(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
〔羽毛製品の再生システム〕
図1は、本発明の一実施形態に係る羽毛製品の再生システムを説明する模式図である。本実施形態に係る羽毛製品の再生システムは、羽毛製品の再生に係る各処理を処理袋ごと(羽毛を処理袋に収容したまま)行う点、及び羽毛を乾燥させる工程をプレ乾燥工程と本乾燥工程とに分離して、本乾燥時に排出される廃熱をプレ乾燥に利用する点に特徴がある。以下、本発明に係る羽毛製品の再生処理を羽毛布団の例に基づいて説明するが、本発明は充填材料として羽毛が使用された枕やクッション等、羽毛布団以外の羽毛製品にも適用可能である。
羽毛製品の再生システム1は、羽毛布団A(羽毛製品:
図3参照)を解体して羽毛布団に充填されていた羽毛を取り出して処理袋Bに収容する解体部10、羽毛を洗浄・脱水する洗濯機(洗浄・脱水手段)50、羽毛を乾燥させる乾燥部(乾燥手段)60、羽毛を新規な羽毛布団用の側生地Cに充填する充填部90とを備える。
【0010】
<解体部>
解体部10は、羽毛布団を解体して羽毛を取り出す解体室11と、解体により羽毛布団から取り出された羽毛を回収する回収室31と、回収室31において羽毛から分離された塵埃を集塵する解体集塵室(解体・移送工程における除塵手段)41とを備える。解体室11と回収室31とは回収配管(移送手段)25を介して接続されており、回収室31と解体集塵室41とは除塵配管35を介して接続されている。
以下の説明においては、解体室11の側面のうち羽毛布団の解体作業時に作業者と対面する側面を正面として説明する。また、重力方向を高さ方向、羽毛布団の解体作業時に主として作業者の肩幅方向に沿う方向を幅方向、両方向に直交する方向を奥行き方向(作業者から見て前後方向)として説明する。
【0011】
解体室11は、羽毛布団解体用のスペースである解体空間13を形成する概略箱状の筐体15と、解体空間13内に略水平な姿勢で架設された解体ハンガー17と、解体ハンガー17の下方に配置されて羽毛布団から取り出された羽毛を回収室31に向けて搬送する搬送路(移送手段)19とを備える。
筐体15の正面上部には開口部21が形成されており、解体空間13の上部は開口部21を介して外部空間と連通する。
【0012】
解体ハンガー17は、解体対象である羽毛布団を二つ折り姿勢で吊り下げる手段であり、軸方向の両端部(一端部17a、他端部17b)を解体空間13の幅方向に対向する内側面15a、15bによって夫々支持されている。
解体ハンガー17の軸方向の一端部17aは、内側面15aに取り付けられたヒンジ部によって奥行き方向(図中矢印D方向)に揺動可能に支持されている。また、解体ハンガー17の軸方向の他端部17bは、内側面15bに取り付けられた係止部材に対して着脱自在に係止される。解体ハンガー17は、その他端部17bが開口部21から解体空間13の外部に引き出された引出姿勢(破線にて示す)と、他端部17bが内側面15bに設けられた係止部材に係止された被係止姿勢(実線にて示す)との間で奥行き方向(図中矢印D方向)に揺動する。解体ハンガー17を引出姿勢に変位させれば、解体空間13の外部において羽毛布団を解体ハンガー17に吊り下げることができるので、吊り下げ作業が容易となる。解体ハンガー17を被係止姿勢に変位させれば、羽毛布団の全体が解体空間13内に位置するため、解体作業により取り出された羽毛が開口部21から外部に飛び散ることを防止できる。
【0013】
搬送路19は解体空間13の最下部に配置されている。本例に示す搬送路19は、解体室11の幅方向の一端部側が高く、他端部側が低くなるように傾斜した傾斜面によって形成されている。搬送路19の下流端に位置する内側面15bには、回収配管25と連通する回収口(移送手段)23が貫通形成されている。搬送路19は、羽毛布団から取り出されて落下した羽毛を、重力を利用して回収口23に向けて案内する。なお、搬送路19の傾斜方向やその形状等は回収口23の形成位置等に応じて自由に設定することができる。
