(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄用配管は、温泉水を浴槽へ送水する送水配管から前記ガスセパレータに接続される配管であり、切換弁によって、前記送水配管から浴槽への温泉水の送水を停止した際に連通するように設けられていることを特徴とする請求項1記載のガスセパレータを備える温泉水の供給システム。
所要の熱源によって前記送水配管を通過する温泉水を加温する熱交換器が、該送水配管の中途部に設けられていることを特徴とする請求項2記載のガスセパレータを備える温泉水の供給システム。
前記送水配管と前記洗浄用配管の前記ガスセパレータ側の中途部とを接続する短絡水路を備えることで、凍結防止のために温泉水を循環させる凍結防止循環水路が構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載のガスセパレータを備える温泉水の供給システム。
前記ガスセパレータが複数設けられ、該ガスセパレータの数に対応し、前記揚湯配管の前記逆流防止凸部よりも該ガスセパレータに接続される側で水平に分岐されている水平分岐部に前記洗浄用配管が接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスセパレータを備える温泉水の供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスセパレータを備える温泉水の供給システムに関して解決しようとする課題は、温泉設備における温泉水の送水や循環に係る配管形態について、より適切で合理的に構成できるものの提案がなされていないことにある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、温泉設備における温泉水の送水や循環に係る配管形態について、より適切で合理的に構成できるガスセパレータを備える温泉水の供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムの一形態によれば、温泉井戸ポンプで揚湯した温泉水に含まれるガスを分離して除去するガスセパレータを備える温泉水の供給システムにおいて、温泉井戸ポンプから前記ガスセパレータに接続される揚湯配管と該揚湯配管に接続される洗浄用配管とを備え、前記ガスセパレータに前記揚湯配管が接続される高さ位置に比べ、該揚湯配管に前記洗浄用配管が接続される高さ位置を同等又は低く設定してあると共に、前記洗浄用配管を流れる洗浄水が温泉井戸へ流入することを防止するように、前記揚湯配管における前記洗浄用配管が接続される位置よりも前記温泉井戸ポンプ側の配管の一部が、前記ガスセパレータに該揚湯配管が接続される高さ位置に比べて高い位置を通るように形成された逆流防止凸部になっている。
【0008】
また、本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムの一形態によれば、前記洗浄用配管は、温泉水を浴槽へ送水する送水配管から前記ガスセパレータに接続される配管であり、切換弁によって、前記送水配管から浴槽への温泉水の送水を停止した際に連通するように設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムの一形態によれば、所要の熱源によって前記送水配管を通過する温泉水を加温する熱交換器が、該送水配管の中途部に設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムの一形態によれば、前記送水配管と前記洗浄用配管の前記ガスセパレータ側の中途部とを接続する短絡水路を備えることで、凍結防止のために温泉水を循環させる凍結防止循環水路が構成されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムの一形態によれば、前記ガスセパレータが複数設けられ、該ガスセパレータの数に対応し、前記揚湯配管の前記逆流防止凸部よりも該ガスセパレータに接続される側で水平に分岐されている水平分岐部に前記洗浄用配管が接続されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるガスセパレータを備える温泉水の供給システムによれば、温泉設備における温泉水の送水や循環に係る配管形態について、より適切で合理的に構成できるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るガスセパレータを備える温泉水の供給システムの形態例を添付図面(
