特許第6671748号(P6671748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671748
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】蓄光顔料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20200316BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200316BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20200316BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C09K11/64
   C09K11/06
   C09K11/08 G
   C09C1/00
   C09C3/08
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-110866(P2018-110866)
(22)【出願日】2018年6月11日
(65)【公開番号】特開2019-214635(P2019-214635A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年3月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301067195
【氏名又は名称】株式会社エヌ・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 慶一
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−146125(JP,A)
【文献】 特開2002−105448(JP,A)
【文献】 特開2010−229363(JP,A)
【文献】 DAS Sourav et.al.,Rhodamine 6G Dye Encapsulated Mesoporous SiO2/SrAl2O4:Eu2+,Dy3+ Composite Yellow Long Persistent Phosphor,ECS Journal of Solid State Science and Technology,2016年 4月 2日,5(6),R98-R103,全文。特に、要旨、Experimental、Table II等参照。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/64
C09C 1/00
C09C 3/08
C09K 11/06
C09K 11/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a):最外殻電子が4S又は5Sとなる金属原子のアルミン酸塩又は珪酸塩に賦活剤として希土類原子を加えた蓄光顔料と、
成分(b):ローダミン化合物と
を含み、
前記成分(a)として、SrAl:Eu,DyとSrAl1425:Eu,Dyの両方を含み、
前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対する前記成分(b)の含有量が、0.002重量%以上0.005重量%以下である
蓄光顔料組成物。
【請求項2】
前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対するSrAl:Eu,Dyの含有量が、45.0重量%以上99.8重量%以下であり、
前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対するSrAl1425:Eu,Dyの含有量が、0.1重量%以上54.8重量%以下である
請求項に記載の蓄光顔料組成物。
【請求項3】
前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対するSrAl:Eu,Dyの含有量が、0.1重量%以上39.8重量%以下であり、
前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対するSrAl1425:Eu,Dyの含有量が、60.0重量%以上99.8重量%以下である
請求項に記載の蓄光顔料組成物。
【請求項4】
前記成分(b)が、ローダミン6Gである
請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄光顔料組成物。
【請求項5】
前記成分(a)又は前記成分(b)を含む粒子の表面を被覆した縮合珪酸エチルの部分加水分解物をさらに含む
請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄光顔料組成物。
【請求項6】
前記縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量が、前記粒子に対して0.2〜10.0重量%である
