特許第6671586号(P6671586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671586グラビア印刷版及び該グラビア印刷版を用いたグラビア印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6671586
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】グラビア印刷版及び該グラビア印刷版を用いたグラビア印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20200316BHJP
   B41N 1/16 20060101ALI20200316BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B41N1/06
   B41N1/16
   B41M1/10
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-136617(P2019-136617)
(22)【出願日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年7月25日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714011259
【氏名又は名称】下村 恭一
(72)【発明者】
【氏名】下村恭一
【審査官】 馬渕 貴洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−035704(JP,U)
【文献】 実開昭54−162304(JP,U)
【文献】 特開平06−134960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00 〜 3/18
B41M 7/00 〜 9/04
B41N 1/00 〜 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア印刷に供するグラビア印刷版であって、前記グラビア印刷版の版面部と前記グラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の前記版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、前記版面部から前記段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する前記角部及び該角部に連なる段差部の一部は前記版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記交差部から前記版面部までの長さに対し前記交差部から前記版側面部までの長さが小さいことを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項2】
グラビア印刷に供するグラビア印刷版であって、前記グラビア印刷版の版面部と前記グラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の前記版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、前記版面部から前記段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する前記角部及び該角部に連なる段差部の一部は前記版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記版面部と前記版側面部とが交差する部位を交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さを半径としてR部を設けた形状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し、前記段差部及び前記曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいことを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載のグラビア印刷版を使用しグラビア印刷することを特徴とするグラビア印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グラビア印刷において、グラビア印刷版に設けられたセル(絵柄を形成する)にインキを塗布した後、不要なインキを除去するためのドクター刃において、グラビア印刷版両端のR部で揺動するドクター刃の摩耗や損傷を少なくし、グラビア印刷物の品質向上、ドクター刃の耐久性を高め、グラビア印刷の生産性向上を図ることができるグラビア印刷版及びグラビア印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷の出現以前には、平版印刷、凸版印刷、凹版印刷が印刷三方式と呼ばれていた。グラビア印刷は、凹版印刷の代表的な印刷方式であり多様な印刷素材に対応できる印刷として広く使用されている。
【0003】
