【文献】
宇根正志,井上紫織,機械学習システムの脆弱性と対応策にかかる研究動向について Research Trends on Vulnerability and Countermeasures in Machine Learning Systems,コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集,2018年10月15日,p.193-200
【文献】
林卓也,準同型暗号を用いた秘密計算とその応用,システム/制御/情報,2019年 2月 5日,第63巻 第2号,p.64-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想実行環境廃棄部は、前記ソースコード実行部が前記ソースコードの実行を開始して所定時間経過後に、前記仮想実行環境を廃棄する、請求項2に記載の演算装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0013】
<実施形態1>
(情報処理システム1の構成)
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の構成を示す図である。
図1を参照して、実施形態1に係る情報処理システム1の構成について説明する。
【0014】
情報処理システム1は、データセンタ10と、端末300−1,300−2,…,300−N(Nは自然数)と、を備え、ネットワークNWを介して通信可能に接続される。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等であるが、任意のネットワークから構成されてもよい。なお、以下の説明では、端末300−1,300−2,…,300−Nは、特に区別する必要のない限り、端末300と記載する。また、本実施形態においては、データセンタ10はネットワークNWを介して端末300等と接続されているが、これに限られず、情報処理システム1は、データセンタ10とローカルに接続される端末300等を備えていてもよい。
【0015】
データセンタ10は、情報処理システム1を利用するユーザ等に対し演算処理を提供し、演算サーバ100と登録サーバ200とを有する。演算サーバ100は、暗号化データについて演算を行う演算装置に相当し、ネットワークNWに接続される端末300等から受信した演算処理要求に応じて、暗号化データについて演算を行う。登録サーバ200は、上述のユーザに対し、情報処理システム1を利用するための事前登録処理を行う。
【0016】
端末300は、上述のユーザが用いる情報処理装置であって、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、ヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブル端末、AR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)/MR(Mixed Reality)装置等である。端末300は、登録サーバ200に対して利用の申請を行ったり、演算サーバ100に対して演算処理の要求を行なったりする。
【0017】
(演算サーバ100の機能構成)
図2は、演算サーバ100の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2を参照して、演算サーバ100の機能構成の一例について説明する。
【0018】
演算サーバ100には、OS(Operating System)110が搭載され、OS110において、アプリケーション120が動作する。OS110は、制御部111と、認証部114と、鍵管理部115と、記憶部116と、を備える。ここで、OS110において、OSにインストールされるプログラムや、アプリケーション等の実行に使用される環境を「標準実行環境」と呼ぶ。
【0019】
制御部111は、仮想実行環境構築部112と、仮想実行環境廃棄部113と、を有し、暗号化データ117(後述)を利用するアプリケーション120から、暗号化データ117についての演算処理要求を受けて、演算処理の制御を行う。
【0020】
仮想実行環境構築部112は、演算処理要求に応じて、標準実行環境から保護された仮想実行環境を構築する。すなわち、認証されたユーザしか標準実行環境から仮想実行環境にはアクセスすることができない。本実施形態において、仮想実行環境は、OS110の一部として実装されるが、構築する方法は特に限定されるものではなく、アプリケーションとして実装されてもよいし、アプリケーション内のモジュールとして実装されてもよい。また、仮想実行環境は、標準実行環境とハードウェアのメモリ部分を共有してもよいし、非共有であってもよい。仮想実行環境は、実体としては所定のデータで表されるが、OS110上で実行されることにより、仮想化されたアプリケーションサーバ等として利用できる。
