特許第6671614号(P6671614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671614
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】酵素処理用コンパクトリアクタ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20200316BHJP
   B01F 13/02 20060101ALI20200316BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C12M1/02 B
   B01F13/02 A
   C12M1/02 A
   C12M1/04
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538569(P2017-538569)
(86)(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公表番号】特表2017-537651(P2017-537651A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】NO2015050183
(87)【国際公開番号】WO2016056922
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】20141197
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】NO
(31)【優先権主張番号】20150943
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】517123922
【氏名又は名称】エヌユーエーエス テクノロジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アグレン、ラーズ
【審査官】 清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/126891(WO,A1)
【文献】 米国特許第05733758(US,A)
【文献】 国際公開第95/006111(WO,A1)
【文献】 特開昭62−278988(JP,A)
【文献】 特表2006−507838(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/087133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/02
B01F 13/02
C12M 1/04
C12M 1/02
B01F 13/02
C12M 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素加水分解に好適な範囲内の温度までリアクタに供給される原料を加熱するように適合された第1の熱交換器
開閉可能なバルブによって分離された、直列に接続された複数のリアクタチャンバー、
下流側のリアクタチャンバーから排出された反応混合物を酵素加水分解に好適な温度範囲よりも高い温度まで加熱するように適合された第2の熱交換器
の順に備えた、材料の酵素加水分解用のリアクタであって、
リアクタが異なる垂直レベルのリアクタチャンバーにより設計され、第1のリアクタチャンバーが最も高いリアクタチャンバーであり、最後のリアクタチャンバーが最も低いリアクタチャンバーであり、一方で少なくとも1つのリアクタチャンバーが貫流する不活性ガスによって撹拌されるように適合されたことを特徴とする、
リアクタ。
【請求項2】
各リアクタチャンバーは、同一な大きさ及び形状を有し、垂直軸に対して対称に位置する、請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記リアクタチャンバーは、管状であって傾斜しており、アッセンブリが垂直軸に対して対称であるように接続された、請求項1に記載のリアクタ。
【請求項4】
全ての前記リアクタチャンバーは、前記リアクタチャンバーの下流末端付近で供給される貫流する不活性ガスによって撹拌され、前記リアクタチャンバーの上流末端付近で排出されるように適合された、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項5】
