(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コラーゲン加水分解物が1日につき体重1kgあたり10mg〜1000mg摂取される、請求項7から9のいずれか一項に記載の発症予防用及び/又は症状改善用食品。
アレルギー性鼻炎のアレルゲンが花粉、室内塵及びダニのいずれかである、請求項7から10のいずれか一項に記載のアレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎は、鼻腔粘膜にI型のアレルギー反応が生じる疾患である。通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に大別され、いずれも反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、及び鼻閉を3主徴とする。日本におけるアレルギー性鼻炎の罹患率は30〜40%とも言われ、その高い有病率より「国民病」とも称される。アレルギー性鼻炎の症状(くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉)は、嗅覚障害、睡眠障害、集中力の低下等を引き起こし、患者の生活に少なからず支障をきたす。
【0003】
一方、コラーゲンたんぱく質は、生体中の全たんぱく質の3割を占める主要な成分である。そのアミノ酸配列は、グリシン(Gly)が3残基ごとに繰り返す特徴をもつ。動物や魚に含まれるコラーゲンを、加熱・抽出・精製することによって得られたゼラチンを、さらに加水分解することでコラーゲン加水分解物を製造することができる。あるいは、生体原料を直接的に酵素処理する手法で製造される場合もある。また、加水分解の方法や程度によって分子量のコントロールが可能であることから、市場には多様な分子量のコラーゲン加水分解物が流通している。コラーゲン加水分解物は、加水分解コラーゲン、ゼラチン加水分解物、コラーゲンペプチドなどとも呼ばれている。
【0004】
コラーゲン加水分解物やコラーゲン由来のペプチド類の経口摂取による薬理効果が報告されている。例えば、コラーゲンペプチドが血液流動性改善効果を示すこと(特許文献1)、コラーゲンやゼラチンをブロメラインなどの蛋白質分解酵素で処理して得られる分解物が骨組織の機能維持および骨折の予防に有効であること(特許文献2)、並びにコラーゲン加水分解物が新陳代謝促進作用を有することが報告されている(特許文献3)。
【0005】
更に、特許文献4は、Hyp−Gly、Pro−Ala−Gly、Gly−Pro、Glu−Hyp−Gly、(Pro−Hyp−Gly)
5、(Pro−Hyp−Gly)
2、Pro−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Ser−Hyp−GlyおよびPhe−Hypからなる群から選択されるペプチドまたはその薬学上許容される塩を含有する、美白促進剤またはアトピー性皮膚炎改善剤を開示する。また、白田ら(非特許文献1)は、コラーゲン由来トリペプチドがアトピー性皮膚炎の炎症を抑制する作用を有することを記載する。さらに、特許文献5は、コラーゲン由来ペプチド類を有効成分として含有するキマーゼ阻害用組成物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アレルギー性鼻炎を引き起こす抗原として、ダニ、花粉などが挙げられる。感作陽性者の鼻粘膜上に抗原が吸入され、鼻粘膜表層に分布するマスト細胞表面のIgE抗体と結合すると、抗原抗体反応が起こる。その結果放出されたヒスタミン、ロイコトエリンなどの様々な化学伝達物質が鼻粘膜の知覚神経終末や血管と反応することで、アレルギー性鼻炎の症状(くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉(鼻粘膜腫脹))が引き起こされる。その後、IL−5、IL−4、IL−13などのTh2サイトカイン、種々のケミカルメディエーター等によって、好酸球をはじめとするさまざまな炎症細胞の浸潤が起こる。鼻粘膜のアレルギー性炎症の進行と同時に様々な刺激に対する鼻粘膜の反応性が亢進するといわれる。アレルギー性鼻炎の原因抗原の特定には、血清中特異的IgE抗体値検査が用いられる。
【0009】
アレルギー性鼻炎の主要な治療法は、抗原回避、薬物療法、手術療法、及び免疫療法の4つである(非特許文献2)。抗原回避は、患者の行動が制限されるという問題がある。薬物療法は広く用いられているが対症療法に留まり、投与を中止すれば短期間で再発する。手術療法は、薬物療法への抵抗性症例に用いられるが、患者の負担は小さくなく、再発の可能性がある。また、根治的な治療を目指して開発されたアレルゲンエキスの舌下免疫療法は、安全性が高く、長期寛解が可能であると言われている。しかし、国内において治療対象となるのはスギ花粉又はダニへのアレルギーに限られる上、長期間(3年から5年の継続が望ましい)の治療が必要である。従って、患者の負担がより小さく、より短期に、アレルギー性鼻炎を予防及び/又は治療できる治療法が求められている。
【0010】