請求項に記載の蓄光顔料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度が高く、従来の蓄光顔料とは異なる色を発する蓄光顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光顔料は、太陽光、紫外線、蛍光灯などのエネルギーを吸収し、電子が上位軌道に遷移することにより励起し、これが基底状態に戻る過程でゆっくりと光を発する機能を有していることから、夜間における自動車、バイク、自転車、歩行者などの存在を認識するための表示や、地下道の誘導表示などへの応用が期待される。蓄光顔料としては数多くの種類が知られているが、輝度も高く有用な蓄光顔料としては、アルミン酸ストロンチウムにユーロピウム及びジスプロシウムを賦活させた黄緑色発光の蓄光顔料(SrAl:Eu,Dy)や、青緑色発光の蓄光顔料(SrAl1425:Eu,Dy)が挙げられる。
【0003】
しかし、これらの蓄光顔料は一般に水に弱く、水分に晒されると加水分解して特性が劣化することから、それを防ぐ方法が検討されている。特許文献1には、屈折率が1.435以上である薄膜シリカで被覆(第一被覆)され、さらにポリシラザン由来の屈折率が1.45以上のシリカ膜で被覆(第二被覆)された発光体粒子が記載されている。このような構成によれば、発光体粒子の耐湿性が向上するとされている。特許文献2には、表面に0.2〜15.0重量%の縮合リン酸塩が沈積した、ストロンチウムを含む蓄光顔料である蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子の表面を被覆するアモルファスシリカとを有し、前記縮合リン酸塩が、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、及びセリウムから選択される金属のトリポリリン酸塩又はテトラポリリン酸塩である発光体が記載されている。このような構成によれば、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)に優れた発光体となり、耐水性、耐熱性、及び耐候性も向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−261869号公報
【特許文献2】特許第5729698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、用途が広い白色発光や、警戒色である黄色発光を示す蓄光顔料は、殆ど知られていない。前述の黄緑色発光又は青緑色発光の蓄光顔料に、赤色、オレンジ色、青色の蓄光顔料を組み合わせると、輝度の違いや残光輝度の減衰の程度によって、初期の発光色から次第に発光色が変化したり、輝度が低下したりすることがあった。また、蓄光顔料を塗布又は添加した材料の表面に薄いカラーフイルムを重ねる方法もあるが、蓄光顔料の輝度が大きく損われてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、輝度が高く、従来の蓄光顔料とは異なる色を発する蓄光顔料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄光顔料組成物は、成分(a):最外殻電子が4S又は5Sとなる金属原子のアルミン酸塩又は珪酸塩に賦活剤として希土類原子を加えた蓄光顔料と、成分(b):ローダミン化合物とを含み、前記成分(a)として、SrAl:Eu,DyとSrAl1425:Eu,Dyの両方を含み、前記成分(a)と前記成分(b)の合計に対する前記成分(b)の含有量が、0.002重量%以上0.005重量%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、輝度が高く、従来の蓄光顔料とは異なる色を発する蓄光顔料組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<蓄光顔料組成物>
本発明の蓄光顔料組成物は、成分(a)として、最外殻電子が4S又は5Sとなる金属原子のアルミン酸塩又は珪酸塩に賦活剤として希土類原子を加えた蓄光顔料と、成分(b)として、ローダミン化合物とを含む。
【0010】
成分(a)である蓄光顔料としては、最外殻電子が4S又は5Sとなる金属原子のアルミン酸塩又は珪酸塩に、賦活剤として希土類原子を加えた蓄光顔料を用いることができる。最外殻電子が4Sとなる金属原子の具体例としては、Ca(カルシウム)、Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)が挙げられる。最外殻電子が5Sとなる金属原子の具体例としては、Sr(ストロンチウム)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Tc(テクネチウム)、Cd(カドミウム)が挙げられる。なかでも、Ca、Sr、Yが好ましく、Srがより好ましい。蓄光顔料の具体例としては、SrAl:Eu,Dy(イエローグリーン発光色の蓄光顔料)、SrAl1425:Eu,Dy(ブルーグリーン発光色の蓄光顔料)等のアルミン酸ストロンチウムに賦活剤としてEu及びDyを加えた蓄光顔料が挙げられる。
【0011】
