(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼材の表面に塗布される塗膜は、経年劣化によって消耗する。そのため、塗膜の消耗を早期に発見し、当該塗膜が消耗した領域に塗膜を再度塗布することにより、鋼材に錆が発生するのを防ぐ必要がある。塗膜は、複数層からなるのが一般的であり、その場合には塗膜のうち最も外側に位置する第1層の消耗を早期に発見する必要があるが、その発見を遠くから肉眼で行うことは困難であるという課題がある。具体的には、複数層からなる塗膜のうち最も外側に位置する第1層とその直下の第2層は、第2層の色彩による第1層の色彩への影響を抑えるために、両者の色彩として互いに近似した色彩が採用される。そのため、塗膜が劣化し第1層が剥がれて第2層が露出しても、第2層の露出を目視で確認することが難しい。また、第1層が薄くなっている状態も確認し難い。
【0006】
特許文献1には、塗膜面の剥がれ状態に基づいて塗膜の劣化状態を評価する旨、記載されているが、塗膜が残っている部分と塗膜が剥がれた部分の具体的な判別方法については、何等、開示されていない。
【0007】
また、特許文献1には、色の状態に基づいて塗膜の劣化状態を評価する旨、記載されているが、これは劣化に起因する塗膜面の色そのものの経時的変化を監視しているに過ぎず、塗膜が残っている部分と塗膜が剥がれた部分の具体的な判別方法については、何等、示唆していない。
【0008】
本発明の目的は、複数層からなる塗膜のうち最も外側に位置する層が消耗した状態を容易に検出することができる塗膜劣化検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本願の発明者等は、塗膜のうち最も外側に位置する第1層とその直下に位置する第2層の反射光の分光特性に着目して検討を進めた。その結果、特定の波長領域では、肉眼により認識される色彩の相違に比べて、第1層の反射光の分光特性と第2層の反射光の分光特性との間に著しい相違があることを見出した。さらに、第1層の厚みの減少に伴って当該第1層の透光度が高くなるために、第1層の反射光の分光特性よりも第2層の反射光の分光特性の影響が大きくなることも見出した。そして、このような特性を利用することにより、第1層の消耗を容易に検出することができるという知見を得るに至った。本発明は、このような知見に基づいて、完成されたものである。
【0010】
本発明による塗膜劣化検出方法は、母材に塗布され最も外側に位置する第1層とその直下に位置する第2層とを有する塗膜において前記第1層の劣化を検出する塗膜劣化検出方法であって、前記第1層と前記第2層の反射光のうち可視領域及び近赤外領域の少なくとも一方に含まれる波長領域の分光特性を取得する分光特性取得工程と、取得した前記第1層と前記第2層の分光特性に基づいて、前記第1層と前記第2層の分光特性を取得した波長領域のうち前記第1層と前記第2層の分光特性に生じる違いが他の波長領域よりも大きい検出用波長領域を設定する検出用波長領域設定工程と、前記検出用波長領域に含まれる波長領域の光を透過する検出用透過フィルタを準備する検出用透過フィルタ準備工程と、前記検出用透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像に基づいて、前記第1層の消耗を検出する検出工程とを含む。
【0011】
上記塗膜劣化検出方法においては、検出用透過フィルタを透過する光の波長領域において第1層の反射光の分光特性と第2層の反射光の分光特性との間に他の波長領域に比べて著しい相違が生じる。そのため、第2層の反射光の分光特性の影響力が第1層の厚みに応じて容易に変化する。その結果、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像から第1層の消耗(つまり、第1層の厚みの減少)を捉えることができる。
【0012】
前記検出工程は、好ましくは、前記検出用透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像に基づいて、前記第1層が剥がれるまで前記第1層が消耗することによって前記第2層が露出している状態を検出することを含む。
【0013】
この方法では、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像において第1層と第2層とを明確に区別することができるので、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像から第1層の消耗を捉えることができる。
