【文献】
Tom Burden,Choosing a Boarding Ladder, [online],West Marine,2019年 8月 7日,[令和元年10月24日検索], インターネット<URL:https://www.westmarine.com/WestAdvisor/Boarding-Ladders>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
梯子型の本体部、一方の端部が下方を向き他方の端部が前記本体部を構成する第1支柱の上端に固定された第1フック部、一方の端部が下方を向き他方の端部が前記本体部を構成する第2支柱の上端に固定された第2フック部、前記第1及び第2支柱の下端に上端を固定された被保持部を含み、全体が剛性を有する構造である救命梯子を常備する船舶であって、
甲板と、
前記甲板の周囲を取り囲む舷墻であって、前記第1及び第2フック部のそれぞれの前記一方の端部をそれぞれ挿入して固定可能な第1及び第2固定手段を上端面に有する舷墻と、
前記甲板上に配置された操舵室であって、天井の一部に前記第1及び第2フック部のそれぞれの前記一方の端部をそれぞれ挿入する第1及び第2の保持穴を有し、更に側壁に前記被保持部を収納する保持部を有する操舵室と、
を備えることを特徴とする船舶。
前記第1固定手段は、前記上端面に開孔された第1の貫通孔と、前記上端面の上に固定され、前記第1の貫通孔と同軸、同径の第2の貫通孔を有する5〜30mmの厚さを有する金属板である第1の固定用金属板で構成され、
前記第2固定手段は、前記上端面の他の位置に開孔された第3の貫通孔と、前記上端面の上に固定され、前記第3の貫通孔と同軸、同径の第4の貫通孔を有する5〜30mmの厚さを有する金属板である第2の固定用金属板で構成されることを特徴とする請求項4に記載の船舶。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、図面を参照して、本発明の代表実施形態を一つ取り上げ、例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
又、以下に示す代表実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、代表実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
また、以下の説明における「上端」や「下端」若しくは「上方」や「下方」等の方向の定義は、単に説明の便宜上の用語の選択であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、代表実施形態に係る救命梯子14を90°回転して観察すれば、救命梯子14の上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば救命梯子14の上下は反転して読まれることは勿論である。
【0017】
(船舶と船舶に常備された救命梯子)
代表実施形態に係る船舶は、
図1〜3及び
図9に示すように、甲板16と、甲板16の周囲を取り囲む舷墻(13L,13R)と、甲板16上に配置された操舵室(船橋)11を備える。舷墻(13L,13R)は、上甲板の外舷に沿って立ち上げた波の侵入を防ぐ囲いであり、左舷側の舷墻13Lと右舷側の舷墻13Rに区別される。
図1及び
図2では、左舷側の舷墻13Lと、舷墻13Lに連続する左舷側の舷側外板部分(ハル)12Lが、例示的に示されている。
【0018】
図1に示すように、代表実施形態に係る船舶は、緊急時に左舷側外板部分である舷側外板部分12Lの面に沿って、舷側外板部分12Lの上側の左舷側の舷墻13Lの上端面に堅固に救命梯子14が固定される。ここで、「緊急時」とは、乗船者が船内から船外の海等に落下した状況を意味する。この場合、海等に落下した人を早期に救出するために、基本構造が剛性を有する救命梯子14を舷墻13Lにできるだけ早く堅固に固定し、安定した登攀経路を用意することが重要となる。「基本構造が剛性を有する」とは、中空状態の救命梯子14に100kg程度の体重を有する人が乗っても救命梯子14が曲げモ−メメントによって撓まないような、救命梯子14の構造力学上の強度を意味する。
【0019】
代表実施形態に係る船舶では、救命梯子14の上部に設けられた第1フック部147a及び第2フック部147b(
図6参照。)の先端部(本発明では「一方の端部」ともいう。)が、舷墻13Lに設けられた後述する第1及び第2固定手段に挿入される。代表実施形態に係る救命梯子14は格点部が鋼結されたラーメン(Rahmen)構造であるので耐荷力が強く、第1及び第2固定手段の上端の位置を支点として、救命梯子14は舷側外板部分12Lの面に対し相対的な距離が変わらないように、舷墻13Lに固定され、安定した登攀経路が用意される。
【0020】
即ち、舷墻13Lの第1及び第2固定手段の上端の位置を片持梁の支点としたとき、代表実施形態に係る救命梯子14は、救命梯子14の長手方向を力学的な腕の長さとして、登攀者の体重に起因した重力によって発生するモーメントによって実質的に撓まない機械的強度を有している。「実質的に撓まない」とは、登攀者の体重に依拠する重力のモーメントによって救命梯子14が撓む、撓量がmmオーダ以下の無視できる程度の微少量であることを意味する。
【0021】
図1から分かるように、救命梯子14は、舷墻13Lの上端面に設けられた第1及び第2固定手段の位置を支点の位置として固定したとき、救命梯子14の下部が、海等の水面よりも下に配置される長さに設定される。海等に落下した人は、舷側外板部分12Lに対して相対的に固定された剛性のある救命梯子14が目の前にあるので、自力で救命梯子14を容易に登攀することが可能になる。なお、舷側外板部分12Lに対して固定された救命梯子14に補強手すりを設け、補強手すりの下端が海等の水面付近まで延びていれば、海等に落下した人が自力で船上に上るさらなる手助けとなる。
【0022】
図1の矢印に示すように、海等の波が荒い場合には、船舶は、船首と船尾が大きく揺れる性質を有する。従って、緊急時において、海等に落下した人が救命梯子14を使ってスムーズに船上に上がれるように、救命梯子14は、船舶の揺れが最も少ない船舶の中央付近に配置することが好ましい。
【0023】
また、