グラビア印刷の特徴は、使用するインキに用いる樹脂の種類を選択することにより、紙・アルミ・各種のフィルムなど多様な素材に印刷を施すことができる。また、フィルムなど透明な素材においては、印刷面から又は非印刷面から意匠を認識できるため、産業資材分野、包装資材分野などの印刷に多く用いられている。
【0004】
どの分野においても、印刷物の品質要求は高くなっており機械面、インキ面、副資材面の検討は行われているが、これらについて多面的に検討されることは少ない。たとえば、グラビア印刷版とドクター刃に関する検討においても、意匠を形成するグラビア印刷シリンダーのセル形状や表面粗さ、ドクター刃が版面でどのように変化する(例えばセラッメキドクター刃の開発)などの検討であり、製品に関係がないと思われていたグラビア印刷版の版エッジの影響をなくす方法などは検討されていない。検討がなされたとしても、「版エッジをきれいに清掃しよう。」というような行為でしかなかった。従って、特許文献、非特許文献おいて、記載された文献を見出すことが出来なかった。
【0005】
グラビア印刷版の製造工程を簡単に記載すると、1、アルミ又は鉄のシリンダーを所望の円周(版ピッチ)に旋盤で切削する。2、このときシリンダーの両端部(版面と版側面の交点部分)を半径10mm程度の曲面で仕上げR部を形成するが、この時点で一般的にR部の表面凹凸は、版面部分より凹凸の激しいものである。3、さらにペーパー研磨が施されることもある。4、次いで、銅メッキが500ミクロン程度される。(グラビア印刷版の転用を容易にする為更に銀粒子を付着させた後更に銅メッキ層を80μ程度形成することもある。…バラード版)5、版面の銅メッキ面は砥石研磨2000番から3000番で仕上げられ、バフ研磨も行われることもある。これにより、版面は鏡面状態の平滑性が得られる。6、版端部のR部は(5、)の研磨の前にヤスリで銅メッキのブツなどを除去するが、ヤスリの目が細かすぎるとヤスリの目に銅が詰まる為、R部は平滑とは言えない状態で次の工程に送られる。7、次いで、砥石研磨された銅メッキ面にレーザー方式のダイレクト腐食又はダイヤ針による電子彫刻により、版深35ミクロンから5ミクロン程度のセルが形成される。8、次に、耐刷力を高めるためクロムメッキが6ミクロンから12ミクロン程度の厚みで形成され、版面はペーパー研磨が行われる。(この段階では、R部の研磨は行われない。従って、R部は銅メッキの状態より更に荒れた表面となり、また表面硬度も高いものとなる。)
【0006】
このような、表面状態であるグラビア印刷版両端のR部にドクター刃が加圧され揺動することで刃先は激しい摩耗、カケ、損傷が生じ、ドクター刃の交換頻度が多くなるだけでなく、ドクター刃の摩耗、カケ、損傷による異物がインキ中に混入し筋汚れや、ドクター筋、筋汚れと呼ばれる印刷不良の原因となっている。また、カケや損傷によりインキ飛びの原因にもなっている。
【0007】
グラビア印刷版の両端に10mm程度のR部を設ける理由は、印刷版は立てて保管され移動の方法として、立てた状態で傾け回転することで移動する為でありR部が無ければ版面を傷つけるためである。
【0008】
現状グラビア印刷に使用されているグラビア印刷版の状態について、図を持って説明を加える。図1はグラビア印刷においてグラビア印刷版(5)にドクター刃(6)を圧着した斜視概念図であり、更にグラビア印刷版(5)の部位に付いて、版面部(1)、版側面部(2)、R部(3)、チャッキング穴(4)を示す。また、図1に示した破線イ−イの断面部は、図3から図11の断面図はグラビア印刷版のエッジの断面を示したものである。
【0009】
図2は、ドクター刃が版面部(1)及び版エッジのR部(3)により、激しい摩耗、カケ、損傷が生じる状態を示した図である。グラビア印刷版(5)は図1のイ−イの断面図で、ドクター刃(6)はグラビア印刷版(5)に圧接された刃先の状態を版面部(1)から離せて図に示している。ドクター刃(5)は版面部(1)に圧接され、版面上では湾曲しているがR部(3)においては湾曲がなくなりR部(3)に沿うこととなる。ドクター刃(6)の加圧力にもよるが版面より芯部に向かい2mm程度、版面方向には5mm程度(R部が10mm程度の場合)、ドクター刃(6)はR部(3)に接触する。また、両矢印で示したドクター刃(6)の揺動幅(7)はプラスマイナス5mmが一般的であり、ドクター刃(6)は、おおよそ15mm幅で激しく摩耗することとなる。ドクター刃の摩耗部位(8)を斜線で示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
グラビア印刷版を用いるグラビア印刷において、インキを掻き落とすために使用するドクター刃とグラビア印刷版の両端のR部(具体的には、グラビア印刷版の版面と呼ばれる2次曲面とグラビア印刷版の円状版側面の間に存在するR部と呼ばれる3次曲面部分)が接触することで発生するドクター刃の摩耗や損傷を少なくし、R部とドクター刃間の面積部を通過するグラビアインキの量を少なくし、R部に起因するグラビア印刷物品質不良であるゴミ筋(ドクター刃のカケ・摩耗による異物)、インキ飛び(R部に保持されるインキ飛散)を防止すると共に生産性向上が図れるグラビア印刷版及びグラビア印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のグラビア印刷版は、グラビア印刷に供するグラビア印刷版であって、前記グラビア印刷版の版面部と前記グラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の前記版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、前記版面部から前記段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する前記角部及び該角部に連なる段差部の一部は前記版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連
なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記交差部から前記版面部までの長さに対し前記交差部から前記版側面部までの長さが小さいことを特徴とする。
【0012】
本発明のグラビア印刷版は、グラビア印刷に供するグラビア印刷版であって、前記グラビア印刷版の版面部と前記グラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の前記版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、前記版面部から前記段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する前記角部及び該角部に連なる段差部の一部は前記版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記版面部と前記版側面部とが交わる交差部を交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さを半径としてR部を設けた形状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し、前記段差部及び前記曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明の一つ目は、グラビア印刷版のエッジの形状として、従来の版面部と版側面部に接する半径7mmから12mmR部を設け形成するものではなく、グラビア印刷版の版面部とグラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、版面部から段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する角部及び該角部に連なる段差部の一部は版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記交差部から前記版面部までの長さに対し前記交差部から前記版側面部までの長さが小さいグラビア印刷版である。尚、エッジの形状を形成するには、いろいろな方法が有るが、版のエッジを芯材である鉄又はアルミのシリンダーの段階で機械切削により所望の形状に形成し、更に銅メッキを施した後、ドクター刃が接触する角部及び該角部に連なる段差部の一部は版面部と同等に砥石研磨又はペーパー研磨又はバフ研磨などにより平滑に仕上げれば良い。
【0014】
前段落で説明したグラビア印刷版とすることで、グラビア印刷版の版側面部の面積は大きくなりグラビア印刷版を立てて置かれた場合の転倒を少なくなるものである。因みに、通常グラビア印刷版は立てて置かれており、倉庫などで保管する時は何本かを縛って保管又は何十本かを区切られたスペースに保管される。印刷職場においては、グラビア印刷版を使用する前後において1本で立てて置かれる。従っていずれの場合においても床面への版側面接地面積が大きくなることにより、転倒防止の一助となるものである。
【0015】
グラビア印刷版を移動する場合、長い距離を移動する時はパレットにクッション材を敷きグラビア印刷版を横に倒して移動するが、印刷職場内やグラビア印刷版倉庫からパレットまでは、グラビア印刷版を10度程度傾け回転させて移動する。
【0016】
図3には、グラビア印刷版を床面に立てて、10度の角度で傾けた時の曲面部が床面との接点(17)を★印で示した。従来のグラビア印刷版のR部形状のエッジの場合と本発明の段差部を形成したエッジの場合で、床面との接点(17)の位置は異なが、傾け回転させて移動する際の問題はない。図3には従来のR部()での10度傾けた時の床面との接点(17)と本発明のエッジの形状の曲面部(13)での10度傾けた時の床面との接点(17)とを記している。
【0017】
本発明の二つ目は、グラビア印刷版のエッジの形状として、従来の版面部と版側面部に接する半径7mmから12mm程度のR部を設け形成するものではなく、グラビア印刷版の版面部とグラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、版面部から段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する角部及び該角部に連なる段差部の一部は版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており前記版面部と前記版側面部とが交差する部位を交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さを半径としてR部を設けた形状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し前記段差部及び前記曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいグラビア印刷版であり、角を取り削除されたエッジ部分に溜まる印刷インキが少ないグラビア印刷版である。尚、エッジの形状を形成するには、いろいろな方法が有るが、版のエッジを芯材である鉄又はアルミのシリンダーの段階で機械切削により所望の形状に形成し、更に銅メッキを施した後、ドクター刃が接触する角部及び該角部に連なる段差部の一部は版面部と同等に砥石研磨又はペーパー研磨又はバフ研磨などにより平滑に仕上げれば良い。