なかでも、成分(a)として、SrAl:Eu,Dy(以下、成分(a1)と呼ぶことがある。)と、SrAl1425:Eu,Dy(以下、成分(a2)と呼ぶことがある。)の両方を含むことが好ましい。こうすることで、白色や黄色のような従来の蓄光顔料とは大きく異なる色を発する蓄光顔料組成物となる。なお、そのための好ましい配合比については、後述する。
【0012】
成分(a)は、粒子(粒状物)であることが好ましい。換言すると、本発明の蓄光顔料組成物は、成分(a)を主成分として含む粒子(以下、蓄光顔料粒子と呼ぶことがある。)を含むことが好ましい。なお、「主成分」とは、蓄光顔料粒子に最も多く含まれる蓄光顔料を言う。蓄光顔料粒子の粒径は、目的に応じて適宜設定されるが、例えば、粒径が2〜100μmの範囲に揃えられた蓄光顔料粒子を用いることができ、また15〜50μm、15〜25μm、25〜35μm、又は35〜50μmの範囲に揃えられた蓄光顔料粒子を用いることもできる。なお、「粒径が…揃えられた」とは、分級により粒径が当該範囲の蓄光顔料粒子のみになっている状態が好ましいが、粒径が当該範囲外の蓄光顔料粒子を少量含んでいてもよく、例えば、95重量%以上の蓄光顔料粒子の粒径が当該範囲内に入っていればよい。
【0013】
このように蓄光顔料粒子の粒径を所定範囲に揃えることで、輝度の低下を防ぐことができる。すなわち、粒径の小さな蓄光顔料粒子を殆ど含まないので高密度充填構造をとらず、蓄光顔料全体への光の侵入を阻害しない。そのため励起する蓄光顔料分子数が多くなるため輝度は大きくなる。また、粒径が大きいほどこの傾向は強くなり、輝度は大きくなるが、蓄光顔料粒子が添加される樹脂中で平滑な表面になりにくい。したがって蓄光顔料粒子は、粒径が2〜100μmの範囲に揃えられていることが好適である。
【0014】
なお、アルミン酸ストロンチウム蓄光顔料粒子は、モース硬度が7、ビッカース硬度が1,100HV程度と極めて高度が高いため、樹脂中に分散する際に金属、ガラス他の分散機を摩耗しグレーに着色されることがある。その場合、後述するように、蓄光顔料粒子を縮合珪酸エチルの部分加水分解物で被覆することで、縮合珪酸エチルの部分加水分解物が緩衝作用を示し、分散機の摩耗を大幅に低減することができる。
【0015】
成分(b)であるローダミン化合物は、アミノフェノールと無水フタル酸を縮合して得られる染料であり、一般的に蛍光性を有する化合物である。成分(a)に成分(b)を組み合わせることで、輝度が高く、成分(a)とは異なる色を発する蓄光顔料組成物を提供することができる。ローダミン化合物としては、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン6GP、ローダミン3GO、ローダミン110、ローダミン123が挙げられる。なかでも、下記式で表されるローダミン6G(9−[2−(エトキシカルボニル)フェニル]−3,6−ビス(エチルアミノ)−2,7−ジメチルキサンチリウム・クロリド、分子式:C2831ClN)が好ましい。
【化1】
【0016】
成分(b)は、粒子(粒状物)に含まれることが好ましい。換言すると、本発明の蓄光顔料組成物は、成分(b)を主成分として含む粒子(以下、蛍光粒子と呼ぶことがある。)を含むことが好ましい。なお、「主成分」とは、蛍光粒子に最も多く含まれる蛍光性を有する化合物を言う。
【0017】
成分(b)の含有量に関しては、成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(b)の含有量が、0.0005重量%以上0.2重量%以下とする。成分(b)の含有量をこの範囲とすることで、成分(a)の蓄光性及び輝度の低下を抑えつつ、成分(a)とは異なる色を発する蓄光顔料組成物となる。成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(b)の含有量は、0.001重量%以上0.05重量%以下であることが好ましく、0.0015重量%以上0.01重量%以下であることがより好ましく、0.002重量%以上0.005重量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
また、成分(a)として成分(a1)と成分(a2)の両方を含み、成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a1)の含有量が、45.0重量%以上99.8重量%以下であり、成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a2)の含有量が、0.1重量%以上54.8重量%以下であることが好ましい。この範囲であれば、黄色を発する蓄光顔料組成物となる。成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a1)の含有量は、47.5重量%以上99.5重量%以下であることがより好ましく、50.0重量%以上99.0重量%以下であることがさらに好ましい。成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a2)の含有量は、0.4重量%以上52.4重量%以下であることがより好ましく、0.9重量%以上50.