(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リチウムスルホンイミド系化合物が、リチウムフルオロアルキルスルホンイミド、リチウムフルオロアリールスルホンイミドまたはリチウムフルオロアルキルアリールスルホンイミドを含むことを特徴とする請求項6に記載のリチウム空気電池用電解質。
前記負極と電解質との間に、イオン伝導性無機物粒子を含むリチウムイオン伝導性層がさらに含まれることを特徴とする請求項10または11に記載のリチウム空気電池。
前記イオン伝導性無機物粒子は、ガラス質活性金属イオン伝導体、非晶質活性金属イオン伝導体、セラミックス活性金属イオン伝導体、及びガラス−セラミックス活性金属イオン伝導体のうちから選択された一つ以上、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項12に記載のリチウム空気電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐酸化性とリチウム塩の溶解度とが向上したリチウム空気電池用電解質を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記リチウム空気電池用電解質を使用して、優秀な性能のリチウム空気電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一側面は、下記化学式1で表示される化合物、及びリチウム塩を含むリチウム空気電池用電解質を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1で、
R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子またはCR
15R
16R
17であり、
R
3ないしR
17、並びにR
20及びR
21は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボン酸基、置換もしくは非置換のC
1−C
20アルキル基、置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基、または置換もしくは非置換のC
3−C
20ヘテロアリール基であり、
R
18及びR
19のうち少なくとも一つは、互いに独立して、フッ素原子、一部または全部がフッ素で置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは一部または全部がフッ素で置換されたC
6−C
30アリール基であり、残りのR
18及びR
19は、水素原子、置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基であり、選択的に、R
20とR
21は、置換もしくは非置換のC
3−C
8環を形成することができ、
選択的に、R
18及びR
19は、全部または一部がフッ素で置換もしくは非置換のC
3−C
8環を形成することができ、
mは、1ないし1,000,000であり、nは、0ないし1,000,000であり、pは、0ないし1,000,000であり、m+n+p≧3である。
【0010】
前記R
1及びR
2は、互いに独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基またはヘプタフルオロプロピル基を含むことが好ましい。
【0011】
前記R
3ないしR
17は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基を含むことが好ましい。
【0012】
前記R
20及びR
21のうち少なくとも一つは、互いに独立して、フッ素原子、一部または全部がフッ素で置換されたC
1−C
10アルキル基、あるいは一部または全部がフッ素で置換されたC
6−C
30アリール基であり、その残りのR
20またはR
21は、水素原子、置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基であり、選択的に、R
20とR
21は、一部または全部がフッ素で置換されたC
3−C
8環を形成することが好ましい。
【0013】
前記R
18ないしR
21のうち少なくとも一つは、互いに独立して、フッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基またはヘプタフルオロプロピル基を含み、残りのR
18ないしR
21は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基であり、
選択的に、R
18及びR
19、並びに/またはR
20及びR
21は、全部または一部がフッ素で置換されたシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロノルボルナンまたはビシクロオクタンを形成し、残りのR
18及びR
19、あるいはR
20及びR
21は、非置換のシクロプロパン、非置換のシクロブタン、非置換のシクロペンタン、非置換のシクロヘキサン、非置換のシクロヘプタン、非置換のシクロノルボルナン、または非置換のビシクロオクタンを形成することが好ましい。
【0014】
mは、1ないし1,000であり、nは、0ないし1,000であり、pは、0ないし1,000であることが好ましい。
【0015】
前記化学式1で表示される化合物は、下記化学式1aで表示される化合物であってもよい。
【0016】
【化2】
【0017】
前記化学式1aで、R
18ないしR
21は、互いに独立して、フッ素原子、部分的にフッ素化されるか、あるいは完全フッ素化されたC
1−C
10アルキル基、あるいは部分的にフッ素化されるか、あるいは完全フッ素化されたC
6−C
20アリール基であり、
R
15、R
16、R
17は、互いに独立して、水素、あるいは置換もしくは非置換のC
1−C
20アルキル基である。
【0018】
前記化学式1で表示される化合物は、下記化学式1bで表示される化合物であってもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
前記化学式1bで、R
18ないしR
21は、互いに独立して、フッ素原子、部分的にフッ素化されるか、あるいは完全フッ素化されたC
1−C
10アルキル基、あるいは部分的にフッ素化されるか、あるいは完全フッ素化されたC
6−C
20アリール基であり、Rは、水素またはフッ素であり、kは、0ないし5の数である。
【0021】
前記化学式1で表示される化合物は、下記化学式2ないし5で表示される化合物のうちから選択することができる。
【0022】
【化4】
【0023】
前記化学式1で表示される化合物の含量は、電解質総重量100重量部を基準にして、15ないし97重量部とすることができる。
【0024】
前記リチウム塩は、リチウムスルホンイミド系化合物とすることができる。
【0025】
前記リチウムスルホンイミド系化合物は、リチウムフルオロアルキルスルホンイミド、リチウムフルオロアリールスルホンイミドまたはリチウムフルオロアルキルアリールスルホンイミドを含むことができる。
【0026】
前記リチウムスルホンイミド系化合物は、Li(FSO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiN(C
pF
2p+1SO
2)(C
qF
2q+1SO
2)(pとqは、互いに異なり、p及びqは、互いに独立して、1ないし20の整数である)、LiN((SO
2)
2C
pF
2p)(pは、1ないし10の整数である)、Li(C
6F
5SO
2)
2N、Li(C
10F
7SO
2)
2N、Li(C
6F
5SO
2)(C
10F
7SO
2)N、LiN(C
6F
5SO
2)(C
pF
2p+1SO
2)(pは、1ないし10の整数である)またはLiN(C
10F
7SO
2)(C
pF
2p+1SO
2)(pは、1ないし10の整数である)を含むことができる。