図2に示すように、平常時においては、救命梯子14は、乗船者の邪魔にならない場所、例えば、船舶の操舵室(船橋)11の側壁に常備される。操舵室11の側壁に常備しておくことにより、救命梯子14の船舶内への配備忘れを確実に防止できる。ここで、平常時とは、緊急時以外を意味する。この場合、船舶が波により揺れたとしても、救命梯子14が大きく振れたり、又は落下したりしないようにすることが重要となる。なぜなら、このような事態が発生すると、救命梯子14が乗船者に当たって危害を及ぼす危険性があるからである。
【0024】
代表実施形態に係る船舶は、
図9に示すように操舵室11の左舷側の天井の一部に第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bが設けられている。そして、代表実施形態に係る救命梯子14の上部に設けられた第1フック部147a及び第2フック部147b(
図6参照。)の先端部(一方の端部)を操舵室11の天井の一部に設けられた第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bにそれぞれ挿入することで、救命梯子14が操舵室11の天井の一部に懸架される。第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bは貫通孔であるので、操舵室11の天井の一部として天井からせり出した庇に開孔するのが望ましい。側壁の内部側となる操舵室11の天井に貫通孔を開孔する場合は雨漏り等の問題があるので、密閉した雨樋を第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bに設ける必要がある。
【0025】
代表実施形態に係る船舶においては、平常時に、
図3に示すように操舵室11の側壁に救命梯子14を仮固定する必要上、救命梯子14の下端を一時的に固定する保持部15を操舵室11の側壁に設けておく。保持部15によって、救命梯子14の下端を仮固定することにより、救命梯子14は、上部と下部の2点で仮固定されるため、平常時の船舶の振動や揺れに対し、救命梯子14の振れ又は落下を最大限に抑制できる。
【0026】
操舵室11の側壁を仮固定位置として常備された救命梯子14は、平常時において、操舵室11の天井に上るための梯子として利用することもできる。例えば、操舵室11の天井に設けられたアンテナなどの設備を点検する場合とか、又は天井に補助的な操舵設備などが存在する場合において、この救命梯子14を利用することができれば、乗船者の利便性が更に向上する。
【0027】
図1〜
図3は、緊急時に、救命梯子14は、船舶の左舷側に船員等が落下した場合の例示であり、救命梯子14が落下した左舷側の舷墻13Lに取り付けられる。一方、船員等が右舷側に落下した場合は、救命梯子14を
図9に示した右舷側の舷墻13Rに固定する。このため、
図9に示すように、左舷側の舷墻13Lには本発明の「第1固定手段」を構成する第1嵌合パイプ132aと、本発明の「第2固定手段」を構成する第2嵌合パイプ132bが設けられているが、右舷側の舷墻13Rにも本発明の「第1固定手段」を構成する第3嵌合パイプ133bと本発明の「第2固定手段」を構成する第4嵌合パイプ133aが設けられている。
【0028】
なお、
図9では、操舵室11の左舷側の天井に第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bが設けられ、救命梯子14が左舷側の操舵室11の側壁に仮配置される場合を例示しているが、逆に救命梯子14は、右舷側の操舵室11の側壁に仮配置されても構わない。操舵室11の左舷側の側壁に救命梯子14が仮配置される場合であっても、右舷側の側壁に仮配置される場合であって、側壁に常備された救命梯子14を簡単に取り外して、船員等が落下した舷の側の第1及び第2固定手段に対して、耐荷力が強い剛性を有した救命梯子14を、即座に固定できる。このため、代表実施形態に係る救命梯子14は、落下した船員等が体力を消耗しないで登攀できる安定した足場を提供できる。このように、代表実施形態に係る救命梯子14は、折り畳みや変形ができない剛性を有した梯子ではあるが、平常時に邪魔にならない利便性と緊急時における安定性及び効率性を共に満足する両立性(コンパティビリティ)を有し、荒れた海であっても落下した人を迅速に救命可能である。
【0029】
(救命梯子の構造例)
図4〜
図8に示すように、代表実施形態に係る救命梯子14は、それぞれ金属等の剛性を有する材料からなり、上下方向に互いに平行に延びる第1支柱143a及び第2支柱143bと、第1支柱143a及び第2支柱143bの互いに平行な部分の間に剛接合で固定された第1踏桟(横桟)141a、第2踏桟141b、第3踏桟141c、……、第8踏桟141hとを備えて、梯子型の本体部(143a,143b,141a〜141h)を構成している。
【0030】
「剛接合」とは、溶接のように、第1踏桟141a〜第8踏桟141hと第1支柱143a若しくは第2支柱143bとの接合部が変形しないよう接合方法であり、構造力学的な変形を抑えた結合形式である。例えば、第1支柱143a、第2支柱143b及び第1踏桟141a〜第8踏桟141hを共に16mmφ等の金属パイプとし、互いに溶接で接続すればよい。或いは、金属パイプからなる第1踏桟141a〜第8踏桟141hを、各パイプ若しくはH型鋼からなる第1支柱143a及び第2支柱143bに溶接で接続してもよい。
【0031】
第1支柱143a、第2支柱143b及び第1踏桟141a〜第8踏桟141hを構成する剛性を有する材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金等が採用可能である。海の塩による錆の問題と軽量化を考慮した場合は、アルミニウムやアルミニウム合金等が好ましい。第1支柱143a及び第2支柱143bの互いに平行な部分の間に、互いに平行に配列されて、梯子型を構成している。第1踏桟141a〜第8踏桟141hのそれぞれの横方向に測った長さD
1=235〜255mm程度、代表的には長さD
1=248mm程度に選択できるが例示であり、この値に限定されるものではない。
【0032】
図4〜
図8では、第1支柱143a及び第2支柱143bは互いに平行に上下に伸びているが、