前記リアクタチャンバーは、湾曲し、ヘリックスを形成するように集合される、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項6】
前記第1の熱交換器及び前記第2の熱交換器の少なくとも1つが前記リアクタの垂直軸に沿って配置される、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項7】
前記第1の熱交換器及び前記第2の熱交換器が前記リアクタの垂直軸に沿って上下に重なって配置される、請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項8】
前記第1の熱交換器及び前記第2の熱交換器は、前記リアクタチャンバーが形成するヘリックス内において同心円状に、且つ上下に重なって配置される、請求項6又は請求項7に記載のリアクタ。
【請求項9】
少なくとも1つの殺菌チャンバーが前記第2の熱交換器の下流に置かれる、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの殺菌チャンバーは、リアクタチャンバーと実質的に同じ形状の管状チャンバーとして配置される、請求項9に記載のリアクタ。
【請求項11】
前記リアクタが、前記リアクタチャンバー及び両方の熱交換器を取り囲む外部ハウジングを更に備える、請求項3又は請求項5〜請求項8のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項12】
前記不活性ガスは、再循環又は再利用のために適合されている、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項13】
前記リアクタチャンバーは、少なくとも1/10の垂直/水平の傾斜を有する、請求項3、請求項5〜請求項8、又は請求項11のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項14】
リアクタチャンバーは、単純な定形を有する容器の形状を有し、且つ垂直に上下に重なって配置され、第1のリアクタチャンバーが最上部にあり、最後のリアクタチャンバーが最下部にある、請求項1、請求項2、請求項4、請求項9、又は請求項12のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項15】
リアクタチャンバーは、前記リアクタチャンバーにおいて材料に対する排出点において最下点を有する、請求項14に記載に記載のリアクタ。
【請求項16】
殺菌チャンバーは、定形を有する容器の形状を有し、且つ垂直に上下に重なって配置され、第1の殺菌チャンバーが最上部にあり、最後の殺菌チャンバーが最下部にある、請求項14又は請求項15に記載のリアクタ。
【請求項17】
第1の熱交換器が前記リアクタチャンバーの上流に接続され、第2の熱交換器が最後のリアクタチャンバーの下流であって第1の殺菌チャンバーの上流に接続される、請求項14又は請求項15に記載のリアクタ。
【請求項18】
前記リアクタが、互いに無関係に配置される4つの群、即ち第1の群を形成する第1の熱交換器、第2の群を形成するリアクタチャンバー、第3の群を形成する第2の熱交換器、同時に、第4の群を形成する殺菌チャンバーに分類される、請求項14〜請求項16のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項19】
リアクタチャンバーは、各リアクタチャンバーに過剰な圧力の不活性ガスを供給し、且つ下流の開閉可能なバルブを開くことにより、定期的に排出されるように配置される、請求項1〜請求項18のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項20】
第1の熱交換器は50℃の温度まで材料混合物を加熱するように配置され、第2の熱交換器が少なくとも90℃の温度まで前記材料混合物を加熱するように配置される、請求項1〜請求項19のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項21】
前記リアクタは、加水分解用の特定量の原料と共に、特定の調整可能な量の酵素を分配するように適合されたフィードデバイスを備えるか、又はそれに接続されるように適合されている、請求項1〜請求項20のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項22】