搬送路19を搬送された羽毛は、回収口23及び回収配管25を介して回収室31へ搬送される。
【0014】
回収室31は、その内部に処理袋Bを収容可能な中空部を有する箱状であり、一側面(例えば正面)に中空部を開閉する扉33を備えている。
回収配管25は下流端において回収室31内と連通する。また回収配管25の下流側端部は回収室31内に露出しており、回収配管25の下流側端部には締め付けバンド等を利用して処理袋Bが着脱自在に取り付けられる。処理袋Bは、全ての羽毛を漏れなく回収できるように、回収配管25に対して隙間が発生しないように取り付けられる。本例において、回収配管25の下流端は回収室31の天井に接続されているため、処理袋Bは回収室31内に吊り下げられる。
【0015】
処理袋Bは、羽毛及びスモールフェザーの通過を禁止する一方で、羽毛中に混在する羽毛よりも細かな塵埃、及び羽毛に付着した汚れの通過を許容する多数の孔を備えた網目状の材料(或いは多孔性の材料)から構成されている。塵埃には、塵、埃、ダニの糞や死骸、羽毛の屑(ダウンファイバーやパウダー)等が含まれる。処理袋Bは、羽毛から不要な塵埃を分離するフィルタとして機能する。処理袋Bは、羽毛中に混在する羽毛及びスモールフェザーが外部に出ないような密度で織られた織物を使用して作製されている。処理袋Bは、内部に羽毛を収容した状態で羽毛の洗浄及び乾燥が可能となる程度の所定の通気性を有している。
回収室31の適所(本例では側面の下部)には、処理袋Bを通過した塵埃を解体集塵室41に搬送する除塵配管35が接続される。
なお、回収室31を開閉する扉33は、除塵配管35から回収室31内の空気が吸引されたときに、回収室31内を負圧状態(大気圧よりも低い気圧)に維持できる程度の密閉性を有していればよい。言い換えれば、扉33は、羽毛を処理袋B内に搬送可能な空気流を回収配管25内に作れる程度の密閉性を有していればよい。
【0016】
解体集塵室41は、その内部に集塵袋(解体・移送工程における除塵手段)45を収容可能な中空部を有する箱状であり、一側面(例えば正面)に中空部を開閉する扉43を備えている。
除塵配管35は下流端において解体集塵室41内と連通する。また除塵配管35の下流側端部は解体集塵室41内に露出しており、除塵配管35の下流側端部には締め付けバンド等を利用して集塵袋45が着脱自在に取り付けられる。集塵袋45は、全ての塵埃を漏れなく回収できるように、除塵配管35に対して隙間が発生しないように取り付けられる。本例において、除塵配管35の下流端は解体集塵室41の天井に接続されているため、集塵袋45は解体集塵室41内に吊り下げられる。
【0017】
集塵袋45は、空気の通過を許容する一方で、塵埃の通過を禁止する多数の孔を備えた網目状の材料(或いは多孔性の材料)から構成されている。集塵袋45は、回収室31から吸引した空気中の塵埃を除去するフィルタとして機能する。集塵袋45には、所定の密度で織られた織物を使用することができる。集塵袋45は、処理袋Bを通過した塵埃を捉えてクリーンな空気を作るため、集塵袋45の備える孔は処理袋Bの備える孔よりも小さい。言い換えれば、集塵袋45は処理袋Bよりも細かな目を有している。集塵袋45を通過したクリーンな空気は、解体集塵室41の適所に設けた排気口(排気配管47)から外部(大気中)に放出される。
除塵配管35の中間部適所には、回収室31内の空気を吸引して解体集塵室41内に導入するブロアー(吸引ブロアー)37が設置されている。本例においては、ブロアー37が発生させる吸引力を利用して羽毛を解体室11の回収口23から回収配管25を介して処理袋Bに移送すると共に、回収室31において処理袋Bを通過した塵埃を除去する。
【0018】
