特許第6671616号(P6671616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671616
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】歯科用局所麻酔マイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20200316BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200316BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200316BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   A61M37/00 530
   A61P1/02
   A61P23/02
   A61K31/245
   A61K45/00
   A61K9/00
   A61K47/30
   A61K31/167
   A61K31/4704
   A61K31/445
   A61K47/36
   A61K47/42
   A61K47/34
   A61K47/32
   A61K47/38
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-206071(P2018-206071)
(22)【出願日】2018年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-84352(P2019-84352A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-213296(P2017-213296)
(32)【優先日】2017年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−095427(JP,A)
【文献】 特開2013−032324(JP,A)
【文献】 特開2017−164191(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/018086(WO,A1)
【文献】 特開2017−061447(JP,A)
【文献】 特開平9−268123(JP,A)
【文献】 特開2013−95687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 19/00
A61K 9/00
A61K 31/167
A61K 31/245
A61K 31/445
A61K 31/4704
A61K 45/00
A61K 47/30
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/42
A61P 1/02
A61P 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所麻酔剤を含有するマイクロニードルアレイからなる即効性歯科局所麻酔製剤であって、該マイクロニードルアレイは基板と基板上の複数のマイクロニードルからなり、該マイクロニードルアレイの背面に支持体として疎水性または非溶解フィルムを裏打ちしており、該基板と該基板上の複数のマイクロニードルとは水溶性高分子及び水溶性低分子化合物を基剤として同一の水溶性高分子及び水溶性低分子化合物から一体的に形成されており、
該水溶性高分子はヒアルロン酸及びその誘導体、コラーゲン、プロテオグリカン、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、並びにデキストランからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
該基剤は該水溶性低分子化合物を2質量%以上50質量%以下含有し、該水溶性低分子化合物は単糖及び二糖類からなる群より選ばれるものであり、
該基板の厚さは5μm以上100μm以下の柔軟な基板部を有し、口腔粘膜又は歯茎に貼付することによりニードル部が粘膜内溶解する即効性歯科局所麻酔製剤。
【請求項2】
支持体に粘着性物質がコーティングされている、請求項1に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項3】
支持体の一部にフィルムを含まない欠損部分を有する、請求項1又は2に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項4】
支持体が滅菌紙であり、マイクロニードルアレイを内包する外枠を形成している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項5】
局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる、請求項1〜のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項6】