前記リアクタは、不活性ガスとして窒素によって撹拌されるように適合されている、請求項1〜請求項21のいずれか一項に記載のリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によって開示される種類のリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、加水分解(分解)のための有機材料の酵素処理の間、材料における温度及び酵素への材料の暴露の期間(接触時間)の制御は、望ましい結果に欠くことができない。長すぎる又は短すぎる接触時間は、いずれも、そのプロセスの生成物に悪影響となり、材料の更なる加工に対して問題を生じ得る、及び/又は製造プロセスからの最終生成物の品質に悪影響となり得る。したがって、ここでは適切な接触時間が中心的課題である。
【0003】
加水分解又は酵素法の別の形態に工業用酵素を使用する場合、適切な酵素を原料に添加する。酵素が添加され、原料中に分散された後、その混合物が継続的に撹拌されて酵素と原料との良好な接触が保証されることが重要である。また、言及されるように、酵素は、特定の時間間隔で原料と接触することも重要である。したがって、この時間間隔に達すると、処理が更に進行しすぎないように、酵素的分解がすばやく終わることが重要である。これは、典型的には、原料の混合物及び酵素を、酵素が破壊(不活性化)される温度まで加熱することによって保証される。
【0004】
同様の挑戦は、所望の品質の最終生成物が得られる場合に、含まれる成分の均質なブレンド、また同様に、最適なものよりも著しく短くなり得るか、又は相当長くなり得るいずれかの制御された反応時間が重要である、幾つかの他の化学的処理加工に応用される。
【0005】
適切な接触時間を達成するための最も容易な方法は、「バッチ」原理に基づくリアクタを使用することである。バッチの実行により、規定の容積(タンク等)は、処理加工が停止される前、一定時間に亘り一定条件で保持される。酵素法について、言及されるように、追加の加熱を使用して酵素を不活性化する。工業生産では、大容積が処理加工され、これらの大容積は、バッチとして進行する場合に、急速に十分加熱することが難しい。代わりに、複数の小さいバッチ容積を使用するが、これは技術面で不釣り合いに高い費用をもたらす。
【0006】
また、そのプロセスが酵素処理を含むか否かにかかわらず、他にも連続プロセスと比較したバッチプロセスの不利益がある。かかる不利益の1つは、プロセスの開始及び停止をより頻繁に行なわなければならないことである。これは、手間がかかり、連続プロセスよりも自動化することが難しい。さらに、開始及び停止の間の操作条件は望ましいものよりも大きく変化する傾向がある。
【0007】
目標は、そのプロセスが所与の時間間隔で不活性化される、均質に混合された原料の連続的なスループットを有することである。原料の連続フローを可能とするため、大きな「完全混合」容器を通ることは、その後、個々の成分間の接触時間が非常に制御しにくくなるため、良い解決策ではない。
【0008】
原料の酵素処理に対するリアクタは、特許文献1より知られている。処理は、各チャンバー中の材料が攪拌機によって機械的に混合され、重力を利用することによって下の隣接するチャンバーへと輸送される、別々のリアクタチャンバーによって実質的に垂直に配列されたリアクタにおいて行われる。リアクタは、全ての処理加工される材料に対して一貫した保持時間、及び一貫した条件を保証する。
【0009】
特に海洋性原料の処理について、収穫後できるだけすぐに船上での処理加工が行われることが重要である。したがって、これは、小型の、船を傾け得る波による影響を受けにくいかかる特性を有する設備で行われ得ることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ノルウェー特許第322 996(国際公開第2006 126891号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
外部条件の変化にかかわらず、供給される全ての材料に対して一貫した反応条件をもたらすことができる原料の加水分解用システム及び/又はリアクタを提供することを本発明の目的とする。
【0012】