【0014】
或いは、前記検出工程は、好ましくは、予め取得している前記第1層の厚みと前記第1層の反射光の分光特性が前記塗膜の画像に与える影響との関係に基づいて、前記検出用透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像から当初よりも厚みが小さくなった状態で残存している前記第1層の厚みを推定することを含む。
【0015】
この方法では、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像において第1層の厚みが異なる領域を明確に区別することができるので、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像から第1層の消耗を捉えることができる。
【0016】
検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像から第1層の厚みを推定する態様において、好ましくは、前記検出工程は、前記第1層の厚みと前記第1層の反射光の分光特性が前記塗膜の画像に与える影響との関係を取得することをさらに含む。
【0017】
この方法では、取得した関係を利用して、第1層の厚みを推定することができる。
【0018】
上記塗膜劣化検出方法において、好ましくは、前記分光特性取得工程では、前記第1層及び前記第2層の反射光のうち少なくとも前記近赤外領域に含まれる特定波長領域の分光特性を取得し、前記検出用透過フィルタ準備工程では、前記検出用透過フィルタとして、前記特定波長領域に含まれる波長領域の光を透過する近赤外光透過フィルタを準備し、前記検出工程では、太陽光が前記塗膜に対して直接又は間接的に照射される環境下において前記近赤外光透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像に基づいて、前記第1層の消耗を検出する。
【0019】
この方法では、太陽光を利用することにより、塗膜の反射光に近赤外光を含ませることができる。その結果、近赤外領域での第1層と第2層の分光特性の違いを利用して、第1層の消耗を検出することができる。
【0020】
上記塗膜劣化検出方法は、或いは、赤外線を照射可能な照明器具を準備し、前記照明器具を用いて前記塗膜に赤外線を照射する赤外線照射工程をさらに備え、前記分光特性取得工程では、前記第1層及び前記第2層の反射光のうち少なくとも前記近赤外領域に含まれる特定波長領域の分光特性を取得し、前記検出用透過フィルタ準備工程では、前記検出用透過フィルタとして、前記特定波長領域に含まれる波長領域の光を透過する近赤外光透過フィルタを準備し、前記検出工程では、前記照明器具から前記塗膜に赤外線が照射される環境下において前記近赤外光透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像に基づいて、前記第1層の消耗を検出する。
【0021】
この方法では、太陽光が照射されない環境下においても、照明器具からの赤外線の照射によって塗膜の反射光に近赤外光を含ませることができるので、太陽光の有無にかかわらず、近赤外領域における第1層と第2層との分光特性の違いを利用して、第1層の消耗を検出することができる。
【0022】
上記塗膜劣化検出方法は、好ましくは、取得した前記第1層と前記第2層の分光特性に基づいて、前記第1層と前記第2層の分光特性を取得した波長領域のうち前記検出用波長領域よりも前記第1層と前記第2層の分光特性に生じる違いが小さい比較用波長領域を設定する比較用波長領域設定工程と、前記比較用波長領域に含まれる波長領域の光を透過する比較用透過フィルタを準備する比較用透過フィルタ準備工程とをさらに備え、前記検出工程では、前記検出用透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像と前記比較用透過フィルタを通じて撮影された前記塗膜の画像とを比べることによって、前記第1層の消耗を検出する。
【0023】
この方法では、検出用波長領域での塗膜の画像と、検出用波長領域よりも第1層と第2層の分光特性の違いが小さい比較用波長領域での塗膜の画像とを比較することにより、検出用波長領域での塗膜の画像のみを参照する場合と比べて、第1層の消耗をより確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による塗膜劣化検出方法においては、第1層の消耗を容易に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳述する。
【0027】
