【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を減らすため、天然資源の消費を抑制し、廃棄されるものを最小限にし、再生できるものは再利用するという循環型社会が提唱されている。この循環型社会への移行にともない、一般家庭や病院、施設等から出るごみは分別収集が進展し、ごみの排出量も年々減少傾向にある。ごみの排出量は、平成26年度は全国で4,432万トンであったものが平成27年度は全国で4,398万トンとなり、0.8%減っている。一般家庭や病院、施設等から出る可燃ごみは、ごみ焼却施設で焼却処理されている。ごみ焼却施設は全国に1,141施設あり、全体としてごみの処理能力は181,891トン/日となっている。
【0003】
ごみ焼却施設で焼却される可燃ごみの中には、生ごみ(厨芥類)や紙おむつが含まれている。可燃ごみのうち生ごみ(厨芥類)は約46%(千葉市平成28年データ)、紙おむつは約4.4%(中野区平成21年度家庭ごみ組成分析調査)含まれている。生ごみの約80%は水分であり、紙おむつも高分子吸収体が尿を吸収し水分が多く含まれている。しかも、紙おむつは、一般家庭や施設等から収集されてごみピット等に集積された貯留状態で、生ごみや雨水等から既に吸収している水分量に対して20〜40倍の水分を高分子吸収体が吸収するため、ごみ焼却施設において焼却炉に投入されるときには、重量が増加する。
【0004】
このように、水分を大量に含んだ生ごみや紙おむつを含む可燃ごみを焼却炉で焼却すると、含まれている水分によって焼却炉の焼却温度が低下するため、安定かつ効率良く焼却しようとすると焼却温度を維持する必要から大量の燃料を必要とする。また、水分を吸収し重量が増加した紙おむつは全体として嵩が増え、ごみの量が増えることになるので、大型の焼却炉を必要とする。
【0005】
そこで、特許文献1において、水分含有率が異なる廃棄物が持ち込まれても、安定かつ効率良く処理設備(焼却炉等)を運転することができる廃棄物処理方法および処理設備が提案されている。特許文献1では、水分含有率が高い廃棄物は第一集積所に集め、一旦乾燥した後、熱分解し、水分含有率が低い廃棄物は、第二集積所に集め、直接熱分解する。そして、水分含有率が高い廃棄物、水分含有率が低い廃棄物は熱分解後に、粉砕し、溶融炉で燃焼し不燃物を溶融スラグとして取り出している。したがって、特許文献1では、水分含有率の異なる廃棄物が持ち込まれても、安定かつ効率良く処理設備を運転することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1における廃棄物処理方法および処理設備では、水分含有率が高い廃棄物と低い廃棄物とを分けて、水分含有率の高い廃棄物を乾燥させて水分を除いているだけで、水分含有率の高い廃棄物も低い廃棄物も最終的に溶融炉にて燃焼させて処理しているので、ごみ処理施設として焼却炉(溶融炉)を必要とする。
【0008】
また、上記特許文献1における廃棄物処理方法および処理設備では、水分含有率が高い廃棄物も低い廃棄物も最終的に焼却処分しており、廃棄物を再利用することがない。このため、廃棄物に含まれる再利用可能な資源を無駄に処分していることになり、近年提唱されている循環型社会の構築を妨げる一因となる。
【0009】
そこで、本発明は、水分を多く含む可燃ごみの処理において、焼却炉を必要とせず、可燃ごみを焼却処分することなく再利用することができる可燃ごみの処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、水分を含む可燃ごみを処理する可燃ごみの処理システムであって、
該可燃ごみの処理システムが下水道の汚水を浄化し再生水として放流する下水道処理場内に設けられ、該可燃ごみの処理システムが、分別収集された前記可燃ごみを
前記下水道処理場にて処理された再生水を含む処理液を用いて消毒する消毒工程と、
前記消毒工程で消毒された