ここで、排気配管47の内径はブロアー37の風量に基づいて決定される。排気配管47の内径は、除塵配管35から単位時間あたりに導入される空気量に対して、排気配管47から単位時間あたりに排出される空気量が同量(同等)となるように設定されることが望ましい。このように設定した場合は、解体集塵室41に特別な密閉性を必要としない。なお、少なくとも排気配管47の内径は、解体集塵室41内が大気圧よりも高圧環境とならない程度の排気能力を有するように設定することが望ましい。
羽毛布団から取り出された全ての羽毛の回収が完了した場合、作業者は処理袋Bを回収配管25から取り外し、処理袋Bの口を閉止して、処理袋Bを洗濯機50に移動させる。
【0019】
<洗濯機>
洗濯機50は、羽毛に付着した各種の汚れを除去し、洗浄後の羽毛を脱水する。羽毛の洗浄は、処理袋Bごと(処理袋Bに収容されたままの状態で)行われる。本例においては羽毛の損傷を回避するため、原則として水又はぬるま湯のみを用いて羽毛を洗浄する。しかし、羽毛に付着した汚れや臭いが水又はぬるま湯だけでは取り切れないと判断される場合は、水又はぬるま湯に中性洗剤を加えた洗浄液を用いて羽毛を洗浄する。
洗濯機50において洗浄・脱水された羽毛は、処理袋Bに収容された状態のまま、次段の乾燥部60へ移動される。
【0020】
<乾燥部>
乾燥部60は、羽毛を半乾燥させるプレ乾燥室(一次乾燥手段)61と、半乾燥された羽毛を完全に乾燥させる本乾燥機(二次乾燥手段)69、69と、本乾燥機69、69からの廃熱を回収する廃熱回収配管(廃熱誘導配管)71(71a、71b)と、回収された廃熱に含まれる塵埃を除去する乾燥集塵室(乾燥工程における除塵手段)73と、集塵後の廃熱をプレ乾燥室61に供給する廃熱供給配管(廃熱誘導配管)79とを備える。
プレ乾燥室61は、洗浄・脱水が終了した羽毛を処理袋Bごと半乾燥させる装置である。プレ乾燥室61は、プレ乾燥室61を開閉する扉63と、プレ乾燥室61内に架設された乾燥ハンガー65等とを備える。プレ乾燥室61は、その内部に作業者が立ち入って作業可能な大きさを有する。作業者は扉63からプレ乾燥室61内に入退出する。
【0021】
乾燥ハンガー65は、処理袋Bを概略二つ折り姿勢で吊り下げる手段であり、例えば長尺な棒材から構成される。乾燥ハンガー65は、処理袋Bを二つ織り姿勢にて吊り下げたときに、処理袋Bの下端部同士が離間するような態様で(例えば逆V字状の姿勢、或いは逆U字状の姿勢で)、処理袋Bを吊り下げることが可能な構成を備えていることが望ましい。例えば、一の乾燥ハンガー65は、所定距離離間して並行に配置された2本以上の長尺な棒材を備えることができる。
図示するプレ乾燥室61は1本の長尺な棒材からなる一の乾燥ハンガー65を備え、該乾燥ハンガー65に対して一の処理袋Bを吊り下げることができる構成であるが、プレ乾燥室61は、プレ乾燥室61内に一度に同時に二以上の処理袋Bを吊り下げることができる構成を備えてもよい。例えば、一の乾燥ハンガー65は、該乾燥ハンガー65に対して複数の処理袋Bを吊り下げることができる構成、即ち、長手方向の異なる位置に夫々処理袋Bを吊り下げることができる構成を備えてもよい。或いは、プレ乾燥室61は二以上(二組以上)の乾燥ハンガー65を備え、複数の処理袋Bを夫々の乾燥ハンガー65に吊り下げることができる構成を備えてもよい。
【0022】
プレ乾燥室61内には、プレ乾燥室61内の空気を処理袋Bに向けて吹き付ける送風ファン66を設置してもよい。例えば、送風ファン66は、二つ折り姿勢で吊り下げられた一の処理袋Bの対向する下端部間(対向する側面同士の間)に空気を吹き込むことができる位置として、プレ乾燥室61の床面に、或いはプレ乾燥室の下部の適所に設置することができる。プレ乾燥室61内に送風ファン66を設置することにより、処理袋B表面の空気が滞留しやすい部分において空気の流動を促進し、処理袋Bの表面の全体に流れのある空気を行き渡らせることが可能となる。このようにすることで、処理袋Bに収容された羽毛の乾燥時間を全体として短縮することができる。特に、本乾燥機69から導入される廃熱の温度が比較的低いような場合(例えば本乾燥機69の熱源にガスではなく電気を利用している場合等)には、送風ファン66の設置は非常に効果的である。なお、任意で、送風ファン66が発生させる流れのある空気を処理袋Bの任意の位置に吹き付けられるように、空気を任意の位置及び方向に誘導する配管等の誘導手段を備えてもよい。また、送風ファン66は、プレ乾燥室61内の空気を単に攪拌する手段であってもよい。
