(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671777
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】除草剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20200316BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20200316BHJP
A01N 59/08 20060101ALI20200316BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20200316BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20200316BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01P13/00
A01N59/08 A
A01N59/00 C
A01N25/08
A01N25/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-26565(P2016-26565)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145203(P2017-145203A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河合 守雄
【審査官】
薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−166337(JP,A)
【文献】
特開昭49−133296(JP,A)
【文献】
特公昭42−006995(JP,B1)
【文献】
特公昭44−008568(JP,B1)
【文献】
特公昭45−011715(JP,B1)
【文献】
特公昭46−028098(JP,B1)
【文献】
特公昭30−003000(JP,B1)
【文献】
井手幸樹,造林地へ侵入する竹類の薬剤による枯殺効果について (I) 薬剤の種類と注入時期,九州森林研究,2002年,No.55,pp.235-236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び粘土鉱物が少なくとも含まれる除草剤組成物において、
水酸化アルミニウムが5〜20重量%含まれてなることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項2】
塩素酸ナトリウムが25〜60重量%、炭酸水素ナトリウムが10〜40重量%、粘土鉱物が5〜40重量%含まれてなることを特徴とする請求項1に記載の除草剤組成物。
【請求項3】
水酸化アルミニウムの平均粒径が、0.01〜70μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の除草剤組成物。
【請求項4】
粒径が2mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の除草剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草活性成分として塩素酸ナトリウムを含有する除草剤組成物に関し、より詳しくは、従来の塩素酸ナトリウム系除草剤に比べ、安全性が向上された除草剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水田、畑等に生える雑草を除草するための除草剤として、従来から塩素酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムを含有する除草剤が使用されている。
これらの除草剤は、液状あるいは固体状のものがあるが、より長時間の持続性を得るために固体状の除草剤が好ましい。
【0003】
塩素酸ナトリウムを含有する除草剤組成物は燃焼性が高く、また衝撃により爆発するなどのリスクが生じやすくなり、取り扱いに注意が必要であるという問題がある。また、消防法の危険物と判定された場合には、輸送・保管・製造などあらゆる工程において特殊な設備の設置や取り扱い方法が義務付けられており、生産コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0004】
特許文献1には、塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、結着材とを含み、その80質量%以上の形状が、最長径/最短径=1.0〜1.5を満たし、粒径が2mm以上である除草剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−166337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩素酸ナトリウムを含有する除草剤組成物は、運搬あるいは保管時に不慮の事故によって火災等が起きた際には激しく燃焼してしまう危険性があるため、その取り扱いには充分な配慮が必要である。従って、燃焼時間が長時間になるよう燃焼制御された除草剤組成物の要望がある。
特許文献1に記載された、塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、ベントナイトを含む従来の配合における除草剤組成物の消防法確認試験においては、大量燃焼試験の燃焼時間が標準物質よりも短く、危険物に該当するとの判定となっていた。