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また、成分(a)として成分(a1)と成分(a2)の両方を含み、成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a1)の含有量が、0.1重量%以上39.8重量%以下であり、成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a2)の含有量が、60.0重量%以上99.8重量%以下であることが好ましい。この範囲であれば、白色を発する蓄光顔料組成物となる。成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a1)の含有量は、1.0重量%以上35.0重量%以下であることがより好ましく、5.0重量%以上30.0重量%以下であることがさらに好ましい。成分(a)と成分(b)の合計に対する成分(a2)の含有量は、64.0重量%以上97.8重量%以下であることがより好ましく、69.0重量%以上97.8重量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明に係る蓄光顔料組成物は、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート等の樹脂に添加したり、アクリル樹脂塗料、アルキド樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料等の塗料に添加して、種々な標示用材料(避難標示材、設備標示材、道路標示材、誘導表示材など)や建築用材料に好適に使用される。また、本発明に係る蓄光顔料組成物は、レジャー用品(テント、安全ベスト、釣り具など)や生活用品(懐中電灯、スイッチ、電気製品、時計、携帯電話など)に使用されたり、装飾用途(玩具、ボタン、プリント、キーホルダーなど)にも使用される。
【0021】
<縮合珪酸エチルの部分加水分解物による被覆>
本発明に係る蓄光顔料組成物は、蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子の表面を被覆した縮合珪酸エチルの部分加水分解物をさらに含むことが好ましい。換言すれば、本発明に係る蓄光顔料組成物に含まれる蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子は、その粒子の表面に縮合珪酸エチルの部分加水分解物を沈積させたもの(これを「縮合珪酸エチル処理粒子」とも呼ぶ。)であることが好ましい。蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子の表面に縮合珪酸エチルの部分加水分解物を沈積させることで、分散性、耐水性及び耐候性に優れたものとなる。なお、本発明に係る蓄光顔料組成物において、蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子の表面全面が、縮合珪酸エチルの部分加水分解物で被覆されていることが好ましいが、蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子の表面の一部が、縮合珪酸エチルの部分加水分解物で被覆されてなくても構わない。
【0022】
縮合珪酸エチルとは、化学式Sin−1(OC2(n+1)で表される鎖状化合物である。nは一般に4〜10(好ましくは8〜10)であり、SiO含有量は一般に35〜45重量%(好ましくは43〜45重量%)である。縮合珪酸エチルの市販品としては、多摩化学工業製のシリケート40(n=4〜6、SiO含有量:39〜42重量%)、シリケート45(n=8〜10、SiO含有量:43〜45重量%)が挙げられる。
【0023】
縮合珪酸エチルは、理論上は、水が存在するとエトキシシラン結合(Si−OC)が加水分解してシラノールとなり、それが水と反応してシリカ(SiO)になる。例えば、n=9の縮合珪酸エチルの場合、以下のような反応が起きる。
Si(OC20+20HO→
Si(OH)20+20COH (1)
Si(OH)20→9SiO+10HO (2)
しかし、実際には全てのエトキシシラン結合が加水分解されることはなく、一部のエトキシシラン結合が加水分解して、部分加水分解物が得られる。例えば、n=9の縮合珪酸エチルの場合、x個(x=1〜19)のエトキシシラン結合が加水分解され、以下のような部分加水分解物が得られる。
Si(OC20+xHO→
Si(OC20−x(OH)+xCOH (1’)
すなわち、蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子の表面に縮合珪酸エチルの部分加水分解物を沈積させた場合、縮合珪酸エチルのエトキシシラン結合が部分的に残っていることから疎水性を示し、かつ濃密なシリカ被膜により耐水性が向上する。
【0024】
