特許第6671591号(P6671591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671591
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ショートアーク型放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/36 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   H01J61/36 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-148511(P2015-148511)
(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公開番号】特開2017-27909(P2017-27909A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】細木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小平 宏
(72)【発明者】
【氏名】本多 友彦
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0100196(US,A1)
【文献】 特開2015−076306(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0049731(US,A1)
【文献】 特開2001−057177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01J 61/00
H01J 1/00
H01J 5/02
F21K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極を備えた発光管と、
上記発光管の両端部に連設された封止管と、
上記一対の電極にそれぞれ接続された一対の電極芯棒と、
を有し、
上記封止管と電極芯棒とを段継ガラスを介して封着するショートアーク型放電ランプにおいて、
上記ショートアーク型放電ランプのランプ軸方向にて上記段継ガラス部分より外側となる位置であって、上記ランプ径方向で対向する上記封止管と上記電極芯棒との間となる位置に上記ランプ径方向に弾性を有する電極芯棒支持部材を介在させたこと、
上記電極芯棒支持部材は、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向内側の空間と、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向外側の空間とを連通させる空隙を備えていること、
を特徴とするショートアーク型放電ランプ。
【請求項2】
請求項1記載のショートアーク型放電ランプにおいて、上記電極芯棒支持部材は通気性を有するショートアーク型放電ランプ。
【請求項3】
請求項1記載のショートアーク型放電ランプにおいて、上記電極芯棒支持部材は、上記電極芯棒に巻回した金属箔からなり、隣接する該金属箔の間に上記空隙が形成されているショートアーク型放電ランプ。
【請求項4】
請求項3記載のショートアーク型放電ランプにおいて、上記金属箔は、一部が上記電極芯棒に溶着されているショートアーク放電ランプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のショートアーク型放電ランプにおいて、
上記封止管は、上記発光管に連設する外管状部と、該外管状部に連設し、外径がランプ軸方向外側に向けて縮径する縮径部と、該縮径部に連設し、該縮径部の電極芯棒側にランプ径方向に沿った端壁部と、該端壁部の発光管側に連設する内管状部と、該内管状部に連設して上記電極芯棒と封着する上記段継ガラスとを有し、
上記端壁部の電極芯棒対向内周面の一部には、上記端壁部のランプ軸方向外側端面の内径より大きい内径を有したランプ軸方向内側に拡径する拡径凹部を有し、
上記電極芯棒支持部材は、上記拡径凹部を有する上記電極芯棒対向内周面と上記電極芯棒との間に介在しているショートアーク型放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置や投影装置等の光源に好適なショートアーク型放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなショートアーク型放電ランプは、発光管内には一対の対向する電極が配置されるともに、放電ガスが封入される。放電ガスはキセノン等の希ガスを主成分としたガスであり、発光管内部の放電ガス圧力を非常に高くすることで、輝度を高くしている。発光管内部に水銀を封入していないため、ランプ点灯時に電極に供給される電流も大電流となる。よって、一対の電極を支持する一対の電極芯棒を、発光管の両端に連設した封止管から外部に突出させ、封止管内部で封止管と電極芯棒との段継ガラスを介して封着する段継ガラス封止構造が採用される。一般的に石英ガラスが採用される封止管の熱膨張率は、タングステン等の金属材料からなる電極芯棒の熱膨張率より小さいため、電極芯棒と封止管が直接接触していると、ランプ点灯時(通電時)の電極芯棒の熱膨張により封止管が破損するおそれがある。しかし、段継ガラス封止構造を採用することで、段継ガラスが封止管と電極芯棒の熱膨張差を緩衝し、適切に封止管と電極芯棒とを封着することができる。