図10を用いて後述するように、第1支柱143a及び第2支柱143bは、少なくとも互いに平行に延びる部分を有していればよい。
図8では、8本の第1踏桟141a〜第8踏桟141hが示されているが例示に過ぎない。代表実施形態に係る救命梯子14の第1支柱143a及び第2支柱143bの長さに応じて適宜踏桟の本数は選択されるものであって、第1支柱143aと第2支柱143bの互いに平行に延びる部分の間に、梯子型を構成する複数の踏桟があればよい。また、代表実施形態に係る救命梯子14は、それぞれ金属等の剛性を有する材料からなる第1フック部147a及び第2フック部147bを備える。
【0033】
第1フック部147aは第1支柱143aの上端に金属学的に結合している。「金属学的に結合」とは、互いに異なる第1フック部147aと第1支柱143aとを溶接等で剛接合してもよく、一本のパイプを折り曲げ、その一方を「第1フック部147a」と定義し、残余の部分を「第1支柱143a」と定義するような一体の構造でも構わない。いずれにせよ、第1フック部147aと第1支柱143aの上端とは剛性を有して連続している。同様に、第2フック部147bは第2支柱143bの上端に金属学的に結合している。
【0034】
図1〜
図7等では、第1フック部147a及び第2フック部147bのそれぞれがL字型の鈎型形状である場合を例示しているが、例示の構造に限定されるものではない。例えば、第1フック部147a及び第2フック部147bのそれぞれは、逆U字型やアーチ状等の構造であっても構わない。
図4に着目すると、第1フック部147aは、第1支柱143aと平行となる方向において、下方に先端部が向かった第1先端嵌合部と、この第1先端嵌合部に水平部分(
図4において水平に見える部分)の一方の端部を接続し、水平部分の他方の端部を第1支柱143aの上端に、第1支柱143aの長手方向に直角となるように接続した第1接続部を有する。即ち、第1フック部147aは、鉛直部分である第1先端嵌合部と水平部分である第1接続部でL字型の鈎型構造をなす。第1フック部147aの全体の構造を総括すると、第1先端嵌合部側となる一方の端部が下方を向き、他方の端部が第1支柱143aの上端に固定された構造になる。
【0035】
第1フック部147aのL字型の構造と、第1フック部147aが第1支柱143aにL字型に結合した構造を合成すると、L字が連続したコの字型(クの字型)の鈎型形状になる。一方、第2フック部147bは、第2支柱143bと平行となる方向において、下方に先端部が向かった第2先端嵌合部と、この第2先端嵌合部に水平部分の一方の端部を接続し、水平部分の他方の端部を第2支柱143bの上端に、第2支柱143bの長手方向に直角となるように接続した第2接続部を有する。即ち、第2フック部147bは、鉛直部分である第2先端嵌合部と水平部分である第2接続部でL字型の鈎型構造をなす。第2フック部147bのL字型の構造と、第2フック部147bが第2支柱143bにL字型に結合した構造を合成すると、L字が連続したコの字型(クの字型)の鈎型形状になる。つまり、第2フック部147bの全体の構造としては、第2先端嵌合部側となる一方の端部が下方を向き、他方の端部が第2支柱143bの上端に固定された構造ということになる。
【0036】
更に、代表実施形態に係る救命梯子14は、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端に連続して固定された被保持部142を備える。
図8では被保持部142が矩形板状の場合を例示しているが、例示の構造に限定されるものではない。例えば、被保持部142は下に凸となる3角形、5角形、或いは半円等の板状でも構わない。ここで、ここで「板状」とは、少なくとも外形が「板状」であればよく、被保持部142の内部に穴や間隙が含まれていてもよい。又、被保持部142は
図3、
図4及び
図8に示した保持部15に容易に収納可能な構造であればよいので、機能的に板と等価な構造であればよい。機能的に板状という意味では、矩形の額縁状や、パイプ等の線状の矩形フレームが被保持部142の外形に沿って囲み、フレームの内部の空間が板状と見なせる態様でも構わない。
【0037】
図8では一枚の被保持部142が、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端に連続して固定された場合を例示しているが、
図8に例示した構造に限定されるものではない。例えば、分離された二枚の被保持部が、個別に、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端に連続して固定された構造でも構わない。二枚の被保持部が接続される場合も、二枚の被保持部のそれぞれは、3角形、4角形、5角形、或いは半円等の板状若しくはフレーム状等でも構わない。又、第1支柱143a及び第2支柱143bの下端部をそれぞれ楔状に絞って、二つの被保持部としてもよい。いずれにせよ、被保持部142は
図3、
図4及び
図8に示した保持部15に容易に収納可能な構造であればよい。
【0038】
図2に示したとおり、平常時においては、救命梯子14は操舵室11の側壁に設置されるので、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端は、被保持部142の位置が操舵室11の側壁側に向かって移動するように、操舵室11の側壁側に曲がっている。
図9に示したように、平常時において操舵室11の天井からせり出した庇に第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bが設けられている場合は、庇が操舵室11の側壁からせり出した距離分、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端は操舵室11の側壁から離れる。このため、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端に剛接合で固定された被保持部142が操舵室11の側壁から浮かないように、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端は、被保持部142を操舵室11の側壁側に向かった曲げている。
【0039】
代表実施形態に係る救命梯子14の第1支柱143a及び第2支柱143bの長さL