【0023】
プレ乾燥室61の適所(本例ではプレ乾燥室61の下部)には、廃熱供給配管79が接続され、プレ乾燥室61内には本乾燥機69からの廃熱が導入される。また、プレ乾燥室61は、他の適所(本例では天井)に、プレ乾燥に使用された廃熱を外部(大気中)に放出する放熱口(放熱配管67)を備える。
ここで、放熱配管67の内径は本乾燥機69、69に備えるブロアーの風量とブロアー72の風量とに基づいて決定される。放熱配管67の内径は、廃熱供給配管79から単位時間あたりに導入される空気量に対して、放熱配管67から単位時間あたりに排出される空気量が同量(同等)となるように設定されることが望ましい。このように設定した場合は、プレ乾燥室61に特別な密閉性を必要としない。なお、少なくとも放熱配管67の内径は、プレ乾燥室61内が大気圧よりも高圧環境とならない程度の排気能力を有するように設定することが望ましい。
【0024】
本乾燥機69は、空気を加熱して熱風を生成する加熱手段を備えた周知の乾燥機である。熱源には一般的にガス、電気、又は蒸気が使用される。本乾燥機69は、羽毛を処理袋Bごと本乾燥する。本乾燥機69は所謂ドラム型の乾燥機であり、処理袋Bを回転させながら熱風を羽毛全体に行き渡らせて羽毛を完全に乾燥させる。本乾燥機69は70度前後の熱風にて羽毛を乾燥させる。本例においては70度近くある本乾燥機69からの廃熱をプレ乾燥室61に導入して再利用する。本乾燥機69から排出される高温の排気は、まず廃熱回収配管71から乾燥集塵室73に導入される。
【0025】
乾燥集塵室73は、本乾燥機69から出される高温の排気中に含まれる塵埃を除去する手段である。その構造は解体集塵室41と同様である。即ち、乾燥集塵室73は、その内部に集塵袋(乾燥工程における除塵手段)77を収容可能な中空部を有する箱状であり、一側面(例えば正面)に中空部を開閉する扉75を備えている。
廃熱回収配管71は下流端において乾燥集塵室73内と連通する。また廃熱回収配管71の下流側端部は乾燥集塵室73内に露出しており、廃熱回収配管71の下流側端部には締め付けバンド等を利用して集塵袋77が着脱自在に取り付けられる。集塵袋77は、全ての塵埃を漏れなく回収できるように、廃熱回収配管71に対して隙間が発生しないように取り付けられる。本例において、廃熱回収配管71の下流端は乾燥集塵室73の天井に接続されているため、集塵袋77は乾燥集塵室73内に吊り下げられる。
本例に示す廃熱回収配管71は、上流側に配置された廃熱回収配管71a、71aと、下流側に配置された廃熱回収配管71bとを備える構成である。廃熱回収配管71a、71aはその上流側端部を夫々本乾燥機69、69に接続され、廃熱回収配管71bは上流側において廃熱回収配管71a、71aと接続すると共に下流端において乾燥集塵室73内と連通する。夫々の本乾燥機69、69から排出され、各廃熱回収配管71a、71aを流れる高温の排気は、廃熱回収配管71bにおいて合流する。
【0026】
集塵袋77は、空気の通過を許容する一方で、塵埃の通過を禁止する多数の孔を備えた網目状の材料(或いは多孔性の材料)から構成されている。集塵袋77は、本乾燥機69、69から導入した廃熱中の塵埃を除去するフィルタとして機能する。集塵袋77には、所定の密度で織られた織物を使用することができる。集塵袋77は、本乾燥中の処理袋Bを通過した塵埃を捉えてクリーンな空気を作るため、集塵袋77の備える孔は処理袋Bの備える孔よりも小さい。言い換えれば、集塵袋77は処理袋Bよりも細かな目を有している。集塵袋77を通過したクリーンな高温の排気は、乾燥集塵室73の適所(本例では天井部)に接続された廃熱供給配管79からプレ乾燥室61内に導入される。プレ乾燥室61には塵埃回収後のクリーンな廃熱が導入されるため、プレ乾燥工程において処理袋Bの表面に塵埃が付着することを防止できる。プレ乾燥室61には、比較的高い温度の(例えば65度程度の)乾燥用空気が導入される。
