(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1〜
図4に示す沿線W
1,W
2は、軌道2に沿って存在する土地(領域)である。沿線W
1,W
2は、軌道2を挟み二つに分かれて存在する。沿線W
1は、上り線2Aに近い側(下り線2Bから遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には上り線2Aを走行する車両5の進行方向D
1の左側(海側)の土地である。沿線W
2は、下り線2Bに近い側(上り線2Aから遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には下り線2Bを走行する車両5の進行方向D
2の左側(山側)の土地である。沿線W
1は、
図1及び
図3に示すように、上り線2Aを車両5が走行するときには騒音源から近い側になるため騒音対策の重要度が高くなるが、
図2及び
図4に示すように下り線2Bを車両5が走行するときには騒音源から遠い側になるため騒音対策の重要度が低くなる。一方、沿線W
2は、
図1及び
図3に示すように、上り線2Aを車両5が走行するときには騒音源から遠い側になるため騒音対策の重要度が低くなるが、
図2及び
図4に示すように下り線2Bを車両5が走行するときには騒音源から近い側になるため騒音対策の重要度が高くなる。
【0023】
図1〜
図4に示す路盤1は、軌道2を支持する基盤である。路盤1は、車両5が通過するときに荷重を支持する構造物である。路盤1は、例えば、スラブ軌道区間に設置される路盤コンクリート、又は良質な自然土などを用いて締め固められた土路盤などである。
【0024】
軌道2は、車両5が走行する通路(線路)である。軌道2は、
図3及び
図4に示すように、車両5の車輪を案内する一対のレール2aと、一対のレール2aを支持する矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなる軌道スラブ(スラブ版)2bなどから構成されている。軌道2は、
図1〜
図4に示すように、二本の本線で構成された複線であり、上り線2Aと下り線2Bとから構成されている。上り線2Aは、複線以上の軌道2を有数する線路において主として終点から起点方向(
図1及び
図3に示す進行方向D
1)に列車が走行する軌道2である。下り線2Bは、複線以上の軌道2を有数する線路において主として起点から終点方向(
図2及び
図4に示す進行方向D
2)に列車が走行する軌道2である。例えば、上り線2Aは、東北新幹線の場合には仙台方面から東京方面に向かう車両5が走行する線路であり、下り線2Bは東北新幹線の場合には東京方面から仙台方面に向かう車両5が走行する線路である。
【0025】
図1〜
図4に示す防音壁3は、音源から伝搬する騒音を減衰させる固定構造物である。防音壁3は、軌道2に沿って構築されている。防音壁3は、音源(軌道2側)と受音点(沿線W
1,W
2側)との間に設置されており、音源側の表面を吸音処理することより、この音源から伝搬する騒音の減衰効果を向上させている。
【0026】
図5(A)及び
図6〜
図8に示す架線4は、線路上空に架設される架空電車線である。架線4は、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線4aは、集電装置6のすり板7aが摺動する電線である。トロリ線4aは、すり板7aが接触移動することによって車両5に負荷電流を供給する。
【0027】
図1〜
図6に示す車両5は、電車又は電気機関車などの電気車である。車両5は、例えば、高速で走行する新幹線(登録商標)などの鉄道車両である。車両5は、1両又は複数両によって編成されており、軌道2上を運転する目的で組成された列車である。
図3〜
図6に示す車体5aは、乗客又は貨物を積載し輸送するための構造物である。車両5は、
図1及び
図2に示すように、一編成(一列車)当たり一つの集電装置6を備えており、車両5の進行方向D
1,D
2に応じていずれか一方の枠組8A,8Bを使用する。
【0028】
図1〜
図6に示す集電装置6は、トロリ線4aから電力を車両5に導くための装置である。集電装置6は、関節部8dの向きが異なる複数の枠組8A,8Bを車両5の進行方向D
1,D
2に応じて上昇させることによって、トロリ線4aから電力を車両5に導く。集電装置6は、
図3〜
図6に示すように、集電舟(舟体)7A,7Bと、枠組8A,8Bと、台枠9と、がいし(碍子)10などを備えている。集電装置6は、
図1〜
図6に示すように、枠組8A,8Bが集電舟7A,7Bをそれぞれ支持している。集電装置6は、
図1〜
図4、
図6及び
図7に示すように、車両5の進行方向D
1,D
2に対して非対称であり、一方向に使用可能なシングルアーム式パンタグラフである。集電装置6は、原則として、
図6及び
図7に示すように、空力音が比較的小さくなる車両5の進行方向D
1,D
2の前側に関節部8dが位置するなびき方向で使用されるが、空力音が比較的大きくなる車両5の進行方向D
1,D
2の後側に関節部8dが位置する反なびき方向では使用されない。集電装置6は、
図1〜
図5に示すように、集電舟7A,7Bの中央部を舟支え部8aによって支持しており、二つの枠組8A,8Bを一つの台枠9によって支持している。
【0029】
集電装置6は、
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには枠組8Aを上昇状態に切り替え、
図2及び
図4に示すように車両5が下り線2Bを走行するときには枠組8Bを上昇状態に切り替える。集電装置6は、例えば、
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、進行方向D
1の後側の枠組8Bを使用せず、進行方向D
1の前側の枠組8Aを使用する。一方、集電装置6は、例えば、
図2及び
図4に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、進行方向D
2の後側の枠組8Aを使用せず、進行方向D
2の前側の枠組8Bを使用する。
【0030】
集電装置6は、
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、枠組8Aを上昇状態(展開状態)に切り替えてこの枠組8A側のすり板7aをトロリ線4aに接触させ、枠組8Bを下降状態(折畳状態)に切り替えてこの枠組8B側のすり板7aをトロリ線4aから離間させる。一方、集電装置6は、