【0003】
段継ガラスは耐熱性が低く、高温状態になると容易に変形してしまうという性質がある。このため、封止管は、段継ガラス部分を保護するために、段継ガラスよりランプ軸方向外側において電極芯棒の周囲を囲む内管状部と、該内管状部と同心の外管状部を有する二重管構造を有しており、電極芯棒と内管状部との間には管状空隙が存在している。従来、電極芯棒に導通させるランプ口金に、この管状空隙に積極的に冷却空気を導入する通風口を設け、段継ガラス部分を冷却する試みがされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-059454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の電極芯棒または電極芯棒に電気的に接続するランプ口金には、電極間にランプ電灯電力を供給するための給電線が接続され、給電線は点灯装置の給電端子と接続される。従って、例えばランプの取り付けや運搬、ランプ製造工程において、給電線には、直接または口金を介して応力が加わる。加わった(特にランプ径方向の)応力は、電極芯棒を介して電極を封着保持する段継ガラスに集中し、段継ガラスが破損する不具合が生じる場合があった。特に、高輝度化の要求からショートアーク型放電ランプは大型化しており、電極芯棒や封止管の大型化、電極芯棒と封止管との間の管状空間の大型化に伴って、段継ガラスに加わる応力が大きくなる傾向があり、段継ガラスの破損のおそれが高まっている。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づき、電極芯棒を介して加わる応力により段継ガラスが破損するおそれが少ないショートアーク型放電ランプを得ることを目的とする。
また本発明は、封止管(段継ガラス)と電極芯棒の熱膨張差に関わらず、ランプ端部で電極芯棒を好適に保持する構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に一対の電極を備えた発光管と、上記発光管の両端部に連設された封止管と、上記一対の電極にそれぞれ接続された一対の電極芯棒と、を有し、上記封止管と電極芯棒とを段継ガラスを介して封着するショートアーク型放電ランプにおいて、上記ショートアーク型放電ランプのランプ軸方向にて上記段継ガラス部分より外側となる位置であって、上記ランプ径方向で対向する上記封止管と上記電極芯棒との間となる位置に上記ランプ径方向に弾性を有する電極芯棒支持部材を介在させたこと、上記電極芯棒支持部材は、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向内側の空間と、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向外側の空間とを連通させる空隙を備えていること、を特徴としている。
【0008】
上記電極芯棒支持部材は、一態様では、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向内側の空間と、上記電極芯棒支持部材よりランプ軸方向外側の空間とを連通させる空隙を備えることができる。
【0009】
上記電極芯棒支持部材は、他の態様では、通気性を有することができる。
【0010】
上記電極芯棒支持部材は、具体的には例えば、上記電極芯棒に巻回した金属箔から構成し、隣接する該金属箔の間に上記空隙を形成することができる。上記金属箔は、一部を上記電極芯棒に溶着することができる。
【0011】
上記封止管は、上記発光管に連設する外管状部と、該外管状部に連設し、外径がランプ軸方向外側に向けて縮径する縮径部と、該縮径部に連設し、該縮径部の電極芯棒側にランプ径方向に沿った端壁部と、該端壁部の発光管側に連設する内管状部と、該内管状部に連設して上記電極芯棒と封着する上記段継ガラスとを有し、上記端壁部の電極芯棒対向内周面の一部には、上記端壁部のランプ軸方向外側端面の内径より大きい内径を有したランプ軸方向内側に拡径する拡径凹部を有し、上記電極芯棒支持部材は、上記拡径凹部を有する上記電極芯棒対向内周面と上記電極芯棒との間に介在させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のショートアーク型放電ランプは、電極芯棒と封止管との間の管状空間内に電極芯棒支持部材を介在させたので、電極芯棒が段継ガラス部分を中心に揺動する可能性(余地)を少なくし、段継ガラスの破損を未然に防止することができる。また、電極芯棒支持部材に電極芯棒支持部材よりランプ軸方向内側の空間とランプ軸方向外側の空間とを連通させる空隙を設け、あるいは通気性を与えることにより、段継ガラス部分の冷却性を損なうこともない。さらに、電極支持部材がランプ径方向に弾性を有することにより、電極芯棒の熱膨張が封止管に伝わることを抑制でき、封止管が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるショートアーク型放電ランプ及び反射鏡を含む光源装置の一実施形態を示す縦断図である。