【0018】
前段落で説明したグラビア印刷版のようにすることで、グラビア印刷版両サイドの角取りがされたエッジとドクター刃との間に溜まるインキを少なくすることで、エッジよりインキの飛散を防止して、インキ飛びと言われる品質不良を防ぐと共にグラビア印刷機の両サイドの回転シャフト、印刷機フレーム、床面等を汚すことによる清掃等の作業負荷を少なくする若しくは無くすものである。因みに、印刷速度が早ければインキ飛散は激しくなるが、版エッジへのインキ付着量を少なくすることによりインキ飛散を削減することができる。
【0019】
本発明のグラビア印刷版のエッジの形状及び名称を図3に示し説明する。尚、図3は、図1に示したイーイの断面部分を拡大した概念図である。本発明の段差部を設けたグラビア印刷版のエッジの1例を図3に示す。(尚、図4から図11においても、図1に示したイーイの断面部分を拡大した概念図である。)
【0020】
図3は、グラビア印刷版のエッジを拡大した断面概念図であり、従来の版面部(1)と版側面部(2)に接するR部(3)の形状を細かい破線で示している。本発明のエッジの形状は、グラビア印刷版の版面部(1)とグラビア印刷版両サイドの版側面部(2)とが交差する交差部(10)の版面部(1)側に、版面部(1)より一段低い段差部(9)が設けられ、版面部(1)から段差部(9)に至る角部(11)は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する角部(11)及び該角部(11)に連なる段差部(9)の一部は版面部(1)と同等に平滑に仕上げられ、段差部(9)の段差面から版側面部(2)に向けて曲面部(13)が設けられ、段差部(9)の段差面は曲面部(13)と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように設けられている。
【0021】
交差部(10)から版側面部(2)までの長さが、交差部(10)から版面部(1)までの長さより小さくしたエッジを有するものである。
【0022】
また、本発明のグラビア印刷版のエッジの形状は、版面部(1)から版側面部(2)に至る任意に選択された直線や円弧を描く曲線から選択され形成される。
【0023】
本発明のエッジは、版面部(1)に連なる円弧に形成せれる角部(11)、直線や円弧を描く曲線で形成された段差部(9)、段差部(9)の端部(12)、端部(12)より延びる版側面部(2)に接する曲面部(13)で形成される。従って段差部とは、グラビア印刷版のエッジより曲面部(13)を除く部位の総称でもある。また、段差とは、段差部(9)から版面部(1)までの垂線が段差の高さ(版の中心軸から段差部と版面部の高低差)である。
【0024】
図4は、グラビア印刷版のエッジを拡大した断面概念図であり、版面部(1)と版側面部(2)に接するエッジである従来のR部(3)の形状を細かい破線で示している。本発明のエッジの形状は、グラビア印刷版の版面部(1)とグラビア印刷版両サイドの版側面部(2)とが交差する交差部(10)の版面部(1)側に、版面部(1)より一段低い段差部(9)が設けられ、版面部(1)から段差部(9)に至る角部(11)は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃(6)が接触する角部(11)及び該角部(11)に連なる段差部(9)の一部又は全ては版面部(1)と同等に平滑に仕上げられ、段差部(9)の端部(12)から版側面部(2)に向けて、曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、版面部(1)と版側面部(2)とが交差する部位を交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さを半径としてR部を設けた形状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し前記段差部(9)及び前記曲面部(13)よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積を小さくすることにより、削除されたエッジ部分に溜まる印刷インキが少ないグラビア印刷版である。
【0025】
交差部(10)から版側面部(2)までの長さが、交差部(10)から版面部(1)までの長さより小さいエッジを有するものである。従って、本発明のエッジ(16)は版面部(1)から版側面部(2)に至る円弧に形成せれた段差部(9)に含まれる角部(11)、段差部(9)、段差部(9)の端部(12)、曲面部(13)で形成されるものであり、段差部(9)とは、角部(11)から端部(12)に至る部分を呼ぶものである。また、段差の深さ(23)(若しくは高さ若しくは長さ)としては、エッジを形成する版面部(1)の位置から段差部(9)までの垂線の最大の高低差を持って段差の深さ(23)とする。