局所麻酔剤がアミノ安息香酸エチルである、請求項1〜のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項7】
局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる1又は複数とアミノ安息香酸エチルとの混合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項8】
局所麻酔剤の基剤中の濃度が1質量%以上80質量%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項9】
局所麻酔剤がリドカイン又はその塩である、請求項1〜5、8のいずれか1項に記載の歯科局所麻酔製剤。
【請求項10】
水溶性高分子及び水溶性低分子化合物を基剤とし、基板と基板上の複数のマイクロニードルが同一の水溶性高分子及び水溶性低分子化合物から一体的に形成されており、局所麻酔剤としてアミノ安息香酸エチルを含有するマイクロニードルアレイであって、
該水溶性高分子はヒアルロン酸及びその誘導体、コラーゲン、プロテオグリカン、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、並びにデキストランからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
該基剤は該水溶性低分子化合物を2質量%以上50質量%以下含有し、該水溶性低分子化合物は単糖及び二糖類からなる群より選ばれるものであり、
該マイクロニードルの高さは50μm以上300μm以下であり、該マイクロニードルの先端は直径1μm以上50μm以下の円形又はそれと同面積を有する平面であり、該基板の厚さは5μm以上100μm以下の柔軟な基板部を有するマイクロニードルアレイ。
【請求項11】
局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる1又は複数とアミノ安息香酸エチルとの混合物である、請求項10に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
局所麻酔剤の基剤中の濃度が1質量%以上80質量%以下である、請求項10又は11に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のマイクロニードルアレイと、該マイクロニードルアレイの背面に備えられた支持体とからなるマイクロニードルパッチ。
【請求項14】
支持体が口腔内粘着性を有する、請求項13に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項15】
支持体に粘着性物質がコーティングされている、請求項14に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項16】
支持体が水溶性である、請求項14に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項17】
支持体がフィルム状であり、一部にフィルムを含まない欠損部分を有する、請求項13〜16のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項18】
支持体が滅菌紙であり、マイクロニードルアレイを内包する外枠を形成している、請求項13〜16のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科(口腔内)局所麻酔に適用するマイクロニードルの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療においては、痛みの軽減のため口腔内に局所麻酔が施され、口腔(歯茎)粘膜に麻酔薬を塗布したり、歯茎内に麻酔薬を注射する。
歯科用市販局所麻酔剤は数多く使用されている。それらは局所麻酔剤含有液剤、ゲル剤、ゼリー剤、などが主であり、液剤は脱脂綿などに浸して口腔内に適用する。ゲル剤、ゼリー剤はそのまま口腔内に適用する。いずれも、粘膜からの麻酔薬の吸収が遅いため効果が発生するまでの時間が長く、患者が横になって待つ時間が長いことや粘膜吸収のばらつきが生じることにより、QOLを損なうことが多い。また、麻酔薬が適用局所から流れて口腔内の広い部分が麻酔されることも、これらの局所表面麻酔剤の欠点である。麻酔薬の注射は、麻酔薬を注射される時点で痛みを感じて治療前に恐怖心が高まり、このことが歯科治療を敬遠する原因のひとつとなっている。
【0003】
