特許第6671721号(P6671721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671721
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/12 20060101AFI20200316BHJP
   G09F 9/00 20060101ALN20200316BHJP
   B25J 1/02 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   F16M11/12 Z
   !G09F9/00 312
   !B25J1/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-69939(P2016-69939)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180710(P2017-180710A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年4月1日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成27年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(手術ロボット開発における位置決め技術の高度化(インテリジェントホルダーの開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】593203228
【氏名又は名称】株式会社和幸製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(73)【特許権者】
【識別番号】511188495
【氏名又は名称】さいたま商工会議所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 直久
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 暁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信一
(72)【発明者】
【氏名】依田 満
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3166092(JP,U)
【文献】 特開平05−023994(JP,A)
【文献】 特開2005−204999(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/107672(WO,A1)
【文献】 特開平08−039462(JP,A)
【文献】 特開2006−116667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 1/00 − 13/08
G09F 9/00
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアーム部と、隣り合う前記アーム部同士を相互に回動可能に連結する複数の関節部とを備えて、最先端部に位置するアーム部に取り付けた被支持物を所望位置で支持する支持装置であって、
各関節部は、該関節部により連結される一方アーム部に設けられた回動軸と、他方のアーム部に設けられて前記回動軸を回転自在に支持する軸受枠部と、該軸受枠部に対する回動軸の回動をロックするロック手段と、前記軸受枠部に設けられて前記ロック手段によるロックを解除するロック解除手段とを備え、
前記ロック手段は、前記回動軸と一体に回動するラチェット歯車と、前記軸受枠部に搖動自在に設けられ、前記ラチェット歯車の歯溝に係合して該ラチェット歯車の正転を規制する第1爪部材と、前記軸受枠部に搖動自在に設けられて前記第1爪部材の対向位置から前記ラチェット歯車の他の歯溝に係合して該ラチェット歯車の逆転を規制する第2爪部材と、前記第1爪部材と前記第2爪部材とを前記ラチェット歯車に係合する方向に付勢する付勢手段とを備え、
前記ロック解除手段は、前記付勢手段の付勢に抗して前記第1爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させるための操作レバーと、該操作レバーによる前記第1爪部材の搖動に同期して前記第2爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させる同期手段とを備えることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
請求項1記載の支持装置において、