上記特許文献4は、特定のコラーゲンペプチドがフィラグリン遺伝子発現を促進させ皮膚バリア機能を高めることにより、アトピー性皮膚炎が改善されることを記載する。非特許文献1は、コラーゲン由来トリペプチドがアトピー性皮膚炎の炎症を抑制する作用を有する可能性があること、及びアトピー性皮膚炎様の炎症を生じているヒトケラチノサイトにおいて、コラーゲン由来トリペプチド処理により、TARCの発現が抑制されたことを記載する。
【0011】
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみ、皮膚バリアの破たん、免疫暴走の3つの病態が関連する皮膚疾患であり、その定義ではアレルギーの存在は必須ではなく、診断にアレルギーの証明が必須となるアレルギー性鼻炎とは異なる(非特許文献3)。アトピー性皮膚炎の発症に特に重要であるのは皮膚の乾燥による皮膚バリア機能の破たんであることが知られている。特許文献4に記載のペプチドは、皮膚バリアの改善によりアトピー性皮膚炎の発症の可能性を低減するものであるため、皮膚に生じるアレルギーにのみ有効であると考えられる。
【0012】
また、特許文献4には、OVA腹腔内投与したマウスにコラーゲンペプチド投与した結果、血中IgEが低下したことが記載されている。特許文献4の実施例で測定しているIgEは「総IgE」と呼ばれるもので、OVA抗原に限らず、皮膚から入るハウスダストやダニなどあらゆるものに反応して上昇しうるため、抗体活性が明確ではないIgEといえる。そのため、特許文献4に記載のコラーゲンペプチド混合物の摂取による体内のIgE値の抑制については、皮膚バリアが高まり、皮膚内にアレルゲンが侵入しなくなることで、結果的に血中のIgE値低下が生じている可能性がある。なお、アトピー性皮膚炎の診断では血中のIgE値は参考にされる程度である。
【0013】
アトピー性皮膚炎では、血清中のTARC(thymus and activation-regulated chemokine)値が重症度を反映するため、重症度評価に用いられている。一方で、アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜等局所的にTARC値が上昇することが知られるのみであり、血清中TARC値はアレルギー性鼻炎の重症度を反映するとは考えられていない。
【0014】
アレルギー性鼻炎とアトピー性皮膚炎は同じI型アレルギーに分類されるが、両者は抗原の種類、抗原との感作の起こる部位が異なっている。また、以上のように、アレルギー性鼻炎とアトピー性皮膚炎は、発生部位、症状の種類が異なっており、検査方法も治療薬も異なる。従って、特許文献4に記載のコラーゲンペプチド及び非特許文献1に記載のコラーゲン由来トリペプチドが、アレルギー性鼻炎の治療等に有用であるかは知られていない。
【0015】
上記特許文献5は、コラーゲン由来ペプチド類を有効成分として含有するキマーゼ阻害用組成物を開示し、キマーゼに由来する疾患の予防・治療に用いられることが記載されている。キマーゼに由来する疾患として鼻炎が挙げられているが、特許文献5に記載のキマーゼ阻害用組成物はキマーゼによって発症した全身的な諸症状の一つとして発生する鼻炎を、キマーゼの阻害を通して改善するものである。特許文献5に記載のキマーゼ阻害用組成物が、アレルギー性鼻炎の症状の改善に有効であるかは知られていない。
【0016】
以上のように、従来のコラーゲン加水分解物において、アレルギー性鼻炎の予防、治療、症状改善などに効果があるものは報告されていない。そこで本発明の目的は、アレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療のための経口投与用医薬やアレルギー性鼻炎の発症を予防し、及び/又は症状を改善するための食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、トリペプチドGly−X−Yを含むコラーゲン加水分解物を投与したアレルギー性鼻炎モデルマウス(CTP投与群)では、くしゃみや鼻掻きの回数が減少し、アレルギー性鼻炎の症状が改善されることを見出した。また、CTP投与群では、抗原を鼻腔に連日投与しても、くしゃみ回数や鼻掻き回数が増加しなかったことから、アレルギー性鼻炎の発症が予防されたと考えられた。また、CTP投与群では、血中の抗原特異的IgE値の増加の抑制も観察され、アレルギー反応そのものが抑制されていることが判明した。このような知見に基づいて本発明は完成された。
【0018】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Y(Gly−X−Yはアミノ酸配列であり、X及びYは独立にGly以外のアミノ酸残基を示す)を含むコラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬。
[2]前記コラーゲン加水分解物に含まれる少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Yが、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Pro、Gly−Pro−Ala、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Pro、Gly−Leu−Hyp、Gly−Glu−Hyp、Gly−Glu−Arg、Gly−Pro−Arg、Gly−Ser−Hyp、Gly−Ala−Lys、Gly−Ala−Arg、Gly−Pro−Lys、Gly−Pro−Ser、Gly−Phe−Hyp、Gly−Pro−Gln、Gly−Ala−Ala、Gly−Pro−Val、Gly−Asp−Ala、Gly−Glu−Ala、Gly−Ala−Asp、及びGly−Arg−Hypからなる群から選択されるいずれかである、[1]に記載の予防及び/又は治療薬。