前記可燃ごみを脱水・乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で脱水・乾燥された可燃ごみを構成する素材を再利用する再利用工程と、からな
り、前記可燃ごみを消毒した後の処理液を廃棄可能に水処理して前記下水道処理場に排出するこ
とを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記消毒工程では、
前記処理液を用いて前記可燃ごみを
構成する素材ごとに前記可燃ごみを分解し、可燃ごみを消毒することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、
前記可燃ごみが水分を含む衛生用品であり、前記消毒工程で前記衛生用品を前記再生水と分解剤と消毒・殺菌剤とからなる処理液と共に撹拌して、前記衛生用品を構成する複数種の素材に分解し、前記乾燥工程で複数種の素材に分解した後に脱水・乾燥させてパルプとプラスチックを回収し、前記再利用工程で前記乾燥工程にて回収されたパルプが段ボールの原料であり、前記プラスチックが固形燃料の原料であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様は、
前記可燃ごみが水分を含む生ごみであり、前記消毒工程で前記生ごみを前記再生水と消毒・殺菌剤からなる処理液と共に撹拌し、前記乾燥工程で前記生ごみを乾燥させ、前記再利用工程で前記乾燥工程にて乾燥された生ごみを固形燃料の原料に再利用し、バイオマス燃料の原料にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水分を多く含んだ可燃ごみを消毒工程で消毒し、乾燥工程で脱水・乾燥させた後に、生ごみを構成する素材を再利用するので、水分を多く含む可燃ごみの処理において、焼却炉を必要とせず、可燃ごみを焼却処分することなく再利用することができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、ごみ焼却量およびごみ焼却施設の削減が可能となり、ごみ焼却施設の削減が可能となれば、高額なごみ焼却施設の建設費用、ごみ焼却施設の維持管理費も減額することが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、可燃ごみを衛生的に処理することができるとともに、ごみの減量化に貢献でき、可燃ごみを再利用することにより循環型社会を構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る可燃ごみの処理システムについて説明する。本発明の実施の形態に係る可燃ごみの処理システムは、水分を多く含む可燃ごみとして、生ごみや使用済み紙おむつを処理するシステムである。
【0020】
本実施の形態に係る可燃ごみの処理システムは、分別収集された可燃ごみを消毒する消毒工程と、消毒工程で消毒された可燃ごみを脱水・乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程で脱水・乾燥された可燃ごみを構成する素材を再利用する再利用工程と、からなる。消毒工程では、処理液を用いて可燃ごみを消毒し、可燃ごみを消毒した後の処理液を廃棄可能に水処理する。また、消毒工程では、処理液を用いて可燃ごみを構成する素材ごとに可燃ごみを分解し、可燃ごみを消毒し、分解した後の処理液を廃棄可能に水処理する。
【0021】
[使用済み紙おむつの処理システム]
以下、可燃ごみとして衛生用品である使用済み紙おむつを処理する使用済み紙おむつの処理システム1について説明する。
図1に示すように、分別収集工程2によって集積された使用済み紙おむつ3は、消毒工程4で消毒分解される。使用済み紙おむつ3を消毒分解するには、水と分解剤と消毒・殺菌剤からなる処理液と共に撹拌する。使用済み紙おむつ3を処理液と共に撹拌すると、使用済み紙おむつ3を構成する複数種の素材に分解される。使用済み紙おむつ3を処理液と共に撹拌するには、例えば、分離機等によって行う。
【0022】