1は、舷墻13Lの上端面から海等の水面までの距離よりも大きいことが好ましいので、船舶の規模により長さL
1は異なる。例えば総トン数5トン程度の小型船舶であれば、L
1=1500〜2000mm程度に選択できる。また、左側の第1支柱143aには、第1連結部145aを介して第1補強手すり144aが剛接合で取り付けられ、右側の第2支柱143bには、第2連結部145bを介して第2補強手すり144bが剛接合で取り付けられる。第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bを設けることにより、格点部が剛結されたフィーレンディール(Vierendeel)トラス構造を実現し、曲げモーメントに対し構造力学的強度が強化される。第1補強手すり144aが第1のフィーレンディールトラスの上弦材となり、第1支柱143aが下弦材となる。同様に、第2補強手すり144bが第2のフィーレンディールトラスの上弦材となり、第2支柱143bが下弦材となる。
【0040】
代表実施形態に係る救命梯子14は、更に第1フック部147a及び第2フック部147b上には、それぞれ逆U字型のアーチとして設けられた第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bも備える。第1補強アーチ部146aは、フィーレンディールトラス構造を構成している第1補強手すり144aの上端と第1フック部147aの中央部を、それぞれ剛接合で固定するアーチ構造である。又、第2補強アーチ部146bは、フィーレンディールトラス構造を構成している第2補強手すり144bの上端と第2フック部147bの中央部をそれぞれ剛接合で固定するアーチ構造である。
図4に示すような半円アーチのアーチ構造により水辺反力と剛性の両方を高めて構造力学的強度を高めている。
【0041】
第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bの頂部から測った第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bの長さL
2は、舷墻13Lの上端面から海等の水面までの距離と同等であることが好ましい。例えば総トン数5トン程度の小型船舶において、長さL
1=1700mm程度に選択した場合は、長さL
2=1100〜1300mm程度の値、具体的にはL
2=1200mm程度の値に選択できる。長さL
2=1200mm程度の値に選択すれば、総トン数5トン程度の小型船舶から海中に落下した人は、第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bを用いて、船上に上がり動作が容易になる。第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bの長さL
2=1200mm程度の値に選択した場合において、第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bをなす半円の高さL
4=150〜170mm程度の値に選択すればよい。
【0042】
L字のカギ型をなす第1フック部147aの先端嵌合部は、
図9に示した舷墻13Lに設けられた第1固定手段としての第1嵌合パイプ132aに、第2フック部147bの先端嵌合部は、第2固定手段としての第2嵌合パイプ132bに挿入され固定される。第1嵌合パイプ132a及び第2嵌合パイプ132bは、第1フック部147a及び第2フック部147bの先端嵌合部と同様に、金属等の剛性を有する材料からなる。
【0043】
剛性を有する材料からなる第1フック部147aの先端嵌合部が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第1嵌合パイプ132aに挿入されることにより、第1フック部147aと第1嵌合パイプ132aはガタつくことなく、強固に結合される。第1フック部147aを、第1支柱143aと同じ外形16mmφの金属パイプを用いた場合、第1嵌合パイプ132aの内径を19mmφとすれば、片側クリアランスΔd=1.5mmとなる。同様に、剛性を有する第2フック部147bの先端嵌合部が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第2嵌合パイプ132bに挿入されることにより、第2フック部147bと第2嵌合パイプ132bはガタつくことなく、強固に結合される。この場合も、第2フック部147bを第2支柱143bと同じ外形16mmφの金属パイプであれば、第2嵌合パイプ132bの内径を19mmφに選択することにより、片側クリアランスΔd=1.5mmとなる。
【0044】
一方、第1フック部147aが舷墻13Rに設けられた第1固定手段としての第3嵌合パイプ133bを選択した場合は、第2フック部147bの先端嵌合部は第2固定手段としての第4嵌合パイプ133aを選択して挿入され固定される。第3嵌合パイプ133b及び第4嵌合パイプ133aは、第1フック部147a及び第2フック部147bの先端嵌合部と同様に、金属等の剛性を有する材料からなる。
【0045】
剛性を有する第1フック部147aの先端嵌合部が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第3嵌合パイプ133bに挿入されることにより、第1フック部147aと第3嵌合パイプ133bはガタつくことなく、強固に結合される。同様に、剛性を有する第2フック部147bの先端嵌合部が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第4嵌合パイプ133aに挿入されることにより、第2フック部147bと第4嵌合パイプ133aaはガタつくことなく、強固に結合される。
【0046】
舷墻13Lの上端面の幅方向に測った中央に、第1嵌合パイプ132aが設けられる場合であれば、第1フック部147aの水平部分の幅d
1は、舷墻13Lの上端面の幅の1/2程度に設定すれば、第1フック部147aは第1嵌合パイプ132aの位置の支点と舷墻13Lの舷側外板部分12L側の端部の支点の2箇所で舷墻13Lに固定されるので強固な固定が可能となる。又、舷墻13Lの上端面の幅方向に測った中央に第2嵌合パイプ132bが設けられていれば、第2フック部147bの幅d