各関節部のうちの何れか1つの関節部は軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を備えて、前記ロック解除手段によって前記ロック手段によるロックが解除されたとき、前記被支持物が水平方向に旋回自在となり、他の関節部は軸線が水平方向に延びる前記回動軸を備えて、前記ロック解除手段によって前記ロック手段によるロックが解除されたとき、前記被支持物が昇降自在となることを特徴とする支持装置。
【請求項3】
請求項2記載の支持装置において、
前記各関節部の前記ロック解除手段は、前記操作レバーを介して前記第1爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させるアクチュエータと、各関節部のアクチュエータの駆動を操作する複数の操作スイッチとを備え、
複数の前記操作スイッチのうち、1つの操作スイッチを単独で操作したとき、軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を備える前記関節部の前記ロック手段によるロックのみが解除され、
複数の前記操作スイッチのうち、少なくとも2つの操作スイッチを同時に操作したとき、全ての前記関節部の前記ロック手段によるロックが解除されることを特徴とする支持装置。
【請求項4】
請求項3記載の支持装置において、
前記被支持物を、各種情報を表示可能な情報表示端末としたとき、最先端部に位置する前記アーム部は、前記情報表示端末を保持する端末保持部を備え、
前記端末保持部は、情報表示端末を保持したときに該情報表示端末の両側に一対の把持部を備え、
両把持部の夫々に、複数の前記操作スイッチのうちの何れかが、少なくとも1つずつ設けられていることを特徴とする支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被支持物を所望の空間位置に支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の支持装置として、複数のアーム部と、隣り合うアーム部同士を相互に回転可能に連結する関節部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、各関節部には、隣り合うアーム部同士を連結するボールジョイントが採用されており、アーム部相互間で軸周り及び角度が変位し得るように構成されている。
【0004】
各関節部として採用されているボールジョイントはボール部と該ボール部を受けるボール受け部とで構成され、ボール受け部の内部でボール部を拡径させることにより関節部の屈曲を固定(ロック)する。このときのボール部の拡径は、ボール部に装着された軸部材をアクチュエータ等で進退させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−5646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の支持装置は、アーム部同士の関節部に上記構成のボールジョイントを採用していることにより、関節部のロックは、ボール部外面とボール受け部内面との摩擦係合により維持される。このため、関節部のロック強度が十分に得られず、被支持物に外力が加わった場合、被支持物が変位するおそれがある。
【0007】
かかる不都合に鑑み、本発明は、被支持物を所望の位置に支持させたときの関節部のロックを強固に維持することができ、しかも当該ロックを容易に解除することができる支持装置を構造簡単に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第1の発明は、複数のアーム部と、隣り合う前記アーム部同士を相互に回動可能に連結する複数の関節部とを備えて、最先端部に位置するアーム部に取り付けた被支持物を所望位置で支持する支持装置であって、各関節部は、該関節部により連結される一方アーム部に設けられた回動軸と、他方のアーム部に設けられて前記回動軸を回転自在に支持する軸受枠部と、該軸受枠部に対する回動軸の回動をロックするロック手段と、前記軸受枠部に設けられて前記ロック手段によるロックを解除するロック解除手段とを備え、前記ロック手段は、前記回動軸と一体に回動するラチェット歯車と、前記軸受枠部に搖動自在に設けられ、前記ラチェット歯車の歯溝に係合して該ラチェット歯車の正転を規制する第1爪部材と、前記軸受枠部に搖動自在に設けられて前記第1爪部材の対向位置から前記ラチェット歯車の他の歯溝に係合して該ラチェット歯車の逆転を規制する第2爪部材と、前記第1爪部材と前記第2爪部材とを前記ラチェット歯車に係合する方向に付勢する付勢手段とを備え、前記ロック解除手段は、前記付勢手段の付勢に抗して前記第1爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させるための操作レバーと、該操作レバーによる前記第1爪部材の搖動に同期して前記第2爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させる同期手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1の発明によれば、第1爪部材がラチェット歯車の歯溝に係合してラチェット歯車の正転を規制する。