【0021】
仮想実行環境廃棄部113は、上述の仮想実行環境を廃棄する(消滅させる)。例えば、仮想実行環境を表す所定のデータを削除することで、仮想実行環境を廃棄する。仮想実行環境廃棄部113は、ソースコード実行部134(後述)がソースコードの実行を開始して所定時間経過後、仮想実行環境を廃棄してもよい。また、提供部136(後述)が暗号化された演算結果を提供した後、仮想実行環境を廃棄してもよい。また、認証部114(後述)が認証したユーザからの指示に基づいて、仮想実行環境を廃棄してもよい。また、仮想実行環境は、所定の定期的なタイミングで廃棄されてもよい。なお、仮想実行環境を廃棄するまでの時間(期間)は数秒から数分が好ましいが、処理量などに応じて適宜設定されてもよい。
【0022】
すなわち、暗号化データについてソースコードの実行により演算を行う仮想実行環境は、ワンタイム(使い捨て)の実行環境である。アクセス制限された実行環境であっても、十分な時間が与えられた侵入者(認証されない、不正なユーザ等)には容易にアクセスしうる。そこで、本実施形態では、ワンタイムの仮想実行環境において演算を行うことで、侵入者がアクセスするリスクを低減させ、セキュリティの向上を図っている。
【0023】
認証部114は、仮想実行環境に対し、セキュアにアクセス可能なユーザか否かを認証する。例えば、ユーザを識別する識別情報(ID)と認証情報とを対応付けて記憶する認証データベースを有しており、情報処理システム1の利用登録がされたユーザについて認証する。なお、認証情報は、ユーザの意思に基づいて変更可能としてもよいし、所定期間ごとに変更させるようにしてもよい。また、認証情報は、所定期間ごとや、仮想実行環境を構築するごとに更新されるワンタイムパスワード(One Time Password;OTP)としてもよい。OTPは、例えば、時間に依存した関数によって計算されたランダムな数字、文字、記号等から生成されるが、この方法に限定されず、他の方法で行われてもよい。OPTは、例えば、ユーザからの認証要求の度に、認証部114からユーザのメールアドレスやSMS(Short Message Service)に送られるようにしてもよい。この場合、メールやSMSについて閲覧権限がないとOPTを取得することができないため、セキュリティをより強固にすることができる。
【0024】
鍵管理部115は、ユーザのIDと、情報処理システム1においてデータを暗号化するのに用いるシステム鍵とを対応付けて記憶する鍵データベースを有している。鍵管理部115は、例えば、ユーザの利用登録が実行された際にシステム鍵を生成し、鍵データベースに登録してもよい。なお、鍵管理部115は、演算サーバ100においてOS110とは異なるOSに備えられていてもよい。また、システム鍵は、ネットワークNWを介したユーザ側で生成され、セキュリティが確保された方法により、鍵管理部115の鍵データベースに登録されるようにしてもよい。セキュリティが確保された方法は、例えば、公開鍵アルゴリズム等の周知技術を利用する方法に限られず、書類や対面であってもよい。
【0025】
記憶部116は、暗号化データ117と、ソースコード118と、を記憶する。暗号化データ117は、上述のシステム鍵によって暗号化されたデータである。本実施形態において、暗号化されるデータは、例えば、個人情報などプライバシー面での配慮が要求されるデータであるが、これに限られず、暗号化されたデータを含んで生成されるデータなど、どのようなデータであってもよい。
【0026】
ソースコード118は、演算のためのソースコードであり、暗号化データ117をシステム鍵によって復号したデータについて演算を実行するプログラムである。暗号化データ117およびソースコード118は、端末300から演算サーバ100に対してネットワークNWを介して送信されてもよいし、記憶媒体等から取得してもよい。また、予め記憶部116に格納されていてもよい。
【0027】
ソースコード118は、暗号化データ117に基づいて学習モデルを生成するアルゴリズムであってもよく、例えば、復号した暗号化データ117について相関関係等を抽出し、演算結果として学習モデルを生成する。
【0028】
アプリケーション120は、OS110上で動作するアプリケーションであり、例えば、暗号化されたデータについて、解析や分析を行う。アプリケーション120が演算API(Application Program Interface)を呼び出すと、演算処理要求が制御部111に出力される。制御部111の仮想実行環境構築部112は、演算処理要求に応じて上述の仮想実行環境を構築する。