1を舷墻13Lの上端面の幅の1/2程度に設定すれば、第2フック部147bは第2嵌合パイプ132bも位置と舷墻13Lの舷側外板部分12L側の端部の2箇所で舷墻13Lに固定される。
【0047】
同様に舷墻13Rの中央に第3嵌合パイプ133b及び第4嵌合パイプ133aが設けられている場合であれば、第1フック部147a及び第2フック部147bの幅d
1は舷墻13Rの上端面の幅の1/2程度に設定すれば、第1フック部147a及び第2フック部147bは舷墻13Rに2箇所の支点で固定され強固な固定になる。一方、舷墻13Lの上端面の中央に第1嵌合パイプ132a及び第2嵌合パイプ132bが設けられているとき、幅d
1を舷墻13Lの上端面の幅の1/2程度より大きめに設定すれば、第1フック部147a及び第2フック部147bはそれぞれ第1嵌合パイプ132a及び第2嵌合パイプ132bの1箇所の支点で舷墻13Lに固定される。
【0048】
同様に、舷墻13Rの上端面の中央に第3嵌合パイプ133b及び第4嵌合パイプ133aが設けられているとき、幅d
1を舷墻13Rの上端面の幅の1/2程度より大きめに設定すれば、第1フック部147a及び第2フック部147bはそれぞれ第3嵌合パイプ133b及び第4嵌合パイプ133aの1箇所の支点で舷墻13Rに固定される。既に説明したとおり、フィーレンディールトラス構造を構成している第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bを備えて曲げモーメントに強い構造としている。更に、第1補強手すり144a及び第2補強手すり144bの上端と第1フック部147a及び第2フック部147bの中央部をそれぞれ剛接合で固定する第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bをアーチ構造が構成されるように備えている。フィーレンディールトラス構造とアーチ構造を備えていることにより、代表実施形態に係る救命梯子14が1箇所の支点で舷墻13Lに固定される場合であっても、構造力学的に強い構造を実現できる。
【0049】
船舶の種類により舷墻13L及び舷墻13Rの上端面の幅がまちまちであり、第1フック部147a及び第2フック部147bの水平部分の幅d
1を一律に決定できない。しかしながら、
図3に示すように代表実施形態に係る救命梯子14は、操舵室11の側壁に仮固定しておくことを特徴とするので、それぞれの船舶の固有の寸法に合わせて、幅d
1を設計してカスタマイズすれば、2箇所の支点又は1箇所の支点で舷墻13L又は舷墻13Rに固定できるようにすることが可能になる。或いは、水平部分の幅d
1を任意の舷墻13L及び舷墻13Rの上端面の幅に合わせることが可能になるように、異なる幅d
1のいくつかの仕様を用意する方法もある。又は水平部分の幅d
1を可変とする機構を設けても良い。例えば総トン数5トン程度の小型船舶において、L
1=1700mm程度に選択した場合は、幅d
1=90〜110mm程度、代表的には水平部分の幅d
1=100mm程度に選択できる。
【0050】
多くの小型船舶の舷墻13L及び舷墻13Rは、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)或いはアルミニウム等の金属が用いられている。表1に示すFRPはガラスクロス充填ポリエステル成型品のデータである。表1に示すように、FRPの引張り強さや比抗張力は金属と同程度であるが、高速で衝撃を与えた場合の破壊試験で測定されるシャルピー衝撃値が金属より小さく、高速の衝撃に対して心配がある。表1には示していないが、FRPのヤング率は、繊維含有量V
f=0.6の場合で4,100kgf/mm
2位である。高張力鋼のヤング率は、21,000kgf/mm
2位で、高力アルミニウム合金のヤング率は、7,300kgf/mm
2位であるので、FRPは金属に比べて低剛性である。
【表1】
【0051】
舷墻13Lや舷墻13Rを構成するFRP等の厚さが10〜20mm程度の場合、第1嵌合パイプ132a〜第4嵌合パイプ133aの位置を片持梁の支点としたとき、体重100kg程度の登攀者の体重に起因した重力のモーメントに、第1嵌合パイプ132a〜第4嵌合パイプ133aの取り付け強度が不足する可能性がある。第1嵌合パイプ132a〜第4嵌合パイプ133aの舷墻13L及び舷墻13Rへの取り付け強度が不足すると、取り付けられた救命梯子14のぐらつき等が発生し、救助に支障をきたす場合がある。
【0052】
シャルピー衝撃値等の強度不足を補強するために、舷墻13Lの上端面には、第1嵌合パイプ132a及び第2嵌合パイプ132bの取り付け強度を補強するための第1の補強用金属板131a及び第2の補強用金属板131bを、舷墻13Lの上端面にビス留め等の手段で、それぞれ設けておくことが好ましい。同様に、舷墻13Rの上端面には、第3嵌合パイプ133b及び第4嵌合パイプ133aの取り付け強度を補強するための第3の補強用金属板134b及び第4の補強用金属板134aを、舷墻13Rの上端面にビス留め等の手段で、それぞれ設けておくことが好ましい。この場合、第1嵌合パイプ132aと第1の補強用金属板131aで本発明の「第1固定手段」が構成され、第2嵌合パイプ132bと第2の補強用金属板131bで本発明の「第2固定手段」が構成される。第1及び第2固定手段は、金属等の剛性を有する材料からなる。
【0053】
例えば、左舷側の第1固定手段は、第1の貫通孔と、左舷側の舷墻13Lの上端面の上に固定され第1の貫通孔と同軸同径の第2の貫通孔を有する第1の補強用金属板金属板131aと、第2の貫通孔の内径と同一の外形を有して第1の補強用金属板金属板131aに剛接合され、第1の貫通孔を貫通して第2の貫通孔から下方に伸びる第1嵌合パイプ132aを含む。一方、左舷側の第2固定手段は、舷墻13Lの上端面の他の位置に開孔された第3の貫通孔と、舷墻13Lの上端面の上に固定され第3の貫通孔と同軸同径の第4の貫通孔を有する第2の補強用金属板131bと、第4の貫通孔の内径と同一の外形を有して第2の補強用金属板131bに剛接合され、第3の貫通孔を貫通して第4の貫通孔から下方に伸びる第2嵌合パイプ132bを含む。
【0054】