同時に、第2爪部材がラチェット歯車の歯溝に係合してラチェット歯車の逆転を規制する。第1爪部材と第2爪部材とは付勢手段によりラチェット歯車に係合する方向に付勢される。これによって、ラチェット歯車が正転と逆転の何れの方向にも回動することがなく、被支持物を所望の位置に支持させたときの関節部のロックを強固に維持することができる。
【0010】
そして、ロック解除手段の操作レバーを操作すると、第1爪部材がラチェット歯車に係合した状態が解除され、同期手段により、第1爪部材と同時に、第2爪部材がラチェット歯車に係合した状態が解除される。これによって、ラチェット歯車を正転と逆転の何れの方向にも回動させることが可能となり、関節部のロックを容易に解除して被支持物を所望の位置に移動させることができる。
【0011】
また、第2の発明として、第1の発明において、各関節部のうちの何れか1つの関節部は軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を備えて、前記ロック解除手段によって前記ロック手段によるロックが解除されたとき、前記被支持物が水平方向に旋回自在となり、他の関節部は軸線が水平方向に延びる前記回動軸を備えて、前記ロック解除手段によって前記ロック手段によるロックが解除されたとき、前記被支持物が昇降自在となることが好ましい。
【0012】
各関節部は、単一軸であるため、関節部が連結するアーム部は単一軸回りに回動するが、各関節部のうちの何れか1つの関節部の回動軸を軸線が鉛直方向に延びる姿勢とし、他の関節部の回動軸を軸線が水平方向に延びる姿勢として設けることにより、上下方向に搖動可能とした各アーム部に水平方向に旋回する動作を付与することができ、被支持物の移動範囲を拡大することができる。
【0013】
また、第3の発明として、第2の発明において、前記各関節部の前記ロック解除手段は、前記操作レバーを介して前記第1爪部材を前記ラチェット歯車への係合が解除される方向に搖動させるアクチュエータと、各関節部のアクチュエータの駆動を操作する複数の操作スイッチとを備え、複数の前記操作スイッチのうち、何れか1つの操作スイッチを単独で操作したとき、軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を備える前記関節部の前記ロック手段によるロックのみが解除され、複数の前記操作スイッチのうち、少なくとも2つの操作スイッチを同時に操作したとき、全ての前記関節部の前記ロック手段によるロックが解除されるようにすることが好ましい。
【0014】
これによれば、何れか1つの操作スイッチを単独で操作したとき、軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を有する関節部のみのロックが解除されて、被支持物を、水平方向に移動させることができ、少なくとも2つの操作スイッチを同時に操作したとき、全ての関節部のロックが解除されて、被支持物を、水平方向と上下方向とで自由に移動させることができる。
【0015】
そして、第3の発明の構成は第4の発明の構成を採用することで一層効果的なものとなる。即ち、第4の発明として、第3の発明において、前記被支持物を、各種情報を表示可能な情報表示端末としたとき、最先端部に位置する前記アーム部は、前記情報表示端末を保持する端末保持部を備え、前記端末保持部は、情報表示端末を保持したときに該情報表示端末の両側に一対の把持部を備え、両把持部の夫々に、複数の前記操作スイッチのうちの何れかが、少なくとも1つずつ設けられていることが好ましい。
【0016】
使用者が、各把持部を右手と左手とで夫々把持するとき、両把持部に設けられた両操作スイッチを同時に操作すると、全関節部のロックが解除される。このとき、両把持部を介して端末保持部が、使用者の両手で支えられた状態となっているので、全関節部のロックが解除されても、情報表示端末を保持した端末保持部が自重で下方に移動することがない。
【0017】