図2及び
図4に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、枠組8Aを下降状態(折畳状態)に切り替えてこの枠組8A側のすり板7aからトロリ線4aを離間させ、枠組8Bを上昇状態(展開状態)に切り替えてこの枠組8B側のすり板7aをトロリ線4aに接触させる。
【0031】
図1〜
図7に示す集電舟7A,7Bは、すり板7aを支持する部材である。集電舟7A,7Bは、
図5に示すように、一般にトロリ線4aと直交する方向(まくらぎ方向)に伸びた細長い金属製の柱状部材である。集電舟7A,7Bは、
図6〜
図8に示すすり板7aと、
図5〜
図7に示すホーン7bなどを備えている。
図6〜
図8に示す集電舟7A,7Bは、空力音低減効果及び揚力特性安定化を図るために、CFD解析と最適化手法とを組み合わせた平滑化舟体(平滑形状舟体)である。集電舟7A,7Bは、車両5の進行方向D
1,D
2の前側に向ける前部(前縁部)7cと、車両5の進行方向D
1,D
2の後側に向ける後部(後縁部)7dなどを備えている。集電舟7A,7Bは、
図8に示すように、この集電舟7A,7Bの中心線Oに対して前後非対称に形成されており、前部7cの形状と後部7dの形状とが非対称である。前部7cは、迎角αの変化に対して鈍感になるように、比較的鈍頭な形状に形成されている。ここで、迎角αとは、集電舟7A,7Bの前後方向(幅方向)と気流Fの方向とのなす角である。後部7dは、気流Fのはく離領域を小さくするために、絞り込まれた形状に形成されている。集電舟7A,7Bは、前部7c側を進行方向D
1,D
2側に向けたときに空力音低減効果及び揚力特性安定化を発揮する。
【0032】
図5〜
図8に示すすり板7aは、トロリ線4aと摺動する部材である。すり板7aは、
図5に示すように車両5の進行方向D
1,D
2と直交する方向に伸びた金属製又は炭素製の板状部材であり、集電舟7A,7Bに取り付けられている。すり板7aは、トロリ線4aと接触移動して大電流が流れるため、一定の機械的強度、導電性及び耐摩耗性などが要求される。すり板7aは、
図8に示すように、集電舟7A,7Bと一体となって平滑化舟体を構成している。
【0033】
図5〜
図7に示すホーン7bは、車両5が分岐器を通過するときに、この分岐器の上方で交差する2本のトロリ線4aのうち車両5の進行方向D
1,D
2とは異なる方向のトロリ線4aへの割込みを防止するための部材である。ホーン7bは、
図5に示すように、集電舟7A,7Bの長さ方向の両端部から突出しており、先端部が湾曲して形成された金属製の部材である。
【0034】
図1〜
図7に示す枠組8Aは、集電舟7Aを支持する部材であり、枠組8Bは集電舟7Bを支持する部材である。枠組8Aは、
図1、
図3、及び
図6に示すように、進行方向D
1の前側に関節部8dを向けており、枠組8Bは
図2、
図4及び
図7に示すように進行方向D
1とは逆方向の進行方向D
2の前側に関節部8dを向けている。枠組8Aは、
図1、
図3及び
図6に示すように、進行方向D
1に進行するときには上昇状態に切り替わり、
図2、
図4及び
図7に示すように進行方向D
2に進行するときには下降状態に切り替わる。一方、枠組8Bは、
図1、
図3及び
図6に示すように、進行方向D
1に進行するときには下降状態に切り替わり、
図2、
図4及び
図7に示すように進行方向D
2に進行するときには上昇状態に切り替わる。
【0035】
枠組8A,8Bは、
図6及び
図7に示すように、集電舟7A,7Bの前部7cが進行方向D
1,D
2の前側に向くときに上昇状態に切り替わる。枠組8Aは、
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、
図6に示すように集電舟7Aの前部7cが進行方向D
1に向くように上昇し、
図2及び
図4に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、集電舟7Aの後部7dが進行方向D
2に向かないように下降する。一方、枠組8Bは、
図2及び
図4に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、
図7に示すように集電舟7Bの前部7cが進行方向D
2に向くように上昇し、
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、集電舟7Bの後部7dが進行方向D
1に向かないように下降する。枠組8A,8Bは、
図5に示すように、この枠組8A,8Bの中心線が台枠9の中心線と一致するように配置されており、車両5の長さ方向(進行方向D
1,D
2)に所定の間隔をあけて台枠9に支持されている。枠組8A,8Bは、
図6及び
図7に示すように、関節部8d同士を台枠9に対して外側に向けた状態(関節部8d同士が背を向けた状態)でこの台枠9に支持されている。枠組8Aは、
図3及び
図6に示すように、台枠9の一方の端部側に支持されており、枠組8Bは
図4及び
図7に示すようにこの台枠9の他方の端部側に支持されている。
【0036】
枠組8A,8Bは、集電舟7A,7Bを支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構を備えている。枠組8A,8Bは、台枠9に取り付けられて上昇力を付与する主ばね(押上げ用ばね)によって上方に押上げられている。枠組8A,8Bは、いずれも同一構造であり、
図5〜
図8に示す舟支え部8aと、上枠8bと、
図5(A)、
図6及び
図7に示す下枠8cと、
図5〜
図7に示す関節部(屈曲部)8dなどを備えている。
【0037】
図5〜
図8に示す舟支え部8aは、集電舟7A,7Bを支持する部分である。舟支え部8aは、集電舟7A,7Bを架線4に対して水平に押上げる機構部を備えている。舟支え部8aは、
図3〜
図5に示すように、集電舟7A,7Bの中央部(中間部)を支持する。
図5〜
図8に示す上枠8bは、舟支え部8aに回転自在に連結される部材である。
図5(A)、
図6及び
図7に示す下枠8cは、台枠9に回転自在に連結される部材である。下枠8cは、枠組8A,8Bを昇降動作させる図示しない主軸及び主ばねに連結されている。関節部8dは、上枠8bと下枠8cとが回転自在に連結される中間ヒンジとして機能する部分である。
【0038】
図1〜