ここで、廃熱供給配管79の内径は、本乾燥機69、69に備えるブロアーの風量とブロアー72の風量とに基づいて決定される。廃熱供給配管79の内径は、廃熱回収配管71から単位時間あたりに導入される空気量に対して、廃熱供給配管79から単位時間あたりに排出される空気量が同量(同等)となるように設定されることが望ましい。このように設定した場合は、乾燥集塵室73に特別な密閉性を必要としない。なお、少なくとも廃熱供給配管79の内径は、乾燥集塵室73が大気圧よりも高圧環境とならない程度の排気能力を有するように設定することが望ましい。
【0027】
廃熱回収配管71の中間部適所には、本乾燥機69から排出される排気を下流側に向けて送出するブロアー72を補助的に備えてもよい。複数の本乾燥機69、69を備える場合、ブロアー72は本乾燥機69、69からの排気が合流した後の廃熱回収配管71bに配置すると効率的である。ブロアー72は、所定速度の排気流を作ることにより、新鮮な排気を常に強制的にプレ乾燥室61に導入する。なお、このブロアー72は廃熱供給配管79の適所に備えてもよいし、放熱配管67の適所に備えてもよい。また、ブロアー72は、廃熱回収配管71、廃熱供給配管79、放熱配管67の全部に、又は各配管に対して選択的に設置することができる。
【0028】
<充填部>
充填部90は、羽毛の重量を計量する計量器91と、羽毛を新規な羽毛布団用の側生地Cに充填する充填機(充填手段)93とを備える。充填部90においては、計量器91による乾燥後の羽毛の計量、不足分に相当する量の新規な羽毛の追加、及び充填機93による新規な側生地Cへの羽毛の充填が行われる。
本乾燥後の羽毛の重量は、処理袋Bごと(処理袋Bに入ったままの状態で)計量器91によって計量される。ここで「羽毛を処理袋Bごと計量」するとは、羽毛を処理袋Bから取り出さずに羽毛の全量を計量するという意味である。羽毛を処理袋Bごと計量すれば、計量器91に備えられた計量容器(又は計量皿)に羽毛が付着しないため、異なる羽毛布団に由来する羽毛の混和を防止できるとともに、計量容器の清掃が容易となる。
【0029】
本乾燥後に羽毛を計量することにより、新規な側生地Cに充填するべき羽毛の全量に対して不足する羽毛量が算出される。本乾燥後の羽毛に対して不足分に相当する量の新規な羽毛を追加して、新規な側生地Cに充填するべき羽毛の全重量を調整する。
充填機93は、本乾燥後の羽毛と新規に追加された羽毛とを均一に混合して、ノズルから羽毛を吹き出させる。作業者は、充填機93を使用して、側生地Cの各マスに羽毛を充填する。
最終的に、新規な側生地Cに設けられた羽毛の吹き込み口を縫合して、羽毛布団の再生処理、即ち仕立て直しを完了する。
【0030】
<羽毛の管理>
羽毛製品の再生システム1においては、複数の羽毛布団の再生処理が同時に並行して行われる。そのため、羽毛製品の再生システム1においては、同時に複数の処理袋B、B…が使用される。夫々の処理袋Bには、他の処理袋Bから識別される一意の整理番号(識別子)が付される。
各処理袋に付される整理番号には、羽毛布団の再生処理を依頼した顧客を特定する情報(氏名、電話番号等)と顧客からの依頼内容等(以下「顧客情報」という)が紐付けられて管理される。
この管理は、例えば、受注伝票に顧客情報と整理番号を記入すると共に、顧客から受領した羽毛布団と処理袋と顧客が選択した新規な側生地Cの夫々に整理番号を記載した識別札を装着すること等により行われる。
このように、処理袋に付される整理番号と顧客情報を紐付けて管理すると共に、羽毛再生に係る各処理を処理袋ごと行うことにより、異なる顧客の羽毛製品に由来する羽毛の混和と取り違えを防止することができる。
【0031】
<処理の流れ>
以下、羽毛製品の再生システムにおける各処理について、フローチャートに基づいて説明する。