【0027】
本発明のリチウム空気電池用電解質は、非水系有機溶媒をさらに含むことができる。
【0028】
前記課題を解決するために、本発明の他の一側面は、負極(anode);正極(cathode);及びリチウム塩と、前記化学式1で表示される化合物とを含むリチウム空気電池用電解質;を含むリチウム空気電池を提供する。
【0029】
前記電解質の一部または全部は、前記正極に含浸されることができる。
【0030】
前記負極と電解質との間に、イオン伝導性無機物粒子を含むリチウムイオン伝導性層がさらに含まれることができる。
【0031】
前記イオン伝導性無機物粒子は、ガラス質活性金属イオン伝導体、非晶質活性金属イオン伝導体、セラミックス活性金属イオン伝導体、及びガラス−セラミックス活性金属イオン伝導体のうちから選択された一つ以上、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0032】
前記イオン伝導性無機物粒子は、Li
1+x+yAl
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1−xLa
xZr
1−yTi
yO
3(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(Mg
3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、HfO
2、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、Na
2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、SiC、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムニトリド(Li
xN
y)(0<x<4、0<y<2)、SiS
2(Li
xSi
yS
z)系ガラス(0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P
2S
5(Li
xP
yS
z)系ガラス(0<x<3、0<y<3、0<z<7)、Li
2O、LiF、LiOH、Li
2CO
3、LiAlO
2、Li
2O−Al
2O
3−SiO
2−P
2O
5−TiO
2−GeO
2系セラミックス、及びガーネット系セラミックス(Li
3+xLa
3M
2O
12)(0≦x≦5)(M=Te、NbあるいはZr)のうちから選択された一つ以上、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0033】
前記負極とリチウムイオン伝導性層との間に、第2電解質がさらに含まれることができる。
【0034】
前記第2電解質は、固体高分子電解質または無機固体電解質とすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、エーテル系電解質が、選択的な位置にフッ素基を含み、電解質の耐酸化性、塩溶解度及び酸素親和性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、一具現例によるリチウム空気電池用電解質について詳細に説明する。
【0038】
一具現例によるリチウム空気電池用電解質は、下記化学式1で表示される化合物、及びリチウム塩を含む。
【0040】
化学式1で、
R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子またはCR
15R
16R
17であり、
R
3ないしR
17、並びにR
20及びR
21は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボン酸基、置換もしくは非置換のC
1−C
20アルキル基、置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基、あるいは置換もしくは非置換のC
3−C
20ヘテロアリール基であり、
R
18及びR
19のうち少なくとも一つは、互いに独立して、フッ素原子、一部または全部がフッ素で置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは一部または全部がフッ素で置換されたC
6−C
30アリール基であり、残りのR
18及びR
19は、水素原子、置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基であり、選択的に、R
20とR
21は、置換もしくは非置換のC
3−C
8環を形成することができ、
選択的に、R
18及びR
19は、全部または一部がフッ素で置換もしくは非置換のC
3−C
8環を形成することができ、
mは、1ないし1,000,000であり、nは、0ないし1,000,000であり、pは、0ないし1,000,000であり、m+n+p≧3である。
【0041】
化学式1で表示される化合物は、リチウムイオン伝導性を有し、耐酸化性、リチウム塩の溶解度及び酸素親和性にすぐれる。
【0042】
R
1及びR
2は、例えば、互いに独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基またはヘプタフルオロプロピル基を含んでもよい。
【0043】
R
3ないしR
17は、例えば、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基を含んでもよい。
【0044】
R
20及びR
21のうち少なくとも一つは、互いに独立して、フッ素原子、一部または全部がフッ素で置換されたC
1−C
10アルキル基、あるいは一部または全部がフッ素で置換されたC
6−C
30アリール基であり、その残りのR
20またはR
21は、水素原子、置換もしくは非置換のC
1−C
10アルキル基、あるいは置換もしくは非置換のC
6−C
30アリール基であり、選択的に、R
20とR
21は、一部または全部がフッ素で置換されたC
3−C
8環を形成することができる。
【0045】
R
18ないしR
21のうち少なくとも一つは、例えば、互いに独立して、フッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基またはヘプタフルオロプロピル基を含み、残りのR
18ないしR
21は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基であり、
選択的に、R
18及びR
19、並びに/またはR
20及びR
21は、全部または一部がフッ素で置換されたシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロノルボルナンまたはビシクロオクタンを形成し、残りのR
18及びR
19、あるいはR
20及びR
21は、非置換のシクロプロパン、非置換のシクロブタン、非置換のシクロペンタン、非置換のシクロヘキサン、非置換のシクロヘプタン、非置換のシクロノルボルナン、または非置換のビシクロオクタンを形成することができる。
【0046】
例えば、mは、1ないし1,000であり、nは、0ないし1,000であり、pは、0ないし1,000でもある。または、例えば、mは、1ないし100であり、nは、0ないし100であり、pは、0ないし100でもある。または、例えば、mは、1ないし10であり、nは、0ないし10であり、pは、0ないし10でもある。
【0047】
化学式1で表示される化合物は、下記化学式1aまたは化学式1bで表示される化合物でもある。
【0049】
化学式1aで、R
18ないしR
21は、互いに独立して、フッ素原子、部分的にフッ素化されるか、あるいは完全にフッ素化されたC
1−C
10アルキル基、あるいは部分的にフッ素化されるか、あるいは完全にフッ素化されたC
6−C
20アリール基であり、
R
15、R
16、R
17は、互いに独立して、水素、あるいは置換もしくは非置換のC
1−C
20アルキル基である。