本発明の実施の形態による塗膜劣化検出方法は、防食の対象となる母材としての鋼材の表面に塗布された複数層の塗膜の劣化を検出するための方法である。鋼材は、構造物を構成する部材に用いられる。構造物は、例えば、地面等に設置される。構造物は、例えば、設置後にその機能を維持しながら撤去することが可能なものであってもよいし、設置後にその機能を維持しながら撤去することが不可能なものであってもよい。構造物は、例えば、橋梁であってもよいし、気体や液体を貯蔵する貯蔵タンクであってもよいし、気体や液体を輸送する配管であってもよい。
【0028】
図1を参照しながら、鋼材10の表面に塗布された塗膜20について説明する。
図1は、鋼材10及び塗膜20を示す模式図である。
【0029】
鋼材10は、例えば、橋梁を構成する部材に用いられる。鋼材10は、太陽光が直接又は間接的に照射される環境に存在している。
【0030】
塗膜20は、鋼材10の表面に塗布されて、鋼材10の表面に錆が発生するのを抑制している。塗膜20は、複数層からなり、犠牲防食層21と、下塗層22と、中塗層23と、上塗層24とを含む。
【0031】
ここで、上塗層24は、塗膜20のうち最も外側の位置する層、つまり、第1層である。そのため、上塗層24は、鋼材10が存在する環境の影響を受けて最初に劣化する。上塗層24の劣化因子は、例えば、上塗層24に照射される太陽光や、風によって上塗層24に衝突する微細な粒子等である。
【0032】
中塗層23は、第1層としての上塗層24の直下に位置する層、つまり、第2層である。中塗層23の色彩は、上塗層24の色彩と類似している。これにより、上塗層24の色彩が中塗層23の色彩の影響を受け難くなっている。つまり、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出した状態を目視で見分けることが困難になっている。
【0033】
以下、塗膜20を構成する複数(本実施の形態では、4つ)の層について説明する。
【0034】
犠牲防食層21は、鋼材10の表面を直接覆っており、鋼材10の表面を保護している。犠牲防食層21は、鋼材10よりも先に腐食するように、鋼材10よりもイオン化傾向が大きく設定されている。つまり、犠牲防食層21は、電気的な防食作用により、優れた防食性を有している。犠牲防食層21は、鋼材10の表面における錆の発生を抑制する下地として機能する。犠牲防食層21は、例えば、無機ジンクリッチペイントである。
【0035】
犠牲防食層21は、鋼材10によって構成される構造物が設置された状態では、塗り替えることが困難である。そこで、犠牲防食層21の劣化を防止するために、下塗層22が犠牲防食層21を覆っている。
【0036】
下塗層22は、犠牲防食層21を直接覆うことにより、犠牲防食層21を保護している。下塗層22は、耐水性等を有している。下塗層22は、犠牲防食層21よりも大きな厚みを有している。下塗層22は、例えば、エポキシ樹脂塗料である。
【0037】
中塗層23は、上塗層24と下塗層22の間に位置し、上塗層24と下塗層22とを接着する接着剤として機能する。中塗層23は、下塗層22を覆っている。中塗層23は、下塗層22よりも薄い厚みを有している。中塗層23の色彩は、上塗層24の色彩に与える影響が少なくなるように、上塗層24の色彩と類似する色彩に設定されている。中塗層23は、例えば、エポキシ樹脂塗料である。
【0038】
上塗層24は、塗膜20を構成する複数(本実施の形態では、4つ)の層において最も表側に位置している。つまり、塗膜20において環境の影響を受けやすいのは、上塗層24である。別の表現をすれば、塗膜20において最初に劣化するのは、上塗層24である。そのため、上塗層24は、他の層よりも優れた耐候性を有している。つまり、上塗層24は、他の層よりも劣化し難くなっている。上塗層24は、中塗層23を覆っている。上塗層24は、中塗層23よりも僅かに薄い厚みを有している。上塗層24は、例えば、フッ素樹脂塗料であってもよいし、ポリウレタン樹脂塗料であってもよい。
【0039】
このような塗膜20の劣化検出方法について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、太陽光が直接又は間接的に照射される環境下における塗膜20の劣化検出方法を示すフローチャートである。
【0040】