同様に、第3嵌合パイプ133bと第3の補強用金属板134bで本発明の「第1固定手段」が構成され、第4嵌合パイプ133aと第4の補強用金属板134aで本発明の「第2固定手段」が構成される。右舷側の第1固定手段は、右舷側の舷墻13Rの上端面の他の位置に開孔された第5の貫通孔と、舷墻13Rの上端面の上に固定され第5の貫通孔と同軸同径の第6の貫通孔を有する第3の補強用金属板金属板134bと、第6の貫通孔の内径と同一の外形を有して第3の補強用金属板金属板134bに剛接合され、第5の貫通孔を貫通して第6の貫通孔から下方に伸びる第3嵌合パイプ133bを含む。右舷側の第2固定手段は、舷墻13Rの上端面の他の位置に開孔された第7の貫通孔と、舷墻13Rの上端面の上に固定され第7の貫通孔と同軸同径の第8の貫通孔を有する第4の補強用金属板134aと、第8の貫通孔の内径と同一の外形を有して第4の補強用金属板134aに剛接合され、第7の貫通孔を貫通して第8の貫通孔から下方に伸びる第4嵌合パイプ133aを含む。
【0055】
よって、剛性を有する材料からなる第1フック部147aの先端嵌合部が、左舷側の舷墻13Lに設けられた剛性を有する材料からなる第1固定手段の開孔部に挿入されて代表実施形態に係る船舶に固定される。同時に、剛性を有する材料からなる第2フック部147bの先端嵌合部が、左舷側の舷墻13Lに設けられた剛性を有する材料からなる第2固定手段の開孔部に挿入されて代表実施形態に係る船舶に固定される。同様に、剛性を有する材料からなる第1フック部147aの先端嵌合部が、右舷側の舷墻13Rに設けられた剛性を有する材料からなる第1固定手段の開孔部に挿入されて代表実施形態に係る船舶に固定される。同時に、剛性を有する材料からなる第2フック部147bの先端嵌合部が、右舷側の舷墻13Rに設けられた剛性を有する材料からなる第2固定手段の開孔部に挿入されて代表実施形態に係る船舶に固定される。
【0056】
代表実施形態に係る救命梯子14は、通常時には、操舵室11の外側の庇の部分に仮固定される。従って、船舶の操舵室11の天井から外側に張り出した庇には、舷墻13L及び舷墻13Rの上端面と同様に、第1フック部147a及び第2フック部147bの先端嵌合部をそれぞれ挿入可能な第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bが、貫通孔として開孔されている。なお、第1嵌合パイプ132a〜第4嵌合パイプ133aの舷墻13L及び舷墻13Rへの取り付け強度の場合とは異なり、救命梯子14を操舵室11の天井の一部をなす庇の部分に仮固定する場合は、一般に大きな重力モーメントは働かない。よって、操舵室11の天井の一部には、第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bが貫通孔等の態様で開孔されていればよく、第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bを保護するための金属板等は不要である。ただし、第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bを保護するための金属板等を有する態様も可能である。
【0057】
代表実施形態に係る救命梯子14の第1フック部147a及び第2フック部147bの先端嵌合部の長さL
3は、第1嵌合パイプ132a〜第4嵌合パイプ133aに対する抜き差しが行い易いこと、船舶の揺れ等によりぐらつかないこと、船舶の揺れ等により離脱し難いことを条件に、最適値が決定される。例えば総トン数5トン程度の小型船舶において、第1フック部147a及び第2フック部147bの水平部分の幅d
1=100mm程度に選択した場合は、先端嵌合部の長さL
3=140〜160mm程度、代表的には先端嵌合部の長さL
3=150mm程度に選択できる。
【0058】
操舵室11の外側の庇に開孔される第1の保持穴112a及び第2の保持穴112bは貫通孔であるので、第1フック部147a及び第2フック部147bの先端嵌合部の第1の保持穴112a等への抜き差しは一般に容易である。よって、操舵室11の外側の庇に開孔される第1の保持穴112a等に対する先端嵌合部の長さL
3の要請は緩和されている。
【0059】
また、救命梯子14を操舵室11の側壁に仮固定する場合、船舶が波により揺れたときに救命梯子14の下端が大きく振れて乗船者に危害を及ぼすことがないような工夫を検討する必要がある。そのために、代表実施形態に係る船舶では、
図3に示すように操舵室11の側壁に救命梯子14の下端の被保持部142を収納して固定する保持部15を設ける。保持部15は、
図4及び
図8に示すように、操舵室11の側壁面に接して操舵室11に固定される接面部151aと、接面部151aの下端で連続して矩形板状の被保持部142を収納するカバー部152aとを有する。接面部151aとカバー部152aとは互いに鋭角θで接触してV字型をなし、V字型の内部に被保持部142を収納する。
【0060】
例えば、
図8に示すようにカバー部152aの下端の横方向の長さD
3は、接面部151aの上端の横方向の長さD
2よりも短くしても同程度でもよい。第1踏桟141a〜第8踏桟141hのそれぞれの横方向に測った長さD
1=248mm程度に選択した場合であれば、接面部151aの上端の横方向の長さD
2=300〜320mm程度に選択できる。カバー部152aの下端の横方向の長さD
3を、接面部151aの上端の横方向の長さD
2よりも短くする設計をするのであれば、長さD
2=310mm程度に選択したとすれば、カバー部152aの下端の横方向の長さD
3=315〜330mm程度に選択できる。ただし、例示であって、カバー部152aの下端の横方向の長さD
3を、この値に限定されるものではない。
【0061】
例えば総トン数5トン程度の小型船舶において、長さL
1=1700mm程度に選択した場合には、第1支柱143a及び第2支柱143bのそれぞれの下端に固定される被保持部142の高さL
5=40〜60mm程度の値、具体的には
図4に示す高さL
5=50mm程度の値に選択できる。
図8に示すカバー部152aの縦方向の高さL
6は、被保持部142の高さL
5を考慮して設計すればよい。カバー部152aの縦方向の高さL
6に関しても、接面部151aの縦方向の高さL