【0051】
化学式1bで、R
18ないしR
21は、互いに独立して、フッ素原子、部分的にフッ素化されるか、あるいは完全にフッ素化されたC
1−C
10アルキル基、あるいは部分的にフッ素化されるか、あるいは完全にフッ素化されたC
6−C
20アリール基であり、Rは、水素またはフッ素であり、kは、0ないし5である。
【0052】
例えば、化学式1で表示される化合物は、下記化学式2ないし5で表示される化合物のうちから選択された一つ以上でもある。
【0054】
化学式1で表示される化合物の含量は、電解質総重量100重量部を基準にして、15ないし97重量部、例えば、20ないし90重量部である。化学式1で表示される化合物の含量が前記範囲内であるとき、耐酸化性とリチウム塩の溶解度とが改善された電解質を製造することができる。
【0055】
化学式1で表示される化合物は、リチウム塩を溶解する溶媒の役割を担うことができる。
【0056】
リチウム塩は、化学式1の化合物に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、リチウムイオンの移動を促進することができる。
【0057】
リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、Li(FSO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
2N(以下、LiTFSIともする)、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiF、LiBr、LiCl、LiI及びLiB(C
2O
4)
2(lithium bis(oxalato)borate)からなる群のうちから選択される一つ以上を使用することができる。
【0058】
リチウム塩は、リチウムスルホンイミド系化合物でもある。
【0059】
リチウムスルホンイミド系化合物は、具体的には、リチウムフルオロアルキルスルホンイミド、リチウムフルオロアリールスルホンイミドまたはリチウムフルオロアルキルアリールスルホンイミドを含んでもよい。
【0060】
リチウムスルホンイミド系化合物は、例えば、Li(FSO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiN(C
pF
2p+1SO
2)(C
qF
2q+1SO
2)(pとqは、互いに異なり、p及びqは、互いに独立して、1ないし20の整数である)、LiN((SO
2)
2C
pF
2p)(pは、1ないし10の整数である)、Li(C
6F
5SO
2)
2N、Li(C
10F
7SO
2)
2N、Li(C
6F
5SO
2)(C
10F
7SO
2)N、LiN(C
6F
5SO
2)(C
pF
2p+1SO
2)(pは、1ないし10の整数である)またはLiN(C
10F
7SO
2)(C
pF
2p+1SO
2)(pは、1ないし10の整数である)を含んでもよい。
【0061】
一方、リチウム空気電池用電解質は、非水系有機溶媒をさらに含んでもよい。非水系有機溶媒は、例えば、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,2−ジメチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ジメチル、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、トリエチルホスフィンオキシド、1,3−ジオキソラン、及びスルホランなどでもある。
【0062】
または、リチウム空気電池用電解質は、化学式1の化合物と異なるリチウムイオン伝導性高分子をさらに含んでもよい。リチウムイオン伝導性高分子は、例えば、ポリ酸化エチレン、ポリアクリロニトリル、またはポリエステルなどを含んでもよい。
【0063】
リチウム空気電池用電解質は、化学式1で表示される化合物において、フッ素原子が選択的な位置に存在することにより、電解質の耐酸化性、酸素親和性及び塩溶解度が向上する。本明細書で「耐酸化性」とは、電解質が電極において、電位差によって酸化されたり、あるいはリチウムイオンの酸化によって生成される物質などと反応して酸化されたりすることに対する耐性を意味する。本明細書で「酸素親和性」とは、電解質が酸素を通過させることができる能力を意味する。本明細書で「塩溶解度」とは、電解質内におけるリチウム塩の溶解度を意味する。
【0064】
一具現例によれば、化学式1で表示される化合物において、酸素原子間のプロピル基の中間炭素原子にフッ素原子が直接結合されたり、あるいはフッ素原子が置換された基が結合されたりすることにより、電解質の耐酸化性、酸素親和性及び塩溶解度が向上する。
【0065】
従来のエーテル系電解質は、水素原子をフッ素原子で置換させれば、耐酸化性が向上するが、リチウム塩の溶解度が低下するという問題がある。しかし、化学式1の化合物において、酸素原子間のプロピル基の中間炭素原子の全部または一部を、選択的にフッ素原子、またはフッ素原子が置換された基で置換させることにより、耐酸化性及び塩溶解度をいずれも向上させることができる。また、化学式1の化合物は、酸素親和性が共に向上する。
【0066】
他の側面によって、リチウムイオンの電着及び脱離が可能な負極、酸素を正極活物質にする正極、負極と正極との間に、一具現例による、化学式1で表示される化合物、及びリチウム塩を含む電解質を含むリチウム空気電池が提供される。
【0067】
リチウム塩の含量は、電解質総重量を基準にして、15ないし97重量部、例えば、20ないし90重量部である。リチウム塩の含量が前記範囲であるとき、電解質の伝導度にすぐれる。
【0068】
一具現例による電解質は、無機フィラー及びイオン性液体のうちから選択された一つ以上をさらに含んでもよい。
【0069】
無機フィラーは、リチウム空気電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。無機フィラーの例としては、BaTiO
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2及びゼオライトからなる群から選択された一つ以上を使用することができる。
【0070】
無機フィラーの含量は、化学式1の化合物とリチウム塩との総重量100重量部に対して、0.1ないし20重量部である。
【0071】
負極と電解質との間には、イオン伝導性無機物粒子を含むリチウムイオン伝導性層がさらに含まれてもよい。
【0072】
イオン伝導性無機物粒子は、ガラス質(glassy)活性金属イオン伝導体、非晶質(amorphous)活性金属イオン伝導体、セラミックス活性金属イオン伝導体、ガラス−セラミックス(glass-ceramic)活性金属イオン伝導体のうちから選択された一つ以上、またはそれらの組み合わせでもある。イオン伝導性無機物粒子は、例えば、Li
1+x+yAl
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1−xLa
xZr
1−yTi
yO
3(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(Mg
3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、HfO
2、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、Na
2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、SiC、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTiz(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムニトリド(Li
xN
y)(0<x<4、0<y<2)、SiS
2(Li
xSi
yS