マイクロニードル製剤は、経皮吸収性が高く、化粧品及び医薬品等の開発が試みられている。一般に、マイクロニードル製剤の適用部位は皮膚表皮であるが、例えば、経内頬投与によるワクチン接種としての微小針パッチが知られている(特許文献1)。本微小針パッチは、内頬粘膜の外側層を貫通するように設計されている。また、歯科用局所麻酔薬等の歯科用物質伝達のためのマイクロニードルが開発されている(特許文献2、3)。特許文献2は、マイクロニードルアレイと、歯科用局所麻酔薬を内部に含む中空型球状容器とを備え、マイクロニードルを貫通する開口部を通じて麻酔薬が局所に送達される。特許文献3は、口腔内部の皮膚形状に沿って曲がるベース部とマイクロニードル本体部と該ニードル本体部の表面にコーティングされた有効成分コーティング部とを備えたマイクロニードルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015−515474号公報
【特許文献2】特表2017−507734号公報
【特許文献3】特開2017−061447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロニードル技術は歯科用局所麻酔への適用が試みられているが、マイクロニードルデバイスとしての装置が複雑であり、より簡便で麻酔効果が得られるマイクロニードル製剤が求められている。本発明の目的は、口腔内への適用が容易であり、適用部位に則した麻酔効果を発揮できるマイクロニードルアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
麻酔薬の注射の前に、まず皮膚の1〜2mmの深部まで迅速表面麻酔ができれば、患者のQOLは著しく改善ができる。本発明者らは、口腔内組織及び歯科分野の特殊性に鑑みて鋭意検討した結果、マイクロニードルアレイの形状及び材質を特定のものとすることで、歯科用局所麻酔に適したマイクロニードルアレイを発明するに至った。
【0007】
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 局所麻酔剤を含有するマイクロニードルアレイからなり、口腔粘膜又は歯茎に貼付することによりニードル部が粘膜内溶解する即効性歯科局所麻酔製剤。
〔2〕 マイクロニードルアレイの背面に疎水性または非溶解フィルムを裏打ちしている、〔1〕に記載の歯科局所麻酔製剤。
〔3〕 水溶性高分子を基剤とし、マイクロニードルアレイの基板の厚さは100μm以下の柔軟な基板部を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の歯科局所麻酔製剤。
〔4〕 水溶性高分子がヒアルロン酸及びその誘導体、コラーゲン、プロテオグリカン、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、並びにデキストランからなる群より選ばれる1種または2種以上である、〔3〕に記載の歯科局所麻酔製剤。
〔5〕 マイクロニードルアレイの基剤が水溶性高分子以外に水溶性低分子化合物を2質量%以上含有する、〔3〕又は〔4〕に記載の歯科局所麻酔製剤。
〔6〕 局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の歯科局所麻酔製剤。
〔7〕 局所麻酔剤がアミノ安息香酸エチルである、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の歯科局所麻酔製剤。
〔8〕 局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる1又は複数とアミノ安息香酸エチルとの混合物である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の歯科局所麻酔製剤。
〔9〕 局所麻酔剤の基剤中の濃度が1質量%以上80質量%以下である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の歯科局所麻酔製剤。
〔10〕 局所麻酔剤がリドカイン又はその塩である、〔1〕〜〔6〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の歯科局所麻酔製剤。
〔11〕 水溶性高分子を基剤とし、局所麻酔剤を含有するマイクロニードルアレイであって、マイクロニードルの高さは50μm以上300μm以下であり、マイクロニードルの先端は直径1μm以上50μm以下の円形又はそれと同面積を有する平面であり、マイクロニードルアレイの基板の厚さは5μm以上100μm以下であるマイクロニードルアレイ。
〔12〕 水溶性高分子がヒアルロン酸及びその誘導体、コラーゲン、プロテオグリカン、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、並びにデキストランからなる群より選ばれる1種または2種以上である、〔11〕に記載のマイクロニードルアレイ。
〔13〕 基剤が水溶性高分子以外に水溶性低分子化合物を2質量%以上含有する、〔11〕又は〔12〕に記載のマイクロニードルアレイ。
〔14〕 局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる、〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ。