図6に示す台枠9は、枠組8A,8Bを支持する部材である。台枠9は、枠組8A,8Bを支持した状態で車体5aの屋根上に設置される。台枠9は、枠組8A,8Bを昇降動作させる主軸及び主ばね、この主軸を駆動させるシリンダ装置などの機構部、及びこのシリンダ装置に作動流体を供給する配管類などが、気流の乱れを防ぐ風防カバーなどの風防部によって覆われている。
【0039】
がいし10は、車体5aと台枠9との間を電気的に絶縁する部材である。
図3、
図4、
図5(A)及び
図6に示すがいし10は、空力音の発生に対して抑制効果のある形状に形成されている低騒音がいしである。がいし10は、このがいし10の後縁部に発生する渦の放出を抑制するために、水平面で切断したときの断面形状が略楕円形に形成されている。がいし10は、台枠9の両縁部寄りの底面をそれぞれ支持する。
【0040】
図1〜
図7に示す遮音板11は、集電装置6から沿線W
1,W
2に放射する騒音Sを遮る部材である。遮音板11は、
図1〜
図5に示すように、集電装置6の両側にこの集電装置6の側面を覆う(騒音源を隠す)ようにそれぞれ対向して配置されている。
図1〜
図7に示す遮音板11は、集電装置6の両側から放射する騒音Sを遮音するパンタグラフ遮音板(二面側壁)である。遮音板11は、
図5(B)、
図6及び
図7に示すように、この遮音板11の長さ方向の中間位置が集電装置6の中心線と略一致するように配置されている。遮音板11は、
図6及び
図7に示すように、集電装置6が上昇状態であるときには、この集電装置6の側面の殆どの部分を覆い、集電装置6が下降状態であるときには、この集電装置6の側面全体を覆う。遮音板11は、
図5に示すように、車体5aの幅方向における車体5aの屋根上の両縁部に取り付けられており、車体5aと一体に固定された状態でこの車体5aに支持されている。
【0041】
次に、この発明の第1実施形態に係る集電装置の動作を説明する。
図1及び
図3に示すように、車両5が上り線2Aを進行方向D
1に走行するときには、
図6に示すように進行方向D
1の前側の枠組8Aを集電装置6が上昇状態に切り替えて、進行方向D
2の後側の枠組8Bを集電装置6が下降状態に切り替える。このため、枠組8A側の関節部8dが進行方向D
1の前側に位置するなびき方向で枠組8Aが上昇状態になり、枠組8Aから発生する騒音が低減する。また、枠組8A側の集電舟7Aの前部7cが進行方向D
1の前側に向けて枠組8Aが上昇状態になるため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が図られる。一方、枠組8B側の関節部8dが進行方向D
1の後側に位置する反なびき方向で枠組8Bが上昇状態にはならないため、枠組8Bから発生する騒音が低減する。また、枠組8B側の集電舟7Bの後部7dが進行方向D
1の前側に向けて枠組8Bが上昇状態にはならないため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が損なわれない。進行方向D
1の前側の枠組8Aが上昇状態に切り替わり、進行方向D
1の後側の枠組8Bが下降状態に切り替わると、上昇状態である上流側の枠組8Aの気流の乱れの影響を受けて、下降状態である下流側の枠組8Bから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合に、下降状態の枠組8Bから発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Bから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0042】
図2及び
図4に示すように、車両5が下り線2Bを進行方向D
2に走行するときには、
図7に示すように進行方向D
2の前側の枠組8Bを集電装置6が上昇状態に切り替えて、進行方向D
2の後側の枠組8Aを集電装置6が下降状態に切り替える。このため、枠組8B側の関節部8dが進行方向D
2の前側に位置するなびき方向で枠組8Bが上昇状態になり、枠組8Bから発生する騒音が低減する。また、枠組8B側の集電舟7Bの前部7cが進行方向D
2の前側に向けて枠組8Bが上昇状態になるため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が図られる。一方、枠組8A側の関節部8dが進行方向D
2の後側に位置する反なびき方向で枠組8Aが上昇状態にはならないため、枠組8Aから発生する騒音が低減する。また、枠組8A側の集電舟7Aの後部7dが進行方向D
2の前側に向けて枠組8Aが上昇状態にはならないため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が損なわれない。進行方向D
2の前側の枠組8Bが上昇状態に切り替わり、進行方向D
2の後側の枠組8Aが下降状態に切り替わると、上昇状態である上流側の枠組8Bの気流の乱れの影響を受けて、下降状態である下流側の枠組8Aから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合に、下降状態の枠組8Aから発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Aから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0043】
この発明の第1実施形態に係る集電装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、進行方向D
1の前側に枠組8Aが関節部8dを向け、この進行方向D
1とは逆方向の進行方向D
2の前側に枠組8Bが関節部8dを向け、これらの枠組8A,8Bを台枠9が支持する。このため、簡単な構造で最小限の集電装置6の設置台数によって沿線W
1,W
2に放射する騒音を抑制することができる。例えば、
図8に示すような平滑化舟体を進行方向D
1,D
2に応じて反転させるような複雑な構造などを伴わずに、沿線W
1,W
2に放射する騒音を低減することができる。また、
図35に示すような集電装置106Bとは異なり集電装置6の設置台数を大幅に削減することができる。さらに、各進行方向D
1,D
2の前側にそれぞれ関節部8dを向けた2台の枠組8A,8Bを設置することによって、空力音が小さくなるいずれか一方の枠組8A,8Bをなびき方向で常に運用することができる。
