特許第6671684号(P6671684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アタゴ製作所の特許一覧 ▶ 株式会社ガスターの特許一覧

<>
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000002
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000003
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000004
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000005
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000006
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000007
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000008
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000009
  • 特許6671684-一缶二水式熱交換器 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671684
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】一缶二水式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20200316BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20200316BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F24H1/00 303E
   F28F1/40 G
   F24H9/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-103100(P2016-103100)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-211111(P2017-211111A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126632
【氏名又は名称】株式会社アタゴ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 望
(72)【発明者】
【氏名】大友 昇
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃太朗
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−185809(JP,A)
【文献】 特開2004−144448(JP,A)
【文献】 特開平09−014760(JP,A)
【文献】 特開2002−349952(JP,A)
【文献】 実開平01−153456(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0109188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 1/46
F24H 9/00
F28F 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体(2)と、
缶体(2)内に配置された給湯管(3D)と、
缶体(2)内で、給湯管(3D)に隣接して配置された風呂追い焚き管(4)と、を備え、
前記給湯管(3D)は、風呂追い焚き管(4)よりも熱源(1)に近い位置に配置されており、管体(31)と、管体(31)の内壁に密接された内部構造体(32)とを備え、内部構造体(32)は、管体(31)が風呂追いき管(4)に接触する部分の周辺に開口部(KA)を有することを特徴とする一缶二水式熱交換器。
【請求項2】
前記管体(31)は、前記風呂追い焚き管(4)と同一の肉厚を有することを特徴とする請求項1に記載の一缶二水式熱交換器。
【請求項3】
缶体(2)と、
缶体(2)の上段に配置された上段給湯管(3U)と、
缶体(2)の下段に配置され、上段給湯管(3U)と接続された下段給湯管(3D)と、
缶体(2)の中段に、上段給湯管(3U)と下段給湯管(3D)の間に挟まれて配置された風呂追い焚き管(4)と、を備え、
前記下段給湯管(3D)は、風呂追い焚き管(4)よりも熱源(1)に近い位置に配置されており、管体(31)と、管体(31)の内壁に密接された内部構造体(32)と、を備え、内部構造体(32)は、管体(31)が風呂追いき管(4)に接触する部分の周辺に開口部(KA)を有することを特徴とする一缶二水式熱交換器。
【請求項4】
前記管体(31)は、前記上段給湯管(3U)及び前記風呂追い焚き管(4)と同一の肉厚を有することを特徴とする請求項3に記載の一缶二水式熱交換器。
【請求項5】
前記開口部(KA)の開口角度は、前記管体(31)の断面中心点(O)を中心として、40°以上180°未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の一缶二水式熱交換器。
【請求項6】
前記内部構造体(32)の開口端部(34,34)の付近が内側に角度をつけて曲げられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の一缶二水式熱交換器。
【請求項7】