本実施の形態では、塗膜20の劣化検出の際には、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出しているか否かが確認される。ここで、上記のように、中塗層23の色彩は上塗層24の色彩と類似しているため、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を目視で見つけることは難しいが、本実施の形態による塗膜20の劣化検出方法によれば、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を容易に検出することができる。具体的に、本実施の形態による塗膜20の劣化検出方法は、特定の波長領域における上塗層24と中塗層23の分光特性の著しい相違を利用することにより、上塗層24と中塗層23の色彩上の近似に関わらず、その明確な判別を可能にする。
【0041】
塗膜20の劣化検出方法は、分光特性取得工程S11と、波長領域設定工程S12と、フィルタ準備工程S13と、検出工程S14とを備える。これらの工程は、この順番で実施される。以下、これらの工程について説明する。
【0042】
分光特性取得工程S11は、上塗層24と中塗層23の反射光のうち可視領域及び近赤外領域の少なくとも一方に含まれる波長領域の分光特性を取得する工程である。本実施の形態では、分光特性取得工程S11は、上塗層24及び中塗層23の反射光のうち少なくとも近赤外領域に含まれる特定波長領域の分光特性を取得する工程である。なお、近赤外領域は、例えば、光の波長が800nm〜2500nmの領域である。
【0043】
上塗層24と中塗層23の分光特性は、例えば、分光光度計によって上塗層24と中塗層23のサンプルを測定することによって得られる。分光特性の取得に際しては、例えば、拡散反射法が用いられる。
【0044】
図3は、分光特性取得工程S11にて取得する上塗層24と中塗層23の近赤外領域における分光特性の一例を示すグラフである。
図3は、上塗層24と中塗層23の拡散反射法スペクトルを示している。
図3において、横軸は波長(単位:nm)を示しており、縦軸は吸光度を示している。
図3において、グラフ1は上塗層24の分光特性を示しており、グラフ2は中塗層23の分光特性を示している。
【0045】
上塗層24と中塗層23の分光特性の違いは、上塗層24と中塗層23の各々の成分に起因する。つまり、上塗層24と中塗層23の各々の成分が全く同じでない限り、上塗層24と中塗層23の分光特性の違いは、何れかの波長領域に生じる。分光特性の違いに影響を与える成分は、例えば、顔料、樹脂及び添加剤等の塗膜成分である。なお、塗膜成分とは、塗料の成分のうち、塗料が乾燥した後も塗膜として残る成分である。
【0046】
波長領域設定工程S12は、フィルタ準備工程S13において準備される透過フィルタが透過する光の波長領域を決める際の基準となる波長領域を設定する工程である。波長領域設定工程S12は、分光特性取得工程S11において取得した上塗層24及び中塗層23の分光特性に基づいて行われる。
【0047】
波長領域設定工程S12は、検出用波長領域設定工程S121と、比較用波長領域設定工程S122とを含む。検出用波長領域設定工程S121は、分光特性取得工程S11において取得した上塗層24及び中塗層23の分光特性に基づいて、当該分光特性を取得した波長領域のうち上塗層24と中塗層23の分光特性に生じる違いが他の波長領域よりも大きい検出用波長領域を設定する工程である。比較用波長領域設定工程S122は、分光特性取得工程S11において取得した上塗層24及び中塗層23の分光特性に基づいて、当該分光特性を取得した波長領域のうち検出用波長領域よりも上塗層24と中塗層23の分光特性に生じる違いが小さい比較用波長領域を設定する工程である。上塗層24と中塗層23の分光特性に生じる違いとは、例えば、上塗層24と中塗層23の吸光度の差分である。
【0048】
図3に示す分光特性の場合、検出用波長領域として波長が1500nmよりも短い領域が設定され、比較用波長領域として波長が1500nmよりも長い領域が設定される。その理由は、以下のとおりである。
【0049】
図3に示すように、上塗層24と中塗層23の分光特性は、波長が約1500nmである位置を境にして大きく異なっている。具体的には、波長が1500nmよりも長い領域では、上塗層24と中塗層23の吸光度の差分が小さく、上塗層24と中塗層23が同じような分光特性を示している。つまり、波長が1500nmよりも長い領域では、上塗層24と中塗層23が略同じ明るさに見える。これに対して、波長が1500nmよりも短い領域では、波長が1500nmよりも長い領域と比べて、上塗層24と中塗層23の吸光度の差分が大きく、上塗層24と中塗層23が全く異なる分光特性を示している。具体的には、上塗層24の吸光度が、中塗層23の吸光度と比べて、かなり大きくなっている。つまり、波長が1500nmよりも短い領域では、上塗層24が中塗層23よりも暗く見える。