7よりも短いような設計が可能である。例えば総トン数5トン程度の小型船舶において、第1踏桟141a〜第8踏桟141hのそれぞれの横方向に測った長さD
1=248mm程度、高さL
5=50mm程度の値、接面部151aの縦方向の高さL
7=75mm程度に選択した場合、選択カバー部152aの縦方向の高さL
6=60〜70mm程度に選択できるが、この値に限定されるものではない。
【0062】
図4に示した救命梯子14の下端に設けられた矩形板状の被保持部142の縦方向の高さL
5を、
図8に示したカバー部152aの長さL
6よりも長く、かつ接面部151aの長さL
7よりも短くすることで、被保持部142を接面部151aとカバー部152aの間に挿入し、救命梯子14の下端を操舵室11の側壁の所望の位置に仮固定できる。
【0063】
代表実施形態に係る救命梯子14は、その上端が操舵室11の天井からせり出した庇に固定され、その下端が操舵室11の側壁に仮固定される。よって、平常時において、船舶が波により揺れたとしても、それにより救命梯子14が大きく振れて乗船者に危害を及ぼすなどの危険性を排除できる。
【0064】
図4に示す第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bは、緊急時に、代表実施形態に係救命梯子14を舷墻13L又は舷墻13Rに固定する際に重要となる要素である。即ち、救命梯子14は、剛性を有する材料からなりた力学的強度を確保するために、例えば金属製であり、重量もある。救命梯子14の上端に第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bを設けているので、舷墻13L等に救命梯子14を設置する際に、誤って救命梯子14を船外に落としてしまうことが防止できる。緊急時に救命梯子14の設置者は、第1補強アーチ部146a及び第2補強アーチ部146bを両手で握ることで、救命梯子14をその上部からしっかりと支えることができ、救命梯子14を船外に落としてしまうことを防止できる。
【0065】
図4に示す第1補強アーチ部146aから分岐した第1補強手すり148a及び第1補強手すり148aの先端に設けられた第1握り部149、並びに第2補強アーチ部146bから分岐した第2補強手すり148b及び第2補強手すり148bの先端に設けられた第2握り部149bは、海等に落下した人が最終的に船内に戻る際に、それを補助するために有効となる要素である。第1補強手すり148a、第2補強手すり148b、第1握り部149及び第2握り部149bがないと、救命梯子14の上端まで上がってきた人が体力の消耗により再び船外の海等に落下してしまう危険性があるからである。
【0066】
(その他の実施形態)
本発明は上記の代表実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
例えば、
図10に示すその他の実施形態に係る救命梯子は、それぞれ剛性を有する材料からなり、互いに平行に延びる部分を有する第1支柱143c及び第2支柱143dと、それぞれ剛性を有する材料からなり、第1支柱143c及び第2支柱143dの互いに平行な部分の間に剛接合され、互いに平行に配列された第1踏桟141a、第2踏桟141b、第3踏桟141c、……、第7踏桟141gを備えて、梯子型の本体部(143c,143d,141a〜141g)を構成している。
図10では7本の第1踏桟141a〜第7踏桟141gが示されているが、
図8で説明したのと同様に、例示に過ぎず、第1支柱143c及び第2支柱143dの長さに応じて適宜本数は選択されるものであって、第1支柱143cと第2支柱143dの間に、梯子型を構成する複数の踏桟があればよい。その他の実施形態に係る救命梯子の第1支柱の上部143c及び第2支柱の上部143dの間隔が、他の部分に比べて広くなっている。
【0068】
図示を省略しているが、
図10に示す構造においても、一方の端部が下方を向き他方の端部が第1支柱143cの上端に固定された第1フック部147aと、剛性を有し、一方の端部が下方を向き他方の端部が第2支柱143dの上端に固定された第2フック部147bを、
図10の紙面の裏側に有している。
図10に示すその他の実施形態に係る救命梯子によれば、第1フック部147a及び第2フック部147bのそれぞれの一方の端部を、船舶の舷墻に設けられた剛性を有する第1及び第2固定手段の開孔部にそれぞれ挿入して船舶に固定すれば、海等に落下した人が第1踏桟141a〜第7踏桟141gの最上段の第1踏桟141aに到達したときに、船内に入り易くなる。
【0069】
図10に示すその他の実施形態に係る救命梯子は、
図4に示した構造と同様に、第1支柱143c及び第2支柱143dの下端に上端を固定された被保持部142を更に備える。よって、
図3に示したのと同様に、操舵室11の側壁に設けられる保持部15が、その他の実施形態に係る救命梯子の下端の凸形状の被保持部142と篏合する凹形状の収容部151bを有する収容部材152bであってもよい。この場合、収容部材152bは、例えば、ネジ等の第1保持部材153a及び第2保持部材53bにより操舵室11の側壁に取り付けられる。
図10に示したその他の実施形態に係る救命梯子によっても、平常時に邪魔にならない利便性と緊急時における安定性及び効率性を共に満足する両立性(コンパティビリティ)を有し、荒れた海であっても落下した人を迅速に救命可能であることは同様である。
【0070】
図5では、L字のカギ型をなす第1フック部147aの先端嵌合部が舷墻13Lに設けられた第1嵌合パイプ132aに挿入され、第2フック部147bの先端嵌合部が第2嵌合パイプ132bに挿入され固定される場合を例示した。
図11に示すその他の実施形態に係る船舶では、第1フック部147aの一方の端部である先端嵌合部が舷墻13Lに設けられた第1の固定用金属板131pの貫通孔に挿入されて固定され、第2フック部147bの一方の端部である先端嵌合部が第2の固定用金属板131qの貫通に挿入され固定されている点で、
図5に示した構造とは異なる。第1の固定用金属板131p及び第2の固定用金属板131qは、舷墻13Lの上端面にビス留め等の手段で固定される。
【0071】
その他の実施形態に係る船舶では、第1の固定用金属板131pの厚さt
1及び第2の固定用金属板131qの厚さt
2(=t