z)系ガラス(0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P
2S
5(Li
xP
yS
z)系ガラス(0<x<3、0<y<3、0<z<7)、Li
2O、LiF、LiOH、Li
2CO
3、LiAlO
2、Li
2O−Al
2O
3−SiO
2−P
2O
5−TiO
2−GeO
2系セラミックス、及びガーネット(garnet)系セラミックス(Li
3+xLa
3M
2O
12)(0≦x≦5)(M=Te、NbあるいはZr)のうちから選択された一つ以上、またはそれらの組み合わせである。
【0073】
一具現例によるリチウム空気電池においては、負極とリチウムイオン伝導性層との間に、第2電解質がさらに含まれてもよい。ここで、第2電解質は、固体高分子電解質または無機固体電解質でもある。
【0074】
図1は、一具現例によるリチウム空気電池セル10を概略的に図示した図面である。
図1を参照すれば、リチウム空気電池セル10は、第1集電体11、第2集電体12、正極13、負極14、並びに正極13と負極14との間に、前述の化学式1の化合物、及びリチウム塩を含む電解質(以下、第1電解質とする)15を含む。正極13は、第1集電体11上に形成され、酸素を活物質として使用して、酸素の酸化還元反応が起こる。負極14は、第2集電体12上に形成され、リチウム金属の酸化還元反応が起こる。第1電解質15は、正極13と負極14との間のリチウムイオンの伝導を可能にする。
【0075】
集電体11,12として、酸素の拡散を迅速にさせるために、網状(net shape)またはメッシュ状(mesh shape)の多孔体(porous structure)を利用することができる。例えば、集電体11,12として、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムなどからなる多孔性金属板を使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。一方、酸化を防止するために、集電体11,12が耐酸化性の金属または合金の被膜で被覆されもする。
【0076】
酸素を正極活物質として使用する正極13として、多孔性の導電性材料が使用されてもよい。従って、正極13として、多孔性及び導電性を有するものであるならば、制限なしに使用することができ、例えば、多孔性を有する炭素系材料を使用することができる。かような炭素系材料としては、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、活性炭、炭素ナノチューブ、または炭素ファイバなどを使用することができる。また、正極13として、金属ファイバまたは金属メッシュなどの金属性導電性材料を使用することができる。正極13として、例えば、銅、銀、ニッケルまたはアルミニウムなどの金属性粉末を使用することができる。一方、正極13として、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料を使用することができる。導電性材料は、単独で、または混合して使用されてもよい。
【0077】
正極13には、酸素の酸化・還元の一助とするための触媒が添加されてもよい。かような触媒として、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムのような貴金属系触媒;マンガン酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物のような酸化物界触媒;あるいはコバルトフタロシアニンのような有機金属系触媒を使用することができるが、それらに限定されるものではなく、本技術分野において、酸素の酸化・還元触媒として使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。
【0078】
一方、触媒は、担体に担持される。担体は、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物及びカーボンなどでもある。酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び二酸化チタンなどの酸化物を一つ以上含んでもよい。または、酸化物は、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Tm、Yb、Sb、Bi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo及びWから選択される一つ以上の金属を含む酸化物でもある。カーボンは、ケッチェンブラック(Ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)、チャネルブラック(channel black)及びランプブラック(lamp black)などのカーボンブラック類;天然黒鉛、人造黒鉛及び膨脹黒鉛などの黒鉛類;活性炭類;炭素繊維類などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、本技術分野において、担体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0079】
正極13は、バインダを追加して含んでもよい。バインダは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニールエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合剤などを単独で、または混合して使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0080】
正極13は、例えば、酸素の酸化・還元触媒、導電性材料及びバインダを混合した後、適する溶媒を添加して正極スラリーを製造した後、第1集電体11の表面に塗布して乾燥させるか、選択的に、電極密度の向上のために、第1集電体11に圧縮成形して製造することができる。正極13は、選択的に、リチウム酸化物を含んでもよい。選択的に、酸素の酸化・還元触媒が省略されてもよい。
【0081】
負極14は、リチウム金属、リチウム金属基盤の合金、またはリチウムを電着、脱離することができる物質を含むが、それらに限定されるのではない。負極14がリチウム空気電池の容量を決定する。リチウム金属基盤の合金は、例えば、アルミニウム、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビズマスまたは鉛などと、リチウムとの合金でもある。
【0082】
電解質15の一部または全部は、多孔性の正極13に含浸される。
【0083】
図2は、他の実施例によるリチウム空気電池セル20の構造を示したものである。
【0084】
図2を参照すれば、リチウム空気電池セル20は、第1集電体11;第2集電体12;正極13;負極14;正極13と負極14との間のリチウムイオン伝導性層24;正極13とリチウムイオン伝導性層24との間の前述の化学式1の化合物、及びリチウム塩を含む電解質(以下、第1電解質とする)25;及び負極14とリチウムイオン伝導性層24との間の第2電解質26を含む。
【0085】
図2において、負極14、第2電解質26、リチウムイオン伝導性層24は、まとめて「保護負極」と称することもできる。
図2に図示された正極13、負極14、第1電解質25は、
図1に図示された正極13、負極14及び第1電解質15と対応するために、具体的な説明は省略する。
【0086】
リチウムイオン伝導性層24は、リチウムイオン伝導性を示し、イオン伝導性無機物粒子を含む。
【0087】
第2電解質26は、非制限的な例として、固体高分子電解質または無機固体電解質を有することができる。固体高分子電解質膜としては、例えば、ポリ酸化エチレン膜、ポリアクリルロニトリル膜またはポリエステル膜を使用することができる。
【0088】
固体高分子電解質膜は、例えば、リチウムイオン伝導性高分子及びリチウム塩を混合して製造することができる。
