送風され、室内空間を冷房する。この結果、温度降下10.0℃、絶対湿度降下0.0015kg/kgの冷房効果が得られる。
以上の様にして通常の冷房運転を行うことは可能であるが、最終段の加湿を行なわなけれ
ば室内への吹き出し空気は19.8℃で温度降下7.2℃、絶対湿度降下0.003kg/kgとなり、乾いた空気が得られる。其の相対湿度は55%となり、この様な低湿度化運転が可能である。電動式の冷凍サイクル方式エアコンでは吹き出し空気の相対湿度は70%〜100%であり、その値は成り行き状態で決まるため、湿度制御が出来ないのに対し、この実施例では室内吹き出し空気は約60%〜95%の相対湿度に調整が可能であり、冷房運転の快適性確保、黴や臭い発生の防止に有効な運転を実現でる。
【0028】
このとき散水ノズル13から散水する水道水は、30秒散水後6分間停止する。この30秒の散水により冷却器14の冷却側通風路に十分な水と冷却用室内空気が図2のA矢視図に示す様に上から下に流れこみ、伝熱面全域に行き渡る。其の水は冷却器14の伝熱面であるアルミニュームに形成した水保持用の溝に保持される。その後6分間は其の保持された水が蒸発してUターンした室内空気を冷却し、其の冷却熱で伝熱面の反対面を流れる室内空気を冷却する。大量の水を連続して散水する場合に比べ、散水停止する6分間は20〜30%多くの伝熱量、即ち冷却効果を得ることが出来る。それは冷却する側のUターンされた室内空気と冷却される室内空気の熱交換が温度分布的に対向流の温度分布を実現できるためと考えている。
【0029】
冷却換気空気5の流れる冷却器14の冷却側の通風路には上述した様に室内空気の全風量の約25%の空気が流れ、伝熱面の水保持用の溝に保持された水道水を蒸発させて自らは伝熱面を冷却する。伝熱面は図3に概要を示す。0.1mm厚さのアルミ板に耐蝕性処理をして其の外側に親水性塗膜を付けたもので、保水用の溝を形成している。その形状は重要で、この実施例では溝の横断面形状は高さ3mm、深さ0.7mm、溝同士間の距離は3mm、であり、従って溝ピッチは6mmとなっている。溝の両端は伝熱面両端との間に8mmの溝なし部分があり、其の部分を樹脂枠体で固定保持しても、溝に保持された冷却水は枠体を伝って流れ落ちることは無い。
【0030】
前述した溝形状は伝熱面のほぼ全幅に渡って形成されているが、伝熱面の中央部を保持する場合などは溝形状の横幅を短くし、伝熱面の中間に溝のつながらない溝形状であっても其の部分が連続的に上下につながらない形状にして、保水性を保つ工夫が重要である。
伝熱面の表側は図示した様に溝のある面で、冷却する空気が冷却水と共に流れる通風路を隣同士の伝熱面との間で構成する。裏側が冷却される空気の流れる通風路側である。冷却される通風路の伝熱面間の間隙は4mm、冷却する側の通風路の伝熱面間の間隙は1.5mmである。これは冷却される側の風量がする側の風量に比べ3〜5倍と多いからである。このピッチ寸法を精度良く保つて組み立てるために額縁状の枠体で伝熱面を保持する構成にしており、この事例では1つの枠体の両面に伝熱面を2枚、溝の形成している側を向き合うように貼り付け、その間を冷却する空気である換気する室内空気と散布水を流している。
【0031】
冷却される空気は主に室内空気であり、図1には記載していないが、図1の室内空気吸込口の部分で、上記の換気空気とほぼ同量の屋外空気7を取り込んで、一緒にデシカント熱交換器を通して除湿している。即ち約20%程度の風量を屋外空気から取り込んで冷却される空気としている。前述した様に冷却する空気として作動させた室内空気の一部を換気空気5として屋外へ排気する風量分を、予め室内風量に加えておくことにより換気出入空気量バランスがゼロとなり、換気によって生じる熱損失を最小化できる。この様にすれば、実使用上で屋内の空質維持の点から必要になる換気事態を冷房装置に組み込んでおくことになるため、換気による快適性と上記換気バランスによる省エネルギー性を同時に達成することができるわけである。
【0032】
水蒸発冷却器の構成を図2に示している。その種な構成は下半分の屋外冷却空気3による冷却する部分と其の上部の換気空気で冷却する部分で構成されており、冷却される空気である室内空気は、先ず横方向に流れる屋外空気3と上から流れて来る換気空気5の双方により冷却され、その後さらに水蒸発冷却器内を上流へ流れ、換気空気のみによって冷却される部分で更に冷却される。この部分は冷却される室内空気と冷却する換気空気は完全に対向流となる。
冷却水として散水ノズル13から水道水を散水させる。最上部の散水ノズルは図2から推測できる様に8ケの散水ノズルから散水する。一方、屋外空気で冷却する部分は下の散水ノズルから横向きに散水する。いづれも30秒の散水時間と6分の停止時間を繰り返している。
【0033】
散水ノズルからの散水量は図示していないがドレンパンの下に設けたポンプにより30L/時間程度の総循環流量を確保する。一方供給する水道水は図2に示す様に加湿器部分への散水ノズルを通して10L/時間、を目安にトータル散水量を制御している。装置全体の冷却による水蒸発量は4L/時間 程度であるから、其の差である6L/時間 の水量はドレンパン15からオーバーフローしてドレンニップル18から装置外へ排出される。この結果循環する冷却水に含まれるミネラル成分の過度の濃縮を避ける事が出来、スケールの発生、汚れの堆積などを防ぐことができる。
【0034】
デシカント熱交換器はこの実施例では通常の約半分のサイズに小型化している。それは前述した様に冷却すべき室内空気の半分をこのデシカント熱交換器を通さずに処理しているからである。他の半分はこのデシカント熱交換器を通すことによりデシカント効果を高めることができる。同時にこの熱交換器には前述したドレンパン15から取り出した水を冷却水として流している。その結果デシカントすることによる発熱を同時に吸収冷却し、デシカント効果を高めている。デシカント熱交換器には3列パイプ方式のフィンチューブ式
熱交換器を用いており、且つその3列分のアルミフィンは一列毎に切断して列間の伝熱を最小に抑え、室内空気と冷却水を対向流に流して温度勾配を生じさせ、室内空気の到達湿度を最低湿度に成るように工夫している。
【0035】
バイオマス発電装置や太陽光ハイブリッドパネル、燃料電池等から出力される電力と温熱のハイブリッド出力を夫々本冷房装置のファンモータと制御電源電力、及びデシカント再生用の熱源温水8に利用することにより、エネルギー需給の最適な組み合わせを実現する方法は今後の課題である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
冷媒とその圧縮機による冷凍サイクルを用いた冷房装置に変わって主に温熱を動力源にした冷房装置を実現できる可能性がある。その結果世界的に課題である冷房による電力の消費量を削減できる可能性がある。
【符号の説明】
【0037】
1 冷房装置本体
2 室内空気
3 屋外空気
4 室内吹き出し空気
5 冷却換気空気
6 デシカント熱交換器A
7 デシカント熱交換器B
8 熱源温水
9 壁
10 デシカント熱交換器切り替えアーム
11 室内空気送風機
12 屋外空気送風機
13 散水ノズル
14 水蒸発冷却器
15 ドレンパン
16 加湿器
17 水蒸発冷却器周囲壁
18 ドレパンニップル
19 水蒸発冷却器伝熱面
20 水蒸発冷却器保水溝
21 水蒸発冷却器伝熱面両端
図1
図2
図3