[3]前記コラーゲン加水分解物がジペプチドをさらに含む、[1]又は[2]に記載の予防及び/又は治療薬。
[4]前記コラーゲン加水分解物中のトリペプチド及びジペプチドの含有率が少なくとも10質量%である、[1]〜[3]の何れか一に記載の予防及び/又は治療薬。
[5]アレルギー性鼻炎のアレルゲンが花粉、室内塵及びダニの何れかである、[1]〜[4]のいずれか一に記載のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載のコラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品。
[7]アレルギー性鼻炎のアレルゲンが花粉、室内塵及びダニの何れかである、[6]に記載のアレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アレルギー性鼻炎の新たな予防及び/又は治療薬、並びにアレルギー性鼻炎の発症の予防、症状の改善、又は症状の増悪を抑制するための新たな食品を提供することができる。アレルギー性鼻炎の症状の改善とIgE値の増加抑制の2つの効果を従来の薬物療法で得ようとする場合、最低でも2種類の投薬が必要になる。たとえば、症状の改善のためにはケミカルメディエーター遊離抑制薬あるいはケミカルメディエーター受容体拮抗薬を投与する必要があり、IgE値の増加抑制のためにはTh2サイトカイン阻害剤の2種を投薬する必要がある。本発明によれば、異なる薬理作用をもつ複数の処方薬を服用したのに匹敵する効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、特に記載しない限り、「%」等は質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0022】
本発明は、少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Y(Gly−X−Yはアミノ酸配列であり、X及びYは独立にGly以外のアミノ酸残基を示す)を含むコラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬を提供する。本明細書中、常法に従って、ペプチドのアミノ酸配列をそのN末端のアミノ酸残基が左側に位置し、C末端のアミノ酸残基が右側に位置するように示す。
【0023】
本明細書の「アレルギー性鼻炎」は、鼻腔粘膜にI型のアレルギー反応、すなわちIgE依存型反応が生じる疾患である。アレルギー性鼻炎の症状は、反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉などである。アレルギー性鼻炎は、純粋にIgEに依存するアレルギーであり、アレルゲンが付着した局所(鼻付近)のみに症状が現れる。本発明によれば、アレルギー性鼻炎を予防及び/又は治療することができる。
【0024】
少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Yを含むコラーゲン加水分解物は、特に製造方法が限定されるものではなく、例えば、タンパク質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法などによって製造することができる。具体的には、ゼラチンまたはコラーゲンの酵素消化精製物であってもよいし、ゼラチンまたはコラーゲンの酵素消化精製物に化学合成したペプチドを添加したものであってよい。コラーゲン加水分解物は、例えば特許第3146251号公報に記載の方法で調製でき、ある程度精製したコラーゲンあるいは変性コラーゲン(ゼラチン)などを原材料として、プロテアーゼ、ペプチダーゼ等の酵素で加水分解することによって得られる。
【0025】
少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Yを含むコラーゲン加水分解物は、I型コラーゲンのペプチド結合をグリシンのアミノ末端で切断する細菌コラゲナーゼを用いて加水分解することによって得てもよい。コラーゲン加水分解物に含まれるアミノ酸配列:Gly−X−Yからなるトリペプチドの種類は、加水分解の原料となるコラーゲンの種類や加水分解に使用するコラゲナーゼの種類や加水分解条件等により変化しうる。上記コラーゲン加水分解物は、アミノ酸配列:Gly−X−Yからなるトリペプチドを、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%含むことができる。コラーゲン加水分解物中上記トリペプチドの含有率は、例えば1〜40質量%、1〜35質量%、1〜30質量%、1〜25質量%、1〜20質量%、2〜20質量%、又は5〜20質量%の範囲であってもよい。コラーゲン加水分解物中のトリペプチド含有率は、例えば特許第4099541号公報に記載の方法を用いて、高めることができる。
【0026】