【0089】
リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiF、LiBr、LiCl、LiI及びLiB(C
2O
4)
2(LiBOB:lithium bis(oxalato)borate)からなる群のうちから選択される一つまたは二つ以上を使用することができる。
【0090】
無機固体電解質膜は、例えば、Cu
3N、Li
3NあるいはLiPONでもある。
【0091】
第2電解質として、リチウムイオン伝導性固体電解質膜を使用することができる。
【0092】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミックス固体電解質や、ガラス−セラミックス固体電解質と固体高分子電解質との積層構造体でもある。「ガラス−セラミックス」は、ベースガラスの調節された結晶化を介して生成された多結晶物質を意味する。
【0093】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜としては、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性結晶(セラミックスまたはガラス−セラミックス)、またはそれらの混合物を含む無機物質を使用することができる。化学的安定性を考慮するとき、リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、酸化物を例として挙げることができる。
【0094】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜が、リチウムイオン伝導性結晶を多量含む場合、高いイオン伝導度が得られるので、リチウムイオン伝導性結晶を無機固体電解質膜全体重量に対して、例えば、50重量%以上、60重量%以上あるいは70重量%以上の量で含んでもよい。
【0095】
リチウムイオン伝導性結晶としては、Li
3N、LISICON類、La
0.55Li
0.35TiO
3などのリチウムイオン伝導性を有するペロブスカイト(perovskite)構造を有する結晶;NASICON型構造を有するLiTi
2P
3O
12;あるいはそれら結晶を析出させるガラス−セラミックスを使用することができる。
【0096】
リチウムイオン伝導性結晶としては、例えば、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(ただし、O≦x≦1、O≦y≦1であり、例えば、0≦x≦0.4、0≦y≦0.6であるか、あるいは0.1≦x≦0.3、0.10≦y≦0.4である)が挙げられる。結晶が、イオン伝導を阻害する結晶粒界を含まない結晶である場合には、伝導性の側面で有利である。例えば、ガラス−セラミックスは、イオン伝導を妨害する気孔や結晶粒界をほとんど有していないために、イオン伝導性が高く、併せて優秀な化学的安定性を有することができる。
【0097】
リチウムイオン伝導性ガラス−セラミックスを例示すれば、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−リン酸塩(LAGP)、リチウム−アルミニウム−チタン−リン酸塩(LATP)、及びリチウム−アルミニウム−チタン−シリコン−リン酸塩(LATSP)などを例として挙げることができる。
【0098】
例えば、マザーガラスが、Li
2O−Al
2O
3−TiO
2−SiO
2−P
2O
5系組成を有し、マザーガラスを熱処理して結晶化する場合、そのときの主結晶相は、Li
1+x+yAl
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12(0≦x≦1、O≦y≦1)になり、そのとき、x及びyとしては、例えば、0≦x≦0.4あるいは0≦y≦0.6である。x及びyは、具体的には、0.1≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4でもある。
【0099】
ここで、「イオン伝導を妨害する気孔や結晶粒界」とは、リチウムイオン伝導性結晶を含む無機物質全体のリチウムイオン伝導度を、無機物質中のリチウムイオン伝導性結晶それ自体のリチウムイオン伝導度に対して、1/10以下の値に低下させる気孔や結晶粒界などのイオン伝導性阻害物質を称する。
【0100】
また、「ガラス−セラミックス」とは、ガラスを熱処理することにより、ガラス相内に結晶相を析出させて得られる材料であり、非晶質固体及び結晶からなる材料を指し、併せて、ガラス相をいずれも結晶相に相転移させた材料、例えば、材料中の結晶量(結晶化度)が100重量%である材料を含んでもよい。そして、100%結晶化させた材料であっても、ガラス−セラミックスの場合には、結晶粒子間や結晶内に気孔がほとんど存在しない。
【0101】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラスセラミックスを多量に含むことにより、高いイオン伝導率を得ることができるために、リチウムイオン伝導性固体電解質膜内に、80重量%以上のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含み、さらに高いイオン伝導率を得るためには、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを、85重量%以上または90重量%以上の量で含んでもよい。
【0102】
ガラス−セラミックスに含まれたLi
2O成分は、Li
+イオンキャリアを提供し、リチウムイオン伝導性を得るのに有用な成分である。良好なイオン伝導率をさらに容易に得るためには、Li
2O成分の含有量は、12%以上、13%以上あるいは14%以上であるということを例示することができる。一方、Li
2O成分の含有量が過度に多い場合には、ガラスの熱的安定性が劣化しやすく、ガラスセラミックスの伝導率も容易に低下するために、Li
2O成分の含有量上限は、18%、17%または16%の値である。
【0103】
ガラス−セラミックスに含まれたAl
2O
3成分は、マザーガラスの熱的安定性を向上させることができると共に、Al
3+イオンが結晶相に固溶され、リチウムイオン伝導率向上にも効果がある。さらに容易にこの効果を得るためには、Al
2O
3成分の含有量下限が、5%、5.5%または6%であるということを例示することができる。しかし、Al
2O
3成分の含有量が10%を超える場合には、むしろガラスの熱的安定性が劣化しやすく、ガラスセラミックスの伝導率も低下しやすいために、Al
2O
3成分の含有量上限は、10%、9.5%あるいは9%であるということを例示することができる。
【0104】
ガラス−セラミックスに含まれたTiO
2成分は、ガラス形成に寄与し、結晶相の構成成分でもあり、ガラス及び結晶において有用な成分である。ガラス化するために、そして結晶相が主相としてガラスから析出され、高いイオン伝導率をさらに容易く得るためには、TiO
2成分の含有量下限が、35%、36%または37%であるということを例示することができる。一方、TiO
2成分の含有量が過度に多い場合には、ガラスの熱的安定性が劣化しやすく、ガラスセラミックスの伝導率も容易に低下するために、TiO
2成分含有量の上限は、45%、43%あるいは42%であるということを例示することができる。
【0105】
ガラス−セラミックスに含まれたSiO
2成分は、マザーガラスの溶融性及び熱的安定性を向上させることができると同時に、Si
4+イオンが結晶相に固溶され、リチウムイオン伝導率の向上にも寄与する。この効果をさらに十分に得るためには、SiO
2成分含有量の下限が、1%、2%あるいは3%であるものを使用することができる。しかし、SiO
2成分の含有量が過度に多い場合には、むしろ伝導率が低下しやすいので、SiO
2成分の含有量上限は、10%、8%または7%であるということを例示することができる。
【0106】
ガラス−セラミックスに含まれたP
