(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671805
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】計量方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01G 19/42 20060101AFI20200316BHJP
G01G 23/16 20060101ALI20200316BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
G01G19/42 Z
G01G23/16 Z
A61F13/00 301A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-24561(P2017-24561)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-132342(P2018-132342A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年1月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(72)【発明者】
【氏名】古和 勉
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−112729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00−23/48
G06M 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿に載置された被計量物の計量値を求める計量手段と、
前記被計量物を前記計量皿に載置した際の前記計量値の変動量が判定値を超えた際に前記被計量物の個数をカウントする計数手段と、
前記判定値に対する前記計量値の変動量を視覚的に知らせる報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記変動量をバーの長さとして表示するバー表示部と、前記変動量が前記判定値に達した際に前記バーが到達する位置に設けられたラインと、を備えることを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記計量値の変動量は、前記計量値が安定した状態からの変動量であり、前記計量値が安定した際にゼロにリセットされることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計量方法および装置に係り、特に血の付いたガーゼの枚数をカウントすると同時に、ガーゼで吸収した血液量を計る計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術の際に使用したガーゼは術後に回収し、枚数を正確に数えて管理する必要がある。また、使用済みガーゼは回収後に計量し、その計量値からガーゼで吸収した血液量を求める必要がある。そこで以前から、使用済みガーゼの計量とカウントを行う様々な装置が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、ガーゼを計量するとともに、ガーゼの枚数を手入力する装置が記載されている。特許文献2には、ガーゼを落下させながら光学式センサで枚数をカウントするとともに、落下したガーゼを計量する装置が記載されている。特許文献3には、ガーゼに取り付けたICチップを用いてカウントしながら計量を行う装置が提案されている。これらの装置によれば、使用済みガーゼの総重量から、未使用ガーゼの質量に枚数を掛けたものを引くことによって、ガーゼで吸収した血液量を求めることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置は、ガーゼの枚数を手入力するため、間違うおそれがあった。特許文献2の装置は、複数枚のガーゼを誤って同時に落下させた際に正確にカウントできず、さらにそれを確認する術がないという問題があった。特許文献3の装置は、ICチップ付きのガーゼしか使用することができず、(ICチップのない)普通のガーゼはカウントできないという問題があった。このようにいずれの装置でも、普通のガーゼを確実且つ正確にカウントすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、別のカウント方法として、使用済みガーゼを一枚ずつ計量皿に載置し、計量値が安定したことによってガーゼの枚数をカウントする方法が考えられる。たとえば特許文献4は、連続計量を行う計量装置であり、計量値が安定したことによって計量回数をカウントしている。この方法を利用してガーゼをカウントすれば、ガーゼの枚数を正確にカウントすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−92658