縮合珪酸エチルの加水分解物の含有量に関しては、そのSiO換算含有量が、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して0.2〜10.0重量%であることが好ましく、0.5〜9.0重量%であることがより好ましく、1.0〜7.0重量%であることがさらに好ましい。縮合珪酸エチルのSiO換算含有量を高くすると、蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子が縮合珪酸エチルの加水分解物により十分に被覆されるため、分散性及び耐候性が向上する。また、前述のように縮合珪酸エチルの加水分解物の効果により耐水性も向上する。さらに、蓄光顔料粒子の場合は輝度も向上することが分かっている。これは、縮合珪酸エチルの加水分解物が蓄光顔料粒子の表面に光を透過する立体障害を形成して、蓄光顔料粒子同士が隙間なく重なることを防止することで、光が内部の蓄光顔料粒子まで到達しやすくなり、多くの蓄光顔料粒子が励起されるためと考えられる。ただし、縮合珪酸エチルのSiO換算含有量を高くしすぎると、相対的に蓄光顔料粒子の濃度が下がることから、輝度が低下する傾向がみられる。また、縮合珪酸エチルのSiO換算含有量を高くしすぎると、加水分解反応を十分に進行させることが難しく、未反応の縮合珪酸エチルが残ったり、加水分解反応用の水の乾燥が難しくなる場合がある。なお、縮合珪酸エチルの加水分解物のSiO換算含有量とは、縮合珪酸エチルの部分加水分解物の含有量を、縮合珪酸エチルが上記の反応により完全にSiOになった場合の量に換算して算出したものであり、用いた蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子と縮合珪酸エチルの重量から算出することができる。
【0025】
蓄光顔料粒子又は蛍光粒子の表面を縮合珪酸エチルの部分加水分解物により被覆する方法としては、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子の存在下、縮合珪酸エチルを部分的に加水分解する方法が挙げられる。より具体的には、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子と縮合珪酸エチルを混合した状態で、縮合珪酸エチルの加水分解反応を起こさせることで、縮合珪酸エチル処理粒子が得られる。蓄光顔料粒子又は蛍光粒子と縮合珪酸エチルの混合は、湿式でも乾式でもよいが、一般に蓄光顔料粒子及び蛍光粒子は水に弱いことから乾式で行うことが好ましい。なお、ここでいう「乾式」とは、液体を一切用いないで混合する場合のみならず、少量の液体を用いつつも溶液又は懸濁液ではない状態で混合する場合を含む。
【0026】
縮合珪酸エチルの使用量に関しては、前述のとおり、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子を被覆する縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量が、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して0.2〜10.0重量%となる量が好ましく、0.5〜9.0重量%となる量がより好ましく、1.0〜7.0重量%となる量がさらに好ましい。
【0027】
縮合珪酸エチルの加水分解は、中性条件でも徐々に進行するが、縮合珪酸エチルが水に不溶であるため局所的に加水分解してゲル化することがある。そこで、ゲル化を防ぐために、酸性条件にして縮合珪酸エチルの加水分解を速やかに進行させることが好ましい。そのための加水分解助剤は、硫酸、塩酸、硝酸、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。ただし、不揮発性の酸を用いると、加水分解後に未反応の酸を除去することが難しいことから、揮発性の酸を用いることが好ましく、塩酸(塩化水素水)を用いることがより好ましい。塩酸の使用量に関しては、例えば、縮合珪酸エチル100重量部に対して10〜30重量部の0.1M塩酸を用いることができる。
【0028】
その他、縮合珪酸エチルの加水分解の際には、エタノール及び/又は水を添加することもできる。エタノールの使用量は、例えば、縮合珪酸エチル100重量部に対して30〜60重量部とすることができる。水の使用量は、例えば、縮合珪酸エチル100重量部に対して80〜120重量部とすることができる。
【0029】
その後、得られた縮合珪酸エチル処理粒子を乾燥することが好ましい。この乾燥により水やエタノールが除去され、加水分解助剤としては塩酸を用いた場合には揮発性のある塩化水素も除去される。最終的な乾燥温度は、水を除去する観点から、100〜140℃とすることが好ましく、110〜130℃とすることがより好ましい。特に、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子を被覆する縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量が多い場合(例えば、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して5.0重量%以上の場合)には、縮合珪酸エチルの加水分解工程と乾燥工程を複数回繰り返してもよい。
【0030】
<アモルファスシリカによる被覆>