前記内部構造体(32)の内壁に切り起こし又は突起(33)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の一缶二水式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯側加熱と風呂側追い焚きを兼備する一缶二水式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの熱源を用い、給湯側加熱と風呂側追い焚きを兼備する一缶二水式熱交換が知られている。図8はこの熱交換器の構成を示す斜視図である。図9図8の垂直面A(熱交換器の略中央を通る垂直平面)で切断した状態を示す一缶二水式熱交換器の断面図である。
【0003】
図8及び図9に示すように、この熱交換器は、上段給湯管3U及び下段給湯管3Dからなる給湯管と、風呂追い焚き管4を一つの缶体2に収納したものである。この缶体2の下方にガスバーナー等の熱源1が配置される。
【0004】
上段給湯管3Uは缶体2の上段に配置され、下段給湯管3Dは缶体2の下段に配置されている。上段給湯管3Uと下段給湯管3Dとは互いに接続されて一本の給湯管を形成している。下段給湯管3Dは缶体2の下段平面上を蛇行し、風呂追い焚き管4を跨いで缶体2の上段に上がる。上段給湯管3Uは上段平面上を蛇行している。なお、下段給湯管3Dの端には給湯入口3INが設けられ、上段給湯管3Uの端には給湯出口3OUTが設けられている。
【0005】
缶体2の中段には、風呂追い焚き管4が上段給湯管3Uと下段給湯管3Dの間に挟まれる形で配置されている。この風呂追い焚き管4は、缶体2の中段平面上を蛇行している。なお、風呂追い焚き管4の一端には風呂入口4INが設けられ、風呂追い焚き管4の他端には風呂出口4OUTが設けられている。また、缶体2には多数の伝熱フィン5が収納されている。上段給湯管3U、下段給湯管3D及び風呂追い焚き管4は、これらの伝熱フィン5を貫通している。
【0006】
さて、熱源1により風呂の追い焚きを連続的に行い、かつ給湯が停止している場合、下段給湯管3Dは、他の管よりも熱源1に近い位置に配置されていることから、熱源1により同時に加熱される下段給湯管3D内の滞留水は、いずれ沸騰温度に到達することが予想される。
【0007】
そこで、図9に示すように、下段給湯管3Dについては、上段給湯管3U及び下段給湯管3Dよりも肉厚の大きい厚肉管を用いることにより、その熱容量を大きくし、下段給湯管3D内の滞留水に対する熱伝導を緩慢にすることができる。これにより、管内(特に、下段給湯管3D内)で発生する部分的な沸騰現象を防止し、風呂側追い焚きの持続時間を延長することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−121260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の熱交換器においては、下段給湯管3Dが肉厚であること、特に、風呂追い焚き管4に接触する下段給湯管3Dの部分及びその周辺が厚肉であることで、本来、風呂の追い焚きのために風呂追い焚き管4に伝達されるべき熱量の一部の伝達が遅れるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一缶二水式熱交換器は、上述の課題に鑑みて為されたものであり、缶体(2)と、缶体(2)内に配置された給湯管(3D)と、缶体(2)内で、給湯管(3D)に隣接して配置された風呂追い焚き管(4)と、を備え、前記給湯管(3D)は、風呂追い焚き管(4)よりも熱源(1)に近い位置に配置されており、管体(31)と、管体(31)の内壁に密接された内部構造体(32)とを備え、内部構造体(32)は、管体(31)が風呂追いき管(4)に接触する部分の周辺に開口部(KA)を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一缶二水式熱交換器は、缶体(2)と、缶体(2)の上段に配置された上段給湯管(3U)と、缶体(2)の下段に配置され、上段給湯管(3U)と接続された下段給湯管(3D)と、缶体(2)の中段に、上段給湯管(3U)と下段給湯管(3D)の間に挟まれて配置された風呂追い焚き管(4)と、を備え、前記下段給湯管(3D)は、風呂追い焚き管(4)よりも熱源(1)に近い位置に配置されており、管体(31)と、管体(31)の内壁に密接された内部構造体(32)と、を備え、内部構造体(32)は、管体(31)が風呂追いき管(4)に接触する部分の周辺に開口部(KA)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一缶二水式熱交換器によれば、給湯管の熱容量を大きくして風呂追い焚き時の滞留水の沸騰現象を防止することができることに加えて、風呂追い焚きの効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態における一缶二水式熱交換器を示す断面図である。
図2図1の下段給湯管の断面図(開口部KAの開口角度が90°の場合)である。
図3図1の下段給湯管の断面図(開口部KAの開口角度が90°の場合)である。
図4図1の下段給湯管の断面図(開口部KAの開口角度が180°の場合)である。
図5】内部構造体の斜視図である。
図6】下段給湯管の断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態における一缶二水式熱交換器を示す断面図である。
図8】一缶二水式熱交換器を示す斜視図である。
図9図8の垂直面Aで切断した状態を示す、従来の一缶二水式熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態における一缶二水式熱交換器を図1図8に基づいて説明する。図1は、図8の垂直面A(熱交換器の略中央を通る垂直平面)で切断した状態を示す一缶二水式熱交換器の断面図である。
【0015】
図1に示すように、この熱交換器は、図9の従来のものと対比すると下段給湯管3Dの構成が異なっている。すなわち、この下段給湯管3Dは、管体31と、この管体31の内壁に密接された内部構造体32とで構成されている。その他の構成は、図9の従来のものと同じである。