〔15〕 局所麻酔剤がアミノ安息香酸エチルである、〔11〕〜〔13〕のいずれか記載のマイクロニードルアレイ。
〔16〕 局所麻酔剤がプロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる1又は複数とアミノ安息香酸エチルとの混合物である、〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ。
〔17〕 局所麻酔剤の基剤中の濃度が1質量%以上80質量%以下である、〔11〕〜〔16〕のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ。
〔18〕 局所麻酔剤がリドカイン又はその塩である、〔11〕〜〔14〕、〔16〕、〔17〕のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ。
〔19〕 〔10〕〜〔18〕のいずれかに記載のマイクロニードルアレイと、該マイクロニードルアレイの背面に備えられた支持体とからなるマイクロニードルパッチ。
〔20〕 支持体が口腔内粘着性を有する、〔19〕に記載のマイクロニードルパッチ。
〔21〕 支持体に粘着性物質がコーティングされている、〔20〕に記載のマイクロニードルパッチ。
〔22〕 支持体が水溶性である、〔20〕に記載のマイクロニードルパッチ。
〔23〕 支持体がフィルム状であり、一部にフィルムを含まない欠損部分を有する、〔19〕〜〔22〕のいずれかに記載のマイクロニードルパッチ。
〔24〕 支持体が滅菌紙であり、マイクロニードルアレイを内包する外枠を形成している、〔19〕〜〔22〕のいずれかに記載のマイクロニードルパッチ。
〔25〕 支持体を持たない、〔19〕〜〔24〕のいずれかに記載のマイクロニードルパッチ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロニードルアレイは、水溶性高分子を基剤として基板とマイクロニードルとが一体的に形成されているので、製造が容易であり、含有する局所麻酔剤の量及びマイクロニードルアレイの大きさを調整することにより、目的に応じた麻酔効果を短時間で達成することができる。
本発明のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチは、水溶性高分子を基剤として用いているので、高湿度環境下で口腔粘膜又は歯茎の屈曲に追随して密着し易く、口腔内の局所投与に適している。
本発明のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチは、歯科用局所麻酔製剤として、さらには、歯科用局所麻酔注射液を投与する前に、投与部位の痛みを軽減するためのプレ麻酔薬としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のマイクロニードルパッチの写真。図1Aはポリエチレン粘着フィルム1を支持体としているが、マイクロニードル部3の背面の中央にはポリエチレン粘着フィルムが存在しない。図1Bは滅菌紙4を支持体とし、マイクロニードル部5の背面には滅菌紙が存在せず、マイクロニードルパッチの外枠を形成している。
図2】マイクロニードル部7の背面の中央には支持体が存在しない、端の一部に手で持つための耳が付いているマイクロニードルパッチの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のマイクロニードルアレイは、局所麻酔、特に歯科用局所麻酔に適するものである。本発明のマイクロニードルアレイは、基板と基板上の複数のマイクロニードルからなり、水溶性高分子を基剤として同一の水溶性高分子から一体的に形成されている。
【0011】
マイクロニードルアレイの基剤
マイクロニードルアレイの基剤は、水溶性高分子である。このような素材を用い均一に局所麻酔剤を含有するマイクロニードルアレイを常法により作製すると、局所麻酔剤はマイクロニードル部のみならず基板部にも含まれることとなる。このマイクロニードルアレイを口腔内(口腔粘膜又は歯茎等)に適用すると、マイクロニードル部は粘膜内又は歯茎内に到達することができ、それにより、含まれる局所麻酔剤の目的部位への送達を促進する。マイクロニードルアレイの基板も、口腔内の高湿度環境下で口腔粘膜又は歯茎の屈曲に追随して密着し、基板の水溶性高分子が溶解し、そこに存在する局所麻酔剤もまた、目的部位へ送達される。
【0012】
水溶性高分子としては、ヒアルロン酸及びその誘導体(例、ナトリウム塩、ポリエチレンオキサイドグラフトヒアルロン酸)、コラーゲン、プロテオグリカン、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール又はデキストラン等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を混合して用いてもよい。特に、ヒアルロン酸又はその誘導体が好ましい。