【0026】
図5をもって、本発明のエッジを形成する版面部(1)の位置から段差部(9)までの垂線の高低差(段差の深さ(23))及び段差部(9)及び曲面部(13)の形状に角取りされた本発明のグラビア印刷版のエッジの断面積(18)について説明する。
【0027】
図5において、斜線で示した部分が本発明の段差部(9)及び曲面部(13)の形状に角取りされたエッジの断面積(18)である。従来使用されているR部形状のエッジの断面と比較すると
R部エッジと本発明エッジとの交点(19)の角部(11)と交点(19)で囲む面積(20)(太矢印さす)は、本発明の断面積(18)に加算されるが、R部エッジと本発明エッジとの交点(18)と R部と版側面部が交わる角部(15)と曲面部と版側面部が交わる角部(14)と段差部の端部(12)で囲む面積(21)を除算することができる。明らかに前者の面積は、後者の面積よりちいさなものであり、本発明のエッジの断面積(18)は、エッジをR部(3)とした断面積より小さなものとなる。
【0028】
また、グラビア印刷版の版面部のドクター刃はインキを掻き取るため加圧しており、加圧によりドクター刃は湾曲した状態(タワミ)になるが、エッジにおいてはドクター刃のタワミは少なくなり、ドクター刃は徐々に平面となる。ドクター刃の刃先(22)は版面部から段差部に近くなることで、前記前者の面積は、前記後者の面積の面積差は大きくなる。ドクター刃の刃先(22)形状を2点破線で示す。
【0029】
ドクターの刃先と本発明の段差部及び曲面部からなるエッジとの間に溜まるインキは、従来のR部を設けたエッジとの間に溜まるインキに対し、少なくする(数分の一程度に)ことができることで、版エッジからのインキ飛散を防止できるものである。
【0030】
本発明のグラビア印刷版に設けるエッジについて1例を持って説明を行ったが、エッジの形状においては、種々の形状を提案することができる。グラビア印刷においては、使用するドクター刃は画一的なものではなく、ドクター刃の弾性・硬さ・厚み、表面加工の有無等などで選択され、また、ドクター刃を使用する条件としては、版面への加圧力・版面への接触角度・ドクターホルダーから刃先までの距離、ドクター刃に沿わす厚刃当て板の寸法等使用条件は様々であり本発明のグラビア印刷版のエッジの形状は諸条件により適切かつ任意に選択すればよい。
【0031】
本発明者は、グラビア印刷版のエッジ近傍でドクター刃の加圧を弱くする発明(特許第6056112号)をしており、本方法を併用する場合は、版面とこれに連なるエッジでドクター刃の形状の変化は異なったものとなるが、適宜エッジの形状を変えれば良い。
【0032】
図6から図11に、図3のエッジの形状と異なる本発明の別なエッジの形状について、概念図を示すと共に簡単な説明を行う。
【0033】
図6は、版面部(1)より段差部(9)の一部としてR部(3)形状のエッジ設け、ドクター刃の刃先(22)がR部(3)を離れる少し先の位置よりドクター刃が弾性によるタワミがなくなっていくドクター刃の刃先(22)の形状に合せて段差部(9)を形成し、段差部(9)の端部(12)より版側面部(2)に伸びる曲面部(13)を設けたものである。更に段差部(9)の端部(12)と曲面部(13)の境界は角取りを行なっている。これにより、従来使用されているR部(3)の場合に比べ交点部(10)から版側面部(2)までの長さは、1/3程度になりグラビア印刷版を立てた時の版側面部(2)の接地面積は大きくなり安定性は良くなっている。また、本形状で作成したエッジの断面積は、R部(3)によるエッジの断面積の1/2程度となっている。
【0034】
段差部(9)とドクター刃の刃先(22)が接触する範囲(24)を太カッコで示す。ドクター刃の刃先(22)を当てた場合は、本発明のエッジ(16)との間の断面積は1/4程度にすることができ、この間を通過するインキ量を大幅に減らすことができる。
【0035】
図7は、版面部(1)より斜めの直線状の段差部(9)を設け、ドクター刃が斜めの直線状段差部(9)を離れる少し先の位置より、段差部(9)を版面部(1)と平行な面として、段差部(9)の端部(12)より版側面部(2)に伸びる曲面部(13)を設けたものである。更に段差部(9)の端部(12)と曲面部(13)の境界は角取りを行なっている。
これによりR部(3)形状のエッジと比べ、交点部(10)から版側面部(14)までの長さは、1/3以下程度になりグラビア印刷版を立てた時の版側面(2)の接地面積は大きくなり安定性は良くなっている。ただ曲面部(13)の半径はR部(3)の半径より小さくしている。また、本形状で作成したエッジの断面積は、R部(3)による断面積の1/2程度となっている。
【0036】
段差部(9)とドクター刃の刃先(22)が接触する範囲(24)を太カッコで示す。ドクター刃の刃先(22)を当てた場合は、本発明のエッジ(16)との間の断面積は1/4程度にすることができ、この間を通過するインキ量を大幅に減らすことができる。本形状での欠点は、段差部(9)とドクター刃の刃先(22)と接触する幅が広く版面と同等の平滑面に仕上げる負荷が大きくなる点である。
【0037】