【0016】
内部構造体32は、管体31が風呂追いき管4に接触する部分の周辺では管体31の長手方向に沿って形成された開口部KAを有しており、下段給湯管3Dの部分的な薄肉化を実現している。内部構造体32は略管状ではあるが、その断面でみると、風呂追いき管4側の上部が切り欠かれて開口部KAを有した形状をなしている。
【0017】
このように、下段給湯管3Dに内部構造体32を設けることで、下段給湯管3Dの熱容量を大きくして、風呂追い焚き時の滞留水の沸騰現象を防止することができる。また、内部構造体32に開口部KAを形成することで、下段給湯管3Dが風呂追いき管4に接触する部分の周辺では、薄肉化を実現することができ、風呂追い焚き時における下段給湯管3Dから風呂追い焚き管4への熱伝導を促進して風呂追い焚きの効率を向上させることができる。
【0018】
この場合、管体31として、上段給湯管3U及び風呂追い焚き管4と同一の肉厚を有する薄肉管を用いることができる。内部構造体32については、薄肉板を加工することで容易に製作することができ、管体31の内壁に密接し、ろう付けが可能である。これにより、従来の熱交換器におけるような肉厚管の使用を排除して、部品価格の大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0019】
この内部構造体32の製造方法を図2乃至図4に基づいて説明する。弾力性を有した薄肉板をスプリングピンのように丸め、下段給湯管3Dの管体31に圧入に近い形で挿入する。挿入した薄肉板は弾性変形により元の形に戻ろうとするため、薄肉板は管体31の内壁に沿って広がり、管体31の内壁に密接した内部構造体32を形成することができる。
【0020】
図2に示すように、内部構造体32の開口部KAの開口角度が例えば90°となるように薄肉板を丸め、管体31へ圧入する。開口部KAの開口角度は、管体31の断面中心点Oを中心として定義される。開口部KAの開口角度とは、断面中心点Oと内部構造体32(薄肉板)の対向する開口端部34,34とをそれぞれ結ぶ2本の線の成す角度のことである。
【0021】
そうすると、図3に示すように、圧入した薄肉板はスプリングバックにより元の形に戻ろうとする。そうすると、薄肉板の開口端部34,34には上・斜め上・水平方向(図3中の実線矢印の方向)に広がろうとする力が働き、その力が生じることで、薄肉板の中央部付近は管体31下部の内壁に押しつけられ(図3中の破線矢印の方向)、内壁と薄肉板を密接させることができる。
【0022】
開口部KAの開口角度が180°以上となると、図4のように薄肉板がスプリングバックにより元の形に戻ろうとしても水平方向にしか力が働かない。そのため、薄肉板中央部付近は管体31の下部の内壁側方向に押し出される力が働かず、薄肉板と管体31下部の内壁とが密接しにくくなってしまう。
【0023】
一方、開口部KAの角度が40°未満であると、下段給湯管3Dの肉厚となる部分が多くなり過ぎ、風呂追い焚き管4との熱伝導が悪くなる恐れがある。そのため、以上の2つの観点(密接力と熱伝導)を考慮すると、開口部KAの開口角度については40°以上180°未満であることが好ましいと言える。最も好ましい開口部KAの開口角度は、80°以上100°以下である。
【0024】
内部構造体32の開口部KAを画定している開口端部34,34の形状は長手方向にストレートに延びていてもよいが、図5の斜視図に示すように、長手方向に沿って波形をなしていてもよい。
【0025】
また、図6の断面図に示すように、内部構造体32を形成している薄肉板の開口端部34,34の付近を円周方向の内側に角度をつけて曲げることで、後述する内部構造体32の切り起こしや突起33と同様に、乱流発生効果とコストダウン効果を得ることができる。さらに、この曲げ部分35と管体31の内壁間にろう材36を設置してろう付けを行うことができる。したがって、曲げ部分34はろう材36を安定して載置することできる載置場所としての役割も果たし得ることになる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態における一缶二水式熱交換器を図7及び図8に基づいて説明する。図7図8の垂直面A(熱交換器の略中央を通る垂直平面)で切断した状態を示す一缶二水式熱交換器の断面図である。
【0027】
図7に示すように、この熱交換器は、図1の第1の実施形態ものと対比すると、内部構造体32の内壁に切り起こしや突起33等の乱流発生障害物が形成されている点が異なっている。その他の構成は、第1の実施形態ものと同じである。内部構造体32は、板金で容易に加工することができ、切り起こしや突起33等の複雑な形状も追加工することができる。
【0028】
従来の熱交換器の管内部には、別体部品としてスプリング状の乱流発生装置が管に内接する形で挿入されている。この内部構造体32に形成される切り起こし又は突起33等は、同様な乱流発生効果により熱伝導の向上をもたらすことが期待できる。そして、スプリング状の乱流発生装置の使用を廃止して、更なるコストダウンが可能になる。
【0029】
なお、上述の各実施形態の熱交換器においては、缶体2の上段に上段給湯管3Uが配置され、中段に風呂追い焚き管4が配置され、下段に下段給湯管3Dが配置された3段構成になっているが、これに限らず、上段給湯管3Uを廃止し、上段に風呂追い焚き管4が配置され、下段に給湯管(下段給湯管3Dと同じ構成)が配置された2段構成を採用することもでき、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 熱源
2 缶体
3D 下段給湯管
3U 上段給湯管
4 風呂追い焚き管
5 伝熱フィン
31 管体
32 内部構造体
33 切り起こし又は突起
34 開口端部
35 曲げ部分
36 ろう材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9