【0044】
(2) この第1実施形態では、進行方向D
1に進行するときには枠組8Aが上昇状態に切り替わり、進行方向D
2に進行するときにはこの枠組8Aが下降状態に切り替わる。また、この第1実施形態では、進行方向D
1に進行するときには枠組8Bが下降状態に切り替わり、進行方向D
2に進行するときにはこの枠組8Bが上昇状態に切り替わる。このため、関節部8dが進行方向D
1,D
2の前側に位置するなびき方向に枠組8A,8Bを切り替えることができ、車両5の進行方向D
1,D
2に応じて空力音を低減して沿線W
1,W
2に放射する騒音を抑制することができる。
【0045】
(3) この第1実施形態では、トロリ線4aと摺動するすり板7aを支持する集電舟7A,7Bを枠組8A,8Bがそれぞれ支持する。このため、例えば、
図35及び
図36に示すような従来の集電装置106Bの基本構造を大規模に変更する必要がなく、
図1〜
図7に示すような集電装置6を簡単な改造によって製造することができる。
【0046】
(4) この第1実施形態では、集電舟7A,7Bの前部7cの形状と後部7dの形状とが非対称であり、これらの集電舟7A,7Bの前部7cが進行方向D
1,D
2の前側に向くときに枠組8A,8Bが上昇状態に切り替わる。このため、車両5の進行方向D
1,D
2が変化した場合であっても、集電舟7A,7Bの前部7cを進行方向D
1,D
2の前側に常に位置付けることができ、空力音低減効果及び揚力特性安定化を図ることができる。また、例えば、
図8に示す集電舟7A,7Bのような進行方向D
1,D
2が限定される平滑化舟体を集電装置6に適用した場合であっても、集電装置6の最小限の設置台数によって、集電装置6から沿線W
1,W
2に伝搬する騒音Sを抑制することができる。
【0047】
(5) この第1実施形態では、集電舟7Aの中央部を舟支え部8aによって枠組8Aが支持し、集電舟7Bの中央部を舟支え部8aによって枠組8Bが支持する。このため、例えば、
図35及び
図36に示すような従来の集電装置106A,106Bの基本構造を大規模に変更する必要がなく、
図1〜
図7に示すような集電装置6を簡単に製造することができる。
【0048】
(6) この第1実施形態では、車両5の長さ方向に所定の間隔をあけて枠組8A,8Bが台枠9に支持されている。このため、例えば、
図35及び
図36に示すような従来の集電装置106A,106Bの基本構造を大規模に変更する必要がなく、台枠9の幅方向(まくらぎ方向)の中心部付近に枠組8A,8Bを配置することによって、
図1〜
図7に示すような集電装置6を簡単に製造することができる。
【0049】
(7) この第1実施形態では、枠組8A,8Bの関節部8d同士を台枠9に対して外側に向けた状態でこれらの枠組8A,8Bがこの台枠9に支持されている。このため、車両5が進行方向D
1,D
2に進行して枠組8A,8Bのいずれか一方が上流側に位置し他方が下流側に位置するときに、上流側の枠組8A,8Bの関節部8dを進行方向D
1,D
2の前側に必ず位置づけることができる。その結果、上流側の枠組8A,8Bをなびき方向で使用することができ、枠組8A,8Bから発生する空力音が低減して枠組8A,8Bから沿線W
1,W
2に放射する騒音を低減することができる。
【0050】
(第2実施形態)
以下では、
図1〜
図8に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図9〜
図14に示す集電装置6は、
図1〜
図7に示す集電装置6とは枠組8A,8Bの進行方向D
1,D
2に対する向きが異なる。集電装置6は、例えば、
図9、
図11及び
図13に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、進行方向D
1の前側の枠組8Bを使用せず、進行方向D
1の後側の枠組8Aを使用する。一方、集電装置6は、例えば、
図10、
図12及び
図14に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、進行方向D
2の前側の枠組8Aを使用せず、進行方向D
2の後側の枠組8Bを使用する。
図9〜
図14に示す枠組8A,8Bは、
図1〜
図7に示す枠組8A,8Bと同様に、この枠組8A,8Bの中心線が台枠9の中心線と一致するように配置されている。枠組8A,8Bは、
図1〜
図7に示す枠組8A,8Bとは異なり、関節部8d同士を台枠9に対して内側に向けた状態(関節部8d同士が向き合った状態)でこの台枠に支持されている。枠組8Aは、
図11及び
図13に示すように、台枠9の一方の端部側に支持されており、枠組8Bは
図12及び
図14に示すようにこの台枠9の他方の端部側に支持されている。
【0051】
次に、この発明の第2実施形態に係る集電装置の動作を説明する。
図9及び
図11に示すように、車両5が上り線2Aを進行方向D
1に走行するときには、
図13に示すように進行方向D
1の後側の枠組8Aが上昇状態に切り替わり、進行方向D
1の前側の枠組8Bが下降状態に切り替わる。下降状態である上流側の枠組8Bの気流の乱れの影響を受けて、上昇状態である下流側の枠組8Aから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。このため、上昇状態である下流側の枠組8Aの基部(根元)付近から発生する空力音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合には、下流側の枠組8Aの基部付近から発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Aから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0052】
図10及び
図12に示すように、車両5が下り線2Bを進行方向D
2に走行するときには、
図14に示すように進行方向D
2の後側の枠組8Bが上昇状態に切り替わり、進行方向D
2の前側の枠組8Aが下降状態に切り替わる。下降状態である上流側の枠組8Aの気流の乱れの影響を受けて、上昇状態である下流側の枠組8Bから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。このため、上昇状態である下流側の枠組8Bの基部(根元)付近から発生する空力音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合には、下流側の枠組8Bの基部付近から発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Bから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0053】