分離機は、筒状の外胴分離槽と、この外胴分離槽内に回動可能に設けられた内胴分離槽とで概ね構成されている。内胴分離槽には、外周にパンチング等で形成された複数の穴が設けられている。この内胴分離槽内に、使用済み紙おむつ3を投入すると共に、処理液を供給し、内胴分離槽を回動させることで、内胴分離槽内で使用済み紙おむつ3を処理液と共に撹拌する。
【0023】
内胴分離槽の回動により内胴分離槽内で使用済み紙おむつ3が処理液と共に撹拌されると、使用済み紙おむつ3を構成する素材として、パルプ5、プラスチック6、その他の素材(テープ部分やゴム)に分解される。また、処理液によって高分子ポリマーも分解して、吸収している尿(汚水)が、放出され処理液と混ざり合う。次に、内胴分離槽内から処理液を排出すると、内胴分離槽内に固形物であるパルプ5、プラスチック6、その他の素材が残る。
【0024】
なお、内胴分離槽内から排水された使用後の処理液を含む排液中にもパルプが混入している。排液中のパルプについては、脱水機等を用いて水分と分離し、乾燥させて取り出すことができる。取り出したパルプは段ボール原料等に利用することができる。
【0025】
内胴分離槽内に残存した固形物であるパルプ5、プラスチック6、その他の素材は、乾燥工程7にて脱水・乾燥される。乾燥工程7にて脱水・乾燥されたパルプ5、プラスチック7は回収される。また、内胴分離槽内から排出された処理液は、水処理されて廃棄される。乾燥工程7にて、内胴分離槽内に残存した固形物であるパルプ5、プラスチック6、その他の素材を脱水・乾燥するには、例えば、選別機により行う。
【0026】
選別機は、筒状の外胴選別槽と、この外胴選別槽の内部に回動可能に設けられた内胴選別槽と、乾燥風を内胴選別槽内に供給する乾燥風供給装置とで概ね構成されている。内胴選別槽の外周には、パンチング等で形成された複数の穴が設けられている。この内胴選別槽内に、分離機によって分解された固形物であるパルプ5、プラスチック6、その他の素材が投入されるとともに、内胴選別槽内に乾燥風を供給し、内胴選別槽を回動させることで、パルプ5、プラスチック6、その他の素材を乾燥させる。
【0027】
この場合、分離機によって分解された状態の固形物であるパルプ5、プラスチック6、その他の素材には水分が残っており、パルプ5、プラスチック6、その他を分離することができないが、選別機によって脱水・乾燥させることで、パルプ5、プラスチック6、その他の素材を分離し、それぞれ回収することができる。
【0028】
乾燥工程7により回収されたパルプ5は再利用工程8において、段ボール17を製造する原料とされ、プラスチック6は再利用工程8において固形燃料(RPF−A)18を製造する原料とされる。また、その他の素材(紙おむつを構成する素材としてテープ部分、ゴム、不織布)22も再利用工程8において、固形燃料(RPF−A)18を製造する原料とされる。また、消毒工程で用いる分離機、乾燥工程で用いる選別機について、特願2017−065206、特願2017−065207において提案している使用済み衛生用品の処理装置用分離機、使用済み衛生用品の処理装置用選別機を用いることが好ましい。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態に係る使用済み紙おむつ3の処理システム1によれば、水分を多く含んだ使用済み紙おむつ3を消毒工程4で消毒し、乾燥工程7で脱水・乾燥させた後に、使用済み紙おむつ3を構成する素材を再利用するので、水分を含む使用済み紙おむつ3の処理において、焼却炉を必要とせず、使用済み紙おむつ3を焼却処分することなく再利用することができる。
【0030】
したがって、本実施の形態によれば、ごみ焼却量およびごみ焼却施設の削減が可能となり、ごみ焼却施設の削減が可能となれば、高額なごみ焼却施設の建設費用、ごみ焼却施設の維持管理費も減額することが可能となる。
【0031】
また、本発明によれば、使用済み紙おむつ3を衛生的に処理することができるとともに、ごみの減量化に貢献でき、使用済み紙おむつ3を再利用することにより循環型社会を構築することができる。