本発明に係る蓄光顔料組成物に含まれる蓄光顔料粒子及び/又は蛍光粒子において、縮合珪酸エチルの部分加水分解物が最外層を構成していてもよく、縮合珪酸エチルの部分加水分解物からなる層の外側に、例えばアモルファスシリカを沈積させた層が形成されていてもよい。すなわち、本発明に係る蓄光顔料組成物は、縮合珪酸エチルの部分加水分解物の表面を被覆したアモルファスシリカをさらに含んでいてもよい。縮合珪酸エチルの部分加水分解物上にアモルファスシリカを沈積させる(この粒子を「アモルファスシリカ沈積粒子」とも呼ぶ。)ことで、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)に優れたものとなる。耐水性、耐熱性、及び耐候性も向上する。さらに、アモルファスシリカにより縮合珪酸エチル処理粒子表面の凹凸が減少するので、粘性抵抗が下がり、取扱い性が良好になる。例えば、粘性抵抗が低い蓄光顔料組成物を塗装材として用いることで、塗装材の伸びが良く、使い勝手が向上する。また、表面の凹凸が少ないアモルファスシリカ沈積粒子を成形機に充填して成形処理を行うことで、成形機がアモルファスシリカ沈積粒子により摩耗したり損傷したりする事態を回避できる。
【0031】
アモルファスシリカの含有量は、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して0.5〜10.0重量%であることが好ましく、1.0〜9.0重量%であることがより好ましく、2.0〜7.0重量%であることがさらに好ましい。アモルファスシリカの含有量を高くすると、縮合珪酸エチル処理粒子がアモルファスシリカにより十分に被覆されるため、耐薬品性等の諸耐性がより向上する。一方、アモルファスシリカの含有量を低くすると、特に蓄光顔料粒子が外光を吸収し易く、蓄光顔料粒子からの光がアモルファスシリカの被膜を通して外部に放出され易くなるため、輝度が向上する。なお、アモルファスシリカの含有量は、得られたアモルファスシリカ沈積粒子の重量と、用いた縮合珪酸エチル処理粒子の重量とから算出することができる。
【0032】
アモルファスシリカの膜厚は、目的とする耐水性、耐熱性、及び取扱い性に応じて適宜設定すればよいが、その平均膜厚は、50〜5000Åであることが好ましく、100〜1000Åであることがより好ましく、200〜500Åであることがさらに好ましい。アモルファスシリカの平均膜厚を厚くすると、縮合珪酸エチル処理粒子がアモルファスシリカにより十分に被覆されるため、耐薬品性等の諸耐性がより向上する。一方、アモルファスシリカの平均膜厚を薄くすると、特に蓄光顔料粒子が外光を吸収し易く、蓄光顔料粒子からの光がアモルファスシリカの被膜を通して外部に放出され易くなるため、輝度が向上する。なお、縮合珪酸エチル処理粒子の表面を被覆しているアモルファスシリカの平均膜厚は、得られたアモルファスシリカ沈積粒子の粒径と、用いた縮合珪酸エチル処理粒子の粒径とから算出することができる。
【0033】
縮合珪酸エチル処理粒子の表面にアモルファスシリカを沈積させる方法としては、縮合珪酸エチル処理粒子の表面に正珪酸を高温下で沈積させる方法が挙げられる。正珪酸を得る方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
(1)珪酸ナトリウム及び酸を加える。
(2)正珪酸エチルを加水分解する。
(3)珪酸ナトリウムを陽イオン交換樹脂で処理する。
(4)ガラスと水酸化ナトリウムをオートクレーブ中で反応させる。
【0034】
(3)の方法では、生成した正珪酸が分解しやすく、縮合珪酸エチル処理粒子の表面に沈積させるのが難しい。また、陽イオン交換樹脂の性能が低下しやすく、再生も難しい。(4)の方法では、オートクレーブを用いる必要があるので、工業的生産には適していない。以上のことから、(1)又は(2)の方法により縮合珪酸エチル処理粒子の表面に正珪酸を沈積させることが好ましい。
【0035】
(1)の方法に関し、より具体的には、縮合珪酸エチル処理粒子を水中に分散させたスラリーを得た(工程(1−1))後、スラリーに珪酸ナトリウム及び酸を加える(工程(1−2))方法により、縮合珪酸エチル処理粒子の表面に、さらにアモルファスシリカを沈積させることができる。各成分の使用量は、前述のとおり、縮合珪酸エチル処理粒子を被覆するアモルファスシリカの含有量が、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して0.5〜10.0重量%となる量が好ましく、1.0〜9.0重量%となる量がより好ましく、2.0〜7.0重量%となる量がさらに好ましい。
【0036】
工程(1−1)において、分散剤として珪酸ナトリウム又はヘキサメタリン酸ナトリウムを用いることが好ましい。こうすることで、縮合珪酸エチル処理粒子が一次粒子として水中に分散しやすくなる。そして、縮合珪酸エチル処理粒子が一次粒子に分散されているほど、アモルファスシリカは被覆されやすくなる。すなわち、二次凝集塊にアモルファスシリカを形成すると、乾燥・粉砕する際や樹脂へ分散する際に凝集塊が壊れ、アモルファスシリカが被覆されていない面が露出しやすくなる。分散剤の使用量は、縮合珪酸エチル処理粒子100重量部に対して1〜10重量部とすることが好ましく、2〜7重量部とすることがより好ましく、3〜5重量部とすることがさらに好ましい。
【0037】
工程(1−2)で添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。ただし、揮発性のある酸を用いる場合は、良好な作業環境を確保するために捕集装置等が必要になることから、不揮発性の酸を用いることが好ましく、硫酸を用いることがより好ましい。