図2は、羽毛製品の再生システムにおける処理の流れを示したフローチャートである。
【0032】
ステップS1において、作業者は顧客から羽毛布団を受領する。この際に作業者は、顧客情報と羽毛の処理中に使用される整理番号(識別子の一例)とを関連付ける。例えば、受注伝票に顧客情報と整理番号を記入すると共に、羽毛布団と処理袋と顧客が選択した新規な側生地Cの夫々に整理番号を記載した札を装着する。
ステップS2において、作業者は、羽毛布団の状態を確認して各処理の作業方針を決定する。
ステップS3において、作業者は、羽毛布団を解体して取り出された羽毛を処理袋に収容する。即ち、
図1、
図3に示すように、作業者は羽毛布団Aを解体室11の解体ハンガー17に吊り下げて、羽毛布団Aと同一の整理番号が付された処理袋Bを回収室31内に装着する。さらに、作業者はブロアー37のスイッチをオンにしてブロアー37の運転を開始する。作業者は、羽毛布団Aの側生地をカッター等により切断し、各マスを開放して順次羽毛を取り出す。取り出された羽毛は搬送路19に落下し、作業者の誘導とブロアー37の吸引力とによって回収口23から回収配管25を介して処理袋Bへと移送される。
羽毛を処理袋Bに回収する際には、羽毛中に混在する塵埃が処理袋Bを通過する。これらの塵埃は、ブロアー37及び除塵配管35を介して解体集塵室41内の集塵袋45に回収される。また、集塵袋45を通過した空気は排気配管47を介して大気中に放出される。
【0033】
ステップS4においては、羽毛を処理袋Bごと洗浄・脱水する。即ち、作業者は羽毛入りの処理袋Bを回収室31から取り外して、処理袋Bの口を閉じた後、処理袋Bを洗濯機50へと移動させる。作業者は、洗濯機50のスイッチをオンにして、洗濯機50により羽毛の洗浄と脱水を行う。
ステップS5においては、羽毛を処理袋Bごとプレ乾燥する。即ち、作業者は、脱水完了後の処理袋Bを洗濯機50から取り出して、プレ乾燥室61へと移動させる。作業者は、処理袋Bをプレ乾燥室61内の乾燥ハンガー65に吊り下げる。プレ乾燥室61には本乾燥機69からの廃熱が導入されており、この廃熱を利用して、本乾燥前に予め羽毛から水分の一部を取り除く。なお、本乾燥機69が稼動していない場合は、ステップS5のプレ乾燥工程を省略してステップS6の本乾燥工程に進む。
ステップS6においては、羽毛を処理袋Bごと本乾燥する。即ち、作業者は、プレ乾燥終了後の処理袋Bをプレ乾燥室61から取り出して、本乾燥機69に移動させる。
【0034】
本乾燥機69は、回転ドラム式の乾燥機であり、本乾燥工程では処理袋Bが本乾燥機69内で回転しながら高温の熱風にて乾燥される。本乾燥工程において処理袋Bを通過した塵埃は、廃熱回収配管71を介して集塵袋77に回収される。プレ乾燥室61には塵埃回収後のクリーンな廃熱が導入されるため、プレ乾燥工程において塵埃が処理袋Bの表面に付着することを防止できる。
なお、ステップS5のプレ乾燥工程が省略された場合は、羽毛を完全に乾燥させるために、プレ乾燥工程を経た羽毛に設定される本乾燥時間よりも、本乾燥時間が長く設定される。
【0035】
ステップS7においては、羽毛を処理袋Bごと計量器91によって計量する。
ステップS8においては、新規な側生地Cに充填するべき羽毛量となるように、処理袋Bに新規な羽毛を追加して羽毛の全重量を調整する。
ステップS9においては、新規な側生地Cに羽毛を充填する。即ち、作業者は、処理袋Bに付された整理番号と同一の整理番号が付された新規な側生地Cを用意し、充填機93を用いて側生地Cの各マスに所要量の羽毛を順次吹き込んでいく。また、作業者は、羽毛の充填が終了した後、側生地Cに設けられた羽毛の吹き込み口を縫合して羽毛布団の仕立て直しを完了する。
ステップS10においては、再生後の羽毛布団を顧客に引き渡す。
【0036】
<効果>
本例においては、羽毛布団を再生する各工程、即ち、洗浄・脱水、乾燥、計量を処理袋ごと実施するので、一の羽毛布団から取り出された羽毛と、他の羽毛布団から取り出された羽毛とが混和しない。