2O
5成分は、ガラスの形成に有用な成分であり、併せて、結晶相の構成成分でもある。P
2O
5成分の含有量は、30%未満である場合には、ガラス化し難いので、P
2O
5成分の含有量下限は、30%、32%あるいは33%であるということを例示することができる。一方、P
2O
5成分の含有量が40%を超える場合には、結晶相がガラスから析出され難く、所望する特性を得難くなるために、P
2O
5成分の含有量上限は、40%、39%または38%であるということを例示することができる。
【0107】
前記組成の場合、溶融ガラスをキャストし、容易くガラスを得ることができ、該ガラスを熱処理して得られた結晶相を有するガラスセラミックスは、1×10
−3S・cm
−1の高いリチウムイオン伝導性を有することができる。
【0108】
また、前記組成以外にも、類似の結晶構造を有するガラスセラミックスを使用する場合であるならば、Al
2O
3成分をGa
2O
3成分で置換し、TiO
2成分をGeO
2成分で置換し、その一部または全部を置換することもできる。併せて、ガラスセラミックスの製造時、その融点を低下させたり、あるいはガラスの安定性を向上させたりするために、イオン伝導性を大きく劣化させない範囲で、他の原料を微量添加することもできる。
【0109】
前述のようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミックス成分以外に、高分子固体電解質成分をさらに含んでもよい。かような高分子固体電解質は、リチウム塩がドーピングされたポリ酸化エチレンであり、リチウム塩としては、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2、LiBF
4、LiPF
6、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiC(SO
2CF
3)
3、LiN(SO
3CF
3)
2、LiC
4F
9SO
3、及びLiAlCl
4などを例示することができる。
【0110】
固体高分子電解質膜は、ガラス−セラミックスと積層構造体を形成することができ、前記成分を含む第1高分子固体電解質と、第2高分子固体電解質との間に、ガラス−セラミックスが介在されてもよい。
【0111】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、単層膜または多層膜として使用される。
【0112】
リチウム空気電池セル10、20の動作原理は、次の通りである。放電時、負極14に由来するリチウムが、正極13から導入される酸素と出合い、リチウム酸化物が生成して酸素は還元される(ORR:oxygen reduction reaction)。また、反対に充電時、リチウム酸化物が還元され、酸素が酸化されて発生する(OER:oxygen evolution reaction)。
【0113】
電解質が非水系電解質である場合、下記反応式1のような反応メカニズムを示す。
[反応式1]
4Li+O
2⇔2Li
2O E
o=2.91V
2Li+O
2⇔Li
2O
2 E
o=3.10V
【0114】
電解質が水系電解質である場合、下記反応式2のような反応メカニズムを示す。
[反応式2]
4Li+O
2+2H
2O⇔4LiOH E
o=3.45V
【0115】
本明細書で使用される用語である「空気(air)」は、大気空気に制限されるものではなく、酸素を含むガスの組み合わせ、あるいは純粋酸素ガスを含んでもよい。かような用語「空気」に係わる広い定義が、全ての用途、例えば、空気電池、空気正極などに適用される。
【0116】
リチウム空気電池は、リチウム一次電池、リチウム二次電池にいずれも使用可能である。また、その形状は特別に限定されるものではなく、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒状、扁平状、及びホーン状などを例示することができる。また、電気自動車などに利用する大型電池にも適用することができる。
【0117】
化学式で使用される置換基の定義について述べれば、次の通りである。
【0118】
化学式で使用される用語「アルキル基」は、完全飽和された分枝型または非分枝型(または、直鎖または線形)の炭化水素の基を指す。
【0119】
アルキル基の非制限的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、iso−アミル基、n−ヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、及びn−ヘプチル基などを挙げることができる。
【0120】
アルキルのうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC
1−C
20アルキル基(例:CCF
3、CHCF
2、CH
2F、CCl
3など)、C
1−C
20アルコキシ基、C
2−C
20アルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、C
2−C
20アルケニル基、C
2−C
20アルキニル基、C
1−C
20ヘテロアルキル基、C
6−C
20アリール基、C
6−C
20アリールアルキル基、C
6−C
20ヘテロアリール基、C
7−C
20ヘテロアリールアルキル基、C
6−C
20ヘテロアリールオキシ基、C
6−C
20ヘテロアリールオキシアルキル基またはC
6−C
20ヘテロアリールアルキル基で置換されてもよい。
【0121】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素、臭素、塩素、及びヨウ素などを含む。
【0122】
化学式で使用される用語「アルコキシ基」は、アルキル基−O−を示し、そのとき、アルキル基は、前述の通りである。アルコキシ基の非制限的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロプロポキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基などがある。アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同一の置換基で置換可能である。
【0123】
化学式で、非置換のアルケニル基は、非置換のアルキル基の中間や最末端に、一つ以上の炭素二重結合を含んでいるものを意味する。例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などがある。それら非置換のアルケニル基において、少なくとも一つ以上の水素原子は、前述の置換されたアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0124】
化学式で、非置換のアルキニル基は、定義されたようなアルキル基の中間や最末端に、一つ以上の炭素三重結合を含んでいるものを意味する。例としては、アセチレン基、プロピレン基、フェニルアセチレン基、ナフチルアセチレン基、イソプロピルアセチレン基、t−ブチルアセチレン基、及びジフェニルアセチレン基などがある。それらアルキニル基において、少なくとも一つ以上の水素原子は、前述の置換されたアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0125】
化学式で使用される用語「アリール基」は、単独または組み合わせて使用され、一つ以上の環を含む芳香族炭化水素を意味する。
【0126】
用語「アリール基」は、芳香族環が一つ以上のシクロアルキル環に融合された基も含む。
【0127】
アリール基の非制限的な例としては、フェニル基、ナフチル基、及びテトラヒドロナフチル基などがある。
【0128】
またアリール基において、一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0129】