図8は、版面部(1)より斜めの直線状の段差部(9)を設け、ドクター刃が斜めの直線状の段差部(9)を離れ少し先の段差部(9)の端部(12)より版側面部(2)に伸びる曲面部(13)を設けたものである。更に段差部(9)の端部(12)と曲面部(13)の境界は角取りを行なっている。
これによりエッジがR部(3)の形状の場合に比べ交点部(10)から版側面部(2)までの長さは、1/3以下程度になりグラビア印刷版を立てた時の版側面(2)の接地面積は大きくなり安定性は良くなっている。ただ、曲面部(13)の半径は従来のグラビア印刷版のR部の半径より小さくしている。また、本形状で作成したエッジの断面積は、R部(3)による断面積の1/2程度となっている。
【0038】
段差部(9)とドクター刃の刃先(22)が接触する範囲(24)を太カッコで示す。ドクター刃の刃先(22)を当てた場合は、本発明のエッジ(16)との間の断面積は1/4程度にすることができ、この間を通過するインキ量を大幅に減らすことができる。本形状での欠点は、段差部(9)とドクター刃の刃先(22)と接触する幅が広く版面と同等の平滑面に仕上げる負荷は、図7の形状より少ない。
【0039】
図9は、図8の段差部(9)の端部(12)より側面部に伸びる曲面部(13)半径を大きくした点が異なる。エッジ形状の起点は、従来使用されているR部(3)の起点と同じであり、グラビア印刷版を立てた時の版側面(2)の接地面積は同じである。また、本形状で作成したエッジの断面積は、図8と比較して広くなるが、従来使用されているR部(3)の場合に比べ、断面積は1/2程度となっており、ドクター刃の刃先(22)を添わせた場合にインキを溜める断面積は1/4程度となる。本形状は、段差部(9)を版面部(1)と同等の平滑面に仕上げる負荷は、図8の形状と同じである。
【0040】
図10は、版面部(1)から段差部(9)になる最初に位置に小さな円弧の平滑面を設け、ドクター刃の刃先(22)は該小さな円弧にだけ接触し、円弧から離れドクター刃の刃先(22)のタワミ少なくなりドクター刃は徐々に平面となるが、このドクター刃の刃先(22)の形状の合わせドクター刃の刃先(22)と本発明のエッジが接触しないようにエッジの形状を設けている。このようなエッジとすることで、版面部から(1)段差部(9)となる小さな円弧だけを版面部(1)と同様に平滑な状態にすれば良く、また、ドクター刃の刃先(22)の形状に合わせて、ドクター刃に接触しない小さな円弧に連なる段差部(2)を設けたエッジの形状であり、段差部(9)の端部(12)より版側面部(2)に連なる曲面部(13)を設けている。
【0041】
図10は、ドクター刃の刃先(22)が、段差部(9)と接触する範囲は(24)小さな円弧に接触するだけであり、ドクター刃の刃先(22)が小さな円弧に強く加圧されないように、先に記述した特許第6056112号を併用することができる。
【0042】
図3から図10で従来のエッジ形状と比較して、本発明の特徴であるグラビア印刷版のエッジ形状は[交差部から版面部までの長さに対し、交差部から版側面部までの長さが小さいこと]について、図9を除き満たしている。
【0043】
また、図3から図10で従来のエッジ形状と比較して、本発明の特徴であるグラビア印刷版のエッジ形状は[版面部と版側面部とが交差する部位をR状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し、段差部及び曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいこと]について全ての図が満たしている。
【0044】
図4は、図10と比較して大きな円弧を設けているが、円弧に接触する部分のドクターの刃先(22)のドクター加圧変化は緩やかになるものである。円弧に接触する幅が広くなるため平滑な面を設けるのに少し負荷が多くなる。図4から図10を持って、本発明のエッジの形状について説明したが、本発明のエッジの形状は、これらの形状に限定されるものではない。
【0045】
グラビア印刷版の両端部には、R部と呼ばれ半径7mmから12mmの4分の1円周の角取りが施されているが、目的は、1)、版面部を床面より高くすることで版面への傷を防止する。2)、版側面に曲面部を設け移動や運搬時にグラビア印刷版を10度程度傾けて回転して移動、運搬を容易にする。の2点が考えられる。
【0046】
また、図3から図10のおいては、一般的に使用されているR部の半径として10mmを想定して図示しているが、R部の半径はこれの限定されることはなく、任意に選ばれる半径で有ってよい。
【0047】
このR部の形状、寸法については、何十年も前から変わることなく受け継がれているが、印刷職場や製版職場の床面の凹凸は改善され、又床面には樹脂コートやステンレス板貼りまた、製版職場やグラビア印刷版の保管場所に置いてはゴムシートを床面に敷くなどの改善が図られ版面を損傷することに対して改善がされている。
【0048】
従って、本発明において、グラビア印刷版を立てて置く場合の床面よりから版面部までの長さ(交点部から版面部までの長さ)は2mm以上であればよく、従来のR部に使用されている半径7mmから12mmに限定されるものではない。
【0049】