【0050】
そこで、検出用波長領域は、上塗層24と中塗層23の吸光度の差分が大きい波長領域、つまり、波長が1500nmよりも短い領域に設定される。また、比較用波長領域は、上塗層24と中塗層23の吸光度の差分が小さい波長領域、つまり、波長が1500nmよりも長い領域に設定される。
【0051】
フィルタ準備工程S13は、波長領域設定工程S12において設定された波長領域に含まれる波長領域の光を透過する透過フィルタを準備する工程である。透過フィルタは、新たに製造してもよいし、既に製造されているものから適当なものを選択してもよい。
【0052】
フィルタ準備工程S13は、検出用透過フィルタ準備工程S131と、比較用透過フィルタ準備工程S132とを含む。検出用透過フィルタ準備工程S131は、検出用波長領域設定工程S121において設定された検出用波長領域に含まれる波長領域の光を透過する検出用透過フィルタを準備する工程である。比較用透過フィルタ準備工程S132は、比較用波長領域設定工程S122において設定された比較用波長領域に含まれる波長領域の光を透過する比較用透過フィルタを準備する工程である。
【0053】
図3に示す分光特性の場合、検出用透過フィルタとして、波長が1450nmよりも短い領域の光を透過する透過フィルタが準備され、比較用透過フィルタとして、波長が1400nmよりも長い領域の光を透過する透過フィルタが準備される。
【0054】
検出工程S14は、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像と比較用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像とを比べることによって、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を検出する工程である。塗膜20の画像は、カメラによって撮影される。カメラは、例えば、透過フィルタが透過する光の波長領域に応じて、適当なものが使用される。例えば、透過フィルタが近赤外領域の光を透過するのであれば、カメラとして赤外線カメラが採用される。上塗層24と中塗層23の違いは、例えば、目視で確認してもよいし、撮影した塗膜20の画像に対して適当な画像処理を行うことで確認してもよい。
【0055】
図4、
図5及び
図6を参照しながら、試験片を用いて、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を検出した結果について説明する。
図4は、何れの透過フィルタも使用せずに撮影された試験片の画像を示す。
図5は、検出用透過フィルタを通じて撮影された試験片の画像を示す。
図6は、比較用透過フィルタを通じて撮影された試験片の画像を示す。
【0056】
図4を参照して、試験片のうち、横幅が広い部分(図中の上側部分)の塗膜は上塗層24と同じであり、横幅が狭い部分(図中の下側部分)の白色の部分の塗膜は中塗層23と同じである。
【0057】
図5に示す画像(つまり、検出用透過フィルタを通じて撮影された試験片の画像)は、
図4や
図6に示す画像と比べて、上塗層24と中塗層23の違いが明確である。つまり、検出用透過フィルタを用いた場合(
図5参照)には、検出用透過フィルタを用いない場合(
図4参照)と比べて、上塗層24と中塗層23が容易に判別可能である。また、検出用透過フィルタを通じて撮影された画像(
図5参照)と比較用透過フィルタを通じて撮影された画像(
図6参照)とを比べることにより、上塗層24と中塗層23をより確実に判別可能である。
【0058】
このような塗膜20の劣化検出方法においては、検出用透過フィルタを透過する光の波長領域において上塗層24と中塗層23の分光特性の違いが他の波長領域よりも大きくなっている。そのため、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜20の画像では、肉眼で認識される上塗層24と中塗層23の色彩の相違に比べて、上塗層24と中塗層23との違いが著しく明瞭である。つまり、上記方法は、上塗層24と中塗層23が同じような色彩を有している場合であっても、上塗層24と中塗層23を容易に区別することを可能にする。
【0059】
また、このような塗膜20の劣化検出方法においては、太陽光が直接又は間接的に鋼材10に照射される環境下で行われるため、近赤外領域における上塗層24と中塗層23の分光特性の違いを利用して、上塗層24と中塗層23を判別することができる。