化学式で使用される用語「ヘテロアリール基」は、N、O、PまたはSのうちから選択された一つ以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である単環式(monocyclic)または二環式(bicyclic)の有機化合物を意味する。ヘテロアリール基は、例えば、1−5個のヘテロ原子を含み、5−10個の環メンバー(ring member)を含んでもよい。SまたはNは、酸化され、さまざまな酸化状態を有することができる。
【0130】
単環式ヘテロアリール基は、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3−オキサジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,2,5−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,3−チアジアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,2,5−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,3−トリアゾール−5−イル基、テトラゾリル基、ピリド−2−イル基、ピリド−3−イル基、2−ピラジン−2−イル基、ピラジン−4−イル基、ピラジン−5−イル基、2−ピリミジン−2−イル基、4−ピリミジン−2−イル基あるいは5−ピリミジン−2−イル基などを挙げることができる。
【0131】
用語「ヘテロアリール基」は、ヘテロ芳香族環が一つ以上のアリール、脂環族(cyclyaliphatic)、あるいはヘテロサイクルに融合された場合を含む。
【0132】
二環式ヘテロアリールの例としては、インドリル(indolyl)基、イソインドリル(isoindolyl)基、インダゾリル(indazolyl)基、インドリジニル(indolizinyl)基、プリニル(purinyl)基、キノリジニル(quinolizinyl)基、キノリニル(quinolinyl)基、及びイソキノリニル(isoquinolinyl)基などがある。かようなヘテロアリール基において、一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0133】
用語「スルホニル基」は、R”−SO
2−を意味し、R”は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリール−アルキル基、ヘテロアリール−アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基またはヘテロ環基である。
【0134】
用語「スルファモイル基」は、H
2NS(O
2)−、アルキル基−NHS(O
2)−、(アルキル基)
2N
S(O
2)−アリール基−NHS(O
2)−、アルキル基−(アリール基)−NS(O
2)−、(アリール基)
2NS(O)
2、ヘテロアリール基−NHS(O
2)−、(アリール基−アルキル基)−NHS(O
2)−、あるいは(ヘテロアリール基−アルキル基)−NHS(O
2)−を含む。
【0135】
スルファモイルにおいて、一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じく置換可能である。
【0136】
用語「アミノ基」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合された場合を示す。アミノ基は、例えば、−NH
2及び置換された基(substituted moieties)を含む。
【0137】
用語「アルキルアミノ基」は、窒素が少なくとも1つの付加的なアルキル基に結合されたアルキルアミノ基、窒素が少なくとも一つ、または二つ以上が独立して選択されたアリール基に結合されたアリールアミノ基及びジアリールアミノ基を含む。
【0138】
用語「炭素環」は、シクロヘキシル基のように、C
5−C
10で構成された環基を指し、炭素環において、一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0139】
アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びヘテロアリールカルボニル基は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0140】
以下、本発明について、下記実施例を挙げて説明するが、本発明は、下記実施例にのみ限定されるものではない。本明細書で当量とは、重量比を意味する。例えば、A物質をB物質2当量と反応させる場合、A物質とB物質とを1:2の重量比で反応させるということを意味する。
【実施例】
【0141】
合成例1:化学式2で表示される化合物(化合物A)の製造
【化9】
【0142】
(a)中間体1の合成
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオール(2, 5-bis(hydroxymethyl)-1, 4-dioxane-2, 5-diol)を、ピリジン5当量及び無水酢酸(acetic anhydride)4.1当量と反応させ、中間体1を合成した。
【0143】
(b)中間体2の合成
中間体1を、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)3当量と反応させ、中間体2を合成した。
【0144】
(c)中間体3の合成
中間体2を、NaOMe 3当量と反応させ、中間体3を合成した。
【0145】
(d)中間体4の合成
中間体3を、Ag
2O 1.5当量及び臭化ベンジル(benzyl bromide)1.2当量と反応させ、中間体4を合成した。中間体4において、Bnは、ベンジル基を意味する。
【0146】
(e)中間体5の合成
ジエチレングリコールを塩化トシル(TsCl)2当量及びKOH 4当量と反応させ、中間体5を合成した。
【0147】
(f)中間体6の合成
中間体4に中間体5を2当量添加し、KOH 5当量と共に反応させ、中間体6を合成した。
【0148】
(g)中間体7の合成
中間体6を、Pd/C触媒下でH
2と反応させ、中間体7を合成した。
【0149】
(h)中間体8の合成
中間体7を、NaH 2.4当量、二黄化炭素(CS
2)4当量及びヨード化メチル(MeI)2.4当量と反応させ、中間体8を合成した。
【0150】
(i)化合物Aの合成
中間体8を、1,3−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントイン(1, 3-bromo-5, 5’-dimethylhydantoin)6当量及びHF/ピリジン120当量と反応させ、化合物A(化学式2の化合物)を合成した。
【0151】
比較合成例1:化合物Bの製造
【化10】
【0152】
合成例1の過程において、(h)工程及び(i)工程を使用するが、中間体7の代わりに、テトラエチレングリコールである中間体9を利用して、中間体10を合成し、続けて化合物Bを合成した。
【0153】
実施例1:電解質の製造
化学式2の化合物(化合物A)に、1MのLiTFSI(bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)を添加して混合し、電解質を製造した。
【0154】
【化11】
【0155】
電解質において、化学式2の化合物の含量は、電解質総重量100重量部を基準にして、約25重量部であった。
【0156】
【化12】
【0157】
実施例2:リチウム空気電池の製造
カーボン(Super−P)40重量部、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10重量部、及びN−メチルピロリドン(NMP)50重量部を混合し、正極スラリーを製造した後、スラリーをコーティング及び圧延し、正極合材シートを得た。正極合材シートをステンレスメッシュの上に圧着させた後、100℃オーブンで、120分間真空乾燥させて正極を得た。