上記コラーゲン加水分解物に含まれる少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Yは、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Pro、Gly−Pro−Ala、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Pro、Gly−Leu−Hyp、Gly−Glu−Hyp、Gly−Glu−Arg、Gly−Pro−Arg、Gly−Ser−Hyp、Gly−Ala−Lys、Gly−Ala−Arg、Gly−Pro−Lys、Gly−Pro−Ser、Gly−Phe−Hyp、Gly−Pro−Gln、Gly−Ala−Ala、Gly−Pro−Val、Gly−Asp−Ala、Gly−Glu−Ala、Gly−Ala−Asp、及びGly−Arg−Hypからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0027】
本発明のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬に含まれるコラーゲン加水分解物は、例えば500〜3000の範囲の平均分子量を有することができ、分子量が400より大きい高分子画分を50〜95%と、分子量400以下の低分子画分を5〜50%含むことができる。低分子画分の主成分はトリペプチド類及びジペプチド類である。分子量が800より大きい高分子画分は、アミノ酸残基4個以上からなるペプチドからなり、最大でも分子量が10000程度である。
【0028】
上記コラーゲン加水分解物は、トリペプチド類及びジペプチド類を合わせて、コラーゲン加水分解物中に少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%含むことができる。コラーゲン加水分解物中トリペプチド類及びジペプチド類の含有率は、例えば10〜50質量%、10〜45質量%、10〜40質量%、10〜35質量%、10〜30質量%、10〜25質量%、又は10〜20質量%の範囲であってもよい。
【0029】
上記コラーゲン加水分解物は、トリペプチドGly−X−Y以外に、任意のコラーゲン由来トリペプチド又はジペプチドを含んでもよい。例えば、上記コラーゲン加水分解物は、Pro−Hyp−Gly、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Ala−Hyp、Pro−Ala、及びCyclo(Gly−Pro)からなる群から選択されるいずれかをさらに含むことができる。Cyclo(Gly−Pro)は、Gly−Proが環状化したものである。
【0030】
本発明の一態様では、トリペプチドのアミノ酸配列:Gly−X−Yにおいて、Xはアミノ酸残基Pro又はAlaを示し、YはGly以外のアミノ酸残基を示すトリペプチドであってもよい。コラーゲンのアミノ酸組成は、グリシン(Gly)が全アミノ酸残基の約1/3を占め、次にプロリン(Pro)とアラニン(Ala)が多いため、上記アミノ酸配列の位置Xのアミノ酸残基は、プロリン(Pro)又はアラニン(Ala)であることが多い。
【0031】
上記アミノ酸配列:Gly−X−Yにおいて、Xはアミノ酸残基Pro又はAlaを示し、YはGly以外のアミノ酸残基を示し、トリペプチドは、Gly−Pro−Ala、Gly−Pro−Arg、Gly−Pro−Gln、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Lys、Gly−Pro−Pro、Gly−Pro−Ser、Gly−Pro−Val、Gly−Ala−Ala、Gly−Ala−Arg、Gly−Ala−Asp、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Lys、及びGly−Ala−Proからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0032】
上記コラーゲン加水分解物は、本願明細書に具体的に列挙したコラーゲン由来トリペプチド又はジペプチドの他に、任意のコラーゲン由来トリペプチド又はジペプチドを含むことができる。
【0033】
コラーゲン加水分解物に含まれる高分子画分および低分子画分の含有率は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)によるサイズ排除クロマトグラフィーで分析することができる。分析条件の例を以下に記載する。例えば、カラムとしてSuperdex Peptide HR 10/30(GEヘルスケア)を用いることができ、1.5Mの塩化ナトリウムおよび50mMの塩化カルシウムを含む0.1M Tris−HCl(pH 7.4)水溶液を1.0mL/minの速度で流すことができる。これに、0.1%濃度で溶媒に溶解したコラーゲン加水分解物溶液を注入し、214nmの吸収を検出することで得られるクロマトグラムの面積値から高分子画分および低分子画分の含有率を算出することができる。
【0034】
コラーゲン加水分解物に含まれるトリペプチド又はジペプチドの同定は、特に限定されないが、例えば、HPLC、LC−MS、LC−MS/MSを使用して行うことができる。