【0029】
仮想実行環境には、OS130が搭載される。OS130は、演算処理部131を備える。制御部111は、OS110とOS130との間で、セキュアな通信チャネルを形成する。例えば、OS110とOS130との間で送受信されるデータを暗号化するセッション鍵を、予め仮想実行環境が含むように仮想実行環境を構築してもよいし、OS130またはOS110で生成したセッション鍵を、公開鍵アルゴリズム等を利用した周知技術により共有するようにしてもよい。本実施形態では、OS110とOS130とは、上述のセキュアな通信チャネルを通してデータを送受信するが、暗号化されているデータについては、セッション鍵で暗号化を行わないようにしてもよい。これにより、処理の負担が軽減する。
【0030】
演算処理部131は、例えば、OS130にインストールされる演算プログラムであって、取得部132と、復号部133と、ソースコード実行部134と、暗号化部135と、提供部136と、を含む。
【0031】
取得部132は、暗号化データ取得部、ソースコード取得部および鍵取得部に相当し、記憶部116から暗号化データ117およびソースコード118、並びに鍵管理部115からシステム鍵を取得する。
【0032】
復号部133は、取得部132が取得したシステム鍵によって、暗号化データ117を復号する。
【0033】
ソースコード実行部134は、復号された暗号化データ117に対し、ソースコード118を実行する。
【0034】
暗号化部135は、ソースコード実行部134が実行した演算結果を暗号化する。暗号化部135は、取得部132が取得したシステム鍵によって暗号化してもよいし、当該システム鍵に代えて、当該システム鍵とは異なる鍵によって暗号化してもよい。例えば、鍵管理部115は、システム鍵および当該システム鍵とは異なる鍵(システム鍵)を生成し、取得部132は、これらの鍵を取得して暗号化部135に送ってもよい。また、取得部132は、演算処理部131の鍵生成部(
図2において不図示)で生成した、システム鍵とは異なる鍵を取得し、暗号化部135に送ってもよい。これにより、例えば、演算結果にアクセスを許可するユーザにのみ上記異なる鍵を付与するようにして、演算結果に対するアクセス権限を管理することができる。
【0035】
提供部136は、暗号化された演算結果を標準実行環境等に提供する。例えば、暗号化された演算結果を記憶部116に格納してもよいし、アプリケーション120に処理要求に対する応答として出力してもよい。なお、提供部136は、上述の鍵生成部で生成した、システム鍵とは異なる鍵(システム鍵)を、標準実行環境に提供するようにしてもよい。
【0036】
暗号化された演算結果が提供された後、仮想実行環境は廃棄される。なお、本実施形態では、仮想実行環境廃棄部113は、OS110に備えられるが、OS110に代えてOS130に備えられてもよいし、OS110およびOS130に備えられてもよい。
【0037】
上述のように、本実施形態における演算処理では、アプリケーション120が演算APIを呼び出すと、制御部111の仮想実行環境構築部112が標準実行環境から保護された仮想実行環境を構築し、暗号化データについての演算処理をOS130の演算処理部131に委託する。演算処理部131は、暗号化データを復号し、復号された暗号化データについて演算を実行し、演算結果を暗号化して、標準実行環境に提供する。復号された暗号化データ(生データ)に対して演算処理を行うことにより、暗号化状態のまま演算を行うことができる準同型暗号等を用いた演算よりも処理効率を向上させることができる。また、標準実行環境から保護された仮想実行環境においてデータの復号を行って演算処理を行うので、認証されないユーザからのアクセスを防ぐことができ、セキュリティも確保される。
【0038】
また、仮想実行環境は、ソースコード実行後、所定のタイミングで廃棄されるワンタイム(使い捨て)の実行環境であるため、仮想実行環境のOS130への攻撃による暗号鍵の不正取得等のリスクを低減し、セキュリティの向上を図ることができる。また、本実施形態における仮想実行環境の構成は、ソフトウエア技術のみで実現可能であり、追加ハードウェアを必要としないため、運用コストを安価にすることができる。
【0039】
(登録サーバ200の機能構成)
図3は、登録サーバ200の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3を参照して、登録サーバ200の機能構成の一例について説明する。
【0040】