【0013】
ヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結した構造を有している。ヒアルロン酸としては、例えば、鶏冠、臍帯等から単離される生物由来のヒアルロン酸、乳酸菌、連鎖球菌等により大量生産される培養由来のヒアルロン酸等が挙げられる。生物由来のヒアルロン酸は、その由来となる生物が有するコラーゲンを完全には除去できず、残存するコラーゲンが悪い影響を与える可能性があるので、コラーゲンを含有しない培養由来のヒアルロン酸が好ましい。従って、ヒアルロン酸は培養由来のヒアルロン酸を50質量%以上含んでいるのが好ましい。
【0014】
ヒアルロン酸又はその誘導体から選ばれた水溶性高分子物質を成分として用いてマイクロニードルアレイを作製するに当たっては、これら高分子物質から成形されたマイクロニードルアレイは、重量平均分子量が小さくなると硬くなり適用部位に刺さりやすくなり、逆に重量平均分子量が大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなるので、柔軟になり、歯茎等の屈曲に適用しやすくなる傾向がある。本発明目的においては、重量平均分子量は5千〜200万が好ましい。
【0015】
マイクロニードルアレイを口腔内に適用する際には、適度な硬度で折れにくく、且つ、局所麻酔薬を浸透しやすくするために、重量平均分子量が10万以上の高分子量高分子物質と重量平均分子量が5万以下の低分子量高分子物質の混合物からマイクロニードルアレイを形成してもよい。上記高分子量高分子物質の重量平均分子量は5万以上であればよく、200万以下が好ましい。また、低分子量高分子物質の重量平均分子量は5万以下であればよく、1000以上が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0016】
高分子量高分子物質と低分子量高分子物質を混合する際の比率は、各高分子物質の種類及び重量平均分子量によっても異なるので、好ましい機械的強度及び硬さになるように適宜決定されればよいが、一般に、高分子量高分子物質1質量%以上、低分子量高分子物質99質量%以下であることが好ましい。
【0017】
麻酔効果を速発揮するために、上記高分子物質に可溶解剤を添加してもよい。可溶解剤としては、トレハロース、グルコースなどの単糖、二糖類、グリセリン、プロピレングリコール(PG)、ブチレングリコール(BG)、ポリエチレングリコール(PEG)など多価アルコールなどが挙げられる。可溶解剤の添加量は、基剤中の濃度として1質量%以上50質量%以下が望ましい。
薬物結晶化防止のため、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストランの添加もよい。
【0018】
マイクロニードルアレイの基剤は、水溶性高分子以外に水溶性低分子化合物を含有することができる。水溶性低分子化合物としては、上記した可溶解性剤として使用される単糖、二糖類、多価アルコールであって、分子量が500以下の化合物である。単糖としては、グルコース、フルクトース等が挙げられ、二糖類としては、シュクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール(PG)、ブチレングリコール(BG)、ポリエチレングリコール(PEG)200、PEG400等が挙げられる。
水溶性低分子化合物の添加量は、基剤中の濃度として2質量%以上50質量%以下であり、好ましくは2質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは 2質量%以上30質量%以下である。
【0019】
マイクロニードルアレイの形状
マイクロニードルの高さは、50μm以上300μm以下であることが望ましく、100μm以上250μm以下がより好ましい。50μm未満では、局所麻酔剤の送達に不利である。300μmを超えると、適用時に痛みや出血を伴うことがある。
【0020】
マイクロニードルの先端は、直径1μm以上の円形あるいはそれと同面積を有する平面であることが望ましい。マイクロニードル先端部は、直径50μm以下の円形あるいはそれと同面積を有する平面であることが望ましい。この範囲内であると、局所麻酔薬の送達に有利である。針形状は、棒状、円錐台形状又はコニーデが挙げられ、円錐台又はコニーデ形状が望ましい。
【0021】
マイクロニードルアレイの基板の厚さは5μm以上100μm以下であることが望ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。
【0022】
マイクロニードルアレイの基板の形状は、適用部位に応じて適宜設定することができ、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形等が挙げられる。形状の大きさは、直径(長径)又は一辺(長辺)の長さで代表して表すと、通常2mm以上100mm以下であり、5mm以上50mm以下が好ましい。また、マイクロニードルアレイの大きさを面積で表すと、通常5mm以上1000mm以下であり、10mm以上500mm以下が好ましい。