【特許文献2】特開2003−75436
【特許文献3】特開2005−160825
【特許文献4】特許5217857号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガーゼを1枚ごとに計量し、その計量値が安定するのを待っていたのでは、全ての枚数が終わるまでに時間がかかるという問題があった。現場では、時間をかけることなく作業することが望まれており、高速でカウントと計量を行うことが要求されている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたものであり、被計量物の計量作業との計数作業を同時に行うことができ、さらに計数作業を正確且つ迅速に行うことができる計量方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、計量皿に載置された被計量物の計量値を求める計量手段と、前記被計量物を前記計量皿に載置した際の前記計量値の変動量が判定値を超えた際に前記被計量物の個数をカウントする計数手段と、前記判定値に対する前記計量値の変動量を視覚的に知らせる報知手段と、を備え
、前記報知手段は、前記変動量をバーの長さとして表示するバー表示部と、前記変動量が前記判定値に達した際に前記バーが到達する位置に設けられたラインと、を備えることを特徴とする計量装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、被計量物を計量皿に載置する際、計量値の変動量が判定値よりも大きくなると、被計量物の個数がカウントされる。したがって、被計量物を載置する際に計量皿を押し込むことによって個数をカウントすることができ、計量作業を行いながら計数作業を行うことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は
請求項1の発明において、前記計量値の変動量は、前記計量値が安定した状態からの変動量であり、前記計量値が安定した際にゼロにリセットされることを特徴とする。本発明によれば、計量値が安定した際に変動量がゼロにリセットされるので、計量を繰り返し行う場合にも対応することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被計量物を計量皿に載置する際、計量皿に過荷重を与えることによって被計量物の個数をカウントすることができ、計量動作を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明を適用した計量装置の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明に係る計量方法および装置の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明が適用された計量装置10の正面図であり、
図2はその構成を模式的に示した図である。
【0018】
これらの図に示す計量装置10は、使用済みガーゼの個数をカウントしながら使用済みガーゼで吸収した血液量を求めるガーゼカウンタであり、主として本体12と計量皿14を備える。計量皿14は、被計量物である使用済みガーゼを載せる部分であり、後述のセンサ部20に連結されている。
【0019】
本体12の正面には、操作部16や表示部18が設けられている。操作部16は、各種の操作を行うボタンであり、例えば
図2に示すように、電源のオンオフを行う電源スイッチ16Aと、基準値(未使用品ガーゼの単品での重量)や計量値のゼロ点を設定する設定ボタン16Bなどが設けられている。なお、操作部16の構成(個数や配置など)は上述した実施形態に限定されるものでは無く、様々な態様が可能である。
【0020】
一方、表示部18は、使用済みガーゼの個数や計量値などを表示する画面であり、たとえば
図3に示すように個数表示部18A、計量値表示部18B、バー表示部18Cが設けられる。個数表示部18Aは、使用済みガーゼの個数を表示する部分であり、後述するように「計量皿14に判定値以上の荷重が加わった回数」が使用済みガーゼの個数として表示される。計量値表示部18Bは、使用済みガーゼの総重量を表示する部分であり、操作終了後には、使用済みガーゼで吸収した血液量(=総重量−未使用ガーゼの単品での重量×使用済みガーゼの個数)が表示される。
【0021】