1)を、10〜30mmに厚くすることにより、第1の固定用金属板131pの貫通孔に第1嵌合パイプ132aと等価な機能を発生させ、第2の固定用金属板131qの貫通孔に第2嵌合パイプ132bと等価な機能を発生させている。よって、
図11に示すその他の実施形態に係る船舶では、第1嵌合パイプ132a及び第2嵌合パイプ132bは不要である。図示を省略しているが、右舷側の舷墻13Rの上端面に関しても、
図9に示した第3の補強用金属板134b及び第4の補強用金属板134aの代わりに、厚さt
1=t
2の第3の固定用金属板及び第4の固定用金属板をそれぞれ設けておけばよい。第3の固定用金属板及び第4の固定用金属板も、舷墻13Rの上端面にビス留め等の手段で固定される。
【0072】
第1の固定用金属板131p及び第2の固定用金属板131qは、第1フック部147a及び第2フック部147bと同様に金属等の剛性を有する材料からなる。剛性を有する材料からなる第1フック部147aの一方の端部(先端嵌合部)が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第1の固定用金属板131pの開孔部に挿入されることにより、第1フック部147aと第1の固定用金属板131pはガタつくことなく、強固に結合される。同様に、剛性を有する第2フック部147bの一方の端部(先端嵌合部)が、片側クリアランスΔd=1〜2mm程度の精度で、剛性を有する第2の固定用金属板131qの開孔部に挿入されることにより、第2フック部147bと第2の固定用金属板131qはガタつくことなく、強固に結合される。
【0073】
図示を省略した第3の固定用金属板及び第4の固定用金属板も同様に、金属等の剛性を有する材料からなる。剛性を有する材料からなる第1フック部147aの一方の端部(先端嵌合部)が、片側クリアランスΔd=0.5〜2mm程度、好ましくは片側クリアランスΔd=0.8〜1.5mm程度の精度で、剛性を有する第3の固定用金属の開孔部に挿入されることにより、第1フック部147aと第3の固定用金属はガタつくことなく、強固に結合される。同様に、剛性を有する第2フック部147bの一方の端部(先端嵌合部)が、片側クリアランスΔd=0.5〜2mm程度、好ましくは片側クリアランスΔd=0.8〜1.5mm程度の精度で、剛性を有する第4の固定用金属板の開孔部に挿入されることにより、第2フック部147bと第4の固定用金属板はガタつくことなく、強固に結合される。
【0074】
図11に示すその他の実施形態においては、左舷側の第1の固定用金属板131pが本発明の「第1固定手段」を構成し、第2の固定用金属板131qが本発明の「第2固定手段」を構成する。即ち、第1固定手段は、舷墻13Lの上端面に設けられた第1の貫通孔と、この第1の貫通孔と同軸、同径の第2の貫通孔を有する厚さt
1=5〜30mmの金属板である第1の固定用金属板131pで構成される。一方、第2固定手段は、舷墻13L上端面に設けられた第3の貫通孔と、この第3の貫通孔と同軸、同径の第4の貫通孔を有する厚さt
2=5〜30mmの金属板である第2の固定用金属板131qで構成される。
【0075】
同様に、右舷側の第3の固定用金属板が本発明の「第1固定手段」を構成し、第4の固定用金属板が本発明の「第2固定手段」を構成する。剛性を有する材料からなる第1フック部147aの一方の端部(先端嵌合部)が左舷側の舷墻13Lに設けられた剛性を有する材料からなる第1固定手段の開孔部に挿入されて船舶に固定される。同時に、剛性を有する材料からなる第2フック部147bの一方の端部(先端嵌合部)が左舷側の舷墻13Lに設けられた剛性を有する材料からなる第2固定手段の開孔部に挿入されて船舶に固定される。
【0076】
一方、剛性を有する材料からなる第1フック部147aの一方の端部(先端嵌合部)が右舷側の舷墻13Rに設けられた剛性を有する材料からなる第1固定手段の開孔部に挿入されて船舶に固定されてもよい。この場合は同時に、剛性を有する材料からなる第2フック部147bの一方の端部(先端嵌合部)が右舷側の舷墻13Rに設けられた剛性を有する材料からなる第2固定手段の開孔部に挿入されて船舶に固定される。
図11に示した第1及び第2固定手段を用いる場合であっても、平常時に救命梯子が邪魔にならない利便性と緊急時における救命梯子の安定性及び効率性を共に満足する両立性(コンパティビリティ)が達成可能であり、荒れた海であっても落下した人を、救命梯子を用いて迅速に救命可能であることは同様である。
【0077】
上記の代表実施形態の説明では、総トン数5トン程度の小型船舶を代表例として説明した。しかし、本発明は総トン数6トン程度以上の船舶であっても、例えば総トン数20トン以上、長さ10m以上の船舶であっても、船舶の規模に合わせて、第1支柱143a及び第2支柱143bの長さL
1を調整すれば同様に適用可能である。船舶の中央におけるキールの下面から上甲板下面までの垂直距離が長くなると、第1支柱143a及び第2支柱143bの長さL
1が長くなる。第1支柱143a及び第2支柱143bの長さL
1があまり長くなると、代表実施形態に係る救命梯子が操舵室の天井の高さとの関係で仮設置しにくくなる場合もある。又、長さL
1があまり長くなると代表実施形態に係る救命梯子が重くなり、救命梯子の移動等の操作が困難になる問題はあるものの、代表実施形態に係る救命梯子は総トン数100トン程度の船舶であっても同様に適用可能であることは、上記の代表実施形態の説明の趣旨から理解できるであろう。
【0078】
尚、上記の代表実施形態及び他の実施形態で説明したそれぞれの技術的思想の一部を適宜、互いに組み合わせることも可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【解決手段】剛性を有する梯子型の本体部(143a,143b,141a〜141h)と、剛性を有し、一方の端部が下方を向き他方の端部が第1支柱143aの上端に固定された第1フック部147aと、剛性を有し、一方の端部が下方を向き他方の端部が第2支柱143bの上端に固定された第2フック部147bと、第1支柱143a及び第2支柱143bの下端に上端を固定された被保持部142を備える。第1フック部147a及び第2フック部147bのそれぞれの一方の端部は、船舶の舷墻に設けられた剛性を有する第1及び第2固定手段の開孔部にそれぞれ挿入され、船舶に固定される。