また、羽毛製品の再生システムを構成する各装置の清掃にかかるコストが低減する。仮に羽毛を処理袋から取り出して本乾燥機による乾燥を実施した場合、乾燥ドラムに付着した羽毛を除去するための大掛かりな清掃作業が必要となるが、清掃作業によっても乾燥ドラムに固着した羽毛の完全な除去は困難である。これは、洗濯機においても同様である。
このように、本例においては、羽毛布団を再生する各工程を処理袋ごと実施するので、異なる羽毛布団から取り出された羽毛同士の混和を防止すると共に、各装置のメンテナンス費用の低減を図ることができる。
【0037】
水分を含んだ羽毛の乾燥には時間が掛かるため、洗浄・脱水に必要な所要時間と羽毛の乾燥に必要な所要時間とには大きな差がある。特に羽毛の再生処理を処理袋ごと行う本実施形態においては、乾燥時間が増大する傾向にある。仮に、複数の羽毛布団の再生処理を、各作業を停滞させることなく連続的に実施するためには、一台の洗濯機に対して複数台(例えば3台)の乾燥装置を割り当てる必要がある。しかし、乾燥装置の全てに加熱源を有した乾燥装置を採用すれば、設備導入費用が増大する上に、多量の燃料を必要とするため、燃料費、及び環境負荷が増大する。本実施形態においては、本乾燥時の廃熱をプレ乾燥に利用するため、本乾燥時間の短縮、羽毛の乾燥に必要な燃料の節約、及び環境負荷の低減を図ることができる。
【0038】
<店舗配置>
図3は、本発明の一実施形態に係る羽毛製品の再生システムが導入される店舗における各種設備の配置例を示した模式図である。なお、本図においては配管類の図示を省略している。
店舗100は、作業者が羽毛布団Aの再生作業を実施する作業エリア101と、羽毛布団の再生を依頼した顧客が羽毛布団の再生が完了するまで待機できる待機エリア102とを備える。作業エリア101には羽毛製品の再生システム1が設置される。待機エリア102には、顧客が自由に利用できる椅子やテーブル等が配置された休憩スポット103や、各種商品の購入が可能なショッピングスポット104等が設けられる。
作業エリア101と待機エリア102とは、間仕切105(仕切手段)によって区切られている。間仕切105は、その少なくとも一部に待機エリア102から作業エリア101内の様子を観察できる構成として、透明な窓部106を備える。窓部106は、少なくとも処理袋Bごと実施される羽毛布団の再生に係る各処理(各工程)を待機エリア102から観察できる形状と大きさを有し、またそのような位置に備えられていればよい。逆に言えば、作業エリア101内における羽毛製品の再生システム1を構成する各装置は、羽毛再生に関わる各工程が処理袋ごと行われていることを待機エリア102から観察可能な向きに配置される。
【0039】
なお、作業エリア101と待機エリア102とを区切る仕切手段は、待機エリア102から作業エリア101内の様子を観察できる構成を備えていればよく、仕切手段として例えばベルト式やロープ式のパーティションを利用することができる。
このように、羽毛布団の再生に係る各処理が処理袋ごと行われていることを顧客が目視確認できるようにすれば、一の顧客の羽毛布団から取り出された羽毛と、他の顧客の羽毛布団から取り出された羽毛とが混和しないことを顧客に対してアピールすることができ、顧客に対して安心感を与えることが可能となる。
【0040】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様に係る羽毛製品の再生システム1は、羽毛製品(羽毛布団A)から取り出された羽毛を処理袋Bに移送する移送手段(搬送路19、回収口23、回収配管25)と、羽毛を処理袋ごと洗浄・脱水処理する洗浄・脱水手段(洗濯機50)と、洗浄・脱水処理された羽毛を処理袋ごと一次乾燥(プレ乾燥)する一次乾燥手段(プレ乾燥室61)と、一次乾燥された羽毛を処理袋ごと二次乾燥(本乾燥)する二次乾燥手段(本乾燥機69)と、二次乾燥手段から排出される廃熱を一次乾燥手段に誘導する廃熱誘導配管(廃熱回収配管71、廃熱供給配管79)と、を備えることを特徴とする。