バー表示部18Cは、計量値の変動量をバー18Dの長さ(高さ)として表示する部分であり、変動量が大きくなればバー18Dの長さ(高さ)も長くなるように表示される。計量値の変動量は、後述するように計量値が安定した状態からの変動量であり、計量値が安定するたびに変動量がゼロとしてリセットされる。また、バー表示部18Cのある高さ位置には、水平なライン18Eが表示されている。このライン18Eは、計量値の変動量が判定値に達した際に、バー18Dの上端が到達するように設定される。したがってバー18Dがライン18Eを超えることによって、「変動量が判定値を超えた」と認識することができる。なお、バー表示部18Cの構成は上述した実施形態に限定されるものでは無く、計量値の変動量が把握できる表示であれば良い。たとえば変動量によって色が変化するような表示であったり、判定値に対する変動量の割合を数字を表示したりしてもよい。また、表示部18全体の構成は上述した実施形態に限定されるものでは無く、様々な態様が可能である。たとえば「使用済みガーゼが吸収した血液量」を表示するための専用の表示部を設けてもよい。
【0022】
図2に示すように、本体12の内部にはセンサ部20、制御部22、電源ユニット24、メモリ26、スピーカー28が設けられる。センサ部20は、計量皿14にかかる荷重を計測するセンサであり、たとえばロードセルが用いられる。このセンサ部20には計量皿14が着脱自在に連結されている。
【0023】
制御部22は、操作部16、表示部18、センサ部20、電源ユニット24に接続されており、操作部16からの信号やセンサ部20からの信号に基づいて各種の演算処理を行い、表示部18に信号を出力するようになっている。たとえば制御部22は、センサ部20からの信号に基づいて計量値を求め、その計量値を計量値表示部18Bに表示させる。また制御部22は、安定した状態からの計量値の変動量を求め、その変動量に応じてバー表示部18Cのバー18Dを表示させる。さらに制御部22は、計量値の変動量が判定値を超えた回数をカウントし、その回数を使用済みガーゼの個数として個数表示部18Aに表示させる。なお、ここでいう判定値とは、血液を十分に吸収した使用済みガーゼの重量よりもかなり大きい値であり、使用済みガーゼを計量皿14に自然に載せただけでは、変動量が判定値に超えないように設定されている。
【0024】
制御部22はスピーカー28に接続されており、スピーカー28から発する音を制御できるようになっている。たとえば計量値の変動量が判定値を超えた際に「ピ―ッ」と鳴るように制御する。これにより、作業者はスピーカー28からの音によって、変動量が判定値を超えたこと、すなわち使用済みガーゼのカウントが行われたことを把握することができる。なお、音の制御方法は特に限定するものではなく、たとえば計量値の変動量が大きくなるにつれて「ピッ、ピッ」という音がだんだん大きくなるように、或いは時間間隔が短くなるように制御してもよい。また、本実施の形態では、バー表示部18Cによる視覚的な報知と、スピーカー28による聴覚的な報知との両方を行うようにしたが、どちらか一方であってもよい。
【0025】
制御部22にはメモリ26が接続されており、操作部16から入力された「判定値」や「基準値」をメモリ26に記憶できるようになっている。なお、「基準値」は前述したように、未使用ガーゼの単品での重量であり、予め入力される。また、「判定値」は、血液量を十分に吸収した使用済みガーゼ1枚の重量よりも大きな値が選択され、予め入力される。
【0026】
図4は制御部22の制御フローの一例であり、計量動作と計数動作が行われるフローを示している。制御部22はまず、センサ部20の信号に基づいて計量値を算出する(ステップS1)。次に、その計量値から「安定時の計量値」を引くことによって変動量を求め、この変動量をバー表示部18Cのバー18Dとして表示させる(ステップS2)。
【0027】
次に制御部22は、計量値(或いは変動量)が所定の時間、安定しているかを判断し(ステップS3)、安定していると判断した場合には、その際の計量値を「安定時の計量値」として新たに記憶する(ステップS4)。そして、計量値の変動量をゼロにリセットする(ステップS5)。
【0028】
一方、計量値が変動していると判定した場合は、計量値の変動量が判定値よりも大きいかを判断する(ステップS6)。そして、判定値よりも小さいと判定した場合は、計量動作をそのまま連続して行うように制御する。しかし、変動量が判定値よりも大きくなったと判断した場合は、回数をカウントする。すなわち、変動量が判定値を超えたトータル回数を1回加算する。制御部22は、この回数を使用済みガーゼの個数として個数表示部18Aに表示させるとともに(ステップS7)、そのことを示すようにスピーカ28から音を発生させる(ステップS8)。これにより作業者は使用済みガーゼの個数がカウントされたことを把握することができる。使用済みガーゼの個数がカウントされた後は、作業が終了したか否かを判断し(ステップS9)、終了していない場合は、次の使用済みガーゼの計量動作に移行する。
【0029】
次に計量装置10の操作手順について説明する。作業者はまず電源スイッチ16Aをオンにし、ゼロ調整を行うことによって、計量可能状態にする。この状態では、個数表示部18Aは「0個」であり、計量値表示部18Bは「0g」である。