図1〜9)に基づいて詳細に説明する。このガスセパレータ20を備える温泉の供給システムは、温泉井戸ポンプ11で揚湯した温泉水に含まれるガスを分離して除去することが要求される場合であって、深く掘られた温泉井戸10から温泉水を汲み上げる温泉施設などで、適切に利用できるシステムになっている。
【0015】
本形態例のガスセパレータ20は、温泉井戸ポンプ11で揚湯した温泉水を所要の高さから落下させて打ちつけることで生じる衝撃によって、ガスを分離させるように縦長に設けられている。また、このガスセパレータ20は、
図1〜7に示すように、塔状に形成されており、同形状の二塔が並列起立状態に設置されている。なお、塔状のガスセパレータ20の上端はガスを大気に放出できるように開口しており、その開口は法令上の規制によって地面から3m以上の高さとなるように設定されている。
【0016】
21は第1の圧力センサーであり、ガスセパレータ20の内部に一時的に留まる温泉水の水位を、圧力の測定によって検出するように設けられている。
この第1の圧力センサー21によって、ガスセパレータ20の内部の温泉水の水位が、設定された規定水位よりも低いことが検知された場合には、温泉井戸ポンプ11の出力が十分でなく、温泉水の揚湯量が所要の量に満たしていないことになる。反対に、この第1の圧力センサー21によって、ガスセパレータ20の内部の温泉水の水位が設定された規定水位よりも高いことが検知された場合には、温泉井戸ポンプ11の出力が過大で、温泉水の揚湯量が所要の量を超えていることになる。
【0017】
22は第1のインバータであり、第1の圧力センサー21からの信号によってガスセパレータ20の内部の水位が所要の範囲となるように、温泉井戸ポンプ11の出力を調整制御するように設けられている。
例えば、温泉井戸10の温泉水位が低くなることで、ガスセパレータ20の内部の温泉水の水位が低くなったら、第1のインバータ22で温泉井戸ポンプ11を作動させる電動モータの電源に係る周波数を上げ、温泉井戸ポンプ11による揚湯量を上げるように制御する。反対に、温泉井戸10の温泉水位が高くなることで、ガスセパレータ20の内部の温泉水の水位が高くなったら、第1のインバータ22で温泉井戸ポンプ11を作動させる電動モータの電源に係る周波数を下げ、温泉井戸ポンプ11による揚湯量を下げるように制御する。
【0018】
これによれば、温泉井戸ポンプ11によって汲み上げる揚湯量を、所要の範囲で一定となるように調整でき、安定的な温泉水の供給を行うことができる。また、ガスセパレータ20の内部の温泉水の水位が、所要の範囲で一定となるように調整されるため、温泉水をガスセパレータ20の内部で落下させる高低差(落差)を所要の範囲で維持できる。このため、温泉水を落下させ、その衝撃で温泉水からガスを分離・除去させることが、常に適切な条件で行なわれることになり、安定的に安全な温泉水を供給できる。
【0019】
30は温泉貯留タンクであり、ガスセパレータ20によってガス除去の処理がなされた後の温泉水を貯留する貯留槽になっている。また、本形態例の温泉貯留タンク30は、大気に開放されたタンクであり、この温泉貯留タンク30の内部からも、ガスを大気に排出できるように、排気口30aが設けられている。また、30bはオーバーフロー用排水管路であり、所要量を超える温泉水が流入してきた非常の場合には、温泉貯留タンク30の内部の上端部に空き空間を残して温泉水を排水できるように設けられている。
【0020】
また、31は温泉送水ポンプであり、温泉貯留タンク30から送水配管35を介して浴槽40に温泉水を送水するように、温泉貯留タンク30に、送水配管35の一部を構成する接続用の配管35aによって接続され、その温泉送水ポンプ31の吐出口に浴槽40まで延びる送水配管35が接続されている。
【0021】
32は第2の圧力センサーであり、温泉貯留タンク30の内部に貯留された温泉水の貯留水位を、圧力の測定によって検出するように設けられている。
この第2の圧力センサー32によって、温泉貯留タンク30の内部の温泉水の水位が設定された規定水位よりも低いことが検知された場合には、温泉送水ポンプ31の出力が過大で、温泉水の送水量の方が、揚湯量よりも大きくなっていることになる。反対に、この第2の圧力センサー32によって、温泉貯留タンク30の内部の温泉水の水位が設定された規定水位よりも高いことが検知された場合には、温泉送水ポンプ31の出力が十分でなく、温泉水の送水量の方が、揚湯量よりも小さくなっていることになる。
【0022】
33は第2のインバータであり、第2の圧力センサー32からの信号によって貯留水位が所要の範囲となるように、温泉送水ポンプ31の出力を調整制御するように設けられている。