(第3実施形態)
図15〜
図22に示す集電装置6は、
図1〜
図7及び
図9〜
図14に示す集電装置6とは枠組8A,8Bによる集電舟7A,7Bの支持構造が異なる。集電装置6は、例えば、
図15、
図17及び
図20に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、進行方向D
1の後側の枠組8Bを使用せず、進行方向D
1の前側の枠組8Aを使用する。一方、集電装置6は、例えば、
図16、
図18及び
図22に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、進行方向D
2の後側の枠組8Aを使用せず、進行方向D
2の前側の枠組8Bを使用する。
【0054】
枠組8A,8Bは、
図19(A)及び
図21(A)に示すように、集電舟7A,7Bの沿線W
1,W
2から遠い側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する。枠組8Aは、
図17及び
図19(A)に示すように、軌道2が複線である場合であって車両5が左側通行をする場合には、集電舟7Aの進行方向D
1の右側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する。枠組8Aは、車両5が上り線2Aを走行するときには、集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部が沿線W
1から遠くなるように、集電舟7Aの上り線2A側の沿線W
1から遠い側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する。一方、枠組8Bは、
図18及び
図21(A)に示すように、軌道2が複線である場合であって車両5が左側通行をする場合には、集電舟7Bの進行方向D
2の右側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する。枠組8Bは、車両5が下り線2Bを進行するときに、集電舟7Bと舟支え部8aとの接合部が沿線W
2から遠くなるように、集電舟7Bの下り線2B側の沿線W
2から遠い側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する。
図15〜
図22に示す枠組8A,8Bは、
図19及び
図21に示すように、この枠組8A,8Bの中心線が台枠9の中心線と所定の間隔をあけて平行に配置されている。枠組8A,8Bは、
図1〜
図7及び
図9〜
図14に示す枠組8A,8Bとは異なり、関節部8d同士を台枠9に対して外側に向けた状態(関節部8d同士が背を向けた状態)でこの台枠9に支持されている。枠組8A,8B は、
図19及び
図21に示すように、車両5の幅方向(進行方向D
1,D
2に対して直交する方向)に所定の間隔をあけて台枠9に支持されている。枠組8Aは、台枠9の一方の縁部側に支持されており、枠組8Bはこの台枠9の他方の縁部側に支持されている。
【0055】
舟支え部8aは、
図17、
図18、
図19(A)及び
図21(A)に示すように、集電舟7A,7Bの一方の端部寄りを支持しており、軌道2のまくらぎ方向にオフセットした状態で集電舟7A,7Bを片持ち支持する。舟支え部8aは、
図19(A)及び
図21(A)に示すように、集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの接合部の付近から発生する騒音Sが遮音板11によって遮音されやすいように、集電舟7A,7Bの沿線W
1,W
2から遠い側の端部寄りを支持する。舟支え部8aは、
図17及び
図19(A)に示すように、上り線2Aを車両5が走行するときには、沿線W
1から遠い位置(沿線W
2に近い位置)となる集電舟7Aの端部寄りを支持する。一方、舟支え部8aは、
図18及び
図21(A)に示すように、下り線2Bを車両5が走行するときには、沿線W
2から遠い位置(沿線W
1に近い位置)となる集電舟7Bの端部寄りを支持する。
【0056】
騒音抑制構造12は、集電装置6から沿線W
1,W
2に放射する騒音Sを抑制する構造である。騒音抑制構造12は、
図19(A)及び
図21(A)に示すように、集電装置6の集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの間の接合部の周辺から沿線W
1,W
2に放射する騒音Sを抑制する。騒音抑制構造12は、集電装置6の主要な音源である集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの間の接合部を、遮音板11による遮音効果が大きくなる位置に配置することによって、この接合部の付近から発生する騒音Sが沿線W
1,W
2に伝搬するのを抑制する。騒音抑制構造12は、
図17及び
図19(A)に示すように、上り線2Aを車両5が走行するときに、集電舟7Aと舟支え部8aとの間の接合部の近傍から発生する騒音Sがこの上り線2Aに近い側の沿線W
1に放射するのを抑制する。一方、騒音抑制構造12は、
図18及び
図21(A)に示すように、下り線2Bを車両5が走行するときに、集電舟7Bと舟支え部8aとの間の接合部の近傍から発生する騒音Sがこの下り線2Bに近い側の沿線W
2に放射するのを抑制する。
【0057】
次に、この発明の第3実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の作用を説明する。
以下では、
図17及び
図19に示すように、車両5が上り線2Aを走行する場合を例に挙げて説明する。
図23(B)及び
図24(B)に示すように、集電舟7Aの中央部が舟支え部8aによって支持されている場合には、
図23(B)に示すように沿線W
1側(受音点側)から集電装置6を見上げると、集電装置6の集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近が遮音板11から露出している。このため、集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近が遮音板11によって遮音され難い位置になり、この接合部の付近から沿線W