【0023】
局所麻酔剤
本発明のマイクロニードルアレイに含まれる有効成分は、局所麻酔剤である。局所麻酔剤としては、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン又はそれらの塩が挙げられる。あるいは、局所麻酔剤は、アミノ安息香酸エチル(ベンゾカイン)であってもよい。
本発明においては、これらの局所麻酔剤を2種以上混合して使用することができる。好ましい組み合わせとしては、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン及びそれらの塩からなる群より選ばれる1又は複数とアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ(混合物)である。
局所麻酔剤を単独で用いる場合、リドカイン又はその塩が好ましく、リドカインの塩としては、リドカイン塩酸塩が好ましい。
【0024】
上記局所麻酔剤の外に、医薬品として通常含まれる添加剤を含んでいてもよい。本発明のマイクロニードルアレイに含まれる添加剤の濃度は、添加剤の種類及び添加目的等に応じて、適切な範囲に設定することができる。
【0025】
局所麻酔剤の基剤中の濃度は、1質量%以上80質量%以下であり、10質量%以上70質量%以下がより好ましい。ここで、局所麻酔剤の基剤中の濃度とは、マイクロニードルアレイの総重量中の質量(水など適当な溶媒でマイクロニードルアレイを溶解し局所麻酔剤の含有量を定量分析し、マイクロニードルアレイの固形質量中の薬物含有量)である。
【0026】
本発明のマイクロニードルアレイの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法で製造されればよく、例えば、マイクロニードルの形状が穿設された型に、上記水溶性高分子及び局所麻酔剤、必要に応じてその他の成分を含む水溶液を流延し、乾燥した後剥離する方法が挙げられる。剥離したマイクロニードルアレイシートは、口腔内の適用部位の形状に則して裁断して用いる。
【0027】
本発明のマイクロニードルアレイは、単独で歯科用局所麻酔製剤として使用することができる。あるいは、口腔内適用の便宜に供するために、下記マイクロニードルパッチとすることもできる。
【0028】
マイクロニードルパッチ
本発明のマイクロニードルパッチは、前記マイクロニードルアレイと、該マイクロニードルアレイの背面に備えられた支持体とからなる。ここで、マイクロニードルアレイの背面とは、マイクロニードルが突出している面とは反対側の基板部である。支持体は必須ではないが、支持体があれば扱いやすく、貼付部位から滑る又は口唇の内側に移ることを防止することができる。マイクロニードルアレイの背面に疎水性または非溶解フィルムを支持体として裏打ちしたマイクロニードルパッチは、歯科局所麻酔製剤の一実施形態である。
【0029】
本発明における製剤剤形は様々な様態が可能である。それらを順次説明する。
1.上記マイクロニードルアレイの製造方法によって製造された乾燥したマイクロニードルアレイの背面に、支持体として高分子フィルムが裏打ちされたマイクロニードルパッチ。その製法は種々ある。例えば、マイクロニードルアレイを乾燥させ、型から剥離する前にその背面に水もしくは低沸点有機溶媒に溶解させた高分子を塗布、スプレー等により積層し、乾燥させる。ここで高分子とは、ポリビニルアルコール、高分子量のポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、のような水溶性高分子であって、口腔内で瞬時に溶解しない高分子である。より具体的には、支持体として高分子フィルムが裏打ちされていることによって、少なくとも貼付後30分以内、マイクロニードル基板が溶解しない、形状が崩れないことが必要である。支持体としては、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、等の有機溶媒可溶な高分子あるいはそれらを可塑剤により柔軟にしたものであっても良い。これらは、疎水性または非溶解フィルムの好適な具体例である。
2.上記マイクロニードルアレイの製造方法によって製造された乾燥したマイクロニードルアレイの背面に、高分子フィルムが支持体として裏打ちされたマイクロニードルパッチ。本製剤は、高分子フィルムとマイクロニードルアレイの背面に接着剤もしくは粘着剤により一体化されている。マイクロニードルアレイと高分子フィルムとのサイズは同等でもよく、また高分子フィルムがより大きくフィルム面に口腔内接着性を有するような処理をしてもよい。高分子フィルムは多孔性あるいは織り布、のような水透過性であっても良い。典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)等のプラスチックシート又はフィルム;滅菌紙、セロハン、不織布、織布等の紙シート、スプレーまたは塗布によるシリコン樹脂薄膜、スプレーまたは塗布によるフッ素オイル薄膜、等が挙げられる。