【0035】
本発明のコラーゲン加水分解物は、非抗原性および低アレルゲン性コラーゲン加水分解物であるが、さらに種々の方法による精製処理に供することもできる。(Shinmoto H. et al., 2001, Food Sci. Technol. Res., Vol 7, No. 4, 331-332)。
【0036】
本発明によるアレルギー性鼻炎の予防、治療及び/又は症状の改善効果は、上記コラーゲン加水分解物の摂取によって血中に出現するペプチドのうち、1種、又は2種以上の複合での薬理作用によると考えられる。コラーゲン由来の配列を保有するトリペプチド類やジペプチド類を摂取した場合、トリペプチド類やジペプチド類が高い血中移行性を示すことに加えて、摂取されたトリペプチド類の消化分解により生成した代謝物ジペプチドも高濃度で血中に出現することが報告されている(Yamamoto S. et al., 2015, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Vol. 79, No. 12, 2026-2033; Yamamoto S. et al., 2016, Biol. Pharm. Bull. 39, 428-434; Sontakke S. B. et al., 2016, J. Agric. Food Chem. 64, 7127-7133)。
【0037】
すなわち、コラーゲン加水分解物を摂取すると、血中代謝物としてトリペプチド類及びジペプチド類が出現し、次にそれらが組織へと移行して生理活性を発揮することで薬理作用が現れることから、はじめからトリペプチド類などを含有するコラーゲン加水分解物では、トリペプチド類及びジペプチド類の吸収性がより向上することで、より高い薬理活性が得られると考えられる。
【0038】
更には、平均分子量5000のゼラチン加水分解物を摂取した場合、血中には多様なトリペプチド類、あるいはジペプチド類が代謝物として出現することが報告されている(Iwai K. et al., J. Agric. Food Chem. 2005, 53, 6531-6536; Ichikawa S. et al., International Journal of Food Sciences and Nutrition, February 2010; 61(1): 52-60)。それらの代謝物はゼラチン加水分解物中の高分子画分のペプチドから生成したものであると考えられる。このことから、本発明のコラーゲン加水分解物の高分子画分のペプチドも薬理活性を有する成分の前駆体として重要な成分であると考えられる。
【0039】
本発明のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬は、種々の剤型とすることができる。例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散材、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳化剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。局所薬としては、噴霧剤が挙げられる。トリペプチドGly−X−Yは鼻粘膜から吸収されるためである。本発明のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬は、コラーゲン加水分解物の他に、医薬として許容される添加物を含むことができる。医薬として許容される添加物は、例えば安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、pH調整剤、保存剤等である。
【0040】
本発明のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬は、有効成分であるコラーゲン加水分解物を、コラーゲン加水分解物に含まれるトリペプチド類及びジペプチド類の濃度によっても異なるが、例えば、トリペプチド類及びジペプチド類を15質量%含有するコラーゲン加水分解物の場合、1日につき体重1kgあたり10〜1000mg、好ましくは100〜1000mg、より好ましくは300〜1000mg、1日1回または数回に分けて投与することができる。投与量は、ペプチドの特性、罹患者の年齢、体重、症状の違い、症状の程度、剤型等により適宜調節することができる。
【0041】
また、コラーゲン加水分解物、あるいは上記のトリペプチド類、ジペプチド類は生体構成成分であると共に、すでに長年の使用経験があるコラーゲン加水分解物に含有されている成分であることから、安全性が高いと考えられる。
【0042】
アレルギー性鼻炎の原因物質(アレルゲン、抗原)として、花粉、室内塵、ダニ等が知られている。花粉症は、花粉を原因物質とする季節性アレルギー性鼻炎である。春のスギやヒノキの花粉症の罹患者は非常に多く、そのほか、夏のイネ科の植物や秋のブタクサなどの花粉症がある。花粉症を引き起こす花粉の例としては、スギ、ヒノキ、アカマツ、イチョウ、ネズ、ケヤキ、シラカンバ、オオヤシャブシ、コナラ、クリ、オリーブ、ハンノキ、カモガヤなどのイネ科、ヨモギやブタクサなどのキク科の花粉などがある。室内塵、ダニ等は、季節を問わず現れる通年性アレルギー性鼻炎の原因物質となる。室内塵は、ハウスダストともいい、ダニの死骸やフン、ペットの毛、花粉、真菌などを含むほこりである。通年性アレルギー性鼻炎の原因となる主なダニの例は、コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどである。本発明の予防及び/又は治療薬は、原因物質が花粉、室内塵及びダニの何れかであるアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療に有効である。