プロセスに含まれる成分間の接触時間が生成物の品質の重要なパラメーターである場合に、バッチプロセス及び連続プロセスの両方と関連する利点を得られるようにするリアクタを提供することを本発明の目的とする。
【0013】
工業規模で簡便且つ安価な手段によって上記目的を達成することを更なる目的とする。
【0014】
特に、船上の限られたスペースで海洋性原料の加水分解を行なうためのリアクタであって、時々刻々変化する風や波の条件下においても一定の反応条件を提供できるリアクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明
【0016】
上記目的は、請求項1によって規定されるリアクタによって達成される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、従属項から明らかとなる。
【0018】
上記リアクタにおいて処理される材料は、一部では「原料」と呼ばれ、また一部では「材料」と呼ばれる。
【0019】
本発明のリアクタにおいては、リアクタチャンバーは水平面に対して所定の傾きで設けられているものの、リアクタ全体としては垂直に起立し、外側から見て起立したシリンダの形態を有するため、本発明のリアクタはコンパクトに製造され得る。リアクタチャンバーは管状であり、好ましくは、同封される図面及びその考察によって示されるものを除き、円形断面を有する。各チャンバーの傾斜は種々のものが可能であるが、少なくとも1/10(垂直/水平)[5.7度]であることが好ましい。ある実施形態においては、傾斜は1/5[11.3度]であってもよい。
【0020】
必要な熱交換は、リアクタチャンバーのこの垂直コイルにより、又はその内部で同心円状に実現され得る。撹拌は、リアクタチャンバーを通して供給されるバブリングされた不活性ガスによって行われる。全てのリアクタチャンバーの間のバルブは、各リアクタチャンバーにおける均一な滞留時間を保証し、したがって、リアクタにおける均一な総滞留時間を保証する。当該のリアクタチャンバーにおいて上流のバルブが閉じ、下流のバルブが開いている間に、撹拌に使用される過剰な圧力の不活性ガスを供給することによって、1つのリアクターコンパートメントから次へと部分的に処理された材料の輸送を行うことができる。
【0021】
上記発明を、添付の図面を参照して、以下に更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明によるリアクタの第1の実施形態を総体的に示す。
図2図2は、本発明の実施形態による1つのリアクタチャンバーの概略図である。
図3図3は、図1の実施形態の特定の詳細の概略的な断面図である。
図4図4は、図1の実施形態の更なる詳細を示す概略図である。
図5図5は、本発明によるリアクタを利用するプロセスに対するフローシートの概略図である。
図6図6は、図1に示されるリアクタの概略及び簡略化された上面図である。
図7図7は、図1に示されるリアクタと異なった形を構成する本発明によるリアクタの概略及び簡略化された上面図である。
図8図8は、本発明によるリアクタの更なる実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、全体として本発明のリアクタの実施形態を示す。幾つかのリアクタチャンバーR1〜R6が、全体として垂直配向又は垂直軸を有するということができる、リアクタへと下方にらせん状に巻き上がる。任意のリアクタチャンバーをRiと名付けることができ、ここでiを指数とみなすことができる。各リアクタチャンバーRは、周方向にほぼ360℃を覆い、すなわち完全な円である。各リアクタチャンバーRiにバルブViが続き、ここでiは指数とみなし、次のチャンバーからRiを分離する。したがって、リアクタチャンバーR1にバルブV1が続く。互いからチャンバーを分離するバルブV1〜V5は、示される実施形態では重ね合わされる。これは便宜上のものであり、リアクタの必須の特徴ではない。リアクタチャンバーの下には、解説される実施例において、リアクタチャンバーと実質的に同じ形状及び大きさの3つの殺菌チャンバーP1〜P3がある。また、これらはバルブによって分離され、VP1及びVP2と番号が付される。リアクタチャンバー及び殺菌チャンバーの厳密な番号は種々のものであってもよい。
【0024】