【0030】
支持体の大きさは、マイクロニードルアレイと同型同大であってもよいが、マイクロニードルアレイの口腔内での密着力を背面から補強するため、マイクロニードルアレイより大きいことが好ましい。支持体は、適用部位に応じて、取り扱い易い大きさと形状に設定することができ、例えば、マイクロニードルアレイの外縁から3〜20mm程度大きくすることが適当である。支持体の厚さは、マイクロニードルアレイ基板の厚さと同等であっても、それよりも厚くても薄くてもよく、柔軟で薄いマイクロニードルアレイを支持することができ、かつ、取り扱い易い厚さに適宜設定することができる。マイクロニードルアレイの端に手で持つための耳のような形状でもよい(図2、ポリエチレン粘着フィルム6)。支持体の一部または全面を着色してもよい、医師が麻酔終了後、着色の目付きがあれば忘れず剥がすことが容易である。
【0031】
支持体は、マイクロニードルアレイの口腔内での密着力を背面から補強するために、口腔内粘着性を有することが望ましい。
【0032】
支持体の口腔内粘着性を確保するための1つの態様として、支持体に粘着性物質がコーティングされている、すなわち、粘着剤を塗布した支持体が挙げられる。ここで、粘着性物質としては、パッチ製剤に通常使用される粘着剤が挙げられ、例えば、アクリル系、シリコン系、ゴム系粘着剤の湿潤面接着性があるグレードが好ましい。
【0033】
支持体の口腔内粘着性を確保するための別の態様として、支持体が水溶性であることが挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)などの低分子量水溶性フィルムを用い、口腔内の水分で自粘着性があるものも好ましい。この場合は、適用する口腔面の反対側口腔面へ接着しないように、水溶性支持体の反対側口腔面に対峙する面は非水溶性高分子フィルムをさらに積層することが望ましい。
背面に積層するフィルムは、それがないとマイクロニードルアレイの背面が貼付部粘膜の反対側の口腔粘膜に付着しがちであるが故に有効ではある。しかしながら、それは本発明の必須要件ではなく、本発明の必須要件はマイクロニードルによる粘膜深部への薬物送達である。マイクロニードル基剤が水溶性であるがその水溶解速度が遅い場合、マイクロニードル部での薬物溶解が遙かに背面に比べて早いので、裏打ち剤がなくても目的にはかなう。すなわち、本発明のマイクロニードルアレイそのものが歯科局所麻酔製剤として提供される。
【0034】
フィルム状支持体の場合、一部にフィルムを含まない欠損部分を有していてもよい。例えば、図1Aに示すように、欠損部分はフィルム状支持体の中央部に設けることができ、この場合、マイクロニードル部の背面はフィルムで覆われていない。欠損部分は中央部に限定されるものではなく、本発明のマイクロニードルパッチを適用した部位に注射針を刺す場合に、針の侵入を妨げない程度にフィルムを含まない部分を確保すればよい。マイクロニードルアレイの中央部に支持体を設けないことにより、プレ麻酔の場合マイクロニードルパッチを剥がさずそのまま背面から注射することができる。また、麻酔効果が十分であるかどうか、背面から試すことができる。
【0035】
同様に、支持体が滅菌紙の場合、支持体がマイクロニードルアレイを内包する外枠を形成していてもよい。例えば、図1Bに示すように、滅菌紙の中央部に穴を設け、マイクロニードル部の背面が滅菌紙で覆われておらず、滅菌紙がマイクロニードルアレイの外枠を形成している。外枠は、本発明のマイクロニードルパッチを適用した部位に注射針を刺す場合に、滅菌紙がマイクロニードルアレイの基板の背面全面を覆って針の侵入を妨げない程度に設ければよい。
【0036】
本発明のマイクロニードルパッチは、前記マイクロニードルアレイの背面を支持体で覆うことにより、製造することができる。
【0037】
本発明のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチは、口腔粘膜又は歯茎に貼付後、マイクロニードル部の背面を押圧することで、局所麻酔剤が投与される。本発明のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチは、水溶性高分子を基剤として用いているので高湿度環境下で迅速に溶解し、口腔粘膜内又は歯茎内に麻酔剤を効率的に送達できるため、短時間(1〜10分以内)に局所麻酔の効果を発揮することができる。製剤の評価はボランティアの歯茎に貼付し、5〜10分後に剥離した後、爪楊枝あるいは注射針を貼付部位に刺して痛みを感じるか否かの試験により確認できる。その際爪楊枝あるいは注射針の先端部から1mmの位置にストッパーとしてゴムリングをかぶせることによって強く推しても爪楊枝あるいは注射針が歯茎内1mmより深部に入り込まないようにすることもできる。