【0043】
[食品、機能性表示食品、特定保健用食品]
本発明は、上記のコラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品を包含する。前述のように、日本におけるアレルギー性鼻炎の罹患率は30〜40%と非常に高い。本発明の食品は、アレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善に有効であり、アレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善を必要とする多くの人々に用いることができる。
【0044】
本発明の食品に含まれるコラーゲン加水分解物は、上記のアレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬に含まれるものと同様である。具体的には、本発明のアレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品に含まれるコラーゲン加水分解物は、少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Y(Gly−X−Yはアミノ酸配列であり、X及びYは独立にGly以外のアミノ酸残基を示す)を含むことができる。
【0045】
上記コラーゲン加水分解物に含まれる少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Yは、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Pro、Gly−Pro−Ala、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Pro、Gly−Leu−Hyp、Gly−Glu−Hyp、Gly−Glu−Arg、Gly−Pro−Arg、Gly−Ser−Hyp、Gly−Ala−Lys、Gly−Ala−Arg、Gly−Pro−Lys、Gly−Pro−Ser、Gly−Phe−Hyp、Gly−Pro−Gln、Gly−Ala−Ala、Gly−Pro−Val、Gly−Asp−Ala、Gly−Glu−Ala、Gly−Ala−Asp、及びGly−Arg−Hypからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0046】
上記コラーゲン加水分解物は、トリペプチドGly−X−Y以外に、任意のコラーゲン由来トリペプチド又はジペプチドを含んでもよい。例えば、上記コラーゲン加水分解物は、Pro−Hyp−Gly、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Ala−Hyp、Pro−Ala、及びCyclo(Gly−Pro)からなる群から選択されるいずれかをさらに含むことができる。
【0047】
上記トリペプチドのアミノ酸配列:Gly−X−Yにおいて、Xはアミノ酸残基Pro又はAlaを示し、YはGly以外のアミノ酸残基を示すアミノ酸配列からなるものであってもよく、具体的には、Gly−Pro−Ala、Gly−Pro−Arg、Gly−Pro−Gln、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Lys、Gly−Pro−Pro、Gly−Pro−Ser、Gly−Pro−Val、Gly−Ala−Ala、Gly−Ala−Arg、Gly−Ala−Asp、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Lys、及びGly−Ala−Proからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0048】
本発明において食品は、経口摂取可能な任意の形態であればよく、例えば、溶液、懸濁液、粉末、固体成形物などであってもよい。本発明の食品としては、上記コラーゲン加水分解物を含む錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤及びドリンク剤等のサプリメント、あるいは上記コラーゲン加水分解物を配合した食品(飲料を含む)を挙げることができる。本発明の一態様において食品は、機能性食品または特定保健用食品である。本発明の食品は、アレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善に有効であることから、アレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善を必要とする多くの人々に用いることができる。
【0049】