【0038】
工程(1−2)を行う際に、スラリーの温度を60℃以上に保つことが好ましい。スラリーの温度を高く保つことで、アモルファスシリカの形成が速くなる。スラリーの温度は、80℃以上に保たれることが好ましく、85℃以上に保たれることがより好ましく、90℃以上に保たれることがさらに好ましく、95℃以上に保たれることが特に好ましい。工程(1−2)を行う際のスラリーの温度は、通常は100℃以下となるが、100℃未満でもよい。
【0039】
工程(1−2)を行う際に、スラリーのpHを6以上に保つことが好ましい。スラリーのpHを高く保つことで、多孔質ゲル状のシリカが析出しにくくなる。スラリーのpHは、8以上に保たれることが好ましく、9.0以上に保たれることがより好ましく、9.5以上に保たれることがさらに好ましく、10以上に保たれることが特に好ましい。工程(1−2)を行う際のスラリーのpHは、通常は11以下となる。
【0040】
工程(1−2)を行う際に、アルカリ金属イオン濃度を1.0N(規定)以下とすることが好ましい。こうすることで、凝集塊が生じることを抑えることができる。アルカリ金属イオン濃度は、0.1N(規定)以下とすることがより好ましく、0.03N(規定)以下とすることがさらに好ましく、0.02N(規定)以下とすることが特に好ましい。工程(1−2)を行う際のアルカリ金属イオン濃度は、低い方が好ましいが、例えば0.001N(規定)以上でもよい。
【0041】
(2)の方法に関し、より具体的には、縮合珪酸エチル処理粒子と正珪酸エチルを混合した状態で、正珪酸エチルの加水分解反応を起こさせることで、縮合珪酸エチル処理粒子の表面にアモルファスシリカが沈積されたアモルファスシリカ沈積粒子が得られる。縮合珪酸エチル処理粒子と正珪酸エチルの混合は、湿式でも乾式でもよいが、一般に蓄光顔料粒子及び蛍光粒子は水に弱いことから乾式で行うことが好ましい。なお、ここでいう「乾式」とは、液体を一切用いないで混合する場合のみならず、少量の液体を用いつつも溶液又は懸濁液ではない状態で混合する場合を含む。
【0042】
正珪酸エチルの使用量に関しては、前述のとおり、縮合珪酸エチル処理粒子を被覆するアモルファスシリカの含有量が、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して0.5〜10.0重量%となる量が好ましく、1.0〜9.0重量%となる量がより好ましく、2.0〜7.0重量%となる量がさらに好ましい。
【0043】
正珪酸エチルの加水分解は、中性条件でも徐々に進行するが、正珪酸エチルが水に不要であるため局所的に加水分解してゲル化することがある。そこで、ゲル化を防ぐために、酸性条件にして正珪酸エチルの加水分解を速やかに進行させることが好ましい。そのための加水分解助剤は、硫酸、塩酸、硝酸、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。ただし、不揮発性の酸を用いると、加水分解後に未反応の酸を除去することが難しいことから、揮発性の酸を用いることが好ましく、塩酸(塩化水素水)を用いることがより好ましい。塩酸の使用量に関しては、例えば、正珪酸エチル100重量部に対して20〜60重量部の0.1M塩酸を用いることができる。
【0044】
その他、正珪酸エチルの加水分解の際には、エタノール及び/又は水を添加することもできる。エタノールの使用量は、例えば、正珪酸エチル100重量部に対して100〜200重量部とすることができる。水の使用量は、例えば、正珪酸エチル100重量部に対して150〜250重量部とすることができる。
【0045】
その後、得られたアモルファスシリカ沈積粒子を乾燥することが好ましい。この乾燥により水やエタノールが除去され、加水分解助剤としては塩酸を用いた場合には揮発性のある塩化水素も除去される。最終的な乾燥温度は、水を除去する観点から、100〜140℃とすることが好ましく、110〜130℃とすることがより好ましい。特に、縮合珪酸エチル処理粒子を被覆するアモルファスシリカの含有量が多い場合(例えば、蓄光顔料粒子又は蛍光粒子に対して5.0重量%以上の場合)には、正珪酸エチルの加水分解工程と乾燥工程を複数回繰り返すことが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。なお、以下の説明において、「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
【0047】
<製造例1:蓄光顔料イエローグリーンの製造>
炭酸ストロンチウム(SrCO)62.5部と、炭酸ユーロピウム(Eu(CO・HO)5.9部と、炭酸ジスプロシウム(Dy(CO・2HO)6.4部と、酸化アルミニウム(Al)48.0部とを少量の水を加えて混錬した。得られた混練物を120℃で2時間乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、以下の条件で焙焼した。
・昇温速度:240℃/1時間
・焼成温度:1400℃
・焼成時間:6時間
・焼成雰囲気:混合ガス(窒素ガス:水素ガス=9.5:0.5)