また、図1は、原料に対する供給管路01、加工材料に対する排出管路02を示す。また、不活性ガスに対する圧力タンク13、各リアクタチャンバー及び殺菌チャンバーへの不活性ガスに対する幾つかのパイプ10、使用済み不活性ガスに対するマニフォルド11、及び使用済み不活性ガスの再利用に対するコンプレッサ12を介する容器13への戻り管路14を示す。不活性ガスは、一般的にRVIと示されるバルブを介してリアクタチャンバーから排出される(ここでiは指数とみなされる)。これら3つは、図1における番号、RV1〜RV3によって示される。
【0025】
さらに図1は、少なくとも1つの熱交換器への空気に対する供給管路03、及びHEX2と示される熱交換器からの空気に対する出口04を示す。実際には、典型的には後に説明されるように2つの熱交換器が使用される。
【0026】
また、図1はリアクタチャンバーR6から熱交換器HEX2への加工材料に対する管路17を示す。また、熱交換器HEX2の上部から殺菌チャンバーP1の入口への管路16を示す。また、図1は、熱交換されたフィードストックをリアクタチャンバーR1へと運ぶ管路18の一部を示す。
【0027】
図2は、単一のリアクタチャンバーの断面図を示し、ここでチャンバー3は無作為に選択された。図1に示される実施形態との相違は、簡略化のためこのリアクタチャンバーを直線状のチャンバーとして示す。また、直線状のチャンバーにより本発明のリアクタを実現することも可能である。リアクタチャンバーR3への材料入口は、図中右へとバルブV2を通るのに対し、出口は図中左へとバルブV3を通る。リアクタチャンバーの傾斜により、材料フローは重力によって補助される。図2では、リアクタチャンバーの傾斜は約1/10である。これは、しばしば実際には十分であるが、幾つかの場合では1/5のようにより大きくてもよい。不活性ガス、典型的には窒素は、リアクタチャンバーの下流末端付近の供給管路10を介して導入され、リアクタチャンバーの上流末端付近の排出スタブ21を通って排出される。処理の間、リアクタチャンバーにおいて制限される時間に亘って材料が留まるように、バルブV2及びV3はいずれも閉じられる。矢印が示すように、チャンバーを通る不活性ガスの輸送は、チャンバー中の材料の循環を生じる。したがって、加工されている集団を効率的にかき混ぜるため不活性ガスを使用する。供給管路10上にリアクタチャンバーへのフィードバルブIV3があり、また、マニフォルド14へのガスに対する排出スタブ21上に戻りバルブRV3がある。
【0028】
リアクタチャンバー3が空になると、バルブV3が閉じられ、選択された過剰圧力がリアクタに印加される。バルブV2及びV3の両方が閉じていることが必須である。隣接する下流リアクタチャンバーR4を先に材料が空の状態にして、あらゆる過剰圧力から解放されると推測される。その後、バルブV3が開けられ、ガス及び材料がリアクタチャンバーR4へと吹き込まれるにつれて、急速な圧力解放が行われ、これもまた重力によって補助される。ガスが2つのチャンバー間に分布し、実質的に全ての固体及び液体の材料がそこでの更なる処理のためリアクタチャンバー4に達する。
【0029】
リアクタチャンバーR3は、任意の例として選択されたにすぎず、本質的には、同じ種類の処理が全てのリアクタチャンバーで行われろ。そして、このように多数の別々のチャンバーを使用する主な理由は、処理される集団全体に均一な滞留時間を保証するためであり、外からの材料のフローはリアクタチャンバーR1の入口からリアクタチャンバーR6の出口までほぼ理想的なプラグフローとしてふるまう。材料のフローが下に配置されるチャンバーに直接行かず、更なる加熱のための熱交換器へと行くことで加水分解反応を中断することからリアクタチャンバーR6からの排出はわずかに異なる。この熱交換後のパルプの温度は、典型的には90℃以上である。
【0030】
当業者は、全てのリアクタチャンバーが処理加工用材料で満たされる状況から、リアクタチャンバーR6中の材料は他のどのチャンバーよりも前に空にされ、リアクタチャンバーR4の前にリアクタチャンバーR5等を空にしなければならないことを理解する。しかしながら、リアクタチャンバーR6から排除される材料に対して隙間をあけるため、殺菌チャンバーP1〜P3に対して同様の手順によって、すなわちチャンバーP3、P2、及びP1のこの順番での排出によって、隙間を作ることが必要となる。
【0031】