1に向かって斜め下方に騒音Sが放射する。その結果、遮音板11による遮音効果が低くなって、この接合部の付近から沿線W
1に騒音Sが伝搬する。
【0058】
一方、
図23(A)及び
図24(A)に示すように、沿線W
1から遠い側の集電舟7Aの端部が舟支え部8aによって支持されている場合には、
図24(A)に示すように沿線W
1側(受音点側)から集電装置6を見上げると、集電装置6の集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近が遮音板11によって覆われる。このため、集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近が遮音板11によって遮音され安い位置になり、この接合部の付近から沿線W
1に向かって斜め下方に放射する騒音Sが遮音板11によって遮音される。その結果、遮音板11による遮音効果が高くなって、集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近から沿線W
1に伝搬する騒音Sが低減される。
【0059】
次に、この発明の第3実施形態に係る集電システムの動作を説明する。
図15及び
図17に示すように、車両5が上り線2Aを進行方向D
1に走行するときには、
図20に示すように前側の枠組8Aを集電装置6が上昇状態に切り替えて、後側の枠組8Bを集電装置6が下降状態に切り替える。このため、なびき方向で枠組8Aが上昇状態になり、枠組8Aから発生する騒音が低減するとともに、枠組8A側の集電舟7Aの前部7cが進行方向D
1の前側に向くため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が図られる。一方、反なびき方向で枠組8Bが上昇状態にはならないため、枠組8Bから発生する騒音が低減するとともに、枠組8B側の集電舟7Bの後部7dが進行方向D
1の前側に向かないため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が損なわれない。前側の枠組8Aが上昇状態に切り替わり、後側の枠組8Bが下降状態に切り替わると、上流側の枠組8Aの気流の乱れの影響を受けて、下流側の枠組8Bから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合に、下降状態の枠組8Bから発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Bから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0060】
図16及び
図18に示すように、車両5が下り線2Bを進行方向D
2に走行するときには、
図22に示すように前側の枠組8Bを集電装置6が上昇状態に切り替えて、後側の枠組8Aを集電装置6が下降状態に切り替える。このため、なびき方向で枠組8Bが上昇状態になり、枠組8Bから発生する騒音が低減するとともに、枠組8B側の集電舟7Bの前部7cが進行方向D
2の前側に向くため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が図られる。一方、反なびき方向で枠組8Aが上昇状態にはならないため、枠組8Aから発生する騒音が低減するとともに、枠組8A側の集電舟7Aの後部7dが進行方向D
2の前側に向かないため、空力音低減効果及び揚力特性安定化が損なわれない。前側の枠組8Bが上昇状態に切り替わり、後側の枠組8Aが下降状態に切り替わると、上流側の枠組8Bの気流の乱れの影響を受けて、下流側の枠組8Aから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合に、下降状態の枠組8Aから発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Aから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0061】
この発明の第3実施形態に係る集電装置には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、集電舟7Aの進行方向D
1の右側の端部寄りを舟支え部8aによって枠組8Aが支持し、集電舟7Bの進行方向D
2の右側の端部寄りを舟支え部8aによって枠組8Bが支持する。このため、集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの接合部をまくらぎ方向にオフセットさせることによって、遮音板11によって大きな遮音効果が得られる位置に、集電装置6の主要な音源部位であるこの接合部の近傍を移設することができる。その結果、車両5の進行方向D
1,D
2が変化する場合であっても、集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの接合部が沿線W
1,W
2から遠い位置になり、この接合部の付近から発生する騒音Sを遮音板11によって容易に遮音することができ、沿線W
1,W
2に伝搬する騒音Sを抑制することができる。また、集電装置6について困難な改良形状を実施せずに、沿線W
1,W
2の騒音Sをより一層低減することができる。
【0062】
(2) この第3実施形態では、車両5の幅方向に所定の間隔をあけて枠組8A,8Bが台枠9に支持されている。このため、枠組8Aと枠組8Bとが互いに干渉しないように、限られたスペースの車体5aの屋根上に設置することができ、集電装置6全体をコンパクトにすることができる。
【0063】
(第4実施形態)
図25〜
図31に示す集電装置6は、
図15〜
図22に示す集電装置6とは枠組8A,8Bの進行方向D
1,D
2に対する向きが異なる。集電装置6は、例えば、
図25、
図27及び
図30に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、進行方向D
1の前側の枠組8Bを使用せず、進行方向D
1の後側の枠組8Aを使用する。一方、集電装置6は、例えば、
図26、
図28及び
図31に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、進行方向D