図2】封止管の内管状部と電極芯棒部分の拡大断面図である。
図3図3(A)は電極芯棒の端部に結合する弾性電極芯棒支持部材の拡大平面図、図3(B)は図2のIII−III線に沿う拡大断面図、図3(C)は弾性電極芯棒支持部材の拡大側面図である。
図4】電極芯棒の端部に結合する弾性電極芯棒支持部材を金属箔の巻回構造により形成する態様を示す斜視図である。
図5】本発明の別の実施形態を示す、図5(A)は図3(A)に対応する拡大平面図、図5(B)は図3(B)に対応する拡大断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態を示す、図3(B)に対応する拡大断面図である。
図7】本発明を本出願人が特願2014-163543号で提案したショートアーク型放電ランプに適用した実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
図8】本発明を本出願人が特願2014-163543号で提案した他の態様のショートアーク型放電ランプに適用した実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を具体的に説明する。図1ないし図4は、本発明によるショートアーク型放電ランプ(以下「ランプ」)100の第1の実施形態を示している。
【0015】
図1は、ランプ100と凹面反射鏡1を有する光源装置の全体を示している。ランプ100は、発光管3と、発光管3の両端に連接された封止管4とを備える。発光管3と封止管4はそれぞれ石英ガラスから構成され、発光管3には放電ガスとしてキセノンガスが大気圧以上で封入される。発光管3の内部には、一対の電極5が配置され、この一対の電極5には一端を封止管4の端部から外部に突出させた電極芯棒6がそれぞれ接続される。凹面反射鏡1は通常、楕円面鏡または放物面鏡であって、一対の電極5は、凹面反射鏡1の焦点位置を中心として対向配置される。図示例では、封止管4の端部に電極芯棒6に導通する口金9が設けられており、この口金9には、内外を連通する空冷用の通気孔9aが複数箇所に設けられる。口金9は省略することがある。
【0016】
発光管3と封止管4との間には、電極芯棒6に向けて縮径する縮径部34が形成され、封止管4は、縮径部34に連なる外管状部401と、外管状部401の外端部に連なって徐々に縮径する縮径部402と、縮径部402に連なり軸線に直交する方向の端壁部403と、端壁部403より発光管側に連なる、内管状部404とを備える。
【0017】
封止管4の内管状部404と電極芯棒6との間には、電極芯棒6を封着する段継ガラス7が介在する。図2の例では、電極芯棒6との封着部7aは内管状部404に接続される。このような段継ガラスを用いた封止構造は、段継ガラス封止構造として知られている。
【0018】
封止管4の端壁部403もしくは内管状部404と電極芯棒6との間には、電極芯棒支持部材10が配置され、封止管端部および内管状部404と電極芯棒6とは電極芯棒支持部材10を介して少なくとも一部が接する。電極芯棒支持部材10よりランプ軸方向内側には管状(環状)空間8が存在する。電極芯棒支持部材10は、径方向に弾性を有し、好ましくは、管状空間8と電極芯棒支持部材10よりランプ軸方向外側の空間を連通させる通気性を備えた金属部材である。
【0019】
電極芯棒支持部材10は、具体的には、金属箔(好ましくはモリブデン箔)を重なり部分間に空隙(隙間)が生じるように緩く巻回したもので、電極芯棒6の長さ(軸線)方向に離間した複数(図3(A)、(C)の例では2カ所)の固定部分11で部分的に電極芯棒6に固定される。図4は、電極芯棒6に対する金属箔10aの巻回の様子を模式的に示したもので、帯状の金属箔10aの一端部を電極芯棒6の外周面に固定し、電極芯棒6の外周に、2周以上巻回する。金属箔10aは、積層されている部分の間に空隙10bが生じるように緩く巻回するものとする。図3(B)では、模式的に空隙10bを同心状に等間隔に描いているが、実際には金属箔10aの形状(変形)や巻回し状態により、少なくとも一部に不均一かつ不等間隔で空隙が形成される。このような空隙10bは、同時に、電極芯棒6の外周に巻回された電極芯棒支持部材10の全体として、径方向に弾性を有するとともに、軸線方向に通気性を備えることになる。
【0020】
また、金属箔10aとして、エンボス(凸部)10cを有する(図4参照)エンボス金属箔を用いれば、内外周の金属箔10aと金属箔10aの間に空隙10bが確実に確保され、エンボス10cとエンボス10cとの間に確実に空隙10bを構成することができる。
【0021】