例えば、
図8に示すフローチャートのように、温泉貯留タンク30の内部の温泉水の水位が低くなったら、第2のインバータ33で周波数を下げて温泉送水ポンプ31による送水量を下げるように制御する。反対に、温泉貯留タンク30の内部の温泉水の水位が高くなったら、第2のインバータ33で周波数を上げて温泉送水ポンプ31による送水量を上げるように制御する。また、温泉送水ポンプ31の空転を防止するためには、その温泉送水ポンプ31の運転を停止する。
【0023】
以上の構成によるガスセパレータを備える温泉水の供給システムによれば、温泉井戸ポンプ11と温泉送水ポンプ31との両方について、インバータ制御がなされるため、二重に温泉水の供給が管理されることになる。従って、より安定的な温泉水の供給ができることになり、使用者が快適に利用できる。また、本発明では、インバータ制御によって、温泉井戸ポンプ11と温泉送水ポンプ31の出力を適切に可変するもので、温泉井戸ポンプ11と温泉送水ポンプ31の出力が無駄なく調整されるため、節電効果が高く、運転コストを低減できる。なお、揚湯配管12に流量調整用のバルブを設けることで揚湯量を調整することも可能であるが、その場合には温泉井戸ポンプ11の出力については高い状態を維持することになり、電力消費が大きくなって、運転コストが高くつくことになる。
【0024】
また、本形態例では、第1の圧力センサー21及び第2の圧力センサー32が、センサー部に空気が接触する状態で温泉水の水位の変化による圧力変化を測定できるように、ガスセパレータ20及び温泉貯留タンク30に空気層を介在させて接続されている。
このように、第1の圧力センサー21及び第2の圧力センサー32が、空気層を介して測定することで、センサー部(受圧部)に温泉水が直に接触しないため、腐食やスケール付着による感度低下を防止でき、信頼性の高いセンシングを行うことができる。
【0025】
また、本形態例では、温泉貯留タンク30から浴槽40に温泉水に送水する送水配管35の洗浄時期を検知するように、第2のインバータ33の周波数を検出して警報のための情報を出力する周波数検出手段を備えている。この周波数検出手段としては、インバータに搭載された機能を使用するか、別置きの周波数指示調節計によって、予め設定された周波数値と比較して、上回った場合に警報信号を発信するものを用いればよい。
これによれば、
図9のフローチャートに示すように、温泉送水ポンプ31に係る第2のインバータ33の周波数の増大変化を監視することで、第2のインバータ33の周波数が上限値を超えた場合に、要メンテナンス警報を発報することで、送水配管の洗浄時期を適切に知らせることができる。
【0026】
また、本形態例では、所要の熱源によって送水配管35を通過する温泉水を加温して昇温させる熱交換器37が、送水配管35の中途部に設けられている。
このように熱交換器37が配設されている場合は、その熱交換器37を通る送水配管35の部分が、温泉水のスケールによって最も閉塞し易い部分となる。この場合、温泉水の送水量を揚湯量と同じくなるように制御する第2のインバータ33の周波数の変化を監視することで、実質的には、熱交換器37の閉塞を監視することになる。これによれば、その熱交換器37の洗浄時期を、適切且つ有効に判断できる。これは、本来、送水量が一定ならば、第2のインバータの周波数は一定のはずであるが、熱交換器37の閉塞によって圧力損失が上昇すると、その周波数が高くなり、その周波数の上昇の経過を監視することで、メンテナンスの時期を知ることができることによる。
【0027】
さらに、本形態例では、ガスセパレータ20と温泉貯留タンク30とを接続する連通配管25に温泉水の水量を調整する水量調整弁26が設けられている。
これによれば、温泉井戸ポンプ11による温泉水の汲み上げ量を、その運転の状況ごとに、例えば、湯張時の送水量と、営業時の送水量とのそれぞれに対応させ、所要の範囲で一定量となるように適切に合わせることができる。
【0028】
次に、本発明に係るガスセパレータを備える温泉水の供給システムにおける配管の形態例を図面(
図1〜7)に基づいて説明する。
本形態例では、温泉井戸ポンプ11からガスセパレータ20に接続される揚湯配管12とその揚湯配管12に接続される洗浄用配管50とを備えている。
【0029】
そして、ガスセパレータ20に揚湯配管12が接続される高さ位置に比べ、その揚湯配管12に洗浄用配管50が接続される高さ位置を同等又は低く設定してあると共に、その洗浄用配管50を流れる洗浄水が温泉井戸10へ流入することを防止するように、揚湯配管12における洗浄用配管50が接続される位置よりも温泉井戸ポンプ11側の配管の一部が、ガスセパレータ20に揚湯配管12が接続される高さ位置に比べて高い位置を通るように形成された逆流防止凸部13になっている。なお、揚湯時には、洗浄用配管50が切換弁53によって閉じられる。