使用者が、一方の把持部の操作スイッチのみを一方の手で操作すると、軸線が鉛直方向に延びる前記回動軸を有する関節部のみのロックが解除されるから、情報表示端末を保持した端末保持部は、旋回動作のみを行うことができるようになる。この際、他方の把持部を使用者が把持していなくても、軸線が水平方向に延びる回動軸を備える関節部はロック状態が維持されるので、情報表示端末を保持した端末保持部が自重で下方に移動することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の支持装置を示す説明的斜視図。
図2】関節部のロック手段及びロック解除手段の構成を示す説明図。
図3】ロック解除手段の作動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す本実施形態の支持装置1は、医療用のモニタ(情報表示端末)であるタブレット2(被支持物)を所望の空間位置に移動し固定するためのものである。
【0020】
支持装置1は、図1に示すように、複数のアーム部(第1直立アーム部3、第2直立アーム部4、第1搖動アーム部5、第2搖動アーム部6)を備えている。各アーム部は、複数の関節部(基端関節部7、中間関節部8、先端関節部9)により連結されている。
【0021】
第1直立アーム部3は、直立して鉛直方向に延びる棒状に形成されており、その下端がクランプ10を介して手術台11に固定される。第1直立アーム部3の上端には、水平方向に配列された一対の水平連結部(第1水平連結部12、第2水平連結部13)を介して第2直立アーム部4が連結されている。第1水平連結部12と第2水平連結部13とは基端関節部7により連結されている。
【0022】
第2直立アーム部4は、直立して鉛直方向に延びる棒状に形成されており、その下端が第2水平連結部13に連結されている。第2直立アーム部4の上端には、中間関節部8を介して第1搖動アーム部5が連結されている。
【0023】
第1搖動アーム部5は、棒状に形成されており、その下端が中間関節部8に連結されていることにより第2直立アーム部4に対して搖動可能となっている。第1搖動アーム部5の上端には、先端関節部9を介して第2搖動アーム部6が連結されている。
【0024】
第2搖動アーム部6は、棒状に形成されており、その下端が中間関節部8に連結されていることにより第1搖動アーム部5に対して搖動可能となっている。第2搖動アーム部6の先端には、タブレット2を保持するためのタブレットホルダ14(端末保持部)が設けられている。
【0025】
タブレットホルダ14は、タブレット2を保持した状態での左右位置に、一対の把持部(左把持部15、右把持部16)を備えている。左把持部15は使用者が左手で把持する(握る)ものであり、右把持部16は使用者が右手で把持する(握る)ものである。
【0026】
左把持部15には、使用者が左手で左把持部15を把持したときに押圧操作可能となる左押釦スイッチ17(操作スイッチ)が設けられている。右把持部16には、使用者が右手で右把持部16を把持したときに押圧操作可能となる右押釦スイッチ18(操作スイッチ)が設けられている。
【0027】
左押釦スイッチ17と右押釦スイッチ18とは、電磁弁コントローラ19に対して指示信号を送るものであり、左押釦スイッチ17は左押釦スイッチ信号線20を介して、右押釦スイッチ18は右押釦スイッチ信号線21を介して電磁弁コントローラ19に接続されている。
【0028】
電磁弁コントローラ19は、垂直解除用エア電磁弁22と水平解除用エア電磁弁23とを制御する。垂直解除用エア電磁弁22は、垂直解除用エアチューブ24を介して中間関節部8のエアシリンダ25及び先端関節部9のエアシリンダ25に接続されている。水平解除用エア電磁弁23は、水平解除用エアチューブ26を介して基端関節部7のエアシリンダ25に接続されている。
【0029】
垂直解除用エア電磁弁22と水平解除用エア電磁弁23とは、圧縮エアボンベ27(又は、図示しないエアコンプレッサ等の圧縮エア供給装置)に接続される。垂直解除用エア電磁弁22を開弁させると、圧縮エア供給手段の圧縮エアが中間関節部8のエアシリンダ25及び先端関節部9のエアシリンダ25に供給される。水平解除用エア電磁弁23を開弁させると、圧縮エア供給手段の圧縮エアが基端関節部7のエアシリンダ25に供給される。
【0030】
ここで、基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9に採用されている関節部の構成を図2を参照して詳説する。基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9は同様の構成を有している。
【0031】
基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9に採用されている関節部は、図2に示すように、回動軸28を回動自在に支持する軸受フレーム29(軸受枠部)と、回動軸28と一体に回動する回動フレーム30とを備えている。