本発明の食品に含まれるコラーゲン加水分解物は、トリペプチドGly−X−Yを、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%含むことができる。コラーゲン加水分解物中上記トリペプチドの含有率は、例えば1〜40質量%、1〜35質量%、1〜30質量%、1〜25質量%、1〜20質量%、2〜20質量%、又は5〜20質量%の範囲であってもよい。
【0050】
トリペプチドGly−X−Yの濃度が低いコラーゲン加水分解物では、トリペプチドGly−X−Y以外の成分、特に、加水分解の程度が低い高分子量の成分が多くなり、食品への添加に支障をきたす場合もある。そこで、所望の効能とコスト(費用)、さらには食品への添加のし易さ等を考慮して、使用するトリペプチドGly−X−Yを含有するコラーゲン加水分解物の純度を決めることが適当である。例えば、機能性食品においては、価格をある程度抑制したい場合があり、そのような場合には、トリペプチドGly−X−Yの含有率は、好ましくは10〜25質量%であることが適当である。但し、特定保健用食品では、効果の発現をより確実にしたい場合があり、そのような場合には、トリペプチドGly−X−Yの含有率は、好ましくは25〜40質量%であることが適当である。
【0051】
本発明の食品に含まれるコラーゲン加水分解物は、トリペプチド類及びジペプチド類を合わせて、コラーゲン加水分解物中に少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも35質量%含むことができる。コラーゲン加水分解物中トリペプチド類及びジペプチド類の含有率は、例えば10〜50質量%、10〜45質量%、10〜40質量%、10〜35質量%、10〜30質量%、10〜25質量%、又は10〜20質量%の範囲であってもよい。
【0052】
本発明の食品は、コラーゲン加水分解物を、コラーゲン加水分解物に含まれるトリペプチド類及びジペプチド類の濃度によっても異なるが、例えば、トリペプチド類及びジペプチド類を15質量%含有するコラーゲン加水分解物の場合、1日につき体重1kgあたり10〜1000mg、好ましくは100〜1000mg、より好ましくは300〜1000mg、1日1回または数回に分けて経口摂取することができる。
【0053】
コラーゲン加水分解物、あるいは上記のトリペプチド類、ジペプチド類は生体構成成分であると共に、すでに長年の使用経験があるコラーゲン加水分解物に含有されている成分であることから、安全性が高いと考えられる。
【0054】
本発明の食品は、原因物質が花粉、室内塵及びダニの何れかであるアレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善にも有効であることから、アレルギー性鼻炎の発症の予防及び症状の改善を必要とする多くの人々に用いることができる。
【0055】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除および置換を行うことができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
(1)試験溶液の調製
試験物質としてコラーゲン加水分解物「コラーゲン・トリペプチド」(ゼライス株式会社にて作成)を使用した。上記コラーゲン加水分解物の平均分子量は約1500であり、トリペプチド類及びジペプチド類が主成分である低分子画分を約15%と、トリペプチドよりも分子量が大きい、アミノ酸4個以上の加水分解物からなる高分子画分を約85%含む。
LC−MS法により、上記コラーゲン加水分解物に含まれるペプチドを分析した。実験条件は以下のとおりである。装置としてACQUITY UYPLC H−Class System with SQ Detector2(ウォーターズ社)、カラムとしてACCQ−TAG ULTA C18(ウォーターズ社、直径2.1×100mm、粒子径1.7μm)を用いた。溶媒Aに0.1%ギ酸水溶液を、溶媒Bとして0.1%ギ酸を含む50%アセトニトリル水溶液を用い、カラム温度45℃の条件で0.6mL/minの速度で溶媒を流した。グラジエント条件として、0〜5分まで溶媒Aを100%、5〜10分まで溶媒Bを徐々に25%まで上昇させた。これに0.1%で溶媒Aに溶解したコラーゲン加水分解物水溶液を注入し、各トリペプチドの質量を検出することで分析した。
【0057】
LC−MS法により、表1に記載のトリペプチド類及びジペプチド類が検出された。
【表1】
【0058】
表1に記載のペプチドほか、Gly−Ala−Hyp、Gly−Ala−Pro、Gly−Pro−Val、Gly−Pro−Lys、Gly−Ser−Hyp、Gly−Ala−Ala、Gly−Glu−Hyp、Gly−Phe−Hyp、Gly−Glu−Arg、Gly−Ala−Lys、Gly−Asp−Ala、Gly−Glu−Ala、Gly−Ala−Asp、Gly−Arg−Hyp、Pro−Hyp−Gly、Ala−Hyp−Glyが、各々0.001%〜0.05%の範囲で検出された。
【0059】
上記コラーゲン加水分解物において検出されたトリペプチド類及びジペプチド類の合計は、コラーゲン加水分解物中約15質量%であった。そのうち、トリペプチド類は、コラーゲン加水分解物中約13質量%であった。上記コラーゲン加水分解物を水道水100mLあたり、50mg(以下、LD(Low Dose)溶液)又は180mg(以下、HD(High Dose)溶液)溶解したものを、試験溶液として、以下の実施例で用いた。