【0041】
本態様によれば、羽毛製品の再生に係る各処理を処理袋ごと、即ち、羽毛を処理袋に収容したまま行うので、再生処理中に異なる羽毛製品に由来する羽毛の混和を防止し、顧客に対して羽毛製品の再生処理に対する安心感を与えることができる。
また、洗浄・脱水された羽毛を、廃熱を利用して一次乾燥した後に二次乾燥するので、二次乾燥時間を短縮でき、羽毛の乾燥に必要な燃料の節約、及び環境負荷の低減を図ることができる。また、二次乾燥時間を短縮できることから、羽毛製品の再生システム全体における処理の効率化を図ることができる。
【0042】
<第二の実施態様>
本態様に係る羽毛製品の再生システム1において、処理袋Bは、羽毛の通過を禁止する一方で塵埃の通過を許容し、且つ所定の通気性を有することを特徴とする。
本態様によれば、異なる羽毛製品に由来する羽毛の混和を防止しつつ、処理袋ごと行われる各処理において、羽毛中に混在する塵埃を除去できる。また、処理袋の備える通気性により、処理袋内に羽毛を収容した状態にて、羽毛の洗浄と乾燥を行うことができる。
【0043】
<第三の実施態様>
本態様に係る羽毛製品の再生システム1は、一次乾燥手段(プレ乾燥室61)と二次乾燥手段(本乾燥機69)との間に、廃熱中に含まれる塵埃を除去する除塵手段(乾燥集塵室73、集塵袋77)を備えることを特徴とする。
本態様によれば、一次乾燥手段には、塵埃回収後のクリーンな廃熱が導入されるため、一次乾燥工程において塵埃が処理袋の表面に付着することを防止できる。
【0044】
<第四の実施態様>
本態様に係る羽毛製品の再生システム1は、二次乾燥後の羽毛を処理袋Bごと計量する計量手段(計量器91)と、計量後の羽毛を新規な羽毛製品用の側生地Cに充填する充填手段(充填機93)と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、羽毛を処理袋ごと計量するので、計量手段に備えられた計量容器(又は計量皿)に羽毛が付着しない。従って、異なる羽毛布団に由来する羽毛の混和を防止できるとともに、計量手段の清掃が容易となる。
【0045】
<第五の実施態様>
本態様に係る羽毛製品の再生方法は、羽毛製品(羽毛布団A)から取り出された羽毛を処理袋Bに移送する移送工程(ステップS1)と、羽毛を処理袋ごと洗浄・脱水処理する洗浄・脱水工程(ステップS4)と、洗浄・脱水処理された羽毛を処理袋ごと一次乾燥する一次乾燥工程(ステップS5)と、一次乾燥された羽毛を処理袋ごと二次乾燥する二次乾燥工程(ステップS6)と、を有し、一次乾燥工程においては、二次乾燥工程にて排出される廃熱を利用して羽毛を一次乾燥することを特徴とする。
本態様は、第一の実施態様と同様の効果を奏する。
【0046】
<第六の実施態様>
本態様に係る店舗100は、羽毛製品の再生システム1が配置される作業エリア101と、羽毛製品(羽毛布団A)の再生を依頼した顧客が待機する待機エリア102と、作業エリアと待機エリアとを仕切る仕切手段(間仕切105)とを備え、仕切手段は、処理袋Bごと実施される各処理を待機エリアから観察可能な構成(窓部106)を備えることを特徴とする。
本態様によれば、羽毛製品の再生に係る各処理が処理袋ごと行われていることを顧客が目視確認できるようにするので、一の顧客の羽毛製品から取り出された羽毛と、他の顧客の羽毛製品から取り出された羽毛とが混和しないことを顧客に対してアピールすることができ、顧客に対して安心感を与えることが可能となる。
【解決手段】羽毛布団の再生システム1は、羽毛布団Aから取り出された羽毛を処理袋Bに移送する回収配管25と、羽毛を処理袋Bごと洗浄・脱水処理する洗濯機50と、洗浄・脱水処理された羽毛を処理袋Bごとプレ乾燥するプレ乾燥室61と、一次乾燥された羽毛を処理袋Bごと本乾燥する本乾燥機69と、本乾燥機69から排出される廃熱をプレ乾燥室61に誘導する廃熱回収配管71及び廃熱供給配管79と、を備える。