(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の高圧洗浄車では、洗浄水の一部をタンクへ戻す際、タンクへ戻される洗浄水を導くために圧力制御弁に接続された配管(以下、「洗浄水戻し配管」ともいう)内において、高圧の洗浄水が通過する。この際、洗浄水戻し配管内において高速水流によりキャビテーションが発生する場合がある。キャビテーションは、高速水流中の局所的な圧力低下により発生する現象であり、キャビテーション気泡が消滅する際に衝撃圧を発生するため、洗浄水戻し配管内でキャビテーション気泡の発生と消滅が繰り返されると、洗浄水戻し配管の内壁に壊食が発生し、洗浄水戻し配管の耐久性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、キャビテーションに起因する洗浄水戻し配管の壊食を抑制できる高圧洗浄車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の高圧洗浄車は、洗浄水を貯留する
と共に所定圧以上になった場合に内部の空気を抜くためのエアブリーザが設けられたタンクと、前記タンク内の洗浄水を噴射する噴射具と、前記タンクから前記噴射具まで洗浄水を圧送するポンプと、前記ポンプと前記噴射具とを接続する洗浄水供給路と、前記洗浄水供給路に設けられ、前記噴射具に対する洗浄水の供給の有無を切り換える開閉弁と、前記洗浄水供給路において前記ポンプと前記開閉弁との間に設けられ
る圧力制御弁と、を備える高圧洗浄車であって、
前記圧力制御弁と前記タンクとの間には、前記洗浄水供給路とは別に、前記圧力制御弁に流入した洗浄水の圧力が所定値よりも高い場合に前記洗浄水供給路内の前記洗浄水の一部を前記タンクへ戻すための洗浄水戻し配管及び流路が設けられ、前記洗浄水戻し配管は前記圧力制御弁に接続されると共に、前記流路は前記洗浄水戻し配管及び前記タンクに接続され、さらに、前記洗浄水戻し配管の前記圧力制御弁側近傍の管壁に
は、空気導入孔が設けられ
、前記空気導入孔は、前記水戻し配管及び前記流路とは別の漏水流路を介して前記タンクと接続され、前記漏水流路の前記タンク側の開口部は、前記タンク内の洗浄水の水面よりも高い位置に設けられており、前記タンクへ戻される洗浄水が前記洗浄水戻し配管を通過する際、
前記タンク内の空気が前記漏水流路を介して前記空気導入孔から前記洗浄水戻し配管内へ導入され
、前記通過する際よりも低速で洗浄水が前記洗浄水戻し配管を通過する際、前記空気導入孔から漏れた洗浄水が前記漏水流路を介して前記タンクへ戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
上記(1)の構成によれば、タンクへ戻される洗浄水が洗浄水戻し配管内を通過する際、空気導入孔から洗浄水戻し配管内へ空気が導入されるため、洗浄水戻し配管内の圧力低下を抑制できる。これにより、洗浄水戻し配管内においてキャビテーションの発生を抑制できるため、キャビテーションに起因する洗浄水戻し配管の壊食を抑制できる。
【0009】
また、洗浄水戻し配管を通過する洗浄水の流速が遅い時に空気導入孔から洗浄水が漏れても、漏水流路により漏れた洗浄水をタンクに戻しつつ、漏水流路のタンク側の開口部から取り込まれたタンク内の空気を洗浄水戻し配管へ導入できる。よって、水漏れによる作業性の低下を防止しつつ、洗浄水戻し配管内へ空気を導入することができる。また、空気導入孔から漏れた洗浄水をタンクに戻すため、洗浄水が無駄にならず、作業コストの低減も図れる。
【0010】
(
2)上記(
1)の高圧洗浄車において、前記洗浄水戻し配管は、内管及び外管を有する二重配管であり、前記空気導入孔は、前記内管の管壁に設けられており、前記漏水流路の前記洗浄水戻し配管側の開口部は、前記外管の管壁に設けられていることが好ましい。この構成によれば、空気導入孔に直接漏水流路を接続する場合と比較して、空気導入孔の数だけ漏水流路を設けることがない分、空気導入孔の個数や位置の調整を容易に行うことができる。また、状況により空気導入孔を設けた内管の交換も容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高圧洗浄車によれば、キャビテーションに起因する洗浄水戻し配管の壊食を抑制できるため、洗浄水戻し配管の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の高圧洗浄車の好適な実施形態の構成について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における高圧洗浄車の側面図である。