従って、本発明のエッジの形状は、図11に示すものであってもよい。図3から図10は段差部の一部に直線部が設けられていたが、図11では、段差部から直線の部分をなくし交点部から版面部までの長さを短くしている点に特徴がある。これにより、段差部及び曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積は、更に小さなものとすることができる。このような形状にすることで、削除されたグラビア印刷版のエッジ部分に溜まる印刷インキが少なくなり版エッジからのインキ飛散を防止できるものである。
【0050】
図11は、図5の版面部(1)から段差部(9)になる最初に位置に小さな円弧の平滑面を版側面側に移動し、版側面部(2)に連なる曲面部(13)と繋げている。繋げた位置が段差部(9)の端部(12)となるのであるが、曲面同志を滑らかにして端部(12)が解らない場合は、明確に端部(12)を示すことは難しく、ドクター刃の刃先(22)が段差部(9)になる最初に位置に小さな円弧の平滑面から離れる位置と、版側面部(2)に連なる曲面部(13)の床面に接触しない位置の間に、段差部(9)の端部(12)が有るとすればよい。図11には、比較のために図5の段差部(9)を一点破線で示している。尚、図11図5の曲面部(13)は、同じ形状である。また、図11にも[破線で囲む部分にエッジを設ける]としてエッジを形成する範囲を破線で示しているが、版面部及び版側面部から交差部までの長さは共に短くなっており、交差部を含む破線で示す長方形の範囲が本発明の段差部と曲面部からなるエッジを形成する範囲である。
【0051】
図11を例にして本発明の特徴について説明をすれば、交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さの半径をもって、版面部と版側面部とが交差する部位をR状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し、段差部及び曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいエッジであれば本発明に該当するグラビア印刷版である。
【0052】
本発明のグラビア印刷方法は、グラビア印刷版の版面部と前記グラビア印刷版両サイドの版側面部とが交差する交差部の前記版面部側に、前記版面部より一段低い段差部が設けられ、前記版面部から前記段差部に至る角部は円弧に形成され、且つグラビア印刷でドクター刃が接触する前記角部及び該角部に連なる段差部の一部は前記版面部と同等に平滑に仕上げられ、前記段差部の段差面から前記版側面部に向けて曲面部が設けられ、前記段差部の段差面が前記曲面部と滑らかに連なる、又は、角度を持って交わるように形成されており、前記交差部から前記版面部までの長さに対し前記交差部から前記版側面部までの長さが小さい、及び又は、前記版面部と前記版側面部とが交差する部位を交差部から版面部までの長さと交差部から版側面部までの長さの、何れか長い方の長さを半径としてR部を設けた形状に角を取り削除されたエッジの断面積に対し前記段差部及び前記曲面部よりなる形状に角を取り削除されたエッジの断面積が小さいグラビア印刷版を使用することを特徴とする。
【0053】
グラビア印刷版の両端部には、R部と呼ばれ半径7mmから12mmの4分の1円周の角取りが施されているが、目的は、1)、版面部を床面より高くすることで版面への傷を防止する。2)、版側面に曲面部を設け移動や運搬時にグラビア印刷版を10度程度傾けて回転して移動、運搬を容易にする。の2点が考えられる。
【0054】
本発明は、前段落の特徴を残し、印刷品質向上、印刷機の汚れ防止、グラビア印刷版の転倒防止を図ったグラビア印刷方法である。
【0055】
本発明のグラビア印刷版を使用したグラビア印刷方法により、ドクター刃の刃先と段差部の間を通過するインキ量を少なくすることにより、グラビア印刷版の両端部分からのインキ飛散を少なくすることで、品質不良であるインキ飛びによる意匠の欠点、及びグラビア印刷版を保持するシャフト軸やグラビア印刷機のフレームの汚れを防止することができ、印刷品質の向上、及び清掃負荷の低減が図れるものである。
【0056】
また、グラビア印刷版は、版倉庫において立てた状態で50本程度ごとに縛って保管、または50本程度の仕切られた区画で保管するが転倒の可能性があること、印刷職場においてもグラビア印刷版は立てた状態で準備されるが転倒の可能性がある。グラビア印刷版の転倒を少しでも少なくするために、版側面部の面積を大きくして床置き時の安定性を高めたものである。
【発明の効果】
【0057】
グラビア印刷版の両端部分の版面側に段差部を設け、該段差部と版面部から延び、且つ離れたドクター刃の刃先と段差部エッジの形状を近似の形状にして、ドクター刃の刃先と段差部の間を通過するインキ量を少なくすることにより、グラビア印刷版の両端部分からのインキ飛散を少なくすることで、品質不良であるインキ飛びによる意匠の欠点、及びグラビア印刷版を保持するシャフト軸やグラビア印刷機のフレームの汚れを防止することができ、印刷品質の向上、及びの清掃負荷の低減が図れた。また、グラビア印刷版の側面に曲面部を設けることで、グラビア印刷版を立てた状態で10度程度傾け移動運搬をするが、曲面部を版側面の外に設けることにより版側面部を大きくすることにより、版側面部の接地面積を大きくすることで、グラビア印刷版の転倒防止の改善を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】グラビア印刷版にドクター刃を圧接したエッジの斜視概念図