登録サーバ200は、ID生成部201と、認証情報生成部202と、を備える。ID生成部201は、ユーザの利用申請に応じて、ユーザを識別する識別情報(ID)を生成する。認証情報生成部202は、ユーザの認証情報を生成する。例えば、乱数発生器等を用いて、認証情報としてパスワードを生成する。
【0041】
(登録サーバ200における処理)
図4は、登録サーバ200における処理の一例を示すシーケンス図である。
図4を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1に対する利用登録処理について説明する。なお、利用登録は、端末300、登録サーバ200、演算サーバ100間において、上述のようにセキュリティが確保された方法により行われる。
【0042】
ステップS101において、端末300は、登録サーバ200に対し、利用申請を行う。
【0043】
ステップS103において、登録サーバ200は、ユーザを識別するIDおよび認証情報を生成する。
【0044】
ステップS105において、端末300は、ステップS103において生成されたIDおよび認証情報を取得する。例えば、端末300は、情報処理システム1の運営会社から書面によってIDおよび認証情報を受け取ってもよいし、公開鍵アルゴリズム等の周知技術によりIDおよび認証情報を受信してもよい。
【0045】
ステップS107において、演算サーバ100の認証部114は、ステップS105と同様に、セキュリティが確保された方法により、IDと認証情報を取得する。
【0046】
ステップS109において、認証部114は、認証データベースにIDと認証情報とを対応付けて登録する。
【0047】
ステップS111において、鍵管理部115は、ユーザのIDを取得する。
【0048】
ステップS113において、鍵管理部115は、ユーザのIDに対応したシステム鍵を生成し、鍵データベースにIDとシステム鍵とを対応付けて登録する。
【0049】
(演算サーバ100における認証処理)
図5は、演算サーバ100における認証処理の一例を示すシーケンス図である。
図5を参照して、演算サーバ100における認証処理について説明する。なお、
図5で示す処理ステップの順序は一例であり、また、認証方法や、システム鍵の共有方法は、以下で説明する方法に限られないことは言うまでもない。
【0050】
ステップS201において、端末300は、演算サーバ100に対し、認証要求と共に、端末300を利用するユーザのIDを送信する。また、ステップS202において、端末300は、自身の公開鍵および秘密鍵を生成する。
【0051】
ステップS203において、認証部114は、認証要求に応じて乱数を生成し、ステップS205において、端末300に送信する。
【0052】
ステップS207において、端末300は、受信した乱数と、上述の利用登録により取得した認証情報とを連結して、ハッシュを生成する。
【0053】
ステップS209において、端末300は、生成したハッシュおよび公開鍵を含む情報を認証部114に送信する。
【0054】
ステップS211において、認証部114は、ステップS201において認証要求と共に受信したIDに対応する認証情報を認証データベースから読み出し、読み出した認証情報と、ステップS203において生成した乱数とを連結して、ハッシュを生成する。そして、端末300から受信したハッシュが、認証部114が生成したハッシュと一致するか否かを判定する。
【0055】
ハッシュが一致しない場合、ステップS212において、認証部114は、認証要求したユーザは、利用登録されていないユーザとして判断し、認証に失敗した旨を送信する。一方、ハッシュが一致した場合、ステップS213において、認証部114は、認証要求したユーザを認証されたユーザとして判断し、鍵管理部115に対し、ユーザのIDとステップS209において受信した公開鍵を送信する。
【0056】
ステップS215において、鍵管理部115は、IDに対応するシステム鍵を鍵データベースにおいて検索する。
【0057】
ステップS217において、鍵管理部115は、検索したシステム鍵をステップS213において受信した公開鍵で暗号化し、ステップS219において、暗号化されたシステム鍵を端末300に送信する。
【0058】
ステップ221において、端末300は、暗号化されたシステム鍵を、ステップS202において生成した秘密鍵で復号し、システム鍵を登録する。端末300は、情報処理システム1において、演算サーバ100で演算処理を要求する際に扱うデータは、当該システム鍵で暗号化する。
【0059】
なお、本実施形態では、システム鍵は鍵管理部115によって生成されたが、端末300側で生成し、鍵管理部115と共有してもよい。
【0060】