図2は、
図1の高圧洗浄車の背面図である。
図3は、
図1の高圧洗浄車の水回路を示す図である。なお、以下の説明において、前後方向は車両の進行方向と同じ方向を指すものとする。
【0014】
図1に示すように、高圧洗浄車1は、運転室2、車台3、車輪4等を備えている。車台3上には、洗浄水100(
図3参照)を貯留するタンク11、洗浄水100を被洗浄物まで導くホース12及びサブホース13(
図2参照)、ホース12を巻きつけるホースリール14、サブホース13を巻きつけるサブホースリール15(
図2参照)等が設けられている。
【0015】
また、タンク11の後方側の車台3上には、ターンテーブル5が鉛直軸周りに旋回自在に設置されている。ホースリール14は、ターンテーブル5上に設けられたフレーム31に支持されており、水平軸X1回りに正逆回転自在に取り付けられている。
【0016】
後述するように、ホースリール14は、油圧ポンプ41(
図3参照)により回転駆動される。ホースリール14が正方向に回転すると、ホース12はホースリール14から繰り出される。一方、ホースリール14が逆方向に回転すると、ホース12はホースリール14に巻き取られる。
図3に示すように、ホース12の先端には、洗浄水100を噴射する噴射具としての洗浄ノズル33が着脱自在に取り付けられている。
【0017】
図1に示すように、フレーム31の前面には、操作盤51が固定されている。操作盤51の各種スイッチ(図示せず)を操作することにより、ホースリール14の回転駆動や、後述するポンプ16(
図3参照)の操作等が行われる。
【0018】
タンク11の後方側の車台3上には、
図2に示すようにサブターンテーブル6が鉛直軸回りに旋回自在に設置されている。サブホースリール15は、サブターンテーブル6上に設けられたフレーム32に支持されており、水平軸X2回りに正逆回転自在に取り付けられている。
【0019】
サブホースリール15は手動により操作される。すなわち、サブホースリール15に取り付けられたハンドル34を回転させると、サブホースリール15も回転し、サブホース13が繰り出されたり、巻き取られたりする。本実施形態では、サブホース13はホース12よりも小径口のものであり、
図3に示すように、サブホース13の先端には、洗浄水100を噴射する噴射具としての洗浄ガン35が着脱自在に取り付けられている。
【0020】
図1に示すように、タンク11の前方側には、ポンプ収容室21が設置されている。ポンプ収容室21内には、タンク11から洗浄ノズル33及び洗浄ガン35まで洗浄水100を圧送するポンプ16(
図3参照)が収容されている。
【0021】
なお、ホース12は、ポンプ16と洗浄ノズル33とを接続する洗浄水供給路の一部である。また、サブホース13は、ポンプ16と洗浄ガン35とを接続する洗浄水供給路の一部である。
【0022】
次に、本実施形態に係る高圧洗浄車1の水回路について、主に
図3を参照しながら説明する。
【0023】
図3に示すように、タンク11の底部には流路61の一端が接続されている。流路61の他端は、ポンプ16に接続されている。また、流路61には、上流側から下流側に向かって順に、開閉弁80とストレーナ62とが設けられている。開閉弁80を開くことにより、ポンプ16がタンク11内の洗浄水100を吸入できるようになる。
【0024】
流路61の開閉弁80よりも下流側かつストレーナ62よりも上流側の中途部には、流路74が接続されている。流路74の下流側端部には、開閉弁79が設けられている。流路74は、洗浄終了後に、タンク11に残った洗浄水100を開閉弁79により外部に放流するためのものである。
【0025】
ポンプ16の吐出側には、洗浄水供給路の一部である流路63の一端が接続されている。ポンプ16は、流路61を介してタンク11内に貯留された洗浄水100を吸入し、高圧の洗浄水100として流路63に吐出する。
【0026】