本発明による熱交換は、基本的には古典的であり、従来技術のプロセスにおけるように同じ方法で及び同じ種類の機器において行われ得る。しかしながら、空間及び他の検討の両方の見地より、リアクタチャンバーと同軸の熱交換器がヘリックスを共に形成するように配置される場合に、該熱交換器において行われることが好ましい。
【0032】
図3は、本発明の不可欠な部分として含まれ得る熱交換に対するシステムの垂直断面図を示す。リアクタチャンバーR1〜R6は、殺菌チャンバーP1〜P3と同様に図に示される。これら及びリアクタの垂直軸と同心円状に、重ね合わせた2つの熱交換器HEX1及びHEX2が配置され、これは、1つの2ステージ熱交換器としても認められる。下部の熱交換器HEX1(又は該熱交換器の下部ステージ)の目的は、酵素加水分解を支持する温度、典型的には約50℃の温度まで材料を加熱することである。これは、材料がリアクタチャンバーR1に入る前に供給管路01(図1)を通ってリアクタへと供給される材料のフローにより行われる。供給管路01を介して熱交換器HEX1へと供給される材料フローは、解説される実施例では、熱交換器HEX1の外壁付近のらせん状に配置された管路コイル33において該熱交換器を上方に通過する。熱は、熱交換器に供給されてデバイス31を熱交換する。熱交換器HEX1は、一般的には液体、好ましくは水液体で満たされる。さらに、解説される実施例では、マニフォルド35を介して空気供給03から熱交換器に空気が供給される。管路コイル33に関して熱交換器が逆流熱交換の特性を本質的に有するように、空気は熱交換器の中心付近で上方に水が循環するのを補助し、一方で水は、らせん状管路コイル33が配置される熱交換器の周縁に沿って再び下方に循環する。
【0033】
本発明者らは、ここで図4、また同じく図3を参照する。管路コイル33の出口は、加熱された原料をリアクタR1へと運ぶ管路18(図4)に接続される。R1への材料混合物の典型的な温度は50℃であるが、数度上下に変化してもよい。リアクタR1における又は管路コイル33からの材料の実際の測定されるリアルタイムの温度を使用して、熱交換ユニット31のゲートの開放を制御してもよい。
【0034】
熱交換器(又は熱交換工程)HEX2は、熱交換器HEX1と同じ一般的な構成を有する。リアクタR1〜R6で処理された材料は、管路17を介して熱交換器の壁付近に配置される上昇らせん状の管路コイル34において熱交換器HEX2へと供給される。熱交換器ユニット32は、管路コイル34を通過する材料が酵素加水分解を終了するのに十分高い温度まで加熱されるように、熱交換器HEX2へと必要な熱を供給する。好適な温度は摂氏90℃以上であってもよい。管路コイル34からの材料の実際の測定されるリアルタイムの温度を使用して、熱交換器ユニット32のゲートの開放を制御することができる。熱交換器HEX2を出る材料は、管路16を介して第1の殺菌チャンバーP1へと注入される。
【0035】
図4は、外部管路の接続をより明確に示すため、リアクタチャンバー及び殺菌チャンバーが取り除かれたリアクタ1の部分を示す。これは、材料供給のための管路01、加工された材料に対する管路02、それぞれの熱交換器への又は熱交換器からのの空気のため管路03及び04、リアクタチャンバーR6(図1)から第2の熱交換器HEX2への材料の輸送のための管路17、第1の熱交換器HEX1から第1のリアクタチャンバーR1(図1)への材料の輸送に対する管路18、及び第2の熱交換器HEX2から第1の殺菌チャンバーP1(図1)への材料の輸送のための管路16である。
【0036】
本明細書に記載される熱交換器は、熱交換器の好適な配置図の例を表すにすぎず、酵素加水分解を支持する温度まで原料を加熱することを可能とするあらゆる熱交換器、及び材料の酵素加水分解を停止するため、処理された材料をより高い温度まで加熱することを可能とするあらゆる熱交換器を使用することができることが強調されなければならない。しかしながら、熱交換器に対して垂直のリアクタの軸に沿って利用可能な容積を使用するのが好ましく、材料を螺旋ループ状に流し、熱交換器を通して空気をバブリングする原理を用いることが便利である。これは、空気が熱交換器の垂直軸付近で液体を上方に引っ張るのに対して、液体が熱交換器の周縁部付近で再び下方へと循環するという事実により、熱交換器における良好な温度分布が提供され、且つ実際に、実質的に向流熱交換器が提供されるからである。
【0037】