【0030】
すなわち、この逆流防止凸部13は、大気に解放されているガスセパレータ20に出口側が接続されている揚湯配管12の一部分が、流路に高低差を設けることで温泉井戸10への逆流を防止する形態になっていることで構成されている。このように、配管に高低差を設けるという簡便な方法で、洗浄時や凍結防止時に逆流を防止し、適切且つ安全に使用できる形態となっている。
なお、揚湯配管12の中途に手動バルブを設けて揚湯配管12(温泉井戸10からガスセパレータ20の間の流路)を閉じることで、洗浄時や凍結防止時に逆流を防止することも可能であるが、揚湯配管12が閉塞した状態となるため、配管破裂などのトラブルを発生する恐れがある。
【0031】
本形態例の洗浄用配管50は、温泉水を浴槽40へ送水する送水配管35からガスセパレータ20に接続される配管であり、切換弁51によって、送水配管35から浴槽40への温泉水の送水を停止した際に連通するように設けられている。これによれば、例えば薬剤を混入させた洗浄水を循環させて、送水配管35、ガスセパレータ20、及び温泉貯留タンク30を、効率的に洗浄することができる。所要の熱源によって送水配管35を通過する温泉水を加温する熱交換器37が設けられている送水配管35の中途部は、スケールが付着し易いが、その部分を含めて適切且つ効果的に洗浄できる。
【0032】
また、本形態例では、送水配管35と洗浄用配管50のガスセパレータ20側の中途部とを接続する短絡水路61を備えることで、凍結防止のために温泉水を循環させる凍結防止循環水路60が構成されている。なお、凍結防止時には、切換弁62によって短絡水路61が連通し、切換弁53が開き、切換弁52が閉じられることで、凍結防止循環水路60が連通されるようになっている。
これによれば、寒冷地において、凍結による被害を回避できる。また、この凍結防止循環水路60によれば、前述の逆流防止凸部13の形態によって、凍結防止時の循環流が温泉井戸10へ流入することを防止でき、適切に運転できる。
【0033】
さらに、本形態例では、ガスセパレータ20が複数設けられ、そのガスセパレータ20の数に対応し、揚湯配管12の逆流防止凸部13よりもガスセパレータ20に接続される側で水平に分岐されている水平分岐部14に洗浄用配管50が接続されている。
これによれば、複数のガスセパレータ20のそれぞれへ均等に、洗浄水や凍結防止の温泉水を適切に循環させることができる。それぞれの作業を適切に行うことができる。
【0034】
次に、本発明に係るガスセパレータを備える温泉水の供給システムの具体的な作動操作について説明する。
先ず、運営状況によって温泉水の送水量を可変制御させる例として、湯張時と、営業時とで、送水量を可変させたい場合について説明する。
【0035】
本発明では、湯張時の湯量と、営業時の湯量との各々について、ガスセパレータ20の内部の水位を割り付け、温泉井戸10からの揚湯量をインバータ制御することができる。
例えば、湯張時のガスセパレータの内部の水位を1260mmで200L/minを揚湯し、営業時のガスセパレータの内部の水位を1200mmで120L/minを揚湯した事例がある。
【0036】
これによれば、本来は、ガスを抜くために設置したガスセパレータ20を利用し、温泉水の揚湯量の可変制御の役割を付加することができた。
なお、ガスセパレータ20から温泉貯留タンク30へ排出される水量は、水量調整弁26などによって設定することができ、これによって、ガスセパレータ20の内部の水位を所要の範囲に維持可能な流入量(揚湯量)を割り出すことができる。
【0037】
次に、営業時の揚湯量を一定に維持する場合について説明する。
本発明では、温泉のしみ出し量が少なく、汲み上げ続けることで温泉水位が大きく低下する温泉井戸10で、汲み上げ量をインバータ制御することができる。
例えば、ガスセパレータ20の内部の水位を、1200mmに設定することで、運転開始時は、温泉水位が地面から−280m程度にあるため、70L/min×35Hz程度で運転し、営業終了時は、温泉水位が地面から−470m程度まで下がってしまうため、70L/min×45Hz程度で運転した事例がある。
【0038】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明は以上の形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。