【0032】
次に、使用済み紙おむつ3の発熱量について表1を用いて説明する。使用前の紙おむつは、パルプ、高分子吸収体、プラスチックの素材で概ね構成され、し尿、水は含まれていない。この状態の大人用紙オムツの各素材の割合は、表1のA欄でに示すように、パルプが0.52%、高分子吸収体が0.20%、プラスチックが0.28%含まれている。紙おむつ1t(1000Kg)あたりの重量は、パルプが520Kg、高分子吸収体が200Kg、プラスチックが280Kgである。
【表1】
【0033】
水分比0%、すなわち、し尿、水分を吸収していない状態での使用前の紙おむつ1tあたりの発熱量は、4880Kcal となる。この発熱量は、単位重量(1Kg)あたりのパルプの発熱量を4.000Kcal 、単位重量(1Kg)あたりのプラスチックの発熱量を10.000Kcal と想定すると、プラスチックの発熱量は10.000Kcal ×0.28=2.800Kcal 、パルプの発熱量は4.000Kcal ×0.52=2.080Kcalとなり、プラスチックとパルプの発熱量の和で求められる。但し、高分子吸収材は発熱量に換算していない。
【0034】
病院、施設、家庭で使用され排出された段階での使用済み紙おむつ(1t)は、表1のB欄で示すように、し尿と水分を3000Kg吸収し、使用前の紙おむつに対して約4倍の4000kgの重量となる。病院、施設、家庭で使用された使用済み紙おむつの水分比は75%であり、このときの発熱量は、770Kcal /Kgとなる。この数値では、自燃、すなわち自然発火し燃焼することは難しく、使用済み紙おむつを焼却処分する際に、含まれている水分、3000kgが蒸発するまで燃焼することはない。
【0035】
病院、施設、家庭で使用され排出された後に、収集車で収集されごみピットに集積された段階での使用済み紙おむつ(1t)は、表1のC欄(スカマー状態「1」)で示すように、水分を15000Kg吸収し、使用前の紙おむつに対して約16倍の16000Kgの重量となる。この場合、収集車内、ごみピットでし尿以外の他の水分を吸収するため使用済み紙おむつの全重量は16倍になる。表1のC欄におけるスカマー状態とは、使用済み紙おむつがし尿以外の他の水分を吸収した状態の物質を呼称する。以下の説明では、使用済み紙おむつがし尿以外の他の水分を吸収した状態をスカマー状態と言う。
【0036】
表1のC欄で示すスカマー状態「1」では、水分比は93.75%であり、このときの発熱量は、−257Kcal /Kgとなる。この発熱量は、単位重量(1Kg)あたりのパルプの発熱量を4.000Kcal 、単位重量(1Kg)あたりのプラスチックの発熱量を10.000Kcal と想定すると、プラスチックの発熱量は10.000Kcal ×0.0175=175Kcal 、パルプの発熱量は4.000Kcal ×0.0325=130Kcalとなり、プラスチックとパルプの発熱量の和は、305Kcal である。水分の単位重量(1Kg)あたりの発熱量を600Kcalとすると水分の発熱量は−562Kcal /Kg となる。プラスチックとパルプの発熱量の和と水分の発熱量を加えると、−257Kcal /Kgとなる。この数値では自燃することはなく、使用済み紙おむつを焼却するために加熱することは、使用済み紙おむつが吸収している水分を蒸発させていることになる。
【0037】
使用済み紙おむつは、ごみピット等に集積された状態では、雨水や、他の生ごみ等の水分を吸収し、表1のD欄(スカマー状態「2」)、E欄(スカマー状態「3」)、F欄(スカマー状態「4」)で示すように、使用済み紙おむつの全重量が、使用前の紙おむつの重量(1t)に対して、26倍(26000Kg)、31倍(31000Kg)、51倍(51000Kg)となる。また、このときの発熱量は、−388Kcal /Kg、−423Kcal /Kg、となる。スカマー状態「2」、「3」、「4」の状態では、水分量は、96.15%、96.77%、98.04%であり、この数値では自燃することはなく、使用済み紙おむつを焼却するために加熱することは、使用済み紙おむつが吸収している水分を蒸発させていることになる。