【0060】
また、このような塗膜20の劣化検出方法においては、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出していることを検出する際に、検出用波長領域での塗膜の画像と、検出用波長領域よりも上塗層24と中塗層23の分光特性の違いが小さい比較用波長領域での塗膜の画像とを比較している。そのため、上塗層24と中塗層23をより確実に判別することができる。
【0061】
[実施の形態の変形例1]
図7を参照しながら、太陽光が鋼材10に対して直接又は間接的に照射されない場合に、近赤外領域における上塗層24と中塗層23の分光特性の違いを利用して、中塗層23の露出を検出するための塗膜劣化検出方法について説明する。
図7は、このような塗膜劣化検出方法を示すフローチャートである。
【0062】
本変形例に係る塗膜劣化検出方法は、上記実施の形態に係る塗膜劣化検出方法と比べて、赤外線照射工程S10をさらに備える。赤外線照射工程S10は、塗膜20の反射光が近赤外光を含むように、赤外線を照射可能な照明器具を準備し、当該照明器具を用いて塗膜20に赤外線を照射する工程である。赤外線照射工程S10による赤外線の照射は、検出工程S14が行われるときに実施されていればよい。つまり、赤外線照射工程S10は、検出工程S14と同時に、或いは、それよりも前から行われる。
図7に示す例では、赤外線照射工程S10は、検出工程S14の直前に行われる。なお、赤外線を照射可能な照明器具は、例えば、ハロゲンヒータ、キセノンヒータ、クウォーツヒータ等である。
【0063】
[実施の形態の変形例2]
上記実施の形態では、上塗層24が剥がれる(つまり、上塗層24が消失する)まで上塗層24が消耗することによって中塗層23が露出している状態を検出しているが、上塗層24の厚みが小さくなっている状態を検出してもよい。
【0064】
この場合、検出工程は、上塗層24の厚みと上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響との関係に基づいて、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜20の画像から当初よりも厚みが小さくなった状態で残存している上塗層24の厚みを推定することと、推定した上塗層24の厚みから塗膜20の劣化を判定することとを含む。
【0065】
上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響とは、塗膜20の画像において上塗層24の厚みの指標となり得るものである。塗膜20の画像において上塗層24の厚みの指標となり得るものは、例えば、上塗層24の反射光の強度である。上塗層24の反射光の強度は、例えば、塗膜20の画像において上塗層24の輝度として現れる。
【0066】
上塗層24の厚みと上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響との関係は、例えば、上塗層24の厚みが異なる複数の領域と中塗層23が露出している領域とを有するサンプルを用いて各々の領域において上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響を測定し、各々の領域における上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響と上塗層24の厚みとの関係を調べることによって取得することができる。
【0067】
上塗層24の厚みと上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響との関係は、検出工程の前に取得していてもよいし、検出工程にて取得してもよい。
【0068】
推定した上塗層24の厚みから塗膜20の劣化を判定する際の基準は、例えば、推定した上塗層24の厚みが当初の上塗層24の厚みの半分以下になったときである。
【0069】
図8及び
図9を参照しながら、上塗層24の厚みと上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響である当該画像における上塗層24の輝度値との関係の一例について説明する。
図8は、検出用透過フィルタを用いてハロゲンランプの光が照射される試験片30に形成された複数の領域31−34を示す説明図である。試験片30は、中塗層23が露出している領域31と、中塗層23を覆う上塗層24の厚みが異なる複数(本実施の形態では、3つ)の領域32、33、34を有する。領域32における上塗層24の厚みは14μmであり、領域33における上塗層24の厚みは20μmであり、領域34における上塗層24の厚みは25μmである。なお、