・その他:坩堝の蓋は一部開放。放冷中は炉内に窒素ガスのみ流入。
なお、得られた蓄光顔料の組成はSrAl:Eu,Dyである(以下、「蓄光顔料イエローグリーン」と称する。)。
【0048】
<製造例2:蓄光顔料ブルーグリーンの製造>
炭酸ストロンチウム(SrCO)46.0部と、炭酸ユーロピウム(Eu(CO・HO)4.3部と、炭酸ジスプロシウム(Dy(CO・2HO)4.7部と、酸化アルミニウム(Al)62.8部とを少量の水を加えて混錬した。得られた混練物を120℃で2時間乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、以下の条件で焙焼した。
・昇温速度:240℃/1時間
・焼成温度:1450℃
・焼成時間:6時間
・焼成雰囲気:混合ガス(窒素ガス:水素ガス=9.5:0.5)
・その他:坩堝の蓋は一部開放。放冷中は炉内に窒素ガスのみ流入。
なお、得られた蓄光顔料(「蓄光顔料ブルーグリーン」と称する。)の組成はSrAl1425:Eu,Dyである(以下、「蓄光顔料ブルーグリーン」と称する。)。
【0049】
<実施例1>
成分(a1)として製造例1で得られた蓄光顔料イエローグリーン5部と、成分(a2)として製造例2で得られた蓄光顔料ブルーグリーン94.998部と、成分(b)としてローダミン6G(和光純薬製)0.002部とを準備した。なお、成分(b)は、あらかじめ調製しておいた成分(a2)と成分(b)の混合物(成分(a2):成分(b)=99:1(重量比))の状態で準備し、成分(a2)は最終的な総量が上記の量になるように準備した。そして、これら粉体を混合し、その総重量に対して99.5%エタノールを1%添加して混和させた後、室温で放置してエタノールを揮発させることで、蓄光顔料組成物1を得た。
【0050】
得られた蓄光顔料組成物1を100部と、縮合珪酸エチル(多摩化学工業製、商品名:シリケート45、Sin−1(OC2(n+1)、n=8〜10)を12.5部と、溶媒としてエタノールを5.5部と、加水分解助剤として0.1M塩酸を2.5部と、水を12.5部とを秤量し、これらを乳鉢で混練した。その後、得られた粉体を80℃で30分間乾燥させ、さらに120℃で1時間乾燥させることで、縮合珪酸エチル処理粒子1(縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量:5.0%)を得た。
【0051】
<実施例2〜8>
成分(a1)、成分(a2)、及び成分(b)の混合比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、蓄光顔料組成物2〜8を得た。そして、得られた蓄光顔料組成物2〜8に対して、実施例1と同様に縮合珪酸エチル処理をすることで、縮合珪酸エチル処理粒子2〜8を得た。
【0052】
<比較例1>
製造例1で得られた蓄光顔料イエローグリーンに対して、実施例1と同様に縮合珪酸エチル処理をすることで、縮合珪酸エチル処理粒子C1を得た。
【0053】
<比較例2>
製造例2で得られた製造例2で得られた蓄光顔料ブルーグリーンに対して、実施例1と同様に縮合珪酸エチル処理をすることで、縮合珪酸エチル処理粒子C2を得た。
【0054】
<評価1:発光色>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた縮合珪酸エチル処理粒子に、D65標準光源を用いて1000LUXの光を20分間照射したときの発光色を目視にて観察した。結果を表1に示す。
【0055】
<評価2:初期輝度>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた縮合珪酸エチル処理粒子に、D65標準光源を用いて1000LUXの光を20分間照射した後、JIS−C7614に準拠して、初期の輝度(単位:mcd/m)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
高:4000mcd/m以上
中:1000mcd/m以上4000mcd/m未満
低:1000mcd/m未満
【0056】
<実施例9〜13>
実施例2で得られた蓄光顔料組成物2に対して、縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量が表3に記載された量になるように条件を変更して、縮合珪酸エチル処理粒子9〜13を得た。
【0057】
<実施例14〜18>
実施例5で得られた蓄光顔料組成物5に対して、縮合珪酸エチルの部分加水分解物のSiO換算含有量が表4に記載された量になるように条件を変更して、縮合珪酸エチル処理粒子14〜18を得た。
【0058】
<評価3:輝度変化>
実施例2及び5、実施例9〜18、並びに比較例1〜2で得られた縮合珪酸エチル処理粒子に、D65標準光源を用いて1000LUXの光を20分間照射した後、JIS−C7614に準拠して、輝度(単位:mcd/m)の変化を測定した。結果を表2〜4に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
以上のように、本発明によれば、輝度が高く、従来の蓄光顔料とは異なる色を発する蓄光顔料組成物が得られることが分かった。