【0060】
実施例2
<アレルギー性鼻炎モデルマウス(アレルゲン感作マウス)による試験>
(1)アレルギー性鼻炎モデルマウスの作成
6週齢のBALB/c 雌性マウス(日本クレア株式会社)を、室温24±2℃、湿度51±13%、明暗サイクル(明期7:00−19:00)の条件下である動物飼育室で飼育した。餌および水は自由摂取とし、餌は固形飼料CE−2(日本クレア株式会社)を使用した。
【0061】
マウス購入から1週間後をDay0とし、卵白アルブミン(Grade V、Sigma−Aldrich社)1μgと水酸化アルミニウムゲル(ALUM、LSL)100μgを、200μLの生理食塩水に溶解し、Day0とDay5に腹腔内投与することにより全身感作を行った。その後、Day14からDay35まで卵白アルブミン溶液(100mg/mL 生理食塩水)を両鼻腔に2μLずつ、マイクロピペットを用いて連日投与した。
【0062】
(2)試験溶液の投与
実施例1で調製した試験溶液を、Day0からDay35まで給水瓶からマウスに自由摂取させた。なお、LD溶液を投与した群をLD群、HD溶液を投与した群をHD群とした。以下、両群を合わせてCTP投与群と記載する。コントロール群には水道水を摂取させた。試験溶液は毎日新しいものに取り替えた。マウス1匹の体重を約23g、1日の飲水量を約4.5mLとすると、試験物質の一日投与量は、体重1kgあたりLD群で約98mg/kg/day、HD群で約352mg/kg/dayとなる。
【0063】
(3)鼻炎症状の観察
鼻炎症状の観察前に、マウスを観察用ケージ(21×31×13cm
3)に10分間放置して馴化した。その後、卵白アルブミン溶液(100mg/mL 生理食塩水)を2μLずつ両鼻腔に点鼻投与後、観察用ケージに戻し、くしゃみと鼻掻き回数を10分間計測した。鼻炎症状の観察はDay0から実験終了まで、週に1回行った。
【0064】
(4)卵白アルブミン特異的IgE抗体の測定
Day0とDay35にマウスの尾静脈より、ヘパリン処理したヘマトクリット毛細管を用いて血液を採取した。ヘマトクリット遠心機(KUBOTA3200)を用いて血液を遠心分離(12000 rpm、5分間)し、血漿を−30℃で保存した。その後、EIAキット(Cayman Chemical社)を用いて、卵白アルブミン特異的IgE抗体の濃度を測定した。
【0065】
(5)統計方法
データは平均値±標準誤差で表示し、統計処理として、一元配置分散分析とTukey-Kramer法による多重比較を行った。有意差の基準は、P<0.05とした。
【0066】
結果を、
図1に示す。結果から示されるように、コントロール群ではアレルギー性鼻炎症状が経時的に増悪しているが、コントロール群に比較し、CTP投与群ではアレルギー性鼻炎症状の増悪が抑制された。特に、HD群は、くしゃみ回数や鼻掻き回数がともに、コントロール群に比較し、有意に少ないことが示された。Day14からDay35まで卵白アルブミン溶液を連日投与しているが、HD群では、Day0からDay7までと比較して、Day14以降も、くしゃみ回数や鼻掻き回数が増加していないことから、アレルギー性鼻炎の発症が予防されたと解釈することができる。
【0067】
さらに、
図2に示すように、コントロール群のマウスでは、Day35において、血漿中の卵白アルブミン特異的IgE抗体濃度が顕著に増加したのに対し、CTP投与群のマウスは、コントロール群に比較し、その濃度の増加が抑制されていた。特にHD群はより優れた抑制効果を示した。また、CTP投与群では、Day14からDay35まで卵白アルブミン溶液を連日投与しても、血漿中の卵白アルブミン特異的IgE抗体濃度の増加が抑制されることが示された。CTP投与群における血漿中の卵白アルブミン特異的IgE抗体濃度の増加の抑制は、CTP投与群におけるくしゃみや鼻掻きのアレルギー性鼻炎症状の増悪の抑制と一致する結果である。
【0068】
図3に示すように、コントロール群ではDay0と比較してDay35のマウス体重が減少したのに対し、CTP群ではDay0と比較してDay35のマウス体重の増加が見られた。7週齢の雌性マウスは、35日間で通常14%程度体重が増加する。くしゃみはヒトにおいても1回で2kcalを消費するほどの、非常に消耗性の強い症状であり、正常な体重の増加を阻害する。CTP投与群でも正常な体重増加のレベルには戻らなかったものの、減少から増加に転じていることから、くしゃみ等による体力の消耗が抑えられたと考えられる。
以上の試験結果から、トリペプチドを含むコラーゲン加水分解物は、アレルギー性鼻炎の症状の改善及び/治療効果を有することが示された。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種類のトリペプチドGly−X−Y(Gly−X−Yはアミノ酸配列であり、X及びYは独立にGly以外のアミノ酸残基を示す)を含むコラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の予防及び/又は治療薬を提供する。本発明は、また、前記コラーゲン加水分解物を含む、アレルギー性鼻炎の発症予防用及び/又は症状改善用食品を提供する。