従って、本発明の目的は、長期間除草性能を持続できる除草剤組成物であって、大量燃焼させた場合の燃焼時間が長時間となり、安全性、取り扱い性に優れた除草剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、除草活性成分として塩素酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、無機化合物として粘土鉱物、燃焼制御剤として水酸化アルミニウムを含有してなる除草剤組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)に示すものである。
【0009】
(1)塩素酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び粘土鉱物が少なくとも含まれる除草剤組成物において、水酸化アルミニウムが5〜20重量%含まれることを特徴とする除草剤組成物。
【0010】
(2)塩素酸ナトリウムが25〜60重量%、炭酸水素ナトリウムが10〜40重量%、粘土鉱物が5〜40重量%含まれてなることを特徴とする前記(1)に記載の除草剤組成物。
【0011】
(3)前記水酸化アルミニウムの平均粒径が、0.01〜70μmであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の除草剤組成物。
【0012】
(4)粒径が2mm以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の除草剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の除草剤組成物によれば、除草剤としての有効性や人畜に対する毒性、水産動植物等への環境影響について問題のない除草剤組成物を提供でき、大量燃焼試験における燃焼時間が従来の除草剤組成物より長いため、保管や物流上の取り扱いが容易で安全性の高い除草剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】危険物第一類確認試験のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の除草剤組成物について詳細に説明する。
(構成成分について)
本発明の除草剤組成物は、塩素酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び粘土鉱物を含む。塩素酸ナトリウムは、化学式NaClO
3で表される。炭酸水素ナトリウムは、化学式NaHCO
3で表される。
ここで、塩素酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムは、除草活性成分として機能するものである。
【0016】
前記粘土鉱物は、前記除草活性成分を繋ぎ合わせ、粒状に成型するための役割を果たす。粘土鉱物としては、具体的に、粘土類、タルク類、シリカ類、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクライト、合成含水ケイ酸等を挙げることができ、これらの中でも、粒状成型性、安全性の面から、ベントナイトを用いることが好ましい。
【0017】
本発明の除草剤組成物は、前記構成成分中に水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする。この水酸化アルミニウムは除草剤組成物中で燃焼制御剤、難燃剤として機能する。
難燃剤としては機能する水酸化アルミニウム以外の無機含水化合物として、水和石こう、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリン・クレー、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等が知られているが、これらの無機含水化合物と比較して、本発明で使用される水酸化アルミニウムは、分解温度が比較的低く、総吸収熱量が大きいため、除草剤組成物の大量燃焼試験において燃焼時間を大きく延長させる効果を奏する。
【0018】
(構成成分の好適組成)
本発明の除草剤組成物の好適な組成としては、
塩素酸ナトリウムが25〜60重量%、炭酸水素ナトリウムが10〜40重量%、水酸化アルミニウムが5〜20重量%、粘土鉱物が5〜40重量%含まれてなることが好ましい。
【0019】
塩素酸ナトリウムが25重量%未満の場合、除草効果が損なわれるおそれがあり、60重量%を超える場合、安全性が担保できない恐れがある。
また、炭酸水素ナトリウムが10重量%未満の場合、安全性が担保できない可能性があり、40重量%を超える場合、除草効果が損なわれるおそれがある。
水酸化アルミニウムが5重量%未満の場合、大量燃焼試験における燃焼時間の延長効果が発揮されない場合があり、20重量%を超える場合、除草効果が損なわれる可能性がある。
粘土鉱物が5重量%未満の場合、除草剤の粒状成型性が損なわれる場合があり、40重量%を超える場合、除草効果が損なわれる可能性がある。
【0020】
(水酸化アルミ粒径)
本発明の除草剤組成物に配合させる水酸化アルミニウムの粒径について特に制限は無いが、平均粒径0.01〜70μmのもの、より好ましくは0.1〜50μmのもの、さらに好ましくは1〜35μmのものを使用することが好ましい。平均粒径が0.01μm未満であると、製造時の取り扱い及び除草剤組成物の成型性が困難になる場合があり、70μmを超える場合、大量燃焼試験における燃焼時間の延長効果が得られ難い場合がある。
【0021】
(除草剤組成物の平均粒径)
本発明の除草剤組成物の粒径としては、2mm以上であることが好ましい。なお、本発明の除草剤組成物の粒径が2mm以上とは、目開き2mmの網ふるい(日本工業規格Z8801の「標準ふるい」に規定する網ふるいで、目開き2mmのものをいう)に除草剤組成物の集合を入れ、回転させながら毎分160回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを30分間で通過するものが10重量%以下であることを意味する。この試験方法は、消防法:危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年2月17日自治省令第一号)最終:平成13年10月11日総務省令第136号に準ずる、粉粒に該当するか否かの試験方法である。すなわち、粒径が2mm以上の本発明の除草剤組成物は、該試験方法の粉粒状確認試験における粉粒状以外のものとなる。