【0032】
回動軸28及び軸受フレーム29には、回動フレーム30の回動をロックするロック手段が設けられており、軸受フレーム29には、ロック手段によるロックを解除するロック解除手段が設けられている。
【0033】
ロック手段は、ラチェット歯車31、第1爪部材32、第2爪部材33、及びバネ34(付勢手段)を備えて構成されている。ラチェット歯車31は、回動軸28と一体に回動する。第1爪部材32は、ラチェット歯車31の歯溝に係合する第1係合爪35を備え、軸受フレーム29に第1搖動軸36を介して搖動自在に設けられている。第2爪部材33は、ラチェット歯車31の他の歯溝に係合する第2係合爪37を備え、軸受フレーム29の第1爪部材32と左右対称位置に第2搖動軸38を介して搖動自在に設けられている。バネ34は、第1爪部材32と第2爪部材33とに架け渡すようにして設けられ、第1係合爪35と第2係合爪37とが夫々ラチェット歯車31の各歯溝に同時に係合する方向に、第1爪部材32と第2爪部材33とを付勢する。
【0034】
第1係合爪35がラチェット歯車31の歯溝に係合した状態では、ラチェット歯車31の正転(本実施形態では時計回りの回転)が規制される。第2係合爪37がラチェット歯車31の歯溝に係合した状態では、ラチェット歯車31の逆転(本実施形態では反時計回りの回転)が規制される。そして、第1係合爪35と第2係合爪37とがラチェット歯車31の各歯溝に同時に係合した状態は、バネ34によって確実に維持される。このように、上記構成のロック手段によれば、ラチェット歯車31を介して回動軸28の回転を強固にロックすることができる。
【0035】
ロック解除手段は、バネの付勢に抗して第1爪部材32と第2爪部材33とを搖動させることによりロック手段によるロックを解除する。ロック解除手段は、ロック解除レバー39(操作レバー)、駆動ギヤ40、及び従動ギヤ41を備えて構成されている。そして、軸受フレーム29には、ロック解除レバー39を作動させるためのエアシリンダ25(アクチュエータ)がシリンダ保持部材42を介して保持されている。
【0036】
ロック解除レバー39は、軸受フレーム29にレバー搖動軸43を介して搖動自在に設けられている。駆動ギヤ40は、レバー搖動軸43に設けられており、ロック解除レバー39の搖動操作により回動する。従動ギヤ41は、第1爪部材32の第1搖動軸36に設けられていると共に、駆動ギヤ40に噛合している。
【0037】
第1爪部材32は、第2爪部材33に向かって突出するカム部44を備えている。第2爪部材33は、第2爪部材33に向かって突出するカム受け部45を備えている。カム受け部45は、第1爪部材32がラチェット歯車31への係合を解除する方向に回転したときにカム部44の押圧を受ける側に位置し、カム部44に当接する。カム部44とカム受け部45とは、本発明の同期手段を構成するものである。
【0038】
エアシリンダ25は、そのピストンロッド46がロック解除レバー39に当接している。エアシリンダ25のピストンロッド46が伸長すると、ピストンロッド46がロック解除レバー39を図中上方に向かって押し上げる。ロック解除レバー39は使用者による手動で操作可能であり、また、エアシリンダ25によってロック解除レバー39を作動させることも可能となっている。
【0039】
ロック解除手段の作動を説明する。ロック解除レバー39が、使用者による手動操作或いはエアシリンダ25のピストンロッド46の伸長により、図中上方に向かって回転すると、駆動ギヤ40が反時計回りに回転する。これに伴い、駆動ギヤ40に噛合している従動ギヤ41が時計回りに回転する。従動ギヤ41が時計回りに回転したことにより、第1搖動軸36を介して第1爪部材32が同方向に回転し、第1係合爪35がラチェット歯車31の歯溝から離反して係合が解除される。
【0040】
第1爪部材32が時計回りに回転すると、カム部44がカム受け部45を押圧する。これによって、第2爪部材33が第1爪部材32に同期して反時計回りに回転し第1係合爪35がラチェット歯車31の歯溝から離反して係合が解除される。
【0041】
こうして、図3に示すように、第1係合爪35と第2係合爪37とが同時にラチェット歯車31の歯溝から離反してラチェット歯車31のロックが解除され、回動軸28が回動自在となる。このように、ロック手段により回動軸28の回動が確実にロックされる構成でありながら、ロック解除レバー39を操作するだけで、簡単且つ迅速に回動軸28のロックを解除することができる。
【0042】