【0030】
次に、使用済みガーゼを一枚とって計量皿14に載置する。このとき、計量値表示部18Bには、計量皿14に加わった荷重が計量値としてリアルタイムで表示され、バー表示部18Cには、計量値の変動量がバー18Dとして表示される。作業者は、バー18Dを見ながら計量皿14を下方に押し込んで過荷重を与え、バー18Dがライン18Eを超えるようにする。バー18Dがライン18Eを超えた際、使用済みガーゼの個数がカウントされ、個数表示部18Aの表示が「1個」に変化し、同時に、スピーカー28から音が発生する。これにより、作業者は、使用済みガーゼの個数がカウントされたことを把握することができる。
【0031】
次に作業者は、計量皿14への過荷重を止めて、使用済みガーゼをそのまま計量皿14に載せる。そして、次の使用済みガーゼがある場合には、その使用済みガーゼを計量皿14に載置する。したがって、従来のように、使用済みガーゼを載置した後に計量値が安定するのを待つ必要が無く、すぐに次の計量作業を行うことができる。
【0032】
次の使用済みガーゼを計量皿14に載置した場合にも同様に、作業者はバー表示部18Cのバー18Dを見ながら計量皿14を押し込み、ライン18Eを超えるようにする。これにより、個数表示部18Aの表示が「2個」に更新されるとともに、スピーカー28から音が発生する。作業者は、使用済みガーゼの個数がカウントされたことを把握すると、計量皿14への押し込みをやめる。以上の操作を繰り返すことによって、使用済みガーゼの個数をカウントしながら、使用済みガーゼの計量を行うことができる。作業終了後、個数表示部18Aには使用済みガーゼの個数が表示され、計量値表示部18Bには使用済みガーゼの総計量値が表示される。その後、計量値表示部18Bに、血液量(=総計量値−未使用ガーゼの単品での重量×使用済みガーゼの個数)が表示される。
【0033】
このように本実施の形態によれば、使用済みガーゼを計量皿14に載せる際に計量皿14を押し込むことによって、使用済みガーゼの個数をカウントすることができ、計量値が安定するのを待つことなく作業を続けることができる。特に本実施の形態によれば、使用済みガーゼを計量皿14に載置するという計量動作のなかで、計量皿14を押し込むという計数動作を行うので、とても自然な形で計量と計数を同時に行うことができ、全ての作業を迅速に行うことができる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、基準値(未使用ガーゼの単品での重量)を予め入力したが、これに限定されるものではなく、作業直前に未使用ガーゼを計量して基準値を設定するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、使用済みガーゼの個数を自動でカウントするのみであったが、目視で確認するようにしてもよい。
図5は、基準値の設定や目視での確認に適した計量皿14の一例である。この計量皿14には、矩形状の計量スペース30に隣接して、展示スペース32が仕切りを隔てて形成されている。計量スペース30にはガーゼトレイ34が搭載されており、展示スペース32にはサンプルトレイ36が搭載されている。ガーゼトレイ34は、内側が格子状に仕切られており、その格子空間は、使用済みガーゼを一個のみ収納できる大きさになっている。一方、サンプルトレイ36は、未使用のガーゼが一個のみ収容できる大きさで形成されている。
【0035】
上記の如く構成された計量皿14を用いた場合、まず、未使用のガーゼ(見本)を展示スペース32のサンプルトレイ36内に展示する。そして、未使用のガーゼを計量し、その計量値を基準値としてメモリ26に記憶する。次に、使用済みガーゼをガーゼトレイ34の格子空間にひとつずつ収納するように載置し、その際に計量皿14を押し込むことによって使用済みガーゼの個数をカウントする。このように構成された計量皿14によれば、未使用品のガーゼが展示されているので、ガーゼの種類が複数ある場合であっても、基準値を間違うことなく設定することができる。また、使用済みガーゼをガーゼトレイ34の格子空間にひとつずつ収納するので、使用済みガーゼの個数を目視で確認することができる。したがって、計量皿14の押し込みによって自動的にカウントされた使用済みガーゼの個数が正しいかどうかを確認することができる。なお、使用済みガーゼの個数が間違っていた場合には、補正できるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10…計量装置、12…本体、14…計量皿、16…操作部、18…表示部、20…センサ部、22…制御部、24…電源ユニット、26…メモリ、28…スピーカー、30…計量スペース、32…展示スペース、34…ガーゼトレイ、36…サンプルトレイ