【0038】
このように、使用済み紙おむつのように水分を多く含む(製品重量の4〜51倍)と、含んでいる水分を蒸発させるために多量の熱量を必要とするので、マイナス熱量となる現象が発生する。この状態では乾燥させるために助燃剤が必要となる。
【0039】
これに対して、本実施の形態に係る使用済み紙おむつの処理システムによれば、消毒工程4で消毒分解し、乾燥工程7で脱水乾燥させた後に、使用済み紙おむつ3を構成する素材を再利用するので、水分を多く含む使用済み紙おむつの処理において、焼却炉が不要になり、焼却するための燃料も不要になり、焼却施設も不要になる。したがって、各自治体に設けられているごみ焼却設備(清掃工場)の維持管理費も減額することが可能となる。さらに、使用済み紙おむつを構成する素材を再利用することによって資源の再利用が可能となり、循環型社会を構築することができる。
【0040】
[生ごみの処理システム]
次に、水分を多く含む可燃ごみとして生ごみ9を処理する生ごみの処理システム10について説明する。
図2に示すように、分別収集工程11によって分別収集された生ごみ9はビニール袋等に収納された状態で分別収集される。ビニール袋等に収納された生ごみは、消毒工程12において消毒される前に、破袋・破砕工程12aにて、ビニール袋内から取り出される。この場合、生ごみが収納されたビニール袋等内には、生ごみ以外のごみに形状の大きなものが混在していることがある。形状の大きなものが混在していると後工程において設備の損傷等が生じてしまう。このため、形状の大きなごみについては破袋後に破砕する。
【0041】
生ごみ9を消毒するには、例えば自動消毒脱水機に生ごみ9と、水と消毒剤からなる処理液を投入して、自動消毒脱水機または連続式消毒脱水機を稼動することで撹拌する。消毒工程12で消毒された生ごみ9は、乾燥工程13で乾燥される。乾燥された生ごみ9は、再利用工程14で、プラスチック15と紙16とが加えられて固形燃料(RPF)の原料にする。また、消毒工程12で消毒された生ごみ9は、脱水して乾燥されると、バイオマス燃料の原料になる。
【0042】
一般的に、調理くずなどの台所ごみである生ごみ9には塩素(塩化ナトリウム等の塩分)が含まれている。このような生ごみ9を、そのまま乾燥しバイオマス燃料の原料とすると、生ごみ9中の塩分がバイオマス燃料の燃焼時に揮発する。この揮発した塩分により、ボイラ等が損傷する。このため、本実施の形態では、消毒工程12において、自動消毒脱水機または連続式消毒脱水機により最終的に水洗することにより塩素の付着量を低減させ、乾燥工程13にて脱水することで塩素の付着量を低減させることができる。
【0043】
なお、生ごみ9を消毒工程12にて消毒すると、生ごみ9が、いわゆる「ねばねば」の状態になることもあるが、この場合には、乾燥させることで、「さらさら」の状態となる。
【0044】
また、生ごみ9を焼却しない場合は、自動消毒脱水機または連続式消毒脱水機によって、消毒工程12を経ることになるが、誤って生ごみ中に使用済み紙おむつを入れてしまうことも想定して、水と、分解剤と、消毒・殺菌剤からなる処理液を用いることが好ましい。
【0045】
本実施の形態に係る生ごみの処理システム10によれば、水分を含んだ生ごみ9を消毒工程12で消毒し、乾燥工程13で脱水・乾燥させた後に、生ごみ9を再利用するので、水分を含む生ごみ9の処理において、焼却炉を必要とせず、生ごみ9を焼却処分することなく再利用することができる。
【0046】
したがって、本実施の形態によれば、ごみ焼却量およびごみ焼却施設の削減が可能となり、ごみ焼却施設の削減が可能となれば、高額なごみ焼却施設の建設費用、ごみ焼却施設の維持管理費も減額することが可能となる。
【0047】
また、本発明によれば、生ごみ9を衛生的に処理することができるとともに、ごみの減量化に貢献でき、生ごみ9を再利用することにより循環型社会を構築することができる。
【0048】