【0158】
5cm×5cmサイズのアルミニウムフィルム(polypropylene coated aluminum film;200μm)の中央に、1cm×1cmを穿孔し、接着剤を利用して、1.4cm×1.4cmのLATPLi
1+x+yAl
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12(0≦x≦2、0≦y≦3;厚み150μm;Ohara corporation製)フィルムで孔を塞ぎ、一部分がLATPからなる第1アルミニウムフィルムを製造した。次に、5cm×5cmサイズの新たな第2アルミニウムフィルム、銅集電体(厚み20μm)、リチウムホイル(1.4cm×1.4cm;厚み100μm)、1MのLiTFSIの実施例1の電解質溶液が含浸されたポリプロピレン素材である厚み25μmのセルガード社のCelgard−3501セパレータ、及び製造した第1アルミニウムフィルムを積層して真空加熱接着し、アルミニウムポーチタイプの保護されたリチウム負極を得た。
【0159】
ステンレスケースに、保護されたリチウム負極を設け、負極に対向する側に、ポリプロピレン素材である厚み25μmのセルガード社のCelgard−3501セパレータが設けられた正極をセッティングした。次に、正極と負極との間に、実施例1の電解質溶液を注入し、正極上に発泡ニッケル板を配置し、その上に、空気が正極に伝達される押し当て部材で押さえてセルを固定させ、リチウム空気電池を製造した。
【0160】
実施例3−4:電解質の製造
化学式2の化合物(化合物A)の含量を、電解質総重量100重量部を基準にして、20重量部及び97重量部にそれぞれ変化させたことを除いては、実施例1と同一の方法によって電解質を製造した。
【0161】
実施例5−6:リチウム空気電池の製造
実施例1の電解質の代わりに、実施例3及び4の電解質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例2と同一の方法を使用してリチウム空気電池を製造した。
【0162】
比較例1:電解質の製造
下記のテトラグライム(TGM)に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【0163】
【化13】
【0164】
比較例2:電解質の製造
化合物Bに、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【0165】
比較例3:リチウム空気電池の製造
実施例1の電解質の代わりに、比較例1の電解質を使用したことを除いては、実施例2と同一の方法を使用してリチウム空気電池を製造した。
【0166】
比較例4:リチウム空気電池の製造
実施例1の電解質の代わりに、比較例2の電解質を使用したことを除いては、実施例2と同一の方法を使用してリチウム空気電池を製造した。
【0167】
比較例5:電解質の製造
下記化学式6で表示される化合物に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造したる。
【0168】
【化14】
【0169】
比較例6:電解質の製造
下記化学式7で表示される化合物に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【化15】
【0170】
比較例7:電解質の製造
下記化学式8で表示される化合物に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【0171】
【化16】
【0172】
比較例8:電解質の製造
下記化学式9で表示される化合物に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【0173】
【化17】
【0174】
比較例9:電解質の製造
下記化学式10で表示される化合物に、1MのLiTFSIを添加して電解質を製造した。
【0175】
【化18】
【0176】
比較例5ないし9で使われた化学式6ないし10の化合物は、塩(LiTFSI)溶解が不可能であり、電解質自体を製造し難かった。
【0177】
評価例1:電気化学的耐酸化性(分解開始電圧)の測定
実施例1、実施例3、実施例4、比較例1及び比較例2の電解質に対して、LSV(linear sweep voltammetry)を行った。
【0178】
測定する電解質を入れた容器に、作業電極(working electrode)として白金(Pt)電極を浸漬し、相対電極(counter electrode)として白金グリド(Pt grid)電極を浸漬し、基準電極(reference electrode)としてAg/AgNO
3電極を浸漬し、LSV測定用セルを形成した。このセルに対して、開放電圧(OCV:open circuit voltage)からスキャン速度1mV/sで、6.5V(Ag/Ag
+に対して)まで電位をスキャンしながら電流値を測定した。
【0179】
図3は、実施例1、比較例1及び比較例2の電解質に対して、LSVを行って測定した結果を示した電流−電圧グラフである。
図3を参照すれば、実施例1の電解質の酸化電圧が最も高く、比較例2、比較例1の順に酸化電圧が低くなる。これにより、実施例1の電解質の電気化学的耐酸化性が、比較例1及び比較例2の電解質より高いということが分かる。「電気化学的耐酸化性」とは、高い電圧での電解質の安定性を意味する。
【0180】
また、実施例3及び4の電解質は、実施例1と同等レベルの電気化学的耐酸化性を示した。
【0181】
評価例2:化学的耐酸化性の測定
「化学的耐酸化性」とは、電解質の酸化に対する抵抗性を意味する。
【0182】
実施例1、比較例1及び比較例2の電解質1mlに、Li
2O
2 20mgを添加し、等しく混合した。混合溶液を、60℃の温度で3週間保管した後、混合溶液内のLi
2O
2の量を測定し、最初のLi
2O
2量に対する比率を計算し、Li
2O
2の保存率を得た。得られたLi
2O
2の保存率を表1に示した。
【0183】
【表1】
【0184】
表1を参照すれば、実施例1、比較例2及び比較例1の順に、電解質溶液内のLi
2O
2の保存率が高いということが分かる。これにより、電解質溶液のLi
2O
2との反応性が実施例1が最も低く、比較例1が最も高いということが分かる。すなわち、電解質溶液の化学的耐酸化性が実施例1が最も高く、比較例1が最も低い。
【0185】
評価例3:充放電特性の評価
60℃、1気圧、酸素雰囲気下で、実施例2,5−6、比較例3及び比較例4で製造されたリチウム空気電池を、0.24mA/cm
2の定電流で、1.7V(Liに対して)まで放電させた後、同一の電流で4.2Vまで充電させ、その後、4.2V定電圧で、0.1mA/cm
2の電流になるまで充電させた。1.7Vまでの放電時、経時的な電位差を測定した結果を
図4に示した。
図4のグラフを参照すれば、比較例3のリチウム空気電池は、電圧がいち早く低下するが、実施例2及び比較例4のリチウム空気電池は、電圧がさらに長い間維持されるということが分かる。また、実施例5−6のリチウム空気電池は、実施例2のリチウム空気電池と同等レベルの充放電特性を示した。
【0186】
比較例3のリチウム空気電池の放電電圧のいち早い低下は、放電時に正極で生成されるLi
2O
2が電解質と反応し、Li
2O
2の電極での可逆的な酸化還元反応を妨害するためであると見られる。一方、実施例2及び比較例4のリチウム空気電池の放電電圧の維持は、Li
2O
2と電解質との反応が抑制され、また電解質の酸素親和性が高く、電極への酸素供給が円滑であるためであると見られる。
【0187】
以上、図面及び実施例を参照しつつ、本発明による望ましい具現例について説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当該技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決められるものである。