2の前側の枠組8Aを使用せず、進行方向D
2の後側の枠組8Bを使用する。
図25〜
図31に示す枠組8A,8Bは、
図15〜
図22に示す枠組8A,8Bと同様に、この枠組8A,8Bの中心線が台枠9の中心線と所定の間隔をあけて平行に配置されている。枠組8A,8Bは、
図15〜
図22に示す枠組8A,8Bとは異なり、関節部8d同士を台枠9に対して内側に向けた状態(関節部8d同士を接近させた状態)で台枠9に支持されている。
図29に示すように、枠組8Aは台枠9の一方の縁部側に支持されており、枠組8Bはこの台枠9の他方の縁部側に支持されている。
【0064】
次に、この発明の第4実施形態に係る集電装置の動作を説明する。
図25及び
図27に示すように、車両5が上り線2Aを進行方向D
1に走行するときには、
図27に示すように後側の枠組8Aが上昇状態に切り替わり、前側の枠組8Bが下降状態に切り替わる。上流側の枠組8Bの気流の乱れの影響を受けて、下流側の枠組8Aから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。このため、上昇状態である下流側の枠組8Aの基部(根元)付近から発生する空力音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合には、下流側の枠組8Aの基部付近から発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Aから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0065】
図26及び
図28に示すように、車両5が下り線2Bを進行方向D
2に走行するときには、
図28に示すように後側の枠組8Bが上昇状態に切り替わり、前側の枠組8Aが下降状態に切り替わる。上流側の枠組8Aの気流の乱れの影響を受けて、下流側の枠組8Bから発生する騒音が一般的に大きくなる可能性がある。このため、上昇状態である下流側の枠組8Bの基部(根元)付近から発生する空力音が一般的に大きくなる可能性がある。この場合には、下流側の枠組8Bの基部付近から発生する騒音が遮音板11によって遮られるため、枠組8Bから沿線W
1,W
2に放射する騒音が抑制される。
【0066】
この発明の第4実施形態に係る集電装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第4実施形態では、枠組8A,8Bの関節部8d同士を台枠9に対して内側に向けた状態でこれらの枠組8A,8Bがこの台枠9に支持されている。例えば、第1実施形態及び第3実施形態では、
図6、
図7、
図20及び
図22に示すように、枠組8A,8Bの関節部8d同士を台枠9に対して外側に向けた状態でこれらの枠組8A,8Bが台枠9に支持されている。その結果、下降状態の枠組8A,8Bの関節部8dが台枠9から上流側又は下流側に突出するため、軌道2の長さ方向における遮音板11の長さL
1,L
3が比較的長くなる。一方、この第4実施形態では、
図30及び
図31に示すように、下降状態の枠組8A,8Bの関節部8dが台枠9の中央部付近に位置するとともに騒音源となる領域がこの中央部付近にまとまっている。その結果、軌道2の長さ方向における遮音板11の長さL
4が比較的短く(L
4<L
1,L
4<L
3)なるため、遮音板11をより一層小型にすることができ低コスト化を図ることができる。
【0067】
(第5実施形態)
以下では、
図1〜
図7、
図9〜
図22及び
図25〜
図28に示す集電舟7A,7Bのうち一方の集電舟7A側を例に挙げて説明し、他方の集電舟7B側については詳細な説明を省略する。
図32に示す集電舟7Aは、貫通孔7eを備えている。貫通孔7eは、集電舟7Aの長さ方向に間隔を開けて、この集電舟7Aの前部7cから後部7dに向かってこの集電舟7Aを貫通する部分である。貫通孔7eは、集電舟7Aと舟支え部8aとの接合部の付近から発生するカルマン渦をこの貫通孔7eを通過する気流によって乱し、この接合部の付近から発生する騒音Sを抑制する。貫通孔7eは、例えば、集電舟7Aの長さ方向に40mm間隔で、開口部の形状が縦6mm×横20mmの略四角形に形成されている。
【0068】
この発明の第5実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造には、第1実施形態〜第4実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第5実施形態では、集電舟7A,7Bの長さ方向に間隔をあけて、この集電舟7A,7Bの前部7cから後部7dに向かってこの集電舟7A,7Bを貫通孔7eが貫通する。このため、例えば、集電舟7A,7Bと舟支え部8aとの接合部の付近から発生するエオルス音(狭帯域音)が増加したときには、この接合部の付近に発生するカルマン渦を、貫通孔7eを通過する気流と干渉させて乱し、空力音の発生を抑制することができる。
【0069】
(第6実施形態)
図33及び
図34に示す第6実施形態は、
図1〜
図32に示す第1実施形態〜第5実施形態とは逆に、
図33及び
図34に示すように車両5の進行方向D
1,D
2の後側に関節部8dが位置する反なびき方向で使用する場合のほうが、
図1〜
図32に示すように車両5の進行方向D
1,D
2の前側に関節部8dが位置するなびき方向で使用する場合よりも、空力音が小さいときの実施形態である。
図33及び
図34に示す集電装置6は、
図1〜
図32に示す集電装置6とは異なり、反なびき方向で使用されるがなびき方向では使用されない。
【0070】
集電装置6は、
図33に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには枠組8Aを上昇状態に切り替え、
図34に示すように車両5が下り線2Bを走行するときには枠組8Bを上昇状態に切り替える。集電装置6は、例えば、
図33に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、進行方向D
1の後側の枠組8Bを使用せず、進行方向D
1の前側の枠組8Aを使用する。一方、集電装置6は、例えば、
図34に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、進行方向D
2の後側の枠組8Aを使用せず、進行方向D
2の前側の枠組8Bを使用する。
【0071】