なお、ポンプ16は、プーリ42、Vベルト43、ドライブシャフト44、およびPTO(動力取出装置)45を介して走行用エンジン46に連結されている。これにより、ポンプ16は走行用エンジン46によって駆動される。また、ドライブシャフト44は、動力伝達機構47を介して、油圧ポンプ41に連結されている。油圧ポンプ41は、ホースリール14を回転駆動する油圧回路(図示せず)に設けられている。
【0027】
ホースリール14に巻き付けられたホース12には、洗浄水供給路の一部である流路64が接続されている。上述したように、ホース12の先端部には、洗浄ノズル33が取り付けられている。また、流路64には、洗浄ノズル33に対する洗浄水100の供給の有無を切り換える開閉弁73が設けられている。流路64の上流側端部はマニホールド70に接続されており、マニホールド70には圧力計77が設けられている。このような構成により、マニホールド70に流入した洗浄水100は、流路64に導かれる。そして、開閉弁73を開くことにより、洗浄水100は、ホースリール14及びホース12を介して洗浄ノズル33から噴射されることとなる。
【0028】
また、サブホースリール15に巻き付けられたサブホース13には、洗浄水供給路の一部である流路65が接続されている。上述したように、サブホース13の先端部には、洗浄ガン35が取り付けられている。また、流路65には、洗浄ガン35に対する洗浄水100の供給の有無を切り換える開閉弁76が設けられている。流路65の上流側端部はマニホールド70に接続されている。このような構成により、マニホールド70に流入した洗浄水100は、流路65に導かれる。そして、開閉弁76を開くことにより、洗浄水100は、サブホースリール15及びサブホース13を介して洗浄ガン35から噴射されることとなる。
【0029】
マニホールド70の上流側端部に接続された洗浄水供給路の一部である流路66には、流路67の一端が接続されている。流路67の他端には、開閉弁68が設けられている。流路67は、洗浄終了後に、流路66に残った洗浄水100を凍結防止のために開閉弁68により外部に放流するためのものである。
【0030】
ポンプ16とマニホールド70との間の洗浄水供給路には、圧力制御弁91が設けられている。つまり、圧力制御弁91は、流路63を介してポンプ16と接続されており、流路66を介してマニホールド70と接続されている。
【0031】
圧力制御弁91は、主として流路63内の洗浄水100を、流路66へ導くが、流路63から流入した洗浄水100の圧力が所定値(目標圧力)よりも高い場合、洗浄水100の一部をタンク11へ戻す。タンク11へ戻される洗浄水100は、圧力制御弁91に接続された洗浄水戻し配管92、及び洗浄水戻し配管92とタンク11とを接続する流路93に導かれる。このようにして、流路66へ導かれる洗浄水100の圧力は、圧力制御弁91により所定の目標圧力以下となるように制御される。なお、タンク11の上部には、所定圧以上になったタンク11内の空気を抜くためのエアブリーザ11bが設けられている。
【0032】
次に、本実施形態で用いられる圧力制御弁91及びその周辺部品について、主に
図4を参照しながら説明する。
【0033】
図4に示すように、圧力制御弁91には、ポンプ16からの洗浄水100が流路63を介して流入する流入口91aと、流入した洗浄水100を流路66へ導くための流出口91bと、タンク11へ戻される洗浄水100を洗浄水戻し配管92へ導くための流出口91cとが設けられている。また、圧力制御弁91の
図4中左端には、洗浄水100の目標圧力を調整するための圧力調整ハンドル91dが設けられており、この圧力調整ハンドル91dを回転させることにより上述した目標圧力を調整できる。
【0034】
洗浄水戻し配管92は、内管94及び外管95を有する二重配管である。内管94の上流側端部は圧力制御弁91の流出口91cに連通しており、内管94の下流側端部は流路93(
図3参照)に連通している。
【0035】
外管95の
図4中下側の管壁には、流路96の一端に連通する開口部95aが設けられている。流路96の他端には、開閉弁97が設けられている。流路96は、洗浄終了後に、洗浄水戻し配管92内に残った洗浄水100を凍結防止のために開閉弁97により外部に放流するためのものである。
【0036】
そして、内管94の
図4中下側の管壁には、空気導入孔94aが等間隔で3つ設けられている。また、内管94の
図4中上側の管壁には、上記3つの空気導入孔94aと対面する位置に空気導入孔94aが等間隔で3つ設けられている。つまり、内管94の管壁には、合計6つの空気導入孔94aが設けられている。