基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9は、上記構成による関節部が採用されているが、図1に示すように、基端関節部7は回動軸28が鉛直方向に延びる姿勢に取り付けられており、中間関節部8と先端関節部9とは何れも回動軸28が水平方向に延びる姿勢に取り付けられている。
【0043】
これによって、第2直立アーム部4が第1直立アーム部3に対して水平方向に回転可能とされ、タブレット2を水平方向に旋回させて画面を所望の方向に向けることができる。また、第1搖動アーム部5は第2直立アーム部4に対して上下方向に回転可能とされ、第2搖動アーム部6は第1搖動アーム部5に対して上下方向に回転可能とされる。そして、これらの動きは、ロック解除レバー39の操作によって容易に行うことができ、タブレット2が所望の位置で所望の向きとなったところでロック解除レバー39を開放することで、タブレット2の位置を固定することができる。
【0044】
更に、本実施形態においては、タブレット2の位置の移動を、左押釦スイッチ17と右押釦スイッチ18との操作に応じた電磁弁コントローラ19の制御により容易に行うことができるようになっている。
【0045】
即ち、左押釦スイッチ17と右押釦スイッチ18とが同時に押し操作され、左押釦スイッチ17の押し操作によるON信号と右押釦スイッチ18の押し操作によるON信号とが同時に電磁弁コントローラ19に入力されると、電磁弁コントローラ19の制御により、垂直解除用エア電磁弁22と水平解除用エア電磁弁23とが開弁する。
【0046】
これにより、基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9の全てのエアシリンダ25が作動してロックが解除されるので、タブレットホルダ14が保持した状態でタブレット2の位置を自由に変更することができる。このように、基端関節部7、中間関節部8、及び先端関節部9の全てのロックが解除されると、タブレット2を保持したタブレットホルダ14は、自重で下方に移動しようとする。しかし、左押釦スイッチ17と右押釦スイッチ18とを同時に押し操作するときには、使用者が、タブレットホルダ14の左把持部15を左手で把持し、右把持部16を右手で把持した状態で、両手で確実にタブレットホルダ14を保持した状態にある。これによって、タブレットホルダ14の不用意な移動が防止されるので、例えば、自重で勢いよく下方に移動したタブレットホルダ14が手術台11や手術台11に横たわる患者に衝突する等の事態を防止することができる。
【0047】
また、左押釦スイッチ17と右押釦スイッチ18との何れか一方のみが押し操作され、左押釦スイッチ17の押し操作によるON信号と右押釦スイッチ18の押し操作によるON信号との何れか一方のみが、電磁弁コントローラ19に入力されると、電磁弁コントローラ19の制御により、水平解除用エア電磁弁23のみが開弁する。
【0048】
これにより、基端関節部7のエアシリンダ25のみが作動して基端関節部7のロックが解除されるので、タブレットホルダ14を水平方向に旋回させてタブレット2の画面の左右方向の向きを自由に変更することができる。
【0049】
このように、基端関節部7のみのロックが解除されると、タブレット2を保持したタブレットホルダ14の高さ位置を変えることなくタブレット2の向きを変えることができるので、タブレットホルダ14を両手で支える等の動作が不要となる。
【0050】
そして、この時の操作は、タブレットホルダ14を所望の旋回方向に対応する方向から何れか一方のスイッチ17,18を押し操作すればよいので、その操作が極めて簡単である。
【0051】
なお、本実施形態においては、4つのアーム部3,4,5,6と、3つの関節部7,8,9を有する支持装置1について説明したが、アーム部と関節部の数はこれに限定されない。また、本実施形態においては、被支持物をタブレット2とした支持装置1について説明したが、被支持物は、タブレット2に限らない。
【符号の説明】
【0052】
1…支持装置、2…タブレット(被支持物、情報表示端末)、3…第1直立アーム部(アーム部)、4…第2直立アーム部(アーム部)、5…第1搖動アーム部(アーム部)、6…第2搖動アーム部(アーム部)7…基端関節部(関節部)、8…中間関節部(関節部)、9…先端関節部(関節部)、14…タブレットホルダ(端末保持部)、15…左把持部(把持部)、16…右把持部(把持部)17…左押釦スイッチ(操作スイッチ)、18…右押釦スイッチ(操作スイッチ)、25…エアシリンダ(アクチュエータ)、28…回動軸、29…軸受フレーム(軸受枠部)、31…ラチェット歯車、32…第1爪部材、33…第2爪部材、34…バネ(付勢手段)、39…ロック解除レバー(操作レバー)、44…カム部(同期手段)、45…カム受け部(同期手段)。
図1
図2
図3