(演算サーバ100における演算処理)
図6は、演算サーバ100における演算処理の一例を示すシーケンス図である。
図6を参照して、演算サーバ100における演算処理について説明する。なお、
図6で示す処理ステップの順序は一例であり、以下で説明する処理手順に限られないことは言うまでもない。また、
図6において、端末300は、
図5で認証された端末300とする。
【0061】
ステップS301において、端末300は、演算サーバ100に対し、演算の処理要求を行う。例えば、演算APIを呼び出し、制御部111に対し演算の処理要求を行う。なお、OS110上で動作するアプリケーションから処理要求が行われてもよい。
【0062】
ステップS303において、制御部111は、処理要求に応じて、仮想実行環境を構築する。
【0063】
ステップS305において、端末300は、演算サーバ100に対し、暗号化データを送信し、記憶部116は、暗号化データを格納する。なお、
図6の例では、記憶部116には予めソースコードが格納されている。
【0064】
ステップS307において、演算処理部131は、暗号化データおよびソースコードを記憶部116から取得する。
【0065】
ステップS309において、演算処理部131は、鍵管理部115からシステム鍵を取得する。
【0066】
ステップS311において、演算処理部131は、暗号化データをシステム鍵により復号し、ステップS313において、復号された暗号化データに対し、ソースコードを実行する。
【0067】
ステップS315において、ソースコードを実行した演算結果をシステム鍵により暗号化し、ステップS317において、端末300に対して送信される。なお、暗号化された演算結果は、記憶部116に格納されてもよい。
【0068】
ステップ319において、演算処理部131は、暗号化された演算結果を提供したことを制御部111に通知する。
【0069】
ステップS321において、制御部111は、ステップS319において演算結果の提供が終了した旨の通知を受けたことに応じて、仮想実行環境の廃棄を行う。
【0070】
(ハードウェア構成図)
図7は、演算サーバ100のハードウェア構成を示すブロック図である。演算サーバ100は、コンピュータ501に実装される。コンピュータ501は、CPU502と、主記憶装置503と、補助記憶装置504と、インターフェイス505と、を備える。
【0071】
演算サーバ100の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置504に記憶されている。CPU502は、プログラムを補助記憶装置504から読み出して主記憶装置503に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU502は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置503に確保する。当該プログラムは、具体的には、コンピュータ501に、暗号化データについて演算を行うプログラムである。
【0072】
なお、補助記憶装置504は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インターフェイス505を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークを介してコンピュータ501に配信される場合、配信を受けたコンピュータ501が当該プログラムを主記憶装置503に展開し、処理を実行してもよい。
【0073】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置504に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。なお、
図7に示したハードウェア構成は、登録サーバ200および端末300も同様の構成としてもよい。これらの装置における各構成要素の動作も、上述の演算サーバ100と同様に、補助記憶装置に記憶されたプログラムに従ったCPUにより実現する。
【0074】
(効果の説明)
上述したように、本実施形態では、標準実行環境から保護された仮想実行環境を構築し、暗号化データについての演算処理を仮想実行環境において実行する。仮想実行環境では、暗号化データが復号され、復号された暗号化データについて演算が実行される。そして、演算結果は暗号化され、標準実行環境に提供される。復号された暗号化データ(生データ)に対して演算処理を行うことにより、暗号化状態のまま演算を行うことができる準同型暗号等を用いた演算よりも処理効率を向上させることができる。また、標準実行環境から保護された仮想実行環境においてデータの復号を行って演算処理を行うので、認証されないユーザからのアクセスを防ぐことができ、セキュリティも確保される。