図5は、図1〜5の実施形態に示される本発明の装置を利用する処理加工に関するプロセスフローを概略的に示す。一番左にフィードタンク52への原料の供給51が示され、さらに、原料を簡便に細分化するためのミル53、及びリアクタへ材料を投入するためのポンプ54が示される。また、ポンプ54は、酵素容器55から所望量の酵素を吸い上げ、これによって酵素を好適に希釈し得る。構成部分52〜55は、本発明のリアクタの一部を構成せず、あらゆる好適なタンク、ミル、又はポンプを含んでもよい。材料フローに加えて、図6は、どのようにして不活性ガスが様々リアクタチャンバーを介して容器13から、またマニフォルド11及びコンプレッサ12を介して再び容器13へと循環するのかも示す。処理が終わった材料に対する容器56も示される。
【0038】
また、図5は、容器13からリアクタを通り、マニフォルド11、任意に図示されていない戻り管路14、及びコンプレッサ12を介して容器13へと戻る不活性ガス(g)の流れを概略的に示す。
【0039】
図6は、熱交換器HEX2の周りに巻かれたリアクタチャンバーR1、バルブVI(及びこの下にバルブV2、V3等)を有する、概略的に簡略化された図1に示されるリアクタの上部図を示す。原料の供給に対する管路18が示されるが、上記システムにおける不活性ガスの流れは省略されている。
【0040】
図7は、図1に示される実施形態と関連する代替的な実施形態であって、リアクタチャンバーR1’〜R4’が直線状であるものの図を示す。この場合もリアクタチャンバーが傾斜して配置されていることは、図8からは明らかではない。追加のリアクタチャンバーは、リアクタチャンバーR1’の下のリアクタチャンバーR5’、リアクタチャンバーR2’の下のリアクタチャンバーR6’等として解説されるものが以下に提供され得る。
【0041】
図8は、先の図面に解説されるものの代替的な実施を示す。
【0042】
図8に示される詳細は、図1と同じ連番とされているが、100が追加されている。
【0043】
これらの実施形態の間には2つの主な相違があり、1つは、リアクタチャンバーR101〜R107及び殺菌チャンバーP101〜P103が管状ではなく、より定形であって、好ましくは材料が不要に集まる鋭い角のない形態を有すことである。他の相違は、上記リアクタシステムが、高さにおいてより少ない空間を占めると共に、及び底面積の形でより多くの空間を占め、具体的には、熱交換器HEX101及びHEX102は、重なり合うのではなく、互いの隣に位置され、殺菌チャンバーはリアクタチャンバーの下ではなく、リアクタチャンバーの側方に近接して位置されるように配列されることである。
【0044】
したがって、局所の空間条件は、どの実施形態が最も好ましいかに関して重要な因子であり、高さよりも底面積の形でより大きな空間を有する場合、図8の変形は最も好ましいものである。さらに、解説されるシステムは、熱交換器HEX102を配列して、受け取った材料混合物を、酵素加水分解を支持する温度よりも高い温度まで加熱する一方で、供給された材料を酵素加水分解を支持する温度まで加熱することを意図する第1の熱交換器HEX101を更に備える。
【0045】
さらに、いずれも不活性ガスを用いて撹拌され、輸送が重力によって支持されるように、リアクタチャンバーR101〜R107からの材料の輸送が段階的に(5つの工程)より低い垂直レベルへと行われる、7つのリアクタチャンバーR101〜R107が存在する。また、システムの排出は、高圧のガスの供給を使用して、上に記載されるのと同じ方法で行われ得る。
【0046】
図8のシステムは、リアクタチャンバーR101〜R107と同じ定形を有し得る3つの殺菌タンクを更に備える。この実施例では、図1に示される実施例よりも、殺菌チャンバーがリアクタチャンバーと同じ形状及び同じサイズを有することはさほど重要ではないが、そうであっても、つまりは均一なサイズ及び形状のチャンバーを製造することがより容易で更に効率的であることから、実質的に等しいことは当然の選択である。
【0047】
図8は、原料101の供給、処理加工材料102の排出、第1の熱交換器から第1のリアクタチャンバーへの材料輸送のための管路118、最後のリアクタチャンバーから第2の熱交換器への管路117、第2の熱交換器から第1の殺菌チャンバーへの管路116、不活性ガスのための供給管路110、及び再度使用される使用済み不活性ガスのためのマニフォルド111を示す。
【0048】
図8は、不活性ガスのためのコンプレッサ、不活性ガスのための圧力容器、又は熱交換器への加熱媒体の供給及び排出等の詳細を示さないが、当業者はかかる事項に対して適切な機器を容易に選択可能であることが強調されなければならない。