集電装置6は、
図33に示すように、車両5が上り線2Aを走行するときには、枠組8Aを上昇状態(展開状態)に切り替えてこの枠組8A側のすり板7aをトロリ線4aに接触させ、枠組8Bを下降状態(折畳状態)に切り替えてこの枠組8B側のすり板7aをトロリ線4aから離間させる。一方、集電装置6は、
図34に示すように、車両5が下り線2Bを走行するときには、枠組8Aを下降状態(折畳状態)に切り替えてこの枠組8A側のすり板7aからトロリ線4aを離間させ、枠組8Bを上昇状態(展開状態)に切り替えてこの枠組8B側のすり板7aをトロリ線4aに接触させる。
図33及び
図34に示す集電舟7A,7Bは、
図8及び
図32に示す集電舟7A,7Bと同一構造の平滑化舟体であり、前部7cの形状と後部7dの形状とが非対称であり、車両5の進行方向D
1,D
2の前側に前部7cを向け、車両5の進行方向D
1,D
2の後側に後部7dを向ける。
【0072】
枠組8Aは、
図33に示すように、進行方向D
1の後側に関節部8dを向けており、枠組8Bは
図34に示すように進行方向D
1とは逆方向の進行方向D
2の後側に関節部8dを向けている。枠組8Aは、
図33に示すように、進行方向D
1に進行するときには上昇状態に切り替わり、
図34に示すように進行方向D
2に進行するときには下降状態に切り替わる。一方、枠組8Bは、
図33に示すように、進行方向D
1に進行するときには下降状態に切り替わり、
図34に示すように進行方向D
2に進行するときには上昇状態に切り替わる。
【0073】
枠組8A,8Bは、
図33及び
図34に示すように、この枠組8A,8Bの中心線が台枠9の中心線と一致するように配置されており、車両5の長さ方向(進行方向D
1,D
2)に所定の間隔をあけて台枠9に支持されている。枠組8A,8Bは、関節部8d同士を台枠9に対して内側に向けた状態(関節部8d同士が向き合った状態)でこの台枠9に支持されている。枠組8Aは、台枠9の一方の端部側に支持されており、枠組8Bはこの台枠9の他方の端部側に支持されている。
【0074】
この発明の第6実施形態に係る集電装置には、第1実施形態、第4実施形態及び第5実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第6実施形態では、進行方向D
1の後側に枠組8Aが関節部8dを向け、この進行方向D
1とは逆方向の進行方向D
2の後側に枠組8Bが関節部8dを向け、これらの枠組8A,8Bを台枠9が支持する。このため、例えば、なびき方向よりも反なびき方向で集電装置6を使用する場合のほうが、将来的に空力音が低下するようなときに、車両5の進行方向D
1,D
2に応じて空力音が小さくなるいずれか一方の枠組8A,8Bを反なびき方向で常に運用することができる。
【0075】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、軌道2が複線である場合を例に挙げて説明したが、軌道2が複々線である場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、東北新幹線を例に挙げて説明したが、東海道新幹線、山陽新幹線又は北海道新幹線などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、車両5が新幹線を走行する新幹線車両である場合を例に挙げて説明したが、在来線を走行する在来線車両、又は新幹線と在来線とを相互に走行可能な新在直通運転用の車両などについてもこの発明を適用することができる。
【0076】
(2) この実施形態では、車両5が左側通行である場合を例に挙げて説明したが、右側通行である場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、この第3実施形態及び第4実施形態では、集電舟7A,7Bの進行方向D
1,D
2の左側の端部寄りを舟支え部8aによって集電装置6が支持することによって、沿線W
1,W
2の騒音Sを抑制することができる。また、この実施形態では、集電舟7A,7Bの前部7cの形状と後部7dの形状とが非対称である場合を例に挙げて説明したが、これらの形状が対象である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、台枠9を覆う風防部から下枠8c及び関節部8dが露出する構造の集電装置6を例に挙げて説明したが、台枠9を覆う風防部によって下枠8c及び関節部8dが覆われている構造の集電装置についても、この発明を適用することができる。
【0077】
(3) この実施形態では、集電舟7A,7Bがすり板7aと一体の平滑化舟体である場合を例に挙げて説明したが、このようなすり板7aに限定するものではない。例えば、集電舟7A,7Bの前部7cの形状と後部7dの形状とが対称である場合には、集電舟7A,7Bの長さ方向に沿って複数のすり板片に分割された新幹線用(高速用)パンタグラフに使用される多分割すり板についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電装置7A,7Bが一般的な構造のシングルアーム式パンタグラフである場合を例に挙げて説明したが、このような構造に限定するものではない。例えば、集電装置7A,7Bと遮音板13とを電気的に絶縁するために必要な離隔である絶縁離隔を確保することができ、集電装置7A,7Bを折り畳んだときにホーン8bと干渉しない台枠9を有するパンタグラフであればこの発明を適用することができる。
【0078】
(4) この第6実施形態では、集電舟7A,7Bの中央部を舟支え部8aによって支持する場合を例に挙げて説明したが、集電舟7A,7Bの進行方向D
1,D
2の右側の端部寄りを舟支え部8aによって支持する場合についても、この発明を適用することができる。また、この第6実施形態では、関節部8d同士を台枠に対して内側に向けた状態で枠組8A,8Bをこの台枠に支持する場合を例に挙げて説明したが、関節部8d同士を台枠に対して外側に向けた状態で枠組8A,8Bをこの台枠に支持する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第6実施形態では、車両5の長さ方向に所定の間隔をあけて枠組8A,8Bを台枠9に支持する場合を例に挙げて説明したが、車両5の幅方向に所定の間隔をあけて枠組8A,8Bを台枠9に支持する場合についても、この発明を適用することができる。