【0022】
(除草剤組成物の製法)
本発明の除草剤組成物の製造方法は、塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、水酸化アルミニウムと、粘土鉱物を含む混合物に、水を加えて混練する。
混練された混合物を押し出し造粒機により、2.2mmのスクリーンを使用し、その後整粒機にて造粒する。
その後、室温〜70℃の温度にて、好ましくは4〜12時間乾燥する。その後、2mmのふるいで篩うことによって本発明の除草剤組成物を得ることができる。
【0023】
(除草剤組成物の評価方法:危険性の判断基準)
前述の危険物の試験及び性状に関する省令の記載に基いた各試験によって本発明の除草剤組成物の評価を行う。危険物の判定フローチャートについては、
図1に記載する。
図1に記載された各試験を行い、結果を考慮して危険性を判断する。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
以下比較例及び実施例の各組成物は、全て下表中に示した各配合割合で均一に混合した後、適量の水を加えて混練し、押し出し造粒機を用いて2.2ミリメートルのスクリーンにて造粒した後、整粒機(ダルトン社製、マルメライザー)で整粒し、温度50℃で4時間以上乾燥した後、2ミリメートルのふるいで篩うことによって得た。
【0026】
塩素酸ナトリウム50部、炭酸水素ナトリウム30部及びベントナイト20部の従来の配合における消防法確認試験結果を表1に示す。
なお、鉄管試験とは、試験物品とセルロース粉が重量比3:1の混合物を鉄管に詰めて砂中で起爆し、鉄管の破裂の程度を観察する試験を3回実施し、いずれも鉄管が完全に破裂しなかった場合、危険性なしと判定される。
また、大量燃焼試験とは、試験物品と木粉とが体積比1:1の混合物500gの燃焼試験と標準物質である過塩素酸カリウムと木粉との重量比2:3の混合物500gの燃焼試験をそれぞれ5回実施し、その平均燃焼時間を求め、試験物品の平均燃焼時間が標準物質より長い場合、危険性なしと判定される。
これらの確認試験により、総合的に危険性を評価するもので、全ての試験で危険性なしの結果であった場合、消防法において危険物非該当品と判定される。
【0027】
【表1】
【0028】
比較例1に示したように鉄管試験については、従来組成の除草剤組成物では不爆の結果となった。しかし、大量燃焼試験の平均燃焼時間が標準物質より短く、危険性ありの判定となった。
【0029】
従って、以下表2〜6に示した各組成の除草剤組成物について大量燃焼試験を行い、危険性を評価した。なお、比較例及び実施例中の「部」は重量部を示す。大量燃焼試験において、標準物質の平均燃焼時間は判定基準として試験毎に求めている。
【0030】
炭酸水素ナトリウムと水酸化アルミニウムとの配合量を変更し、大量燃焼試験における平均燃焼時間を求めた。配合組成と試験結果を下表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、炭酸水素ナトリウムについては、30部以上配合しても大きく燃焼時間が延びることはなく、標準物質よりも平均燃焼時間は長くはならなかった。水酸化アルミニウムについても、30部配合しても標準物質よりも平均燃焼時間が長くなることはなかった。なお、水酸化アルミニウムを多量に配合することに関しては、コスト面での問題が生じる。
【0033】
除草剤としての効能を損なわず、燃焼抑制効果が想定される難燃剤としての効果が期待される無機化合物を選定し、従来組成にそれぞれ10部を配合し、大量燃焼試験を行った。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示すように、水酸化アルミニウム以外の無機化合物はいずれも標準物質よりも平均燃焼時間が短く、危険性ありの判定であった。
【0036】
塩素酸ナトリウム50部、炭酸水素ナトリウム30部の配合に対して水酸化アルミニウムの有効な配合量についての検討を大量燃焼試験により行った。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示すように、塩素酸ナトリウム50部、炭酸水素ナトリウム30部の配合に対して水酸化アルミニウムを5部以上配合することで、平均燃焼時間は標準物質より長くなり、危険性なしの判定となった。炭酸水素ナトリウムと水酸化アルミニウムとの併用で相乗的な燃焼抑制効果を示すことが確認された。
【0039】
水酸化アルミニウムの粒度の影響について調査するため、大量燃焼試験により検討を行った。結果を表5に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
表5に示すように、塩素酸ナトリウム50部、炭酸水素ナトリウム30部の配合に対して水酸化アルミニウム10部を配合した場合、粒度が35μm以下の水酸化アルミニウムを配合した場合に平均燃焼時間が特に長くなる傾向が見られた。
【0042】
表6に示すような各除草剤組成物を作製し、危険物の規制に関する政令で規定された危険物第1類の確認試験に基づき総合的に危険物の評価を行った。
【0043】
【表6】
【0044】
表6に示すように、いずれの実施例についても総合的に危険物第1類非該当と判定される結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の除草剤組成物は消防法危険物第一類の非該当品となるため、安全性が向上し、物流コスト及び安全面において非常に優位な除草剤組成物となる。