図2】ドクター刃が版エッジのR部で摩耗、カケ等で損傷した拡大概念図
図3】本発明のエッジの形状の1例を示した断面概念図
図4図3にドクター刃の刃先を添わせた状態を示した断面概念図
図5図3にエッジの形状の断面積を示した断面概念図
図6】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図7】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図8】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図9】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図10】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図11】本発明のエッジの形状を示した別な断面概念図
図12】前後の垂れカバーの設置状態を示す実施例1の版側面の斜視概念図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0059】
本発明の異なるエッジの形状のグラビア印刷版として、図5図6図9図10を作成した。また、比較のため従来使われているR部をエッジの形状とした版も2版作成(R部を版面と同様に平滑にした版AとR部が平滑でない版Bの2版)し、6版を用意した。何れも版の幅は1100mm、版円周は620mm、エッジの交点部から版面部までの長さを10mmとした。
【0060】
また、グラビア印刷版のエッジでドクターが接触する、段差部及びR部は版面部と同様に平滑に仕上げたグラビア印刷版とした。平滑に仕上げるための作業負荷についても5段階評価とした。
【0061】
上記の6版を使用し印刷テストの条件として、ドクター加圧やドクター角度等のドクター条件は同じ条件とし、印刷条件は250m/分の速度で、インキはウレタン系の白インキを用い粘度をザンカップ#4で16秒に調整して使用した。尚、印刷には、OPPフィルム20ミクロンで1020mm幅(フィルム側柄のインキ飛びを調べるためニップ圧胴と同じ幅とした。)を用い各版10000mの印刷を行ない、更にフィルムを使わず20000m分の空回しを行い、ドクター刃のグラビア印刷版エッジでの損傷、フィルム部へのインキ飛びの回数、版回転のための固定コーンの汚れ、回転シャフト軸カバーの汚れ、グラビア印刷機フレームの汚れについて評価した。各汚れについては、5段階評価とした。印刷時にインキ飛散防止の前後の垂れカバーを使用し、前垂れカバーはテープでドクター厚刃当て板に固定した。後垂れカバーはテープでドクターホルダーの裏面に固定した。前後の垂れカバーは同じ状態に設置するよう注意した。図12に前後の垂れカバーの設置状態を示す。
【0062】
上記のテスト結果を、表1にまとめる。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明の段差部及び曲面部からなるエッジに設けたグラビア印刷版は、従来使用されているR部を設けたグラビア印刷版と比較して、インキ飛びが極端に少なくなっており、品質不良の削減、清掃等の時間削減に効果が有ることが判った。
【0065】
更に、一般的に使用されるNO.6のテスト版に比べ、NO.5においてもR部を版面と同じに平滑にすることで品質不良の削減、清掃等の時間削減効果はあったが、本発明のNO.1からNO.4のエッジのけいじょうにすることで、NO.5以上に良好な結果が得られた点からも、ドクター刃の刃先と版エッジ間のインキ通過の面積を少なくする効果の確認が出来た。
【符号の説明】
【0066】
1 版面部
2 版側面部
3 R部(従来版のエッジ)
4 チャッキング穴
5 グラビア印刷版
6 ドクター刃
7 揺動幅
8 摩耗部位
9 段差部
10 交差部
11 版面部と段差部が交わる角部
12 段差部の端部(段差部と曲面部が交わる角)
13 曲面部
14 曲面部と版側面部が交わる角部
15 R部と版側面部が交わる角部
16 本発明のエッジの1例
17 床面との接点(10度傾斜時)
18 本発明のエッジの断面積
19 R部エッジと本発明エッジとの交点
20 R部エッジと本発明エッジが角部(11)と交点(18)で囲む面積
21 R部エッジと本発明エッジが(14)と(15)と(18)で囲む面積
22 ドクター刃の刃先(2点破線)
23 段差の深さ
24 段差部(9)とドクター刃の刃先が接触する範囲
【要約】      (修正有)
【課題】グラビア印刷において、グラビア印刷版両端のR部で揺動するドクター刃の摩耗や損傷を少なくするグラビア印刷版並びに該グラビア印刷方法で、グラビア印刷物の品質向上、ドクター刃の耐久性を高め、グラビア印刷の生産性向上を図る。
【解決手段】グラビア印刷版両端のR部3で揺動するドクター刃の摩耗や損傷及びインキ飛散を少なくするために、版エッジの形状を段差部9と曲面部13で形成しドクター刃の刃先22と版エッジ間のインキ通過の面積を少なくして、課題の解決を図った。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12