【0037】
上記6つの空気導入孔94aのうち、少なくとも圧力制御弁91の流出口91c側の2つの空気導入孔94aは、流出口91cの近傍に設けられている。ここで、「近傍」とは、従来の洗浄水戻し配管において高速水流によりキャビテーションが発生しやすい領域を指し、例えば、流出口91cと、流出口91cから下流側に30〜50cm離れた箇所との間の領域を指す。
【0038】
空気導入孔94aの孔径については、タンク11へ戻される洗浄水100が内管94内を通過する際の高速水流によって内管94内外で圧力差が生じ、この圧力差により空気導入孔94aから内管94内へ空気を導入できる程度の大きさであればよい。例えば空気導入孔94aの孔径は、洗浄水100の流速、空気導入孔94aを設ける箇所等を考慮して適宜設定することができ、例えば5〜15mm程度とすることが好ましい。この孔径の好ましい大きさは、ポンプ16の能力によって左右される。
【0039】
このように本実施形態では、タンク11へ戻される洗浄水100が洗浄水戻し配管92の内管94内を通過する際、内管94内外の圧力差により空気導入孔94aから内管94内へ空気が導入されるため、内管94内の圧力低下を抑制できる。これにより、内管94内においてキャビテーションの発生を抑制できるため、キャビテーションに起因する内管94(洗浄水戻し配管92)の壊食を抑制できる。
【0040】
また、外管95の
図4中上側の管壁には、空気導入孔94aから漏れた洗浄水100をタンク11へ戻すための開口部95bが設けられている。この開口部95bとタンク11の開口部11a(
図3参照)とは、漏水流路98(
図3参照)で接続されている。つまり、開口部95bは漏水流路98の洗浄水戻し配管92側の開口部となっており、開口部11aは漏水流路98のタンク11側の開口部となっている。また、
図3に示すように、開口部11aは、タンク11内の洗浄水100の水面100aよりも高い位置に設けられている。これにより、漏れた洗浄水100を開口部11aからタンク11内へ戻すことができると共に、開口部11aから取り込まれたタンク11内の空気を内管94へ導入できるようになっている。なお、洗浄水100の水面100aとは、タンク11において規定された最大貯水量の洗浄水100を貯留した場合の洗浄水100の水面を指す。
【0041】
このように本実施形態では、内管94を通過する洗浄水100の流速が遅い時に空気導入孔94aから洗浄水100が漏れても、漏水流路98により漏れた洗浄水100をタンク11に戻しつつ、漏水流路98のタンク11側の開口部11aから取り込まれたタンク11内の空気を内管94へ導入できる。よって、水漏れによる作業性の低下を防止しつつ、内管94内へ空気を導入することができる。また、空気導入孔94aから漏れた洗浄水100をタンク11に戻すため、洗浄水100が無駄にならず、作業コストの低減も図れる。
【0042】
また、上述したように、本実施形態では、洗浄水戻し配管92が内管94及び外管95を有する二重配管であり、空気導入孔94aが内管94の管壁に設けられており、漏水流路98の洗浄水戻し配管92側の開口部95bが外管95の管壁に設けられている。この構成によれば、空気導入孔94aに直接漏水流路98を接続する場合と比較して、空気導入孔94aの数だけ漏水流路98を設けることがない分、空気導入孔94aの個数や位置の調整を容易に行うことができる。また、状況により空気導入孔94aを設けた内管94の交換も容易に行うことができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成等は適宜設計変更可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、洗浄水戻し配管に6つの空気導入孔を設けたが、本発明は、洗浄水戻し配管の圧力制御弁側近傍の管壁に少なくとも1つの空気導入孔が設けられていればよく、空気導入孔の数は特に限定されない。
【0045】
また、上記実施形態では、洗浄水戻し配管として二重配管を用いたが、本発明はこれに限定されず、単管の洗浄水戻し配管を用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、洗浄水を噴射する噴射具として洗浄ノズル及び洗浄ガンを用いたが、本発明において噴射具の種類や個数は限定されない。