電極芯棒支持部材10は、部分的にスポット溶接して固定部分11で電極芯棒6に固定される。固定部分11では、積層した金属箔10aが密着することで、金属箔10a間に空隙10bは存在せず、径方向に凹部11aが形成される。固定部分11は、積層した金属箔10aが密着することからランプ径方向の弾性は空隙10bを有する部分より少ないが、凹部11aを有することから電極芯棒支持部材10の全体としては径方向に弾性を妨げるものではない。
【0022】
以上のランプ100は、電極芯棒6の外周面と封止管4の端壁部403もしくは内管状部404の内周面との間に、段継ガラス7より外側において、電極芯棒支持部材10が介在するため、電極芯棒6の移動(段継ガラス7の接触(封着部7a)部分を中心とする揺動運動)を制限することができる。従って、電極芯棒6が封止管4(内管状部404)内で移動することに起因する封止管4(内管状部404)の破損を防ぐことができる。また、電極芯棒支持部材10がランプ径方向に弾性を有することから、点灯時の電極芯棒6と封止管4との熱膨張差が緩衝され、電極芯棒6の熱膨張が電極芯棒支持部材10を介して封止管4に伝わることで、封止管4が破損することを防止できる。(固定部分11は、積層した金属箔10aが密着することからランプ径方向の弾性は空隙10bを有する部分より少ないが、封止管との間に凹部11aを有することから電極芯棒6の熱膨張が封止管4に伝わることが防止される。)
さらに、金属箔10aと金属箔10aとの間に空隙10bが存在することから、空隙10bを通して管状空間8内に外気を導入し、管状空間8内から排出することができ、段継ガラス7の冷却性を妨げることがない。
【0023】
図5(A)と(B)は、電極芯棒支持部材10の電極芯棒6への固定部分11Lを電極芯棒6の軸線と平行な方向に連続させた(連続して溶接した)実施形態である。電極芯棒支持部材10の固定部分11Lの凹部と封止管4の内周面との空隙は、金属箔10a間の空隙10bとともに、管状空間8と外気とを連通する軸線方向の通気路8aを形成している。この実施形態は、電極芯棒支持部材10が空隙10bと通気路8aを有するので、段継ガラス7の冷却作用を向上させることができる。空冷効果向上の観点からは、固定部分11Lを、円周方向位置を異ならせて複数箇所設けてもよい。
【0024】
以上の金属箔10aの巻回作業及び巻回した金属箔10aの電極芯棒6への固定作業は、電極芯棒6と封止管4(段継ガラス7)との封着前に行い、その後、所定の仕様になるように電極芯棒6と封止管4(段継ガラス7)とを封着する。このような封着作業は周知である。この封着作業が終了すると、電極芯棒6の外周と、封止管4の端壁部403もしくは内管状部404の内周面との間に、電極芯棒支持部材10が位置することとなり、金属箔10aの少なくとも一部と、端壁部403もしくは内管状部404の内周面とが接触する(金属箔10aの巻回数は、金属箔10aの少なくとも一部と、封止管4の端壁部403もしくは内管状部404の内周面とが接触するように定める)。
【0025】
図6は、電極芯棒支持部材10が通気性を有する金属製のスポンジ状部材または金属製タワシ状部材からなる実施形態を示す模式断面図である。電極芯棒支持部材10の多数の孔(空隙、隙間)10eは、軸線方向に繋がっていて、管状空間8と電極芯棒支持部材10よりランプ軸方向外側の空間を連通する通気路を形成している。この実施形態は、電極芯棒支持部材10の弾性により破損防止効果が得られ電極芯棒支持部材10の多数の孔10eにより形成された通気路により冷却効果が得られる。
【0026】
次に、本発明を特願2014-163543号(先行出願)で本出願人が提案したショートアーク型放電ランプに適用した実施形態を図7図8について説明する。この実施形態は、封止管及び発光管を構成するガラス内を伝播する照明光が電極芯棒6及び段継ガラス7を加熱するのを防止する(抑制する)ために、封止管4の内管状部404に拡径凹部407を形成したショートアーク型放電ランプに本発明を適用したものである。図1及び図2に示した実施形態と同一の機能部材には同一の符号を付している。
【0027】
すなわち、ショートアーク型放電ランプでは、アークより放射された光の一部は、光ファイバー効果によって発光管3及び封止管4の内部を伝播する。併せて反射鏡1の焦点から外れた位置のアークから放射された光の一部は、反射鏡1によって発光管3や封止管4に照射され、光ファイバー効果によって発光管3及び封止管4の内部を伝播する。また、段継ガラス7は、点灯によって電極5が加熱され、その熱が電極5から電極芯棒6を介して伝わることによって加熱される。電極芯棒6の赤外線が照射された部分の温度が上昇すると、電極5からだけでなく、赤外線が照射された電極芯棒6部分からも熱が伝わることで段継ガラス7はさらに加熱され、より高温になる。
【0028】
発光管3内には放電ガスとしてキセノンが大気圧以上に封入されており、放電ガスと接している段継ガラス7は、ランプ点灯中及び消灯中に関わらず、常に発光管内側から外側に向けて圧力を受けている。そのため、赤外線が照射された電極芯棒6からも熱が伝わることで段継ガラス7がさらに加熱され、温度が歪点さらには軟化点を上回ると、段継ガラス7は発光管外側に膨れるように変形し、段継ガラス7に保持される電極芯棒6、及び電極芯棒6に支持される電極5の位置が移動する。この結果、電極間距離が増えることによるランプ100の点灯電力特性の変化や、一対の電極5間に発生するアークが反射鏡1の焦点からずれることによる照度低下等の不具合が生じる。さらに、アークが反射鏡1の焦点からずれると、反射鏡1によって封止管4に照射される光の量が増加し、さらに上記不具合が深刻化する場合がある。