図8では、複数の領域32、33、34の各々に網目を付している。上塗層24の厚みが大きくなるほど、網目が大きくなっている。
図9は、
図8に示す線分SL上での上塗層24の反射光の分光特性が塗膜20の画像に与える影響である当該画像における上塗層24の輝度値を示すグラフである。
【0070】
図9に示すように、上塗層24の厚みが異なると上塗層24の輝度値が変化する。つまり、上塗層24の厚みと上塗層24の輝度値との間に何らかの相関関係が存在する。この点について、以下に説明する。なお、以下の説明は概念的なものである。
【0071】
上塗層24に照射される光のエネルギーをEとし、上塗層24の反射率、吸収率及び透過率をそれぞれρ
1、α
1及びτ
1とし、中塗層23の反射率、吸収率及び透過率をそれぞれρ
2、α
2及びτ
2とする。
【0072】
この場合、上塗層24で反射される光のエネルギーE1は、以下の式(1)で表される。
E1=ρ
1E (1)
【0073】
また、上塗層24に入射して中塗層23で反射された後に上塗層24から出射する光のエネルギーE2は、以下の式(2)で表される。
E2=ρ
2(τ
1E)−α
1{ρ
2(τ
1E)} (2)
【0074】
塗膜20の画像における上塗層24の輝度値は、上記エネルギーE1及びE2を合算したものと相関関係がある。この相関関係は、例えば、1次関数や2次関数等を用いて表すことができる。
【0075】
ここで、上記エネルギーE2を表す式(2)に含まれる上塗層24の吸収率α
1及び透過率τ
1は、上塗層24の厚みに依存する。つまり、上記エネルギーE2は、上塗層24の厚みに応じて変化する。そのため、塗膜20の画像における上塗層24の輝度値は、上塗層24の厚みに応じて変化する。塗膜20の画像における上塗層24の輝度値と上塗層24の厚みとの相関関係は、例えば、1次関数や2次関数等を用いて表すことができる。
【0076】
本変形例では、検出用透過フィルタを用いて撮影された塗膜20の画像から上塗層24の輝度値を取得し、取得した輝度値と上塗層24の厚みとの相関関係に基づいて、上塗層24の厚みを推定することができる。また、推定した上塗層24の厚みから塗膜20の劣化を判定することができる。
【0077】
なお、本変形例は、上塗層24の厚みと上塗層24の輝度値との間に存在する相関関係を予め取得したうえで上塗層24の厚みを推定する態様に限定されない。例えば、上塗層24の厚みと上塗層24の輝度値との間に存在する相関関係を予め取得したうえで上塗層24の輝度値から上塗層24の消耗具合を推定してもよい。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、上述の実施の形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0079】
例えば、上記実施の形態では、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像と比較用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像とを比べることによって、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を検出していたが、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像だけを用いて、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を検出してもよい。なお、上塗層24が剥がれて中塗層23が露出している状態を検出するに際して、検出用透過フィルタを通じて撮影された塗膜の画像だけを用いるのであれば、比較用波長領域を設定する必要はなく、比較用透過フィルタを準備する必要もない。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、近赤外領域における上塗層24と中塗層23の分光特性の違いを利用して、中塗層23の露出を検出していたが、可視領域における上塗層24と中塗層23の分光特性の違いを利用して、中塗層23の露出を検出してもよい。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、塗膜が第1層(上塗層24)と第2層(中塗層23)以外にも塗膜層(下塗層22及び犠牲防食層21)を有する構成であったが、塗膜は第1層と第2層だけを有する構成であってもよい。