【0075】
また、仮想実行環境は、ソースコード実行後、所定のタイミングで廃棄されるワンタイム(使い捨て)の実行環境であるため、仮想実行環境のOSへの攻撃等による暗号鍵の不正取得等のリスクを低減し、セキュリティの向上を図ることができる。また、本実施形態における仮想実行環境の構成は、ソフトウエア技術のみで実現可能であり、追加ハードウェアを必要としないため、運用コストを安価にすることができる。
【0076】
<実施形態1の変形例>
上述の演算サーバ100において実行される演算のためのソースコード118は、秘密計算処理プロセスの高速化のための演算アルゴリズムであってもよい。ソースコード実行部134は、例えば、復号した暗号化データ117についてキーデータの比較演算等を行い、演算結果としてデータ解析のための条件分岐先が決定されたデータや、ソート等されたデータを生成してもよい。すなわち、準同型暗号などによる暗号化状態のまま計算すると処理時間がかかってしまうような秘密計算処理プロセスについて、仮想実行環境において暗号化データを復号して演算を実行することで、処理の高速化を図るものである。
【0077】
また、ソースコード118は、暗号アルゴリズムであってもよい。例えば、記憶部116は、ソースコード118として、暗号ライブラリを記憶し、ソースコード実行部134は、復号した暗号化データ117について、任意の他の暗号方式(暗号化データ117で用いられた暗号方式とは異なる暗号方式)で暗号化する。すなわち、暗号化データ117の暗号形式の変換を図るものである。
【0078】
また、演算サーバ100を、プロキシサーバとして機能させてもよい。例えば、通信量の増大/減少に応じて仮想実行環境を構築・廃棄することで、暗号化ゲートウェイを目的として、セキュリティを確保することができる。また、効率的にアクセス制御を行うことができる。
【0079】
<実施形態2>
本実施形態に係る演算サーバ400は、仮想実行環境に対する不正なアクセスを検知する検知部を備える点で、実施形態1に係る演算サーバ100と異なる。
【0080】
図8は、演算サーバ400の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2で示した実施形態1に係る演算サーバ100とは、検知部119を備える点と、仮想実行環境廃棄部113に代えて仮想実行環境廃棄部413を備える点が異なる。したがって、一致する点については、説明は省略する。
【0081】
OS110は、仮想実行環境に対する不正なアクセスを検知する検知部119を備える。検知部119は、例えば、OS110上で動作するプログラムであり、OS110上でプログラム等を動作させるために必要な各種リソース(ファイルやレジストリ、カーネルデータ構造体など)に対して書き込みや削除を行うようなアクセス要求を不正なアクセスとして検知してもよい。また、検知部119は、例えば、アカウントの乗っ取りや、異なるIPアドレスからのアクセス、IDや認証情報等について所定期間における所定回数以上の試行、ユーザ指定プログラム以外のプログラムの割り込み等を不正なアクセスとして検知してもよいし、これらに限られず、公知の技術を採用して、不正なアクセスを検知してもよい。検知部119は、不正なアクセスを検知すると、不正なアクセスがある旨を仮想実行環境廃棄部413に通知する。
【0082】
仮想実行環境廃棄部413は、検知部119が不正なアクセスを検知したことに基づいて、仮想実行環境を廃棄する。仮想実行環境に対する不正なアクセスを検知したことに応じて、仮想実行環境を廃棄することで、復号された暗号化データが不正に取得されることを防止することができ、セキュリティを向上させることができる。
【0083】
上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【解決手段】演算サーバ100は、標準実行環境から保護される仮想実行環境において暗号化データ117について演算を行う装置であって、仮想実行環境を構築する仮想実行環境構築部112を備える。仮想実行環境は、暗号化データ117を取得する暗号化データ取得部と、演算のためのソースコードを取得するソースコード取得部と、システム鍵を取得する鍵取得部と、取得したシステム鍵によって暗号化データ117を復号する復号部133と、復号された暗号化データ117に対し、ソースコードを実行するソースコード実行部134と、ソースコードを実行した演算結果を、システム鍵によって暗号化する暗号化部135と、暗号化された演算結果を標準実行環境に提供する提供部136と、を含む。