[可燃ごみの処理システムの実施場所の例]
次に、上述した使用済み紙おむつの処理システム1、生ごみの処理システム10を下水処理場20で実施した例について説明する。
図3に示すように、下水処理場20内で使用済み紙おむつの処理システム1を実施した場合、消毒工程4で使用する水は下水処理場20の再生水21を用いる。すなわち、下水処理場20からの再生水と、分解剤と、消毒・殺菌剤とからなる処理液を用いて、使用済み紙おむつ3を消毒、分解処理する。また、消毒工程4使用済み紙おむつ3を消毒分解した後の処理液、つまり排水は、水処理を行った後、下水処理場20に排出する。
【0049】
また、上述した生ごみの処理システム10を下水処理場20で実施した場合も、生ごみ9を消毒する消毒工程12で使用する水を、下水処理場の再生水21を用いる。すなわち、下水処理場20からの再生水と、消毒・殺菌剤からなる処理液を自動消毒脱水機に投入することで生ごみ9を消毒する。また、消毒工程12で生ごみを消毒した後の処理液、つまり排水は、水処理を行った後、下水処理場20に排出する。さらに、分別収集された生ごみ9を脱水した後に焼却処分する場合は、脱水したときの排水を水処理した後に下水処理場20に排出する。
【0050】
このように、使用済み紙おむつの処理システム1、生ごみの処理システム10を下水処理場20で実施することにより、下水処理場20からの再生水を用いることができるので、いわゆる新水を用いる必要がなく、節水を図ることができる。また、処理した後の排水も下水処理場に排出することができるので、下水道等に排水を流すことなく下水処理場に排出し、処理液の処理が簡便になる。
【0051】
また、本発明に係る可燃ごみの処理システムの実施場所として、地下に設置することが好ましい。現状では、ごみを処理する清掃工場は、建設時に住民の反対運動があり、都市部になるほど建設が困難であった。清掃工場の建設を推し進めるため、高度な環境対策を施し、また、周辺住民への還元施設(余熱を利用した温浴施設、プール、屋外施設等)などを準備しないと住民の同意が得られないケースが多く見受けられる。
【0052】
また、一度建設を承認したからと言っても、焼却炉の更新、清掃工場の建て替えの時に再び反対運動が巻き起こる可能性があるため、清掃工場の更新や、立て替え工事は困難である。このような背景から、清掃工場の建設には莫大な費用を必要とするのが実情である。
【0053】
以上の理由から、本発明に係る可燃ごみの処理システムに転換することにより、焼却炉を持たない清掃工場とすることが可能となり、清掃工場の建設にあたり発生する上記の諸問題、課題を解決することが可能となる。
【0054】
さらに、本発明に係る可燃ごみの処理システムを実施するにあたっては、地下空間を利用し、使用済み紙おむつ、生ごみのリサイクル工場を建設することも地域住民の建設同意を得るには有効な手段である。
【0055】
地上では、緑豊かな環境で人々が健康に生活を送れ、地下空間ではこれまで建設に当たり総論賛成、各論反対の対象とされてきた清掃工場の代替え施設としてリサイクル工場を設置する。設置にあたっては、これまで建設反対の理由とされてきた水、大気による健康リスク、悪臭、騒音による不快感、生態系の環境変化、地下水への影響など特に十分に配慮する。
【0056】
他方、地下空間を利用すれば防災施設としての活用も検討することができる。地下において都市部の中心や人工密集地域にこうした安全性を重視したシェルター機能を持つ防災施設があれば、戦争、テロや地震、火災等の自然災害など予測不能な事態に陥ってもこの場所を開放することによって比較的安全に
避難することができる。
【0057】
これまでのごみ処理は、廃棄物処理法の下、自区内処理が大原則であったが、これらの可燃ごみの処理システムの転換は地域の垣根を越え、広域なリサイクルの実現と国民の安全を重視したものとなり、期待される公共施設になり得る。
【0058】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。