【0029】
先行出願は、このような発光管3と封止管4による光ファイバ効果による電極芯棒6及び段継ガラス7の加熱を防止するために、封止管4の端壁部403のランプ軸方向外側端をランプ径方向に沿った平坦面(第1の光放射面)405として用い、端壁部403の電極芯棒6に対向する電極芯棒対向内周面406の一部に、拡径(環状)凹部407を設けている。拡径凹部407は、電極芯棒6の径方向に徐々に幅を狭めていて、端壁部403のランプ軸方向外側端面の内径R1より大きい内径R2を有している。この拡径凹部407の最大内径を有する部分は、端壁部403の厚さのランプ軸方向中心M1より発光管3側に位置している。ランプ軸方向中心M1は、第1の光放射面405を有する端壁部403のもっとも肉厚が薄い部分のランプ軸方向における肉厚中間である。
【0030】
このように、拡径凹部407において最も拡径させる、つまり最も内径が大きい部分を端壁部403のランプ軸方向中心M1より発光管側に設けることにより、端壁部403をランプ径方向内側に向かって伝播する光Lの大部分を拡径凹部407によりランプ軸方向外側に内面反射させることができ、段継ガラス7の温度上昇を抑制することができる。このように、電極芯棒6側に光Lを放射させずに、ランプ軸方向外側に光を内面反射させるには、拡径凹部407を有する電極芯棒対向内周面406のランプ軸方向断面形状が略V字状になることが望ましい。
【0031】
なお、外管状部401内を伝播する光Lが端壁部403の発光管側端面410から内管状部404や段継ガラス7に照射されることを抑制するために、発光管側端面410は曲面であることが望ましい。ただし、端壁部403の肉厚差を抑制するために、発光管側端面410にもランプ径方向に沿った平坦面を設ける必要がある場合には、その平坦面の面積は少なくとも第1の光放射面405より小さいことが望ましい。
【0032】
この図7の実施形態では、電極芯棒6と封止管4の電極芯棒対向内周面406との間に、電極芯棒支持部材10が介在していて、金属箔10aの少なくとも一部と、電極芯棒対向内周面406とが接触していて、電極芯棒6の揺動が抑制されている。電極芯棒6と拡径凹部407との間には空間が存在する。図7の実施形態において、電極芯棒支持部材10をこの場所に設けることにより、封止管4のガラス内部を伝播する光が電極芯棒支持部材10に照射されることを防ぎ、電極芯棒支持部材10及び電極芯棒6の昇温を防止(抑制)することができるという利点が得られる。
【0033】
図8は、図7の実施形態において、端壁部403に、内管状部404とは反対側(外側)に突出する管状の光誘導部408を設け、光誘導部408のランプ軸方向外側端面には平坦面409(第2の光放射面)を設けた先行出願の実施形態に本発明を適用したものである。端壁部403をランプ径方向内側に向かって伝播する光Lは光反射面である拡径凹部407によってランプ軸方向外側に向かって内面反射され、光誘導部408内を伝播する。光誘導部408内を伝播した光Lは第2の光放射面409より外部に放射される。
【0034】
光誘導部408内に光Lを伝播させ、端壁部403から離れた第2の光放射面409から放射させることによって、外部に放射された光が電極芯棒6を照射することを防止し、もしくは電極芯棒6のよりランプ軸方向外側に照射させることができる。これにより、封止管4より放射された光に起因した段継ガラス7の温度上昇を抑制することができる。
【0035】
そして、この実施形態では、電極芯棒6に固定された電極芯棒支持部材10は電極芯棒対向内周面406及び管状光誘導部408と対向(接触)していて、電極芯棒6が段継ガラス7部分を中心に揺動移動するのを防止する。図8の実施形態において、電極芯棒支持部材10をこの場所に設けることにより、図7の実施形態と同様に、封止管4のガラス内部を伝播する光が電極芯棒支持部材10に照射されることを防ぎ、電極芯棒支持部材10及び電極芯棒6の昇温を防止(抑制)することができるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1 反射鏡
3 発光管
4 封止管
401 外管状部
402 縮径部
403 端壁部
404 内管状部
405 平坦面(第1の光放射面)
406 電極芯棒対向内周面
407 拡径凹部
408 管状の光誘導部
409 平坦面(第2の光放射面)
5 電極
6 電極芯棒
7 段継ガラス
7a 接触部
8 管状空間
8a 通気路
9 口金
10 電極芯棒支持部材
10a 金属箔
10b 空隙
10c エンボス
10e 孔
11 11L 固定部分
11a 凹部
34 縮径部
100 ランプ
M1 端壁部のランプ軸方向中心
R1 端壁部の内径
R2 拡径凹部の最大内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8