【0049】
以下では、典型的な使用状況における上記リアクタの使用の実施例を提供する。
【0050】
更に好ましい詳細
【0051】
隔壁は、各熱交換器HEX1及びHEX2における中央の水塊から管路コイル33及び34を分離してもよい。それによって、向流熱交換の形態を有する熱交換の原理が更に高められる。
【0052】
コイルパイプのコイルの間、管路コイルと外壁の間、及び開口が存在する場合の管路コイルと隔壁の間には「開口」があるべきである。これは、最大限の熱移動を達成するためである。例えば60mmの直径に対しては、例えば20mmの開口が用いられ得る。隔壁を使用する場合、これは、当然、熱交換器の上部及び底部の両方からの距離において終了して、上部で下へ折り返し、底部で再度上へと折り返すことを可能とする。
【0053】
熱交換器ユニット31及び32に供給される熱は、典型的には熱水、蒸気、又はそれらの組み合せの形態であってもよい。
【0054】
製品温度は、実施に際して主に以下の変数によって決定される:
【0055】
a−管路コイルを上へと通る製品の速度。速度は、典型的には複動ピストンポンプであってもよいポンプによって制御され得る、均一な移行で経時的に変化する。
【0056】
b−管路コイルに対して向流する熱水の速度は、マニフォルド35への注入空気の速度を制御することによって、製品フローに沿って変化し得る。
【0057】
c−熱水の温度。熱交換器デバイス31に向かう蒸気/熱水のゲート開放は、残留する原料が熱交換器HEX1を出るにつれてその温度に従って制御され得る。
【0058】
熱交換器HEX2は、加水分解の後に製品を殺菌して酵素活性を「殺し」、細菌の成長を抑制する。
【0059】
原料の温度は、原料を加水分解するのに要する時間の間、およそ3℃下降してもよい。その後、原料を、例えば95℃まで熱交換器HEX2において加熱する。下部(HEX1)及び上部(HEX2)の熱交換器の高さの間の関係を、5℃〜48℃及び45℃〜95℃の温度の相違によって調整することができる。両方のチャンバーにおいて移動中の水を固定した後、開口(open)へと空気が流れる。
【0060】
リアクタチャンバーR1〜R6の寸法は変化してもよいが、典型的なサイズは、リアクタチャンバーがらせん状及び直立であろうとなかろうと、直径600mmであってもよい。バルブが配列される個々のチャンバー間の通路は、150mmの単位であってもよい。リアクタ中の嵩高い材料又は不活性ガス等のいずれかのための全てのバルブは、自動的に制御されるように配列されるのが有利である。これらを制御する方法は、本発明の一部ではなく、したがって本明細書ではこれ以上記載しない。
【0061】
各チャンバーにおける処理時間は変化させることができ、典型的には5分間〜15分間の範囲であってもよい。リアクタ内のチャンバーの数は、使用される原料の種類とともに、当然処理時間にも影響を与える。
【0062】
本発明のリアクタは、収穫船の上での使用に適しており、機能させるために垂直に立てる必要がない。1:10(垂直/水平)のリアクタチャンバーの傾斜は、通常、海上であっても使用に十分である。より過酷な傾斜での機能を保証することを望む場合、傾斜を、例えば1:5まで増すことができる。
【0063】
本発明の中心的な部分ではないものの、関連する寸法のリアクタチャンバー及び熱交換器を備える図1のリアクタの実施態様を垂直に直立した標準的な20フィート、すなわち全高約6メートルのコンテナに装入可能であることに留意されたい。図8に示されるリアクタを、実質的に全体の高さをより低くして実施することができるが、コンテナに装入することはできない。
【0064】
しかしながら本リアクタの原理もまた、かかる高さが利用可能であるかどうかにかかわらず、実現可能である。例えば、リアクタチャンバーをカラムに配置することができ、また一方で殺菌チャンバーを並んで位置される別々のカラムにおいて提供し、これによって添付の図面に示されるものよりもリアクタの高さを減じ、幅を広げることができる。
【0065】
以下の請求項では、図8を参照する請求項14〜18、及び図1図8の両方を参照する請求項20を除き、挿入される参照は図1図5に示される実施形態に対応する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8