単位面積当たりのマイクロニードルアレイに含まれる局所麻酔剤の量及びマイクロニードルアレイの大きさを適宜設定することで、歯科用局所麻酔製剤として使用することができる。また、歯科用局所麻酔注射液を投与する前に、投与部位の痛みを軽減するためのプレ麻酔薬としても使用可能である。この場合、本発明のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチを口腔粘膜又は歯茎に貼付した後、続けて、貼付部位に歯科用局所麻酔注射を施すことができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を例示して本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
局所麻酔剤含有マイクロニードルパッチの製造
塩酸リドカインを50質量部(和研薬(株)より購入)、ヒアルロン酸ナトリウム50質量部(FCH-SU、キッコーマン)を計り、水を加えて10質量%固形分になる溶液を調製した。その水溶液を針長さ200μmの鋳型に流して、室温において24時間乾燥し、型抜きし、マイクロニードルアレイを製造した。その後、アレイの背面に穴空きポリエチレン(PE)粘着フィルムを接着させた。
【0040】
実施例2
アミノ安息香酸エチル(和研薬(株)より購入)をエタノールにて溶解し、10質量%のヒドロキシプロピルセルロースとPEG1000(日本バルク薬品(株))(HPCL:PEG1000=10:0.5)の混合水溶液に混合し、鋳型に充填後乾燥させた。マイクロニードルパッチ中アミノ安息香酸エチル含量は、20質量%であった。鋳型から剥離前にポリ酢酸ビニルの10質量%酢酸エチル溶液を塗布し60℃で20分乾燥後、短径1cm、長径2cmの楕円形に打ち抜き、支持体付きマイクロニードル製剤を得た(支持体厚さ=40μm、マイクロニードル基板厚さ=50μm)。
本製剤をボランティア5名の歯茎に貼付し5分後に剥離して、爪楊枝を貼付部位に刺して痛みを感じるか否かの試験をした。全員が痛みを感じず麻酔効果を確認できた。
【0041】
実施例3
下記の薬物含有マイクロニードルパッチを実施例2と同様にして作製した。
べンゾカイン(アミノ安息香酸エチル) 25質量%
テトラカイン塩酸塩 1質量%
ジブカイン塩酸塩 1質量%
ホモスルファミン 2質量%
鋳型から剥離前にポリビニルアルコールの30質量%水溶液を塗布し、60℃で20分乾燥後、短径1cm、長径2cmの楕円形に打ち抜き、支持体付きマイクロニードル製剤を得た(支持体厚さ=30μm、マイクロニードル基板厚さ=50μm)。
本製剤をボランティア5名の歯茎に貼付し5分後に剥離して、爪楊枝を貼付部位に刺して痛みを感じるか否かの試験をした。全員が痛みを感じず麻酔効果を確認できた。
【0042】
実施例4〜9、比較例1、2
表1に記載の基剤及び麻酔剤を含むマイクロニードル製剤を、実施例2に記載の方法に準じて製造した(実施例4〜9)。但し、実施例6のマイクロニードル製剤は支持体なしであった(基剤の厚さは100μm)。実施例4、5、7〜9のマイクロニードル製剤は、それぞれ、表1に記載の裏打ち剤を用いて、支持体付きマイクロニードル製剤であった(マイクロニードル基板厚さ=40〜50μm、支持体厚さ=40〜60μm)。
比較例として、マイクロニードルの針なしシート製剤(比較例1)及びゲル軟膏(比較例2)の製剤を表1の組成に基づいて製造した。
【0043】
【表1】
%は質量%を表す。
【0044】
針強度試験
実施例4〜9で成型したマイクロニードルアレイについて、小型卓上試験機EZ Test EZSX(島津製作所製)を用い、圧縮試験を行ってニードルの機械的強度を測定した。マイクロニードルアレイを直径1cmに成形し2枚のステンレス板の間に固定し、これを1mm/minの速度で圧縮して応力・歪み曲線を得た。
応力・歪み曲線より、ニードルの機械的強度の評価基準として弾性係数を求めて比較した。弾性係数の算出は、縦軸に応力、横軸に歪みから成る応力・歪み曲線における初期定常状態である、歪みが0.1〜0.2mmにおける直線勾配から求めた。結果を表1に示す。
【0045】
麻酔効果
実施例4〜9及び比較例1、2で製造した製剤をボランティア5名の歯茎に貼付し、5〜10分後に剥離して爪楊枝を貼付部位に刺して痛みを感じるか否かの試験をした。麻酔評価の基準は以下の通りであった。結果を表1に示す。
全員が痛みを感じない:効果良好
3〜4名が痛みを感じない:効果あり
0〜2名が痛みを感じない:効果不良
【0046】
実施例4〜9のマイクロニードル製剤は、いずれも10分以内にボランティア全員に対する麻酔効果を発揮することができた。シート製剤及びゲル軟膏は、10分以内で麻酔効果を発揮することが困難であった。
【符号の説明】
【0047】
1 ポリエチレン粘着フィルム
2 粘着無しのポリエチレンフィルム
3 マイクロニードル部
4 滅菌紙
5 マイクロニードル部
6 ポリエチレン粘着フィルム
7 マイクロニードル部
11 マイクロニードルパッチ
12 マイクロニードルパッチ
13 マイクロニードルパッチ

図1
図2